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液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、及び電子機器 - セイコーエプソン株式会社
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発明の名称 液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、及び電子機器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−25116(P2007−25116A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205467(P2005−205467)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
発明者 中田 英男 / 宮下 武
要約 課題
配向膜の下地に段差部が形成されることによる技術課題を解決し、しかも斜方蒸着で無機配向膜を形成する際の、材料の使用効率をも改善した、液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、電子機器を提供する。

解決手段
対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置である。成膜室2と、成膜室2内にて基板Wに無機材料を物理的蒸着法で蒸着するための蒸着手段3とを備え、成膜室2内の、蒸着手段3における蒸着源3aの略上方に、配向膜の下地となる下地膜の形成エリア13を有し、成膜室2内の、蒸着手段3における蒸着源3aの斜め上方に、配向膜の形成エリア14を有している。配向膜の形成エリア14には、無機材料を選択的に蒸着させるためのスリット状の開口部16を有した遮蔽板15が設けられている。
特許請求の範囲
【請求項1】
対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、
成膜室と、該成膜室内にて前記基板に無機材料を物理的蒸着法で蒸着し、下地膜及び配向膜を形成するための蒸着手段とを備え、
前記成膜室内の、前記蒸着手段における蒸着源の略上方に、前記配向膜の下地となる下地膜の形成エリアを有し、
前記成膜室内の、前記蒸着手段における蒸着源の斜め上方に、前記配向膜の形成エリアを有し、該配向膜の形成エリアには、無機材料を選択的に蒸着させるためのスリット状の開口部を有した遮蔽板が設けられていることを特徴とする液晶装置の製造装置。
【請求項2】
前記成膜室には、前記下地膜の形成エリア側にのみ選択的に蒸着物を飛ばす、第2の蒸着手段が備えられていることを特徴とする請求項1記載の液晶装置の製造装置。
【請求項3】
前記成膜室には、前記基板を保持し搬送するための搬送手段が備えられ、該搬送手段には、前記基板を保持した状態で昇降させる昇降機構が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶装置の製造装置。
【請求項4】
前記成膜室には、前記基板を保持し搬送するための搬送手段が備えられ、該搬送手段には、前記基板を保持した状態で回動させる回動機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶装置の製造装置。
【請求項5】
対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、
基板上に下地膜を形成する工程と、前記下地膜上に配向膜を形成する工程とを備えてなり、
同一の成膜室内において、一の基板への下地膜の形成と、他の基板への配向膜の形成とを、同一の蒸着手段を用いて並行して行うことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記一の基板への下地膜の形成を、前記同一の蒸着手段を用いて行うとともに、該蒸着手段とは別の第2の蒸着手段をも用いて行うことを特徴とする請求項5記載の液晶装置の製造方法。
【請求項7】
前記一の基板への下地膜の形成を、該一の基板を回動させつつ行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造装置、あるいは請求項5〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする液晶装置。
【請求項9】
請求項8記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置の光変調手段として用いられる液晶装置は、一対の基板間の周縁部にシール材が配設され、その中央部に液晶層が封止されて構成されている。その一対の基板の内面側には液晶層に電圧を印加する電極が形成され、これら電極の内面側には非選択電圧印加時において液晶分子の配向を制御する配向膜が形成されている。このような構成によって液晶装置は、非選択電圧印加時と選択電圧印加時との液晶分子の配向変化に基づいて光源光を変調し、画像光を作製するようになっている。
【0003】
ところで、前述した配向膜としては、側鎖アルキル基を付加したポリイミド等からなる高分子膜の表面に、ラビング処理を施したものが一般に用いられている。ラビング処理とは、柔らかい布からなるローラで、高分子膜の表面を所定方向に擦ることにより、高分子を所定方向に配向させるものである。その配向性高分子と液晶分子との分子間相互作用により、配向性高分子に沿って液晶分子が配置されるので、非選択電圧印加時の液晶分子を所定方向に配向させることができるようになっている。また、側鎖アルキル基により、液晶分子にプレティルトを与えることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、このような有機配向膜を備えた液晶装置をプロジェクタの光変調手段として採用した場合、光源から照射される強い光や熱によって配向膜が次第に分解されるおそれがある。そして、長期間の使用後には、液晶分子を所望のプレティルト角に配列することができなくなるなど液晶分子の配向制御機能が低下し、液晶プロジェクタの表示品質が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、耐光性および耐熱性に優れた無機材料からなる配向膜の使用が提案されており、このような無機配向膜の製造方法としては、例えば斜方蒸着法による酸化珪素(SiO)膜の成膜が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1の技術は、特に画素電極等の配線などによって配向膜の下地に段差部が形成されている場合に、そのままで無機材料を斜方蒸着すると、段差部の近傍で無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域ができてしまう、といった技術課題を解決したもので、特に第一の無機斜方蒸着膜と第二の無機斜方蒸着膜とを、方位角方向を異ならせて形成するようにしたものである。
【0006】
また、斜方蒸着法により無機配向膜を製造する場合、配向膜を所望の配向状態に形成するためには、配向膜材料の入射角度を制御する必要がある。このような制御を行うため、従来、配向膜材料と基板との間にスリットを形成した遮蔽板を配設し、このスリットを通して所定の入射角度で選択的に蒸着をなさせることにより、所望の配向膜を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−277879号公報
【特許文献2】特開2002−365639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したような、配向膜の下地に段差部が形成されることによる技術課題を解決するためには、特許文献1に示されるような技術の他にも、例えば配向膜の下地として、平坦化層を兼ねた下地膜を形成しておき、この下地膜で段差部をある程度無くした後に、その上に無機配向膜を形成するといったことが考えられる。
しかしながら、その場合には、特に下地膜形成のための装置と配向膜形成のための装置とを別に用意する必要があり、装置コストが高くなってしまうといった新たな課題が生じてしまう。
【0008】
また、特許技術文献2の技術にあっては、配向膜材料の入射角度を制御する必要上、蒸着源から昇華した配向膜材料のうち、所定角度で流れて(飛んで)前記スリット内を通過したものだけが配向膜となり、昇華した他の材料は無駄になってしまうことから、材料の使用効率が悪いといった改善すべき課題がある。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、配向膜の下地に段差部が形成されることによる技術課題を解決し、しかも斜方蒸着で無機配向膜を形成する際の、材料の使用効率をも改善した、液晶装置の製造装置、液晶装置の製造方法、液晶装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明の液晶装置の製造装置は、対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造装置であって、
成膜室と、該成膜室内にて前記基板に無機材料を物理的蒸着法で蒸着し、下地膜及び配向膜を形成するための蒸着手段とを備え、
前記成膜室内の、前記蒸着手段における蒸着源の略上方に、前記配向膜の下地となる下地膜の形成エリアを有し、
前記成膜室内の、前記蒸着手段における蒸着源の斜め上方に、前記配向膜の形成エリアを有し、該配向膜の形成エリアには、無機材料を選択的に蒸着させるためのスリット状の開口部を有した遮蔽板が設けられていることを特徴としている。
【0011】
この液晶装置の製造装置によれば、同じ成膜室内に下地膜の形成エリアと配向膜の形成エリアとを有しているので、異なる基板に対して、同じ蒸着手段により下地膜の形成と配向膜の形成とを並行して行うことが可能になる。また、下地膜を形成することで配向膜の下地に段差部が形成されるのを抑えることができ、さらに、下地膜形成のための装置と配向膜形成のための装置とを別に用意する必要がなくなり、装置コストを軽減することができる。また、同じ蒸着手段で下地膜の形成と配向膜の形成とを並行して行うので、蒸着源から昇華させた材料の無駄を少なくし、材料の使用効率を高めることができる。
【0012】
また、前記液晶装置の製造装置においては、前記成膜室に、前記下地膜の形成エリア側にのみ選択的に蒸着物を飛ばす、第2の蒸着手段が備えられているのが好ましい。
このようにすれば、下地膜の成膜レートを配向膜の成膜レートに比較して高くすることができ、これにより下地膜の膜厚を十分に厚くして平坦化膜としての機能を高めることができる。
【0013】
また、前記液晶装置の製造装置においては、前記成膜室に、前記基板を保持し搬送するための搬送手段が備えられ、該搬送手段に、前記基板を保持した状態で昇降させる昇降機構が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、前記昇降機構によって特に下地膜の形成エリア側で基板を下降し、蒸着源との間の距離を狭めることにより、下地膜の成膜レートを高くすることが可能になる。したがって、下地膜の膜厚を十分に厚くして平坦化膜としての機能を高めることができる。
【0014】
また、前記液晶装置の製造装置においては、前記成膜室に、前記基板を保持し搬送するための搬送手段が備えられ、該搬送手段に、前記基板を保持した状態で回動させる回動機構が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、前記回動機構によって特に下地膜の形成エリア側で基板を回動させることにより、形成する下地膜の膜厚や膜質のむらを無くすことができる。
【0015】
本発明の液晶装置の製造方法は、対向する一対の基板間に液晶を挟持してなり、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板の内面側に配向膜を形成してなる液晶装置の製造方法であって、
基板上に下地膜を形成する工程と、前記下地膜上に配向膜を形成する工程とを備えてなり、
同一の成膜室内において、一の基板への下地膜の形成と、他の基板への配向膜の形成とを、同一の蒸着手段を用いて並行して行うことを特徴としている。
【0016】
この液晶装置の製造方法によれば、同一の成膜室内において、一の基板への下地膜の形成と、他の基板への配向膜の形成とを、同一の蒸着手段を用いて並行して行うようにしたので、下地膜形成のための装置と配向膜形成のための装置とを別に用意する必要がなくなり、装置コストを軽減することができる。また、特に下地膜を形成することで配向膜の下地に段差部が形成されるのを抑えることができ、この段差部に起因する技術課題を解決することができる。さらに、同一の蒸着手段で下地膜の形成と配向膜の形成とを並行して行うので、蒸着源から昇華させた材料の無駄を少なくし、材料の使用効率を高めることができる。
【0017】
また、前記液晶装置の製造方法においては、前記一の基板への下地膜の形成を、前記同一の蒸着手段を用いて行うとともに、該蒸着手段とは別の第2の蒸着手段をも用いて行うのが好ましい。
このようにすれば、下地膜の成膜レートを配向膜の成膜レートに比較して高くすることができ、これにより下地膜の膜厚を十分に厚くして平坦化膜としての機能を高めることができる。
【0018】
また、前記液晶装置の製造方法においては、前記一の基板への下地膜の形成を、該一の基板を回動させつつ行うのが好ましい。
このようにすれば、基板を回動させつつ下地膜を形成するので、得られる下地膜の膜厚や膜質のむらを無くすことができる。
【0019】
本発明の液晶装置は、前記の製造装置、あるいは前記の製造方法によって得られたことを特徴としている。
この液晶装置によれば、前述したように装置コストが軽減され、さらに材料の使用効率を高められているので、製造コストの低減化が図られたものとなる。また、配向膜の下地に段差部が形成されることによる技術課題も解決され、これによって品質の向上が図られたものとなる。
【0020】
本発明の電子機器は、前記の液晶装置を備えたことを特徴としている。
この電子機器によれば、製造コストの低減化、及び品質の向上が図られた液晶装置を備えているので、この電子機器自体も製造コストの低減化、及び品質の向上が図られたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は本発明における液晶装置の製造装置の一実施形態の概略構成を示す図であり、図1中符号1は液晶装置の製造装置(以下、製造装置と記す)である。この製造装置1は、液晶装置の構成部材となる基板Wの表面に、同一の無機材料からなる下地膜と配向膜とを共に形成するためのもので、真空チャンバーによって形成される成膜室2と、下地膜材料でありかつ配向膜材料となる無機材料を昇華させる蒸着手段3と、を備えて構成されたものである。
【0022】
成膜室2は、この成膜室2内に基板Wを搬入するための給材室4と、成膜室2内で処理を終えた基板Wを搬出するための除材室5とに、その上部側でそれぞれ連通したものである。成膜室2には、その内部圧力を制御し、所望の真空度を得るための真空ポンプ6が配管7を介して接続されている。同様に、給材室4及び除材室5にも、これらを独立して真空雰囲気に調整する真空ポンプ(図示せず)が接続されている。これら成膜室2と給材室4及び除材室5との間には、それぞれの間の連通を気密に閉塞するゲートバルブ4a、5aが備えられいる。このような構成により、給材室4から成膜室2内への基板Wの搬入、及び成膜室2内から除材室5への基板Wの搬出が、成膜室2内の真空度を大きく低下させることなく行えるようになっている。
【0023】
また、この成膜室2内には、基板Wを給材室4から搬入し、さらに該成膜室2を連続的または断続的に搬送し、その後、処理後の基板Wを除材室5に搬出するための搬送手段8が設けられている。この搬送手段8は、給材室4から成膜室2内を通って除材室5に至るレール9と、このレール9に移動可能に懸架された二台の保持アーム10と、これら保持アーム10の下端に設けられて基板Wを保持するための保持部材11とからなるものである。
【0024】
保持アーム10は、歯車等を備えることでレール9に移動可能に取り付けられた懸架部10aと、懸架部10aから下方に延びるアーム部10bとによって構成されたもので、図示ない制御部により、移動等の動作が外部から制御されるように構成されたものである。アーム部10bは、複数本の管状のロッドが互いに挿通可能に構成されたもので、これによって下方に向けて伸縮可能に構成されたものである。また、このアーム部10bは、懸架部10aに対し回動可能に取り付けられており、さらにラック・ピニオン等の機械的手段、またはモータなどによる回動機構により、後述するように下地膜の形成エリアにおいて回動するようになっている。なお、この回動機構については、アーム部10bを構成する複数のロッド間に設けてもよい。
【0025】
保持部材11は、静電チャック等による吸着機構、あるいは基板Wの底面側の外周部を支持する機構等により、基板Wの底面の成膜領域を露出させた状態で、これを着脱可能に保持するものである。なお、本実施形態では、静電チャックによって保持部材11が構成されている。このような構成のもとに搬送手段8は、保持手段11によって基板Wを保持した状態で、懸架部10aがレール9を走行(移動)することにより、基板Wを給材室4から搬入し、さらに該成膜室2を連続的または断続的に搬送し、その後、処理後の基板Wを除材室5に搬出するようになっている。また、アーム部10bが下方に向けて伸縮可能に構成されていることにより、基板Wを、保持部材11で保持した状態で昇降させることができるようになっている。すなわち、アーム部10bが伸縮可能となっていることにより、本発明における昇降機構が構成されているのである。また、前記の回動機構により、基板Wを、保持部材11で保持した状態で回動させることができるようになっている。なお、このような基板Wの昇降や回動についても、前記の制御部(図示せず)によって制御されるようになっている。
【0026】
また、成膜室2内には、前記給材室4側の底部に蒸着手段3が配設されている。蒸着手段3は、前記基板Wに対して、下地膜材料でありかつ配向膜材料となる無機材料を物理的蒸着法、すなわち、蒸着法やイオンビームスパッタ法等のスパッタ法によって蒸着し、下地膜と配向膜とを形成するためのものである。本実施形態では、前記の無機材料からなる蒸着源3aと、この蒸着源3aに電子ビームを照射して加熱昇華させる電子ビーム銃ユニット(図示せず)とにより、蒸着手段3が構成されている。なお、電子ビーム銃ユニットに代えて、抵抗加熱方式のヒータを、蒸着源3aの加熱手段として用いることもできる。下地膜材料でありかつ配向膜材料となる無機材料としては、本実施形態では二酸化珪素(SiO)等の酸化珪素(SiOx)が用いられる。
【0027】
この蒸着手段3では、蒸着源3aを保持するルツボ(図示せず)の開口が上方に向いて配設されており、これによって蒸着手段3は、無機材料の昇華物(蒸着物)を、上方に向けて放射状に出射するようになっている。
なお、この蒸着手段3には、その蒸着源3aを開閉可能に覆うシャッター12が備えられている。このシャッター12は、本実施形態では図示しない進退機構に接続されて、蒸着源3aを開放した状態(図1中に実線で示す状態)と、蒸着源3aを覆った状態(図1中に二点鎖線で示す状態)との間を、移動できるように構成されたものである。このような構成のもとにシャッター12は、後述するように特に配向材料の昇華開始初期において、蒸着源3aを覆うことで、蒸着源3aの昇華速度が安定するまで、基板Wに対する成膜を停止させることができるようになっている。
【0028】
成膜室2内においては、蒸着源3aの略上方、すなわち蒸着源3aの直上とその周辺が本発明における下地膜の形成エリア13となっており、蒸着源3aの斜め上方、すなわち、除材室5側が本発明における配向膜の形成エリア14となっている。
下地膜の形成エリア13は、前述したように蒸着源3aの直上部となっていることから、例えば蒸着源3aの斜め上方の配向膜の形成エリア14に比べ、蒸着源3aからの距離が短くなっている。したがって、蒸着源3aから昇華した無機材料の拡散の度合いが少なく、その濃度が比較的高い状態にある。すなわち、一般に蒸着法での成膜レートは、距離の2乗に反比例すると言われている。よって、この下地膜の形成エリア13では、配向膜の形成エリア14に比べ、無機材料の成膜レートが高くなっている。
【0029】
また、この下地膜の形成エリア13では、前記の昇降機構及び回動機構が働くようになっている。すなわち、図1中矢印Aで示すように保持アーム10のアーム部10bが下方に伸張し、これによって保持部材11に保持された基板Wを下降させるようになっている。さらに、保持アーム10が矢印B方向(あるいはその逆方向)に回動し、例えばこの下地膜の形成エリア13を通過する間に、基板Wを1回転又は2回転程度回動させるようになっている。
【0030】
配向膜の形成エリア14には、支持部材(図示せず)に支持された状態で遮蔽板15が配設されている。この遮蔽板15は、金属やセラミックス、樹脂等によって形成されたもので、基板Wに対し、蒸着源3aから昇華した無機材料を選択的に蒸着させるためのスリット状の開口部16を形成したものである。この開口部16は、遮蔽板15が適宜に配置されたことにより、基板Wの搬送方向(レール9の長さ方向)と直交するように位置させられたもので、前記蒸着手段3から昇華した無機材料(蒸着物)を、基板Wに選択的に蒸着させるためのものである。
【0031】
また、この開口部16は、遮蔽板15が、蒸着源3aの斜め上方に位置する配向膜の形成エリア14に配置されていることにより、その内部に臨む基板Wの面を、前記蒸着源3aに対して所定の角度範囲にするように形成配置されている。これによって無機材料の昇華物(蒸着物)は、基板Wの成膜面に対して、所定の角度で斜方蒸着するようになっている。
【0032】
一方、遮蔽板15自体は、基板Wの底面側を覆うことで、開口部16によって規定された成膜領域以外の、非配向膜形成領域を覆い、この領域への無機材料の蒸着を阻むようになっている。ただし、基板Wは開口部16に対して移動することから、基板Wの成膜領域(配向膜形成領域)を、時間をずらしつつ全て開口部16内に臨ませることで、この成膜領域の全面に無機材料を斜方蒸着させることができるようになっている。
なお、成膜室2内には、その内壁面に配向膜材料が付着するのを防止するため、防着板(図示せず)が成膜室2に対して着脱可能に配設されている。
【0033】
次に、このような構成の製造装置1による下地膜及び配向膜の製造方法に基づき、本発明の製造方法の一例について説明する。
まず、真空ポンプ6を作動させ、成膜室2内を所望の真空度に調整しておくとともに、図示しない加熱手段によって成膜室2内を所定の温度に調整する。また、これとは別に、シャッター12で蒸着源3aを覆っておく。そして、この状態で蒸着手段3を作動させ、配向膜材料を昇華させる。
【0034】
その後、蒸着源3aの無機材料の昇華速度が安定したら、給材室4のゲートバルブ4aを開き、一方の保持アーム10を給材室4に入れ、その保持部材11で予め待機させておいた基板Wを保持する。
ここで、給材室4に予め待機させておいた基板Wとしては、例えば図2(a)に示すように、基板本体80A上に、駆動素子や配線等を含む積層構造83を形成し、さらにその上に画素電極49を形成してなる素子基板である。このような基板Wにあっては、積層構造83や画素電極49により、その表面、すなわち配向膜を形成する側の面に、段差部が形成されたものとなっている。
【0035】
そして、その状態で保持アーム10を再度成膜室2内に入れ、基板Wを成膜室2内に搬入するとともに、ゲートバルブ4aを閉じる。
また、シャッター12を移動させて蒸着源3aを開放する。すると、蒸着源3aからは、昇華した無機材料が上方に向けて放射状に出射する。
一方、保持アーム10を下地膜の形成エリア13に移動させたら、前記の昇降機構を働かせ、アーム部10bを下降させることで基板Wを下降させ、これを蒸着源3aに近づける。このように基板Wを蒸着源3aに近づけることにより、無機材料の成膜レートが高くなり、この無機材料からなる下地膜を所望する厚さ、すなわち、後述する配向膜より十分に厚い厚さに成膜することができる。また、このように基板Wを下降させたら、前記の回動機構を働かせ、基板Wを回動させる。
【0036】
このように基板Wを下降させて蒸発源3aに近づけ、さらにその状態で回動させつつ、保持アーム10を下地膜の形成エリア13に所定時間留まらせることにより、図2(b)に示すように前記の積層構造83、画素電極49を覆って下地膜85を形成する。ここで、この下地膜85の形成については、その厚さを十分厚くすることで、図2(b)に示したように積層構造83や画素電極49で形成された段差部の影響をほとんどなくし、基板Wの表面を平坦化する。なお、保持アーム10を下地膜の形成エリア13に所定時間留まらせるには、レール9に対する保持アーム10の走行(移動)を所定時間停止させるようにしてもよく、または、保持アーム10を低速で連続的に移動させ、あるいは断続的に移動させるようにしてもよい。
【0037】
このようにして基板Wに下地膜85を形成したら、前記の昇降機構によって再度アーム10bを縮小し、基板Wを上昇させる。そして、その状態で保持アーム10を走行(移動)させ、前記基板Wを配向膜の形成エリア13に移動させる。
また、これと並行して、もう一つの保持アーム10を前記と同様にして給材室4に入れ、別に待機させておいた基板Wを保持させ、さらに下地膜の形成エリア13に移動させる。なお、このような二つの基板Wの移動の際には、前記のシャッター12を作動させ、蒸着源3aを覆っておく。
【0038】
続いて、シャッター12を開き、下地膜の形成エリア13では、先の基板Wの場合と同様にして下地膜85を形成する。
一方、配向膜の形成エリア14では、レール9に対して保持アーム10を連続的あるいは断続的に移動させることにより、先に下地膜を形成した基板Wを遮蔽板4上の所定位置にまで到達させ、その成膜面を開口部16に臨ませる。
【0039】
すると、開口部16が蒸着源3aに対して所定の角度範囲となるように形成配置されていることにより、蒸着源3aから昇華してきた無機材料は、基板Wの成膜面に対して所定の角度で斜方蒸着する。そして、このような斜方蒸着を、開口部16に対して基板Wを連続的あるいは断続的に移動させつつ行うことで、最終的に、基板Wの成膜領域(配向膜形成領域)の全面に配向膜材料を斜方蒸着させ、これにより所望の配向膜を形成することができる。すなわち、図2(c)に示すように下地膜85上に配向膜86を形成することができる。
【0040】
このようにして下地膜の形成エリア13で一の基板Wに下地膜85を形成し、さらにこれと並行して配向膜の形成エリア14で他の基板Wに配向膜86を形成したら、配向膜の形成エリア14に位置する保持アーム10を移動させ、保持した基板Wを除材室5に搬出させる。そして、そのまま給材室4に移動させ、前記と同様にして待機させておいた基板Wを保持させ、再度下地膜の形成エリア13に移動させる
一方、下地膜の形成エリア13に位置する保持アーム10についても、前記と同様にして走行(移動)させ、下地膜85を形成した基板Wを配向膜の形成エリア13に移動させる。
以下、このような処理を繰り返すことにより、基板Wに対して下地膜85の形成と配向膜86の形成とを、並行して連続的に行うことができる。
【0041】
このような構成の製造装置1にあっては、同じ成膜室2内に下地膜の形成エリア13と配向膜の形成エリア14とを有しているので、異なる基板Wに対して、同じ蒸着手段3により下地膜85の形成と配向膜86の形成とを並行して行うことができる。また、下地膜85を形成することで配向膜86の下地に段差部が形成されるのを抑えることができ、さらに、下地膜形成のための装置と配向膜形成のための装置とを別に用意する必要がなくなり、装置コストを軽減することができる。また、同じ蒸着手段3で下地膜85の形成と配向膜86の形成とを並行して行うので、蒸着源3aから昇華させた材料の無駄を少なくし、材料の使用効率を高めることができる。よって、従来に比べ生産コストを格段に低減することができる。
【0042】
また、搬送手段8に昇降機構を設け、特に下地膜の形成エリア13側で基板Wを下降し、蒸着源3aとの間の距離を狭めることができるようにしたので、下地膜85の成膜レートを高くすることができ、これにより下地膜85の膜厚を十分に厚くして、平坦化膜としての機能を高めることができる。
また、搬送手段8に回動機構を設け、特に下地膜の形成エリア13側で基板Wを回動させるようにしたので、形成する下地膜85の膜厚や膜質のむらを無くすことができ、これにより平坦化膜としての機能を高めることができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば、図3に示すように、前記蒸発手段3とは別に第2の蒸着手段18を設け、この第2の蒸着手段18の蒸着源18aより、下地膜の形成エリア13側にのみ選択的に無機材料の昇華物(蒸着物)を飛ばすようにしてもよい。この第2の蒸着手段については、蒸着手段3と同様の構成のものとすることができる。
【0044】
また、この第2の蒸着手段18から下地膜の形成エリア13側にのみ選択的に昇華物(蒸着物)を飛ばすためには、例えばこの第2の蒸着手段18と配向膜の形成エリア14における前記開口部16との間に遮断板19を配設し、第2の蒸着手段18の昇華物が開口部16に流れる(飛ぶ)のを遮断するようにすればよい。
このように構成することで、下地膜の形成エリア13では前記の蒸着手段3に加え、第2の蒸着手段18によっても蒸着処理がなされるので、下地膜の成膜レートを配向膜の成膜レートに比較してより高くすることができ、これにより下地膜85の膜厚を十分に厚くして平坦化膜としての機能をより高めることができる。
【0045】
次に、このような製造装置1による製造方法で形成された下地膜、配向膜を備えた、本発明の液晶装置について説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図4は、本発明の液晶装置の一実施形態の概略構成を示すTFTアレイ基板の平面図であり、図4中符号80はTFTアレイ基板(基板)である。このTFTアレイ基板80の中央には画像作製領域101が形成されている。その画像作製領域101の周縁部に前記シール材89が配設されて、画像作製領域101に液晶層(不図示)が封止されている。この液晶層は、TFTアレイ基板80上に液晶が直接塗布されて形成されたもので、シール材89には液晶の注入口が設けられていない、いわゆる封口レス構造となっている。そのシール材89の外側には、後述する走査線に走査信号を供給する走査線駆動素子110と、後述するデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動素子120とが実装されている。その駆動素子110、120から、TFTアレイ基板80の端部の接続端子79にかけて、配線76が引き廻されている。
【0046】
一方、TFTアレイ基板80に貼り合わされる対向基板90(図7参照)には、共通電極61(図7参照)が形成されている。この共通電極61は、画像作製領域101のほぼ全域に形成されたもので、その四隅には基板間導通部70が設けられている。この基板間導通部70からは、接続端子79にかけて配線78が引き廻されている。
そして、外部から入力された各種信号が、接続端子79を介して画像作製領域101に供給されることにより、液晶装置が駆動されるようになっている。
【0047】
図5は、液晶装置の等価回路図である。透過型液晶装置の画像作製領域を構成すべくマトリクス状に配置された複数のドットには、それぞれ画素電極49が形成されている。また、その画素電極49の側方には、該画素電極49への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30が形成されている。このTFT素子30のソースにはデータ線46aが接続されている。各データ線46aには、前述したデータ線駆動素子から画像信号S1、S2、…、Snが供給されるようになっている。
【0048】
また、TFT素子30のゲートには走査線43aが接続されている。走査線43aには、前述した走査線駆動素子から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される。一方、TFT素子30のドレインには画素電極49が接続されている。そして、走査線43aから供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンにすると、データ線46aから供給された画像信号S1、S2、…、Snが、画素電極49を介して各ドットの液晶に所定のタイミングで書き込まれるようになっている。
【0049】
液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極49と後述する共通電極との間に形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防止するため、画素電極49と容量線43bとの間に蓄積容量17が形成され、液晶容量と並列に配置されている。このように、液晶に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶に入射した光源光が変調されて、画像光が作製されるようになっている。
【0050】
図6は、液晶装置の平面構造の説明図である。本実施形態の液晶装置では、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITOという)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極49(破線49aによりその輪郭を示す)が、マトリクス状に配列形成されている。また、画素電極49の縦横の境界に沿って、データ線46a、走査線43aおよび容量線43bが設けられている。本実施形態では、各画素電極49の形成された矩形領域がドットであり、マトリクス状に配置されたドットごとに表示を行うことが可能な構造になっている。
【0051】
TFT素子30は、ポリシリコン膜等からなる半導体層41aを中心として形成されている。半導体層1aのソース領域(後述)には、コンタクトホール45を介して、データ線46aが接続されている。また、半導体層41aのドレイン領域(後述)には、コンタクトホール48を介して、画素電極49が接続されている。一方、半導体層41aにおける走査線43aとの対向部分には、チャネル領域41a’が形成されている。
【0052】
図7は、液晶装置の断面構造の説明図であり、図5のA−A’線における矢視側断面図である。図7に示すように、本実施形態の液晶装置60は、TFTアレイ基板80と、これに対向配置された対向基板90と、これらの間に挟持された液晶層50とを主体として構成されている。TFTアレイ基板80は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体80A、およびその内側に形成されたTFT素子30や画素電極49、さらにこれを覆う下地膜85、無機配向膜86などを主体として構成されている。ここで、下地膜85、配向膜86は、前記の製造装置1によって形成されたものであり、特に下地膜85は、平坦化膜として機能している。一方の対向基板90は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体90A、およびその内側に形成された共通電極61、さらにこれを覆う下地膜85、無機配向膜92などを主体として構成されている。この対向基板90においても、下地膜85、配向膜92は、前記の製造装置1によって形成されたものとなっている。
【0053】
TFTアレイ基板80の表面には、後述する第1遮光膜51aおよび第1層間絶縁膜12が形成されている。そして、第1層間絶縁膜52の表面に半導体層41aが形成され、この半導体層41aを中心としてTFT素子30が形成されている。半導体層41aにおける走査線43aとの対向部分にはチャネル領域41a’が形成され、その両側にソース領域およびドレイン領域が形成されている。このTFT素子30はLDD(Lightly Doped Drain)構造を採用しているため、ソース領域およびドレイン領域に、それぞれ不純物濃度が相対的に高い高濃度領域と、相対的に低い低濃度領域(LDD領域)とが形成されている。すなわち、ソース領域には低濃度ソース領域41bと高濃度ソース領域41dとが形成され、ドレイン領域には低濃度ドレイン領域41cと高濃度ドレイン領域41eとが形成されている。
【0054】
半導体層41aの表面には、ゲート絶縁膜42が形成されている。そして、ゲート絶縁膜42の表面に走査線43aが形成されて、チャネル領域41a’との対向部分がゲート電極を構成している。また、ゲート絶縁膜42および走査線43aの表面には、第2層間絶縁膜44が形成されている。そして、第2層間絶縁膜44の表面にデータ線46aが形成され、第2層間絶縁膜44に形成されたコンタクトホール45を介して、そのデータ線46aが高濃度ソース領域41dに接続されている。さらに、第2層間絶縁膜44およびデータ線46aの表面には、第3層間絶縁膜47が形成されている。そして、第3層間絶縁膜47の表面に画素電極49が形成され、第2層間絶縁膜44および第3層間絶縁膜47に形成されたコンタクトホール48を介して、その画素電極49が高濃度ドレイン領域41eに接続されている。さらに、画素電極49を覆って、前記製造装置1で形成された無機配向膜86が形成され、非選択電圧印加時における液晶分子の配向を規制しうるようになっている。
【0055】
なお、本実施形態では、半導体層41aを延設して第1蓄積容量電極41fが形成されている。また、ゲート絶縁膜42を延設して誘電体膜が形成され、その表面に容量線43bが配置されて第2蓄積容量電極が形成されている。これらにより、前述した蓄積容量57が構成されている。
また、TFT素子30の形成領域に対応する基板本体80Aの表面に、第1遮光膜51aが形成されている。第1遮光膜51aは、液晶装置に入射した光が、半導体層41aのチャネル領域41a’、低濃度ソース領域41bおよび低濃度ドレイン領域41cに侵入することを防止するものである。
【0056】
一方、対向基板90における基板本体90Aの表面には、第2遮光膜63が形成されている。第2遮光膜63は、液晶装置に入射した光が半導体層41aのチャネル領域41a’や低濃度ソース領域41b、低濃度ドレイン領域41c等に侵入するのを防止するものであり、平面視において半導体層41aと重なる領域に設けられている。また対向基板90の表面には、ほぼ全面にわたってITO等の導電体からなる共通電極61が形成されている。さらに、共通電極61の表面には、前記製造装置1で形成された無機配向膜92が形成され、非選択電圧印加時における液晶分子の配向を規制しうるようになっている。
【0057】
そして、TFTアレイ基板80と対向基板90との間には、ネマチック液晶等からなる液晶層50が挟持されている。このネマチック液晶分子は、正の誘電率異方性を有するものであり、非選択電圧印加時には基板に沿って水平配向し、選択電圧印加時には電界方向に沿って垂直配向する。またネマチック液晶分子は、正の屈折率異方性を有するものであり、その複屈折と液晶層厚との積(リタデーション)Δndは、例えば約0.40μm(60℃)となっている。なお、TFTアレイ基板80の配向膜86による配向規制方向と、対向基板90の配向膜92による配向規制方向とは、約90°ねじれた状態に設定されている。これにより、本実施形態の液晶装置60は、ツイステッドネマチックモードで動作するようになっている。
【0058】
また両基板80、90の外側には、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素をドープした材料等からなる偏光板58、68が配置されている。なお、各偏光板58、68は、サファイヤガラスや水晶等の高熱伝導率材料からなる支持基板上に装着して、液晶装置60から離間配置することが望ましい。各偏光板58、68は、その吸収軸方向の直線偏光を吸収し、透過軸方向の直線偏光を透過する機能を有する。TFTアレイ基板80側の偏光板58は、その透過軸が配向膜86の配向規制方向と略一致するように配置され、対向基板90側の偏光板68は、その透過軸が配向膜92の配向規制方向と略一致するように配置されている。
【0059】
液晶装置60は、対向基板90を光源側に向けて配置される。その光源光のうち偏光板68の透過軸と一致する直線偏光のみが偏光板68を透過して液晶装置60に入射する。
非選択電圧印加時の液晶装置60では、基板に対して水平配向した液晶分子が液晶層50の厚さ方向に約90°ねじれたらせん状に積層配置されている。そのため、液晶装置60に入射した直線偏光は、約90°旋光されて液晶装置60から出射する。この直線偏光は、偏光板68の透過軸と一致するため、偏光板68を透過する。したがって、非選択電圧印加時の液晶装置60では白表示が行われるようになっている(ノーマリーホワイトモード)。
【0060】
また、選択電圧印加時の液晶装置60では、液晶分子が基板に対して垂直配向している。そのため、液晶装置60に入射した直線偏光は、旋光されることなく液晶装置60から出射する。この直線偏光は、偏光板58の透過軸と直交するため、偏光板58を透過しない。したがって、選択電圧印加時の液晶装置60では黒表示が行われるようになっている。
【0061】
ここで、前述したように両基板80、90の内側には、前記製造装置1で形成された無機配向膜86、92が形成されている。これら無機配向膜86、92は、前述したようにSiOやSiO等の酸化珪素によって好適に形成されるが、Al、ZnO、MgOやITO等の金属酸化物等によって形成することもできる。
【0062】
このような無機配向膜86、92を形成してなる液晶装置60にあっては、特に下地膜85及び配向膜86、92に関して、前述したように装置コストが軽減され、さらに材料の使用効率を高められているので、製造コストの低減化が図られたものとなる。また、配向膜86、92の下地に段差部が形成されることによる技術課題も解決され、これによって品質の向上が図られたものとなる。
【0063】
(プロジェクタ)
次に、本発明の電子機器としてプロジェクタの一実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、プロジェクタの要部を示す概略構成図である。このプロジェクタは、前述した実施形態に係る液晶装置を光変調手段として備えたものである。
【0064】
図8において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は本発明の液晶装置からなる光変調手段、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズである。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。
【0065】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用光変調手段822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用光変調手段823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用光変調手段824に入射される。
【0066】
各光変調手段822、823、824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、画像が拡大されて表示される。
【0067】
前述したプロジェクタは、前記の液晶装置を光変調手段として備えている。この液晶装置は、前述したように耐光性および耐熱性に優れた無機配向膜を備えているので、光源から照射される強い光や熱により配向膜が劣化することはない。また、この液晶装置は、製造コストの低減化、及び品質の向上が図られているので、このプロジェクタ(電子機器)自体も製造コストの低減化、及び品質の向上が図られたものとなる。
【0068】
なお、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、前記実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態では透過型液晶装置を例にして説明したが、反射型液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、前記実施形態ではTN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置を例にして説明したが、VA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、実施形態では3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
【0069】
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、前述した各実施形態またはその変形例に係る液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の製造装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】下地膜および配向膜の成膜を説明するための要部側断面図である。
【図3】本発明の製造装置の他の実施形態の概略構成図である。
【図4】液晶装置のTFTアレイ基板の平面図である。
【図5】液晶装置の等価回路図である。
【図6】液晶装置の平面構造の説明図である。
【図7】液晶装置の断面構造の説明図である。
【図8】プロジェクタの要部を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0071】
1…液晶装置の製造装置、2…成膜室、3…蒸着手段、3a…蒸着源、8…搬送手段、10…保持アーム、10a…懸架部、10b…アーム部、11…保持部材、13…下地膜の形成エリア、14…配向膜の形成エリア、15…遮蔽板、16…開口部、18…第2の蒸着手段、19…遮蔽板、50…液晶層、60…液晶装置、80…基板(TFTアレイ基板)、80A…基板本体、85…下地膜、86…無機配向膜、90…基板(対向基板)、90A…基板本体、92…無機配向膜、W…基板




 

 


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