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発明の名称 摺動部材、当該摺動部材を適用したシリンダ、および当該シリンダを適用した内燃機関
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−2989(P2007−2989A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−187459(P2005−187459)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄
発明者 南部俊和 / 肥塚洋輔 / 保田芳輝
要約 課題
摩耗性および耐焼き付き性に優れ、摺動面における摩擦係数の低減効果を最大限に発揮しうる摺動部材を提供する。

解決手段
潤滑剤を介在してピストン20と相対的に摺動しうるシリンダ10であって、ピストン20との摺動面には、複数の凹部12が形成され、凹部12の開口部の形状、凹部12の開口部の寸法、凹部12の深さ、凹部12の断面形状、シリンダ10の内面11の単位面積あたりに形成される凹部12の合計容積、および内面11の単位面積あたりに形成される凹部12の開口部の合計面積の少なくともいずれか一つは、シリンダ10の摺動方向Pおよび/または摺動方向Pと直交する方向の位置に応じて相違する。
特許請求の範囲
【請求項1】
潤滑剤を介在して他の部材と相対的に摺動しうる摺動部材であって、
前記他の部材との摺動面には、複数の凹部が形成され、
凹部の開口部の形状、凹部の開口部の寸法、凹部の深さ、凹部の断面形状、前記摺動面の単位面積あたりに形成される凹部の合計容積、および前記摺動面の単位面積あたりに形成される凹部の開口部の合計面積の少なくともいずれか一つは、当該摺動部材の摺動方向および/または摺動方向と直交する方向の位置に応じて相違することを特徴とする摺動部材。
【請求項2】
前記摺動面は、少なくとも第1の領域と前記第1の領域よりも大きな荷重が付加されうる第2の領域とを有し、
前記第1の領域において単位面積あたりに形成される凹部の合計容積は、前記第2の領域において単位面積あたりに形成される凹部の合計容積よりも、大きいことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記摺動面は、少なくとも第1の領域と前記第1の領域よりも大きな荷重が付加されうる第2の領域とを有し、
前記第1の領域において形成される凹部の深さは、前記第2の領域において形成される凹部の深さよりも、深いことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項4】
前記摺動面は、少なくとも第1の領域と前記第1の領域よりも大きな荷重が付加されうる第2の領域とを有し、
前記第1の領域において単位面積あたりに形成される凹部の開口部の合計面積は、前記第2の領域において単位面積あたりに形成される凹部の開口部の合計面積よりも、大きいことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載の摺動部材が適用され、ピストンスカートが設けられたピストンと潤滑剤を介在して相対的に摺動しうるシリンダであって、
前記ピストンとの摺動面である前記シリンダの内面に、複数の凹部が形成され、
前記第2の領域は、前記内面のうち、ピストンスカートとシリンダとが摺接する領域であり、
前記第1の領域は、前記内面のうち、前記第2の領域以外の領域であることを特徴とするシリンダ。
【請求項6】
前記内面の面積に対して前記内面に形成される複数の凹部の開口部の合計面積の割合は、0.5%以上10%以下であり、
凹部の深さは、0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のシリンダ。
【請求項7】
前記内面を形成する部材は、アルミニウム合金から形成されることを特徴とする請求項5または6に記載のシリンダ。
【請求項8】
前記内面を形成する部材のSi含有率は、12%以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載のシリンダ。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1つに記載のシリンダと、前記ピストンとを有する内燃機関であって、
前記ピストンは、前記シリンダの内面と摺接しうるピストンリングをさらに有し、
前記ピストンリングおよびピストンスカートのいずれか一方もしくは両方には、非晶質硬質炭素膜が形成されることを特徴とする内燃機関。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材、当該摺動部材を適用したシリンダ、および当該シリンダを適用した内燃機関に関する。特に、自動車に用いられる摺動部材、当該摺動部材を適用したシリンダ、および当該シリンダを適用した内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化をはじめとする環境問題が地球規模で大きくクローズアップされ、大気中のCO削減に向けた自動車燃費改善技術の開発が大きな課題となっており、その一環として、エンジンに用いられる摺動部材の摩擦損失の低減が図られることが求められている。これに鑑み、近年において、耐磨耗性および耐焼き付き性に優れ、且つ摩擦係数の低減効果を最大限に発現することが可能な摺動部材の材料・表面処理・改質の技術の開発が進められている。このような技術の一つとして、摺動部材の摺動面に複数の凹部を形成する技術が開発されている(特許文献1)。この凹部は、摺動部材の摺動時において潤滑剤を保持することを目的に設けられる。
【特許文献1】特開2002−235852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、摺動面に生じる摩擦力や磨耗の度合など、摺動面における摩擦特性は、摺動部材の摺動方向および/または摺動方向と直交する方向の位置に応じて異なる。この摩擦特性の相違を考慮することなく、凹部を摺動面に形成した場合には、充分な摩擦低減効果が発揮されないことが生じ得る。
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、摩耗性および耐焼き付き性に優れ、摺動面における摩擦係数の低減効果を最大限に発揮しうる摺動部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、下記の手段により達成される。
【0006】
(1) 潤滑剤を介在して他の部材と相対的に摺動しうる摺動部材であって、前記他の部材との摺動面には、複数の凹部が形成され、凹部の開口部の形状、凹部の開口部の寸法、凹部の深さ、凹部の断面形状、前記摺動面の単位面積あたりに形成される凹部の合計容積、および前記摺動面の単位面積あたりに形成される凹部の開口部の合計面積の少なくともいずれか一つは、当該摺動部材の摺動方向および/または摺動方向と直交する方向の位置に応じて相違することを特徴とする摺動部材。
【0007】
(2) 前記摺動面は、少なくとも第1の領域と前記第1の領域よりも大きな荷重が付加されうる第2の領域とを有し、前記第1の領域において単位面積あたりに形成される凹部の合計容積は、前記第2の領域において単位面積あたりに形成される凹部の合計容積よりも、大きいことを特徴とする(1)に記載の摺動部材。
【0008】
(3) 前記摺動面は、少なくとも第1の領域と前記第1の領域よりも大きな荷重が付加されうる第2の領域とを有し、前記第1の領域において形成される凹部の深さは、前記第2の領域において形成される凹部の深さよりも、深いことを特徴とする(1)に記載の摺動部材。
【0009】
(4) 前記摺動面は、少なくとも第1の領域と前記第1の領域よりも大きな荷重が付加されうる第2の領域とを有し、前記第1の領域において単位面積あたりに形成される凹部の開口部の合計面積は、前記第2の領域において単位面積あたりに形成される凹部の開口部の合計面積よりも、大きいことを特徴とする(1)に記載の摺動部材。
【0010】
(5) (2)〜(4)のいずれか1つに記載の摺動部材が適用され、ピストンスカートが設けられたピストンと潤滑剤を介在して相対的に摺動しうるシリンダであって、前記ピストンとの摺動面である前記シリンダの内面に、複数の凹部が形成され、前記第2の領域は、前記内面のうち、ピストンスカートとシリンダとが摺接する領域であり、前記第1の領域は、前記内面のうち、前記第2の領域以外の領域であることを特徴とするシリンダ。
【0011】
(6) 前記内面の面積に対して前記内面に形成される複数の凹部の開口部の合計面積の割合は、0.5%以上10%以下であり、凹部の深さは、0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする(5)に記載のシリンダ。
【0012】
(7) 前記内面を形成する部材は、アルミニウム合金から形成されることを特徴とする(5)または(6)に記載のシリンダ。
【0013】
(8) 前記内面を形成する部材のSi含有率は、12%以下であることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1つに記載のシリンダ。
【0014】
(9) (5)〜(8)のいずれか1つに記載のシリンダと、前記ピストンとを有する内燃機関であって、前記ピストンは、前記シリンダの内面と摺接しうるピストンリングをさらに有し、前記ピストンリングおよびピストンスカートのいずれか一方もしくは両方には、非晶質硬質炭素膜が形成されることを特徴とする内燃機関。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、潤滑剤を介在して他の部材と相対的に摺動しうる摺動部材において、前記他の部材との摺動面に複数の凹部を形成するにあたって、凹部の開口部の形状、凹部の開口部の寸法など凹部の形成条件を、当該摺動部材の摺動方向および/または摺動方向と直交する方向の位置に応じて相違させる。
【0016】
これにより、本発明の摺動部材は、耐摩耗性および耐焼き付き性に優れ、摺動面における摩擦係数の低減効果を最大限に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施形態におけるエンジンブロック1を示す断面図である。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態におけるエンジンブロック1は、円筒状を呈するシリンダ10と、シリンダ10の内部に挿入されうるピストン20とを有する。
【0020】
ピストン20は、ピストンピン21を介して回転可能に設けられたコネクティングロッド22に連結され、方向P(以下、摺動方向P)へ往復動可能に設けられている。ピストン20は、往復動時において、コネクティングロッド22の回転によりシリンダ10の内面11上をスラスト/反スラスト方向の領域(第2の領域 以下、スラスト/反スラスト方向領域)S,ASへ押さえ付けられながら摺動する。なお、本実施形態におけるエンジンブロック1はシリンダライナを用いないタイプであり、シリンダ10の内面11とピストン20とが、直接接触する。
【0021】
また、ピストン20は、ピストンピン21に対してピストンピン21の軸線と直交する方向に配置されるピストンスカート23と、ピストン20の表面に突出するように設けられるピストンリング24とを有する。ピストンリング24は、所定の張力を付与された状態でピストン20に装着され、ピストンリング24の外周面は全周にわたって均一の圧力でシリンダ10の内面11に摺接する。
【0022】
図2は、シリンダ10の内面11を、内面11に付加される荷重の大きさによって区分した状態を説明するための模式図である。
【0023】
上述したように、ピストン20は、コネクティングロッド22の回転により、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASへ押さえ付けられるようにして摺動する。これにより、内面11に付加される荷重の大きさは、シリンダ10の内面11の全体にわたって均一ではなく、内面11上の位置に応じて相違する。すなわち、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASにおいてピストン20から付加される荷重は、スラスト/反スラスト方向Xに直交する方向Yの領域(第1の領域 以下、直交方向領域)R,Rにおいてピストン20から付加される荷重よりも大きい。また、上述したように、ピストンスカート23は、ピストンピン21に対してピストンピン21の軸線と直交する方向(すなわち、コネクティングロッド22の回転により、ピストン20がシリンダ10の内面11へ押さえ付けられる方向)に配置されることから、ピストン20の摺動時において、ピストンスカート23がスラスト方向/反スラスト方向領域S,ASに摺接する。
【0024】
本実施形態では、シリンダ10とピストン20との摺動面における摩擦係数の低減効果を最大限に発揮させるために、内面11に付加される荷重の相違を考慮して、複数の凹部12が、以下に示す形成条件を満たすように内面11に形成される。
【0025】
図3は、シリンダ10の内面11を示す展開図である。
【0026】
凹部12の開口部の形状、凹部12の開口部の寸法、凹部12の深さ、凹部12の断面形状、シリンダ10の内面11の単位面積あたりに形成される凹部12の合計容積、および内面11の単位面積あたりに形成される凹部12の開口部の合計面積の少なくともいずれか一つは、摺動方向P(図3に示す上下方向)および/または摺動方向Pと直交する方向の位置に応じて相違する。
【0027】
また、直交方向領域R,Rの単位面積あたりに形成される凹部12の合計容積は、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASの単位面積あたりに形成される凹部12の合計容積(mm/mm)よりも大きい。
【0028】
また、直交方向領域R,Rに形成される凹部12の深さは、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASに形成される凹部12の深さよりも大きい。
【0029】
また、直交方向領域R,Rの単位面積あたりに形成される凹部12の開口部の合計面積は、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASの単位面積あたりに形成される凹部12の開口部の合計面積よりも大きい。なお、上述した凹部12の深さおよび凹部12の開口部の合計面積についての条件に関して、凹部12は、いずれか一方の条件のみを満たすように形成されてもよく、あるいは両方の条件を満たすように形成されてもよい。
【0030】
また、内面11の面積に対して内面11に形成される複数の凹部12の開口部の合計面積の割合(以下、面積率と称する。)は0.5%以上10%以下であり、各凹部12の深さは0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。これは、凹部12の面積率が0.5%未満であり、または凹部12の深さが0.5μm未満である場合には、凹部12の容積が小さく、潤滑油を十分に保持できないこと、また、凹部12の面積率が10%よりも大きく、または凹部12の深さが20μmよりも大きい場合には、シリンダ10の内面11とピストン20との間の摩擦損失が増大することに基づくものである。
【0031】
上述した形成条件を満たす凹部12をシリンダ10の内面11に形成することによって、耐摩耗性および耐焼き付き性に優れ、摺動面における摩擦係数の低減効果を最大限に発揮することができる。
【0032】
また、上記の凹部12をシリンダ10の内面11に形成することにより、上述した摺動面における摩擦係数の低減効果などの効果が発揮されることから、内面11を形成する部材をADC(アルミニウム合金)から形成し、当該部材のSi含有率を12%以下にすることができる。すなわち、エンジンブロックの軽量化を目的に開発されたAl−Si系過共析合金にCuやMgを添加して、マトリックスを強化したADC14のような材料を使わずとも、例えばSi含有率が10.8%程度のAl−Si−Cu系のADC12のようなアルミ合金を用いることができる。これにより、従来の鋳鉄シリンダライナが不要となり、部品点数の削減や製造工程の簡素化を図ることができる。
【0033】
また、ピストンスカート23およびピストンリング24のいずれか一方もしくは両方に、非晶質硬質炭素膜が形成されることが好ましい。これにより、耐摩耗性および耐焼き付き性を確保し、摺動面における摩擦係数を低減する効果が長期間にわたって持続する。
【0034】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0035】
例えば、凹部が表面に形成される摺動部材としては、上記のシリンダに限られず、シリンダライナ、ピストン、ピストンリングなどを挙げることができる。
【0036】
<実施例>
次に、上記の実施形態で示した摺動部材が、耐摩耗性および耐焼き付き性に優れ、摺動面における摩擦係数の低減効果を最大限に発揮するについて効果を発揮することの検証を目的として、実際に試験体を作成して摺動面に生じるフリクション力の測定を行なった。試験体として、上記の実施形態において述べた形成条件に従って凹部を形成した実施例1〜3の試験体と、実施例1〜3と比較するための比較例1および2の試験体とを製作した。
【0037】
はじめに、実施例1の試験体の特徴について述べる。
【0038】
エンジンブロックのシリンダの材料として用いられるADC12材を用いて、実施例1の試験体を製作した。具体的には、日産自動車(株)製QR25エンジン(4気筒2500CC、ボア径φ89)を用い、鋳鉄製ライナーを削り落し、底に、試験体であるADC12ダイカスト製ALライナを圧入した。試験体は中空円筒形状を呈し、内面に凹部が形成される。凹部は、マスクブラスト処理を用いて形成した。マスクブラスト処理は、光リソグラフィ技術を利用する処理であり、具体的には、凹部形状が形成された樹脂製マスクを試験体の内面に貼り付けた後、平均粒径20μmのアルミナ砥粒を投射ノズルからワークに投射して、試験体の内面に凹部を形成する処理である。投射条件として、投射ノズルからワークまでの距離を100mm、投射流量を100g/min、投射圧を0.4MPaと設定した。さらに、投射後において、凹部12の周辺に形成されたエッジ部の盛り上がりを粒径9μmのテープラップフィルムを用いて除去し、実施例1の試験体を得た。
【0039】
図4は、本実施例において試験体の内面に形成される凹部12の配置パターンを示す拡大図である。
【0040】
以上により、実施例1の試験体の内面に、図4に示されるような千鳥模様に配置される深さ一定の複数の凹部12を形成した。千鳥模様の配置パターンは、隣接する3つの凹部12の開口の中心点を結んだときに正三角形が形成される配置パターンであり、当該正三角形の大きさを調整することによって、単位面積当たりの凹部12の面積(面積率)が所望の値になるように調整した。なお、各凹部12の開口部の寸法(高さH×幅W)は、80μm×320μmである。
【0041】
また、実施例1の試験体において、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASにおける凹部12の面積率は5.0%、凹部12の深さは3.0μm、直交方向領域R,Rにおける凹部12の面積率は10%、凹部12の深さは6.0μmである。すなわち、実施例1の試験体における凹部12の面積率および深さは、上述した実施形態で述べた範囲に含まれるものである。
【0042】
次に、実施例2の試験体の特徴について述べる。
【0043】
実施例2の試験体は、実施例1の試験体と、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASおよび直交方向領域R,Rのそれぞれにおいて形成される凹部12の面積率、凹部12の深さにおいて異なる。具体的には、実施例2の試験体において、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASにおける凹部12の面積率は2.5%、凹部12の深さは3.0μm、直交方向領域R,Rにおける凹部12の面積率は5.0%、凹部12の深さは3.0μmである。すなわち、実施例2の試験体における凹部12の面積率および深さは、上述した実施形態で述べた範囲に含まれるものである。これ以外の条件は、実施例1の試験体と同様であるので、その説明を省略する。
【0044】
次に、実施例3の試験体の特徴について述べる。
【0045】
実施例3の試験体は、実施例1および2の試験体と、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASおよび直交方向領域R,Rのそれぞれにおいて形成される凹部12の面積率、凹部12の深さにおいて異なる。具体的には、実施例3の試験体において、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASにおける凹部12の面積率は1.0%、凹部12の深さは3.0μm、直交方向領域R,Rにおける凹部12の面積率は5.0%、凹部12の深さは3.0μmである。すなわち、実施例3の試験体における凹部12の面積率および深さは、上述した実施形態で述べた範囲に含まれるものである。これ以外の条件は実施例1の試験体と同様であるので、その説明を省略する。
【0046】
次に、比較例1の試験体の特徴について述べる。
【0047】
比較例1の試験体は、実施例1〜3の試験体と、内面の各領域における凹部の面積率および深さの条件において異なる。具体的には、比較例1の試験体において、スラスト方向/反スラスト方向領域および直交方向領域のいずれの領域においても、凹部の面積率は0.4%、凹部の深さは0.4μmである。すなわち、比較例1の試験体における凹部の面積率および深さは、上述した実施形態で述べた範囲に含まれないものである。これ以外の条件は実施例1の試験体と同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
次に、比較例2の試験体の特徴について述べる。
【0049】
比較例2の試験体は、実施例1〜3および比較例1の試験体と、内面の各領域における凹部の面積率および深さの条件において異なる。具体的には、比較例2の試験体において、スラスト方向/反スラスト方向領域および直交方向領域のいずれの領域においても、凹部の面積率は12%、凹部の深さは20μmである。すなわち、比較例2の試験体における凹部の面積率および深さは、上述した実施形態で述べた範囲に含まれないものである。これ以外の条件は、実施例1の試験体と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
なお、ここまで説明した実施例1〜3および比較例1〜2の試験体における凹部の形成条件については、後掲の表1にまとめて示した。
【0051】
図5は、ピストン−シリンダフリクション測定機2の要部を示す概略図である。
【0052】
上記の実施例および比較例における各試験体の耐焼付き性などの性能について評価するために、図5に示されるピストン−シリンダフリクション測定機(日産自動車(株)製QR25エンジン(4気筒2500CC、ボア径φ89))2を用いて、モータリング法により、各試験体の摺動面に生じるフリクション力を測定した。フリクション測定機2は、固定された状態で配置されるピストン20と、方向Qに往復動可能な支持部材25とを有する。また、ピストン20には、ピストンリング24(トップリング、セカンドリング、およびオイルリング)が装着され、当該ピストンリング24の表面には、イオンプレーディング法によって非晶質硬質炭素膜が形成される。このフリクション測定機2を用いて試験体Cの摺動面に生じるフリクション力を測定するにあたって、試験体Cを支持部材25に装着し、固定されたピストン20と試験体Cとの摺動面に潤滑油を供給しつつ、支持部材25をQ方向に往復動させて、試験体Cの摺動面に生じるフリクション力を測定した。
【0053】
次に、測定条件について示す。潤滑油はエンジン油5W30であり、油温は80℃、供給油量は100cc/min、摺動速度は700cpm、往復摺動距離は70mmであり、ピストン20にスラスト荷重として490Nを加えた。
【0054】
図6は、本実施例におけるフリクション力の測定結果を示すグラフである。
【0055】
上記の測定を行なった結果、図6に示される測定結果を得て、図6に示される曲線を積分することによって得られる摩擦仕事(積分により得られる面積)を算出した。そして、各実施例および比較例におけるフリクション力および摩擦仕事を比較して、各例についての耐摩耗性および耐焼き付き性の検討を行なった。その結果について、表1に示す。
【0056】
【表1】


【0057】
実施例1〜3におけるフリクション力の比率は、比較例1および2におけるフリクション力の比率よりも小さい。すなわち、実施例1〜3の試験体の摺動面における摩擦係数は、比較例1および2の試験体の摺動面における摩擦係数よりも小さいといえる。
【0058】
これにより、直交方向領域R,Rの単位面積あたりに形成される凹部12の合計容積を、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASの単位面積あたりに形成される凹部12の合計容積(mm/mm)よりも大きくすることが、耐摩耗性および耐焼き付き性を向上させ、摺動面における摩擦係数を低減する効果を発揮させることに効果的であることが把握される。
【0059】
また、直交方向領域R,Rに形成される凹部12の深さを、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASに形成される凹部12の深さよりも大きくすることも、上記の効果を発揮させることに効果的であることが把握される。
【0060】
また、直交方向領域R,Rの単位面積あたりに形成される凹部12の開口部の合計面積を、スラスト方向/反スラスト方向領域S,ASの単位面積あたりに形成される凹部12の開口部の合計面積よりも大きくすることも、上記の効果を発揮させることに効果的であることが把握される。
【0061】
また、内面11の面積に対して内面11に形成される複数の凹部12の開口部の合計面積の割合(以下、面積率と称する。)を0.5%以上10%以下、各凹部12の深さを0.5μm以上20μm以下とすることも、上記の効果を発揮させることに効果的であることが把握される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態におけるエンジンブロックを示す断面図である。
【図2】シリンダの内面を、内面に付加される荷重の大きさによって区分した状態を説明するための模式図である。
【図3】シリンダの内面を示す展開図である。
【図4】本実施例において試験体の内面に形成される凹部の配置パターンを示す拡大図である。
【図5】ピストン−シリンダフリクション測定機の要部を示す概略図である。
【図6】本実施例におけるフリクション力の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
10 シリンダ、
11 内面、
12 凹部、
20 ピストン、
23 ピストンスカート、
24 ピストンリング、
P 摺動方向、
R,R スラスト/反スラスト方向Xに直交する方向Yの領域(第1の領域)、
S,AS スラスト/反スラスト方向の領域(第2の領域)。




 

 


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