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発明の名称 特定成分計測方法および特定成分計測装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−3301(P2007−3301A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−182532(P2005−182532)
出願日 平成17年6月22日(2005.6.22)
代理人 【識別番号】100072431
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 和郎
発明者 河村 達朗
要約 課題
入射面と出射面が有する二色性の結果、吸光現象によらない透過光強度の低下現象が生じ、吸光度計測における濃度算出の精度を制限されることを解消する。

解決手段
被検試料に磁場を印加し、自然旋光性物質による偏光方向の回転を制御することで、入出射面の二色性の影響を除去する。
特許請求の範囲
【請求項1】
自然旋光性物質を含みかつ二色性を有する被検試料に直線偏光した光を入射させる工程Aと、
前記被検試料に前記光を入射させた状態で前記被検試料中の前記自然旋光性物質に起因する偏光方向の変化を制御するために、前記被検試料に磁場を印加する工程Bと、
前記被検試料の透過光強度を測定する工程Cと、
前記工程Cにおける前記光の偏光方向において予め得た特定成分の濃度と透過光強度との相関を参照して、前記工程Cで測定された前記透過光強度より前記被検試料中の前記特定成分の濃度を求める工程Dと、
を有する特定成分計測方法。
【請求項2】
前記工程Cにおける前記光の偏光方向が、前記透過光強度が極大値または極小値を示すときの偏光方向である、請求項1記載の特定成分計測方法。
【請求項3】
直線偏光した光を、自然旋光性物質を含みかつ二色性を有する被検試料に投射する光源と、前記被検試料に磁場を印加する磁場印加部と、前記磁場を制御する磁場制御部と、前記被検試料の透過光を検知する光センサと、前記光センサの出力信号に基づいて前記被検試料中の特定成分の濃度を算出する演算部とを備え、
さらに、
前記光源に前記被検試料に直線偏光した光を入射させ、
前記被検試料に前記光を入射させた状態で前記被検試料中の前記自然旋光性物質に起因する偏光方向の変化を制御するために、前記磁場印加部に、前記被検試料に磁場を印加させ、
前記光センサに前記被検試料の透過光を検知させ、
前記演算部に、前記光の偏光方向において予め得た前記特定成分の濃度と透過光強度との相関を参照して、前記光センサの出力信号に基づいて前記被検試料中の前記特定成分の濃度を求めさせる制御部を備える特定成分計測装置。
【請求項4】
前記磁場を振動変調し、前記光センサの出力信号を前記磁場の振動変調信号を参照信号として位相敏感検波するロックインアンプをさらに備え、
前記制御部が、前記ロックインアンプの出力信号に基づいて前記透過光強度の極大値または極小値を検出する、請求項3記載の特定成分計測装置。
【請求項5】
前記被検試料が生体であり、前記生体を保持するホルダーをさらに備えた、請求項3または4に記載の特定成分計測装置。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光分光計測により、生体などの被検試料中の特定成分の濃度を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検試料に光を照射し、透過した特定波長の光の強度を検出することで、被検試料中の特定成分の濃度を計測していた。この場合、下記の式(1)により濃度を算出していた。
I=B×I0×exp(−A×C×L) ・・・式(1)
(式(1)中、B:定数
0:照射する光の強度をI0
I:透過光の強度
L:被検試料中を光が伝搬した距離
C:特定成分の濃度
A:特定波長に対する特定成分の吸光係数)
なお、上記式(1)のBは、被検試料に光が入射及び出射する部分における光の反射、散乱、吸収、旋光などの影響を表す定数である。特定成分の濃度Cを算出する場合、Bは一定でなくてはならない。即ち、濃度Cが変化してもBは変化してはならない。
【0003】
ここで、上記のような従来の計測は、図9に示す装置を用いて行われていた。図9は、従来の計測装置の構成を示す図である。被検試料は、図9に示したように、一般的にガラスなどの透明材料からなるサンプルセルに保持して計測する。図9において、光源91より強度I0の略平行光92がサンプルセル96に向けて照射される。光は、サンプルセルの入射面93を透過し、被検試料94を透過し、出射面95を透過し、光センサ97に強度Iの光が入射する。
この場合、被検試料94の吸収が変化しても、入射面93,出射面95による光の反射、散乱、吸収は一定である。したがって、Bが一定であるという条件が満足されており、B、I0、I、L、Aと式(1)を用いて被検試料中の特定成分の濃度Cを算出することができる。
【0004】
ここで、例えば特許文献1では、例えば手の指から体内の血液に光を照射し、グルコース、グリコ・ヘモグロビンなどの特有の波長における透過光強度を測定することにより、人体の外部から該グルコース等の濃度を算出する、いわゆる非侵襲測定の可能な定量分析装置が示されている。
【特許文献1】特開2002−202258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被検試料が生体などの場合はBが一定ではないため、透過強度より、特定成分の濃度を算出する際の精度が低下することがあった。この理由を以下に述べる。
図9において、光源91より発した強度I0の略平行光92が直線偏光で、特定成分が自然旋光性物質の場合を考える。この場合、被検試料94に入射した光の偏光方向は、伝搬に伴って回転する。その回転角度は、式(2)に示すように、特定成分の濃度Cと伝搬距離Lに依存する。
a=α×C×L ・・・式(2)
(式(2)中、a:偏光方向の回転角度
α:特定成分の比旋光度)
【0006】
略平行光92が被検試料94に入射する時の偏光方向は、特定成分の濃度Cに関わらず一定であるが、出射する時の偏光方向は、特定成分の濃度Cに依存する。ここで、サンプルセルの出射面95の光学特性が偏光方向に影響されない場合は、Bは一定とみなすことができる。しかし、出射面95が二色性を有する場合、Bは一定ではなくなる。
ここで「二色性」とは、同一波長の直線偏光の光でも偏光方向が異なると、吸光度が異なる現象(参考文献 生化学辞典 第3版)を意味し、異方性の結晶や高分子を延伸した物質等が示す現象をいう。
【0007】
また、等方性の物質でも圧力が掛かると二色性を示すことがある。生体の表面にある皮膚は二色性を示し、皮膚の伸縮状態によって二色性の大きさが変化する。図9において皮膚は、93、95に相当し、94が筋肉、脂肪、血管、体液などからなら生体内部に相当する。
特定成分の濃度Cによって出射面95に到達した略平行光92の偏光方向が変化するため、出射面95が二色性を有すると、特定成分の濃度変化による偏光方向の変化に伴い、出射面95を透過して光センサ97に到達する透過光強度Iも変化する。即ち、透過光強度Iは、特定成分の吸光現象だけでなく、旋光現象にも影響される。これは、Bが一定でなく、特定成分の濃度に影響されることを意味し、この影響度合いが式(1)を用いて被検試料中の特定成分の濃度Cを算出する際の精度を制限する。
【0008】
このように精度が制限される現象を、図10を用いて説明する。図10において、x軸、y軸、z軸は図9のx軸、y軸、z軸と同一で、z軸が略平行光92の伝搬方向である。101は入射面93を透過する光の偏光方向を示し、102は出射面95を透過する光の偏光方向を示している。103はこれらの方向の相対角度γを示している。104は式(2)のaを示している。
また、105は被検試料94に入射する偏光方向を示す。ここで、被検試料94に入射する光の強度をi0、出射面95を出射する光の強度即ち光センサ97に到達する透過光強度Iは、
I=i0×(COS(γ+a))2×exp(−A×C×L)
となる。
【0009】
ここで、入射面93における光の透過率をTとすると、
0=I0×T
となる。
上記の式と式(1)とから、
I=I0×T×(COS(γ+a))2×exp(−A×C×L)
=B×I0×exp(−A×C×L)
B=T×(COS(γ+a))2
となる。
【0010】
この式は、aの大きさ、言い換えると特定成分の濃度Cに応じてBが変化することを意味する。例えば、aの大きさが一定の時は、(COS(γ+a))2は一定となり、これはBが一定を意味する。しかし、濃度Cが変化すると、式(2)によってaが変化する。aが変化すると(COS(γ+a))2も変化し、Bが変化することになる。
上記までは、濃度を算出したい特定成分が自然旋光性物質の場合について説明したが、共存する物質が自然旋光性物質の場合は、この共存物質の濃度によりBが変化するため、共存物質の濃度の変化により、被検試料中の特定成分の濃度Cを算出する際の精度を制限する。
【0011】
以上のように、直線偏光した光を生体等の二色性を示す被検試料に照射し、透過光強度より、特定成分の濃度Cを算出する場合、その二色性で精度が制限されていた。
なお、入射面93における光の透過率Tは、入射面93における光反射、入射面93内の偏光方向に依存しない光吸収や散乱、及び入射面93を透過する光の偏光方向と略平行光92の偏光方向の相対角度に依存する光吸収(二色性)などに影響されるが、特定成分の濃度Cには影響されない。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、被検試料中の自然旋光性物質に起因した偏光方向の変化を、前記被検試料に磁場を印加して光ファラデー効果によってそれを透過する光の偏光方向を制御することで相殺し、相殺した状態を維持している期間における透過光の強度に基づいて自然旋光性物質の濃度を算出することで、二色性の影響を除去することを目的とする。
即ち、本発明は、二色性の影響を除去して被検試料中の自然旋光性物質を計測することのできる特定成分計測方法および特定成分計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、本発明は、
自然旋光性物質を含みかつ二色性を有する被検試料に直線偏光した光を入射させる工程Aと、
前記被検試料に前記光を入射させた状態で前記被検試料中の前記自然旋光性物質に起因する偏光方向の変化を制御するために、前記被検試料に磁場を印加する工程Bと、
前記被検試料の透過光強度を測定する工程Cと、
前記工程Cにおける前記光の偏光方向において予め得た特定成分の濃度と透過光強度との相関を参照して、前記工程Cで測定された前記透過光強度より前記被検試料中の前記特定成分の濃度を求める工程Dと、
を有する特定成分計測方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特定成分計測方法によれば、被検試料の二色性の影響を除去することができ、特定成分の濃度を正確に算出でき、実用上極めて有効である。特に、被検試料が生体の場合、皮膚の二色性の影響を除去でき有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の特定成分計測方法は、自然旋光性物質を含みかつ二色性を有する被検試料に直線偏光した光を入射させる工程Aと、前記被検試料に前記光を入射させた状態で前記被検試料中の前記自然旋光性物質に起因する偏光方向の変化を制御するために、前記被検試料に磁場を印加する工程Bと、上記偏光方向を固定して前記被検試料の透過光強度を測定する工程Cと、前記工程Cにおける前記光の偏光方向において予め得た特定成分の濃度と透過光強度との相関を参照して、前記工程Cで測定された前記透過光強度より前記被検試料中の前記特定成分の濃度を求める工程Dとを有する。
ここで、前記自然旋光性物質が前記特定成分であってもよく、前記自然旋光性物質と前記特定成分とが異なるものであってもよい。
ここで、前記工程Cで測定された光の偏光方向が、前記透過光強度が極大値または極小値を示すときの偏光方向であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、直線偏光した光を、自然旋光性物質を含みかつ二色性を有する被検試料に投射する光源と、前記被検試料に磁場を印加する磁場印加部と、前記磁場を制御する磁場制御部と、前記被検試料の透過光を検知する光センサと、前記光センサの出力信号に基づいて前記被検試料中の特定成分の濃度を算出する演算部とを備え、上記の特定成分計測方法を用いて被検試料中の特定成分の濃度を求めるための計測装置に関する。
即ち、本発明の計測装置は、前記光源に前記被検試料に直線偏光した光を入射させ、
前記被検試料に前記光を入射させた状態で前記被検試料中の前記自然旋光性物質に起因する偏光方向の変化を制御するために、前記磁場印加部に、前記被検試料に磁場を印加させ、前記光センサに前記被検試料の透過光を検知させ、前記演算部に、前記光の偏光方向において予め得た前記特定成分の濃度と透過光強度との相関を参照して、前記光センサの出力信号に基づいて前記被検試料中の前記特定成分の濃度を求めさせる制御部を備える。
【0017】
ここで、上記計測装置は、前記磁場を振動変調し、前記光センサの出力信号を前記磁場の振動変調信号を参照信号として位相敏感検波するロックインアンプをさらに備え、前記ロックインアンプの出力信号に基づいて、透過光強度の極大値または極小値を検出することが好ましい。
また、前記被検試料が生体であり、前記生体を保持するホルダーをさらに備えることが好ましい。
【0018】
以下に、本発明の特定成分計測方法および特定成分計測装置が利用する原理について説明する。
媒質中に光を伝搬させ、その伝搬方向に磁場を印加すると、いわゆる磁気旋光により光の偏光方向が伝搬にしたがって回転する。この現象を光ファラデー効果と呼ぶ。この光ファラデー効果は、次の式(3)で表される。
Θ=V×H×L ・・・式(3)
(式(3)中、Θ:偏光方向の回転角度[分]
V:媒質のベルデの定数[分/A]
H:磁場[A/m]
L:伝搬距離[m])
【0019】
この式(3)のVは、媒質、光の波長、温度によって異なる。各種の媒質のVの一例を以下の表(1)に示す。
【0020】
【表1】


【0021】
この光ファラデー効果を利用したものに、従来の技術で用いられている光ファラデー変調器がある。これは、棒状のフリントガラスにソレノイドコイルを巻きこれに電流を流すことによって磁場を印加して、磁場方向に伝搬する光の偏光方向を変調するものである。ソレノイドコイルに流す電流を制御することによって、自由に変調することができる。
このように、光ファラデー効果によって、媒質に磁場を印加すると、偏光方向を変調することができる。これは、表(1)からもわかるように、溶媒として、広く使用される水、クロロホルム、アセトンなどにおいても同じである。
【0022】
したがって、特定成分が溶解している溶液に磁場を印加すると、この溶液自身が光ファラデー効果によって、溶液中を伝搬する光の偏光方向を回転させる。即ち、被検試料を保持しているサンプルセルごとに磁場を印加すれば、このサンプルセル及び磁場印加部が光ファラデー変調器として機能する。また、水を主成分とする生体も同様である。
ここでの、磁場印加部としては、光の伝搬方向に磁場を印加するソレノイドコイル、磁石などがある。この磁場を変調するには、ソレノイドコイルに流す電流を変調するか、磁石と被検試料までの距離を変調することで、可能になる。
【0023】
上記のように、サンプルセルに磁場を印加して、この磁場を振動変調することによって、偏光方向を振動変調することができ、例えば特許第3072040号公報に示されているように、被検試料中の自然旋光性物質によって生じた偏光方向の回転角度である旋光度を測定することができる。
また、磁場を掃引、すなわち磁場を特定の強度から特定の強度まで変化(磁場の極性の変化も含む)させると、偏光方向を回転させることができる。これによって、検光子を回転させた場合と同じ効果を得ることが可能になる。
【0024】
即ち、特許第3072040号公報記載の技術においては、検光子を回転した時の消光点のずれを、検光子の角度で直読していたが、磁場を掃引した時の消光点のずれを、例えば電流で読み取りこれを磁場へ、さらには角度へ変換することによって、被検試料の旋光度を測定することができる。これは、実質的には、被検試料中の自然旋光性物質によって生じた偏光方向の回転を、被検試料に印加された磁場による光ファラデー効果による偏光方向の回転で補償する磁場を検知していることになる。
このような磁場を印加した状態においては、偏光方向は回転しない。即ち、式(2)および式(3)におけるaとΘを加えるとゼロの状態であり、この状態は式(4)のように表現できる。
a+Θ=α×C×L+V×H×L=0 ・・・式(4)
【0025】
式(4)を満足する状態においては、偏光方向は回転しないため、図9における入射面93、出射面95の二色性の影響を除去できる。即ち、式(4)を満足する状態を維持している限り、式(1)のBを一定とみなすことができるため、特定成分の濃度Cを算出できる。
特に、糖、タンパク質、アミノ酸などの様々な自然旋光性物質を含む生体の場合でも、皮膚の二色性の影響を排除できる、透過光強度が生体内部の体液などに存在する特定成分の吸光のみを反映するため、透過光強度より特定成分の濃度を算出でき、効果的である。
【0026】
このように、生体などに磁場を印加し、生体自身のファラデー効果により、生体内部の体液中の糖、タンパク質、アミノ酸などの自然旋光性物質による偏光方向の回転を補償することで、特定成分による吸光現象を透過光強度により計測し、特定成分の濃度を算出する場合でも、皮膚の二色性の影響を除去できる。
なお、濃度を算出しようとする特定成分が自然旋光性を有していても本発明の効果は得られる。
【0027】
したがって、本発明の特定成分計測方法および特定成分計測装置の「被検試料」としては、生体や、異方性の結晶や高分子を延伸した物質により形成された壁に囲まれた容器とそれに収容された試料などが挙げられる。この場合、異方性の結晶や高分子を延伸した物質が二色性を有する。
また、本発明における「自然旋光性物質」とは、光学活性を有する物質であればよく、例えば、グリセルアルデヒド、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの糖、アルブミン、ヘモグロビン、グロブリン、ミオグロビン、酵素、抗体などのタンパク質、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒシチジン、メチオニン、システィンなどのアミノ酸であって、光学活性を有するものなどが挙げられる。
【0028】
生体中には上記自然旋光性物質が大なり小なり含まれており、本発明においてはこのすべての「自然旋光性物質」が「特定成分」になり得る。例えばグルコース、ヘモグロビン、アルブミンまたはミオグロビンを「自然旋光性物質」でありかつ「特定成分」とする場合が考えられる。なお、「特定成分」であって「自然旋光性物質」でない物質としては、例えば尿素、クレアチニン、クエン酸およびリン酸などが挙げられるが、その他、光を吸収するが光学活性を有しない物質も「特定成分」に該当し得る。
以下において、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0029】
[実施の形態1]
本実施の形態の特定成分計測方法を実施するための装置(即ち、本実施の形態に係る特定成分計測装置)の構成を図1に示す。図1に示すように、本実施の形態の特定成分計測装置は、特定成分の吸光波長の直線偏光の光を発する光源1から、直線偏光した略平行光2を被検試料に照射する。直線偏光の光を発する光源としては、Arレーザ、He−Neレーザ光などのガスレーザや、半導体レーザなどが挙げられる。
また、円筒型部材3、および二色性を有し直線偏光の光を透過するポーラロイド板4、5で、被検試料を保持するサンプルセルが構成されている。円筒型部材3を構成する材料は特に制限されず、光透過性を有していても有していなくてもよい。ポーラロイド板4は略平行光2が被検試料へ入射する入射面となり、また、ポーラロイド板5は略平行光2が被検試料より出射する出射面となり、共に紙面に平行な偏光方向の光を透過する偏光子として機能している。この場合、入射面と出射面との透過させる偏光方向の相対角度γはゼロである。ここで、被検試料中での略平行光2の伝搬距離に比べて入射面4、出射面5での伝搬距離は、十分に小さい。
【0030】
サンプルセルをはさんで、略平行光2の周囲に巻かれたソレノイドコイル6で、サンプルセル中の被検試料に磁場を印加する。この磁場は、略平行光2の伝搬方向に実質的に均質に印加され、ソレノイドコイル6に流す電流に比例する。駆動器7は、ソレノイドコイル6に±5Aの電流を流す。
光センサ8は出射面5を出射した光を検知し、コンピュータ(演算部および制御部を含む)9は駆動器7に指令信号を発しかつ光センサ8の出力信号を記録解析する。
【0031】
つぎに、本実施の形態の特定成分計測装置の作用、即ち本実施の形態の特定成分計測方法を説明する。
光源1が水溶液中のグルコースが吸収する波長の光を発する。コンピュータ9が駆動器7に指令信号を発し、ソレノイドコイル6に流す電流を−5〜+5Aまで掃引する。この時の光センサ8の出力信号を示したのが図2、3である。 図2、3において、横軸は、ソレノイドコイル6に流す電流J、縦軸は光センサ8の出力信号(任意値)を示している。図3は、図2の縦軸を拡大した図である。
【0032】
図2、3において、実線は、被検試料として自然旋光性を示さない純水を計測した場合である。入射面4、出射面5が透過する偏光方向の相対角度がゼロのため、Jがゼロの時に、光センサ8の出力信号は極大値を示す。出力信号が極大値を示す状態は、被検試料である純水に磁場が印加されず光ファラデー効果による偏光方向の回転が起こらない状態である。
Jと出力信号の関係を式(5)に示す。Iが光センサ8の出力信号に比例する。Θは、式(3)に示した光ファラデー効果による偏光方向の回転角度で、これは磁場HがJに比例するため、ΘはJに比例することになる。
I=B‘×(COS(Θ))2 ×I0×exp(−A×C×L) ・・・式(5)
(式(5)中、B‘:定数)
【0033】
つぎに、被検試料として、濃度=100、250、500mg/dlのグルコース水溶液を測定した場合をそれぞれ●、■、▲の点線で示す。この場合は式(6)のように、表現することができる。
I=B‘×(COS(a+Θ))2 ×I0×exp(−A×C×L)
・・・式(6)
それぞれ、Jが0.96、2.4、4.8[A]の時に、光センサ8の出力信号は極大値を示す。この出力信号が極大値を示す状態は、式(4)を満足する状態である。即ち、被検試料に印加された磁場によって発生した光ファラデー効果による偏光方向の回転が、自然旋光性物質であるグルコースによる偏光方向の回転を補償している状態である。
【0034】
グルコースは自然旋光性物質であり、濃度に応じて式(2)に基づき、偏光方向がa回転する。この場合、α、Lが同じであるため、濃度=100、250、500mg/dlに対するaの比率は濃度比率と同じ1:2.5:5になる。
さらに、Jも同じ1:2.5:5の比率になっているので、グルコースによる偏光方向の回転を光ファラデー効果による偏光方向の回転で補償していることを示している。
【0035】
まず、従来のように、被検試料に磁場を印加せずに、式(1)より、グルコース濃度を算出する場合を考える(比較例)。これは、図2、3のJがゼロの時の光センサ8の出力信号がIに相当し、このときのグルコース濃度と出力信号の関係を図4に実線で示す。図4において、横軸はグルコース濃度を、縦軸は出力信号(任意値)の対数を示している。
また、図2、3において、各濃度の出力信号の極大値を図4の●の点線で示す。この極大値は、上記したように、グルコースによる偏光方向の回転を光ファラデー効果による偏光方向の回転で補償した状態でのIに相当する。
【0036】
式(1)で、Bが一定の場合、図4では出力信号は、濃度に対して直線でなくてはならない。図4の●の点線は、直線であるが、実線は直線ではなく、Bが変化している。したがって、図4の●の点線を検量線として利用することで、式(1)を用いてグルコース濃度を算出することができる。
式(1)と式(6)から、B=B‘×(COS(a+Θ))2となる。式(4)を満足している限り、B=B‘となり、Bが一定になる。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、被検試料に磁場を印加し、その磁場の強度を掃引して、透過光強度に相当する光センサに出力信号の極大値を用いて検量線を作成し、この検量線と光センサの出力信号より、被検試料の表面の二色性即ち本実施の形態の入射面4、出射面5の二色性の影響を除去して、被検試料中の特定成分(本実施の形態ではグルコース)の濃度を高精度に、算出することができ、その実用的効果は極めて大きい。
【0038】
なお、本実施の形態では、濃度を算出する特定成分が自然旋光性物質である場合を説明したが、特定成分が自然旋光性物質ではなく、被検試料中に自然旋光性物質が共存している場合でも、同様に効果が有る。
即ち、被検試料に磁場を印加し、その磁場の強度を掃引して、透過光強度に相当する光センサに出力信号の極大値を用いて検量線を作成し、この検量線と光センサの出力信号より、被検試料の表面の二色性と自然旋光性物質による偏光方向の回転の影響を除去でき、被検試料中の特定成分の濃度を高精度に、算出することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、被検試料に磁場を印加し、その磁場の強度を掃引して、透過光強度に相当する光センサに出力信号の極大値を用いて検量線を作成する場合を示したが、光センサに出力信号の極小値を用いて検量線を作成してもよい。
ここで、(ア)略平行光2が完全な直線偏光で、かつ(イ)入射面、出射面が共に理想的偏光子で、かつ(ウ)被検試料での一切偏光解消が発生しない場合は、この極小値はゼロになり、検量線は作成できない。しかし、実際は(ア)〜(ウ)を完全に満足することはありえず、極小値はゼロにならず特定成分の吸光現象量を反映するため、検量線を作成し、特定成分の濃度を算出することは実用上可能である。極小値を用いる場合は、以下の式(7)を満足する場合である。
a+Θ+γ=α×C×L+V×H×L+γ=π/2 ・・・式(7)
【0040】
このように、濃度の異なる特定成分を含む被検試料について、自然旋光性物質による偏光方向の回転aと光ファラデー効果による偏光方向の回転とが加算された偏光方向(a+Θ+γ)を一定にして測定された透過光強度に基づいて作成された、特定成分の濃度と透過光強度との相関を示す検量線を用いることにより特定成分の濃度を算出することができる。
ここで、検量線を作成する際の偏光方向(a+Θ+γ)としては、0またはπ/2であることが好ましい。偏光方向(a+Θ+γ)が0の場合、透過光強度が極大値を示し、偏光方向(a+Θ+γ)がπ/2の場合、透過光強度が極小値を示す。透過光強度が極大値または極小値を示す点では透過光強度の変化方向が反転するため、検量線を作成する際に用いる透過光強度を容易に抽出することができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、入射面、出射面が共に図1の紙面に平行な偏光方向の光を透過する偏光子として機能している場合(図10におけるγ=0)を示したが、どちらか一方が、紙面に垂直な偏光方向の光を透過する偏光子として機能している場合、即ち入射面と出射面との透過させる偏光方向の相対角度γがπ/2でありかつa<<1の場合は、極小値を示す透過光強度を用いた方が印加する磁場の強度を小さくできるので好ましい。
【0042】
[実施の形態2]
本実施の形態の特定成分計測方法を実施するための装置(即ち、本実施の形態に係る特定成分計測装置)の構成を図5に示す。なお、以下の説明では、実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
図5に示す計測装置において、信号発生器10は振動変調信号を駆動器7に供給する。駆動器7はこの振動変調信号を振動変調電流信号に変換してコンピュータ9から指令された掃引電流に重畳し、これをソレノイドコイル13に供給する。本実施の形態では、1.3KHzの変調信号を振幅=0.02Aの振動変調電流信号に変換して、ソレノイドコイル13に供給している。
【0043】
また、ロックインアンプ11は、信号発生器10の振動変調信号を参照信号として、光センサ8の出力信号を位相敏感検波する。コンピュータ9は、光センサ8およびロックインアンプ11の出力信号を解析する。本実施の形態における被検試料12は生体である。
ソレノイドコイル13は、生体12中の略平行光2の伝搬方向に実質的に均質に印加できるように構成されているとともに、発熱などで生体にダメージを与えないような筐体に収容されている。また、この筐体は、生体の同位置に略平行光を照射できるように、生体を固定できる形状をしている。
【0044】
本実施の形態の動作を以下の式(8)を用いて説明する。なお、式(8)では、簡単のため、特定成分の吸光の影響の項(exp(−A×C×L)を除いて表現している。
I=B‘×I0×(COS(a+Θ+δ×SIN(ω×t)))2
・・・式(8)
(式(8)中、δ:振動変調信号により変調された偏光方向の振幅
ω:振動変調信号の角周波数
t:時間)
Θがπ/2付近、即ちΘ≒π/2であるときは、つぎの式(9)のように表現できる。
Θ=π/2+β ・・・式(9)
(式(9)中、|β|≪1)
【0045】
式(9)を式(8)に代入すると次の式(10)が導出される。
I=B‘×I0×(SIN(β+α+δ×SIN(ω×t)))2
・・・式(10)
ここで、自然旋光性物質による偏光方向の回転角度a、および振動変調の偏光方向の振幅を小さい、即ち|α|≪1、δ≪1、とすると、式(10)はつぎの式(11)のように近似される。
I≒B‘×I0×(β+α+δ×SIN(ω×t))2
=B‘×I0×((β+α)2+2×(β+α)×δ×SIN(ω×t)
+(δ×SIN(ω×t))2
=B‘×I0×((β+α)2+2×(β+α)×δ×SIN(ω×t)
+(δ2/2×(1−COS(2×ω×t)))) ・・・式(11)
【0046】
式(11)より、光センサの出力信号に相当するIには、角周波数0(直流)、ω、2×ωの各信号成分が存在することがわかる。このIを振動変調信号を参照信号としてロックインアンプ11で位相敏感検波すると、角周波数ω成分、即ちつぎの式(12)に示すSを取り出すことができる。
S=B‘×I0×2×(β+α)×δ ・・・式(12)
このSは、β+α=0の時、即ちΘ+a=π/2時に、ゼロになる。言い換えると、式(7)を満足する際に、S=0になる。
【0047】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、光源1が水溶液中のグルコースが吸収する波長の光を発し、コンピュータ9が駆動器7に指令信号を発し、ソレノイドコイル13に流す電流を−5〜+5Aまで掃引する。
被検試料が指である場合の例を示す。図6および7は、光センサ8の出力信号の電流依存性を示す予測図であり、横軸はソレノイドコイル13に流す電流J、縦軸は光センサ8の出力信号(任意値)を示している。図7は、図6の縦軸を拡大した図である。また図8は、ロックインアンプ11の出力信号Sの電流依存性を示す予測図である。図8において、横軸は、ソレノイドコイル13に流す電流J、縦軸はロックインアンプ11の出力信号S(任意値)を示している。図6、7、8の◆と▼は、同一生体だが、計測する時刻が異なるため、生体中のグルコース濃度が異なる。
【0048】
本実施の形態の場合、被検試料が生体であるため、二色性を有する皮膚の入射面と出射面との透過させる偏光方向の相対角度γが未知であるが、Θ+a+γ=π/2を満足する時に、光センサ8の出力信号は極小値を示す。この極小値を示す場合、ロックインアンプの出力信号Sは図8で示したように、ゼロになる。この極小値は、a+γの大きさに関わらず、特定成分の吸光現象のみに影響される。
したがって、図7の極小値を用いて検量線を作成し、測定対象である被検試料について、ロックインアンプの出力信号Sがゼロになるように、駆動器7を制御して光センサの出力信号の極小値を測定し、検量線を参照することにより被検試料中の特定成分の濃度を求めることができる。
【0049】
ただし、透過光強度が小さい場合、この極小値の値が小さくなるので、この極小値の計測精度が低下することがある。このような場合、コンピュータ9により、ロックインアンプの出力信号Sがゼロになるように、駆動器7を制御しこの状態を維持して、光センサ8の出力信号を積算し、積算した結果を、その積算回数または積算時間で除して、それを透過光強度として検量線を作成、その検量線と計測値を対比して濃度を算出することで、極小値の計測精度を向上できる。
ロックインアンプの出力信号Sは、光センサ8の出力信号に比べてS/Nが大きいため、光センサ8の出力信号が極小値を示す状態を高精度に維持できる。
【0050】
以上のように本実施の形態によれば、被検試料に磁場を印加し、その磁場を振動変調しながら掃引することにより、透過光強度が小さい場合でも、高精度にΘ+a+γ=π/2を満足する状態を維持でき、その実用的効果は極めて大きい。
本発明の本質は、皮膚などの二色性が存在し、同時に入射面と出射面との透過させる偏光方向の相対角度が未知である場合、被検試料に磁場を印加し、透過光強度の極大値または極小値から特定成分の濃度を算出することで、二色性および自然旋光性物質による偏光方向の回転の影響を除去できる。言い換えると、入射面と出射面の二色性の結果生じる透過光強度の低下度合いを、自然旋光性物質の濃度に関わらず、一定に維持することできるので、透過光強度より特定成分の濃度を高精度に算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の特定成分計測方法および特定成分計測装置は、吸光分光計測により、生体などの物質中の特定成分の濃度を計測する技術に関し、特に皮膚などの生体表面が二色性を有する場合に有効な技術に関する。よって、本発明は、生体計測方法および生体計測装置として好適に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1の特定成分計測装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1においてソレノイドコイルに流す電流と光センサの出力信号との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態1においてソレノイドコイルに流す電流と光センサの出力信号との関係を示す別のグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1においてグルコース濃度と出力信号(任意値)の対数との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態2の特定成分計測装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2においてソレノイドコイルに流す電流と光センサの出力信号との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態2においてソレノイドコイルに流す電流と光センサの出力信号との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態2においてソレノイドコイルに流す電流とロックインアンプの出力信号との関係を示すグラフである。
【図9】従来の特定成分計測装置の構成を示す図である。
【図10】従来の技術において被検試料中の特定成分の濃度を算出する際の精度が制限される理由を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
1 光源
2 略平行光
3 円筒型部材
4 ポーラロイド板
5 ポーラロイド板
6 ソレノイドコイル
7 駆動器
8 光センサ
9 コンピュータ




 

 


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