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転がり軸受用保持器および転がり軸受 - NTN株式会社
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発明の名称 転がり軸受用保持器および転がり軸受
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−24171(P2007−24171A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−206740(P2005−206740)
出願日 平成17年7月15日(2005.7.15)
代理人 【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
発明者 筒井 英之 / 平田 正和
要約 課題

射出成形にて多孔質樹脂成形体を得ることが可能であり、爪部に亀裂などの欠陥がなく、ポケット部から転動面への潤滑油供給が十分である転がり軸受用保持器および該保持器を用いた転がり軸受を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
射出成形後に気孔形成材を抽出して得られる多孔質樹脂成形体からなり、転がり軸受の転動体をポケット部で保持する転動体案内型の転がり軸受用保持器であって、
前記射出成形は、スライドコア形式の金型を用いてなされることを特徴とする転がり軸受用保持器。
【請求項2】
前記保持器は、前記ポケット面の少なくとも一部に球面を備えていることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受用保持器。
【請求項3】
前記多孔質樹脂成形体は、前記気孔形成材が配合された樹脂を射出成形して成形体とした後、前記気孔形成材を溶解し、かつ前記樹脂を溶解しない溶媒を用いて前記成形体から前記気孔形成材を抽出して得られる連通孔を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の転がり軸受用保持器。
【請求項4】
内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、該複数の転動体を保持する保持器とを備えた転がり軸受であって、
前記保持器が請求項1、請求項2または請求項3記載の転がり軸受用保持器であることを特徴とする転がり軸受。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質樹脂成形体からなる転がり軸受用保持器、およびこの保持器を用いた転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転がり軸受用保持器は、金属、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などからなり、特に合成樹脂を採用する場合には、射出成形可能な合成樹脂の単体か、または合成樹脂の成形材料にガラス繊維、カーボン繊維、有機繊維などを添加し強化された合成樹脂組成物が使用されてきた。また保持器材料に潤滑剤を含浸させ潤滑機能を付与した転がり軸受用保持器として、例えば、合成樹脂に繊維状油導通材と潤滑油とを混合し、その樹脂組成物を保持器形状に成形したもの(特許文献1参照)等が知られている。
【0003】
特許文献1では、合成樹脂に繊維状油導通材と潤滑油とを混合し、その樹脂組成物を保持器形状に成形することで、成形前に樹脂と潤滑油とを混合している。この場合、潤滑油は樹脂の成形温度に耐える必要があり、使用できる樹脂の種類、および潤滑油の種類、粘度、蒸気圧、分解温度が制限される。また、射出成形時にスクリューがすべるため、安定して原料を成形機内に供給するためには配合できる潤滑油量は少なく抑える必要がある。このため、転がり軸受の使用条件によっては潤滑油量が不足する場合がある。
【0004】
上記問題に対し、摺接面への潤滑油の供給性能を向上させる目的で、脱塩法により得られた多孔質樹脂を用いた転がり軸受用保持器などが開発されている。該多孔質樹脂を用いた保持器では、転動体と摺接するポケット面や軌道輪と摺接する面から潤滑油を供給し、長時間にわたって安定的に供給することができるので軸受としての寿命が長い。また、必要最小限の潤滑油を転動部に供給できるので、潤滑油の攪拌抵抗が少なく、油潤滑方式およびグリース潤滑方式に比べて極めて低い回転トルクを示すなどの特徴を有する。
上記多孔質樹脂は射出成形も可能であり、高精度を有する保持器として適応できるが、転動体案内型保持器で図2のような離型動作を行なう場合には、爪部1bが無理抜きされるため材料に十分な柔軟性が必要であり、ポリエーテルエーテルケトン樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックでは爪部1bに亀裂1cや白化が生じる場合がある。
【0005】
このような爪部の亀裂を防止する目的で、爪部を長くかつ薄くした形態の保持器が知られている(特許文献2参照)が、柔軟性の乏しい架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂や気孔形成材を高充填した材料では十分な対策とは言えない。
よってこのような場合には、爪部の無理抜きが完全に生じない形式であるスライドコア形式を採用する必要がある。スライドコア形式の金型の使用を前提としている発明として軌道輪案内型保持器が知られている(特許文献3参照)。
【0006】
図5に軌道輪案内型保持器をスライドコア金型により成形する場合として、ポケット面が円筒面であるスライドコア金型の離型動作を示す模式図を示す。図5(a)は保持器の側面図の一部を示す図であり、図5(b)は図5(a)のH−H断面およびスライドコア金型離型動作を示す図である。図5(a)において、スライドコア金型2fを矢印J方向に離型することで、保持器1の爪部1bで構成される円筒状のポケット面が形成される。
しかしながら、ポケット面が球面である転動体案内型保持器では、爪部1bが図5(b)上において湾曲するため、上記矢印J方向にはスライドコア金型を抜くことができない、または、無理抜きとなる。よって、通常の軌道輪案内型保持器用のスライドコア形式金型は、転動体案内型保持器には適用できないという問題がある。
また保持器材料として上記のような潤滑油を含浸した多孔質樹脂成形体を用いる場合には、軌道輪案内型保持器では転動体への潤滑油供給が不足し、十分な軸受特性を発揮しないことが懸念される。
【特許文献1】特開平11−166541号公報
【特許文献2】特開2001−165172号公報
【特許文献3】特開平08−114233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、射出成形にて多孔質樹脂成形体を得ることが可能であり、爪部に亀裂などの欠陥がなく、ポケット部から転動面への潤滑油供給が十分である転がり軸受用保持器および該保持器を用いた転がり軸受の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転がり軸受用保持器は、射出成形後に気孔形成材を抽出して得られる多孔質樹脂成形体からなり、転がり軸受の転動体をポケット部で保持する転動体案内型の転がり軸受用保持器であって、上記射出成形は、スライドコア形式の金型を用いてなされることを特徴とする。
上記保持器は、上記ポケット面の少なくとも一部に球面を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記多孔質樹脂成形体は、上記気孔形成材が配合された樹脂を射出成形して成形体とした後、上記気孔形成材を溶解し、かつ上記樹脂を溶解しない溶媒を用いて上記成形体から上記気孔形成材を抽出して得られる連通孔を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、該複数の転動体を保持する保持器とを備えた転がり軸受であって、この保持器が上記記載の保持器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転がり軸受用保持器は、射出成形後に気孔形成材を抽出して得られる多孔質樹脂成形体からなる転がり軸受用樹脂保持器であって、上記保持器は、転がり軸受の転動体をポケット部で保持する転動体案内型の保持器であり、スライドコア形式の金型で成形されるので、射出成形時において気孔形成材が高充填された樹脂成形体を無理なく離型できる。この結果、無理抜き時の問題である、保持器爪部の割れや白化が発生しない。また、転動体案内型保持器とすることで、転動体への潤滑油供給が安定的に行なわれ、低トルクで長寿命の優れた軸受が得られる。
【0012】
本発明の転がり軸受は、上記の転がり軸受用保持器を用いるので、転動体の転走面などに安定的に潤滑油が供給され、長寿命であり、回転に要するトルクが小さく、かつトルクの変動が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の転がり軸受用保持器は、転がり軸受の転動体をポケット部で保持する冠型の保持器であり、通常の射出成形金型からの離型時には、無理抜き部位を含むものである。
本発明の転がり軸受用保持器を、スライドコア形式の金型を用いて成形した一構造例として図1に示す。図1は気孔形成材を含む樹脂を、図4に示すようなスライドコア金型を用いて射出成形した冠型保持器の部分拡大斜視図である。転がり軸受用保持器1は、環状の保持器1本体上面に周方向に一定ピッチをおいて対向一対の保持器爪1b、1bを複数個形成し、その対向する各保持器爪1b、1bを相互に接近する方向に湾曲させるとともに、その保持器爪1b、1b間に転動体であるボールを保持するポケット部1aを形成したものである。なお、保持器1本体上面とは、図1に示すように保持器の内外径面とは異なる端面である。
ポケット部1aは、転動体であるボールを保持できるように爪1bで構成される球形状の一部であり、爪1bの端部で構成されるポケット部1aの上面開口部(ポケット開口部)は、円形状の一部である。
【0014】
本発明の転がり軸受用保持器は、気孔形成材を配合した樹脂をスライドコア形式の金型を用いて射出成形し、保持器爪部の無理抜きをなくし、かつ、転動体案内型保持器となるように、ポケット面の少なくとも一部に球面やテーパ面を有する。これによって、爪部の欠陥はなくなり、また潤滑油を含浸させた場合には、転動体案内型であるので保持器より転動体に直接的に潤滑油を供給でき、転動体との接触面積も大きいので十分な潤滑油の供給量となり、優れた軸受特性を示す。
【0015】
上記スライドコア形式は、金型コア部にスライドさせる機構を設置し、爪部が無理抜きとならないように機能する形式であれば、特に限定されるものではなく、例えば図3、図4に示すようなスライドコア形式が採用できる。
図3はポケット部が円筒面と球面との組合せであるスライドコア金型の離型動作を示す模式図である。図3(a)は保持器の側面図の一部を示す図であり、図3(b)は図3(a)におけるB−B断面およびスライドコア金型離型動作を示す図である。図3(b)においてスライドコア金型2aを矢印C方向に離型すると、保持器ポケット球状底面1dと、スライドコア金型保持器球状底面部2bとの離型面は矢印C方向に向かって応力のかからない球面形状となっているので、無理抜き動作を回避することができる。
図4はポケット面が球面であるスライドコア金型の離型動作を示す模式図である。図4(a)は保持器の側面図の一部およびスライドコア金型離型動作を示す図であり、図4(b)は図4(a)のD−D断面を示す図であり、図4(c)は図4(b)のスライドコア金型2cを 90 度回転した状態を示す図である。図4(a)のスライドコア金型2cの保持器球面部2dは、90 度回転すると、図4(c)のスライドコア金型2cの保持器球面部2eの形状となり、このときの金型幅Fは開口部幅Eより小さくなるように設定されている。図4(a)においてスライドコア金型2cの金型幅はポケット部開口幅Eより大きいのでこのままG方向に離型すると、無理抜きとなる。よって、離型する前に、図4(c)に示すようにスライドコア金型2cを 90 度回転させ、ポケット部開口幅Eより小さいスライドコア金型2cの金型幅Fとした上でG方向に離型することにより無理抜き動作を回避することができる。
【0016】
転動体案内型保持器は、軸受内で保持器ポケット面が転動体と摺接し、保持器の位置を転動体の位置が決定するような形態の保持器であれば特に限定するものではないが、ポケット面は少なくとも一部に球面が転動体に案内される形態が最も好ましい。また、転動体に案内されるポケット面がテーパ面であっても良好な特性を示す。
【0017】
本発明の転がり軸受用保持器は、気孔形成材が配合された樹脂を射出成形した後、成形体に含まれている気孔形成材を抽出して得られる。例えば、射出成形温度X℃の樹脂Aに、このX℃より高い融点Y℃を有する水溶性粉末Bを配合して、X℃で射出成形して、金型より成形体を取り出す。得られた成形体より水溶性粉末Bを水で抽出して多孔質樹脂成形体である転がり軸受用保持器が得られる。
【0018】
本発明の保持器に用いる樹脂材料は、射出成形可能であり、保持器および軸受材料として十分な耐熱性、耐油性および機械的強度などを有するものであればよい。
例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、水架橋ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを例示できる。また、上記合成樹脂から選ばれた2種以上の材料の混合物、すなわちポリマーアロイなどを例示できる。
【0019】
気孔形成材としては、樹脂の成形温度よりも高い融点を有し、該樹脂に配合されて成形体とされた後、その樹脂を溶解しない溶媒を用いて成形体から溶解されて抽出できる物質であれば使用できる。
気孔形成材は洗浄抽出工程が容易となる水溶性物質であることが好ましい。また、アルカリ性物質、好ましくは防錆剤として使用できる弱アルカリ性物質が好ましい。弱アルカリ塩としては、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、無機アルカリ金属塩、無機アルカリ土類金属塩などが挙げられる。未抽出分が脱落したときも、比較的軟らかく、転動面やすべり面を損傷し難いことから、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩を用いることが好ましい。なお、これらの金属塩は1種または2種以上混合して用いてもよい。また、洗浄用溶媒として安価な水を使用することができ、気孔形成時における廃液処理などが容易となることから水溶性の弱アルカリ塩を使用することが好ましい。
また、成形時における気孔形成材の融解を防止するため、気孔形成材は使用する樹脂の成形温度よりも高い融点の物質を使用することが好ましい。
【0020】
本発明に好適に用いることができる水溶性の有機アルカリ金属塩としては、安息香酸ナトリウム(融点 430℃)、酢酸ナトリウム(融点 320℃)またはセバシン酸ナトリウム(融点 340℃)、コハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。融点が高く、多種の樹脂に対応でき、かつ水溶性が高いという理由から、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはセバシン酸ナトリウムが特に好ましい。
無機アルカリ金属塩としては、例えば、炭酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0021】
気孔形成材は平均粒径 1〜500 μmに管理することが好ましい。気孔形成材の配合割合は、樹脂粉末、気孔形成材および充填材などの他の材料を含めた全量に対して、30 体積%〜90 体積%、好ましくは 40 体積%〜90 体積%とする。30 体積%以下では多孔体の気孔が連通孔になり難く、90 体積%以上では所望の機械的強度が得られない。
また配合時において、気孔形成材の抽出に使用する溶媒に不溶な充填材を配合してもよい。例えば、該溶媒が水である場合には、多孔体の機械的強度を向上させるなどの目的で、ガラス繊維、炭素繊維などを配合できる。
【0022】
樹脂材料と気孔形成材の混合法は特に限定されるものではなくドライブレンド、溶融混練など樹脂の混合に一般に使用する混練法が適用できる。
また、気孔形成材を液体溶媒中に溶解させて透明溶液とした後、この溶液に樹脂粉末を分散混合させて、その後、この溶媒を除去する方法を用いることができる。分散混合させる方法としては、液中混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、ボールミル、超音波分散機、ホモジナイザー、ジューサーミキサー、ヘンシェルミキサーなどが例示できる。また、分散液の分離を抑えるために少量の界面活性剤を添加することも有効である。なお、混合時においては、混合により気孔形成材が完全に溶解するよう溶媒量を確保する。溶媒を除去する方法としては、加熱蒸発、真空蒸発、窒素ガスによるバブリング、透析、凍結乾燥などの方法を用いることができる。手法が容易で、設備が安価であることから加熱蒸発により液体溶媒の除去を行なうことが好ましい。
樹脂に気孔成形材を配合した混合物を、射出成形により保持器形状に成形する。射出成形方法および射出成形機等は任意の公知のものを利用できる。
【0023】
得られた成形体からの気孔形成材の抽出は、上記気孔形成材を溶解し、かつ上記樹脂を溶解しない溶媒で成形体を洗浄することにより行なう。
上記溶媒としては、例えば、水、および水と相溶しうる溶媒としてアルコール系、エステル系、ケトン系溶媒などを用いることができる。これらの中で、樹脂および気孔形成材の種類によって上記条件に従い適宜選択される。また、これらの溶媒は1種または2種以上を混合し使用してもよい。廃液処理などが容易、安価などの利点から水を用いることが好ましい。
該抽出処理を行なうことにより、気孔形成材が充填されていた部分が溶解され、該溶解部分に気孔が形成された多孔質樹脂成形体が得られる。
【0024】
本発明の転がり軸受用保持器は、得られた連通孔を有する成形体に潤滑剤を含浸して使用する。潤滑剤としては、潤滑油が好ましく、例えば、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の鉱油、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、一般に使用されている潤滑油であれば特に限定することなく使用できる。
含浸方法としては、多孔質樹脂成形体の内部まで含浸できる方法であればよい。潤滑油が満たされた含浸槽に成形体を浸漬した後、減圧して含浸する減圧含浸が好ましい。また、高粘度のシリコーン油などを用いる場合、加圧含浸することができる。これらを組み合わせた加圧減圧含浸としてもよい。
上記潤滑油には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、極圧剤、酸化防止剤、防錆剤、流動点降下剤、無灰系分散剤、金属系清浄剤、界面活性剤、摩耗調整剤などを配合できる。酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、イオウ系化合物などを単独または、混合して使用できる。
【0025】
本発明の保持器を用いた転がり軸受の一例を図6に示す。図6はグリース封入深溝玉軸受の断面図である。
グリース封入深溝玉軸受3は、外周面に転走面4aを有する内輪4と内周面に転走面5aを有する外輪5とが同心に配置され、内輪の転走面4aと外輪の転走面5aとの間に複数個の転動体6が介在して配置される。この複数個の転動体6を保持する保持器1および外輪5等に固定されるシール部材7とにより構成される。転動体6周囲に潤滑グリース8が封入される。
【0026】
この軸受は、保持器として本発明の転がり軸受用保持器を用い、潤滑油を含浸させた保持器を組み込むことによって、潤滑グリースを封入しなくても使用することができる。低トルク、トルクの安定性が優先される用途では潤滑グリースを封入しないで、保持器に含まれる潤滑油のみで運転することができる。
また、潤滑グリースを封入する場合においても、通常封入される潤滑グリース封入量よりも少量で運転できる。
潤滑グリースを封入する場合、その潤滑グリースの基油は保持器の多孔質樹脂成形体に含浸されている潤滑油と、転がり軸受作動環境条件において、相互溶解する油を用いる。相互溶解する油としては、同種の化学構造を有する油であることが好ましく、より好ましくは該潤滑油と該基油とは同一種類の油で、かつ略同一の粘度を有する油を用いることが好ましい。この潤滑グリースと併用することにより、潤滑グリースで消費される基油が保持器に含浸された潤滑油から供給されるので、潤滑グリース封入量を減らすことができる。潤滑グリース封入量は軸受の全空間容積の 20%以下、好ましくは 5〜20%である。グリース封入量が 20%をこえるとグリース漏れやトルク変動が生じやすくなる場合がある。
【0027】
潤滑グリースを構成する基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン油、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、一般に潤滑グリースの基油として使用されている油であれば特に限定することなく使用できる。
また、増ちょう剤としては、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素樹脂粉末が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または2種類以上組み合せて用いてもよい。
また、潤滑グリースに添加される公知の添加剤、例えば極圧剤、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合せて添加できる。
【0028】
本発明の保持器を組み込んだ上記構成の転がり軸受は、回転に要するトルクが小さく、かつトルクの変動が少ない。このため、長期間にわたって良好な潤滑が行なわれるため、優れた耐久性を示す。また、潤滑グリースを封入する場合でも、その潤滑グリース封入量を通常よりも少なくできるため、潤滑グリース漏れの少ない転がり軸受が得られる。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
以下に示す組成の多孔質樹脂材料および軸受寿命試験を、以下に示す実施例1および比較例1に供した。
[多孔質樹脂材料の組成]
PEEK(50 体積%):ビクトレックス社製150P
炭素繊維(10 体積%):東邦テナックス社製HTAC6S
三リン酸ナトリウム(40 体積%):太平化学産業社製トリポリリン酸ソーダ
[軸受寿命試験]
試験用の保持器を組み込んだ転がり軸受(608オープン)を作製し、真空度 1〜10×10-5Pa 、スラスト荷重 981 N の下で、軸受温度 150℃、回転速度 500 rpm で回転させ、始動直後のトルク値が5倍に上昇するまでの時間( h )を測定した。結果を表1に示す。
この異常上昇するまでの時間が 50 時間以上である軸受は寿命試験に優れていると評価して「○」を、50時間未満は「×」を表1に併記した。
【0030】
実施例1
上記多孔質樹脂材料をスライドコア形式の金型で射出成形し、図3に示す保持器形状とした。ポケット面は円すい面と球面との組合せであり、球面が転動体に案内される転動体案内型保持器である。この保持器を 80℃のイオン交換水に 100 時間浸漬し、気孔形成材を抽出し、 200℃にて 3 時間乾燥した。次にこの保持器を真空( 0.1 気圧)雰囲気で、150℃に加熱したシクロペンタン油(NYE LUBRICANTS社製 NYE SYNTHETIC OIL 2001A)に 100 時間浸漬し、すべての気孔に油を含浸させ軸受寿命試験用保持器を得た。この保持器(鋼球径 4 mm、保持器ポケット径 4.2 mm )を用いて転がり軸受(608オープン)を 2 個作製し、上記軸受寿命試験を行なった。
【0031】
比較例1
上記多孔質樹脂材料をスライドコア形式の金型で射出成形し、図5に示す保持器形状とした。ポケット面は円筒面である内輪案内型保持器である。この保持器を 80℃のイオン交換水に 100 時間浸漬し、気孔形成材を抽出し、 200℃にて 3 時間乾燥した。次にこの保持器を真空( 0.1 気圧)雰囲気で、150℃に加熱したシクロペンタン油(NYE LUBRICANTS社製 NYE SYNTHETIC OIL 2001A)に 100 時間浸漬し、すべての気孔に油を含浸させ軸受寿命試験用保持器を得た。この保持器(鋼球径 4 mm、保持器ポケット径 4.2 mm )を用いて転がり軸受(608オープン)を 2 個作製し、上記軸受寿命試験を行なった。
【0032】
【表1】


表1に示すように、実施例の転動体案内型保持器では真空、高温下での軸受寿命試験の基準をクリアできたが、比較例の内輪案内型保持器では基準をクリアできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の転がり軸受用保持器は、転動体へ潤滑油を安定して供給することができるので、この保持器を用いた転がり軸受は、低トルクでその変動幅も小さい優れた耐久性を示す。このため、多用途の基幹部品として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】冠型保持器の部分拡大斜視図である。
【図2】転動体案内型保持器の離型動作を示す図である。
【図3】ポケット部が円筒面と球面との組合せであるスライドコア金型の離型動作を示す模式図である。
【図4】ポケット面が球面であるスライドコア金型の離型動作を示す模式図である。
【図5】ポケット面が円筒面であるスライドコア金型の離型動作を示す模式図である。
【図6】グリース封入深溝玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 冠型保持器
1a ポケット
1b 保持器爪
1c 保持器亀裂部
1d 保持器球状底面
2 コア金型
2a スライドコア金型
2b スライドコア金型保持器球状底面部
2c スライドコア金型
2d スライドコア金型保持器球状底面部
2e スライドコア金型保持器球状底面部(2dを 90 度回転させた底面部)
2f スライドコア金型
3 グリース封入深溝玉軸受
4 内輪
4a 転走面
5 外輪
5a 転走面
6 転動体
7 シール部材
8 潤滑グリース




 

 


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