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発明の名称 照明空間の雰囲気設計方法、および照明空間の雰囲気制御システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−59353(P2007−59353A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2005−246792(P2005−246792)
出願日 平成17年8月26日(2005.8.26)
代理人 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
発明者 井口 雅行 / 岩井 彌
要約 課題
一室複数灯での間接照明や壁面照明を主体とするデザイン性の高い部屋において、ユーザーの要望する部屋の雰囲気に合った照明環境を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを、照明の専門知識を持たない一般ユーザが手軽に実現できる照明空間の雰囲気設計方法、および照明空間の雰囲気制御システムを提供する。

解決手段
使用する照明器具は、照射エリアが在室者の視野内での高い位置である照明器具LH10(カテゴリーHigh)、低い位置である照明器具LL10(カテゴリーLow)、高い位置と低い位置との中間位置である照明器具LM10(カテゴリーMiddle)の3つのカテゴリーに分類され、カテゴリー毎の各色モード境界輝度の比率、あるいはカテゴリー毎の各色モード境界輝度に基づいて設定された各明るさ感単位の比率を、住宅居室Raの所望の雰囲気を実現するために所定の比率に設定する。
特許請求の範囲
【請求項1】
部屋を照明する照明器具の光源とは別の光源を用いて表面の輝度が変化する色票を部屋内に備えて、在室者から見た色票が部屋内に置かれた物体として認識される輝度のレベルと自ら発光している光源として認識される輝度のレベルとの中間である不自然な色の見え方になるときの色票の輝度を色モード境界輝度とし、
部屋を照明する複数の照明器具を在室者の視野内における照射エリア別のカテゴリーに分類して、カテゴリー毎の照明器具が部屋を照明しているときの各色モード境界輝度の比率、あるいはカテゴリー毎の照明器具の各色モード境界輝度に基づいてカテゴリー毎の照明器具による明るさを評価する単位として設定された各明るさ感単位の比率を、部屋の所望の雰囲気を実現するために所定の比率に設定することを特徴とする照明空間の雰囲気設計方法。
【請求項2】
前記在室者の視野内における照射エリア別のカテゴリーを、照射位置が高い位置、低い位置、高い位置と低い位置との中間位置の3つに分類したことを特徴とする請求項1記載の照明空間の雰囲気設計方法。
【請求項3】
所望の雰囲気を実現するための前記カテゴリー毎の各色モード境界輝度の所定の比率、あるいは前記カテゴリー毎の各明るさ感単位の所定の比率が、部屋の用途によって異なることを特徴とする請求項1または2記載の照明空間の雰囲気設計方法。
【請求項4】
前記カテゴリー毎の各色モード境界輝度の比率、あるいは前記カテゴリー毎の各明るさ感単位の比率を、部屋の雰囲気が所望の雰囲気となるように予め所定の比率に設定しておくことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の照明空間の雰囲気設計方法。
【請求項5】
複数の照明器具のうち一部の照明器具の出力を増減させることによって、前記カテゴリー毎の各色モード境界輝度の比率、あるいは前記カテゴリー毎の各明るさ感単位の比率を変化させ、部屋の雰囲気を第1の雰囲気から第2の雰囲気へ連続的に変化させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の照明空間の雰囲気設計方法。
【請求項6】
部屋を照明する複数の照明器具と、請求項1乃至5いずれかの照明空間の雰囲気設計方法を用いて各照明器具の出力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする照明空間の雰囲気制御システム。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明空間の雰囲気設計方法、および照明空間の雰囲気制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の明るさ感向上や、視認性の向上等を目的として、様々な照明設計方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
屋内照明の設計は、照明に関する専門知識を持った一部の専門家によって行なわれるものであるが、ここで照明設計を「室内に必要な明るさおよび雰囲気を満足するために適切な照明器具を選択すること」であると広義に捉えた場合、一般ユーザがカタログ等を見て自分の部屋に合った照明器具を選択する行為もまた照明設計の一部分であると考えることができる。
【0004】
照明メーカでは、そのような一般ユ−ザの照明設計の目安となるように、照明器具の出力(光源W数等)やデザイン等の照明器具に関する情報の他に、例えば住宅照明用のシーリングライトの場合では、各器具の配光データから照度計算した結果に基づいてJIS照度基準レベルの水平面照度が概ね満足できる部屋の広さを特定し、適合畳数「6〜8畳用」等とカタログに表記していた。また、照明器具を部屋に設置した場合の空間の雰囲気をユーザに伝えるために、モデルルームに器具を設置したイメージ写真やCG画像を掲載する方法が採用されていた。
【0005】
また、最近は、一室複数灯での間接照明や壁面照明を主体とするデザイン性の高い部屋において、部屋の条件を考慮した上で、部屋の用途に合った「明るさ感」の照明環境を実現する照明器具、および照明器具の組み合わせを、照明の専門知識を持たない一般ユーザが手軽に選択可能な照明設計方法も提案されている。
【特許文献1】特開平9−320311号公報
【特許文献2】特開2003−151308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の適合畳数表示等の方法では、照明器具単体を配置した場合の水平面照度が規定のレベルを満足するか否かという情報しか提供できず、従来のイメージ写真やCG画像をカタログに掲載する方法では、ある特定の条件下での照明の印象、雰囲気しか伝えることができず、ユーザの希望する様々な部屋の条件(内装や器具の配置)での照明の印象、雰囲気を伝えるには至っていない。
【0007】
また、一室複数灯での間接照明や壁面照明を主体とするデザイン性の高い部屋において、照明の専門知識を持たない一般ユーザであっても部屋の用途に合った「明るさ感」を考慮して照明環境を設計することはできたが、「落ち着いた感じの部屋にしたい」、「開放感のある部屋にしたい」といった部屋の雰囲気に関するユーザの要望を満足するには至っていない。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、一室複数灯での間接照明や壁面照明を主体とするデザイン性の高い部屋において、ユーザーの要望する部屋の雰囲気に合った照明環境を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを、照明の専門知識を持たない一般ユーザが手軽に実現できる照明空間の雰囲気設計方法、および照明空間の雰囲気制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、部屋を照明する照明器具の光源とは別の光源を用いて表面の輝度が変化する色票を部屋内に備えて、在室者から見た色票が部屋内に置かれた物体として認識される輝度のレベルと自ら発光している光源として認識される輝度のレベルとの中間である不自然な色の見え方になるときの色票の輝度を色モード境界輝度とし、部屋を照明する複数の照明器具を在室者の視野内における照射エリア別のカテゴリーに分類して、カテゴリー毎の照明器具が部屋を照明しているときの各色モード境界輝度の比率、あるいはカテゴリー毎の照明器具の各色モード境界輝度に基づいてカテゴリー毎の照明器具による明るさを評価する単位として設定された各明るさ感単位の比率を、部屋の所望の雰囲気を実現するために所定の比率に設定することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、照明の専門知識を持たない一般ユーザでも容易に、カタログ等に記載された照明器具個々の色モード境界輝度あるいは明るさ感単位の値に基づいて、空間の所望の雰囲気を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを選択することができる。すなわち、一室複数灯での間接照明や壁面照明を主体とするデザイン性の高い部屋において、ユーザーの要望する部屋の雰囲気に合った照明環境を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを、照明の専門知識を持たない一般ユーザが手軽に実現できるのである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記在室者の視野内における照射エリア別のカテゴリーを、照射位置が高い位置、低い位置、高い位置と低い位置との中間位置の3つに分類したことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ユーザーが直感的に分かり易いカテゴリーに分類することで、設計の簡便化を図ることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2において、所望の雰囲気を実現するための前記カテゴリー毎の各色モード境界輝度の所定の比率、あるいは前記カテゴリー毎の各明るさ感単位の所定の比率が、部屋の用途によって異なることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、本設計方法の適用の幅を広げることができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記カテゴリー毎の各色モード境界輝度の比率、あるいは前記カテゴリー毎の各明るさ感単位の比率を、部屋の雰囲気が所望の雰囲気となるように予め所定の比率に設定しておくことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、所望の雰囲気を実現したいユーザーの利便性の向上を図るとともに、できるだけ少ない消費電力で所望の雰囲気を実現して省エネルギー化を図ることができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、複数の照明器具のうち一部の照明器具の出力を増減させることによって、前記カテゴリー毎の各色モード境界輝度の比率、あるいは前記カテゴリー毎の各明るさ感単位の比率を変化させ、部屋の雰囲気を第1の雰囲気から第2の雰囲気へ連続的に変化させることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、空間に適用可能な雰囲気の幅を広げることができ、ユーザーが使用する空間の価値を向上させることができる。
【0019】
請求項6の発明は、部屋を照明する複数の照明器具と、請求項1乃至5いずれかの照明空間の雰囲気設計方法を用いて各照明器具の出力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、請求項1乃至5いずれかと同様の効果を奏し得る照明空間の雰囲気制御システムを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明では、一室複数灯での間接照明や壁面照明を主体とするデザイン性の高い部屋において、ユーザーの要望する部屋の雰囲気に合った照明環境を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを、照明の専門知識を持たない一般ユーザが手軽に実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(実施形態1)
近年、室内のインテリアにこだわりを持ったユーザー層が増え、それにともなって、室内の照明についても、従来のシーリングライト1灯を天井に配置するといった手法ではなく、照明器具や、その配置のバリエーションに関しても様々な手法が取られるようになり、それらを組み合わせた一室複数灯配置の照明手法が多く見られるようになってきた。住宅居室における一室複数灯配置の例を図5に示す。この例では、照射エリアが互いに異なる3つの照明器具La10〜La12を室内に配置している。
【0024】
そこで、このような一室複数灯配置の照明手法において、各照明器具をその照射エリアにしたがって在室者の視野内での位置別に類型化(カテゴリー分類)し、カテゴリー毎の照明器具が部屋を照明しているときの各「色モード境界輝度」の比率、あるいはカテゴリー毎の照明器具の色モード境界輝度に基づいてカテゴリー毎の照明器具による明るさを評価する単位として設定された各「明るさ感単位」の比率の変化が空間の雰囲気に与える影響について着目し、実験を行った。
【0025】
まず、本発明では、上記「明るさ感単位」を定量的に把握する手法として、照明認識視空間の概念における色モード境界輝度の測定(参考文献1:照明認識視空間の明るさサイズの測定による実環境における空間の明るさ感の評価、照明学会誌、第86巻第11号、2002、P830〜836、山口他)を用いており、照明された部屋に置かれた色票(以下、テストパッチと呼ぶ)を在室者(被験者)から見た見え方が、その部屋内に置かれた物体(物体色)として認識される輝度のレベルと自ら発光している光源(光源色)として認識される輝度のレベルとの中間である、その部屋に置かれた物体としては不自然な色の見え方になる輝度のレベル(これを「色モード境界輝度」と呼ぶ)を測定することによって、照明された部屋の明るさ感を定量的に表すものである。
【0026】
また、不均一な照明環境において色モード境界輝度の加法性が成り立つことが示されており(参考文献2:不均一な照明環境における空間の明るさ感の加法性、第36回照明学会全国大会講演論文集、P154、2003、山口他)、ある照明環境Z1が、照明環境Z2とZ3との和であるとき、照明環境Z2,Z3における各々の色モード境界輝度の和で照明環境Z1における色モード境界輝度が予測できることが実証されている。
【0027】
以上から、照明認識視空間の概念における「色モード境界輝度」を測定することによって、空間の明るさ感を定量的に把握することができ、ある照明器具を設置した部屋の明るさ感を規定する「明るさ感単位」を設定することが技術的に可能であるといえる。
【0028】
ここで、本発明の手法である色モード境界輝度設定には、図6に示すテストパッチ輝度提示装置1を使用する。テストパッチ輝度提示装置1は、設置プレート1g上に設置された、光源にハロゲン電球を用いたスライドプロジェクターで構成される光源システム1bを収納した光源ボックス1a、回転濃度フィルター1dを収納した光学系ボックス1c、可動式平面ミラー1e、支持具1fによって設置プレート1aから1100mmの高さに設けられたテストパッチTとからなる。テストパッチTは、光源システム1bから回転濃度フィルター1dを通った光が可動式平面ミラー1eで反射して局所照明されている。被験者は、手元のスイッチで回転濃度フィルター1dを回転させることで自由にテストパッチTの輝度を調節することが可能である。また、テストパッチTは照明の影響をほとんど受けないように照射面を下向きに斜め45°に傾けてある。テストパッチTは、60mm×60mmの大きさで、被照射面はN5,グレーの紙面からなる。
【0029】
上記のように設定された「色モード境界輝度」から、下記[数1]に基づいて「明るさ感単位」を導出し、その単位はFeu(フー)と称する。
【0030】
【数1】


【0031】
次に、実験設備の平面図を図7に示し、斜視図を図8に示す。部屋サイズ:3500mm×3500mm、天井高さ:2500mmの8畳実物大の住宅居室Raを実験に使用した。天井および壁の3面は白のクロス仕上げ、壁の一面は白のロールスクリーン2で間仕切りを施しており、床はやや光沢のあるダークブラウンのフローリング仕上げであり、ロールスクリーン2を右手に臨む壁面Ra1側の略中央を被験者の観測位置Pとする。
【0032】
使用する照明器具は、照射エリアが在室者の視野内での高い位置であるもの(カテゴリーHigh)、低い位置であるもの(カテゴリーLow)、高い位置と低い位置との中間位置であるもの(カテゴリーMiddle)の3つのカテゴリーに分類される。そして、カテゴリーHighに属する照明器具LH1としてダイクール電球65W×3灯用のアッパーライトを被験者側壁面Ra1の左コーナーから600mm×600mmの位置に配置して、天井を照射する。また、カテゴリーMiddleに属する照明器具LM1として蛍光灯40W×1灯のバーチカルライトを被験者が観測位置Pから対面する壁面Ra2の右コーナーから250mm×250mmの位置に配置して、壁面Ra2の中間高さ付近を照射する。また、カテゴリーLowに属する照明器具LL1として蛍光灯40W×1灯のホリゾントを被験者が観測位置Pから対面する壁面Ra2の左コーナーから100mmの位置に配置して、壁面Ra2の床付近を照射する。このように、照射エリアの位置によって照明器具のカテゴリーを分類することで、分類の基準がユーザーにとって直感的に分かり易くなり、設計の簡便化を図ることができる。なお、これらの各照明器具LH1,LM1,LL1は、被験者の手元に配置した調光器3によって調光可能である。
【0033】
まず、本実験に先だって、テストパッチTが壁面Ra1から2500mmに位置するようにテストパッチ輝度提示装置1を設置して測定した各照明器具LH1,LM1,LL1単体で点灯した場合の「色モード境界輝度」と、部屋の床面中央部に設置した照度計4によって測定される「床面中央照度」との関係を求めた。一例として、図9に照明器具LH1の色モード境界輝度と床面中央照度との関係を示す。図9中の直線Yは、全てのプロット点に対して線形回帰で求めた直線(y=0.1085x+1.1681)であり、その決定係数は0.983と非常に高い値を示している。照明器具LM1,LL1の「色モード境界輝度」と「床面中央照度」との関係も、同様に直線で表される。したがって、各照明器具LH1,LM1,LL1の「色モード境界輝度」と「床面中央照度」との関係は線形な比例関係にあるといえる。そして、各照明器具LH1,LM1,LL1を調光しながら床面中央照度をモニターすることで、これら「色モード境界輝度」と「床面中央照度」との関係に基づいて、各カテゴリーHigh,Middle,Lowの「色モード境界輝度」、または[数1]を用いて算出される「明るさ感単位」を任意の値に調整することができる。
【0034】
次に、実験の手順,結果について述べる。被験者として、正常な視力、色覚を有する20代〜30代の照明関連の仕事に従事する男女10名を選抜した。各被験者には、図10に示す全12通りの、カテゴリーHigh,Middleの各「明るさ感単位」の組み合わせの条件(シーン1〜シーン12)を提示し、各条件下で、カテゴリーLowの照明器具LL1を次のようなインストラクションにしたがって調光させた。
「住宅居室で何もしないでくつろいでいる状態を想定して、最もよい灯りのバランスになるように調光して下さい。」
「次に、これ以上暗くすると違和感があると感じるところで止めて下さい。」
「次に、これ以上明るくすると違和感があると感じるところで止めて下さい。フル点灯にしても違和感がない場合は申告してください。」
「もう一度、最もよい灯りのバランスになるように調光してください。」
なお、被験者は1つの条件毎に入退室し、各条件の提示順序は被験者毎にランダムな順序とした。
【0035】
上記実験の結果として、図10に示すカテゴリーLowの「明るさ感単位」は、シーン1〜シーン12における被験者全員の照明器具LL1に対する調光結果の平均値を示し、各条件で最もよい灯りのバランスにした場合の空間の雰囲気を、「くつろぎ感(くつろげない−くつろいだ)」、「落ち着き感(落ち着かない−落ち着いた)」、「やすらぎ感(やすらぎのない−やすらぎのある)」、「明るさ感(暗い−明るい)」、「開放感(狭い−広い)」、「好ましさ(嫌い−好き)」について、各々7段階評価をした被験者平均値のグラフを図11〜図13に示す。
【0036】
上記結果についての考察を以下に述べる。まず、図11〜図13の各グラフともに、条件が異なる各シーン毎で、空間の雰囲気が変わることを示している。図11(a)(b)に示した「開放感」,「明るさ感」に関する各評価結果は、ほぼ同様の傾向を示しており、全てのカテゴリーの照明器具LH1,LM1,LL1の各「明るさ感単位」の総和、つまり空間全体の明るさ感が増加する程、「開放感」,「明るさ感」の評価が高くなっている。
【0037】
次に、図12(a)(b)(c)に示した「くつろぎ感」,「落ち着き感」,「やすらぎ感」に関する評価結果を見てみると、ほぼ同様の傾向を示しており、空間全体の「明るさ感」が比較的高いシーン10,11,12の評価が低くなっている。但し、全てのカテゴリーHigh,Middle,Lowの各「明るさ感単位」の総和が同じシーンであっても、カテゴリーHigh,Middle,Lowの各「明るさ感単位」の比率が異なる条件間で評価に違いが見られる(例えば、シーン2とシーン4、シーン5とシーン7)。
【0038】
以上のように、室内に設置した照明器具を、その照射エリアにしたがって、照射エリアが在室者の視野内での高い位置であるもの、低い位置であるもの、高い位置と低い位置との中間位置であるものの3つに分類してカテゴリー分けを行い、そのカテゴリー毎の「色モード境界輝度」に基づいた「明るさ感単位」の比率の違いが、照明された室内の雰囲気に影響を及ぼすこと、さらにカテゴリー毎の「明るさ感単位」の比率を変えることで室内の雰囲気をコントロールできることがわかった。
【0039】
上記8畳の住宅居室Raに配置した照明器具LH1,照明器具LM1,照明器具LL1の各「明るさ感単位」の比率の違いによる雰囲気評価実験では、部屋の用途については特に規定せず、住宅における一般的な居室という想定で実験を行ったため、部屋の用途を規定した場合にどのような結果が得られるかを確かめる必要があった。そこで、以下に述べるような住宅和室におけるカテゴリー毎の「明るさ感単位」の比率の違いによる雰囲気評価実験をさらに行った。
【0040】
住宅和室の実験設備を図14に示す。床の間Rb1を設けた8畳の和室Rbを使用し、略中央には机5を配置し、床の間Rb1を設けた壁面Rb2に対面して机5を挟んだ位置を被験者の観測位置Pとする。
【0041】
使用する照明器具は、上記同様に照射エリアによって、3つのカテゴリーHigh,Middle,Lowに分類される。そして、カテゴリーHighに属する照明器具LH2として和紙張り間接型ペンダントを部屋中央の天井面に配置する。また、カテゴリーMiddleに属する照明器具LM2として和風角型ダウンライトを部屋の四隅に配置し、同じくカテゴリーMiddleに属する照明器具LM3として床の間用スポットライトを床の間Rb1の壁面中央を照射するように配置する。また、カテゴリーLowに属する照明器具LL2として和風スタンドの灯具のみを床置きで1つの隅に配置し、同じくカテゴリーLowに属する照明器具LL3として乳白ガラスグローブスタンドを照明器具LL2の対角にある隅に配置する。これらの各照明器具LH2,LM2,LM3,LL2,LL3も調光可能である。なお、図15(a)〜(e)に照明器具LH2,LM2,LM3,LL2,LL3の外観を示す。
【0042】
次に、実験の手順,結果について述べる。被験者として、正常な視力、色覚を有する20代〜30代の照明関連の仕事に従事する男女10名を選抜した。そして、上記図7に示す住宅居室Raでの実験と同様に、各照明器具LH2,LM2,LM3,LL2,LL3単体での色モード境界輝度と床面中央照度との関係を求め、各照明器具LH2,LM2,LM3,LL2,LL3を調光しながら床面中央照度をモニターすることで、これら「色モード境界輝度」と「床面中央照度」との関係に基づいて、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「色モード境界輝度」または「明るさ感単位」を任意の値に調整することができる。各被験者には、上記図7に示す住宅居室Raでの実験結果を踏まえて、図16に示す全9通りの、カテゴリーHigh,Middleの各「明るさ感単位」の組み合わせの条件(シーン11〜シーン19)を提示し、各条件下で、カテゴリーLowに属する照明器具LL2,LL3を次のようなインストラクションにしたがって調光させた。
「住宅居室で何もしないでくつろいでいる状態を想定して、最もよい灯りのバランスになるように調光して下さい。」
「次に、これ以上暗くすると違和感があると感じるところで止めて下さい。」
「次に、これ以上明るくすると違和感があると感じるところで止めて下さい。フル点灯にしても違和感がない場合は申告してください。」
「もう一度、最もよい灯りのバランスになるように調光してください。」
なお、被験者は1つの条件毎に入退室し、各条件の提示順序は被験者毎にランダムな順序とした。
【0043】
上記実験の結果として、図16のカテゴリーLowの「明るさ感単位」は、各条件における被験者全員のカテゴリーLowに対する調光結果の平均値を示し、空間の雰囲気を、「くつろぎ感」、「落ち着き感」、「やすらぎ感」について、各々7段階評価をした被験者平均値のグラフを図17(a)〜(c)に示す。この図17(a)〜(c)に示す和室Rbでの評価結果と、図12(a)〜(c)に示す住宅居室Raでの評価結果とを比較すると、「くつろぎ感」や「やすらぎ感」に関しては住宅居室Raで評価の最も高かったシーン4(カテゴリーHigh,Middle,Lowの比率が2:1:4)の条件よりも、和室Rbではシーン18(カテゴリーHigh,Middle,Lowの比率が2:2:2)の条件のほうが評価は高くなっている。
【0044】
このように、部屋の用途を規定した場合、所望の雰囲気が同じであっても、部屋の用途の違いによって、その雰囲気を実現するカテゴリー毎の明るさ感単位の比率にも違いがあることが示唆されている。
【0045】
次に、図11(a)(b)に示す住宅居室Raにおける「開放感」、「明るさ感」の評価結果と、図13に示す住宅居室Raにおける「好ましさ」の評価結果とに着目する。まず、各カテゴリーHigh,Middle,Lowの「明るさ感単位」の総和、つまり空間全体の明るさ感が増加するほど、「開放感」、「明るさ感」の評価が高くなっているものの、「好ましさ」という観点では、「明るさ感単位」の総和が大きければ「好ましさ」の評価が高いとは必ずしも言えない。また、省エネルギーという観点からも、やみくもに「明るさ感単位」を大きくすることは、照明に係る消費電力を増加させることになり望ましくない。したがって、空間が「開放感」、「明るさ感」の雰囲気を備えるのに最適な各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率は、2:4:4(シーン6)あるいは4:2:4(シーン8)であるということがいえる。
【0046】
このように、上記評価結果より、空間の雰囲気を所望の雰囲気とするために最適な各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率がわかるので、所望の雰囲気となる最適な「明るさ感単位」の比率を予め設定しておけば、所望の雰囲気を実現したいユーザーの利便性の向上を図るとともに、できるだけ少ない消費電力で所望の雰囲気を実現して省エネルギー化を図ることができる。
【0047】
次に、図12(a)(b)(c)に示す住宅居室Raにおける「くつろぎ感」、「落ち着き感」、「やすらぎ感」の評価結果と、図11(a)(b)に示す住宅居室Raにおける「開放感」、「明るさ感」の評価結果とに着目する。まず、上記のように、空間が「開放感」、「明るさ感」の雰囲気を備えるのに最適な各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率は、2:4:4(シーン6)あるいは4:2:4(シーン8)である。そして、このシーン6のカテゴリーMiddleの「明るさ感単位」を4から1に減少させる、あるいはシーン8のカテゴリーHighの「明るさ感単位」を4から2に減少させることによって、「くつろぎ感」、「落ち着き感」、「やすらぎ感」の評価が高いシーン4あるいはシーン5の条件を実現することが可能となる。つまり、照明器具の種類、配置が同じであっても、一部の照明器具の出力を変化させることによって、室内の雰囲気を大きく変えることができる。
【0048】
上記実験結果に基づいて、以下、本実施形態の照明空間の雰囲気設計方法について説明する。
【0049】
図3は、照射エリアの異なる8つの照明器具La1〜La8について、全点灯時の「明るさ感単位」を各々示しており、照明器具La1〜La4は2(Feu)、照明器具La5〜La8は4(Feu)である。そして、在室者の視野内における照射エリア別のカテゴリーを上記同様にHigh,Middle,Lowの3つとした場合に、部屋用途別(
住宅居室、和室)の所望雰囲気(「落ち着き感」,「開放感」)を実現するための各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を図4に示す。そして、ユーザーは、部屋に応じて自分の好みの雰囲気を実現するために、図4に示す各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を満足するように、図3より照明器具を選択する。例えば、通常の8畳の住宅居室Raにおいて「落ち着き感」を得たい場合は図1に示すように、カテゴリーHighに属する照明器具LH10として照明器具La1(全点灯時:2(Feu))を配置し、カテゴリーMiddleに属する照明器具LM10として照明器具La2(全点灯時:2(Feu))を配置し、カテゴリーLowに属する照明器具LL10として照明器具La8(全点灯時:4(Feu))を配置することで、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を2:2:4に設定する。
【0050】
また、通常の8畳の住宅居室Raにおいて「開放感」を得たい場合は図2に示すように、カテゴリーHighに属する照明器具LH11として照明器具La6(全点灯時:4(Feu))を配置し、カテゴリーMiddleに属する照明器具LM11として照明器具La7(全点灯時:4(Feu))を配置し、カテゴリーLowに属する照明器具LL11として照明器具La8(全点灯時:4(Feu))を配置することで、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を4:4:4に設定する。
【0051】
このように、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を実現したい部屋の雰囲気に応じて設定することで、照明の専門知識を持たない一般ユーザでも容易に、カタログ等に記載された照明器具個々の色モード境界輝度あるいは明るさ感単位の値に基づいて、空間の所望の雰囲気を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを選択することができる。すなわち、ユーザーの要望する部屋の雰囲気に合った照明環境を実現する照明器具および照明器具の組み合わせを、照明の専門知識を持たない一般ユーザが手軽に実現できるのである。
【0052】
次に、8条の和室Rbにおいて「落ち着き感」を得たい場合は、図4に示すように、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を2:2:2に設定するように照明器具および照明器具の組み合わせを選択し、「開放感」を得たい場合は、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を4:4:4に設定するように照明器具および照明器具の組み合わせを選択すればよく、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を、住宅居室Ra、和室Rb等の部屋用途に応じて設定することで、本設計方法の適用の幅を広げることができる。
【0053】
また、本実施形態では、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率を設定しているが、各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「色モード境界輝度」の比率を部屋用途に応じて設定しても、部屋の所望雰囲気を同様に実現することができる。
【0054】
(実施形態2)
図18は照明空間の雰囲気制御システムの構成を示しており、実施形態1と同様に、在室者の視野内における照射エリア別のカテゴリーをHigh,Middle,Lowとし、3つのカテゴリーHigh,Middle,Lowに各々対応した照明器具LH11,LM11,LL11と、照明器具LH11,LM11,LL11の各出力を変化させる調光部6と、照明器具LH11,LM11,LL11の任意の「明るさ感単位」に対応した調光信号を記憶しておく記憶部7とを、8畳の住宅居室Raに配置して構成される。
【0055】
ここで、記憶部7には、所望の雰囲気を実現するために各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率に対応する調光信号が予め記憶されており、実現したい雰囲気に対応した調光信号が調光部6から照明器具LH11,LM11,LL11に送信され、照明器具LH11,LM11,LL11は所望の雰囲気となる「明るさ感単位」の比率に調光制御されるように、予め設定されている。このように、実現したい雰囲気となるように予め設定しておくことで、所望の雰囲気を実現したいユーザーの利便性の向上を図るとともに、できるだけ少ない消費電力で所望の雰囲気を実現して省エネルギー化を図ることができる。
【0056】
(実施形態3)
本実施形態の雰囲気制御システムは、実施形態2と同様に図18に示される。本実施形態では、記憶部7に、雰囲気Aを実現するための各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率に対応する調光信号と、雰囲気Bを実現するための各カテゴリーHigh,Middle,Low毎の「明るさ感単位」の比率に対応する調光信号とを記憶しておき、図示しない切替スイッチ等で調光部6から照明器具LH11,LM11,LL11に送信する調光信号をいずれかに切り替えることで、部屋の雰囲気を、雰囲気Aから雰囲気Bへ、あるいは雰囲気Bから雰囲気Aへ連続的に変化させるものである。このように部屋の雰囲気を変化させることで、空間に適用可能な雰囲気の幅を広げることができ、ユーザーが使用する空間の価値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態1の照明空間の雰囲気設計方法を示す照明配置図である。
【図2】同上の照明空間の雰囲気設計方法を示す別の照明配置図である。
【図3】同上の各照明器具の明るさ感単位を示す図である。
【図4】同上のカテゴリー毎の各明るさ感単位の所定の比率を部屋用途別に示す図である。
【図5】同上の一室複数灯配置の一例を示す図である。
【図6】同上のテストパッチ輝度提示装置の構成を示す図である。
【図7】同上の住宅居室の実験設備を示す平面図である。
【図8】同上の住宅居室の実験設備を示す斜視図である。
【図9】図7,図8の実験における中央床面照度と色モード境界輝度との関係を示す図である。
【図10】図7,図8の実験結果を示す図である。
【図11】(a)(b)図7,図8の実験における開放感、明るさ感の評価結果を示す図である。
【図12】(a)(b)(c)図7,図8の実験におけるくつろぎ感、落ち着き感、やすらぎ感の評価結果を示す図である。
【図13】図7,図8の実験における好ましさの評価結果を示す図である。
【図14】同上の和室の実験設備を示す平面図である。
【図15】(a)〜(e)図14の実験で用いる照明器具の外観を示す図である。
【図16】図14の実験結果を示す図である。
【図17】(a)(b)(c)図14の実験におけるくつろぎ感、落ち着き感、やすらぎ感の評価結果を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2,3の照明空間の雰囲気制御システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
Ra 住宅居室
LH10 カテゴリーHighに属する照明器具
LM10 カテゴリーMiddleに属する照明器具
LL10 カテゴリーLowに属する照明器具




 

 


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