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光学部品の製造方法及び光学部品 - セイコーエプソン株式会社
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発明の名称 光学部品の製造方法及び光学部品
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−25631(P2007−25631A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2006−72296(P2006−72296)
出願日 平成18年3月16日(2006.3.16)
代理人 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
発明者 駒井 秀紀 / 内藤 修二
要約 課題
プラスチックレンズ等の光学部品の耐擦傷性を向上させることができる光学部品の製造方法及びこの製造方法により製造された光学部品を提供すること。

解決手段
ハードコート層は、ハードコート液をプラスチック製の基材に塗布する塗布工程と、前記ハードコート液を加水分解反応により予備硬化させる仮焼成工程と、水分を予備硬化ハードコート層に添加する水分添加工程と、加水分解反応により前記ハードコート液の硬化を完結させる本焼成工程とを含むハードコート層形成工程により形成される。
特許請求の範囲
【請求項1】
プラスチック製の基材と、この基材上に形成されるハードコート層とを備える光学部品の製造方法であって、
前記ハードコート層は、ハードコート液を前記基材上へ塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後に前記基材上へ塗布された前記ハードコート液を加水分解反応により予備硬化させ予備硬化ハードコート層を得る仮焼成工程と、
前記仮焼成工程後に前記予備硬化ハードコート層へ水分を添加し水分含有予備硬化ハードコート層を得る水分添加工程と、
前記水分添加工程後に前記水分含有予備硬化ハードコート層を更なる加水分解反応により硬化を完結させる本焼成工程と、
を含むハードコート層形成工程により形成されることを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部品の製造方法において、
前記塗布工程がルチル型の結晶構造の酸化チタンを含有する無機酸化物粒子および下記(A)成分を含有したハードコート液を前記基材上へ塗布する工程を含むことを特徴とする光学部品の製造方法。
(A)一般式:RSiXで示される有機珪素化合物
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、Xは、加水分解性基を示す)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学部品の製造方法において、
前記水分含有予備硬化ハードコート層の、下記式(1)に示す含水率Wが0.005〜0.13質量%であることを特徴とする光学部品の製造方法。
W={(B−B1)−(A−A1)}/(B−B1) …(1)
(式中、Aは、上述の工程において、仮焼成工程後の基材及び予備硬化ハードコート層の質量。Bは、上述の工程において、水分添加工程後の基材及び水分含有予備硬化ハードコート層の質量。A1は、基材のみの質量。B1は、基材のみを、直接、水分添加工程を通過させた後の基材の質量。)
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学部品の製造方法において、
前記水分添加工程による前記予備硬化ハードコート層への水分の添加処理が、水に浸漬することにより行われることを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光学部品の製造方法において、
前記水分添加工程による前記予備硬化ハードコート層への水分の添加処理が、80%RH以上の湿度の環境下で行われることを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光学部品の製造方法において、
前記ハードコート層形成工程の後段で、前記ハードコート層上へ湿式法により、有機反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程を実施することを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光学部品の製造方法において、
前記有機反射防止膜が、内部空洞を有するシリカ系粒子と、
SiX3−n(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0又は1である)で示される有機珪素化合物とを含有することを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光学部品の製造方法により製造されたことを特徴とする光学部品。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の製造方法及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡レンズ等の光学部品の基材として、プラスチック製の基材が使用されている。プラスチック製の基材は、ガラス製の基材に比べ、軽量であり、成形性にも優れるものの、表面が非常に傷つきやすい。そこで、一般に、プラスチック製の基材上にハードコート層を形成し、耐擦傷性の向上を図っている。
例えば、プラスチック製の基材に硬化前のハードコート液を塗布した後、所定の加熱処理により硬化させることでハードコート層を形成する方法がよく用いられる。この硬化反応が不十分であると、ハードコート層による耐擦傷効果が十分に発揮できない。
そこで、ハードコート液を硬化させる工程(焼成工程)を仮焼成工程と本焼成工程との2段階に分けて、硬化反応をより完全に行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−019212号公報(第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法によってもハードコート液の硬化は完全ではないため、光学部品の耐擦傷性が十分であるとはいえなかった。また、ハードコート層の上には、一般に反射防止層が形成されるため、ハードコート層自身の硬度や反射防止層との密着性が十分でないと、光学部品が外界から物理的刺激を受けた場合に、いわゆる膜剥離を起こす可能性もある。特に、有機反射防止膜をハードコート層の上に形成した場合は、無機反射防止膜にくらべて表面が柔らかいため、ハードコート層の影響を強く受ける。
【0005】
本発明の目的は、ハードコート層となるハードコート液の硬化を十分に行うことにより、光学部品の耐擦傷性を向上させることができる光学部品の製造方法及びこの製造方法により製造された光学部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学部品の製造方法は、プラスチック製の基材と、この基材上に形成されるハードコート層とを備える光学部品の製造方法であって、前記ハードコート層は、ハードコート液を前記基材上へ塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記基材上へ塗布された前記ハードコート液を加水分解反応により予備硬化させ予備硬化ハードコート層を得る仮焼成工程と、前記仮焼成工程後に前記予備硬化ハードコート層へ水分を添加し水分含有予備硬化ハードコート層を得る水分添加工程と、前記水分添加工程後に前記水分含有予備硬化ハードコート層を更なる加水分解反応により硬化を完結させる本焼成工程と、を含むハードコート層形成工程により形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ハードコート液を硬化させる仮焼成工程と、ハードコート液の硬化を完結させる本焼成工程との間に、水分をハードコート層に添加する水分添加工程を備えているため、本焼成工程後に、ハードコート層に反射防止膜を形成した場合であっても、光学部品としての耐擦傷性に優れる。
この理由は必ずしも明確ではないが、仮焼成工程後に水分をハードコート層に含ませるため、ハードコート層に残存していた未反応のハードコート液成分が、本焼成工程で水分と反応して硬化反応を完結させたものと考えられる。その結果、ハードコート層自身の硬度が向上するとともに、反射防止膜やプラスチック製の基材との密着性も向上して、耐擦傷性に寄与したものと推定される。
【0008】
本発明では、前記塗布工程がルチル型の結晶構造の酸化チタンを含有する無機酸化物粒子および下記(A)成分を含有したハードコート液を前記基材上へ塗布する工程を含むことが好ましい。
(A)一般式:RSiXで示される有機珪素化合物
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、Xは、加水分解性基を示す)
【0009】
ここで、Rは、例えば、炭素数1〜6の炭化水素基である。
本発明によれば、ハードコート液が、ルチル型の結晶構造の酸化チタンを含有する無機酸化物粒子および所定の有機珪素化合物から構成されるので、硬化後のハードコート層として十分な硬度を持つことができ、光学部品表面の耐擦傷性を向上させることができる。
【0010】
本発明では、前記水分含有予備硬化ハードコート層の、下記式(1)に示す含水率Wが0.005〜0.13質量%であることを特徴とすることが好ましい。
W={(B−B1)−(A−A1)}/(B−B1) …(1)
(式中、Aは、上述の工程において、仮焼成工程後の基材及び予備硬化ハードコート層の質量。Bは、上述の工程において、水分添加工程後の基材及び水分含有予備硬化ハードコート層の質量。A1は、基材のみの質量。B1は、基材のみを、直接、水分添加工程を通過させた後の基材の質量。)
本発明によれば、仮焼成後のハードコート層の含水率が0.005質量%以上であるので、水分の添加効果により、ハードコート層の硬化が十分進み、耐擦傷性が向上する。また、この含水量は、0.13質量%以下であるので、焼成時にハードコート層にクラックが生じにくく光学部品としての外観も優れる。
【0011】
本発明では、前記水分添加工程による前記予備硬化ハードコート層への水分の添加が、水に浸漬することにより行われることが好ましい。
本発明によれば、水分の添加が、水に浸漬することにより行われるため、水分添加のための処理時間が短くてすむ。浸漬による処理時間は、1〜15分程度が好ましい。ここで、水温が低いとハードコート層の含水率が低いため、本焼成工程での硬化反応が十分でなく、ハードコート層の耐擦傷性が低い。逆に、水温が高すぎるとハードコート層にクラックが生じやすい。それ故、40〜60℃の温水を用いることが好ましい。また、水温が高い場合は短時間の浸漬を行うことが、逆に水温が低い場合は長時間の浸漬を行うことが望ましい。例えば、50℃15分〜60℃10分が好適である。
【0012】
本発明では、前記水分添加工程による前記予備硬化ハードコート層への水分の添加処理が、80%RH以上の湿度の環境下で行われることが好ましい。
本発明によれば、水分の添加が、80%RH以上の環境下で行われるので、水浸漬用の水槽を準備する必要もなく、基材を水槽に浸漬する手間も不要であり、水分の添加処理を容易に行うことができる。
温度は40℃〜60℃程度の範囲が好ましい。温度が低いと含水率が低く、含水率を上げるためには時間がかかる。温度または相対湿度を上げれば、処理に要する時間は短くてすむが、温度や相対湿度が高すぎたり、必要以上に長い時間処理を行うと、ハードコート層にクラックが発生する原因となる。より好ましい湿度の範囲は、90〜98%RHである。例えば、40℃の場合は90%RHで3日間程度処理することが好ましく、60℃であれば98%RHで12時間程度水分添加処理を行うことが好ましい。すなわち、40℃90%RH3日間〜60℃98%RH12時間が好適な範囲である。
【0013】
本発明では、前記ハードコート層形成工程の後段で、前記ハードコート層上へ湿式法により有機反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程を実施することが好ましい。
本発明によれば、湿式法により反射防止膜を形成するため、真空装置等の大型設備が不要となり、製造にかかるコストを低減させることが可能となる。また、ハードコート層、反射防止膜を連続して湿式法で形成できるので、光学部品の製造に手間を要しない。
さらには、乾式法で形成される無機物を主成分とする無機反射防止膜に比べ、湿式法で形成される有機膜の有機反射防止膜は、プラスチック製の基材およびハードコート層との熱膨張率差が小さいことから、加熱によるクラックの発生が起こりにくくなるので耐熱性に優れた光学部品とすることができる。
なお、この有機反射防止膜は、ハードコート層よりも屈折率が0.10以上低いことが反射防止効果の点で好ましい。
【0014】
本発明では、前記有機反射防止膜が、内部空洞を有するシリカ系粒子と、
23nSiX23-n(式中、R2は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X2は加水分解基であり、nは0又は1である)で示される有機珪素化合物とを含有することが好ましい。
本発明によれば、シリカ系粒子は、内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。これにより、内部空洞を有するシリカ系粒子は、内部空洞を有しないシリカ系粒子よりも屈折率が低くなり、有機反射防止膜の屈折率が低くなる。有機反射防止膜の屈折率を低くすることで、ハードコート層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
【0015】
本発明の光学部品は、上述した何れかの光学部品の製造方法により、製造されたことを特徴とする。
このような本発明の光学部品は、上述した何れかの光学部品の製造方法により、製造されているため、ハードコート層と基材、反射防止膜との密着性が向上している。それ故、ハードコート層が基材や反射防止膜とはがれにくく、耐擦傷性が向上したものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の光学部品は、例えば眼鏡用のプラスチックレンズであり、透明なプラスチック製の基材と、この基材上に形成されたハードコート層と、このハードコート層上に形成された有機反射防止膜、及び撥水膜とを備えている。
【0017】
(1.基材)
基材の材質としては、プラスチック製であればよく、特に限定されないが、屈折率が1.6以上の透明な素材を使用することが好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを、重合硬化して製造される、エピスルフィド系プラスチックを基材の素材として使用することができる。
【0018】
ポリチオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。
イソシアナート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
【0019】
また、メルカプト基を持つ化合物としても、公知の物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外にも、硫黄原子を含むポリチオールがより好ましく用いられ、その具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
【0020】
また、エピスルフィド系プラスチックの原料モノマーとして用いられる、エピスルフィド基を持つ化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0021】
本発明における基材の重合方法としては、特に限定される物ではなく、一般に基材の製造に用いられている重合方法が、何ら制限なく使用される。例えば、ビニル系モノマーを用いる場合には、有機過酸化物等の熱重合開始剤を用いて、熱硬化を行い、基材を製造することができる。また、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を用いて、紫外線を照射することによってモノマーを硬化させ、基材を製造することもできる。
【0022】
イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチックを、基材の素材として使用する場合には、イソシアネート基または、イソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を混合した後、ウレタン樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱硬化することによって製造できる。
硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
【0023】
エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合させることによって得られる、エピスルフィド系のプラスチックを基材の素材として使用する場合には、エピスルフィド基を持つ化合物を単独で、または、エピスルフィド基と共重合可能な他のモノマーと混合した後、エポキシ樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって製造できる。
【0024】
エポキシ樹脂用の硬化触媒は特に制限はないが、具体例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン、エチルメチルイミダゾール等のイミダゾール類、などが挙げられる。
また、エピスルフィド基を持つ化合物と共重合可能な他のモノマーとしては、水酸基を持つ化合物、メルカプト基を持つ化合物、1級または2級アミン、カルボキシル基を持つ化合物などが挙げられる。
【0025】
水酸基を持つ化合物の具体例としては、イソプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート等の多価アルコール類が挙げられる。メルカプト基を持つ化合物の具体例としては、チオフェノール、エチルチオグリコレート、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
なお、上述したプラスチック製の基材には、必要に応じて染色処理が施される。
【0026】
(2.ハードコート層)
ハードコート層は、以下の(A)成分と、(B)成分とを有する。
(A)一般式:RSiXで示される有機珪素化合物
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、Xは、加水分解性基を示す)
(B)ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子
【0027】
(A)成分は、ハードコート層のバインダー剤としての役割を果たす。
(A)成分の化学式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、炭素数は1〜6である。Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。
また、Xは、加水分解可能な官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
【0028】
(A)成分の有機珪素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。
この(A)成分の有機珪素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(B)成分の酸化チタンの平均粒径は、1〜200nm、好ましくは5〜30nmである。また、(B)成分の無機酸化物粒子は、酸化チタンのみを含有するものであってもよく、酸化チタンと他の無機酸化物とを含有するものであってもよい。
例えば、酸化チタンと、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等金属の酸化物を混合して使用してもよい。
さらに、(B)成分の無機酸化物粒子は、酸化チタンと他の無機酸化物との複合粒子であってもよい。
複合粒子を使用する場合には、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等の金属の酸化物と、酸化チタンとが複合したものを使用すればよい。
【0030】
(B)成分を(A)成分と混合して、ハードコート層を形成するためのハードコート液を製造する際には、(B)成分が分散したゾルと、(A)成分とを混合することが好ましい。
(B)成分であるルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を分散媒、例えば、水、アルコールもしくはその他の有機溶媒に分散させる。無機酸化物粒子の分散安定性を高めるために、無機酸化物粒子の表面を有機珪素化合物、アミン系化合物で処理してもよい。
この際、使用される有機珪素化合物としては、単官能性シラン、二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等が例示できる。
アミン系化合物としては、アンモニウム、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが例示できる。
これらの有機珪素化合物、アミン化合物の添加量は、無機酸化物粒子の重量に対して1〜15%程度の範囲であることが好ましい。
【0031】
(B)成分の配合量は、ハードコート層の硬度や、屈折率等により決定されるものであるが、ハードコート液中の固形分の5〜80重量%、特に10〜50重量%であることが好ましい。配合量が少なすぎると、ハードコート層の耐磨耗性が不十分となり、配合量が多すぎると、ハードコート層にクラックが生じることがある。また、ハードコート層を染色する場合には、染色性が低下する場合もある。
【0032】
さらに、ハードコート層は、(A)成分、(B)成分だけでなく、(C)成分として、多官能性エポキシ化合物を含有してもよい。
多官能性エポキシ化合物は、基材に対するハードコート層の密着性を向上させるとともに、ハードコート層の耐水性を向上させることができる。
ハードコート層上の反射防止膜を有機膜で形成した場合には、反射防止膜の膜厚が非常に薄くなることが多く、特に、反射防止膜に内部空洞を有するシリカ系粒子を使用する場合には、水を通すために、ハードコート層に耐水性が必要となる。
【0033】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0034】
なかでも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物が好ましい。
【0035】
さらに、ハードコート層に硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒としては、例えば、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Be(II)、Ce(III)、Ta(III)、Ti(III)、Mn(III)、La(III)、Cr(III)、V(III)、Co(III)、Fe(III)、Al(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトナート、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。
この中でも最も好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナートが挙げられる。中でも、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセナートを使用することが好ましい。
硬化触媒の添加量は、ハードコート液の固形分濃度の0.01〜5.0重量%の範囲内が望ましい。
【0036】
ハードコート層の膜厚は、0.05〜30μmであることが好ましい。0.05μm未満では、基材を保護するというハードコート層の基本的機能が発揮できず、30μmを超えると、ハードコート層の表面の平滑性が損なわれることとなる。
【0037】
(3.反射防止膜)
本実施形態における反射防止膜は、有機反射防止膜であって、単層の有機膜で構成されており、ハードコート層よりも0.10以上屈折率が低く、膜厚は50〜150nmである。
有機反射防止膜の屈折率は、ハードコート層よりも、0.10以上低ければよいが、0.15以上低いことが好ましく、さらには、0.20以上低いことが特に、好ましい。
有機反射防止膜は、以下の(D)成分、(E)成分を含有する。
(D)一般式:RSiX3−n(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0又は1である)で示される有機珪素化合物
(E)内部空洞を有するシリカ系粒子
【0038】
(D)成分のRの重合可能な反応基を有する有機基は、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。
(D)成分のRの炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が例示できる。
さらに(D)成分のXとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
【0039】
(D)成分の有機珪素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等があげられる。これら2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
(E)成分の内部空洞を有するシリカ系粒子の平均粒径は、以下のようであることが好ましい。
(平均粒径)=(設計波長(nm)/反射防止膜屈折率)×1/4
【0041】
有機反射防止膜には、上記(D)成分、(E)成分の他に、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の樹脂や、これらの樹脂の原料となるメタアクリレート類、アクリレート類、エポキシ類、ビニル類等の各種モノマーを添加することが可能である。
さらに、これらの成分以外に、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン、ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料、油溶染料、蛍光染料、顔料等を添加し、耐光性、塗布性の向上を図ってもよい。
【0042】
(4.撥水膜)
前述のような有機反射防止膜の上には、水滴をはじくための撥水膜が形成される。撥水膜を形成するための撥水剤としては、フッ素系撥水剤が好適に用いられる。フッ素系撥水剤の具体例としては、GE東芝シリコーン株式会社製TSL8233、TSL8257やダイキン工業株式会社製オプツールDSXなどが上げられる。
【0043】
(5.プラスチックレンズの製造方法)
以上のようなプラスチックレンズは以下のようにして製造される。ここでは、ハードコート層形成工程以降について詳述する。
(5-1.ハードコート層形成工程)
本発明では、ハードコート層形成工程は、以下のように、調整工程、塗布工程、仮焼成工程、水添加工程、及び本焼成工程に分かれる。尚、本発明では、レンズ基材とハードコート層との間に、耐衝撃性向上を目的として、プライマー層を一層設けても良い。
【0044】
(5-1-1.調整工程)
まず、ハードコート層を形成するためのハードコート液を製造する。
(A)成分の有機珪素化合物を有機溶剤に溶かし、水や塩酸等を添加して加水分解させて、加水分解物を生成する。この加水分解物に(B)成分の無機酸化物粒子が分散したゾルを添加する。
さらに、必要に応じて、硬化触媒、多官能性エポキシ化合物等を添加する。硬化触媒としては、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセナートがハードコート液のポットライフを長くすることができる点で好適である。
【0045】
(5-1-2.塗布工程)
ハードコート液を基材上に塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。
基材とハードコート層との密着性を高めるために、ハードコート液を塗布するまえに、基材にアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、プラズマ処理等を行っても良い。
【0046】
(5-1-3.仮焼成工程)
ハードコート液を塗布後、ハードコート液の予備硬化を行い、予備硬化ハードコート層を得るための仮焼成を行う。この仮焼成の加熱手段は、ハードコート液の種類によって選択されるが、熱風によるもの、赤外線によるものなどがある。
仮焼成温度としては、60〜100℃が好ましい。また、加熱時間としては10〜50分が好ましい。焼成温度が60℃未満であると硬化が不十分で不良検査などを行う場合にハンドリングが困難になり、100℃を超えると溶剤の急激な蒸発により外観品質の低下が懸念される。
【0047】
(5-1-4.水分添加工程)
本工程により、予備硬化ハードコート層に水分の添加処理を行い、水分含有予備硬化ハードコート層を得る。
水分の添加処理方法としては、プラスチックレンズを所定の温度の水に浸漬してもよいし(温水浸漬法)、所定の温度・相対湿度下に保持してもよい(加湿法)。
温水浸漬法の場合、水の温度は40〜60℃であることが好ましく、浸漬による処理時間は、1〜15分程度が好ましい。ここで、水温が低いとハードコート層の含水率が低いため、本焼成工程での硬化反応が十分でなく、耐擦傷性が低い。逆に、水温が高いとハードコート層にクラックが生じやすい。また、水温が高い場合は短時間の浸漬を行うことが、逆に水温が低い場合は長時間の浸漬を行うことが望ましい。例えば、50℃15分〜60℃10分程度が好適である。
【0048】
加湿法の場合、温度は40℃〜60℃程度の範囲が好ましい。また、80%以上の相対湿度(RH)の環境下で水添加処理を行うことが好ましく、90%RH以上であることがより好ましい。この加湿法では、水分の添加が、80%RH以上の環境下で行われるので、水浸漬用の水槽を準備する必要もなく、基材を水槽に浸漬する手間も不要であり、水分の添加処理を容易に行うことができる。
温度が低いと含水率が低く、含水率を上げるためには時間がかかる。温度または相対湿度を上げれば、処理に要する時間は短くてすむが、温度や相対湿度が高すぎたり、必要以上に長い時間処理を行うと、後述する本焼成時にハードコート層にクラックが発生する原因となる。例えば、40℃の場合は90%RHで3日間程度処理することが好ましく、60℃であれば98%RHで12時間程度水分添加処理を行うことが好ましい。すなわち、40℃90%RH3日間〜60℃98%RH12時間が好適な範囲である。
【0049】
ここで、ハードコート層の含水率は、以下の式(1)で計算される。
W={(B−B1)−(A−A1)}/(B−B1) …(1)
(式中、Aは、上述の工程において、仮焼成工程後の基材及び予備硬化ハードコート層の質量。Bは、上述の工程において、水分添加工程後の基材及び水分含有予備硬化ハードコート層の質量。A1は、基材のみの質量。B1は、基材のみを、直接、水分添加工程を通過させた後の基材の質量。)
本発明では、水添加処理後に、上記式(1)に示す水分含有予備硬化ハードコート層の含水率Wを0.005〜0.13質量%とすることが好ましい。
【0050】
(5-1-5.本焼成工程)
本焼成温度としては、100〜140℃が好ましい。また、加熱時間としては60〜120分が好ましい。焼成温度が100℃未満であると硬化が不十分で耐擦傷性及び密着性が得られず、140℃を超えるとレンズ基材が黄変し透明性が低下する。
【0051】
(5-2.反射防止膜形成工程)
(D)成分の有機珪素化合物を有機溶剤で希釈して、必要に応じて水、塩酸等を添加し、加水分解を行う。その後、この加水分解物に(E)成分である内部空洞を有するシリカ系粒子が分散したゾルを添加する。また、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよい。これにより、有機反射防止膜のコーティング液が完成する。
その後、このコーティング液を前記ハードコート層上に塗布する。塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。
そして、コーティング液を熱、紫外線等により硬化させることで反射防止膜が完成する。加熱によりコーティング液を硬化させる場合には、50〜200℃で加熱する。
【0052】
(5-3.撥水膜形成工程)
前述の有機反射防止膜を形成したプラスチックレンズを洗浄し、撥水加工を行う。撥水処理液(例えば、ダイキン工業株式会社製オプツールDSXの0.1%パーフロロヘキサン溶液)を調整し、プラスチックレンズを浸積して、所定時間放置後引き上げ、室温に放置して乾燥することで撥水膜が形成される。
【0053】
上述のような実施形態によれば、仮焼成工程後に水分添加工程を設けることで、本焼成の際に、前記(A)成分の有機珪素化合物の加水分解性基の加水分解が促進され、シロキサン結合を十分に形成することができる。(A)成分同士の結合が不十分である場合には、結合が弱い部分からハードコート層がはがれる可能性があり、特にチオウレタン系のプラスチック製の基材およびエピスルフィド系のプラスチック製の基材上では密着性が得られないことが多い。これに対し、本実施形態のように、(A)成分同士を確実に結合させることでハードコート層と基材・反射防止膜との密着性を向上させることができ、プラスチックレンズとしての耐擦傷性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、有機反射防止膜を湿式法により形成しているため、ハードコート層、反射防止膜を連続して湿式法で形成できるので、プラスチックレンズの製造が容易である。それ故、乾式法で使用する真空装置等の大型設備が不要となり、製造にかかるコストを低減させることが可能となる。
さらには、乾式法で形成される無機物を主成分とする反射防止膜に比べ、湿式法で形成される有機反射防止膜は、ハードコート層との熱膨張率差が小さいことから、加熱によるクラックの発生が起こりにくくなるので耐熱性に優れたプラスチックレンズとすることができる。
【0055】
有機反射防止膜を構成する(E)成分であるシリカ系粒子は、内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。これにより、内部空洞を有するシリカ系粒子は、内部空洞を有しないシリカ系粒子よりも屈折率が低くなり、有機反射防止膜を構成する有機薄膜の屈折率が低くなる。有機薄膜の屈折率を低くすることで、ハードコート層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
【0056】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、水分の添加処理法としては、温水浸漬法の代わりに、水分を含んだ適当な有機溶剤やエマルジョンに基材を浸漬してもよい。それにより、水分のハードコート層への浸透速度を広範囲に制御することができる。
【0057】
さらに、前記実施形態では、反射防止膜を単層の有機薄膜で構成される有機反射防止膜としたが、これに限らず、反射防止膜は無機物を主成分とするものとしてもよい。例えば、SiO2 ,SiO,ZrO2 ,TiO2,TiO,Ti23,Ti25,Al23,Ta25,CeO2,MgO,Y23,SnO2 ,MgF2 ,WO3等の無機物を主成分とする無機反射防止膜を形成してもよい。これらの無機物を単独で用いてもよく、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
例えば、基材から大気に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層を有する反射防止膜としてもよい。
このような無機物を主成分とする反射防止膜を形成する際には、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いて、反射防止膜を形成することができる。なお、真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
【実施例】
【0058】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
[実施例1]
(ハードコート液の調整工程)
撹拌子を備えた反応容器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン74.93g、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン37.61g、0.1規定塩酸水溶液38.2gを投入し、60分撹拌した。次に、蒸留水275.11gを投入し、さらに60分撹拌した。その後、ルチル型酸化チタン・酸化ジルコニウム・酸化珪素・酸化スズの複合ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク1120Z(11RU−7/A8)」)584.39g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.30gを添加し、Fe(III)アセチルアセトナート1.64gを添加し充分撹拌した後、ハードコート液とした。
【0059】
(ハードコート液の塗布工程)
上記の操作で得られたハードコート液を、プラスチック製眼鏡レンズ基材(セイコーエプソン(株)製、セイコースーパーソブリン用レンズ生地、屈折率1.66)の凸面にスピンコーティングにより塗布した。
【0060】
(仮焼成工程)
ハードコート液を塗布した後の眼鏡レンズ基材を熱風炉に載置して、80℃で30分間、仮焼成を行った。
(水分添加工程)
仮焼成後の眼鏡レンズ基材を、温水(温度 50℃)に、15分間浸漬した。また、浸漬後に、前述の式(1)によりハードコート層の含水率を測定した。
【0061】
(本焼成工程)
水添加処理後の眼鏡レンズ基材を熱風炉に載置して、120℃で1.5時間、本焼成を行った。
(有機反射防止膜形成工程)
まず、以下のようにして、有機反射防止膜形成用の組成物(コーティング液)を調製した。ステンレス製容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル5000重量部およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を加え、撹拌しながら0.01モル/リットルの塩酸299重量部を添加して一昼夜撹拌を続け、シラン加水分解物を得た。
別の容器内で内部空洞を有するシリカ系微粒子のゾル(触媒化成工業(株)製)100重量部にシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング製 FZ−7001)1重量部と鉄(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナート1重量部とを加え一昼夜撹拌を続けたのち、前記シラン加水分解物と合わせ、さらに一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行い、コーティング液を得た。
次に、上述した本焼成工程でハードコート層が形成された眼鏡レンズ基材を、コーティング液に浸漬し、30秒後に引き上げ速度10cm/minで引き上げ、さらに120℃に設定したオーブン内で2時間加熱して有機反射防止膜を形成した。この反射防止膜の厚みは、100nmである。
(撥水膜形成工程)
撥水処理液はダイキン工業株式会社製オプツールDSXを使用した。0.1%溶液(溶媒はパーフロロヘキサン)を調整し、眼鏡レンズ基材を浸積して1分間放置後、10cm/minで引き上げた。その後24時間室温に放置した。
【0062】
[実施例2]
水添加処理を60℃の温水に1分間浸漬して行った点以外は、実施例1と同じである。[実施例3]
水添加処理を60℃の温水に10分間浸漬して行った点以外は、実施例1と同じである。
[実施例4]
水添加処理を70℃の温水に10分間浸漬して行った点以外は、実施例1と同じである。
【0063】
[実施例5]
水添加処理は、仮焼成後の眼鏡レンズ基材を、40℃、90%RHに設定された恒温恒湿槽に2日間載置することで行った。その他は、実施例1と同じである。
[実施例6]
仮焼成後の眼鏡レンズ基材を、40℃、90%RHに設定された恒温恒湿槽に3日間載置した。その他は、実施例1と同じである。
[実施例7]
仮焼成後の眼鏡レンズ基材を、40℃、90%RHに設定された恒温恒湿槽に4日間載置した。その他は、実施例1と同じである。
[実施例8]
仮焼成後の眼鏡レンズ基材を、60℃、100%RHに設定された恒温恒湿槽に1日間載置した。その他は、実施例1と同じである。
【0064】
[比較例1]
ハードコート液を塗布した眼鏡レンズ基材を仮焼成後、そのまま本焼成を行い、本焼成後に水分添加処理を行った。水分添加処理は、眼鏡レンズ基材を60℃の温水に1分間浸漬して行った。その他は、実施例1と同じである。
[比較例2]
ハードコート液を塗布した眼鏡レンズ基材を仮焼成後、そのまま本焼成を行い、本焼成後に水分添加処理を行った。水分添加処理は、眼鏡レンズ基材を40℃、90%RHに設定された恒温恒湿槽に4日間載置して行った。その他は、実施例1と同じである。
[比較例3]
水分添加処理を行わなかった以外は、実施例1と同じである。
【0065】
[評価方法]
得られたハードコート層、反射防止膜付き眼鏡レンズについて、以下の方法により、外観及び耐擦傷性を評価した。結果は、表1に示す。
【0066】
(外観評価)
眼鏡レンズの外観を目視により観察し、次の段階に分けて評価した。
○:クラック無し
△:一部にクラックが発生
×:全面にクラックが発生
【0067】
(耐擦傷性評価)
眼鏡レンズに、ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール株式会社製)で9.8Nの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷の付いた程度を目視により次の段階に分けて評価した。実用上はCまでが許容範囲である。
A:摩擦した範囲に、全く傷が認められない。
B:上記範囲内に、1〜10本傷がついた。
C:上記範囲内に、10〜20本傷がついた。
D:無数の傷がついているが、平滑な面が残っている。
E:無数の傷がついていて、平滑な面が残っていない。
【0068】
【表1】


【0069】
[評価結果]
実施例1〜8では、眼鏡レンズの外観及び耐擦傷性は、ともに実用上問題のないレベルにある。
これに対して、比較例1、2では、眼鏡レンズ全面にクラックが発生してしまい、さらに耐擦傷性も劣る。また、比較例3は、水添加処理を行っていないため、眼鏡レンズにクラックが発生することはないが、耐擦傷性に劣る。
すなわち、本発明から明らかなように、特定の条件下で、ハードコート層に水分添加処理を行うことで、初めて外観及び耐擦傷性に優れる眼鏡レンズが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、光学部品、例えば、プラスチック製の眼鏡レンズの製造方法に利用することができる。




 

 


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