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発明の名称 スルー標準器基板及びライン標準器基板
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10522(P2007−10522A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−192678(P2005−192678)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100098291
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 史朗
発明者 熊川 正啓 / 中谷 俊文 / 足立 寿史
要約 課題
対向しない位置関係に配置されたプローブの信号ピン同士を接続し、信号の放射による損失の少ないスルー標準器基板及びライン標準器基板を提供する。

解決手段
スルー標準器基板10は、基板50と、弓形に延びるように基板50の表面に形成される信号ライン101と、所定の第1の間隔を有して信号ライン101の外方端縁104に沿って延びるように、基板50の表面に形成される第1のグランドライン102と、所定の第2の間隔を有して信号ライン101の内方端縁105に沿って延びるように、基板50の表面に形成される第2のグランドライン103とを備える。スルー標準器基板10は、直角の角部分を有しないため、当該角部分から信号が放射されることによって生じる信号の損失を抑制することが可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するスルー標準器基板であって、
基板と、
弓形に延びるように前記基板の表面に形成され、かつ、前記信号端子同士を接続するための信号ラインと、
所定の第1の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、
所定の第2の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える、スルー標準器基板。
【請求項2】
前記信号ラインは、円弧状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のスルー標準器基板。
【請求項3】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、
前記第1及び第2の間隔は、前記第1の間隔と前記第2の間隔との比が、第1の長さと前記第2の長さとの比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項2に記載のスルー標準器基板。
【請求項4】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、
前記信号ラインと前記第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、前記信号ラインと前記第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、
前記第1及び第2の誘電率は、前記第1の誘電率と前記第2の誘電率との比が、前記第2の長さの二乗と前記第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項2に記載のスルー標準器基板。
【請求項5】
前記基板の表面の誘電率は、前記第2のグランドラインから前記第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されることを特徴とする、請求項4に記載のスルー標準器基板。
【請求項6】
前記第1のグランドラインと前記第2のグランドラインとを、前記信号ラインの半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、前記信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のスルー標準器基板。
【請求項7】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインの半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のスルー標準器基板。
【請求項8】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインの半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の裏面に形成され、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のスルー標準器基板。
【請求項9】
前記基板は、半導体基板であり、
前記信号ラインの半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のコンタクトと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のスルー標準器基板。
【請求項10】
前記基板は、誘電体基板であることを特徴とする、請求項1に記載のスルー標準器基板。
【請求項11】
前記基板は、半導体基板であることを特徴とする、請求項1に記載のスルー標準器基板。
【請求項12】
前記基板は、前記被測定装置が形成された半導体基板であることを特徴とする、請求項1に記載のスルー標準器基板。
【請求項13】
被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するスルー標準器基板であって、
基板と、
隣接する一対の線分によって構成される内角の全てが90°より大きな角度を有する折れ線状に延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記信号端子同士を接続するための信号ラインと、
所定の第1の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、
所定の第2の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える、スルー標準器基板。
【請求項14】
前記信号ラインは、正八角形の一部の外郭線の形状に形成されることを特徴とする、請求項13に記載のスルー標準器基板。
【請求項15】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、
前記第1及び第2の間隔は、前記第1の間隔と前記第2の間隔との比が、第2の長さと前記第2の長さとの比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項14に記載のスルー標準器基板。
【請求項16】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、
前記信号ラインと前記第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、前記信号ラインと前記第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、
前記第1及び第2の誘電率は、前記第1の誘電率と前記第2の誘電率との比が、前記第2の長さの二乗と前記第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項14に記載のスルー標準器基板。
【請求項17】
前記基板の表面の誘電率は、前記第2のグランドラインから前記第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されることを特徴とする、請求項16に記載のスルー標準器基板。
【請求項18】
前記第1のグランドラインと前記第2のグランドラインとを、前記信号ラインの外接円の半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、前記信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えることを特徴とする、請求項14に記載のスルー標準器基板。
【請求項19】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインの半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項14に記載のスルー標準器基板。
【請求項20】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインの半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項14に記載のスルー標準器基板。
【請求項21】
前記基板は、半導体基板であり、
前記信号ラインの外接円の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のコンタクトと、
前記基板の裏面に形成され、前記コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項14に記載のスルー標準器基板。
【請求項22】
前記基板は、誘電体基板であることを特徴とする、請求項13に記載のスルー標準器基板。
【請求項23】
前記基板は、半導体基板であることを特徴とする、請求項13に記載のスルー標準器基板。
【請求項24】
前記基板は、前記被測定装置が形成された半導体基板であることを特徴とする、請求項13に記載のスルー標準器基板。
【請求項25】
被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するライン標準器基板であって、
基板と、
弓なりに延びる曲線と前記曲線の両端部の各々に接続され、前記両端部における接線方向に延びる一対の直線とから構成される線分の形状を有するように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記信号端子同士を接続するための信号ラインと、
所定の第1の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、
所定の第2の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える、ライン標準器基板。
【請求項26】
前記信号ラインは、円弧と、前記円弧の両端部における一対の接線とから構成される線分の形状を有するように形成されることを特徴とする、請求項25に記載のライン標準器基板。
【請求項27】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、
前記第1及び第2の間隔は、前記第1の間隔と前記第2の間隔との比が、第1の長さと前記第2の長さとの比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項26に記載のライン標準器基板。
【請求項28】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、
前記信号ラインと前記第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、前記信号ラインと前記第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、
前記第1及び第2の誘電率は、前記第1の誘電率と前記第2の誘電率との比が、前記第2の長さの二乗と前記第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項26に記載のライン標準器基板。
【請求項29】
前記基板の表面の誘電率は、前記第2のグランドラインから前記第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されることを特徴とする、請求項28に記載のライン標準器基板。
【請求項30】
前記第1のグランドラインと前記第2のグランドラインとを、前記信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、前記信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えることを特徴とする、請求項26に記載のライン標準器基板。
【請求項31】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項26に記載のライン標準器基板。
【請求項32】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の裏面に形成され、前記スルーホールの各々を接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項26に記載のライン標準器基板。
【請求項33】
前記基板は、半導体基板であり、
前記信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に接続される少なくとも一対のコンタクトと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項26に記載のライン標準器基板。
【請求項34】
前記基板は、誘電体基板であることを特徴とする、請求項25に記載のライン標準器基板。
【請求項35】
前記基板は、半導体基板であることを特徴とする、請求項25に記載のライン標準器基板。
【請求項36】
前記基板は、前記被測定装置が形成された半導体基板であることを特徴とする、請求項25に記載のライン標準器基板。
【請求項37】
被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するライン標準器基板であって、
基板と、
隣接する一対の線分によって構成される内角の全てが90°より大きな角度を有する折れ線と、前記折れ線の両端部の各々に接続され、前記外郭線の延長方向に延びる一対の直線とから構成される線分の形状を有するように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記信号端子同士を接続するための信号ラインと、
所定の第1の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記信号グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、
所定の第2の間隔を有して前記信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、前記基板の表面に形成され、かつ、前記信号グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える、ライン標準器基板。
【請求項38】
前記信号ラインは、正八角形の一部の外郭線と、前記外郭線の両端部に接続され、前記外郭線の延長方向に延びる一対の直線とを含む線分の形状に形成されることを特徴とする、請求項37に記載のライン標準器基板。
【請求項39】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、
前記第1及び第2の間隔は、前記第1の間隔と前記第2の間隔との比が、第1の長さと前記第2の長さとの比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項38に記載のライン標準器基板。
【請求項40】
前記信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、前記信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、
前記信号ラインと前記第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、前記信号ラインと前記第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、
前記第1及び第2の誘電率は、前記第1の誘電率と前記第2の誘電率との比が、前記第2の長さの二乗と前記第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されることを特徴とする、請求項38に記載のライン標準器基板。
【請求項41】
前記基板の表面の誘電率は、前記第2のグランドラインから前記第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されることを特徴とする、請求項40に記載のライン標準器基板。
【請求項42】
前記第1のグランドラインと前記第2のグランドラインとを、前記信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、前記信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えることを特徴とする、請求項38に記載のライン標準器基板。
【請求項43】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項38に記載のライン標準器基板。
【請求項44】
前記基板は、誘電体基板であり、
前記信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、
前記基板の裏面に形成され、前記スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項38に記載のライン標準器基板。
【請求項45】
前記基板は、半導体基板であり、
前記信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に整列し、前記第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のコンタクトと、
前記基板の内部に埋め込まれ、前記コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えることを特徴とする、請求項38に記載のライン標準器基板。
【請求項46】
前記基板は、誘電体基板であることを特徴とする、請求項37に記載のライン標準器基板。
【請求項47】
前記基板は、半導体基板であることを特徴とする、請求項37に記載のライン標準器基板。
【請求項48】
前記基板は、前記被測定装置が形成された半導体基板であることを特徴とする、請求項37に記載のライン標準器基板。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルー標準器基板及びライン標準器基板に関し、より特定的には、ベクトルネットワークアナライザを校正するために用いられるスルー標準器基板及びライン標準器基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波デバイスの特性は、一般に、Sパラメータと呼ばれる回路網パラメータによって表される。Sパラメータは、入力した電力に対してデバイスを通過した電力の割合と、入力した電力に対して反射した電力の割合とを意味する。
【0003】
Sパラメータの測定は、一般的にベクトルネットワークアナライザ(以下「VNA」という)を用いて行われる。VNAを用いた測定において、被測定装置は、同軸ケーブルを介してVNAの測定ポートに接続される。この場合、被測定装置についての測定結果には、同軸ケーブル内部における遅延やVNA内部における損失などが測定誤差として含まれる。そのため、被測定装置のSパラメータを測定する前に、VNAを含む測定系の誤差を校正することが必要である。尚、ここでは、校正という用語は、VNAから被測定装置に接続される部分までの特性を測定し取得することをいう。
【0004】
VNAを校正する方法として、SOLT(Short−Open−Load−Through)法と呼ばれる方法が多用されている。SOLT法は被測定装置が有する測定ポートのうちのいずれか2つのポートに接続される測定系の誤差を校正する方法である。まず、VNAの2つのポートの各々に同軸ケーブルを接続する。更に、同軸ケーブルの開放端部の各々に、既知の特性を持つショート、オープン、ロードの3つの校正用標準器を順に接続して、VNAによって特性が測定される。また、2つの同軸ケーブル同士を既知の特性を有するスルー標準器を介して接続して、VNAによって特性を測定される。そして、これら4つの標準器を用いて測定された特性を用いて、VNAから同軸ケーブル端面までの部分の誤差を計算する。尚、スルー標準器は、損失が0であるという特性を有するため、通過特性においては、伝播遅延のみが考慮される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、半導体基板上に形成された素子や回路等の高周波Sパラメータを測定する際には、パッケージ等に起因する寄生成分の影響を排除するために、オン・ウェハ測定が採用される。この場合、半導体基板上の被測定装置に同軸ケーブルを直接接続することはできないため、同軸ケーブルは、プローブを介して被測定装置に接続される。
【0006】
この場合、プローブにもまた誤差要因が含まれているため、VNAを校正するためには、プローブ自体の特性を更に取得する必要がある。プローブの特性を取得するためには、上記のSOLT法が適用され得る。この場合、既知の校正基準として、プローブのピン先端が直接接触可能な標準器基板が用いられる。標準器基板は、基板の表面上に形成された既知の特性を有するショート、オープン、ロード及びスルーの4種類の標準器を備えている。そして、プローブのピン先端が、ショート、オープン、ロードの各標準器基板に順に接触された状態で、VNAによってプローブまで含めた測定計誤差の特性が測定される。ただし、プローブのスルー特性を測定する方法は、プローブの形状に応じて異なる。
【0007】
被測定装置のSパラメータをオン・ウェハで測定する場合、通常は、対向して配置された一対のプローブによって行われる。
【0008】
図30は、対向する一対のプローブ同士を接続するために用いられる従来のスルー標準器基板を示す平面図である。図30に示されるスルー標準器基板800は、基板50と、基板の表面上に直線状に形成されたスルーライン801と、所定間隔を開けてスルーライン801を囲うように形成されたグランドパッド802とを備えている。このようなスルー標準器基板800を用いることによって、図30に示されるように、一対の高周波プローブ86a及び86bにおける対向するピン同士を接続することができる。
【0009】
また、被測定装置の特性をオン・ウェハ測定するために、例えばGSGSGプローブのような、互いに対向しない一対の信号ピンを備えるプローブが用いられる場合がある。
【0010】
図31は、GSGSGプローブに用いられる従来のスルー標準器基板を示す平面図である。図31に示されるスルー標準器基板900は、基板50と、基板50の表面において平面視ほぼU字形状に形成された信号ライン901と、信号ライン901を所定の間隔を開けて囲うように基板50の表面に形成されたグランド902とを備える。GSGSGプローブにおける一対の信号ピン同士を接続するために、信号ライン901は、直角に折れ曲がる複数の折れ線状に形成されている(例えば非特許文献1参照)。
【0011】
また、VNAを校正する別の方法として、TRL(Through−Reflect−Line)法と呼ばれる方法が知られている。TRL法に従ってVNAを校正するためには、既知の特性を有するスルー、反射、ラインの3つの標準器基板が必要である(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−251904号公報
【特許文献2】特開平6−88844号公報
【非特許文献1】アジレント・テクノロジー株式会社(Agilent Technologies)、「ENA RFネットワーク・アナライザとカスケード・マイクロテック社のプローブを用いたオン・ウェハ平衡デバイス測定」、2004年1月15日、プロダクト・ノート E5070/71−3、p.7−9
【非特許文献2】アジレント・テクノロジー株式会社(Agilent Technologies)、「TRL*校正を使用したインフィクスチャ・マイクロストリップ・デバイス測定」、プロダクト・ノート 8720−2、p.6−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように直角を構成する折れ線状に形成されたスルー標準器基板が使用された場合、電気信号は直線性を有しているため、信号ラインの直角の角部分(例えば、図31における903a及び903b)において信号の放射が大きくなる。放射によって信号の損失が大きくなるため、上記のような直角の角部分を有するスルー標準器基板は、スルー標準器基板として必要な特性を満たすことができない。特に、高周波信号の場合には、放射による損失の影響が顕著となる。
【0013】
したがって、このような信号の損失が大きなスルー標準器基板を用いて、VNAを正確に校正することは不可能である。
【0014】
また、TRL法において用いられるスルー標準器基板及びライン標準器基板についても、同様の問題が生じる。
【0015】
それ故に、本発明は、対向しない位置関係に配置されたプローブの信号ピン同士を接続するために用いられ、かつ、放射による信号の損失が少ないスルー標準器基板及びライン標準器基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明は、被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するスルー標準器基板であって、基板と、弓形に延びるように基板の表面に形成され、かつ、信号端子同士を接続するための信号ラインと、所定の第1の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、所定の第2の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える。
【0017】
このような構成によれば、スルー標準器基板は、角部分を有しないため、放射によって生じる信号の損失を抑制することが可能となる。
【0018】
第1の発明において、信号ラインは、円弧状に形成されるのがより好ましい。
【0019】
このような構成によれば、信号の損失がほとんど生じないため、より理想的な特性を有するスルー標準器基板を構成することが可能となる。
【0020】
また、第1の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、第1及び第2の間隔は、第1の間隔と第2の間隔との比が、第1の長さと第2の長さとの比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0021】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0022】
また、第1の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、信号ラインと第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、信号ラインと第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、第1及び第2の誘電率は、第1の誘電率と第2の誘電率との比が、第2の長さの二乗と第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0023】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の伝搬速度が変化することによって、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0024】
この場合、基板の表面の誘電率は、第2のグランドラインから第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されても良い。
【0025】
また、第1の発明において、第1のグランドラインと第2のグランドラインとを、信号ラインの半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えても良い。
【0026】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0027】
また、第1の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインの半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の内部に埋め込まれ、スルーホールの各々を接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0028】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0029】
また、第1の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインの半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の裏面に形成され、スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0030】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0031】
また、第1の発明において、基板は、半導体基板であり、信号ラインの半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のコンタクトと、基板の内部に埋め込まれ、コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0032】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0033】
また、基板は、誘電体基板であっても良いし、半導体基板であっても良い。
【0034】
また、第1の発明において、基板は、被測定装置が形成された半導体基板であっても良い。
【0035】
このような構成によれば、標準器基板と被測定装置とが同一の半導体基板上に配置されるため、測定装置の校正と、被測定装置についての特性の測定とを効率的に行うことが可能となる。
【0036】
第2の発明は、被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するスルー標準器基板であって、基板と、隣接する一対の線分によって構成される内角の全てが90°より大きな角度を有する折れ線状に延びるように、基板の表面に形成され、かつ、信号端子同士を接続するための信号ラインと、所定の第1の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、所定の第2の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える。
【0037】
このような構成によれば、スルー標準器基板の角部分の角度が大きくなるため、放射によって生じる信号の損失を抑制することが可能となる。
【0038】
この場合、信号ラインは、正八角形の一部の外郭線の形状に形成されるのがより好ましい。
【0039】
このような構成によれば、CADによるスルー標準器基板の設計工程や、スルー標準器基板を製造するためのマスク等の作成工程において、折れ線形状を容易に描くことができるため、設計や製造を容易に行うことが可能となる。また、設計や製造に要するコストを提言させることが可能となる。
【0040】
また、第2の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、第1及び第2の間隔は、第1の間隔と第2の間隔との比が、第1の長さと第2の長さとの比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0041】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0042】
また、第2の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、信号ラインと第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、信号ラインと第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、第1及び第2の誘電率は、第1の誘電率と第2の誘電率との比が、第2の長さの二乗と第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0043】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の伝搬速度が変化することによって、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0044】
この場合、基板の表面の誘電率は、第2のグランドラインから第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されても良い。
【0045】
また、第2の発明において、第1のグランドラインと第2のグランドラインとを、信号ラインの外接円の半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えても良い。
【0046】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0047】
また、第2の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインの半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の内部に埋め込まれ、スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0048】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0049】
また、第2の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインの半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の裏面に形成され、スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0050】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0051】
また、第2の発明において、基板は、半導体基板であり、信号ラインの外接円の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のコンタクトと、基板の内部に埋め込まれ、コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0052】
このような構成によれば、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とにおいて、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0053】
また、第2の発明において、基板は、誘電体基板であっても良いし、半導体基板であっても良い。
【0054】
また、第2の発明において、基板は、被測定装置が形成された半導体基板であっても良い。
【0055】
このような構成によれば、標準器基板と被測定装置とが同一の半導体基板上に配置されるため、測定装置の校正と、被測定装置についての特性の測定とを効率的に行うことが可能となる。
【0056】
第3の発明は、被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するライン標準器基板であって、基板と、弓なりに延びる曲線と曲線の両端部の各々に接続され、両端部における接線方向に延びる一対の直線とから構成される線分の形状を有するように、基板の表面に形成され、かつ、信号端子同士を接続するための信号ラインと、所定の第1の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、所定の第2の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える。
【0057】
このような構成によれば、ライン標準器は、角部分を有しないため、放射によって生じる信号の損失を抑制することが可能となる。
【0058】
この場合、信号ラインは、円弧と、円弧の両端部における一対の接線とから構成される線分の形状を有するように形成されるのがより好ましい。
【0059】
このような構成によれば、信号の損失がほとんど生じないため、より理想的な特性を有するライン標準器基板を構成することが可能となる。
【0060】
また、第3の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、第1及び第2の間隔は、第1の間隔と第2の間隔との比が、第1の長さと第2の長さとの比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0061】
このような構成によれば、ライン標準器の円弧形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0062】
また、第3の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、信号ラインと第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、信号ラインと第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、第1及び第2の誘電率は、第1の誘電率と第2の誘電率との比が、第2の長さの二乗と第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0063】
このような構成によれば、ライン標準器の円弧形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とで信号の伝搬速度が変化することによって、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0064】
この場合、基板の表面の誘電率は、第2のグランドラインから第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されても良い。
【0065】
また、第3の発明において、第1のグランドラインと第2のグランドラインとを、信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えても良い。
【0066】
このような構成によれば、ライン標準器の円弧形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0067】
また、第3の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の内部に埋め込まれ、スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0068】
このような構成によれば、ライン標準器の円弧形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0069】
また、第3の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の裏面に形成され、スルーホールの各々を接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0070】
このような構成によれば、ライン標準器の円弧形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0071】
また、第3の発明において、基板は、半導体基板であり、信号ラインにおける円弧形状の部分の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に接続される少なくとも一対のコンタクトと、基板の内部に埋め込まれ、コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0072】
このような構成によれば、ライン標準器の円弧形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0073】
また、第3の発明において、基板は、誘電体基板であっても良いし、半導体基板であっても良い。
【0074】
また、第3の発明において、基板は、被測定装置が形成された半導体基板であっても良い。
【0075】
このような構成によれば、標準器基板と被測定装置とが同一の半導体基板上に配置されるため、測定装置の校正と、被測定装置についての特性の測定とを効率的に行うことが可能となる。
【0076】
第4の発明は、被測定装置の特性を測定するためのプローブに設けられた複数の端子のうち、互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するライン標準器基板であって、基板と、隣接する一対の線分によって構成される内角の全てが90°より大きな角度を有する折れ線と、折れ線の両端部の各々に接続され、外郭線の延長方向に延びる一対の直線とから構成される線分の形状を有するように、基板の表面に形成され、かつ、信号端子同士を接続するための信号ラインと、所定の第1の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、信号グランド端子同士を接続するための第1のグランドラインと、所定の第2の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿って延びるように、基板の表面に形成され、かつ、信号グランド端子同士を接続するための第2のグランドラインとを備える。
【0077】
このような構成によれば、ライン標準器基板の角部分の角度が大きくなるため、放射によって生じる信号の損失を抑制することが可能となる。
【0078】
また、第4の発明において、信号ラインは、正八角形の一部の外郭線と、外郭線の両端部に接続され、外郭線の延長方向に延びる一対の直線とを含む線分の形状に形成されるのがより好ましい。
【0079】
このような構成によれば、CADによるライン標準器基板の設計工程や、ライン標準器基板を製造するためのマスク等の作成工程において、折れ線形状を容易に描くことができるため、設計や製造を容易に行うことが可能となる。また、設計や製造に要するコストを提言させることが可能となる。
【0080】
また、第4の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとすると、第1及び第2の間隔は、第1の間隔と第2の間隔との比が、第1の長さと第2の長さとの比に等しくなるように設定されるのがより好ましい。
【0081】
このような構成によれば、ライン標準器の正八角形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0082】
また、第4の発明において、信号ラインの外方端縁の長さを第1の長さとし、信号ラインの内方端縁の長さを第2の長さとし、信号ラインと第1のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第1の誘電率とし、信号ラインと第2のグランドラインとの間から露出する基板の部分の誘電率を第2の誘電率とすると、第1及び第2の誘電率は、第1の誘電率と第2の誘電率との比が、第2の長さの二乗と第1の長さの二乗との比に等しくなるように設定されても良い。
【0083】
このような構成によれば、ライン標準器の正八角形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側とで信号の伝搬速度が変化することによって、信号の位相が揃うため、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。
【0084】
この場合、基板の表面の誘電率は、第2のグランドラインから第1のグランドラインへと向かう方向において、段階的に小さくなるように設定されても良い。
【0085】
また、第4の発明において、第1のグランドラインと第2のグランドラインとを、信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に掛け渡すように電気的に接続し、かつ、信号ラインとの間が絶縁される少なくとも1つのエアブリッジを更に備えても良い。
【0086】
このような構成によれば、ライン標準器の正八角形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0087】
また、第4の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の内部に埋め込まれ、スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0088】
このような構成によれば、ライン標準器の正八角形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0089】
また、第4の発明において、基板は、誘電体基板であり、信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のスルーホールと、基板の裏面に形成され、スルーホールの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0090】
このような構成によれば、ライン標準器の正八角形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0091】
また、第4の発明において、基板は、半導体基板であり、信号ラインにおける正八角形状部分の外接円の半径方向に整列し、第1及び第2のグランドラインの各々に電気的に接続される少なくとも一対のコンタクトと、基板の内部に埋め込まれ、コンタクトの各々を電気的に接続する少なくとも1本の導電性の配線とを更に備えても良い。
【0092】
このような構成によれば、ライン標準器の正八角形状の部分において、信号ラインの外方端縁側と内方端縁側との信号の位相が揃うため、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。
【0093】
また、第4の発明において、基板は、誘電体基板であっても良いし、半導体基板であっても良い。
【0094】
また、第4の発明において、基板は、被測定装置が形成された半導体基板であっても良い。
【0095】
このような構成によれば、標準器基板と被測定装置とが同一の半導体基板上に配置されるため、測定装置の校正と、被測定装置についての特性の測定とを効率的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0096】
第1の発明によれば、対向しない位置関係に配置されたプローブの信号ピン同士を接続するために用いられ、かつ、放射による信号の損失が殆どないスルー標準器基板を構成することが可能となる。
【0097】
また、第2の発明によれば、対向しない位置関係に配置されたプローブの信号ピン同士を接続するために用いられ、かつ、放射による信号の損失が少ないスルー標準器基板を構成することが可能となる。
【0098】
更に、第3の発明によれば、対向しない位置関係に配置されたプローブの信号ピン同士を接続するために用いられ、かつ、放射による信号の損失が殆どないライン標準器基板を構成することが可能となる。
【0099】
更に、第4の発明によれば、対向しない位置関係に配置されたプローブの信号ピン同士を接続するために用いられ、かつ、放射による信号の損失が少ないライン標準器基板を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
(第1の実施形態)
図1は、1つのプローブを備えるSパラメータ測定装置の構成例を示す図である。図1に示されるSパラメータ測定装置80は、2以上の測定ポート83a及び83bを有するベクトルネットワークアナライザ(以下「VNA」という)82と、測定ポート83a及び83bの各々に接続された同軸ケーブル84a及び84bと、同軸ケーブル84a及び84bが接続された高周波プローブ85とを備える。VNA82は、測定されたデータを記憶するメモリ87と、メモリ87に記憶されたデータを用いて特性を計算する計算機88とを含んでいる。
【0101】
高周波プローブ85は、被測定装置に直接接触可能な複数のピンを有している。高周波プローブ85のピンの配置は、信号ピン(S)が一対のグランドピン(G)によって挟まれたコプレーナ線路構造を有していることが望ましい。例えば、高周波プローブ85の2本の信号ピン(S)と3本のグランドピン(G)とは、GSGSG配列で配置されている。尚、高周波プローブ85の代わりに、被測定装置の種類等に応じて、信号ピンを3本以上有する高周波プローブが使用されても良い。
【0102】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るスルー標準器基板の平面図である。図2に示されるスルー標準器基板10は、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない一対の信号ピン401及び402、グランドピン411及び413を接続するために用いられる。
【0103】
尚、以下において、対向しない一対の信号ピンとは、互いに対向しない位置関係に配置された一対のプローブの各々が備える信号ピン、または、1つのプローブが備える2以上の信号ピンのことをいう。また、対向しない一対のグランドピンとは、対向しない一対の信号ピンと同様に配置されるグランドピンのことをいう。
【0104】
図2に示されるように、スルー標準器基板10は、基板50と、信号ライン101と、第1のグランドライン102と、第2のグランドライン103とを備える。
【0105】
基板50は、テフロン(登録商標)、ガラスエポキシ、PPO(ポリフェニレンオキシド)等の誘電体材料によって形成された誘電体基板、または、GaAsやSi等の半導体材料よりなる半導体基板である。
【0106】
信号ライン101は、弓形に延びるように基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン101は、所定の曲率を有する半円の円弧形状に形成されている。
【0107】
第1のグランドライン102は、所定の第1の間隔を有して信号ライン101の外方端縁104に沿うように、基板50の表面に形成されている。また、第2のグランドライン103は、所定の第2の間隔を有して、信号ライン101の内方端縁105に沿うように、基板50の表面に形成されている。
【0108】
スルー標準器基板10の使用時には、図2に示されるように、2本の信号ピン401及び402が信号ライン101の両端部の各々に接触し、グランドピン411及び413の各々が第1のグランドライン102の両端部の各々に接触し、グランドピン412が第2のグランドライン103に接触するように、高周波プローブ85をスルー標準器基板10に接続する。
【0109】
高周波信号は、信号ラインとグランドラインとの結合によって伝播される。信号ラインが直角の角部分を有する場合、当該角部分から信号が放射されることによって信号の損失が発生するので、スルー標準器基板の特性は、理想特性と比べて劣化する。しかしながら、図2に示されるようなスルー標準器基板10は、直角の角部分を含まないため、信号の放射が抑制される。
【0110】
より具体的に、信号の損失量についてのシミュレーションによれば、半円形状のコプレーナ線路を有するスルー標準器基板10における信号の損失は、図31に示されるような四角形状のコプレーナ線路を有するスルー標準器と比べて、約0.4dB低減されることが確認されている。0.4dBの差は、例えばフィルタのように低損失の特性を有する被測定装置の特性を測定する場合には、大きな誤差となる値である。
【0111】
このように、本実施形態によれば、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない2本の信号ピン401と402を接続するための理想的なスルー標準器基板10が得られる。更に、本実施形態に係るスルー標準器基板10によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、対向しない位置に配置される一対の信号ピン401及び402を備える高周波プローブ85によって、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0112】
(第1の実施形態の変形例)
図3は、本発明の第1の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板の平面図である。図3に示されるスルー標準器基板11は、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない一対の信号ピン401及び402、グランドピン411及び413を接続するために用いられる。
【0113】
図3(a)に示されるように、スルー標準器基板11は、基板50と、信号ライン111と、第1のグランドライン112と、第2のグランドライン113とを備える。尚、基板50は、上記の第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
信号ライン111は、図3(b)に示されるように、隣接する一対の線分によって形成される全ての内角αが、90°より大きな角度を有する折れ線状に延びるように、基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン111は、正八角形の半分の外郭線の形状に形成されており、内角αは、135°である。
【0115】
第1のグランドライン112は、所定の第1の間隔を空けて信号ライン111の外方端縁114に沿うように、基板50の表面に形成されている。また、第2のグランドライン113は、所定の第2の間隔を空けて信号ライン111の内方端縁115に沿うように、基板50の表面に形成されている。
【0116】
スルー標準器基板11の使用時には、図3(a)に示されるように、2本の信号ピン401及び402が信号ライン111の両端部の各々に接触し、グランドピン411及び413の各々が第1のグランドライン112の両端部の各々に接触し、グランドピン412が第2のグランドライン113に接触するように、高周波プローブ85をスルー標準器基板11に接続する。
【0117】
高周波信号は信号ラインとグランドラインとの結合によって伝播される。信号ラインが折れ線状に形成されている場合、折れ線の角部分で信号の放射によって、信号の損失が発生する。信号の損失量は、内角αが小さくなるにつれて大きくなる。しかしながら、内角αが90°より大きな角度に設定されていれば、内角αが90°の場合に比べて、信号の損失を抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態のように、隣接する一対の線分によって構成される全ての内角αが135°となるように信号ライン111が形成される場合には、例えばCADを用いたスルー標準器基板11の設計工程や、半導体製造プロセスにおいてスルー標準器基板11を形成するためにマスク等を作成する工程において、折れ線を容易に描くことが可能となる。したがって、スルー標準器基板11の設計及び作成を容易に行うことが可能となる。また、スルー標準器基板11の設計及び作成のために必要なコストを低減させることが可能となる。
【0119】
以上のように、本変形例によれば、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない2本の信号ピン401及び402を接続するための、信号の損失が少ないスルー標準器基板11が得られる。更に、本変形例に係るスルー標準器基板によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正が可能となる。この結果、対向しない一対の信号ピン401及び402を用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0120】
(第2の実施形態)
図4は、一対のプローブを備えるSパラメータ測定装置の構成例を示す図である。図4に示されるSパラメータ測定装置81は、2以上の測定ポート83a及び83bを有するVNA82と、測定ポート83a及び83bの各々に接続された同軸ケーブル84a及び84bと、同軸ケーブル84a及び84bの各々に接続された高周波プローブ86a及び86bとを備える。
【0121】
高周波プローブ86aは、被測定装置に直接接触可能な複数のピンを有している。高周波プローブ86aのピンの配置は、信号ピン(S)が一対のグランドピン(G)によって挟まれたコプレーナ線路構造を有していることが望ましい。例えば、高周波プローブ86aは、GSG配列に配置された1本の信号ピン(S)と2本のグランドピン(G)とを備えている。また、他方の高周波プローブ86bは、高周波プローブ86aと同様のものである。尚、高周波プローブ86a及び86bの一方または両方の代わりに、被測定装置の種類等に応じて、信号ピンを3本以上有する高周波プローブが使用されても良い。
【0122】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るスルー標準器基板の平面図である。図5に示されるスルー標準器基板12は、互いに対向しない一対の高周波プローブ86a及び86bを接続するために用いられる。
【0123】
図5に示されるように、スルー標準器基板12は、基板50と、信号ライン121と、第1のグランドライン122と、第2のグランドライン123とを備える。尚、基板50は、上記の第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
信号ライン121は、弓形に延びるように基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン121は、円の4分の1の弧長を有する円弧形状に形成されている。
【0125】
第1のグランドライン122は、所定の第1の間隔を空けて信号ライン121の外方端縁124に沿うように、基板50の表面に形成されている。また、第2のグランドライン123は、所定の第2の間隔を空けて信号ライン121の内方端縁125に沿うように、基板50の表面に形成されている。
【0126】
スルー標準器基板12の使用時には、図5に示されるように、高周波プローブ86aは、信号ピン403が信号ライン121の端部に接触し、一対のグランドピン414及び415が、それぞれ第1のグランドライン122及び第2のグランドライン123に接触するように、スルー標準器基板12に接続される。他方の高周波プローブ86bも同様に、信号ピン404が信号ライン121の端部に接触し、一対のグランドピン416及び417が、それぞれ第1のグランドライン122及び第2のグランドライン123に接触するように、スルー標準器基板12に接続される。
【0127】
高周波信号は、信号ラインとグランドラインとの結合によって伝播される。信号ラインが直角の角部分を有する場合、当該角部分から信号が放射されることによって信号の損失が発生するので、スルー標準器基板の特性は、理想特性と比べて劣化する。しかしながら、図5に示されるようなスルー標準器基板12において円弧状に延びるコプレーナ線路は、直角の角部分を含まないため、信号の放射が抑制される。
【0128】
このように、本実施形態によれば、対向する一対の高周波プローブ86a及び86bを接続するための理想的なスルー標準器基板12が得られる。更に、本実施形態に係るスルー標準器基板12によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、対向しない位置に配置される一対の高周波プローブ86a及び86bによって、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0129】
(第2の実施形態の変例)
図6は、本発明の第2の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板の平面図である。図6に示されるスルー標準器基板13は、互いに対向しない一対の高周波プローブ86a及び86bを接続するために用いられる。
【0130】
図6に示されるように、スルー標準器基板13は、基板50と、信号ライン131と、第1のグランドライン132と、第2のグランドライン133とを備える。尚、基板50は、上記の第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
信号ライン131は、に示されるように、隣接する一対の線分によって形成される全ての内角αが、90°より大きな角度を有する折れ線状に延びるように、基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン131は、正八角形の外郭線のほぼ4分の1の形状に形成されており、内角αは、135°である。
【0132】
スルー標準器基板13の使用時には、高周波プローブ86aは、信号ピン403が信号ライン121の端部に接触し、一対のグランドピン414及び415が、それぞれ第1のグランドライン122及び第2のグランドライン123に接触するように、スルー標準器基板13に接続される。他方の高周波プローブ86bも同様に、スルー標準器基板13に接続される。
【0133】
第1のグランドライン132は、所定の第1の間隔を空けて信号ライン131の外方端縁134に沿うように、基板50の表面に形成されている。また、第2のグランドライン133は、所定の第2の間隔を空けて信号ライン131の内方端縁135に沿うように、基板50の表面に形成されている。
【0134】
高周波信号は信号ラインとグランドラインの結合によって伝播される。信号ラインが折れ線状に形成されている場合、折れ線の角部分で信号の放射によって、信号の損失が発生する。内角αが小さくなるにつれて、信号の損失量は、大きくなる。しかしながら、内角αを90°より大きな角度に設定されていれば、内角αが90°の場合に比べて、信号の損失を抑制することができる。
【0135】
また、本実施形態のように、隣接する一対の線分によって構成される全ての内角αが135°である折れ線状を有するように信号ライン131が形成されていれば、例えばCADを用いたスルー標準器基板11の設計工程や、半導体製造プロセスにおいてスルー標準器基板11を形成するためにマスク等を作成する工程において、折れ線を容易に描くことが可能となる。したがって、スルー標準器基板11の設計及び作成を容易に行うことが可能となる。また、スルー標準器基板11の設計及び作成のために必要なコストを低減させることが可能となる。
【0136】
以上のように、本変形例によれば、対向しない一対の高周波プローブ86a及び86bを接続するための、信号の損失が少ないスルー標準器基板13が得られる。更に、本変形例に係るスルー標準器基板によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正が可能となる。この結果、対向しない一対の高周波プローブ86a及び86bを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0137】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係るスルー標準器基板の平面図である。図7に示されるスルー標準器基板14の基本的な構成は、第1の実施形態に係るものと同様であるので、以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0138】
図7に示されるスルー標準器基板14は、信号ライン141と第1のグランドライン142との間の第1の間隔が、信号ライン141と第2のグランドライン143との間の第2の間隔より大きく設定されている。
【0139】
図8は、図7の”X”部分の拡大図である。
【0140】
電波は、信号ラインとGNDラインの結合によって伝送される。電波の速度をVpとし、光速をCとし、誘電率をεとし、透磁率をμとすると、電波の伝送速度は、次の数1のように表される。
【数1】


【0141】
数1に示されるように、電波の速度は、線路の内側と外側とで一定である。直線状に形成されたスルー標準器基板においては、グランドラインの長さは等しいので、信号の伝播方向に対する信号ラインの端面全体で信号の位相が揃うことになる。したがって、直線状に形成されたスルー標準器基板において、信号ラインでの伝送特性は劣化しない。
【0142】
しかしながら、本実施形態のように、信号ライン141の内方端縁145の長さと、信号ライン141の外方端縁144の長さとが異なる場合においては、信号ライン141の出力端面における内方端縁145側と外方端縁144側とで、信号の位相が一致しないため、信号の伝送精度は、直線状の信号ラインと比べて劣化する。
【0143】
そこで、信号ライン141の外方端縁144の長さをLとし、信号ライン141の内方端縁145の長さをlとし、信号ライン141と第1のグランドライン142との間の第1の間隔距離をdとし、信号ライン141と第2のグランドライン143との間の第2の間隔をd’とする。本実施形態に係るスルー標準器基板14においては、第1の間隔d及び第2の間隔d’は、第1の間隔dと第2の間隔d’との比が、外方端縁144の長さLと内方端縁145の長さlとの比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の間隔d’は、第1の間隔dと、内方端縁145の長さlと、外方端縁144の長さLとを用いて次の数2のように表される。
【数2】


【0144】
このようなスルー標準器基板14においては、信号ライン141の内方端縁145側と外方端縁144側とで信号の位相が揃うため、信号の伝送特性が改善される。この結果、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。更に、本実施形態に係るスルー標準器基板14によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0145】
(第3の実施形態の変形例)
図9は、本発明の第3の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板の平面図である。図9に示されるスルー標準器基板15の基本的な構成は、第1の実施形態の変形例に係るものと同様であるので、以下では、第1の実施形態の変形例との相違点を中心に説明する。
【0146】
図9に示されるスルー標準器基板15は、信号ライン151と第1のグランドライン152との間の第1の間隔が、信号ライン151と第2のグランドライン153との間の第2の間隔より大きく設定されている。
【0147】
図10は、図9の”Y”部分の拡大図である。
【0148】
電波は、信号ラインとGNDラインの結合によって伝送される。電波の速度をVpとし、光速をCとし、誘電率をεとし、透磁率をμとすると、電波の伝送速度は、次の数3のように表される。
【数3】


【0149】
数3に示されるように、電波の速度は、線路の内側と外側とで一定である。直線状に形成されたスルー標準器基板においては、グランドラインの長さは等しいので、信号の伝播方向に対する信号ラインの端面全体で信号の位相が揃うことになる。したがって、直線状に形成されたスルー標準器基板において、信号ラインでの伝送特性は劣化しない。
【0150】
しかしながら、本実施形態のように、信号ライン151の内方端縁155の長さと、信号ライン151の外方端縁154の長さとが異なる場合においては、信号ライン151の出力端面における内方端縁155側と外方端縁154側とで、信号の位相が一致しないため、信号の伝送精度は、直線状の信号ラインと比べて劣化する。
【0151】
そこで、信号ライン151の外方端縁154の長さをLとし、信号ライン151の内方端縁155の長さをlとし、信号ライン151と第1のグランドライン152との間の第1の間隔距離をdとし、信号ライン151と第2のグランドライン153との間の第2の間隔をd’とする。本実施形態に係るスルー標準器基板15においては、第1の間隔d及び第2の間隔d’は、第1の間隔dと第2の間隔d’との比が、外方端縁144の長さLと内方端縁155の長さlとの比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の間隔d’は、第1の間隔dと、内方端縁155の長さlと、外方端縁154の長さLとを用いて次の数4のように表される。
【数4】


【0152】
このようなスルー標準器基板15においては、信号ライン151の内方端縁155側と外方端縁154側とで信号の位相が揃うため、信号の伝送特性が改善される。この結果、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板が得られる。更に、本実施形態に係るスルー標準器基板15によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0153】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図である。尚、図11(b)は、図11(a)に示されるXIb−XIbラインの端面図である。
【0154】
本実施形態に係るスルー標準器基板11は、所定の第1の誘電率を有する誘電体基板60を備えている。誘電体基板60は、例えば下記の表1に示されるテフロン(登録商標)、アルミナ、PPO(ポリフェニレンオキシド)等の誘電体材料によって形成される。尚、誘電体基板60を形成するために用いられる誘電体材料は、その誘電率が2以上であれば、表1に示されない他の材料でも良い。一般に、材料の誘電率が大きくなるにつれて、基板を形成しやすくなる。
【表1】


【0155】
また、図11(b)に示されるように、信号ライン161と第2のグランドライン163との間から露出する基板の部分には、第1の誘電率よりも大きな第2の誘電率を有する誘電体61が形成されている。
【0156】
ここで、第1の誘電率をεoutとし、第2の誘電率をεinとし、信号ライン161の外方端縁164の長さをLとし、信号ライン161の内方端縁165の長さをlとする。本実施形態においては、第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと第2の誘電率εinとの比が、信号ライン161の内方端縁の長さ二乗l2と、外方端縁の長さの二乗L2との比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと、長さL及びlとを用いて、次の数5のように表される。
【数5】


【0157】
第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinが、上記の数5の関係を満たすように設定された場合、信号ライン161における内方端縁165側を通過する電波の伝播速度は、外方端縁164側を通過する電波の伝播速度より遅くなる。一方、信号ライン161の内方端縁165の長さlは、外方端縁164の長さLより短い。
【0158】
このようなスルー標準器基板16においては、信号ライン161の端面における内方端縁165側の部分と、外方端縁164側の部分とで電波の位相が揃うため、良好な信号伝送特性が得られる。したがって、本実施形態によれば、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板16が得られる。更に、本実施形態に係るスルー標準器基板16によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0159】
尚、図11において、誘電体基板60の表面の誘電率は、第2のグランドライン163から第1のグランドラインへと向かって、段階的に小さくなるよう設定されていても良い。この場合、誘電体基板60は、高誘電率材料と低誘電率材料との組成比を変化させることによって形成される。
【0160】
(第4の実施形態の変形例)
図12は、本発明の第4の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板を示す図である。尚、図12(b)は、図12(a)に示されるXIIb−XIIbラインの端面図である。
【0161】
本変形例に係るスルー標準器基板17は、例えば下記の表2に示されるGaAsやSiのような半導体材料によって形成された半導体基板70を備えている。スルー標準器基板17は、半導体の多層配線プロセスによって形成され、多層配線層同士の間は、所定の誘電率を有する絶縁膜によって絶縁されている。
【表2】


【0162】
半導体基板70の表面には、図12(b)に示されるように、所定の第1の誘電率を有する絶縁膜72が形成されている。更に、信号ライン171と第2のグランドライン173との間から露出する部分には、第1の誘電率よりも大きな第2の誘電率を有する絶縁膜71が形成されている。
【0163】
ここで、第1の誘電率をεoutとし、第2の誘電率をεinとし、信号ライン171の外方端縁の長さをLとし、信号ライン171の内方端縁の長さをlとする。本実施形態においては、第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと第2の誘電率εinとの比が、信号ライン171の内方端縁175の長さの二乗l2と、外方端縁164の長さの二乗L2との比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと、長さL及びlとを用いて、次の数6のように表される。
【数6】


【0164】
第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinが、数6の関係を満たすように設定された場合、信号ライン171における内方端縁175側を通過する電波の伝播速度は、外方端縁174側を通過する電波の伝播速度より遅くなる。一方、信号ライン171の内方端縁175の長さlは、外方端縁174の長さLより短い。
【0165】
このようなスルー標準器基板17においては、信号ライン171の端面における内方端縁175側の部分と、外方端縁174側の部分とで電波の位相が揃うため、良好な信号伝送特性が得られる。したがって、本実施形態によれば、より正確なスルー特性を有するスルー標準器基板17が得られる。更に、本実施形態に係るスルー標準器基板17によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0166】
尚、図12において、半導体基板70の表面の誘電率は、第2のグランドライン173から第1のグランドライン172へと向かって、段階的に小さくなるよう設定されていても良い。たとえば、Siよりなる半導体基板70の表面に、絶縁膜を成長させることによって形成されるSiGeのような化合物半導体においては、絶縁膜71及び72は、Geの組成比を変化させることによって形成される。
【0167】
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図である。尚、図13(b)は、図13(a)に示されるXIIIb−XIIIbラインの端面図である。
【0168】
本実施形態に係るスルー標準器基板18は、第1の実施形態に係るスルー標準器基板18に加えて、エアブリッジ500a〜500cを更に備えている。
【0169】
エアブリッジ500bは、導電性を有する材料によって、図13に示されるように、第1のグランドライン182と第2のグランドライン183とを、円弧形状を有する信号ライン181の半径方向に掛け渡すように電気的に接続する。そして、エアブリッジ500bと信号ライン181との間は絶縁されている。エアブリッジ500a及び500cもまた、エアブリッジ500bと同様に形成されている。
【0170】
尚、本実施形態において、エアブリッジ500a〜500cと信号ライン181との間の空間は、誘電体を充填することによって絶縁されても良い。また、エアブリッジの数は、1以上であれば良い。
【0171】
このようなスルー標準器基板18によれば、第1のグランドライン182及び第2のグランドライン183と、信号ライン181との結合によって伝送される高周波信号の位相は、エアブリッジ500a〜500cを介して、内方端縁185側と外方端縁184側とで一致する。これにより、信号の信号の伝送特性が改善されるため、理想的なスルー特性が得られる。
【0172】
(第6の実施形態)
図14は、本発明の第6の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図である。尚、図14(b)は、図14(a)に示されるXIVb−XIVbラインの端面図である。
【0173】
本実施形態に係るスルー標準器基板19は、例えばテフロン(登録商標)、ガラエポ、PPO(ポリフェニレンオキサイド)のような誘電体基板60を備えている。誘電体基板60には、第1のグランドライン192と第2のグランドライン193とに電気的に接続され、信号ライン191の半径方向に整列する一対のスルーホール601a及び601bが、誘電体基板60の表面から内部へと延びるように形成されている。また、誘電体基板60の内部には、例えばアルミニウムや銅のような導電性材料によって形成され、スルーホール601a及び601bを電気的に接続する配線600が埋め込まれている。尚、配線及び一対のスルーホールは、複数設けられていても良い。
【0174】
このようなスルー標準器基板19によれば、第1のグランドライン192及び第2のグランドライン193と、信号ライン191との結合によって伝送される高周波信号の位相が、配線600とスルーホール601a及び601bとを介して、信号ラインの内方端縁195側と外方端縁194側とで一致する。これにより、信号の信号の伝送特性が改善されるため、理想的なスルー特性が得られる。
【0175】
(第7の実施形態)
図15は、本発明の第7の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図である。尚、図15(b)は、図15(a)に示されるXVb−XVbラインの端面図である。
【0176】
本実施形態に係るスルー標準器基板20は、例えばGaAsやSiのような半導体材料によって形成される半導体基板70を備えている。スルー標準器基板20は、例えば、半導体の多層配線製造プロセスによって形成される。半導体基板70には、第1のグランドライン202と第2のグランドライン203とに電気的に接続され、信号ライン201の半径方向に整列する一対の層間コンタクト701a及び701bが、半導体基板70の表面から内部へと延びるように形成されている。また、半導体基板70の内部には、例えばアルミニウムや銅のような導電性材料によって形成され、層間コンタクト701a及び701bを電気的に接続する配線700が埋め込まれている。尚、配線及び一対の層間コンタクトは、複数設けられていても良い。
【0177】
このようなスルー標準器基板20によれば、第1のグランドライン202及び第2のグランドライン203と、信号ライン201との結合によって伝送される高周波信号の位相が、配線700と層間コンタクト701a及び701bとによって、信号ライン201の内方端縁205側と外方端縁204側とで一致する。これにより、信号の伝送特性が改善されるため、理想的なスルー特性が得られる。
【0178】
図16は、SOLT法によるSパラメータ測定装置の校正と、被測定装置のSパラメータを測定する方法とを示すフローチャートである。校正に用いられるスルー標準器基板は、プローブの一対の信号ピンの位置関係、すなわち、一対の信号ピンが対向するか否かに基づいて決定される。以下、図16及び図1を参照しながら、操作手順について説明する。
【0179】
まず、操作者は、高周波プローブ85の各信号ピンに、既知の特性を有するオープン、ショート及びロードの3つの標準器基板を接触させる(ステップS101)。次に、操作者は、VNA82を用いて、オープン、ショート及びロードの特性を測定する(ステップS102)。操作者は、測定結果をVNA82のメモリ87に記憶させる。尚、上記のステップS101〜S103は、高周波プローブ85の信号ピンの各々について、順に行われればよい。また、上記のステップS101〜S103において、オープン標準器基板は、必ずしも使用されなくても良い。この場合、操作者は、空気中において高周波プローブ85のピンを他の部分に接続させることなく測定した値を、オープン標準器基板の測定結果とすれば良い。
【0180】
次に、操作者は、高周波プローブ85の一対の信号ピンが対向するか否かを判断する(ステップS104)。高周波プローブ85の一対の信号ピン同士が対向しない場合には(ステップS104でNO)、操作者は、信号ピンの配置に応じて、上記の各実施形態の何れかに係るスルー標準器基板の何れかを選択する(ステップS105)。一方、高周波プローブ85の一対の信号ピン同士が対向する場合には(ステップS104でYES)、操作者は、例えば図30に示されるような直線状のスルー標準器基板を選択する(ステップS106)。次に、操作者は、選択されたスルー標準器基板の両端部に、プローブを接続する(ステップS107)。次に、操作者は、VNA82を用いて、高周波プローブ85のスルー特性を測定する(ステップS108)。操作者は、測定結果を、VNA82のメモリ87に記憶させる(ステップS109)。
【0181】
尚、ショート、オープン及びロードの3つの標準器基板を接続して特性を測定し、その測定結果をメモリ87に記憶させるステップと、スルー標準器基板を接続して特性を測定し、その測定結果をメモリ87に記憶させるステップとは、任意の順序で実行されても良い。
【0182】
次に、上記の手順によって測定され、メモリ87に記憶されているショート、オープン、ロード及びスルーについての測定結果を用いて、操作者は、VNA82に内蔵された計算機88に、理想ポートから高周波プローブ85の先端までの測定系のシステム誤差を計算させる(ステップS110)。操作者は、計算されたシステム誤差をVNA82のメモリ87に記憶させる(ステップS111)。
【0183】
操作者は、以上のような手順に従って操作することによって、高周波プローブ85の特性を取得することができるので、SOLT法によるVNA82の校正が完了する。
【0184】
次に、操作者は、校正が完了したVNA82を用いて、被測定装置の特性を測定する。
【0185】
まず、操作者は、高周波プローブ85の信号ピン及びグランドピンの各々を被測定装置のポートに接続させる(ステップS112)。次に、操作者は、VNA82を用いて被測定装置の特性を測定する(ステップS113)。
【0186】
次に、操作者は、VNA82に内蔵されている計算機88に、被測定装置についての測定結果から、VNA82のメモリ87に記憶されているシステム誤差を差し引かせる(ステップS114)。そして、操作者は、計算機88がシステム誤差を差し引くことによって計算した計算結果を出力させる(ステップS115)。これにより、操作者は、被測定装置のみの特性データを取得することができる。
【0187】
未測定の被測定装置がある場合には(ステップS116でYES)、操作者は、上記のステップS112〜ステップS116の操作を繰り返して、未測定の被測定装置の特性を測定する。未測定の被測定装置がない場合には(ステップS116でNO)、操作者は、操作を終了する。
【0188】
以上のような操作手順によれば、VNA82を校正するためにSOLT法を適用する際に、プローブの信号ピン及びグランドピンの配置に対応して適切なスルー標準機が選択される。そして、プローブの特性が高精度で測定されるため、VNA82をより正確に校正することが可能となる。よって、校正された被測定装置によって、Sパラメータを正確に測定することが可能となる。
【0189】
(第8の実施形態)
図17は、本発明の第8の実施形態に係るライン標準器基板の平面図である。図17に示されるライン標準器基板21は、基板50と、信号ライン101と、第1のグランドライン102と、第2のグランドライン103とを備える。
【0190】
基板50は、テフロン(登録商標)、ガラスエポキシ、PPO(ポリフェニレンオキシド)等の誘電体材料によって形成された誘電体基板、または、GaAsやSi等の半導体材料よりなる半導体基板である。
【0191】
信号ライン101は、弓形に延びる曲線と、当該曲線の両端部における接線方向に延びる一対の直線とから構成される線分(図17の破線で示される線分)の形状を有するように、基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン101は、所定の曲率を有する半円の円弧と、当該円弧の両端部における接線方向に延びる一対の平行線とから構成されるU字形の線分の形状に形成されている。
【0192】
第1のグランドライン102は、所定の第1の間隔を有して信号ライン101の外方端縁104に沿うように、基板50の表面に形成されている。また、第2のグランドライン103は、所定の第2の間隔を有して信号ライン101の内方端縁105に沿うように、基板50の表面に形成されている。
【0193】
また、ライン標準器基板21は、図17の破線の囲いによって示されるように、プローブのピンが接続されるパッド部分1000と、信号伝送に用いられるライン部分1001と、パッド部分1000とライン部分1001とに接続される配線部分1002とに分けられる。この場合において、配線部分1002の特性インピーダンスは、ライン部分1001の特性インピーダンスと一致するように設定されている。
【0194】
このように構成されたライン標準器基板21においては、ライン部分1001と配線部分1002との接続部分において、反射による高周波信号の損失が発生しない。したがって、本実施形態によれば、図2に示されるスルー標準器基板10と同一の特性インピーダンスを有し、図2に示されるスルー標準器基板10とは異なる線路長を有し、かつ、信号の損失がないライン標準器基板21を構成することが可能となる。
【0195】
図18は、図17に示したライン標準器基板の使用状態を示す平面図である。ライン標準器基板21の使用時には、2本の信号ピン401及び402が信号ライン101の両端部の各々に接触し、グランドピン411及び413の各々が第1のグランドライン102の両端部の各々に接触し、グランドピン412が第2のグランドライン103に接触するように、高周波プローブ85をライン標準器基板21に接続する。
【0196】
高周波信号は、信号ラインとグランドラインとの結合によって伝播される。信号ラインが直角の角部分を有する場合、当該角部分から信号が放射されることによって信号の損失が発生するので、ライン標準器基板の特性は、理想特性と比べて劣化する。しかしながら、図18に示されるライン標準器基板21は、直角の角部分を含まないため、信号の放射が抑制される。
【0197】
このように、本実施形態によれば、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない2本の信号ピン401と402を接続するための理想的なライン標準器基板21が得られる。更に、本実施形態に係るライン標準器基板21によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、対向しない位置に配置される一対の信号ピン401及び402を備える高周波プローブ85によって、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0198】
また、図2に示されるスルー標準器基板10に対応して、ライン標準器基板21における配線部分1002の長さLRが相違する複数のライン標準器が用意されても良い。例えば、中心周波数がf0であるときの標準器基板上の電波の波長をλとし、LRをλ/8とし、更に測定時に掃引する周波数範囲を(a・f0〜b・f0)とすると、用意すべき複数のライン標準器の配線部分1002の長さは、それぞれLRの(a/b)倍毎に設定されれば良い。
【0199】
ライン標準器を用いる測定装置の校正方法においては、配線部分1002の長さLRがλ/8となる測定周波数において最も精度が良く、この周波数から離れるにつれて精度が劣化する。そこで、上述のように配線部分1002の長さが、LRの(a/b)倍毎に設定された複数のライン標準器を用いることによって、中心周波数f0から大きく離れた周波数での校正を行うことが不要となる。よって、本実施形態に示される複数のライン標準器基板を用いることによって、測定装置を校正する際に、広い周波数範囲に対しても精度の劣化を小さくすることが可能となる。尚、一例として、aの値が(2/3)で、かつ、bの値が2であることがより好ましい。
【0200】
(第8の実施形態の変形例)
図19は、本発明の第8の実施形態の変形例に係るライン標準器基板の平面図である。図19に示されるライン標準器基板22は、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない一対の信号ピン401及び402を接続するために用いられる。
【0201】
図19に示されるように、ライン標準器基板22は、基板50と、信号ライン111と、第1のグランドライン112と、第2のグランドライン113とを備える。尚、基板50は、上記の第8の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0202】
信号ライン111は、図19に示されるように、隣接する一対の線分によって形成される全ての内角αが、90°より大きな角度を有する折れ線と、当該折れ線の両端部の各々に接続され、当該折れ線の延長方向に延びる一対の直線とから構成される線分(破線で示される線分)の形状を有するように、基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン111は、正八角形の半分の外郭線と、当該外郭線の両端部の各々に接続される平行線とから構成される線分の形状に形成されており、内角αは、135°である。
【0203】
第1のグランドライン112は、所定の第1の間隔を有して信号ライン111の外方端縁114に沿うように、基板50の表面に形成されている。また、第2のグランドライン113は、所定の第2の間隔を有して信号ライン111の内方端縁115に沿うように、基板50の表面に形成されている。
【0204】
また、ライン標準器基板22においても、図19の破線で囲まれる配線部分1002の特性インピーダンスは、ライン部分1001の特性インピーダンスと等しくなるように設定されている。
【0205】
ライン標準器基板22の使用時には、2本の信号ピン401及び402が信号ライン111の両端部の各々に接触し、グランドピン411及び413の各々が第1のグランドライン112の両端部の各々に接触し、グランドピン412が第2のグランドライン113に接触するように、高周波プローブ85をライン標準器基板22に接続する。
【0206】
高周波信号は信号ラインとグランドラインの結合によって伝播される。信号ラインが折れ線状に形成されている場合、折れ線の角部分で信号の放射によって、信号の損失が発生する。内角αが小さくなるにつれて、信号の損失量は、大きくなる。しかしながら、内角αを90°より大きな角度に設定されていれば、内角αが90°の場合に比べて、信号の損失を抑制することができる。
【0207】
また、本変形例のように、信号ライン111が、隣接する一対の線分によって構成される全ての内角αが135°である折れ線を含む線分の形状を有するように形成されていれば、例えばCADを用いた設計工程や、半導体製造プロセスに用いられるマスク等を作成する工程において、折れ線を容易に描くことが可能となる。したがって、ライン標準器基板11の設計及び作成のために必要なコストを削減することが可能となる。
【0208】
以上のように、本変形例によれば、1つの高周波プローブ85に設けられた互いに対向しない2本の信号ピン401及び402を接続するための、信号の損失が少ないライン標準器基板22が得られる。更に、本変形例に係るライン標準器基板によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正が可能となる。この結果、対向しない一対の信号ピン401及び402を用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0209】
(第9の実施形態)
図20は、本発明の第9の実施形態に係るライン標準器基板の平面図である。図20に示されるライン標準器基板23は、互いに対向しない一対の高周波プローブ86a及び86bを接続するために用いられる。
【0210】
図20に示されるように、ライン標準器基板23は、基板50と、信号ライン121と、第1のグランドライン122と、第2のグランドライン123とを備える。本実施形態に係るライン標準器基板23の基本的な構成は、第8の実施形態に係るものと同様であるので、以下では、第8の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0211】
信号ライン121は、弓形に延びる曲線と、当該曲線の両端部における接線方向に延びる一対の直線とから構成される線分の形状を有するように基板50の表面に形成されている。本実施形態においては、信号ライン121は、円周の4分の1の弧長を有する円弧と、当該円弧の両端部における一対の接線とから構成される線分の形状を有するように形成されている。
【0212】
本実施形態によるライン標準器基板23もまた、直角の角部分を含まないため、信号の放射が抑制される。したがって、本実施形態によれば、対向する一対の高周波プローブ86a及び86bを接続するための理想的なライン標準器基板23が得られる。更に、本変形例に係るライン標準器基板23によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正が可能となる。この結果、対向しない一対の高周波プローブを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0213】
(第9の実施形態の変形例)
図21は、本発明の第9の実施形態の変形例に係るライン標準器基板の平面図である。図21に示されるライン標準器基板24は、基板50と、信号ライン131と、第1のグランドライン132と、第2のグランドライン133とを備える。本実施形態に係るライン標準器基板24の基本的な構成は、第8の実施形態の変形例に係るものと同様であるので、以下では、第8の実施形態の変形例との相違点を中心に説明する。
【0214】
信号ライン131は、隣接する一対の線分によって構成される全ての内角が90°より大きな角度を有する折れ線と、当該折れ線の両端部の各々に接続され、当該折れ線の延長方向に延びる一対の直線とから構成される線分(二点差線によって示される線分)の形状を有するように、基板50の表面に形成されている。より具体的には、本実施系他においては、信号ライン131は、正八角形の4分の1の外郭線と、当該外郭線の両端に接続される一対の直線とから構成される線分の形状を有するように形成されており、隣接する一対の線分によって構成される内角は、135°である。
【0215】
尚、図21において破線の囲いによって示される配線部分1002の長さLRa及びLRbは、それぞれ異なっていても良い。
【0216】
本変形例のように、信号ライン131が形成されていれば、例えばCADを用いた設計工程や、半導体製造プロセスに用いられるマスク等を作成する工程において、折れ線を容易に描くことが可能となる。したがって、ライン標準器基板24の設計及び作成のために必要なコストを削減することが可能となる。
【0217】
以上のように、本変形例によれば、互いに対向しない一対の高周波プローブを接続するための、信号の損失が少ないライン標準器基板24が得られる。更に、本変形例に係るライン標準器基板によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正が可能となる。この結果、対向しない一対の高周波プローブを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0218】
(第10の実施形態)
図22は、本発明の第10の実施形態に係るライン標準器基板の平面図である。図22に示されるライン標準器基板25の基本的な構成は、第8の実施形態に係るものと同様であるので、以下では、第8の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0219】
図22に示されるライン標準器基板25は、円弧形状を有する部分において、信号ライン141と第1のグランドライン142との間の第1の間隔dが、信号ライン141と第2のグランドライン143との間の第2の間隔d’より大きく設定されている。
【0220】
より詳細には、信号ライン141における円弧状部分の外方端縁144の長さをLとし、信号ライン141における円弧状部分の内方端縁145の長さをlとすると、第1の間隔d及び第2の間隔d’は、第1の間隔dと第2の間隔d’との比が、外方端縁144の長さLと内方端縁145の長さlとの比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の間隔d’は、第1の間隔dと、内方端縁145の長さlと、外方端縁144の長さLとを用いて上記の数2のように表される。
【0221】
また、このように曲線部分における第1の間隔d及び第2の間隔d’が相違する場合においても、図の破線で囲まれるライン部分1001の特性インピーダンスと、図の破線で囲まれる配線部分1002の特性インピーダンスとを一致させるために、第2のグランドライン143の直線部分における幅の寸法が調整されている。
【0222】
このようなライン標準器基板25の円弧状部分においては、信号ライン141の内方端縁145側と外方端縁144側とで信号の位相が揃うため、信号の伝送特性が改善される。この結果、より正確なライン特性を有するライン標準器基板25が得られる。更に、本実施形態に係るライン標準器基板25によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0223】
(第10の実施形態の変形例)
図23は、本発明の第10の実施形態の変形例に係るライン標準器基板の平面図である。図23に示されるライン標準器基板26の基本的な構成は、第8の実施形態の変形例に係るものと同様であるので、以下では、第8の実施形態の変形例との相違点を中心に説明する。
【0224】
図23に示されるライン標準器基板26は、正八角形の半分の外郭形状を有する部分において、信号ライン151と第1のグランドライン152との間の第1の間隔dが、信号ライン151と第2のグランドライン153との間の第2の間隔d’より大きく設定されている。
【0225】
より詳細には、信号ライン151における正八角形の一部の外方端縁154の長さをLとし、信号ライン151における正八角形の一部の内方端縁155の長さをlとすると、第1の間隔d及び第2の間隔d’は、第1の間隔dと第2の間隔d’との比が、外方端縁154の長さLと内方端縁155の長さlとの比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の間隔d’は、第1の間隔dと、内方端縁155の長さlと、外方端縁154の長さLとを用いて上記の数2のように表される。
【0226】
また、このように曲線部分における第1の間隔d及び第2の間隔d’が相違する場合においても、図の破線で囲まれるライン部分1001の特性インピーダンスと、図の破線で囲まれる配線部分1002の特性インピーダンスとを一致させるために、第2のグランドライン153の直線部分における幅の寸法が調整されている。
【0227】
このようなライン標準器基板26においては、信号ライン151の内方端縁155側と外方端縁154側とで信号の位相が揃うため、信号の伝送特性が改善される。この結果、より正確なライン特性を有するライン標準器基板26が得られる。更に、本実施形態に係るライン標準器基板26によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0228】
(第11の実施形態)
図24は、本発明の第11の実施形態に係るライン標準器基板を示す図である。尚、図24(b)は、図24(a)に示されるXXIVb−XXIVbラインの端面図である。図24に示されるライン標準器基板27の基本的な構成は、第8の実施形態に係るものと同様であるので、以下では、第8の実施形態の変形例との相違点を中心に説明する。
【0229】
本実施形態にかかるライン標準器基板27は、所定の第1の誘電率を有する誘電体基板60を備えている。誘電体基板60は、例えばテフロン(登録商標)、アルミナ、PPO(ポリフェニレンオキシド)等の誘電体材料によって形成される。
【0230】
また、図24(b)に示されるように、信号ライン161と第2のグランドライン163との間から露出する基板の部分には、第1の誘電率よりも大きな第2の誘電率を有する誘電体61が形成されている。
【0231】
ここで、第1の誘電率をεoutとし、第2の誘電率をεinとする。また、ライン標準器基板27の円弧状の部分において、信号ライン161の外方端縁164の長さをLとし、信号ライン161の内方端縁165の長さをlとする。本実施形態においては、第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと第2の誘電率εinとの比が、信号ライン161の内方端縁165の長さ二乗l2と、外方端縁164の長さの二乗L2との比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと、長さL及びlとを用いて、上記の数5のように表される。
【0232】
このようなライン標準器基板27においては、信号ライン161の端面における内方端縁165側の部分と、外方端縁164側の部分とで電波の位相が揃うため、良好な信号伝送特性が得られる。したがって、本実施形態によれば、より正確なライン特性を有するライン標準器基板27が得られる。更に、本実施形態に係るライン標準器基板27によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0233】
尚、図24において、誘電体基板60の表面の誘電率は、第2のグランドライン163から第1のグランドライン162へと向かって、段階的に小さくなるよう設定されていても良い。この場合、誘電体基板60は、高誘電率材料と低誘電率材料との組成比を変化させることによって形成される。
【0234】
(第12の実施形態)
図25は、本発明の第12の実施形態に係るライン標準器基板を示す図である。尚、図25(b)は、図25(a)に示されるXXVb−XXVbラインの端面図である。
【0235】
本変形例に係るライン標準器基板28は、例えばGaAsやSiのような半導体材料によって形成された半導体基板70を備えている。ライン標準器基板28は、半導体の多層配線プロセスによって形成され、多層配線層同士の間は、所定の誘電率を有する絶縁膜によって絶縁されている。
【0236】
半導体基板70の表面には、図25(b)に示されるように、所定の第1の誘電率を有する絶縁膜72が形成されている。更に、信号ライン171と第2のグランドライン173との間から露出する部分には、第1の誘電率よりも大きな第2の誘電率を有する絶縁膜71が形成されている。
【0237】
ここで、第1の誘電率をεoutとし、第2の誘電率をεinとし、信号ライン171の外方端縁174の長さをLとし、信号ライン171の内方端縁175の長さをlとする。本実施形態においては、第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと第2の誘電率εinとの比が、信号ライン161の内方端縁175の長さの二乗l2と、外方端縁174の長さの二乗L2との比に等しくなるように設定されている。すなわち、第2の誘電率εinは、第1の誘電率εoutと、長さL及びlとを用いて、上記の数6のように表される。
【0238】
第1の誘電率εout及び第2の誘電率εinが、数6の関係を満たすように設定された場合、信号ライン171における内方端縁175側を通過する電波の伝播速度は、外方端縁174側を通過する電波の伝播速度より遅くなる。一方、信号ライン171の内方端縁175の長さlは、外方端縁174の長さLより短い。
【0239】
このようなライン標準器基板28においては、信号ライン171の端面における内方端縁175側の部分と、外方端縁174側の部分とで電波の位相が揃うため、良好な信号伝送特性が得られる。したがって、本実施形態によれば、より正確なライン特性を有するライン標準器基板が得られる。更に、本実施形態に係るライン標準器基板28によれば、Sパラメータ測定装置の高精度な校正を行うことが可能となる。この結果、1つの高周波プローブに設けられた互いに対向しない信号ピンを用いて、高精度なSパラメータ測定を実現することができる。
【0240】
尚、図25において、半導体基板70の表面の誘電率は、第2のグランドライン173から第1のグランドライン172へと向かって、段階的に小さくなるよう設定されていても良い。たとえば、Siよりなる半導体基板70の表面に、絶縁膜を成長させることによって形成されるSiGeのような化合物半導体においては、絶縁膜71及び72は、Geの組成比を変化させることによって形成される。
【0241】
(第13の実施形態)
図26は、本発明の第13の実施形態に係るライン標準器基板を示す図である。尚、図26(b)は、図26(a)に示されるXXVIb−XXVIbラインの端面図である。
【0242】
本実施形態に係るライン標準器基板29は、第8の実施形態に係るライン標準器基板に加えて、エアブリッジ500a〜500cを更に備えている。
【0243】
エアブリッジ500bは、ライン標準器基板29における円弧状部分において、図26に示されるように、第1のグランドライン182と第2のグランドライン183とを、信号ライン181における円弧形状の部分の半径方向に掛け渡すように電気的に接続する。そして、エアブリッジ500bと信号ライン181との間は絶縁されている。エアブリッジ500a及び500cもまた、エアブリッジ500bと同様に形成されている。尚、本実施形態において、エアブリッジ500a〜500cと信号ライン181との間の空間は、誘電体を充填することによって絶縁されても良い。
【0244】
このようなライン標準器基板29によれば、第1のグランドライン182及び第2のグランドライン183と、信号ライン181との結合によって伝送される高周波信号の位相は、エアブリッジ500a〜500cを介して、内方端縁185側と外方端縁184側とで一致する。これにより、信号の信号の伝送特性が改善されるため、理想的なスルー特性が得られる。
【0245】
(第14の実施形態)
図27は、本発明の第14の実施形態に係るライン標準器基板を示す図である。尚、図27(b)は、図27(a)に示されるXXVIIb−XXVIIbラインの端面図である。
【0246】
本実施形態に係るライン標準器基板30は、例えばテフロン(登録商標)、ガラエポ、PPO(ポリフェニレンオキサイド)のような誘電体基板60を備えている。誘電体基板60には、第1のグランドライン192と第2のグランドライン193とに電気的に接続され、信号ライン191の半径方向に整列する一対のスルーホール601a及び601bが、誘電体基板60の表面から内部へと延びるように形成されている。また、誘電体基板60の内部には、例えばアルミニウムや銅のような導電性材料によって形成され、スルーホール601a及び601bを電気的に接続する配線が埋め込まれている。
【0247】
このようなライン標準器基板30によれば、第1のグランドライン192及び第2のグランドライン193と、信号ライン191との結合によって伝送される高周波信号の位相が、配線600とスルーホール601a及び601bとを介して、内側と外側とで一致する。これにより、信号の信号の伝送特性が改善されるため、理想的なスルー特性が得られる。
【0248】
尚、本実施形態においては、配線600は、誘電体基板60の内部に埋め込まれているが、誘電体基板60の裏面に形成されていても良い。この場合、スルーホール601a及び601bは、誘電体基板60を貫通するように形成されていればよい。
【0249】
(第15の実施形態)
図28は、本発明の第15の実施形態に係るライン標準器基板を示す図である。尚、図28(b)は、図28(a)に示されるXXVIIIb−XXVIIIbラインの端面図である。
【0250】
本実施形態に係るライン標準器基板31は、例えばGaAsやSiのような半導体基板70を備えている。半導体基板70には、第1のグランドライン202と第2のグランドライン203とに電気的に接続され、信号ライン201の半径方向に整列する一対の層間コンタクト701a及び701bが、半導体基板70の表面から内部へと延びるように形成されている。また、半導体基板70の内部には、例えばアルミニウムや銅のような導電性材料によって形成され、層間コンタクト701a及び701bを電気的に接続する配線700が埋め込まれている。
【0251】
このようなライン標準器基板31によれば、第1のグランドライン202及び第2のグランドライン203と、信号ライン201との結合によって伝送される高周波信号の位相が、配線700と層間コンタクト701a及び701bとを介して、内側と外側とで一致する。これにより、信号の信号の伝送特性が改善されるため、理想的なスルー特性が得られる。
【0252】
尚、本実施形態においては、配線700は、半導体基板70の内部に埋め込まれているが、半導体基板70の裏面に形成されていても良い。この場合、層間コンタクト701a及び701bは、半導体基板70を貫通するように形成されていればよい。
【0253】
図29は、TRL法によるSパラメータ測定装置の校正と、被測定装置のSパラメータを測定する方法とを示すフローチャートである。校正に用いられるスルー標準器基板及びライン標準器基板は、プローブの一対の信号ピンの位置関係、すなわち、一対の信号ピンが対向するか否かに基づいて決定される。以下、図29及び図1を参照しながら、操作手順について説明する。
【0254】
まず、操作者は、高周波プローブ85の各信号ピンに、既知の特性を有する反射標準器基板を接触させる(ステップS201)。次に、操作者は、VNA82を用いて、高周波プローブ85の反射特性を測定する(ステップS202)。操作者は、測定結果をVNA82のメモリ87に記憶させる。
【0255】
次に、操作者は、高周波プローブ85の一対の信号ピンが対向するか否かを判断する(ステップS204)。高周波プローブ85の一対の信号ピン同士が対向しない場合には(ステップS204でYES)、操作者は、信号ピンの配置に応じて、上記の各実施形態の何れかに係るスルー標準器基板と、スルー標準器基板に対応した形状を有するライン標準器基板とを選択する(ステップS205)。一方、高周波プローブ85の一対の信号ピン同士が対向する場合には(ステップS204でNO)、操作者は、直線状のスルー標準器基板及びライン標準器基板を選択する(ステップS206)。次に、操作者は、選択されたスルー標準器基板及びライン標準器基板の両端部に、高周波プローブ85を接続する(ステップS207)。次に、操作者は、VNA82を用いて、高周波プローブ85のスルー及びライン特性を測定する(ステップS208)。操作者は、測定結果を、VNA82のメモリ87に記憶させる(ステップS209)。
【0256】
尚、3つの標準器基板を接続するステップと、特性を測定するステップと、その測定結果をメモリ87に記憶させるステップとは、高周波プローブ85の信号ピン毎に行われる。また、これらのステップは、任意の順序で実行されても良い。
【0257】
次に、上記の手順によって測定され、メモリ87に記憶されているショート、オープン、ロード及びスルーについての測定結果を用いて、操作者は、VNA82に内蔵された計算機88に、理想ポートから高周波プローブ85の先端までの測定系のシステム誤差を計算させる(ステップS210)。操作者は、計算されたシステム誤差をVNA82のメモリ87に記憶させる(ステップS211)。
【0258】
操作者は、以上のような手順に従って操作することによって、高周波プローブ85の特性を取得し、TRL法によるVNA82の校正を完了することができる。
【0259】
次に、操作者は、校正が完了したVNA82を用いて、被測定装置の特性を測定する。
【0260】
まず、が完了する。高周波プローブ85の信号ピン及びグランドピンの各々を被測定装置のポートに接続させる(ステップS212)。次に、操作者は、VNA82を用いて被測定装置の特性を測定する(ステップS213)。
【0261】
次に、操作者は、VNA82に内蔵されている計算機88に、被測定装置についての測定結果から、VNA82のメモリ87に記憶されているシステム誤差を差し引かせる(ステップS214)。そして、操作者は、計算機88がシステム誤差を差し引いた計算結果を出力させる(ステップS215)。これにより、操作者は、被測定装置のみの特性データを取得することが可能となる。
【0262】
未測定の被測定装置がある場合には(ステップS216でYES)、操作者は、上記のステップS212〜ステップS216の操作を繰り返して、未測定の被測定装置の特性を測定する。未測定の被測定装置がない場合には(ステップS216でNO)、操作者は、操作を終了する。
【0263】
以上のような操作手順によれば、プローブの信号ピン及びグランドピンの配置に対応して適切なスルー標準機が選択され、プローブの特性が高精度で測定されるため、VNA82をより正確に校正することが可能となる。よって、校正された被測定装置によって、Sパラメータを正確に測定することが可能となる。
【0264】
尚、上記の各実施形態においては、信号ライン及びグランドラインが円弧形状を有するスルー標準器基板及びライン標準器基板が示されているが、信号ライン及びグランドラインは、弓形に延びていれば、円弧以外の形状に形成されていても良い。例えば、当該曲線部分は、楕円形状に形成されても良い。
【0265】
また、上記の各実施形態においては、信号ライン及びグランドラインが正八角形の外郭線の一部の形状を有するスルー標準器基板及びライン標準器基板が示されているが、信号ライン及びグランドラインは、隣接する一対の線分同士によって構成される内角が90°より大きな角度を有している他の折れ線状に形成されていても良い。
【0266】
更に、上記の各実施形態においては、第1のグランドラインは、線状に形成されているが、所定の第1の間隔を有して信号ラインの外方端縁に沿っていれば、第1のグランドラインは、線状以外の外郭形状を有するように形成されても良い。例えば、第1のグランドラインは、基板の表面のほぼ全体に拡がるように形成されていても良い。
【0267】
更に、上記の各実施形態において、折れ線状の部分を有するスルー標準器基板及びライン標準器基板(例えば、図3、図19等)は、更に角部分が丸みを帯びるように形成されていても良い。
【0268】
更に、上記の各実施形態において、信号ラインが正八角形の一部の形状を有するスルー標準器及びライン標準器は、更に、第1及び第2のグランドラインを接続するためのエアブリッジまたは配線を備えていても良い。この場合、第1及び第2のグランドラインは、信号ラインにおける正八角形状の部分の外接円の半径方向に掛け渡されるように接続されていれば良い。
【0269】
更に、上記の各実施形態において、信号ライン及び第1及び第2のグランドラインは、曲線と、隣接する一対の線分によって構成される内角が90°以上の折れ線との両方を含む線分の形状を有するように形成されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明に係るスルー標準器基板及びライン標準器基板は、高周波信号の伝送損失を抑制することができるので、プローブにおける互いに対向しない信号端子同士及びグランド端子同士を接続するための校正用標準器基板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】1つのプローブを備えるSパラメータ測定装置の構成例を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態に係るスルー標準器基板の平面図
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板の平面図
【図4】一対のプローブを備えるSパラメータ測定装置の構成例を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態に係るスルー標準器基板の平面図
【図6】本発明の第2の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板の平面図
【図7】本発明の第3の実施形態に係るスルー標準器基板の平面図
【図8】図7の”X”部分の拡大図
【図9】本発明の第3の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板の平面図
【図10】図9の”Y”部分の拡大図
【図11】本発明の第4の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図
【図12】本発明の第4の実施形態の変形例に係るスルー標準器基板を示す図
【図13】本発明の第5の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図
【図14】本発明の第6の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図
【図15】本発明の第7の実施形態に係るスルー標準器基板を示す図
【図16】SOLT法によるSパラメータ測定装置の校正と、被測定装置のSパラメータを測定する方法とを示すフローチャート
【図17】本発明の第8の実施形態に係るライン標準器基板の平面図
【図18】図17に示したライン標準器基板の使用状態を示す平面図
【図19】本発明の第8の実施形態の変形例に係るライン標準器基板の平面図
【図20】本発明の第9の実施形態に係るライン標準器基板の平面図
【図21】本発明の第9の実施形態の変形例に係るライン標準器基板の平面図
【図22】本発明の第10の実施形態に係るライン標準器基板の平面図
【図23】本発明の第10の実施形態の変形例に係るライン標準器基板の平面図
【図24】本発明の第11の実施形態に係るライン標準器基板を示す図
【図25】本発明の第12の実施形態に係るライン標準器基板を示す図
【図26】本発明の第13の実施形態に係るライン標準器基板を示す図
【図27】本発明の第14の実施形態に係るライン標準器基板を示す図
【図28】本発明の第15の実施形態に係るライン標準器基板を示す図
【図29】TRL法によるSパラメータ測定装置の校正と、被測定装置のSパラメータを測定する方法とを示すフローチャート
【図30】対向する一対のプローブを接続するために用いられる従来のスルー標準器基板を示す平面図
【図31】GSGSGプローブに用いられる従来のスルー標準器基板を示す平面図
【符号の説明】
【0272】
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20 スルー標準器基板
21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31 ライン標準器基板
50 基板
60 誘電体基板
61 誘電体
70 半導体基板
71、72 絶縁膜
85、86 高周波プローブ
101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201 信号ライン
102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202 第1のグランドライン
103、113、123、133、143、153、163、173、183、193、203 第2のグランドライン
104、114、124、134、144、154、164、174、184、194、204 外方端縁
105、115、125、135、145、155、165、175、185、195、205 内方端縁
401、402、403、404 信号ピン
411、412、413、414、415、416、417 グランドピン
500 エアブリッジ
600、700 配線
601 スルーホール
701 層間コンタクト




 

 


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