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発明の名称 弓道矢用のシャフト
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−198707(P2007−198707A)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
出願番号 特願2006−20336(P2006−20336)
出願日 平成18年1月30日(2006.1.30)
代理人
発明者 松井 泰志 / 竹中 寿優
要約 課題
要求性能に応じて、軽量化と同時に曲げ強度、曲げ弾性率等の特性を満たすことが可能な繊維強化樹脂製の弓道矢用シャフトを提供する。

解決手段
シャフトの質量が15g以上20g以下からなり、繊維強化樹脂層の少なくとも1層が引張り弾性率40GPa以上100GPa以下の強化繊維からなる低弾性率層によって構成され、且つ、前記シャフトのスパイン値が400以上900以下であることを特徴とした弓道矢用のシャフト。
特許請求の範囲
【請求項1】
繊維強化樹脂製材料によって積層巻回して繊維強化樹脂層を形成させてなる弓道矢用のシャフトにおいて、該シャフトの質量が15g以上20g以下からなり、前記繊維強化樹脂層の少なくとも1層が引張り弾性率40GPa以上100GPa以下の強化繊維からなる低弾性率層によって構成され、且つ、前記シャフトのスパイン値が400以上900以下であることを特徴とする弓道矢用のシャフト。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂層の少なくとも1層の強化繊維は、アラミド繊維であることを特徴とする請求項1記載の弓道矢用のシャフト。
【請求項3】
前記低弾性率層の強化繊維は、アラミド繊維であることを特徴とする請求項1、2に記載の弓道矢用のシャフト。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
繊維強化樹脂製材料によって、所望の強度、剛性を満足した上で軽量化を実現した弓道矢用のシャフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弓道用の矢は、材料の物性に適度な曲げ剛性と粘りや腰があり、しかも、外観や風合いが良いため、上級者は天然の竹を好んで使用している。しかし、前記竹で作られた矢は、肉厚や外径寸法が同じものは殆どなく、質量、曲げ剛性や強度もばらつきが大きかった。そこで、前記ばらつきを無くするために、ジュラルミンや繊維強化樹脂製のシャフトの使用した、弓道用の矢が知られている。
【0003】
矢の果たす役割が多くを占める的中精度においては、従来から矢の軽量化の影響が大きいと言われており、例えば特許文献1あるいは特許文献2に開示されているように、矢が軽くなるほど速度は増し、矢の軌道が直線的に近付く、あるいは的までの到達時間が短くなることで、その的中精度は増すと記載されている。しかしながら具体的な設計手法は今のところなく、機能面での大きな成果は得られていない。
また、特許文献3には、強化繊維に熱硬化性合成樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回形成している弓道用の矢が開示されている。
【特許文献1】特開昭52−49699号公報
【特許文献2】特開昭57−41597号公報
【特許文献3】特開2005−273987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ジュラルミン製のシャフトで軽量化を実現させようとした場合、質量以外の他の性能、例えばシャフトの肉厚を薄くすることで、曲げ剛性あるいは強度面を犠牲にしなければならない必要性が出てくる。また、所望の強度が損なわれることで、繰り返しの使用により塑性変形が生じる可能性も高くなる。
【0005】
一方で特許文献3に開示されているような繊維強化樹脂材料製のシャフト場合、ジュラルミン製と比較した場合に軽量化は容易であるものの、成形用材料である強化繊維とマトリックス樹脂からなるプリプレグは、一般的に強度が高くなると、弾性率は低下し、逆に弾性率を高くすると強度が低下するため軽量化を図ろうとすると、この二者の両立はなかなか困難であった。
【0006】
また、繊維強化樹脂材料製のシャフトはジュラルミンと比較した場合、引張り弾性率が高い関係で、矢の曲げ剛性値も高くなりやすい。矢は放たれる瞬間に弓の弦に押され、且つ先端が弓の壁面に押し付けられる形になり、矢の先端は弓の内側を向く形で撓み、その反動で弓を巻き込むように撓みの向きを外側に変えた時点で弦から放たれる現象を生ずる。この現象により、矢は飛翔中に反復運動を伴いながら軌道を描いていく。この反復運動ならびに矢自身の回転により、適正な軌道を描いて飛んで行くことで的中精度が増す。
従って、曲げ剛性値が高すぎる場合には、この反復運動が十分に発生せず、矢の後端側(筈側)が軌道に対して左側にずれてしまい、結果、的に対し右に流れるような軌道を描き、的中精度を低下させる要因となる。そこで、的中精度に大きな影響を与える曲げ剛性についても、十分な配慮が必要となってくる。
【0007】
このような、繊維強化樹脂材料製の弓道矢用のシャフトにおいては、軽量化、強度、最適な剛性化は重要な課題である。この軽量化と強度、最適な剛性化を同時に満たすためには、シャフトを構成する材料の強度、剛性面での改善が必要である。
【0008】
上記のように、弓道矢用のシャフトには、軽量化は重要な要求特性となる。しかしながら、軽量化による強度低下によって、破壊が起りやすくなり、この破壊を防ぐため、シャフトの強度の向上をはかり、かつ、弓道矢用のシャフトとしての性能を維持するために剛性の面でも性能を発揮する弓道矢用のシャフトが求められる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、従来の前記した問題点を解決し、要求性能に応じて、軽量化と同時に曲げ強度、曲げ弾性率等の特性を満たすことが可能な繊維強化樹脂材料製の弓道矢用シャフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる弓道矢用シャフトは、繊維強化樹脂製材料によって積層巻回して繊維強化樹脂層を形成させてなる弓道矢用のシャフトにおいて、該シャフトの質量が15g以上20g以下からなり、前記繊維強化樹脂層の少なくとも1層が引張り弾性率40GPa以上100GPa以下の強化繊維からなる低弾性率層によって構成され、且つ、前記シャフトのスパイン値が400以上900以下であることを特徴とする弓道矢用のシャフトである。
【0011】
本発明の請求項2に係わる弓道矢用シャフトは、請求項1に記載の弓道矢用シャフトであって、前記繊維強化樹脂層の少なくとも1層の強化繊維は、アラミド繊維であることを特徴とする弓道矢用のシャフトである。
【0012】
本発明の請求項3に係わる弓道矢用シャフトは、請求項1、2に記載の弓道矢用シャフトであって、前記低弾性率層の強化繊維は、アラミド繊維であることを特徴とする弓道矢用のシャフトである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弓道矢用のシャフトによれば、シャフトの質量が15g以上20g以下からなり、繊維強化樹脂層の少なくとも一層が引張り弾性率40GPa以上100GPa以下の強化繊維からなる低弾性率層によって構成され、且つ、シャフトのスパイン値が400以上900以下であるため、弓道矢用のシャフトの要求性能に応じて、軽量化と同時に曲げ強度、曲げ弾性率等の特性を満たすことできる。
【0014】
また、前記繊維強化樹脂層の少なくとも1層の強化繊維は、アラミド繊維であることから、軽量化と同時に優れた強度を得ることができる。
【0015】
更に、前記低弾性率層の強化繊維は、アラミド繊維であることから、軽量化と同時に曲げ強度、曲げ弾性率等の特性を満たすことできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施の形態とともに、本発明について詳細に説明する。
【0017】
図1、図2は本発明の実施形態に係る弓道矢用のシャフト10を示す。
図1は、本実施形態のシャフト10を使用した矢1を示す。シャフト10の先端には矢尻2が、後端には筈3が接着等により固定されており、筈3の先端側に羽根4が円周3等分した3個所の位置に固定されて弓道用の矢1が形成されている。
【0018】
シャフト10は、図2に示すようにストレート状またはテーパ状の管状体からなる。
その質量は15g以上20g以下で、シャフト10の全長は、1050mm、矢尻2側の外径は8mmとし、筈3側の外径は、7.5mmとしている。このようなシャフト10は、強化繊維を、合成樹脂としてエポキシ樹脂を用いた繊維強化樹脂材料をシャフト成形用のマンドレルに卷回積層して形成した繊維強化樹脂層30を有した構成となっている。
【0019】
前記繊維強化樹脂層11は、例えば、図3に示すように、その内側から、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂材料の繊維が略平行となるように配置したストレートプリプレグ11a、11bをシャフトの全長にわたり卷回配置したストレート層11A、11Bと、
シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂材料の繊維が直交させるように配置したフーププリプレグ12aをシャフトの全長にわたり卷回配置したフープ層12Aと、強化繊維の引張弾性率が40Gpa以上100Gpa以下からなる低弾性率プリプレグ13aをシャフトの全長にわたり巻回配置した低弾性率層13Aと、最外層として、ガラス繊維からなるガラススクリームクロス14aをシャフトの全長にわたり卷回配置したガラススクリームクロス層14A含む構成としている。
【0020】
また、本実施の形態の前記低弾性率層13Aとしては、アラミド繊維からなる強化繊維の引張弾性率が70Gpaで、相互に直行する経糸及び緯糸が相互に織られた構造の平織クロスプリプレグからなる低弾性率プリプレグ13a(繊維目付157g/m2樹脂含有量40重量%)を用い、シャフトの全長にわたり巻回配置している。
【0021】
なお、最外層のガラススクリームクロス層14Aは、前記アラミド繊維が表面研磨時に繊維が乱れてしまうため、アラミド繊維を被覆する目的でガラススクリームクロスを使用することが好ましい。
【0022】
上記のように、本発明による弓道矢用のシャフト10では、ストレート層、フープ層等、様々な方向の強化繊維を含む繊維強化樹脂層を積層させ、該繊維強化樹脂層の少なくとも1層が後述する低弾性率層を配することによって、シャフト20に多様な性能を具備させることができる。
【0023】
本発明の弓道矢用のシャフトは、繊維強化樹脂層の少なくとも1層が引張り弾性率40GPa以上100GPa以下の繊維からなる低弾性率層13Aよって構成され、且つ、シャフトのスパイン値が400以上900以下であることを特徴としている。
【0024】
前記低弾性率層の強化繊維として、引張弾性率が40GPa以上100GPa以下の強化繊維を用いているのは、弓道矢用のシャフトとしての曲げ弾性率の特性を満たすことが可能とすることができるためである。
上記範囲としたシャフトとすることで、本発明のシャフトを使用した矢は飛翔中に反復運動を伴いながら軌道を描いていくことが可能なる。この反復運動ならびに矢自身の回転により、適正な軌道を描いて飛んで行くことで的中精度が増す。
【0025】
一方、前記引張り弾性率100GPa以上の繊維によって構成され、スパイン値が400以下であると、曲げ剛性値が高くなってしまい、この場合、前記反復運動が十分に発生せず、矢の後端側(筈側)が軌道に対して左側にずれてしまい、的に対し右に流れるような軌道を描き、的中精度を低下させる要因となってしまう。また、前記引張り弾性率40GPa以下の繊維によって構成され、スパイン値が900以上であると、シャフトを使用した矢は飛翔中の方向安定性が得られない可能性かある。
【0026】
また、本発明のシャフト10の質量は、15g以上20g以下であることを要旨とするものである。前記質量の範囲とすることで、矢が放たれた矢の速度は増し、矢の軌道が直線的に近付く、あるいは的までの到達時間が短くなることで、その的中精度は増すことが可能になる。前記質量が15g未満ではシャフト所望の強度が得られず、破損してしまう可能性があり、一方、20gを超えると速度上昇効果が得られなくなる。
【0027】
本発明のシャフト10を構成する繊維強化樹脂層において使用される強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維などを例示でき、好ましくは、後述する実施例にも示されているように、優れた強度特性を示すことからアラミド繊維がより好ましい。強化繊維は、単独または2種類以上を併用して使用することもできる。
【0028】
また、シャフトの低弾性率層の強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが用いられるが、後述する実施例にも示されているように、優れた強度特性を示すことからアラミド繊維がより好ましい。
【0029】
また、本発明のシャフトを構成する繊維強化樹脂製材料に用いられる合成樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられるが、強度や剛性設計の点から熱硬化性樹脂、中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
なお、シャフト10は図3に示すように、強化繊維を引き揃えて樹脂を含浸させた繊維強化樹脂材料をシートワインディング製法によりマンドレル20に巻き付けて積層した後、ポリプロピレン製のテープ(図示せず)を巻き付けた状態とし、これを温風硬化炉で加熱し樹脂を硬化させて一体的に成形し、マンドレル20を引き抜いてシャフト10を製造している。シャフト10の表面は研磨を行った後に、塗装している。
【0031】
また、本発明によるシャフトは、いわゆるプリプレグを介して製造することができ、この場合、強化繊維の形態及び配列は、例えば、一方向に引き揃えたもの(長繊維)、織物(クロス)、トウ、マット、ニット等が用いられる。中でも、積層構成によって容易に強度特性を設計可能であることから、一方向に引き揃えられたものを採用するのが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を説明する。
本発明のシャフトの実施例1〜3および比較例1〜4を構成する各シャフトの材質やプリプレグの弾性率と配置構成を互いに異ならせてシャフトを作成した。シャフトの全長は全て1050mmとした。
【0033】
実施例1のシャフト10では、図3に示すようにその内側から、一方向層としてのストレート層11A、11B及びフープ層12Aと、引張弾性率が40以上100Gp以下aの強化繊維材料からなる低弾性率層13Aと該低弾性率層13Aの外側に配置され、シャフト20の最外層に積層されたガラススクリームクロス層14Aとを備える積層構成とした。
【0034】
前記ストレート層11Aとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が300Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11a(繊維目付125g/m2、樹脂含有量25重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0035】
前記ストレート層11Bとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11b(繊維目付55g/m2、樹脂含有量37重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0036】
前記フープ層12Aとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの繊維が90°の角度を有するように配置したフーププリプレグ12a(繊維目付55g/m2、樹脂含有量37重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0037】
前記低弾性率層13Aとしてアラミド繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が70Gpaで、相互に直行する経糸及び緯糸が相互に織られた構造の平織クロスプリプレグからなる低弾性率プリプレグ13a(繊維目付157g/m2、樹脂含有量40重量%)を用い、シャフトの全長にわたり巻回配置した。
【0038】
前記ガラススクリームクロス層14Aとして、ガラス繊維からなるガラススクリームクロス14a(繊維目付25g/m2、樹脂含有量66重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
実施例1のシャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0039】
比較例1のシャフトでは、シャフトの材質をジュラルミン製とし、該シャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0040】
比較例2のシャフトでは、図4に示すように、その内側から、一方向層としてのストレート層11C、11Dとを備える積層構成とした。
【0041】
前記ストレート層11Cとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11c(繊維目付125g/m2樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0042】
前記ストレート層11Dとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11d(繊維目付100g/m2、樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0043】
比較例2のシャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0044】
これら実施例1と比較例1、比較例2のシャフトについて、質量・歪み量・スパイン値測定を行い比較した。表1にその関係を示す。
なお、スパイン値とはシャフト硬さを表すものであり、28インチスパンによる2点支持で、中央部に880gの錘をぶら下げた状態での撓み量をA(mm)とした場合、A/25.4×1000で表した数値である。
【0045】
【表1】


【0046】
(実射試験)
被験者3名を対象に、前記実施例1、比較例1、比較例2について、各々3回射ち、実射試験を行った。その結果を図9〜図12に示す。
なお、被験者から的までの距離は28m、的の大きさは36cmである。
【0047】
図9は、X−Yグラフ原点を的中心とし、的中した位置を(X、Y)座標で表したもので、的中位置を示す。
前記図9に示すように、実施例1、比較例1に対し、スパイン値の少ない、つまり曲げ剛性値の高い比較例2のシャフトにおいては、いずれも中心に対し右側に逸れてしまっている。曲げ剛性値が高すぎる場合、すなわちスパイン値が400を下回るシャフトにおいては、飛翔中に伴う反復運動が十分に発生せず、矢の後端側(筈側)が軌道に対し左側にずれてしまい、的に対して右に流れるような軌道を描いてしまったことによるものである。また、実施例1が的中心に対し上側に分布している点については、軽量化による直線的な軌道、つまり従来の放物線軌道に対し、より直線的に飛翔した結果、上側に的中していることが分かる。
一方で、比較例1が的中心に対し下側に分布している点については、実施例1のシャフトと比較しても質量が多い分、直線的な軌道、実施例1の放物線軌道に対し、直線的に飛翔していないため、下側に的中していることが分かる。
【0048】
(速度測定方法)
ハイスピードカメラ(1/1000秒)を用いて画像撮影し、矢の移動距離をX−Y2軸の関係から割り出し、速度を算出した。その結果を図10〜図12に示す。
【0049】
図10〜図12は、被験者3名で実験を実施した速度と質量の関係を示す。
図10〜図12に示すように、比較例1、比較例2に対し、実施例1は矢が放たれた直後の速度から的に到達するまでの間、いずれの区間においても速度が上回っていることが分かる。軽量化により矢の速度が速くなった結果、的に到達するまでの距離、つまり近的競技で28m、遠的競技で60m、この距離を考慮した形で従来は放物線を描く軌道を想定し、的を狙うことが必要とされていたが、より直線的な軌道を描くことで狙いを定める精度が向上する。
【0050】
例えば、力量の弱い選手においては、従来の質量が20g以上の矢のシャフトでは放物線をより大きく描く軌道を想定する必要があり、つまり的のより上を狙う形で構えることになり、弓を掴む手で的を隠してしまう場合が発生する。そのような場合には当然ながら狙いが定め難く、結果、的中精度が安定しない。
従って、質量が軽くなるにつれて、速度は増す。シャフト質量を15g以上20g以下の軽量化を図ったことで、その効果が大きく現れることが分かる。
【0051】
また、ハイスピードカメラ(1/1000秒)を用いて画像撮影し、矢の飛出し角(°)を測定した。その結果を表2に示す。
前記表2より、実施例1の方が比較例1および比較例2よりも飛出し角が少ない、つまり水平面に近い直線的な軌道を描いていることが証明されている。本発明品においては、軽量化により的中精度がこのような面でも効果をもたらすことが可能となる。
【0052】
【表2】


【0053】
(強度試験1)
実施例1については前記と同様である。
実施例2のシャフト1では、図5に示すようにその内側から、
一方向層としてのストレート層11E、11F、フープ層12Bと引張弾性率が40Gpa以上100Gpa以下の繊維からなる低弾性率層13Bと該低弾性率層13Bの外側に配置され、シャフト10の最外層に積層されたガラススクリームクロス層14Bとを備える積層構成とした。
【0054】
前記ストレート層11Eとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が300Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11e(繊維目付125g/m2、樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0055】
前記ストレート層11Fとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11f(繊維目付55g/m2、樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0056】
前記フープ層12Bとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が90°の角度を有するように配置したフーププリプレグ12b(繊維目付55g/m2、樹脂含有量37重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0057】
前記低弾性率層13Bとしてガラス繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が70Gpaのガラスプリプレグからなる低弾性率プリプレグ13b(繊維目付25g/m2、樹脂含有量35重量%)を用い、シャフトの全長にわたり巻回配置した。
【0058】
前記ガラススクリームクロス層14Bとして、ガラス繊維からなるガラススクリームクロス14b(繊維目付25g/m2、樹脂含有量66重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
実施例2のシャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0059】
実施例3のシャフト1では、図6に示すようにその内側から、一方向層としてのストレート層11G、11H、フープ層12Cと引張弾性率が40Gpa以上100Gpa以下の繊維からなる低弾性率層13Cと該低弾性率層13Cの外側に配置され、シャフト10の最外層に積層されたガラススクリームクロス層14Cとを備える積層構成とした。
【0060】
前記ストレート層11Gとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が300Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11g(繊維目付125g/m2、樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0061】
前記ストレート層11Hとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11h(繊維目付55g/m2、樹脂含有量37重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0062】
前記フープ層12Cとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が90°の角度を有するように配置したフーププリプレグ12c(繊維目付55g/m2、樹脂含有量37重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0063】
前記低弾性率層13Cとして炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が50Gpaからなる低弾性プリプレグ13c(繊維目付100g/m2、樹脂含有量35重量%)を用い、シャフトの全長にわたり巻回配置した。
【0064】
前記ガラススクリームクロス層14Cとして、ガラス繊維からなるガラススクリームクロス14c(繊維目付25g/m2、樹脂含有量66重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
実施例2のシャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0065】
比較例3のシャフトでは、図7に示すようにその内側から、一方向層としてのバイアス層15A、と該ストレート層11Iとを備える積層構成とした。
【0066】
前記バイアス層15Aとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が±30°の角度を有するように配置したバイアスプリプレグ15a(繊維目付150g/m2、樹脂含有量25重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0067】
前記ストレート層11Iとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11i(繊維目付150g/m2、樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
比較例3のシャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0068】
比較例4のシャフト1では、図8に示すようにその内側から、一方向層としてのストレート層11Jと引張弾性率が40Gpa以上100Gpa以下の強化繊維からなる低弾性率層13Dとを備える積層構成とした。
【0069】
前記ストレート層11Jとして、炭素繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が240Gpaで且つ、シャフト中心軸10に対して繊維強化樹脂プリプレグの炭素繊維が0°の角度を有するように配置したストレートプリプレグ11j(繊維目付150g/m2、樹脂含有量33重量%)を用い、シャフトの全長にわたり卷回配置した。
【0070】
前記低弾性率層13Dとしてアラミド繊維からなり、強化繊維の引張弾性率が70Gpaで、相互に直行する経糸及び緯糸が相互に織られた構造の平織クロスプリプレグからなる低弾性率プリプレグ13d(繊維目付157g/m2、樹脂含有量40重量%)を用い、シャフトの全長にわたり巻回配置した。
比較例3のシャフトに、図1に示す矢尻2と筈3を取り付けて弓道用の矢とした。
【0071】
これら実施例1〜3と比較例1〜4のシャフトについて、シャフト質量・撓み量・スパイン値・衝撃値・曲げ強度の測定を行い比較した。表3に測定値の関係を示す。
【0072】
シャフトの曲げ強度は、3点曲げ試験方法から得られた値を用いている。3点曲げ強度とは、2点でシャフト50を支え、上方から荷重Fを加え、シャフト80が破断した時の荷重値(ピーク値)を測定した。なお、スパン長さは、28インチ、試験位置は、シャフト先端全長の1/2の位置とした。
【0073】
衝撃強度(衝撃エネルギー)は、JISのシャルピー衝撃試験に準じて、シャフトの先端部を切り出し、該切り出した部分に重りを自由落下させ、各時間での荷重値と初期加速度から、破壊に要した衝撃エネルギーを算出した。
スパイン値については、前記した測定方法と同じとした。
【0074】
【表3】


【0075】
比較例3は、実施例1、実施例2、実施例3と比較すると、質量およびスパイン値が実施例1と同等の場合においても、曲げ剛性値の調整を繊維配向角(バイアス層)に依存しているため、衝撃強度、曲げ強度ともに所望の強度が得られていないことが分かる。
一方で、実施例1、実施例2、実施例3は、低弾性率層を有する、つまり曲げ剛性値の調整を繊維配向角に依存しない積層にすることによって、衝撃強度および曲げ強度が得られ、実使用時においての安全率が向上する。
【0076】
また、比較例4のように、低弾性率層を有する積層においても、シャフト質量が15g以下となる場合には衝撃強度、曲げ強度ともに所望の強度が得られていないことが分かる。
【0077】
更に、実施例1と実施例2および実施例3と比較すると、シャフトに低弾性率層を有する構造で、同等の質量、外径およびスパイン値の場合において、実施例のシャフト、低弾性層の強化繊維に引張強度の強いアラミド繊維を使用した方が衝撃値、曲げ強度でガラス繊維および炭素繊維を上回り、安全率の高い商品の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態のシャフトを使用した矢を示す説明図。
【図2】本実施形態に係る弓道矢用のシャフトを示す説明図。
【図3】本実施形態に係る弓道矢用のシャフトおよび実施例1のシャフトを示す説明図。
【図4】比較例2のシャフトを示す説明図。
【図5】実施例2のシャフトを示す説明図。
【図6】実施例3のシャフトを示す説明図
【図7】比較例3のシャフトを示す説明図。
【図8】比較例4のシャフトを示す説明図。
【図9】的中分布を示す図。
【図10】速度と質量の関係を示す図。
【図11】速度と質量の関係を示す図。
【図12】速度と質量の関係を示す図。
【符号の説明】
【0079】
1 矢
2 矢尻
3 筈
4 羽根
10 シャフト
20 マンドレル
30 繊維強化樹脂層
11A ストレート層
11B ストレート層
11C ストレート層
11D ストレート層
11E ストレート層
11F ストレート層
11G ストレート層
11H ストレート層
11I ストレート層
11J ストレート層
11a ストレートプリプレグ
11b ストレートプリプレグ
11c ストレートプリプレグ
11d ストレートプリプレグ
11e ストレートプリプレグ
11f ストレートプリプレグ
11g ストレートプリプレグ
11h ストレートプリプレグ
11i ストレートプリプレグ
11j ストレートプリプレグ
12A フープ層
12B フープ層
12C フープ層
12a フーププリプレグ
12b フーププリプレグ
12c フーププリプレグ
13A 低弾性率層
13B 低弾性率層
13C 低弾性率層
13D 低弾性率層
13a 低弾性率プリプレグ
13b 低弾性率プリプレグ
13c 低弾性率プリプレグ
13d 低弾性率プリプレグ
14A ガラススクリームクロス層
14B ガラススクリームクロス層
14C ガラススクリームクロス層
14a ガラススクリームクロス
14b ガラススクリームクロス
14c ガラススクリームクロス




 

 


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