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発明の名称 結晶評価方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−3330(P2007−3330A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−183364(P2005−183364)
出願日 平成17年6月23日(2005.6.23)
代理人 【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
発明者 青山 拓 / 樋口 天光
要約 課題
分極軸方位を同定する方法であって、より簡易で検査時間の短縮が実現された結晶評価方法を提供する。

解決手段
本発明の結晶評価方法は、
特許請求の範囲
【請求項1】
(a)分極を有する結晶からなる試料を準備すること、
(b)前記試料の分極軸方位についての知見を得るための指標となる第1基準ラマンシフトを決定すること、
(c)前記試料にレーザ光を照射すること、
(d)前記第1基準ラマンシフトにおけるラマン散乱光の強度に従い分極軸方位を同定すること、を含む、結晶評価方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記試料は、基体の上に設けられたセラミックス膜である、結晶評価方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記基体の表面と平行な方向と、分極軸方位とのずれを同定する、結晶評価方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記ラマン散乱光は、偏光されている、結晶評価方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記レーザ光の照射は、前記試料の複数の測定点で行われ、
前記試料における前記第1基準ラマンシフトにおけるラマン散乱光の強度の分布を求めること、を含む、結晶評価方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記試料がセラミックス膜であるときに、該セラミックス膜の面内における前記ラマン散乱光の強度の分布を求めること、を含む、結晶評価方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記(b)は、さらに、第2基準ラマンシフトを決定すること、を含む、結晶評価方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記第1基準ラマンシフトおよび前記第2基準ラマンシフトの少なくとも一方は、ブリルアンゾーン中心近傍の全対称既約表現に属する格子振動に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトである、結晶評価方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記第1基準ラマンシフトは、縦波に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトであり、
前記第2基準ラマンシフトは、前記第1基準ラマンシフトと同一の全対称既約表現に属するモードに対する横波に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトであり、
前記(d)では、前記第1基準ラマンシフトにおける散乱光の強度と、前記第2基準ラマンシフトにおける散乱光の強度との比に従い、分極軸方位を同定すること、を含む、結晶評価方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかにおいて、
前記レーザ光の照射は、前記試料の複数の測定点で行われ、
前記試料がセラミックス膜であるときに、該セラミックス膜の面内における前記第1基準ラマンシフトのラマン散乱光強度と前記第2基準ラマンシフトのラマン散乱光強度との比の分布を求めること、を含む、結晶評価方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
前記試料は、斜方相ニオブ酸カリウムであり、
第1基準ラマンシフトを、830cm―1に最も近い全対称既約表現に属する縦波の格子振動によるピークの位置とする、結晶評価方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記第2基準ラマンシフトは、605cm―1に最も近い全対称既約表現に属する横波の格子振動によるピークの位置とする、結晶評価方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶評価方法に関し、特に、セラミックス材料などの分極軸方位を評価するための結晶評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焦電素子や強誘電体素子に用いられるセラミックス結晶、或いは圧電素子に用いられる多くのセラミックス結晶は、分極を有する。これらを薄膜状態で利用しその特性を引き出すためには、分極軸が所望の方向に向いている必要がある。そのため、セラミックス膜を形成した後に、該膜の結晶の分極軸方位を知ることは、特性のよい圧電素子、焦電素子および強誘電素子などを得るためには、重要な工程となる。
【0003】
従来、非破壊で分極軸方位を同定する方法としては、X線や電子線による回折現象を利用した方法がある。これらの方法は、直接にセラミックス膜の分極軸方位を同定できるわけではなく、格子定数を決定することにより、結晶学的見地から分極軸方位が間接的に同定されるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなX線や電子線による回折現象を利用した同定方法によると、対象となる試料の結晶方位と照射されるX線や電子線との角度調整などが複雑でありその調整に長時間を要することがある。また、これらの手法は、前述のように測定で決定された格子定数から分極軸方位を求めるため、例えば試料の結晶系が極めて立方晶に近い(擬立方晶)など、極めて接近した格子定数を持つ材料である場合には、測定の分解能上、分極軸方位を同定することが困難なことがある。そのため、より簡易な方法であって、短時間のうちに分極軸方位を同定することができる評価方法が求められている。
【0005】
本発明の目的は、分極軸方位を同定する方法であって、より簡易で検査時間の短縮が実現された結晶評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の結晶評価方法は、
(a)分極を有する結晶からなる試料を準備すること、
(b)前記試料の分極軸方位についての知見を得るための指標となる第1基準ラマンシフトを決定すること、
(c)前記試料にレーザ光を照射すること、
(d)前記第1基準ラマンシフトにおけるラマン散乱光の強度に従い分極軸方位を同定すること、を含む。
【0007】
本発明にかかる結晶評価方法によれば、あらかじめ、分極軸方位を同定する基準ラマンシフトを決定しておくことで、該基準ラマンシフトのラマン散乱光の強度を見るだけで、分極軸方位を同定することができる。そのため、従来にかかる技術のように、長い処理時間を必要とすることもなく、簡易な方法で分極軸方位を同定することができる。
【0008】
本発明は、さらに、下記の態様をとることができる。
【0009】
(2)本発明の結晶評価方法において、
前記試料は、基体の上に設けられたセラミックス膜であることができる。
【0010】
(3)本発明の結晶評価方法において、
前記基体の表面と平行な方向と、分極軸方位とのずれを同定する、結晶評価方法。
【0011】
(4)本発明の結晶評価方法において、
前記ラマン散乱光は、偏光されていることができる。
【0012】
(5)本発明の結晶評価方法において、
前記レーザ光の照射は、前記試料の複数の測定点で行われ、
前記試料における前記第1基準ラマンシフトにおけるラマン散乱光の強度の分布を求めること、を含むことができる。
【0013】
(6)本発明の結晶評価方法において、
前記試料がセラミックス膜であるときに、該セラミックス膜の面内における前記ラマン散乱光の強度の分布を求めること、を含むことができる。
【0014】
(7)本発明の結晶評価方法において、
前記(b)は、さらに、第2基準ラマンシフトを決定すること、を含むことができる。
【0015】
(8)本発明の結晶評価方法において、
前記第1基準ラマンシフトおよび前記第2基準ラマンシフトの少なくとも一方は、ブリルアンゾーン中心近傍の全対称既約表現に属する格子振動に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトであることができる。
【0016】
(9)本発明の結晶評価方法において、
前記第1基準ラマンシフトは、縦波に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトであり、
前記第2基準ラマンシフトは、前記第1基準ラマンシフトと同一の全対象既約表現に属するモードに対する横波に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトであり、
前記(d)では、前記第1基準ラマンシフトにおける散乱光の強度と、前記第2基準ラマンシフトにおける散乱光の強度との比に従い、分極軸方位を同定すること、を含むことができる。
【0017】
(10)本発明の結晶評価方法において、
前記レーザ光の照射は、前記試料の複数の測定点で行われ、
前記試料がセラミックス膜であるときに、該セラミックス膜の面内における前記第1基準ラマンシフトのラマン散乱光強度と前記第2基準ラマンシフトのラマン散乱光強度との比の分布を求めること、を含むことができる。
【0018】
(11)本発明の結晶評価方法において、
前記試料は、斜方相ニオブ酸カリウムであり、
第1基準ラマンシフトを、830cm―1に最も近い全対称既約表現に属する縦波の格子振動によるピークの位置とすることができる。
【0019】
(12)本発明の結晶評価方法において、
前記第2基準ラマンシフトは、605cm―1に最も近い全対称既約表現に属する横波の格子振動によるピークの位置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の一例について説明する。
【0021】
1.結晶評価方法
本実施の形態にかかる結晶評価方法では、まず、結晶からなる試料を準備する(工程a)。試料としては、所定の結晶構造を有する基板、基体の上に設けられた所定の結晶構造を有する薄膜などをあげることができる。具体的には、ペロブスカイト型のセラミックスである、ニオブ酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムやこれらの物質の一部を他の元素で置換した固溶体などをあげることができる。これらのペロブスカイト型のセラミックス膜などは、圧電、焦電素子や強誘電体メモリに適用される強誘電体キャパシタに用いられ、これらの薄膜の分極軸方位を同定できることで、特性の良好な素子の形成に大きく寄与することができる。
【0022】
次に、試料の分極軸方位の知見を得るための指標となる基準ラマンシフトを決定する(工程b)。これにより、ラマン散乱測定を行なうことのみで、分極軸方位を同定することができるようになる。最適な基準ラマンシフトは、試料によって異なるが、たとえば、ブリルアンゾーン中心近傍の全対称既約表現に属する格子振動に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトを選択することができる。ここで、「ブリルアンゾーン」とは、結晶の周期性(実空間の次元で、長さ[m]に対応)を、そのフーリエ空間(逆格子空間の次元で、長さの逆数(波数)[m−1])で表現したときの単位胞のことをいう。「ブリルアンゾーン中心近傍の格子振動」と述べたのは、一般にラマン散乱測定に用いるレーザの波長は可視領域にあり、対象となる結晶の単位胞サイズに比して極めて大きな値をとる(従ってその逆数である波数は極めて小さくゼロに近似できる)ために、ブリルアンゾーン中心近傍の格子振動のみが観測されるからである。「全対称既約表現に属する格子振動」とは、対象となる結晶の属する点群における全ての対称操作に対し、その振動方向が普遍である格子振動をいう。本実施の形態の実験例で試料とした、斜方晶ニオブ酸カリウム(KNbO)を例にとると、該結晶は、C2vという点群に属し、対称操作(回転操作、鏡映操作など)を4つ有する。対称操作とは、そのような操作を結晶に施した前後で、結晶の位置関係が変わらない操作のことである。この4つの操作で分極軸方位(という物理的性質)は常に普遍であるため(ノイマンの原理)、全対称表現に属する格子振動モード(C点群では、慣例上A1と標記される)の振動方向は分極軸方位に一致することがわかる。以上が、全対称既約表現に属する格子振動に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトが最適な基準ラマンシフトとして選択できる理由である。
【0023】
また、基準ラマンシフトは、1つである必要はなく、複数の基準ラマンシフトを決定することができる。この場合、同じ試料を測定したときに一方の基準ラマンシフト(第1基準ラマンシフト)とその出現位置が異なる(格子振動エネルギーの異なる)ラマンシフトを他方の基準ラマンシフト(第2基準ラマンシフト)とすることができる。
【0024】
具体的には、第1基準ラマンシフトは、縦波に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトとすることができ、第2基準ラマンシフトは、横波に由来するスペクトルが観測されるラマンシフトとすることができる。ここで、「縦波」および「横波」とは、後方散乱でラマン測定を行った場合、レーザの入射方向に格子振動は伝播するが、格子振動の振動方向と伝播方向が一致したものを縦波(LO)といい、一方、振動方向と伝播方向が互いに垂直な位置関係にあるものを横波(TO)という。このとき、振動方向とは、一つの原子に着目し、その振動(往復運動)の振幅の方向をいい、伝播方向とは、隣同士の格子点の位相(位置関係)の周期的なズレの進行方向をいう。
【0025】
たとえば、試料として、斜方相ニオブ酸カリウムを用いた場合には、第1基準ラマンシフトを、830cm―1に最も近い全対称既約表現に属する縦波の格子振動、A1(LO)によるピークの位置とし、第2基準ラマンシフトは、605cm―1に最も近い全対称既約表現に属する横波の格子振動、A1(TO)によるピークの位置とすることができる。
【0026】
次に、前記試料にレーザ光を照射する(工程(c))。これは、通常のラマン散乱光測定装置により行われることができる。レーザ光は、照射する前に偏光されていることが好ましい。また、得られたラマン散乱光は、偏光されていることが好ましい。たとえば、工程(b)で決定した基準ラマンシフトの近傍に複数のスペクトルが重なって存在する場合、基準ラマンシフトでのスペクトルの強度のみを観測することができず、評価精度が低下してしまうことがある。このような場合、ラマン散乱光を偏光することで所望のラマンシフトの強度のみを選択的に抽出することができ、評価精度を向上することができるという利点がある。
【0027】
次に、工程(b)で決定された基準ラマンシフトにおける散乱光の強度に従い分極軸方位を同定する(工程(d))。具体的には、基準ラマンシフトでのスペクトルの強度により、分極軸が所望の方向を向いている割合を見積もることができるのである。たとえば、試料として、前述の斜方相ニオブ酸カリウムを用いた場合には、その時のレーザの入射方向が分極軸方位と一致したとき、A1(LO)ピークの強度が最大となり、分極軸方位とレーザ入射方向とのズレが大きくなるに従い該ピーク強度は減少する。また、これまでの議論より、A1(LO)によるピーク強度とA1(TO)によるそれとは、互いに相補的な関係にあることがわかる。
【0028】
また、この工程では、所与の基体の上に設けられたセラミックス膜の分極軸方位を同定する際に、たとえば、ラマン散乱測定を複数の測定点で行い、試料であるセラミックス膜の面内における強度の分布を求めることもできる。つまり、セラミックス膜の面内における第1基準ラマンシフトの強度をマッピングすることとなる。この態様によれば、試料であるセラミックス膜全体の分極軸方位を調べたい場合に、分布図(マップ)をみるだけで、同定することができることとなる。
【0029】
さらに、工程(b)において、複数の基準ラマンシフトを決定する場合、第1基準ラマンシフトでのスペクトルの強度と、第2基準ラマンシフトでのスペクトルの強度の比に従って、同定することが好ましい。ラマン散乱光のスペクトルの強度は、たとえば、測定条件などにより変化することがある。しかし、複数の基準ラマンシフトでのスペクトル強度の比を求めることで、測定条件などの影響を受けることなく、分極軸方位の同定精度を高めることができる。
【0030】
また、上述した面内の分布を測定する工程においても、第1基準ラマンシフトでの強度と第2基準ラマンシフトでの強度の比をマッピングすることができる。これにより、精度の高い結晶評価を行うことができる。
【0031】
本実施の形態にかかる結晶評価方法によれば、あらかじめ、分極軸方位を同定する基準ラマンシフトを決定しておくことで、該基準シフトのラマン散乱光の強度を見るだけで、分極軸方位を同定することができる。そのため、従来にかかる技術のように、長い処理時間を必要とすることもなく、より簡易である分極軸方位の同定方法を提供することができる。
【0032】
2.実験例
以下に、本実施の形態にかかる結晶評価方法の効果を確認するための実験例について説明する。
【0033】
(実験例1)
まず、試料として、ニオブ酸カリウム(KNbO)の単結晶基板(5mm×5mm、厚み1mm)を準備した(工程(a))なお、試料であるKNbO単結晶基板は、分極軸方向が基板表面にほぼ平行であることが精密X線回折実験から予め判っている。ついで、この試料の分極軸方位を同定するための基準ラマンシフトを830cm−1と決定した(工程(b))。ついで、試料にアルゴンイオンレーザ光(波長514.5nm)を照射した(工程(c))。このラマン散乱スペクトルを図1に示す。なお、図1に示すスペクトルは、具体的には、基板真上から基板に向け垂直にレーザを入射し、後方に散乱された光入射レーザと同一方向に偏光した後、これを分光したスペクトルである。なお、図1中において、「y(x,x)−y」という表記は、「レーザの入射方向(入射光の偏光方向,散乱光の偏光方向)散乱光の取り出し方向」を意味しており、座標軸系は図2に定義されているものである。
【0034】
次に、得られたスペクトルにおいて、基準ラマンシフトである830cm−1のラマン散乱光の強度に従い分極軸方位を同定した(工程(d))。具体的な同定方法を図2、3を参照しつつ説明する。図2は、図3に示す各スペクトルが観測された時のレーザ光の照射方向を説明するための図であり、試料である基板を示す。図3は、種々の方向からレーザ光を照射したときの基準ラマンシフト近傍のスペクトルを示す。図3中、線Aは、分極軸方向に対し平行な方向、つまり図2に示すz軸に平行な方向からレーザを照射した時に観測されたスペクトルである。線Bは、基板に対して垂直方向、つまり、図2に示すy軸に平行な方向、線Cは、図2に示すx軸に平行な方向からレーザ光を当て、後方に散乱された光を分光したものである。図3からわかるように、光の入散乱方向が分極軸に平行であるとき(線Aのスペクトルに該当する。)基準ラマンシフト近傍で、一本の強いスペクトルのピークが観測された。これは、A1(LO)に帰属されるモードである。また、入射レーザの偏光方向を試料の一つの結晶軸方位に平行に揃えた場合、A1モードは、入射と散乱の偏光方向が互いに平行であるときに選択的に抽出される性質がある。一方、その他の方向では、ピークが観測されていない(線B、C)。このことから、試料であるKNbO単結晶基板の分極軸方位が、基板表面に対してほぼ平行であると同定することができるのである。
【0035】
以上のことより、本実施の形態にかかる結晶評価方法を用いることで、確かに分極軸方位を同定できることが確認された。また、斜方晶KNbO結晶は、通常のX線回折で格子定数を求めると擬立方晶であることがわかる。すなわち、図3に示したように、擬立方軸とした場合の(110)面の極点図形はほぼ4回軸対称のスポットとなり、従ってその分極軸方位をX線回折結果から決定することは極めて困難であった。しかし、上述のように、本実験例では、より簡易な方法で、分極軸方位を同定できたことが分かった。
【0036】
(実験例2)
実験例2では、実験例1で用いた試料と同様であるKNbO単結晶基板を準備した(工程(a))。よって、試料であるKNbO単結晶基板は、分極軸方向が基板表面にほぼ平行であることが精密X線回折実験から予め判っている。次に、基準ラマンシフトの決定を行った(工程(b))。実験例2では、第1基準ラマンシフトを830cm−1近傍とし、第2の基準ラマンシフトを605cm−1近傍とした。次に、試料にアルゴンイオンレーザ光(波長514.5nm)を照射した(工程(c))。具体的には、基板表面でのレーザビーム径は約10μmとし、縦横共に0.25mm間隔で測定し、計400点のデータ収集を行った。次に、得られたラマン散乱スペクトルに従い分極軸方位の同定をした(工程(d))。実験例2では、この工程(d)においては、第1基準ラマンシフトにおける散乱光の強度(以下、「I(830)」と記す。)と、第2基準ラマンシフトにおける散乱光の強度(以下、「I(605)」と記す。)との比R(=I(830)/I(605))の面内分布を調べた。図5にその測定結果を示す。
【0037】
図5から分かるように、走査エリア内でのRの値の分布はほぼ全面で0.01以下と極めて小さな値でばらつきが少ないことが分かった。従って、試料であるKNbO単結晶基板は分極軸方位が基板表面に平行であり極めて均質な単結晶基板であることが確認された。これは、事前に得られていた、試料の情報と一致する。
【0038】
(実験例3)
次に、実験例3として、KNbO結晶基板を準備した(工程(a))。工程(b)ないし工程(d)は、実験例2と同様に行った。図6に得られた面内分布の測定結果を示す。図6からわかるように、走査エリア内でのR値は、10−1のオーダー(0.1〜0.3)であり、図5に比べて一桁以上値が大きい。これは、微小領域(たとえばサブミクロンのオーダー)において、基板表面に平行でないいくつかの分極方位をもった結晶ドメインの存在によるものと推定され、平均的に見れば分極軸方位が基板表面平行方向からやや浮いた状態で分布した状態であることを示しているものと解釈できる。これにより、実験例3で準備した基板は、実験例2で準備した基板と比して良質の単結晶基板ではないと評価することができた。そこで、実験例3にかかる基板をについて、破壊測定(電子顕微鏡による高分解能組織観察)を行った。その結果、ラマン散乱スペクトルから推定されたとおり、結晶方位の異なる微小ドメインが分布している状態が直接観察され、実験例で得られた評価結果と極めて一致していることが確認できた。
【0039】
また、実験例2、3に例示したように、分極軸方位分布の側面からの品質管理を行う場合、目的に応じてRの値の上限を決定し、それを判定基準としてやればよい。
【0040】
(実験例4)
実験例4では、試料として、サファイア基板上に気相法により成膜された、膜厚が約150nmの(K0.9、Na0.1)NbO(以下、KNNと略して記す)結晶膜を準備した(工程(a))。次に、基準ラマンシフトを決定した(工程(b)。基準ラマンシフトは、実験例2と同様であった。次に、試料にレーザ光を照射した(工程(c))。具体的には、基板の垂直方向からアルゴンイオンレーザ(波長514.5nm)を1μm径で膜の表面に照射し、その後方散乱光を偏光することで分光機を介してA1対称モードを強調して抽出した。図7に得られたラマンスペクトルを示す。次に、得られたスペクトルに従い分極軸方位の同定を行った(工程(d))。まず、全体のスペクトルプロファイルを既往の研究結果(A.M.Quittetら、Phys.Rev.B14(1976)5068)と比較したところ両者はほぼ一致し、その結晶系は斜方晶であることが判明した。また、ラマンシフト830cm−1近傍のA1(LO)ピーク強度(I(830))が見られるため、KNbO結晶膜分極軸方位は完全にサファイア基板表面に平行ではないが、ラマンシフト605cm−1近傍のA1(TO)ピーク強度(I(605))に比べ相対的に小さいことから、分極軸の大部分が基板平行方向であるような、ほぼ所望のKNN結晶配向膜が得られていることが判った。これは、サファイア基板との格子整合により、そのような配向分布が得られたものと合理的に推察される。
【0041】
KNN結晶膜は、その優れた材料特性から近年表面弾性波デバイスへの応用等が期待されている。そして、その特性を最大限に活かすには、KNN膜の分極軸方位を基板表面と平行にすることが重要である。これは、そのようにKNN結晶膜を配向させると電気機械結合定数が大きくなり、従ってエネルギー損失を小さくできるからである。本実施の形態にかかる結晶評価方法を用いることで、材料特性を十分に引き出すことができているKNN膜を形成できたか否かを容易に評価することができ、たとえば、特性の良い素子の形成に寄与することができる。
【0042】
以上の実験例から、本実施の形態にかかる結晶評価方法を用いることで、より簡易な方法で、迅速にその膜の分極軸方位を同定することができることが確認された。上述の実験例では、KNbOや、そのKサイトを一部Naで置換したKNN膜を対象とした実験例について記載したが、分極軸を有する結晶であれば、本発明の結晶評価方法を適用できるのはいうまでもない。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実験例1におけるラマン散乱のスペクトルを示す図。
【図2】実験例1において、レーザ光の入射方向を説明するための図。
【図3】実験例1におけるラマン散乱のスペクトルを示す図。
【図4】実験例1における試料のX線回折の結果を示す図。
【図5】実験例2の測定結果を示す図。
【図6】実験例3の測定結果を示す図。
【図7】実験例4におけるラマン散乱のスペクトルを示す図。




 

 


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