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発明の名称 内燃機関の可変動弁装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9794(P2007−9794A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−191036(P2005−191036)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
発明者 新藤 茂輝 / 有賀 健司
要約 課題
カムシャフト側からの変動トルク等に起因して制御量が不用意に変動すると、機関運転性を損ねたり、渦巻き溝24の端部に可動案内部12が突き当たって打音を生じるおそれがある。

解決手段
周方向位置に応じて径方向長さが異なる渦巻き溝24が形成され、アクチュエータ8によって回転方向に駆動される中間回転体7と、一端が従動回転体3に揺動可能に支持されたリンク15と、を有する。このリンク15の他端に、駆動リング5に形成された径方向スリット11と渦巻き溝24の双方に変位可能に係合する可動案内部12を設ける。渦巻き溝24に、周方向位置の変化に対する径方向長さの変化が小さい微小変化区間を設ける。
特許請求の範囲
【請求項1】
吸気弁又は排気弁の開閉時期を変更するバルブタイミング変更機構を備え、
このバルブタイミング変更機構は、
内燃機関のクランクシャフトに連動して回転する駆動回転体と、
吸気弁又は排気弁を駆動するためのカムシャフトと連動して回転する従動回転体と、
周方向位置に応じて径方向長さが異なる渦巻きガイドが形成され、アクチュエータによって回転方向に駆動される中間回転体と、
一端が駆動回転体又は従動回転体の一方に揺動可能に支持されたリンクと、
このリンクの他端に設けられ、上記駆動回転体又は従動回転体の他方に形成された径方向に延びる径方向ガイドと上記渦巻きガイドの双方に変位可能に係合する可動案内部と、を有し、
上記渦巻きガイドに、周方向位置の変化に対する径方向長さの変化が小さい微小変化区間を設けたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【請求項2】
上記渦巻きガイドは、上記微少変化区間を除き、周方向位置の変化に対する径方向長さが線形的に変化することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変動弁装置。
【請求項3】
上記微少変化区間が、渦巻きガイドの端部近傍に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の可変動弁装置。
【請求項4】
上記微少変化区間が、アイドル域に対応して設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。
【請求項5】
上記微少変化区間が、冷機時に対応して設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。
【請求項6】
上記作動量の増加に対して制御量が減少する減少領域と、上記作動量の増加に対して制御量が増加する増加領域と、が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻きガイドを利用して内燃機関の吸気弁又は排気弁の開閉時期を変化させるバルブタイミング変更機構を備えた内燃機関の可変動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転状態に応じて吸気弁や排気弁の開閉時期(バルブタイミング)を変更するバルブタイミング機構として、例えば特許文献1には、周方向位置に応じて径方向長さが変化する渦巻きガイド(溝)を利用した機構が提案されている。この機構では、渦巻きガイドが形成された中間回転体の回転角、つまりこの渦巻きガイド内を移動する可動案内部の位置(作動量)に応じて、吸・排気弁の開閉時期に対応する組付角(制御量)が変化する。この特許文献1では、この作動量の変化に対して制御量が全域にわたって線形的に変化するように、渦巻きガイドの形状が設定されている。
【特許文献1】特開2003−120239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えばアイドル状態のように制御量の変化により運転性が比較的大きく変動する運転状態では、カムシャフト側から入力される変動トルクによって制御量が変化し、運転性に悪影響を与えるおそれがある。また、カムシャフト側から入力される変動トルクによって渦巻きガイドの端部やストッパに衝突して打音を生じるおそれがある。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
吸気弁又は排気弁の開閉時期を変更するバルブタイミング変更機構を備える。このバルブタイミング変更機構は、内燃機関のクランクシャフトに連動して回転する駆動回転体と、吸気弁又は排気弁を駆動するためのカムシャフトと連動して回転する従動回転体と、周方向位置に応じて径方向長さが異なる渦巻きガイドが形成され、アクチュエータによって回転方向に駆動される中間回転体と、一端が駆動回転体又は従動回転体の一方に揺動可能に支持されたリンクと、このリンクの他端に設けられ、上記駆動回転体又は従動回転体の他方に形成された径方向に延びる径方向ガイドと上記渦巻きガイドの双方に変位可能に係合する可動案内部と、を有する。そして、上記渦巻きガイドに、周方向位置の変化に対する径方向長さの変化が小さい微小変化区間を設けている。
【発明の効果】
【0005】
径方向長さに応じて制御量が変化するので、微少変化区間では、他の区間に比して作動量の変化に対する制御量の変化(感度)が小さい。従って、例えばアイドル状態のように制御量の変化により運転性が比較的大きく変動する運転状態に対応して微小変化区間を設定することにより、カムシャフト側からの変動トルク等に起因して制御量が不用意に変動することを有効に防止し、機関運転性能を効果的に改善することができる。また、渦巻きガイドの端部近傍に微小変化区間を設定することによって、作動範囲を過度に制限することなく、カムシャフト側からの変動トルク等に起因して可動案内部が渦巻き溝の端部に突き当たり打音を生じることを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る可変動弁装置が適用される内燃機関61の一例を簡略的に示すシステム図である。内燃機関61のシリンダブロック62には複数のシリンダ63が形成されており、各シリンダ63内を昇降するピストン64の上方には燃焼室65が画成されている。シリンダブロック62上に固定されるシリンダヘッド66には、吸気通路67を開閉する吸気弁68と、排気通路69を開閉する排気弁70と、燃焼室65内の混合気を火花点火する点火プラグ71と、が配設されている。吸気通路67には、上流側より順に、エアクリーナ72,吸入空気量を検出するエアフロメータ73,吸気量を調整する電子制御式のスロットル74,及び吸気ポート75へ燃料を噴射する燃料噴射弁76が配設されている。スロットル74の開度はスロットル開度センサ77により検出される。排気通路69には、上流側より順に、排気の空燃比を検出するための酸素センサ78と、排気を浄化する三元触媒等の触媒79,80と、排気音を消音するマフラ81と、が設けられている。排気の一部はEGR通路82を経由して吸気通路67に還流され、その還流量はEGR制御バルブ83により調整される。EGRガスの温度はEGR温度センサ84により検出される。燃料タンク85内には、燃料配管86へ燃料を圧送する燃料ポンプ87と、燃圧を所定圧に維持するプレッシャレギュレータ88とが配設されている。また、燃料タンク85内の蒸発燃料を処理するキャニスタ89が設けられている。更に、吸・排気弁の開閉特性を変化させる可変動弁機構として、吸気弁68の開閉時期に対応する変換角θを変更するバルブタイミング変更機構60が設けられている。変換角θはクランクシャフト92に対するカムシャフト1の位相に相当し、この変換角θが変化することによって、吸気弁の開閉時期(バルブタイミング)が変化つまり遅角・進角する。この変換角θに対応する実変換角tθは、カムシャフトポジションセンサ91及びクランクシャフトポジションセンサ93の検出信号に基づいて演算される。
【0007】
機関運転状態を検出するセンサ類として、機関水温を検出する水温センサ90,吸気カムシャフト1の回転位置を検出するカムシャフトポジションセンサ91,クランクシャフト92の回転位置を検出するクランクシャフトポジションセンサ93,ノッキングの発生を検出するノックセンサ94,アクセルペダル95の操作(開度)を検出するアクセルポジションセンサ96,及びバッテリ97の電流値を検出する電流センサ98等が設けられている。機関制御部(エンジン・コントロール・モジュール:ECM)100は、各種制御処理を記憶及び実行する機能を有し、上記の各種センサ等により検出される機関運転状態に基づいて、上記のスロットル74,燃料噴射弁76,点火プラグ71及びEGR制御バルブ83等の他、後述するバルブタイミング変更機構60のアクチュエータ(操作力付与手段8)へ制御信号を出力して、スロットル開度,燃料噴射量,燃料噴射時期,点火時期,EGR量及び上記の変換角θ等を制御する。
【0008】
図2は、上記バルブタイミング変更機構60を示す断面図であり、この機構60の基本的な構成は特開2003−314216号公報等に詳しく記載されているように公知である。図1及び図2を参照して、このバルブタイミング変更機構60は、カムシャフト1と一体的に回転する従動軸部材(従動回転体)3と、クランクシャフト92の回転に連動して回転する駆動リング(駆動回転体)5と、これら駆動リング5と従動軸部材3との相対的な回転位相に対応する上記の変換角(組付角)θを変更・操作する組付角操作機構6と、を有している。
【0009】
従動軸部材3は、内燃機関61のシリンダヘッド66に回転自在に支持された吸気弁側のカムシャフト1の前端部(図2中左側端部)にカムボルト2によって一体に結合されている。また従動軸部材3には、カムシャフト1の前端部に突き合わされる基端部に径方向外側に張り出すフランジ壁14が一体に形成されている。フランジ壁14の外周部と駆動リング5の後端部との間にはシールリング34が介装されている。なお、従動軸部材3にはオイル供給孔13が開口形成されており、この供給孔13を通して駆動リング5と従動軸部材3との摺動面に潤滑油が供給される。
【0010】
駆動リング5は、従動軸部材3の外周に回動可能に組み付けられる内側円筒部10aと、チェーン(図示せず)を介してクランクシャフト92に動力伝達可能に連繋されるタイミングスプロケット4(動力伝達部)が設けられた略円筒状の外側円筒部5aと、内側円筒部10aの外周と外側円筒部5aの内周とに一体的に接続する略円盤状・ドーナツ状の支持部10と、を有している。支持部10には、径方向に延びる2本の径方向スリット11が形成され、この径方向スリット11が後述する可動案内部12を案内する径方向ガイドとして機能する。尚、径方向スリットは必ずしも支持部の径方向に正確に沿って形成されている必要はなく、支持部の径方向に略沿うように形成されていてもよい。
【0011】
組付角操作機構6は、駆動リング5及び従動軸部材3と同軸上に配置され、アクチュエータとしての操作力付与手段8から付与される操作力によって回転駆動される中間回転体7と、駆動リング5と従動軸部材3とを連係する2本のリンク15と、を備え、リンク15を介して駆動リング5から従動軸部材3へ回転動力が伝達される。中間回転体7には、周方向位置に沿って径方向長さが円滑に変化する渦巻き溝24が形成されている。各リンク15の一端は、ピン16によって従動軸部材3のフランジ壁14に揺動可能に支持・連結されている。つまり各リンク15はピン16を中心として揺動可能である。
【0012】
各リンク15の他端には、径方向スリット11を通して渦巻き溝24に係合する可動案内部12が設けられている。詳しくは、リンク15の他端には軸方向前方側に突出するボス部17が一体に形成されている。各ボス部17は円筒状に形成され、支持部10の各対応する径方向スリット11に摺動自在に嵌入されている。各ボス部17は、支持部10の径方向スリット11に係合された状態において、リンク15を介して従動軸部材3の回転中心から離間した位置に連結されているため、各ボス部17が外力を受けて径方向スリット11に沿って変位すると、駆動リング5と従動軸部材3はリンク15の作用でもって各ボス部17の変位(作動量)に応じた方向及び角度だけ相対的に回動する。各リンク15の先端側(他端側)のボス部17からリンク本体部にかけては前方側(カムシャフト1と逆側)に開口する円形状の保持穴18が設けられ、この保持穴18に球19を保持するためのリテーナ20の基部と、そのリテーナ20を前方側に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング21が収容されている。
【0013】
従動軸部材3の支持部10の支持位置よりも前方側には中間回転体7が軸受23を介して回転可能に支持されている。2条の渦巻き溝24(渦巻き状ガイド)は、支持部10の前面に所定隙間をもって対峙する中間回転体7の後部面に、断面半円状に形成されている。各渦巻き溝24は、周方向位置に応じて径方向長さが円滑に変化するように設定されている。そして、この中間回転体7の各渦巻き溝24には各ボス部17に保持された球19が転動自在に係合されている。ここで、各リンク15は先端側のボス部17が支持部10の径方向スリット11に案内係合された状態において各球19が渦巻き溝24に係合しているため、中間回転体7が駆動リング5に対して相対回動することによって球19が渦巻き溝24に案内されて転動すると、各ボス部17が中間回転体7の相対回動に応じた方向及び量だけ径方向スリット11に沿って変位する。このように、支持部10の径方向スリット11,渦巻き溝24を有する中間回転体7,可動案内部12を備えるリンク15等によって、駆動リング5に対する従動軸部材3の回転位相を変化させる組付角操作機構6が構成されている。
【0014】
操作力付与手段8は、駆動リング5に一体に結合された円筒ハウジング25と、そのハウジング25の内周面に結合された円筒状の永久磁石ブロック26と、中間回転体7にリテーナプレート27を介して一体回転可能に結合された同じく円筒状のヨークブロック28と、非回転部材であるVTCカバー9内にゴム弾性体29を介して固定設置された電磁コイルブロック30と、を備えている。電磁コイルブロック30に設けられる一対の電磁コイル31a,31bは、励磁回路やパルス分配回路等を含む駆動回路(図示せず)に接続される。上記の機関制御部100は、クランク角、カム角、機関回転数、機関負荷等の各種の入力信号に基づいて、変換角θの目標値tθを演算し、この目標値tθに応じた制御信号、例えばデューティー比に応じたON−OFF信号を駆動回路に出力する。
【0015】
永久磁石ブロック26は、軸方向に延出する磁極が、異磁極が円周方向に沿って交互になるように複数着磁された構成とされている。ヨークブロック28は、透磁率の高い金属から成る複数の極歯リング(図示省略)を有し、その各極歯リングの複数の極歯が永久磁石ブロック26の磁極面にエアギャップを介して対峙している。また、電磁コイルブロック30は電磁コイル31a,31bによる磁気入出部がヨークブロック28の各極歯リングの円環状の基部にエアギャップを介して対峙している。
【0016】
この操作力付与手段8は、基本構成はステッピングモータであるが、電磁コイル31a,31bを励磁するON−OFF信号のデューティー比を変化させることにより、ヨークブロック28の各極歯の磁極が電磁コイルブロック30と非接触状態のまま連続変化し、それにより、ヨークブロック28と永久磁石ブロック26の回転の如何に拘らず両者を所望通りに相対回動させることができる。
【0017】
機関制御部100から電磁コイル31a,31bの駆動回路に出力されるON−OFF信号のデューティー比に応じて、電磁コイル31a,31bは磁界を発生し、ヨークブロック28を中間回転体7と共に駆動リング5に対して所定方向(遅れ側または進み側)に相対回動させる。これにより、各球19が渦巻き溝24内を転動しつつそれに対応するボス部17が径方向スリット11に沿って外側に変位し、このとき各リンク15が揺動することによって駆動リング5と従動軸部材3の組付角が変更される。この結果、クランクシャフトとカムシャフト1の回転位相すなわち変換角θが変更される。つまり、操作力付与手段8により中間回転体7を介して駆動される可動案内部12の変位に応じて、吸気弁の開閉時期に対応する変換角θが連続的に変化する。
【0018】
図3は作動量Sと変換角θとの関係を示している。作動量Sは、広義にはアクチュエータ8により駆動される作動体の初期位置からの変位であり、具体的には渦巻き溝24における可動案内部12の球19の初期位置Sminである一端24Aからの変位(角度)に相当する。変換角θは、広義には吸・排気弁の開閉特性に対応する制御量であって、ここでは吸気弁の開閉時期、より具体的にはクランクシャフト92に対するカムシャフト1の回転位相、さらに具体的には駆動リング5に対する従動軸部材3の初期値である最遅角値θminからの変換角度に相当する。従って、変換角θが小さいほど吸気弁の開閉時期が遅角し、大きいほど進角することとなる。変換角θは、可動案内部12の中心Oからの径方向距離ΔRに比例しており、径方向距離が減少するほど変換角θが増加する関係にある。
【0019】
なお、可動案内部12が渦巻き溝24の一端24Aから他端24Bの全長にわたって移動できるように、径方向スリット11が可動案内部12の移動範囲よりも余裕をもって大きく形成されている。従って、渦巻き溝24の全長が作動量Sの可動範囲ΔSallであり、渦巻き溝24の両端24A,24Bが、可動範囲ΔSallの両端の限界位置である初期位置Smin及び最大作動位置Smaxに相当する。これらの限界位置では、球19が渦巻き溝24の両端24A,24Bの端面に突き当てられて、機械的に安定して係止された状態となる。機関停止時のように、電磁コイル31a,31bへ通電されていない状態、つまりON−OFF信号のデューティー比が0(ゼロ)の初期状態では、カムシャフト1に作用する最小作動側への動弁反力等によって可動案内部12が機械的に係止される最小作動位置である初期位置Sminに常に保持される。
【0020】
図3(A)は、作動量Sの増加に対して変換角θが単調に増加(変化)する例を示しており、図3(B)は、作動量Sの増加に対して、変換角θが減少する減少領域Aと、変換角θが増加する増加領域Bと、の双方が存在する例を示している。この図3(B)に示すように、渦巻き溝24には、一端24Aから他端24Bへ向かうに従って、径方向長さΔRが増加する区間と、径方向長さΔRが減少する区間とが設けられ、増加する区間が減少領域Aに対応し、減少する区間が増加領域Bに対応する。このように渦巻き溝24の形状を適切に設定することによって、作動量Sに応じて変換角θが一義的に変化する機構でありながら、減少領域Aと増加領域Bとを合わせもつ特性を実現することができる。
【0021】
図3(A)のように単調増加特性の場合、初期位置Sminでの変換角θが必然的に最小値θminとなる。これに対して、減少領域Aと増加領域Bの双方を併せ持つ図3(B)の例では、初期位置Sminでの変換角θを、その限界値θmin,θmaxを除く中間的な値θγ、つまり機関始動に適した中間的な値θγとすることができる。これにより、上述したように機関始動時に作動体を初期位置から始動用の中間位置に駆動する必要がなく、また、作動体を始動に適した中間位置に保持する中間ロック機構等を用いる必要がないので、始動応答性及び始動安定性を向上しつつ、簡素化,小型化,低コスト化等の実用上多大な効果を奏することができる。
【0022】
但し、減少領域Aと増加領域Bの双方が重複する変換角の範囲Δθγでは、一つの変換角θに対応する作動量Sつまり作動位置が2箇所あるので、実変換角rθに基づいてアクチュエータ8を駆動制御する場合、作動位置を誤認すると作動体が予期せぬ方向に変位するおそれがある。従って、好ましくは減少領域Aか増加領域Bのいずれにあるかを判定する。この判定領域に基づいて実変換角rθに対応する作動量・作動位置を一義的に特定することができるため、実変換角rθに基づいてバルブタイミング変更機構60の動作を良好に制御することが可能となる。領域判定手法としては、例えば実変換角rθや接触型センサを利用して減少領域と増加領域とが切り替わる回数を機関始動時から積算し、この積算値に基づいて判定を行うことができる。あるいは、作動量を意図的に増加させ、この作動量の増加に対する実制御量rθの変化の方向を判別し、この実制御量の変化の方向に基づいて判定を行うこともできる。また、センサ等を用いて作動量Sを直接的に検出する検知システムを設けるようにしても良い。
【0023】
図4の上段は、渦巻き溝24の初期位置P0(Smin)からの可動案内部11の作動量(組付角)Sと変換角θとの関係を示す特性図で、特性L0は作動量Sに対して変換角θが全域にわたって線形的つまり比例して変化する比較例を示し、特性L1は本発明の第1実施例に係る特性を示し、図4の下段は、この第1実施例の渦巻き溝24の形状を簡略的に示している。
【0024】
第1実施例の渦巻きガイド24には、後述する実施例と同様に、周方向位置(角度)の変化に対する径方向長さの変化が小さい微小変化区間ΔPsが設けられている。言い換えると、微小変化区間ΔPsでは、他の区間に比して、作動量Sの変化に対する変換角θの変化が小さい。なお、この微少変化区間ΔPsを除く区間では、周方向位置の変化に対する径方向長さが実質的に線形的に変化するように設定されている。
【0025】
図5に示す第2実施例では、実線の特性L2に示すように、微少変化区間ΔPsを、渦巻き溝24の最大作動側の端部P3の近傍に設定している。より具体的には、可動案内部12が渦巻き溝24の最大作動側の端部24Bの壁面に突き当たる位置P3から所定幅の範囲αbに微少変化区間ΔPsが設定されている。ここで、破線L0で示す比較例の線形渦の速度比をα、微少変化区間の速度比をβとすると、比較例に比して、実線L2で示す第2実施例では、範囲αbに対応する制御量の偏差量をbから(α/β)×bに低減することができる。この結果、制御上の変換角の範囲を、比較例のΔθSallから所定量ΔθSall2拡大することができる。
【0026】
図6の実線L3は第3実施例に係る特性を示している。この実施例では、微少変化区間ΔPsを、アイドル時に利用される最小変換角θminの近傍に設定している。なお、アイドル時に用いられる最小変換角θminでのバルブリフト特性を図中に示している。この第3実施例では、作動量Sの増加に対して変換角θが単調に増加することから、可動案内部12が渦巻き溝24の最小作動側の初期位置P0から所定幅の範囲αaに微少変化区間ΔPsが設定されることとなる。ここで、破線L0で示す比較例の線形渦の速度比をα、微少変化区間の速度比をβとすると、比較例に比して、実線L3で示す第3実施例では、範囲αaに対応する制御量の偏差量をaから(α/β)×aに低減することができる。
【0027】
図7に示す第4実施例では、初期位置P0での変換角θを機関始動に適した中間的な値θγとしており、この場合のアイドル時のバルブリフト特性を図7に示している。この第4実施例では、第3実施例と同様に、アイドル域で用いられる最小変換角θminの近傍αaに、微小変化区間ΔPsを設定している。なお、アイドル時に用いられる最小変換角θminでのバルブリフト特性を図中に示している。この第4実施例では、最小変換角θminで機関始動を行う必要がないので、最小変換角θminでの吸気弁の開閉時期が第3実施例よりも更に遅れ側の値に設定されている。
【0028】
図8及び図9に示す第5及び第6実施例では、機関冷機時にHC(ハイドロカーボン)の排出量を低減するために、冷機時に用いられる変換角θcoldの近傍に、微小変化区間ΔPsを設けている。なお、図8の第5実施例では実線L5に示すように作動量の変化に対する制御量の変化が単調であり、図9の第6実施例では実線L6に示すように初期位置P0での変換角θを機関始動に適した中間的な値θγとしている。
【0029】
次に、上記実施例より把握し得る特徴的な構成及びその作用効果について説明する。但し、本発明は参照符号を付した実施例の構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。一例として、上記の微小変化区間は任意の変換角に複数設定が可能であるため、上記実施例の設定を組み合わせても良く、また、車両毎の用途や使用形態等に応じて設定が可能であり、例えば4000rpm程度のWOT域でのトルク向上を図るために、このWOT域にあわせて微小変化区間を設定しても良い。
【0030】
(1)吸気弁68又は排気弁70の開閉時期を変更するバルブタイミング変更機構60を備える。このバルブタイミング変更機構60は、内燃機関61のクランクシャフト92に連動して回転する駆動回転体(駆動リング)5と、吸気弁68又は排気弁70を駆動するためのカムシャフト1と連動して回転する従動回転体(従動軸部材)3と、周方向位置に応じて径方向長さが異なる渦巻きガイド(渦巻き溝)24が形成され、アクチュエータ(操作力付与手段)8によって回転方向に駆動される中間回転体7と、一端が駆動回転体5又は従動回転体3の一方に揺動可能に支持されたリンク15と、このリンク15の他端に設けられ、上記駆動回転体5又は従動回転体3の他方に形成された径方向に延びる径方向ガイド(径方向スリット)11と上記渦巻きガイド24の双方に変位可能に係合する可動案内部12と、を有する。
【0031】
このような渦巻きガイド式のバルブタイミング変更機構60では、渦巻きガイド24の形状を適切に設定することによって、例えば初期状態での制御量を機関始動に適した中間値とすることが可能となり、作動量S(典型的には、渦巻きガイド24に対する可動案内部12の初期位置からの変位量)に対する制御量θの変化の特性を、単調ではない特性とすることができる。このため、初期位置での制御量を機関始動に適した中間的な値とすることができ、機関始動性を著しく改善することができる。
【0032】
そして、渦巻きガイド24に、周方向位置の変化に対する径方向長さの変化が小さい微小変化区間ΔPsを設けている。これにより、微小変化区間ΔPsでは、カムシャフト1側からの変動トルクに起因して制御量が不用意に変動することを低減することができる。
【0033】
(2)渦巻きガイド24は、典型的には、微少変化区間ΔPsを除き、周方向位置の変化に対する径方向長さが線形的に変化するように設定される。
【0034】
(3)図5の第2実施例や図6の第3実施例では、微少変化区間ΔPsが渦巻きガイド24の端部近傍に配置されている。この場合、渦巻きガイド24の端部近傍で、作動量の変化に対する制御量の変化が小さくなり、分解能が向上するので、可動案内部12が渦巻きガイド24の端部に突き当たることにより打音を生じることを低減・回避することができる。また、打音防止として確保している過渡偏差量b,aを減少することができ、従って、制御可能範囲を、例えば図5の所定量Δθall2分、拡大することができる。これにより、例えば燃焼が安定しているパーシャル領域でのオーバーラップ量を拡大して、燃費性能の向上や低速トルクの向上を図ることができる。
【0035】
(4)図6の第3実施例や図7の第4実施例では、微少変化区間ΔPsが、アイドル域に対応して設定されている。これにより、アイドル域における制御量の不用意な変動が抑制され、ラフアイドルを低減・回避できるとともに、燃費向上を図ることができ、かつ、高回転域では出力向上を図ることもできる。
【0036】
(5)冷機時のHC排出量を低減するためには、適切なオーバーラップを付与することが有効であるが、このオーバーラップ量が過剰に付与されると、逆にHC排出量が増加してしまう。従って、一般的には定常偏差量を見越してバルブタイミングつまり制御量を設定する。ここで、図8の第5実施例や図9の第6実施例のように、冷機時θcoldに対応して微少変化区間ΔPsが設定されていると、冷機時における制御量の不用意な変動が抑制されるので、上記の定常偏差量を抑制し、冷機時におけるHC排出量を効果的に抑制することが可能となる。
【0037】
(6)上述した渦巻きガイド式のバルブタイミング変更機構60によれば、作動量の増加に対して制御量が減少する減少領域Aと、作動量の増加に対して制御量が増加する増加領域Bと、の双方を備える設定とすることが可能となる。これにより、初期位置での制御量を機関始動に適した中間的な値θγとすることが可能となり、機関始動性能を著しく向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る内燃機関の可変動弁装置の一例を簡略的に示すシステム構成図。
【図2】本発明に係る可変動弁機構の一例としての渦巻きガイド式バルブタイミング変更機構を示す断面図。
【図3】(A)が変換角が単調増加する例、(B)が減少領域と増加領域とを合わせ持つ例であり、上段が作動量と変換角の関係を示す特性図、下段が上記バルブタイミング変更機構の要部を示す構成図。
【図4】本発明の第1実施例に係る説明図で、上段が作動量と変換角の関係を示す特性図、下段が渦巻き溝の形状を簡略的に示す構成図。
【図5】本発明の第2実施例に係る作動量と変換角の関係を示す特性図。
【図6】本発明の第3実施例に係る作動量と変換角の関係を示す特性図。
【図7】本発明の第4実施例に係る作動量と変換角の関係を示す特性図。
【図8】本発明の第5実施例に係る作動量と変換角の関係を示す特性図。
【図9】本発明の第6実施例に係る作動量と変換角の関係を示す特性図。
【符号の説明】
【0039】
1…カムシャフト
3…従動軸部材(従動回転体)
5…駆動リング(駆動回転体)
7…中間回転体
8…操作力付与手段(アクチュエータ)
11…径方向スリット(径方向ガイド)
12…可動案内部(作動体)
24…渦巻き溝(渦巻きガイド)
60…バルブタイミング変更機構(可変動弁機構)
100…機関制御部




 

 


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