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発明の名称 光学素子の製造方法、光学素子、投射型表示装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−33746(P2007−33746A)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
出願番号 特願2005−215530(P2005−215530)
出願日 平成17年7月26日(2005.7.26)
代理人 【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
発明者 張 惠萍
要約 課題
偏光素子や回折格子として用いることができ、耐熱性ないし耐光性を備えた信頼性の高い光学素子を、比較的簡易で生産性に優れた光学素子の製造方法と、これによって得られる光学素子、及びこの光学素子を用いた投射型表示装置を提供する。

解決手段
誘電体からなる基板2上に導電体からなる縞状のパターン(グリッド3)を有した光学素子の製造方法である。光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜5を形成した基板2を用意し、多孔質膜5上に、化合物層8を形成する。不活性雰囲気にて多孔質膜5に選択的に光を照射し、多孔質膜5上の化合物層8を選択的に還元して金属を縞状に生成する。この化合物層8から化合物を選択的に除去し、第1金属層6aを形成する。第1金属層6a上に、電解めっき処理によって第2金属層6bを形成し、縞状のパターン(グリッド3)を形成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
誘電体からなる基板上に導電体からなる縞状のパターンを有した光学素子の製造方法であって、
前記基板として、その一方の面に光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜を形成したものを用意し、該基板の前記多孔質膜上に、前記パターンの少なくとも一部となる金属の化合物層を形成する工程と、
不活性雰囲気にて前記多孔質膜に選択的に光を照射し、該多孔質膜上の前記化合物層中の化合物を選択的に還元して金属を縞状に生成する工程と、
前記金属生成後の化合物層から化合物を選択的に除去し、前記金属からなる縞状のパターンを形成する工程と、
前記金属からなる縞状のパターン上に、電解めっき処理によって導電体層を形成し、前記の縞状のパターンを形成する工程と、を備えてなることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒作用を有する金属化合物がTiOであることを特徴とする請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記金属の化合物層に選択的に照射する光が、レーザ光であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光の選択的照射を、多光束干渉露光法で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記電解めっき処理によって形成する導電体層となる導電体が、銀、金、銅、パラジウム、白金、アルミニウム、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、又はこれらの合金のうちの一種あるいは複数種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項6】
誘電体からなる基板上に光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜が形成され、該多孔質膜上に、該多孔質膜の光触媒作用によって還元されてなる金属を含む、縞状の導電体パターンが形成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項7】
光源装置と、該光源装置から出射した光を変調する光変調装置と、該光変調装置により変調された光を投射する投射装置とを備える投射型表示装置であって、
前記光変調装置の光入射側と光出射側とに偏光素子が配設されてなり、該偏光素子が請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法により製造された光学素子、あるいは請求項6に記載の光学素子によって構成されてなることを特徴とする投射型表示装置。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法、光学素子、投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ等の投射型表示装置における光変調装置として、液晶装置が用いられている。このような液晶装置としては、対向配置された一対の基板間に液晶層が挟持された構成のものが知られており、この一対の基板の内側には、液晶層に電圧を印加するための電極が形成されている。また、この電極の内側には、電圧無印加時において液晶分子の配列を制御する配向膜が形成され、配向膜としてはポリイミド膜の表面にラビング処理を施したものが公知である。
【0003】
一方、一対の基板の外側(液晶層に対向する面とは異なる面側)には偏光板が配設されており、液晶層に対して所定の偏光が入射される構成となっている。偏光板としては、有機化合物の樹脂フィルムを一方向に延伸することによってヨウ素や二色性染料を一定方向に配向させて製造される偏光フィルムの他、特許文献1に開示されたようなワイヤーグリッド型の偏光素子とその製造方法が知られている。
【0004】
この特許文献1における偏光素子の製造方法は、透明基板の表面に、複数の直線状の凹部を互いに平行に所定の間隔をもって刻設して第1の凹凸構造を形成する第1の凹凸構造形成工程と、液相析出法によって前記第1の凹凸構造に誘電体を略均一の厚さに析出させて、前記第1の凹部の幅よりも狭い幅の複数の第2の凹部を有する第2の凹凸構造を形成する第2の凹凸構造形成工程と、前記複数の第2の凹部に導電体を埋設する導電体埋設工程とを有した構成となっている。
【特許文献1】特開2002−328222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の偏光素子の製造方法では、第1の凹凸構造の表面に誘電体層として二酸化珪素を形成する際、二酸化珪素が過飽和状態で含有される珪弗化水素酸(HSiF)溶液に透明基板を接触させて、この珪弗化水素酸溶液中の二酸化珪素成分を透明基板の表面に析出させる、液相析出法を採用している。
しかしながら、劇毒物である珪弗化水素酸から二酸化珪素(SiO)を析出しているため、珪弗化水素酸の取り扱いが困難であり、また、生成物となるHFも劇毒物であって特別な除去処理が必要となることから、専用の設備が必要となるなど、製造そのものが非常に困難になり、コストも高くなってしまう。
また、過飽和状態の珪弗化水素酸にはSiOパーティクルが多少含まれているので、前記の第1の凹凸構造の表面、すなわち凹部の壁面や底面に二酸化珪素を均一に付着するのが困難である。
さらに、第2凹凸構造上の凸部に残留した導電体を除去する工程が必要となるので、プロセスが複雑になる。
【0006】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、偏光素子や回折格子として用いることができ、耐熱性ないし耐光性を備えた信頼性の高い光学素子を、比較的簡易であり高い生産性で製造することのできる製造方法と、これによって得られる光学素子、及びこの光学素子を用いた投射型表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明の光学素子の製造方法は、誘電体からなる基板上に導電体からなる縞状のパターンを有した光学素子の製造方法であって、
前記基板として、その一方の面に光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜を形成したものを用意し、該基板の前記多孔質膜上に、前記パターンの少なくとも一部となる金属の化合物層を形成する工程と、
不活性雰囲気にて前記多孔質膜に選択的に光を照射し、該多孔質膜上の前記化合物層中の化合物を選択的に還元して金属を縞状に生成する工程と、
前記金属生成後の化合物層から化合物を選択的に除去し、前記金属からなる縞状のパターンを形成する工程と、
前記金属からなる縞状のパターン上に、電解めっき処理によって導電体層を形成し、前記の縞状のパターンを形成する工程と、を備えてなることを特徴としている。
【0008】
この光学素子の製造方法によれば、基板上に導電体からなる縞状のパターン、すなわちグリッドを形成するので、得られる光学素子が光子トンネル効果及びグリッド内共鳴効果を発揮するようになり、したがって、光学特性に優れた光学素子を製造することが可能になる。具体的には、該光学素子を偏光素子として用いた場合に、偏光選択性が非常に高いものとなる。
また、光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜を用いて化合物層中の化合物を選択的に還元し、電界めっきを行う際の電極となる金属を形成するので、劇毒物などの取り扱いが困難な物質を用いないことから工程が比較的簡易になる。また、電界めっき処理によって導電体層を形成するので、該導電体層を比較的迅速に形成することができ、また、その厚さの制御も容易になる。また、電界めっき処理による導電体層の形成は材料選択の幅が広く、様々な導電体材料(金属材料)でグリッドを形成することが可能となる。さらに、本発明ではドライエッチング等の過酷な工程が不要で、前述したように工程が比較的簡易になることから、生産性が非常に高くなり、したがって安価な光学素子を提供することが可能となる。
【0009】
また、前記光学素子の製造方法においては、前記光触媒作用を有する金属化合物がTiOであるのが好ましい。
TiOは光触媒作用が強く、したがって光の照射を受けることにより化合物層中の化合物をより良好に還元するようになる。
【0010】
また、前記光学素子の製造方法においては、前記金属の化合物層に選択的に照射する光が、レーザ光であるのが好ましい。
このようにすれば、より精細な光照射が可能になり、したがって選択的な光照射による金属の生成をより良好にかつ簡易に行うことができる。
なお、このようにレーザ光を用いる場合、これによる選択的照射を、多光束干渉露光法で行うのが好ましい。
多光束干渉露光法として例えば二光束干渉露光法を用いれば、レーザ光の波長より小さい幅での選択的な光照射も可能になり、したがってより微細な光照射が可能になる。
【0011】
また、前記光学素子の製造方法においては、前記電解めっき処理によって形成する導電体層となる導電体が、銀、金、銅、パラジウム、白金、アルミニウム、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、又はこれらの合金のうちの一種あるいは複数種であるのが好ましい。
このようにすれば、グリッド(縞状のパターン)の導電率と比誘電率とが比較的大きい導電体となり、例えば得られる光学素子を偏光素子とした場合に、入射光の反射及び吸収特性が大きくなり、偏光特性が一層向上する。
【0012】
本発明の光学素子は、誘電体からなる基板上に光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜が形成され、該多孔質膜上に、該多孔質膜の光触媒作用によって還元されてなる金属を含む、縞状の導電体パターンが形成されていることを特徴としている。
この光学素子によれば、誘電体からなる基板上に縞状の導電体パターン、すなわちグリッドを形成しているので、光子トンネル効果及びグリッド内共鳴効果を発揮するようになり、したがって、光学特性に優れたものとなる。具体的には、該光学素子を偏光素子として用いた場合に、偏光選択性が非常に高いものとなる。
また、導電体パターンが、光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜によって還元されてなる金属を含んでいるので、例えばこの金属を電極として電界めっきを行うことにより、導電体パターンを容易に形成することができ、したがって製造工程が比較的簡易で生産性に優れたものとなる。
【0013】
本発明の投射型表示装置は、光源装置と、該光源装置から出射した光を変調する光変調装置と、該光変調装置により変調された光を投射する投射装置とを備える投射型表示装置であって、
前記光変調装置の光入射側と光出射側とに偏光素子が配設されてなり、該偏光素子が前記の方法により製造された光学素子、あるいは前記の光学素子によって構成されてなることを特徴としている。
この投射型表示装置によれば、光学特性に優れた偏光素子を配設してなるので、この表示装置自体も良好な表示特性を有するものとなる。また、偏光素子の製造工程が比較的簡易であり、生産性に優れたものとなっているので、この表示装置自体も生産性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
[プロジェクタ]
図1は、本発明の投射型表示装置の一実施形態であるプロジェクタの、要部を示す概略構成図である。本実施形態のプロジェクタは、光変調装置として液晶装置を用いた液晶プロジェクタである。
【0016】
図1において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は液晶装置からなる光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズ、831、832、833は入射側の偏光板(光学素子)、834、835、836は出射側の偏光板である。
【0017】
光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。なお、光源810としては、メタルハライド以外にも超高圧水銀ランプ、フラッシュ水銀ランプ、高圧水銀ランプ、Deep UVランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ等を用いることも可能である。
【0018】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、偏光板831を介して赤色光用液晶光変調装置822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、偏光板832を介して緑色光用液晶光変調装置823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が偏光板833を介して青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0019】
各光変調装置822〜824により変調された3つの色光は、各色偏光板834〜836を介してクロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0020】
ここで、本実施形態のプロジェクタにおいては、偏光板831〜836として、無機材料からなるものを採用している。メタルハライドランプ811からなる光源810は高エネルギーの発光が行われるものであるため、有機材料では高エネルギーの光により分解ないし変形が生じるおそれがある。そこで、耐光性及び耐熱性の高い無機材料(金属材料を含む)で偏光板831〜836を構成している。
【0021】
図2は偏光板831〜836(以下、これらを総称して偏光板1とも言う)の概略構成を示す斜視図、図3は偏光板1の平面模式図、図4は偏光板1の断面模式図、図5は偏光板1を光が透過する際の作用を示す説明図である。
【0022】
偏光板1は、本発明の製造方法により得られる光学素子、すなわち偏光素子からなるもので、光源810から出射した各色光を、偏光選択して直線偏光のみを透過させるものである。具体的には、図2に示すように基板2上に、グリッド(格子)3を有して構成されたものである。基板2は、ガラス基板等の誘電材料からなる透光性の基板本体4と、この基板本体4の一方の面上に形成された多孔質膜5とによって構成されたものである。多孔質膜5は、光触媒作用を有する金属化合物、本実施形態では後述するように二酸化チタン(TiO)によって形成されたものである。
【0023】
グリッド3は、導電体からなる複数の格子要素6が縞状(ストライプ状)のパターンに配設されて構成されたものである。このグリッド3は、図3に示すように、格子要素6の幅と格子要素6、6間の間隔との和P、すなわち格子要素6のピッチに相当する長さが、入射光の波長よりも小さい値であって、例えば140nm以下に設定されている。また、格子要素6の幅は、例えば70nm以下に設定されており、製造上の都合もあるが、入射光の波長の1/10程度にするのがより好適とされている。なお、格子要素6、6の間隙に形成される線状の溝パターン7は空間とされているが、例えば透光性の誘電体材料を挿入するものとしてもよい。
【0024】
また、格子要素6は、図2及び図4に示すように積層構造を有している。本実施形態では、多孔質膜5上に、銀からなる第1金属層6aと、アルミニウム等からなる第2金属層6bとが積層された構成となっている。第2金属層6bは、後述するように第1金属層6aを電極として、電界めっき処理で形成されたものである。
【0025】
なお、積層体である格子要素6の高さは例えば10nm〜50nm程度となっている。また、第2金属層6bを構成する導電体材料としては、アルミニウム以外にも、銀、金、銅、パラジウム、白金、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、又はこれらの合金を用いることができる。さらに、これらのうちの複数種を用い、第2金属層6bを複数の層で形成してもよい。また、第1金属層6aについても、銀以外の、前記したような金属を用いることができる。
【0026】
このような偏光板1は、図5に示すように、格子要素6の屈折率nAと、格子要素6間に介在する空間(溝パターン)7の屈折率nBとが異なるため、偏光板1に入射した光の偏光方向により、偏光選択が行なわれる。具体的には、格子要素6の延在方向と垂直な方向に偏光軸を有する直線偏光Xを透過させ、格子要素6の延在方向と平行な方向に偏光軸を有する直線偏光Yを反射する。したがって、本実施形態の偏光板1は、光反射型偏光子と同じ作用、すなわち光軸(透過軸)と平行な偏光を透過させ、垂直な偏光に対しては反射させる作用を有している。また、格子要素6が第1金属層6aと第2金属層6bとの積層体からなるため、光子トンネル効果及びグリッド内共鳴効果が生じ、偏光選択性が非常に高いものとなっている。
【0027】
偏光板1を透過して生成された直線偏光は、光変調手段としての液晶装置822〜824に入射する。液晶装置822〜824は、例えば図6に示したような構成を備えている。図6は、液晶装置822〜824の断面模式図である。
【0028】
液晶装置822〜824は、ガラスやプラスチック等の透明基板で構成される2枚の基板(素子基板10,対向基板20)を含んで構成され、該一対の基板10,20間に液晶層50が挟持されている。素子基板10の液晶層50側にはITO等で構成された透明電極9がマトリクス状に形成されており、透明電極9のさらに液晶層50側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜11が基板全面に形成されている。
【0029】
一方、対向基板20の液晶層50側には、基板全面にベタ状の透明電極23が形成されており、透明電極23のさらに液晶層50側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜21が基板全面にベタ状に形成されている。
【0030】
図6の構成においては、一対の基板10,20が、シール材(図示略)を介して貼り合わせられ、その内部に液晶が封入されている。この場合、液晶層50の液晶モードとしてTN(Twisted Nematic)モードが採用されているが、その他にもSTN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等を採用することができる。
【0031】
素子基板10は、ガラスや石英等の透光性の基板であって、画素電極9に対する電圧印加をスイッチング駆動するTFT素子(図示略)を備えている。画素電極9はITO(インジウム錫酸化物)等の透光性かつ導電性の材料にて構成されており、膜厚が50nm〜100nm程度(例えば85nm)とされている。また、配向膜11はSiOの斜方蒸着材料から構成されており、液晶分子の配向を規制している。なお、配向膜11の膜厚は1nm〜10nm程度(例えば5nm)とされている。
【0032】
一方、対向基板20は、素子基板10と同様、ガラスや石英等の透光性の基板から構成されており、その液晶層側にITO(インジウム錫酸化物)等の透光性かつ導電性の材料にて構成された共通電極23が、膜厚50nm〜150nm程度(例えば140nm)に形成されている。また、共通電極23のさらに液晶層側には、SiOの斜方蒸着材料から構成される配向膜21が形成されており、その膜厚は1nm〜10nm程度(例えば5nm)とされている。
【0033】
このような液晶装置822〜824では、図1に示した偏光板831,832,833を介して入射する直線偏光の位相制御が行われる。つまり、電極9,23に対する印加電圧により液晶層50の駆動制御を行い、入射光の位相を制御するものとしている。位相制御された光は、光出射側に配設された偏光板834,835,836に入射して変調される。
【0034】
液晶装置822〜824及び偏光板831〜836で変調された各色光は、前述した通り、クロスダイクロイックプリズム825に入射して形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0035】
本実施形態では、偏光板1(831〜836)に関して有機材料を用いないものとしている。つまり、メタルハライドランプから供給される高エネルギー光により劣化する惧れのある有機材料を排除して、無機材料及び/又は金属材料から偏光板1(831〜836)を構成している。また、偏光板1(831〜836)は、以下に示すような方法により製造しているため、製造工程が比較的簡易で生産性に優れたものとなっている。
【0036】
[偏光板の製造方法]
以下、図2〜図4に示した偏光板1の製造方法に基づき、本発明の光学素子(偏光素子)の一例について説明する。図7は、偏光板1の製造工程を示す断面模式図である。
【0037】
まず、図7(a)に示すように、基板2として、ガラス基板等の誘電材料からなる透光性の基板本体4の一方の面に、光触媒作用を有する金属化合物(本実施形態ではTiO)の多孔質膜5を形成したものを用意する。この多孔質膜5の形成については、TiOの前駆体材料、例えばチタンをアセチルアセテトンに溶解させてなる有機チタン錯塩などを用い、これを基板本体4上に塗布し、さらに加熱することによって行う。具体的には、大気雰囲気にて500℃程度に加熱した基板本体4上に、前記の前駆体材料(有機チタン錯塩)をスプレー法やスピンコート法で塗布し、その状態で所定時間(例えば数十秒〜数分)保持した後、基板本体4を常温にまで冷却する。
【0038】
このようにして前記の前駆体材料を塗布し加熱することにより、該前駆体材料中から有機成分を分解させて、基板本体4上にTiO膜を形成することができる。また、このとき、膜中から有機成分が分解し除去されることなどにより、膜表面が多孔質化し、結果として得られるTiO膜は、例えば孔径が数nm〜数十nm、孔間ピッチも数nm〜数十nmである、多孔質となる。ここで、このような孔径や孔間ピッチなどについては、前駆体材料の加熱温度(基板本体4についての加熱温度)や、加熱時間などを調整することにより、制御することができる。すなわち、前駆体材料中のTi濃度や、この前駆体材料の塗布厚、さらには前駆体材料の加熱温度、加熱温度等を適宜に調整することにより、所望の多孔質度を有する多孔質膜を得ることができる。
【0039】
なお、多孔質膜5の形成については、TiOの前駆体材料を用いることなく、TiOそのものの分散液(コーティング液)を基板本体4に直接塗布し、加熱乾燥することで行ってもよい。また、このような透光性の基板本体4の一方の面に多孔質膜5を形成した基板2としては、市販されているものもある。したがって、そのような市販の基板2をそのまま用い、後の処理に供するようにしてもよい。
【0040】
次に、図7(b)に示すように、この基板2の前記多孔質膜5上に、前記のグリッド3の少なくとも一部となる金属、すなわち、前記第1金属層6aとなる金属の化合物層8を形成する。具体的には、前記第1金属層6aとなる銀の化合物として、硝酸銀等の無機化合物や銀アルコキシド等の有機化合物の溶液または分散液を前記多孔質膜5上に配し、乾燥することにより、化合物の微粒子を多孔質膜5上に均一に付着させて化合物層8を形成する。このようにして化合物層8を形成すると、この化合物層8を構成する銀化合物の微粒子が、多孔質膜5の孔内に付着してここに保持される。
【0041】
次いで、この基板2を窒素雰囲気などの不活性雰囲気にした処理室内に入れ、例えば前記化合物層8側から選択的に光を照射し、該化合物層8を透過させることで、前記多孔質膜5に選択的に光を照射する。具体的には、図7(c)に示すように縞状のパターンに光を照射する。すると、多孔質膜5を構成するTiOの光触媒作用により、前記化合物層8中の化合物(銀化合物の微粒子)が選択的に還元され、金属としての銀が生成する。
なお、光の照射については、基板本体4として透光性のものを用いていることから、化合物層8側からでなく、基板本体4の裏面側、すなわち化合物層8と反対の側から照射してもよい。
【0042】
ここで、TiOの光触媒作用を説明する。
TiOは、光の照射を受けると電子を放出する。この電子は、例えば大気圧雰囲気中であれば酸素を活性化させて活性酸素を生成させ、殺菌力などを発揮させる。しかし、本発明では前述したように不活性雰囲気で光の照射を受け、電子を放出するため、この電子は多孔質膜5上に形成された化合物層8を還元するために供されるようになる。したがって、多孔質膜5に選択的に光を照射することにより、この光が照射された多孔質膜5のほぼ直上の化合物を選択的に還元し、金属を生成するようになる。このような還元作用によって生成した金属(銀)は、特に多孔質膜5の孔内に微粒子として付着した状態で形成され、さらに成長して微粒子間が連続することにより、図7(c)に示したように、多孔質膜5上にて縞状のパターンの第1金属層6aとなる。よって、光の照射時間等を調整することにより、得られる第1金属層6aの厚さや緻密性などを制御することができる。
なお、このような光触媒作用を有する金属化合物としては、TiO以外にも例えば酸化インジウム(In)や酸化スズ(SnO)などを挙げることができ、したがって、前記多孔質膜5を酸化インジウムや酸化スズなどによって形成することもできる。
【0043】
また、このように選択的に照射する光については、水銀ランプなどの一般的な光源を用い、マスクを用いることで選択的に照射するようにしてもよいが、レーザー光を用いるのが、より精細な光照射が可能になり、したがって選択的な光照射による金属の生成をより良好にかつ簡易に行うことができるため好ましい。また、このようにレーザ光を用いる場合、これによる選択的照射を、多光束干渉露光法で行うのが好ましい。多光束干渉露光法として例えば二光束干渉露光法を用いることにより、レーザ光の波長より小さい幅での選択的な光照射も可能になり、したがって、第1金属層6aを例えば70nm以下の幅に形成することが可能になる。
【0044】
次いで、図7(d)に示すように、例えば希硝酸を用いて前記化合物層8から銀化合物を選択的に除去し、前記金属(銀)からなる第1金属層6aを縞状のパターンに形成する。
その後、この第1金属層6aを電極として電解めっき処理を行い、第1金属層6a上に前記したアルミニウム等からなる金属(導電体層)を成長させ、図7(e)に示すように第2金属層6bを形成する。ここで、この第2金属層6bの形成を電解めっき処理によって行うため、その成膜速度が十分に速くなり、したがって生産性が良好になる。なお、この第2金属層6bについては、異なる金属(あるいは合金)による複層(積層)構造としてもよい。このように、例えば屈折率が異なる材料を積層して複層構造とすることにより、屈折異方性を良好にして光学特性を向上することができる。
【0045】
このようにして第2金属層6bを形成することにより、第1金属層6aと第2金属層6bとを積層してなる格子要素6を縞状のパターンに形成し、これによってグリッド3を形成することができる。そして、これにより図2〜4に示した偏光板1が得られる。
【0046】
このようにして得られた偏光板1(偏光素子)にあっては、無機材料と金属材料とからなっていることにより、耐熱性および耐光性に優れた高い信頼性を有するものとなる。また、誘電体からなる基板2上にグリッド3を形成しているので、光子トンネル効果及びグリッド内共鳴効果を発揮するようになり、したがって偏光選択性が非常に高いものとなる。
【0047】
また、このような偏光板1(偏光素子)の製造方法にあっては、前述したように信頼性が高く偏光選択性が非常に高い偏光板1(偏光素子)を容易に製造することができる。すなわち、光触媒作用を有する金属化合物の多孔質膜5を用いて化合物層8中の化合物を選択的に還元し、電界めっきを行う際の電極となる金属(第1金属層6a)を形成するので、劇毒物などの取り扱いが困難な物質を用いないことから工程が比較的簡易になる。また、電界めっき処理によって第2金属層6b(導電体層)を形成するので、該第2金属層6bを比較的迅速に形成することができ、また、その厚さの制御も容易に行うことができる。さらに、ドライエッチング等の過酷な工程が不要で、前述したように工程が比較的簡易になることから、生産性が非常に高くなり、したがって安価な偏光板1(偏光素子)を提供することができる。
また、電界めっき処理によって第2金属層6b(導電体層)を形成するようにしたので、その材料選択の幅が広くなり、様々な金属材料でグリッドを形成することができる。したがって、求められる光学特性に応じた種々の偏光素子(光学素子)を提供することができる。
【0048】
なお、前記実施形態では、本発明の光学素子を偏光素子(偏光板)として用いる例を示したが、その他にも回折素子やPBS(Polarized Beam Splitter)、位相差板として用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態のプロジェクタの概略構成を示す模式図。
【図2】偏光板の一実施形態を模式的に示す斜視図。
【図3】偏光板の一実施形態を模式的に示す平面図。
【図4】偏光板の一実施形態を模式的に示す側断面図。
【図5】偏光板の作用を示す説明図。
【図6】光変調装置として用いた液晶装置の一実施形態を模式的に示す断面図。
【図7】(a)〜(e)は偏光板の製造方法の一例を模式的に示す側断面図。
【符号の説明】
【0050】
1,831〜836…偏光板(偏光素子、光学素子)、2…基板、3…グリッド(縞状のパターン)、4…基板本体、5…多孔質膜、6…格子要素、6a…第1金属層、6b…第2金属層、7…溝パターン、8…金属の化合物層




 

 


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