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発明の名称 転動部品およびこれを用いた転がり軸受
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−24260(P2007−24260A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−210147(P2005−210147)
出願日 平成17年7月20日(2005.7.20)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 田窪 孝康 / 平井 功 / 松原 幸生 / 吉田 和彦
要約 課題
良好な鍛造性を維持しつつ良好な加工性と強度とのバランスを持つことのできる転動部品およびこれを用いた転がり軸受を提供する。

解決手段
転動部品は、合金元素としてC:0.5質量%以上0.7質量%以下、Si:0より大きく1.2質量%以下、Mn:0.2質量%以上1.2質量%以下、Cu:0より大きく0.3質量%以下、Ni:0より大きく0.20質量%以下を含有し、かつCuおよびNiの各々の含有量が(1)式を満たし、かつ残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼によって形成されている。
特許請求の範囲
【請求項1】
合金元素としてC:0.5質量%以上0.7質量%以下、Si:0より大きく1.2質量%以下、Mn:0.2質量%以上1.2質量%以下、Cu:0より大きく0.3質量%以下、Ni:0より大きく0.20質量%以下を含有し、かつCuおよびNiの各々の含有量が(1)式を満たし、かつ残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼によって形成されたことを特徴とする、転動部品。
[Cu]/[Ni]≦2・・・(1)
【請求項2】
C、Si、およびMnの各々の含有量から(2)式で求まるHが(3)式を満たす鋼によって形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の転動部品。
H=244.8[C]+29.1[Si]+58.7[Mn]+55.7・・・(2)
230≦H≦260・・・(3)
【請求項3】
内周に転走面を有する外方部材と、
前記転走面の各々に対向する転走面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との間に介在する複数の転動体とを備え、
前記外方部材、前記内方部材、および前記転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が請求項1または2に記載の転動部品によって構成される、転がり軸受。
【請求項4】
前記外方部材または前記内方部材のいずれか一方は車輪に取り付けるためのフランジ部を有する、請求項3に記載の転がり軸受。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動部品およびこれを用いた転がり軸受に関し、より特定的には、炭素鋼によって形成された転動部品およびこれを用いたフランジ付き転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の足回りなどに用いられる転動部品、特にボルトを連結するためのフランジを有するハブ軸受のハブ輪や、等速ジョイントの軌道輪などのフランジ付き転がり軸受を構成する転動部品などは、その形状が複雑である。このため、鍛造性や加工性に鑑みて、フランジ付き転がり軸受を構成する転動部品にはS53Cのような中炭素鋼が用いられており、転動部品における高面圧が作用する転がり接触部位には高周波焼入が施されている。S53Cは、C、Si、Mn、P、およびSの各々の含有量が、C:0.50〜0.56%、Si:0.15〜0.35%、Mn0.60〜0.90%、P:0.030%以下、およびS:0.035%以下である鋼である。今後の技術動向として、省資源化、省エネ化、コンパクト化などに対応するため、特に上記のような転動部品にはコンパクト化や薄肉化が要求されており、それに伴い転動部品の使用条件も過酷になりつつある。
【0003】
このような要求に対する素材面での対策として、従来、CrやMoなどの高価な合金元素を鋼に添加することによって高強度化が図られてきた。特開2004−315890号公報(特許文献1)には、転がり軸受の素材として、C:0.7〜1.1質量%、Si:0.2〜2.0質量%、Mn:0.4〜2.5質量%、Cr:1.6〜4.0質量%、Mo:0.1〜0.5質量%、Al:0.010〜0.050質量%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材を用いた技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−315890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記合金元素を鋼に添加すると、コストの増大を招くだけでなく鍛造性や加工性の悪化を招く。さらに、省資源という観点から時代にそぐわず、調達に関しても不利になる。
【0005】
また、従来においては、鋼に含まれる不純物が鍛造性の悪化を招いていた。鍛造性を悪化させる不純物としては、主にSやPやCuなどが挙げられる。これらのうちSやPについては、近年の製鋼技術の進歩により鍛造性に関して十分に無害化できるレベルまで低減できるようになっている。一方、Cuについては、電炉鋼の場合には現状でも0.1質量%程度が不可避的に残留する。これは、電炉鋼はリサイクルされた鉄屑を資源として活用して製造された鋼であるため、高炉鋼に比べて鋼に含まれる非鉄材料の割合が高いことが影響している。今後、スクラップのリサイクル率が向上すれば、Cuの残留量はさらに増えるものと予想される。Cuは鋼中における溶解度が低く、そのため粒界析出して粒界強度を低下させる。このことは、今後さらに複雑な形状の鍛造に対応する上で、鍛造時の割れを引き起こす要因になると考えられる。
【0006】
上記のように、従来の転動部品には、良好な鍛造性を維持しつつ良好な加工性と強度とのバランスをとるのが難しいという問題があった。この問題は、フランジ付き転がり軸受を構成する転動部品に限らず、転動部品全般に共通する問題であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、良好な鍛造性を維持しつつ良好な加工性と強度とのバランスを持つことのできる転動部品およびこれを用いた転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転動部品は、合金元素としてC:0.5質量%以上0.7質量%以下、Si:0より大きく1.2質量%以下、Mn:0.2質量%以上1.2質量%以下、Cu:0より大きく0.3質量%以下、Ni:0より大きく0.20質量%以下を含有し、かつCuおよびNiの各々の含有量が(1)式を満たし、かつ残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼によって形成されている。
【0009】
[Cu]/[Ni]≦2・・・(1)
本願発明者らは、CuおよびNiの各々の含有量が(1)式を満たすようにNiを鋼に添加すると、CuとNiとFeとによって金属間化合物が形成され、Cuの鋼中への溶解度が向上することを見出した。これにより、Cuが無害化されて粒界析出しなくなり、非調質状態(焼入れ焼戻し処理をしない状態)で良好な鍛造性を維持することができる。
【0010】
また、本願発明者らは、C,Si、およびMnの量を適正に調整した鋼を転動部品の素材として用いることによって、非調質状態で良好な鍛造性を維持しつつ良好な加工性と強度とのバランスをとることができることを見出した。
【0011】
鋼におけるCの含有割合を0.5質量%以上とすることにより、転動部品において高面圧が作用する部分である転がり接触部位に高周波焼入を施す場合に、高周波焼入によって安定した高硬度を得ることができる。鋼におけるCの含有割合を0.7質量%以下とすることにより素材硬度が上昇しにくくなるので、加工性の著しい低下を防止することができる。また、鋼におけるCの含有割合を0.7質量%以下とすることにより、成分偏析防止のための高温拡散熱処理や、炭化物球状化などの特別な熱処理が不要になるため、製造コストを低下させることができる。
【0012】
鋼におけるSiの含有割合を0より大きく1.2質量%以下とすることにより、冷間加工性および熱間加工性の低下を防止することができる。
【0013】
鋼におけるMnの含有割合を0.2質量%以上とすることにより、不純物として鋼に微量に含まれるSをMnと化合させてMnSとして析出されることができる。これにより、Sが結晶粒界に偏析することを防止することができる。鋼におけるMnの含有割合を1.2質量%以下とすることにより、加工性や被削性の低下を防止することができる。これは、Mnは鋼の焼入性を向上させる有効な元素である一方、セメンタイト中においてFe原子と置換して複合炭化物を形成し、素材硬度を上昇させる効果を有するので、添加しすぎると加工性や被削性が低下するためである。
【0014】
Cuは生成錆を非晶質化して腐食ピットの生成を抑制する効果があるので、鋼がCuを含有することにより転動部品の応力腐食割れに対する耐性が向上する。鋼におけるCuの含有割合を0.3質量%以下とすることにより、Cuが粒界析出することを防止できる。
【0015】
鋼におけるNiの含有割合を0.2質量%以下とすることにより、Niを添加しすぎて硬度が上昇することがなくなり、被削性の低下を抑止することができる。また、鋼における焼入れ性を効果的に向上することができる。さらに、良好な被削性および焼入れ性を確保しつつ、Niを多量に添加することによるコストの増加を抑止することができる。
【0016】
なお、焼準や調質をすることによっても鋼の高強度化を図ることができるが、製造工程が増加する分だけコストの増加に繋がる。本発明によれば、非調質状態で良好な鍛造性を維持しつつ高強度化を図ることができるので、コストの増加を招かない。
【0017】
本発明の転動部品において好ましくは、C、Si、およびMnの各々の含有量から(2)式で求まるHが(3)式を満たす鋼によって形成されている。
【0018】
H=244.8[C]+29.1[Si]+58.7[Mn]+55.7・・・(2)
230≦H≦260・・・(3)
上記Hの値を230以上にすることにより、転動部品の回転曲げ疲労限度が350MPa以上とすることができる。また、上記Hの値を260以下にすることにより、非調質状態での硬度が高すぎることがなくなり、良好な加工性を確保することができる。
【0019】
本発明の転がり軸受は、内周に転走面を有する外方部材と、この転走面の各々に対向する転走面を有する内方部材と、外方部材と内方部材との間に介在する複数の転動体とを備え、外方部材、内方部材、および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が上記の転動部品によって構成される。
【0020】
これにより、良好な鍛造性を維持しつつ、良好な加工性と強度とのバランスを持った転がり軸受とすることができる。
【0021】
本発明の転がり軸受において好ましくは、外方部材または内方部材のいずれか一方は車輪に取り付けるためのフランジ部を有している。
【0022】
フランジ部を有している転動部品は、フランジ部を有していない転動部品に比べて形状が複雑であるため、より高い鍛造性および加工性が要求される。このため、本発明の転動部品が好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の転動部品およびこれを用いた転がり軸受によれば、良好な鍛造性を維持しつつ良好な加工性と強度とのバランスをとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における車輪軸受装置を示す概略断面図である。図2は、図1の要部拡大図である。
【0025】
図1および図2を参照して、本実施の形態における転がり軸受としての車輪軸受装置10は、ホイール28およびタイヤ29などの回転側部材を、外方部材4などの固定側部材に対して回転可能に支持するものである。この車輪軸受装置10は、フランジ付き転がり軸受であり、外方部材4と、内方部材1と、転動体としての複数の円すいころ5a、5bとを備えている。外方部材4は内方部材1の周囲に配置されている。円すいころ5a、5bは内方部材1と外方部材4との間に介在している。本実施の形態においては、外方部材4、内方部材1、および円すいころ5a、5bが転動部材に相当する。
【0026】
外方部材4は、内周面に複列の転走面4a、4bを有している。本実施の形態においては、複列の転走面4a、4bは、外方部材4の内周面に直接形成されている。
【0027】
内方部材1は、ハブ輪2と内輪3a、3bとからなる。ハブ輪2の外周面の中央部には内輪3aがハブ輪2に外嵌固定されている。ハブ輪2の外周面の内端側(図2中右側)には内輪3bがハブ輪2に外嵌固定されている。これにより、ハブ輪2と内輪3a、3bとは一体化して内方部材1を形成している。内方部材1は、複列の転走面4a、4bの各々に対向する複列の転走面7a、7bを有している。転走面4a、4bおよび転走面7a、7bにより形成される転走面はテーパ状である。本実施の形態においては、複列の転走面7a、7bは、内輪3a、3bの外周面に形成されている。
【0028】
第1列(図2中中央部)の円すいころ5aは、第1の保持器17aにより転動自在に保持されて、外方部材4と内輪3aとの間に固定されている。第2列(図2中右側)の円すいころ5bは、第2の保持器17bにより転動自在に保持されて、外方部材4と内輪3bとの間に固定されている。この構成により、内方部材1は外方部材4に対して回転自在に保持されている。
【0029】
ハブ輪2の中心部にはスプライン孔15が設けられていて、等速ジョイントのステム軸27がスプライン孔15に係合可能となっている。また、ハブ輪2の軸方向外側(図2中左側)には、フランジ部としての車輪取付けフランジ8が設けられている。車輪取付けフランジ8に嵌合されたハブボルト20によって、ホイール28およびタイヤ29がハブ輪2に回転支持されている。また、外方部材4は外周面の軸方向中央部に車体取付けフランジ9を有している。車体取付けフランジ9により、外方部材4はナックルなどの懸架装置(図示なし)に固定されている。
【0030】
なお、外方部材4の内周面の両端部とハブ輪2の外周面の中央部および内端部との間には、シールリング19a、19bが設置されている。これにより、円すいころ5a、5bが保持されている空間と外部とが遮断されている。
【0031】
本実施の形態の転動部品は、合金元素としてC:0.5質量%以上0.7質量%以下、Si:0より大きく1.2質量%以下、Mn:0.2質量%以上1.2質量%以下、Cu:0より大きく0.3質量%以下、Ni:0より大きく0.20質量%以下を含有し、かつCuおよびNiの各々の含有量が上記(1)式を満たし、かつ残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼によって形成されており、好ましくは、C、Si、およびMnの各々の含有量から上記(2)式で求まるHが上記(3)式を満たす鋼によって形成されている。
【0032】
本実施の形態の転動部品によれば、Cuが無害化されて粒界析出しなくなり、C、Si、およびMnの添加量を適正に調整することにより、非調質状態で良好な鍛造性を維持しつつ良好な加工性と強度とのバランスをとることができる。
【0033】
また、本実施の形態の車輪軸受装置10は、内周に転走面4a、4bを有する外方部材4と、この転走面4a、4bの各々に対向する転走面7a、7bを有する内方部材1と、外方部材4と内方部材1との間に介在する複数の円すいころ5a、5bとを備えている。外方部材4、内方部材1、および円すいころ5a、5bが上記の転動部品によって構成されている。これにより、良好な鍛造性を維持しつつ、転がり軸受の良好な加工性と強度とのバランスをとることができる。
【0034】
さらに、内方部材1は、車輪に取り付けるための車体取付けフランジ9を有しているため、形状が複雑である。このため、より高い鍛造性および加工性が要求される。したがって、上記転動部品が好適である。
【0035】
なお、本実施の形態においては、内方部材1に車輪取付けフランジ8を設けた車輪軸受装置10の場合について示したが、本発明は、たとえば図3のように、外方部材4に車輪取付けフランジ8を設けた車輪軸受装置10にも適応可能である。なお、図3においては、転導体として円すいころの代わりに剛球5c,5dを用いている。図3に示されるその他の構造については、同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
また、本実施の形態においては、第1列の円すいころ5aの各々によって構成される転がり軸受と、第2列の円すいころ5bの各々によって構成される転がり軸受とによって車輪軸受装置10が形成されている場合について示した。しかし、本発明の転がり軸受は、このような場合に限定されるものではなく、少なくとも1列の転がり軸受であればよい。
【0037】
また、本実施の形態においては、転がり軸受がフランジ付き転がり軸受である場合について示したが、本発明はフランジ付き転がり軸受に限定されるものではなく、転がり軸受全般に適用することができる。
【0038】
また、本実施の形態においては、外方部材4、内方部材1、および円すいころ5a、5bの全てに上記転動部品が用いられる場合について示したが、本発明の転がり軸受はこのような場合に限定されるものではなく、外方部材、内方部材、および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材に上記転動部品が用いられればよい。
【実施例1】
【0039】
本実施例では、本発明の転動部品の鍛造性について調べた。始めに、S53Cをベースにして、Cuの含有量とNiの含有量との割合を変化させて、試料A1〜A10および試料B1〜B10となる鋼をそれぞれ製造した。また、いずれの鋼においても、C、Si、およびMnの含有量を、それぞれC:0.5質量%以上0.7質量%以下、Si:0より大きく1.2質量%以下、Mn:0.2質量%以上1.2質量%以下とした。そしてこれらの鋼を用いて、直径20mm、長さ30mmの円筒形状の試験片の各々を成形した。その後、非調質状態の硬度を模擬するため、試験片の各々に1200℃で1時間の熱処理を施した後空冷し、本発明品である試料A1〜A10の各々と、比較品であるおよび試料B1〜B10の各々とを得た。
【0040】
次に、試料A1〜A10および試料B1〜B10の各々に対して、端面を拘束した状態で50%の据え込み率で据え込み変形を与えた。そして、据え込み変形によって導入された欠陥量を、水素をトレーサとして調べた。具体的には、据え込み変形前と据え込み変形後とにおいて、試験片の所定の採取位置から一辺が4mmの立方体の試料を切り出して、この立方体試料に対して10mA/cm2の電流密度で20時間の間、陰極電界水素チャージを施した。水素チャージの電解液には、チオシアン酸アンモニウムを3g/L添加した3%食塩水を用いた。水素チャージが終了してから10分後、3℃/minで昇温して300℃になるまでに放出された水素量をガスクロマトグラフによって測定した。その結果を表1および図4に示す。なお、表1におけるΔHdは、据え込み変形後の試験片から放出された水素量から据え込み変形前の試験片から放出された水素量を差し引いた値である。ΔHdが大きいほど変形によって欠陥が導入されやすくなっている。
【0041】
【表1】


【0042】
表1および図4を参照して、[Cu]/[Ni]の値が2.00以下である試料A1〜A10では、ΔHdが0.00〜0.01wt−ppmと低い値となっている。一方、[Cu]/[Ni]の値が2.00を超える試料B1〜B10では、ΔHdが0.01〜0.12wt−ppmと高い値になっている。この結果から、本発明の転動部品は良好な鍛造性を有していることが分かる。
【実施例2】
【0043】
鍛造後に空冷されたままの非調質状態での硬度が低すぎると、十分な疲労強度が得られない。今後、転動部品の使用条件が過酷になり、非焼入硬化部にも大きな負荷が繰り返し作用する場合を考えると、転動部品の回転曲げ疲労限度(107回疲労強度)が350MPa以上であることが望ましい。ここで、従来から、回転曲げ疲労限度σwb(MPa)と硬度H(HV)との間にσwb=1.54×Hなる関係式が成り立つことが知られている。この関係式に従えば、非調質状態の硬度は230HV以上必要ということになる。一方、非調質状態での硬度が高すぎると、その後に複雑な切削加工や穴あけを行なう場合、良好な加工性が得られない。具体的には、260HV以下であることが望ましい。
【0044】
そこで、本実施例では、230HV≦H≦260HVの硬度Hを有する鋼が満たすべき条件を調べた。始めに、C、Si、およびMnの各々の含有量を変化させて、試料C1〜C9および試料D1〜D7となる鋼をそれぞれ製造した。また、いずれの鋼においても、CuおよびNiの含有量をそれぞれ0.09質量%以上0.11質量%以下とし、[Cu]/[Ni]≦2を満たすようにした。そしてこれらの鋼を用いて、直径30mm、長さ30mmの円筒形状の試験片の各々を成形した。その後、非調質状態の硬度を模擬するため、試験片の各々に1200℃で1時間の熱処理を施した後空冷し、本発明品である試料C1〜C9および試料D1〜D7の各々を得た。
【0045】
次に、試料C1〜C9および試料D1〜D7の各々について、試料の中心付近の硬度H(実測硬度)を測定した。その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】


【0047】
表2を参照して、C、Si、およびMnの各々の含有量の違いによって、硬度Hが変化した。試料C1〜C9の各々の硬度Hは230HV以上260HV以下となった一方で、試料D1〜D7の各々の硬度Hはこの範囲外であった。
【0048】
続いて、硬度Hを目的変量とし、C、Si、およびMnの含有量を従属変量として重回帰分析を行なった。その結果、上記(2)式が得られた。試料C1〜C9および試料D1〜D7の各々のC、Si、およびMnの含有量を上記(2)式にそれぞれ代入して得られた硬度Hest(予測硬度)を表2に示す。また、硬度H(実測硬度)と硬度Hest(予測硬度)との関係を図5に示す。表2および図5を参照して、硬度H(実測硬度)と硬度Hest(予測硬度)との間には直線の相関関係があり、ほぼ同一の値となっている。このため、上記(2)式を用いて、C、Si、およびMnの含有量に基づいて精度よく鍛造後の硬度が予測できる。したがって、本実施例のC、Si、およびMnの含有量に限らず、上記(2)式により算出された硬度Hest(予測硬度)が230HV以上260HV以下となるようなC、Si、およびMnの含有量の鋼であればよいといえる。
【0049】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、炭素鋼によって形成された転動部品およびこれを用いたフランジ付き転がり軸受に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態における車輪軸受装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の一実施の形態における車輪軸受装置の変形例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1における[Cu]/[Ni]とΔHdとの関係を示す図である。
【図5】硬度H(実測硬度)と硬度Hest(予測硬度)との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 内方部材、2 ハブ輪、3a,3b 内輪、4 外方部材、4a,4b,7a,7b 転走面、5a,5b 円すいころ、5c,5d 鋼球、8 車輪取付けフランジ、9 車体取付けフランジ、10 車輪軸受装置、15 スプライン孔、17a,17b 保持器、19a,19b シールリング、20 ハブボルト、27 ステム軸、28 ホイール、29 タイヤ。




 

 


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