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発明の名称 筒内直接噴射式火花点火内燃機関
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9865(P2007−9865A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−194604(P2005−194604)
出願日 平成17年7月4日(2005.7.4)
代理人 【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
発明者 安永 真 / 茂藤 智之 / 武田 智之 / 中島 彰 / 内山 克昭 / 石井 仁 / 赤木 三泰
要約 課題
冷機時に触媒を早期活性化するとともに、HCの一次ピークの悪化を回避する。

解決手段
触媒コンバータの早期昇温が要求される内燃機関の冷間始動時に、点火時期を圧縮上死点後に設定するとともに、点火時期前でかつ圧縮上死点後に燃料を噴射する超リタード燃焼を行う。点火時期直前の高圧燃料噴射により筒内の乱れが向上し、火炎伝播が促進されるので、安定した燃焼を実現できる。燃料噴射弁10は、先端が燃焼室5中心から排気弁8寄りに位置するとともに、吸気弁6側へ燃料を噴射するように傾斜している。これにより、圧縮上死点後に噴射された燃料は、燃焼室5の中で、吸気弁6寄りに相対的に多く偏在し、排気弁8近傍に生じる未燃HCが少なくなるので、排気弁8が開いたときのHC一次ピークが低減する。
特許請求の範囲
【請求項1】
筒内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備えるとともに、点火プラグを備えてなる筒内直接噴射式火花点火内燃機関において、所定の運転条件のときに、点火時期を圧縮上死点後に設定するとともに、この点火時期前でかつ圧縮上死点後に燃料を噴射する超リタード燃焼を行う一方、この圧縮上死点後に噴射される燃料が、燃焼室の中で吸気弁寄りに相対的に多く偏在するように構成したことを特徴とする筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項2】
上記燃料噴射弁が、燃焼室天井面中央部に配置され、ピストン頂部へ向かって燃料を噴射するとともに、この燃料噴射弁に隣接して上記点火プラグが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項3】
燃料噴射方向が吸気弁側へ向かうように、上記燃料噴射弁の中心軸線が、シリンダ軸線に対し傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項4】
燃料噴射方向が吸気弁側へ向かうように、上記燃料噴射弁の中心軸線に対し、噴霧中心軸線が傾斜していることを特徴とする請求項2または3に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項5】
燃料が吸気弁寄りに多く偏在するように、燃料噴射弁の中心軸線に直交する噴霧の断面における燃料の分布が不均一となっていることを特徴とする請求項2または3に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項6】
ピストン頂部の形状が、噴射された燃料を吸気弁寄りに多く偏在させる形状となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項7】
上記燃料噴射弁の先端が、上記シリンダ軸線から排気弁寄りに偏って位置するとともに、ここから噴射された燃料が吸気弁寄りに多く偏在するように構成され、かつ、吸気行程中に燃料を噴射したときに燃料噴霧が吸気弁弁頭部に衝突しないように各々の位置関係が設定されていることを特徴とする請求項2に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項8】
上記燃料噴射弁が燃焼室の吸気弁側の側部に配置されており、ピストン頂部へ向かって斜め下方へ燃料を噴射するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項9】
所定の運転状態として、排気ガス温度の昇温が要求されたときに、上記超リタード燃焼を実行することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項10】
排気系の触媒コンバータの早期昇温が要求される内燃機関の冷間始動時に、上記の排気ガス温度の昇温が要求されることを特徴とする請求項9に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項11】
排気系の触媒コンバータのSOx放出処理を行うときに、上記の排気ガス温度の昇温が要求されることを特徴とする請求項9に記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項12】
超リタード燃焼における点火時期は、圧縮上死点後15°〜30°CAであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
【請求項13】
超リタード燃焼においては、圧縮上死点後の燃料噴射に先だって、吸気行程中もしくは圧縮行程中に、さらに燃料噴射を行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒内に燃料を直接に噴射する筒内直接噴射式火花点火内燃機関に関し、特に、排気系の触媒コンバータの早期昇温(早期活性化)が要求される冷間始動時などにおける噴射時期および点火時期の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒内直接噴射式火花点火内燃機関の触媒暖機方法として、排気浄化用の触媒コンバータが活性温度よりも低い未暖機状態のときに、吸気行程から点火時期にかけての期間内で、部分的な空燃比の濃淡を有する混合気を燃焼室内に形成する後期噴射と、この後期噴射より前に燃料を噴射して、後期噴射の燃料と後期噴射の燃焼とで延焼可能な、理論空燃比よりもリーンな空燃比の混合気を燃焼室内に生成する早期噴射と、の少なくとも2回の分割噴射を行い、かつ点火時期をMBT点より所定量リタードさせるとともに、機関の無負荷領域では点火時期を圧縮上死点よりも前に設定し、無負荷領域を除く低速低負荷領域では点火時期を圧縮上死点以降までリタードさせる技術が記載されている。上記後期噴射は、圧縮行程の中期以降、例えば120°BTDC〜45°BTDCに行われる。
【特許文献1】特許第3325230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内燃機関の冷機時における触媒の早期活性化および後燃えによるHC低減のためには、点火時期の遅角が有効であり、より大きな効果を得るためには、圧縮上死点以降の点火(ATDC点火)が望ましい。ATDC点火で安定した燃焼を行わせるためには、燃焼期間を短縮する必要があり、そのために、筒内の乱れを強化して、燃焼速度(火炎伝播速度)を上昇させることが必要である。
【0004】
このような乱れの強化のために、筒内に高圧で噴射される燃料噴霧のエネルギにより筒内に乱れを生成することが考えられる。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、主に、1回目の燃料噴射(早期噴射)を吸気行程中に行い、2回目の燃料噴射(後期噴射)を圧縮行程中の120°BTDC〜45°BTDCに行っている。このように最後の燃料噴射が圧縮上死点よりも前では、その噴霧により筒内に乱れを生成しても、圧縮上死点以降はその乱れが減衰してしまい、ATDC点火での火炎伝播速度上昇には寄与しない。
【0006】
例えば、図17は、吸気ポート内に設けたガス流動制御弁(例えばタンブル制御弁)を作動させた場合とこのようなガス流動制御弁を具備しない場合とについて、筒内の乱れの大きさを示したものであるが、ガス流動制御弁を作動させることで吸気行程中に生成した乱れ(符号Aの部分)は、圧縮行程の進行とともに減衰し、圧縮行程後期のタンブル流の崩壊に伴い一時的に乱れが大きくなる(符号Bの部分)ものの、圧縮上死点以降は符号Cで示すように急速に減衰してしまい、その乱れを用いた燃焼改善(火炎伝播向上)はあまり期待できない。燃料噴霧による乱れについても同様であり、圧縮上死点より前の燃料噴射により乱れが生成されたとしても、圧縮上死点以降の点火燃焼には寄与しない。
【0007】
このため、ATDC点火の方が排温上昇やHC低減に有利であるが、燃焼安定性が成立しないという問題がある。このため、特許文献1では、無負荷領域では点火時期を圧縮上死点前(BTDC点火)としている。
【0008】
また上記従来技術では、燃焼が不安定化することから、燃焼室内にHCが多く生成され、排気弁が開いたときに排気ポートへ流出する、いわゆる一次ピークにおけるHC濃度が高くなる、という不具合がある。特に、この一次ピークのHC量は、燃料噴射時期を遅角することに伴い、燃焼室容積が小さくなった状態で燃料が噴射されることから壁面に付着する燃料量が増え、その結果、さらに増加する傾向となる。つまり、点火時期の遅角により排気温度が高くなっても、逆にHC増加が生じる虞がある。
【0009】
本発明は、このような実状を踏まえて、触媒の早期活性化およびHC低減などのためのATDC点火での燃焼安定性を改善するとともに、HCの一次ピークを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、筒内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備えるとともに、点火プラグを備えてなる筒内直接噴射式火花点火内燃機関において、所定の運転条件のとき、例えば触媒コンバータの冷機時のような排気ガス温度の昇温が必要な場合などに、点火時期を圧縮上死点後に設定するとともに、この点火時期前でかつ圧縮上死点後に燃料を噴射する超リタード燃焼を行う。なお、NOxを吸着するNOxトラップ触媒においては、硫黄成分(SOx)が触媒に付着することによりNOx吸着性能が低下するので、触媒を強制的に高温化してSOxを放出するSOx放出処理(硫黄被毒解除)を行う必要があるが、このSOx放出処理の際の排気ガス温度の昇温を、上記の超リタード燃焼を利用して行うことも可能である。そして、本発明では、特に、上記の圧縮上死点後に噴射される燃料が、燃焼室の中で吸気弁寄りに相対的に多く偏在するように構成したことを特徴としている。
【0011】
すなわち、圧縮上死点以降では、吸気行程や圧縮行程で生成された乱れは減衰してしまうが、圧縮上死点以降の膨張行程中になされる燃料噴射によって、筒内の乱れを生成・強化することができ、ATDC点火での火炎伝播が促進される。従って、点火時期を圧縮上死点後とした超リタード燃焼が安定的に成立する。
【0012】
上記のように点火時期を大幅に遅角させた超リタード燃焼においては、排気ガス温度が非常に高く得られ、かつ排気中での二次的な燃焼によってHC排出量が低減する。
【0013】
図18は、一般的な筒内直接噴射式火花点火内燃機関におけるHC排出濃度(排気ポートでの濃度)の特性と、その排出メカニズムを示したものであり、図示するように、排気ポートでのHC濃度は、排気行程の初期(排気弁の開き始め)における一次ピークと、排気行程の末期(排気弁が閉じる直前)における二次ピークと、を有する。一次ピークは、図(a)に示すように、燃焼室内の排気弁近傍に存在していた未燃HCが、排気弁の開弁の瞬間に排気ポート側へ流出するものである。また二次ピークは、図(b)に示すように、ピストン冠面やボア壁面に付着していた燃料やクレビス内の未燃成分が、ピストンにより押し出されることにより、HC濃度が高くなるものである。
【0014】
本発明では、圧縮上死点後に噴射された燃料が、燃焼室の中で吸気弁寄りに相対的に多く偏在するため、膨張行程末期における排気弁近傍の未燃HCが少なくなり、排気弁の開き始めに生じるHC濃度の一次ピークが抑制される。
【0015】
噴射された燃料を燃焼室の中で吸気弁寄りに相対的に多く偏在させることは、燃料噴射弁の位置や燃料噴霧の方向あるいはピストン頂部の構成等の種々の手段によって達成し得る。
【0016】
本発明の一つの態様では、上記燃料噴射弁が、燃焼室天井面中央部に配置され、ピストン頂部へ向かって燃料を噴射するとともに、この燃料噴射弁に隣接して上記点火プラグが配置されている。そして、燃料噴射方向が吸気弁側へ向かうように、上記燃料噴射弁の中心軸線が、シリンダ軸線に対し傾斜している。
【0017】
また一つの態様では、燃料噴射方向が吸気弁側へ向かうように、上記燃料噴射弁の中心軸線に対し、噴霧中心軸線が傾斜している。
【0018】
また一つの態様では、燃料が吸気弁寄りに多く偏在するように、燃料噴射弁の中心軸線に直交する噴霧の断面における燃料の分布が不均一となっている。
【0019】
また一つの態様では、ピストン頂部の形状が、噴射された燃料を吸気弁寄りに多く偏在させる形状となっている。
【0020】
また一つの態様では、上記燃料噴射弁の先端が、上記シリンダ軸線から排気弁寄りに偏って位置するとともに、ここから噴射された燃料が吸気弁寄りに多く偏在するように構成され、かつ、吸気行程中に燃料を噴射したときに燃料噴霧が吸気弁弁頭部に衝突しないように各々の位置関係が設定されている。例えば均質燃焼のために吸気行程中に燃料を噴射したときに燃料噴霧が開弁中の吸気弁弁頭部に衝突すると、燃料が吸気弁に付着し、同様にHC増加の要因となる。燃料噴射弁の先端の位置を排気弁寄りとしつつ燃料が吸気弁側に多く偏在するように構成することで、吸気行程噴射の際に噴霧が吸気弁に衝突しないようにすることが可能である。
【0021】
さらに本発明の一つの態様では、上記燃料噴射弁が燃焼室の吸気弁側の側部に配置されており、ピストン頂部へ向かって斜め下方へ燃料を噴射するように構成されている。つまり吸気弁側から排気弁側へと噴射することで、燃料が排気弁側に多く偏在する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、点火時期を圧縮上死点後に設定した超リタード燃焼の燃焼安定性を十分に確保することができ、例えば内燃機関の冷機時に、排気ガス温度を昇温させて触媒の早期活性化を図ることができるとともに、後燃えによるHC低減が可能となる。特に、圧縮上死点後に噴射された燃料が吸気弁寄りに多く偏在するため、排気弁の開き始めにおけるHC濃度の一次ピークを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜図3は、この発明が適用される筒内直接噴射式火花点火内燃機関の一実施例を示しており、特に、図1,図2は、一つの気筒の構成を示し、図3は機関全体のシステム構成を示している。
【0025】
図1,図2に示すように、シリンダブロック1に形成されたシリンダ2にピストン3が摺動可能に配置されているとともに、シリンダブロック1上面に固定されたシリンダヘッド4と上記ピストン3との間に、燃焼室5が形成されている。上記シリンダヘッド4には、吸気弁6によって開閉される吸気ポート7と、排気弁8によって開閉される排気ポート9と、が形成されている。1つの気筒に対し、一対の吸気弁6と一対の排気弁8とが設けられており、これらの4つの弁に囲まれた燃焼室5天井面中央部に、燃料噴射弁10が配置されているとともに、該燃料噴射弁10に隣接して点火プラグ11が配置されている。これらの燃料噴射弁10および点火プラグ11のより具体的な配置については後述する。
【0026】
上記燃料噴射弁10からは、ピストン3頂部へ向かってシリンダ軸線に沿うように燃料が噴射される。そして、円錐形に拡がる噴霧の一部が、点火プラグ11の電極部付近を通過する。ピストン3頂部は、全体が緩い凹面となっている。なお、吸気ポート7には、タンブル流を強化するためにタンブル制御弁12が設けられているが、このタンブル制御弁12は必ずしも必須のものではなく、また、これに代えて、スワール制御弁を設けるようにしてもよい。
【0027】
図3に示すように、この実施例の内燃機関は、例えば直列4気筒機関であり、各気筒の排気ポート9が接続された排気通路21に、排気浄化用の触媒コンバータ22が設けられており、その上流側に、酸素センサ等の空燃比センサ23が配置されている。また、各気筒の吸気ポート7が接続された吸気通路24は、その入口側に、制御信号により開閉される電子制御スロットル弁25を備えている。上記排気通路21と上記吸気通路24との間には、排気還流通路26が設けられており、その途中に、排気還流制御弁27が介装されている。また、各気筒のタンブル制御弁12は、ソレノイドバルブ28を介して導入される吸入負圧により動作する負圧式タンブル制御アクチュエータ29によって、一斉に開閉される構成となっている。
【0028】
また、上記燃料噴射弁10には、燃料ポンプ31およびプレッシャレギュレータ32によって所定圧力に調圧された燃料が、燃料ギャラリ33を介して供給されている。従って、各気筒の燃料噴射弁10が制御パルスにより開弁することで、その開弁期間に応じた量の燃料が噴射される。また、各気筒の点火プラグ11は、イグニッションコイル34に接続されている。
【0029】
上記内燃機関の燃料噴射時期や噴射量、点火時期等は、コントロールユニット35によって制御される。このコントロールユニット35には、アクセルペダル踏み込み量を検出するアクセル開度センサ30の検出信号や、クランク角センサ36の検出信号、空燃比センサ23の検出信号、冷却水温を検出する水温センサ37の検出信号、等が入力されている。
【0030】
上記のように構成された内燃機関においては、暖機が完了した後の状態、例えば冷却水温が80℃を越えているときには、通常の成層燃焼運転および均質燃焼運転が行われる。すなわち、低速低負荷側の所定の領域では、通常の成層燃焼運転として、圧縮行程の適宜な時期に燃料噴射が行われ、かつ圧縮上死点前の時期に点火が行われる。圧縮行程中にピストン3へ向けて噴射された燃料は、燃焼室5内で層状化するが、点火プラグ11付近に燃料噴霧が達したときに点火を行うことで、着火燃焼に至る。そのため、平均的な空燃比が30〜40程度の極リーンとなった成層燃焼が実現される。
【0031】
また、高速高負荷側の所定の領域では、通常の均質燃焼運転として、吸気行程中に燃料噴射が行われ、かつ圧縮上死点前のMBT点において点火が行われる。この場合は、燃料は筒内で均質な混合気となる。この均質燃焼運転としては、運転条件に応じて、空燃比を理論空燃比とした均質ストイキ燃焼と、空燃比を20〜30程度のリーンとした均質リーン燃焼とがある。
【0032】
これに対し、内燃機関の冷却水温が80℃以下のとき、つまり暖機が完了していない状態では、触媒コンバータ22の活性化つまり温度上昇の促進のために、超リタード燃焼を行う。以下、この超リタード燃焼の燃料噴射時期および点火時期を図4に基づいて説明する。
【0033】
図4は、超リタード燃焼の3つの実施例を示しており、実施例1では、点火時期を15°〜30°ATDC(例えば20°ATDC)とし、燃料噴射時期(詳しくは燃料噴射開始時期)を、圧縮上死点以降でかつ点火時期前に設定する。なお、このとき、空燃比は、理論空燃比ないしはこれよりも若干リーン(16〜17程度)に設定される。
【0034】
すなわち、触媒暖機促進ならびにHC低減のためには、点火時期遅角が有効であり、上死点以降の点火(ATDC点火)が望ましいが、ATDC点火で安定した燃焼を行わせるためには、燃焼期間を短縮する必要があり、そのためには、乱れによる火炎伝播を促進しなければならない。前述したように、圧縮上死点以降では、吸気行程や圧縮行程で生成された乱れは減衰してしまうが、本発明では、圧縮上死点以降の膨張行程中になされる高圧の燃料噴射によって、ガス流動が生じ、これにより筒内の乱れを生成・強化することができる。従って、ATDC点火での火炎伝播が促進され、安定した燃焼が可能となる。
【0035】
図4の実施例2は、燃料噴射を2回に分割した例であり、1回目の燃料噴射を吸気行程中に行い、2回目の燃料噴射を圧縮上死点以降に行う。なお、点火時期および空燃比(2回の噴射を合わせた空燃比)は実施例1と同様である。
【0036】
このように、圧縮上死点後の燃料噴射(膨張行程噴射)に先立ち、吸気行程中に燃料噴射(吸気行程噴射)を行うと、吸気行程噴射の燃料噴霧による乱れは圧縮行程後半で減衰してしまい、圧縮上死点後におけるガス流動強化には殆ど影響を与えないが、噴射燃料が燃焼室全体に拡散していて、ATDC点火によるHCの後燃えの促進に寄与するので、HC低減および排温上昇には有効である。
【0037】
また、図4の実施例3は、燃料噴射を2回に分割し、1回目の燃料噴射を圧縮行程にて行い、2回目の燃料噴射を圧縮上死点以降に行う。このように、圧縮上死点後の燃料噴射(膨張行程噴射)に先立ち、圧縮行程中に燃料噴射(圧縮行程噴射)を行うと、実施例2の吸気行程噴射に比べれば、圧縮行程噴射の方が、その燃料噴霧による乱れの減衰が遅くなるため、この1回目の燃料噴射による乱れが残り、圧縮上死点以降に2回目の燃料噴射を行うことで、1回目の燃料噴射で生成した乱れを助長するように乱れを強化でき、圧縮上死点付近における更なるガス流動強化が図れる。
【0038】
この実施例3の場合に、1回目の圧縮行程噴射は、圧縮行程前半でもよいが、圧縮行程後半(90°BTDC以降)に設定すると、上死点付近での乱れをより高めることができる。特に、この1回目の圧縮行程噴射を、45°BTDC以降、より望ましくは20°BTDC以降とすると、圧縮上死点以降のガス流動をより強化することができる。
【0039】
このように、実施例1〜3の超リタード燃焼によれば、点火の直前に燃料噴霧により筒内の乱れを生成・強化することができ、火炎伝播を促進して、安定した燃焼を行わせることができる。特に、点火時期を15°〜30°ATDCまで遅角させることにより、触媒の早期活性化およびHC低減のための十分な後燃え効果を得ることができる。換言すれば、このように点火時期を大きく遅らせても、その直前まで燃料噴射を遅らせて、乱れの生成時期も遅らせることで、火炎伝播向上による燃焼改善を達成できるのである。
【0040】
図5は、燃料噴射弁10および点火プラグ11の配置をより詳しく示したものであり、燃焼室天井面において、シリンダ軸線cよりも一対の排気弁8寄りに偏って燃料噴射弁10先端が位置し、かつ一対の吸気弁6寄りに偏って点火プラグ11が位置する。上記燃料噴射弁10は、その中心軸線mと同軸状に円錐形の噴霧が形成される一般的な構成であって、先端位置に対し基端側が排気弁8寄りとなるように、中心軸線mがシリンダ軸線cに対し傾斜した姿勢でシリンダヘッド4に取り付けられている。従って、燃料噴射方向は、吸気弁6側へ傾斜しており、上述のように機関冷機時に圧縮上死点後に噴射された燃料は、燃焼室5の中で、吸気弁6寄りに相対的に多く偏在し、排気弁8側に存在する燃料の割合は相対的に少なくなる。
【0041】
そのため、膨張行程末期に燃焼室5内に生じる未燃のHCは、吸気弁6寄りに多く存在し、排気弁8側は相対的に少なくなる。従って、排気弁8が開いた瞬間に排気ポート9側へ流出する未燃HCが減少し、HC濃度の一次ピークが低減する。
【0042】
また、上記構成では、燃料噴射弁10先端が排気弁8寄りに偏って位置しているため、前述した均質燃焼運転として吸気弁6が開いている吸気行程中に燃料を噴射した際に、燃料噴霧が吸気弁6の弁頭部に衝突することがない。従って、この吸気弁6への燃料付着による均質燃焼運転時のHC悪化を回避することができる。
【0043】
次に、図6は、燃料噴射弁10および点火プラグ11の配置の異なる実施例を示したものであり、この実施例では、燃焼室5に臨む燃料噴射弁10の先端位置が、シリンダ軸線c上に位置している。燃料噴射弁10の中心軸線mは図5の実施例と同様に傾斜しており、従って、圧縮上死点後に噴射された燃料は、上記実施例と同様に、吸気弁6寄りに多く偏在する。なお、この場合、点火プラグ11の位置としては、図示するように燃料噴射弁10よりも吸気弁6側に配置してもよく、あるいは、燃料噴射弁10よりも排気弁8側に配置してもよい。
【0044】
次に、図7に示す実施例は、図5、図6の実施例と同様に傾斜した姿勢で取り付けられる燃料噴射弁10の先端位置を、シリンダ軸線cよりもさらに吸気弁6寄りに配置したものである。この場合、点火プラグ11は、燃料噴射弁10よりも排気弁8側に配置される。
【0045】
また、図8に示す実施例は、燃料噴射弁10の中心軸線mがシリンダ軸線cに一致するように、燃料噴射弁10が燃焼室5の中心に垂直に配置されているとともに、燃料が吸気弁6寄りへ多く偏在するように、噴霧中心軸線fが、燃料噴射弁10の中心軸線mに対し吸気弁6側へ傾斜している。つまり、円錐形の噴霧が燃料噴射弁10自体に対して斜めに噴射される構成となっている。この場合、点火プラグ11は、図示していないが、燃料噴射弁10よりも吸気弁6側に配置してもよく、排気弁8側に配置してもよい。
【0046】
図9に示す実施例は、図8の実施例と同じく、燃料噴射弁10の中心軸線mがシリンダ軸線cに一致するように、燃料噴射弁10が燃焼室5の中心に垂直に配置されているものであって、特に、噴霧内の燃料分布が不均一となる形式の燃料噴射弁10が用いられ、これを利用して、燃料が吸気弁6寄りへ多く偏在するように構成されている。
【0047】
一つの例としては、図10(a),(b)に示すように、先端面10aに多数の微細な噴孔10bを配置した公知のマルチホール型燃料噴射弁を用い、その噴孔10bを一方の側に多く配置することによって、細い噴霧Fからなる燃料の分布を偏らせることができる。
【0048】
また、他の例としては、図11(a),(b)に示すように、噴孔部分の形状を異形とすることで、断面C字形の噴霧Fを形成するようにした公知の燃料噴射弁10を用いることができる。このものでは、燃料噴射弁10の中心軸線mに直交する面b−bでの噴霧の断面における燃料の分布が、C字形の中央部に多く偏ったものとなる。従って、吸気弁6寄りに燃料を多く偏らせることができる。
【0049】
次に、図12の実施例は、燃料噴射弁10を、その中心軸線mがシリンダ軸線cと平行になるように、かつシリンダ軸線cから排気弁8側に偏って位置するように、配置したものである。そして、図10あるいは図11で説明した構成の燃料噴射弁10を用いることで、燃料が吸気弁6寄りに多く偏在するようになっている。この実施例では、燃料噴射弁10が吸気弁6から離れて位置するので、図5の実施例で説明したように、吸気行程噴射の際に、吸気弁6の弁頭部に噴霧が衝突することがない。
【0050】
次に、図13の実施例は、燃料噴射弁10を、その中心軸線mがシリンダ軸線cと平行になるように、かつシリンダ軸線cから吸気弁6側に偏って位置するように、配置したものである。噴霧中心軸線は燃料噴射弁10の中心軸線mと一致している。従って、燃料が吸気弁6寄りに多く偏在する。
【0051】
次に、ピストン3の頂部の形状の工夫によって、圧縮上死点後に噴射された燃料が吸気弁6寄りに相対的に多く偏在するように構成した実施例について説明する。
【0052】
図14の実施例は、ピストン3の頂部の吸気弁6側にキャビティ13が形成されているとともに、排気弁8側に、該排気弁8に近接する凸部14が形成されているものであって、特に、凸部14頂面と排気弁8側の燃焼室5天井面との間には、スキッシュによる噴霧引き込み効果が生じない程度の比較的大きな間隙15が設けられている。この実施例では、燃焼室5の中心に位置する燃料噴射弁10から垂直に噴射された燃料噴霧は、キャビティ13の底面に衝突して吸気弁6側へ反射する。これにより、吸気弁6側に多く偏在する。
【0053】
また図15の実施例は、ピストン3の頂部の略中央部にキャビティ13が形成されているとともに、吸気弁6側に位置する凸部14の頂面が、吸気弁6側の燃焼室5天井面との間でスキッシュエリアを構成するように、互いに近接する構成となっている。この実施例では、ピストン3が上死点から下降する際に、吸気弁6側のスキッシュエリアによって引き込み効果が生じ、上死点後にキャビティ13へ向けて噴射された燃料噴霧が吸気弁6側へ引き寄せられる。これにより、吸気弁6側に相対的に多くの燃料が偏在する。
【0054】
次に、図16に示す実施例は、燃料噴射弁10が燃焼室5の吸気弁6側の側部に配置されており、ピストン3頂部へ向かって斜め下方へ燃料を噴射するように構成されたものである。詳しくは、シリンダヘッド4の吸気ポート7の下側つまり一対の吸気ポート7の中間部の位置に、燃料噴射弁10が配置されており、この燃料噴射弁10は、平面図上において図示せぬピストンピンと直交する方向に沿って燃料を噴射するように構成されているとともに、図16の断面図上において、斜め下方を指向して配置されている。従って、圧縮上死点後に噴射された燃料噴霧は燃料噴射弁10の中心軸線mに沿ってピストン3頂部へ向かい、かつ排気弁8側に多く偏在する。
【0055】
なお、本発明の超リタード燃焼は、排気系の触媒コンバータ22としてNOxトラップ触媒を用いた場合の硫黄被毒解除のためにも利用することができる。NOxトラップ触媒は、流入する排気の排気空燃比がリーンであるときにNOxを吸着し、流入する排気の排気空燃比がリッチであると、吸着していたNOxを放出して触媒作用により浄化処理するものであるが、燃料中の硫黄成分(SOx)が触媒に結合するとNOx吸着性能が低下する。そのため、適当な時期に、触媒を強制的に高温化してSOxを放出除去する処理(いわゆる硫黄被毒解除)が必要である。本発明の超リタード燃焼は、非常に高い排気温度を得られるので、このNOxトラップ触媒の硫黄被毒解除処理に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】筒内直接噴射式火花点火内燃機関の一実施例を示す断面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】この内燃機関全体のシステム構成を示す構成説明図。
【図4】本発明の超リタード燃焼の燃料噴射時期および点火時期を示す特性図。
【図5】燃料噴射弁および点火プラグの配置の詳細を示す断面図。
【図6】燃料噴射弁先端位置をシリンダ軸線c上とした実施例の断面図。
【図7】燃料噴射弁先端位置を吸気弁寄りとした実施例の断面図。
【図8】噴霧中心軸線が燃料噴射弁の中心軸線に対し傾斜した実施例の断面図。
【図9】噴霧内の燃料分布を不均一とした実施例の断面図。
【図10】燃料分布が不均一となる燃料噴射弁の一例の説明図であり、(a)は噴霧を側方から見た説明図、(b)は正面から見た説明図。
【図11】燃料分布が不均一となる燃料噴射弁の他の例の説明図であり、(a)は噴霧を側方から見た説明図、(b)はb−b線に沿った噴霧の断面図。
【図12】燃料噴射弁を排気弁寄りに配置した実施例の断面図。
【図13】燃料噴射弁を吸気弁寄りに配置した実施例の断面図。
【図14】ピストン頂部の形状により燃料を吸気弁寄りに多く偏在させるようにした一実施例を示す断面図。
【図15】ピストン頂部の形状により燃料を吸気弁寄りに多く偏在させるようにした他の実施例を示す断面図。
【図16】吸気弁側の燃焼室側部に燃料噴射弁を配置した実施例の断面図。
【図17】従来技術における筒内の乱れの変化を示す説明図。
【図18】一般的な筒内直接噴射式火花点火内燃機関におけるHC排出濃度の特性を、その排出メカニズムとともに示した特性図。
【符号の説明】
【0057】
3…ピストン
5…燃焼室
10…燃料噴射弁
11…点火プラグ




 

 


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