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発明の名称 動圧軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−24146(P2007−24146A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205794(P2005−205794)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾
発明者 古森 功 / 日比 建治 / 山本 康裕
要約 課題
高い強度を備えた軸部材を有する動圧軸受装置を低コストに提供する。

解決手段
軸素材23は、樹脂よりも高強度の材料で形成された軸部分23aと、当該軸部分23aの外径側に張り出した突出部分23bとを一体に備える。軸部材2は、前記軸素材23と、前記軸素材23の突出部分23bの少なくとも一方の端面を被覆し、スラスト軸受隙間に面する樹脂部24とを備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
軸受部材と、軸受部材の内周に挿入される軸部を備えた軸部材と、ラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部とを備える動圧軸受装置において、
軸部材が、軸部を構成する軸部分および当該軸部分の外径側に張り出した突出部分を一体形成してなる軸素材と、突出部分の少なくとも一方の端面を被覆し、スラスト軸受隙間に面した樹脂部とを備えることを特徴とする動圧軸受装置。
【請求項2】
樹脂部が、さらに軸部分の外周面を被覆している請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項3】
樹脂部が、ラジアル軸受隙間およびスラスト軸受隙間の一方又は双方に流体動圧を発生させるための動圧発生部を有することを特徴とする請求項1又は2何れか記載の動圧軸受装置。
【請求項4】
動圧発生部が、樹脂部の収縮量の差で形成されていることを特徴とする請求項3記載の動圧軸受装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の動圧軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを有するモータ。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は動圧軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動圧軸受装置は、軸受隙間に生じた流体(潤滑流体)の動圧作用で軸部材を非接触支持する軸受装置である。この動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を備えるものであり、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等におけるディスクドライブ用のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)用のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは軸流ファンなどの小型モータに使用する軸受として好適である。
【0003】
上記の動圧軸受装置は、ラジアル軸受部を動圧軸受で構成するとともに、スラスト軸受部をピボット軸受で構成する接触タイプと、ラジアル軸受部とスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する非接触タイプとに大別され、個々の用途に応じて適宜使い分けられている。
【0004】
このうち、非接触タイプの動圧軸受装置の一例として、軸部材を軸部とフランジ部とで構成したものが知られている。例えば、特開2003−314537号公報には、軸部を金属材料で、フランジ部を樹脂材料でそれぞれ形成したものが開示されている(特許文献1参照)。また、特開2001−41246号公報には、軸部とフランジ部を共に金属材料で形成したものが開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−314537号公報
【特許文献2】特開2001−41246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された動圧軸受装置では、金属製の軸部をアウトサート部品として樹脂の射出成形でフランジ部を形成することで軸部材を形成している。しかしながら、このようなアウトサート成形では、金属製の軸部と樹脂製のフランジ部の付け根は強度的に弱くなり、特に軸部に軸方向への荷重が作用した場合には、軸部とフランジ部の付け根部分からせん断破壊を生じる恐れがある。
【0006】
一方、上記特許文献2に開示された動圧軸受装置では、軸部とフランジ部とを別体に金属材料で形成し、両者を溶接固定することで軸部材が形成されている。溶接は、例えば接着や圧入と比較して両者の連結強度を高めることができるが、軸部材の強度は当該溶接強度に依存するため強度のバラツキが発生する恐れがあることに加え、加工コストが高騰する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、高強度を有する軸部材を備えた動圧軸受装置を、低コストに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る動圧軸受装置は、軸受部材と、軸受部材の内周に挿入される軸部を備えた軸部材と、ラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部とを備えるものであって、軸部材が、軸部を構成する軸部分および当該軸部分の外径側に張り出した突出部分を一体形成してなる軸素材と、突出部分の少なくとも一方の端面を被覆し、スラスト軸受隙間に面した樹脂部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明の構成によれば、軸素材の突出部分とこれを被覆する樹脂部とでスラスト軸受隙間に面するフランジ部が形成される。突出部分は軸部を構成する軸部分と一体に形成されているから、軸部とフランジ部の連結強度を飛躍的に向上させることができ、軸方向荷重に対するせん断強度の向上が図られる。また、従来のように別途溶接を行う必要がないため、工程数を減じて製造コストを低減することができることに加え、連結部分での強度のバラツキの発生を防止することができる。
【0010】
フランジ部は、例えば上記軸素材を金型内に固定した状態で必要箇所に樹脂材料を射出することにより形成される(インサート成形あるいはアウトサート成形)。フランジ部の成形精度、例えばフランジ部両端面の平面度やフランジ部と軸部の間の直角度は、成形型の型精度に依存することとなる。従って、型精度が確保されていれば、少なくとも軸素材の突出部分の精度は樹脂部の成形精度に悪影響を及ぼさない範囲でラフなものにすることができる。射出成形でフランジ部の平面度や直角度が高精度化されることにより、フランジ部の端面と、この端面と対向する面との間に形成されるスラスト軸受部における軸受性能を高精度に維持することができる。また、フランジ部は樹脂で被覆されているので、動圧軸受装置の起動・停止時や運転中におけるスラスト方向での摺動特性を向上し、トルクを低減することができる。
【0011】
軸素材の突出部分だけでなく、軸部分の外周面も樹脂部で被覆することができる。この構成であれば、突出部分だけでなく、軸部分の精度を樹脂部の成形精度に悪影響を及ぼさない範囲でラフなものにすることができる。また、射出成形により、上記スラスト軸受部のみならず、ラジアル軸受部における軸受性能も高精度に維持することができる。さらに、ラジアル方向での摺動特性も向上させることができるので、トルクをより一層低減することができる。
【0012】
樹脂部のスラスト軸受隙間に面する部分、および樹脂部のラジアル軸受隙間に面する部分の一方または双方には、各軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部を形成するのが望ましい。この場合、動圧発生部は、樹脂の射出成形と同時に形成することができる。従って、別途動圧発生部を形成する工程を省略し、動圧軸受装置の更なる低コスト化を図ることができる。
【0013】
ところで、射出成形後の樹脂部が固化する際には樹脂の収縮が生じる。収縮は、樹脂部の肉厚に応じて変化するので、樹脂部の肉厚を一定方向(例えば円周方向)で不均一化すれば、樹脂部の収縮量をコントロールすることができ、この収縮量の差(ヒケ)からラジアル軸受部やスラスト軸受部の動圧発生部を形成することが可能となる。例えば軸素材のうち、軸部分の外周面を非真円形状とし、これに対向する金型成形面をこれと異なる形状(例えば真円形状)にして射出成形すれば、樹脂部の固化後は、収縮量の相違により、樹脂部の外周面が多円弧面等の非真円形状となるので、これをラジアル軸受部の動圧発生部として利用することが可能となる。また、軸素材のうち、突出部分の端面形状を凹凸形状とし、これに対向する金型成形面を凹凸のない平坦形状としても、同様に収縮量の相違から樹脂部の端面がステップ面(あるいは波状面)等の凹凸面となるので、これをスラスト軸受部の動圧発生部として利用することが可能となる。
【0014】
以上の構成を有する動圧軸受装置は、ロータマグネットとステータコイルとを有するモータ、例えばHDD等のディスク装置用のスピンドルモータに好ましく使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上から明らかなように、本発明によれば、高い強度を有する軸部材を備えた動圧軸受装置を低コストに提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図2は、本発明にかかる動圧軸受装置(流体動圧軸受装置)1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、動圧軸受装置1と、動圧軸受装置1の軸部材2に取り付けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたスタータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット6とを備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取り付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスクDを一枚または複数枚保持する。また、ブラケット6の内周には動圧軸受装置1のハウジング7が取り付けられ、これにより動圧軸受装置1がブラケット6に固定される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、それに伴ってディスクハブ3、軸部材2が一体となって回転する。
【0018】
図3は、上記スピンドルモータで使用される動圧軸受装置1の一例を示す拡大断面図である。なお、本図示例において軸受部材は、軸受スリーブ8と、当該軸受スリーブ8とは別体のハウジング7とで構成されている。動圧軸受装置1は、一端に開口部7aを有するハウジング7と、ハウジング7の内周に固定された円筒状の軸受スリーブ8と、軸部21およびフランジ部22からなる軸部材2と、ハウジング7の開口部7aに固定されたシール部材9とを主要な構成部材として具備する。なお、以下では、説明の便宜上、シール部材9によってシールされる側を上側、その軸方向反対側を下側として説明を進める。
【0019】
ハウジング7は、例えばステンレス鋼や黄銅等の金属材料あるいは樹脂材料で形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの下端側開口を封口する底部7cとを別体構造として備えている。本実施形態では、底部7cの上側端面7c1は、動圧溝等のない平坦な平滑面として形成されている。なお、ハウジング7の側部7bと底部7cとは、金属材料あるいは樹脂材料で一体に形成することもできる。
【0020】
軸受スリーブ8は、円筒状に形成され、ハウジング7の内周面に固定される。軸受スリーブ8は、例えば焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする焼結金属の多孔質体、あるいは黄銅等の軟質金属で形成される。本実施形態において、軸受スリーブ8の内周面8aは、動圧溝等のない平滑な円筒面として形成されている。また軸受スリーブ8の下側端面8cも、動圧溝等のない平滑な平坦面として形成されている。
【0021】
ハウジング7の上端開口部7aには、金属材料あるいは樹脂材料で形成されたシール部材9が圧入、接着等の手段で固定されている。この実施形態でシール部材9は環状をなし、ハウジング7とは別体に形成されている。シール部材9の内周面9aは、軸部21のテーパ面21bと所定容積のシール空間Sを介して対向する。軸部21のテーパ面21bは、上方に向かうにつれ漸次縮径しており、軸部材2の回転に伴い遠心力シールとしても機能する。シール部材9で密封された動圧軸受装置1の内部空間には流体としての潤滑油が充満され、この状態では、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。なお、部品点数の削減および組立工数の削減のため、シール部材9をハウジング7と一体にすることもできる。
【0022】
軸部材2は、ステンレス鋼等からなる金属製の軸素材23と軸素材23を被覆する樹脂部24とからなる複合構造をなす。金属製の軸素材23は、軸部分23aと軸部分23aの外径側に張り出した突出部分23bとからなる一体構造をなし、例えば鍛造によって成形される。樹脂部24との間での回り止めを図るため、軸部分23aの外周面や突出部分23bの外周面にはローレット加工等で円周方向に凹凸を形成し、あるいはこれら外周面の断面形状を非真円形状するのが望ましい。樹脂部24は、軸素材23をインサート品(もしくはアウトサート品)として射出成形され、突出部分23bの外周面および両端面を被覆する部分と、軸部分23aの外周面を被覆する部分とで構成される。樹脂部24は、少なくとも後述するラジアル軸受面A、およびスラスト軸受面B、Cとなる領域を被覆していれば足り、必要に応じてこれ以外の領域(例えば軸部分23aの上端面も含む軸部分23aの全面)を樹脂部24で被覆してもよい。
以上の構成から、軸素材23の軸部分23aとこれを被覆する樹脂部24とで軸部材2の軸部21が構成され、軸素材23の突出部分23bと、これを被覆する樹脂部24とで円盤状のフランジ部22が構成される。
【0023】
金属製の軸素材23として、鍛造成形品を例示したが、軸素材23が一体に形成され、かつ必要な強度が得られる限り、軸素材23の加工方法は特に問わない。例えば、軸素材23を金属粉末とバインダーを用いた金属粉末射出成形(いわゆるMIM成形)、あるいは低融点金属の射出成形等の手段で型成形することもできる。また、軸素材23は、必要強度を確保できる限り金属以外の材料で形成することもでき、例えばセラミックスで形成することもできる。セラミックス製の軸素材23は、例えばセラミックス粉末とバインダーを用いたセラミックス粉末射出成形(いわゆるCIM成形)で形成することができる。この他、軸素材23を金属やセラミックスの焼結体で形成することもできる。
【0024】
樹脂部24を形成する樹脂材料としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、非晶性樹脂・結晶性樹脂の何れもが使用可能である。非晶性樹脂としては、例えば、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)等を使用することができる。また、結晶性樹脂としては、例えばLCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等が使用可能である。これら樹脂材料には、機械的強度や導電性をはじめ様々な特性を付与するため、例えばガラス繊維、炭素繊維、あるいは導電材等の充填材を適宜配合することができる。充填材は、一種だけでなく、二種以上を混合して配合することもできる。
【0025】
フランジ部22(樹脂部24)の上側端面22aおよび下側端面22bには、図1(b)に示すように、動圧発生部として例えばスパイラル状に配列された複数の動圧溝22b1が形成される(なお、図1(b)は下側端面22bに形成した動圧溝22b1を例示している)。上側端面22aの動圧溝を有する環状領域が第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面Bを構成し、下側端面22bの動圧溝を有する環状領域が第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受面Cを構成する。上側端面22a、下側端面22bに形成された何れの動圧発生部(動圧溝)も、フランジ部22のインサート成形と同時に型成形することができるため、別途動圧溝を形成する手間を省き、製造コストの低減を図ることができる。なお、動圧溝形状としては、上記のスパイラル状の他、ヘリングボーン状、あるいは放射状等にすることもできる。
【0026】
また、軸部21(樹脂部24)の外周面21aには、図3あるいは図1(a)に示すように、第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面Aとなる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられている。上記2つの領域には、動圧発生部として、例えばヘリングボーン形状に配列された動圧溝21a1、21a2がそれぞれ形成されている。この動圧溝21a1、21a2も、上記のスラスト軸受面同様、インサート成形時に型成形される。上側の動圧溝21a1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。そのため、軸部材2の回転時、上側の動圧溝21a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は下側の対称形の動圧溝21a2に比べ相対的に大きくなる。
【0027】
軸部材2の軸部21は軸受部材8の内周に挿入され、フランジ部22は軸受部材8の下側端面8cと、底部7cの上側端面7c1との間に収容される。上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸部21の外周面21aのラジアル軸受面Aは、それぞれ軸受部材8の内周面8aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして軸部材2の回転に伴い、ラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油による動圧作用が発生し、その圧力によって軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが形成される。
【0028】
また、軸部材2が回転すると、軸部材2のフランジ部22の上側端面22aに形成されたスラスト軸受面Bは、軸受スリーブ8の下側端面8cとスラスト軸受隙間を介して対向する。そして軸部材2の回転に伴い、スラスト軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧作用を発生し、その圧力によって軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1が形成される。同様に、軸部材2が回転すると、フランジ部22の下側端面22bに形成されたスラスト軸受面Cは、ハウジング7の底部7cの上側端面7c1とスラスト軸受隙間を介して対向する。軸部材2の回転に伴い、スラスト軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧作用を発生し、その圧力によって軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第2スラスト軸受部T2が形成される。
【0029】
なお、軸部材2の回転中は、潤滑油がハウジング7の底部7c側に押し込まれるため、このままではスラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間での圧力が極端に高まり、これに起因して潤滑油中での気泡の発生や潤滑油の漏れ、あるいは振動の発生が懸念される。この場合でも、例えば図3に示すように、軸受スリーブ8の外周面8dおよびシール部材9の下側端面9bにスラスト軸受隙間(特に第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間)とシール空間Sを連通する循環路10a、10bを設ければ、この循環路10a、10bを通って潤滑油がスラスト軸受隙間とシール空間Sとの間で流動するため、かかる圧力差が早期に解消され、上記の弊害を防止することができる。図3では一例として、循環路10aを軸受スリーブ8の外周面8d、および循環路10bをシール部材9の下側端面9bに形成する場合を例示しているが、循環路10aをハウジング7の内周面に、循環路10bを軸受スリーブ8の上側端面8bに形成することもできる。
【0030】
本発明では、上述のように、軸部材2において、軸素材23の軸部分23aと突出部分23bとが、それぞれ軸部21の芯材およびフランジ部22の芯材として機能するため、表面が樹脂で形成されているにも関わらず、軸部21およびフランジ部22のそれぞれで高い剛性を確保することができる。また、軸素材23の軸部分23aと突出部分23bとが一体に構成されているため、軸部21とフランジ部22の連結強度を飛躍的に向上させることができ、軸方向荷重に対するせん断強度の向上が図られる。また、溶接等による連結作業が不要なため、加工コストの低減を図ることができることに加え、溶接の良否による強度のバラツキを抑えることができる。
【0031】
軸部材2には、軸部21とフランジ部22の間の直角度や、フランジ部22の両端面22a、22bの平面度、および平行度等の様々な精度を要求される。本発明においては、軸部材2に要求される上記の各種精度は、樹脂部24を形成する際の型精度を高めることで確保することができるため、軸素材23自体の各種精度は樹脂部24の成形精度に悪影響を及ぼさない程度にラフなもので足りる。従って、入念な仕上げ加工を省略して軸素材23の製作コストを低減することができる。
【0032】
また、上記構成によれば、ラジアル軸受隙間に面する軸部21の外周面21a、およびスラスト軸受隙間に面するフランジ部22の両端面22a、22bが樹脂材料となるので、特に動圧軸受装置1の起動・停止時や、運転中における相手側部材(軸受部材8やハウジング底部7c)との接触の際にも、相互の摩擦による回転性能の低下を防止することができる。
【0033】
なお、樹脂部24の肉厚が過大であると、その固化・収縮に伴って生じるヒケの影響が大となり、軸部21の外周面の円筒度、フランジ部22の両端面の平面度や平行度等について必要精度を確保することが難しくなる。一方、樹脂部24の肉厚が過小であると、射出成形時における型内での樹脂の流動性が低下して成形精度に悪影響を及ぼすおそれがあり、さらには軸素材23の精度がラフである場合には、たとえ型精度を高めても樹脂部24でその成形精度を確保することが困難となる恐れがある。以上の理由から、樹脂部24の肉厚は、0.1mm〜2.0mmの範囲内、より好ましくは0.2mm〜1.0mmの範囲内に設定するのが望ましい。
【0034】
以上の説明では、軸部21の外周面やフランジ部22の両端面22b1、22b2を全て樹脂部24で被覆した場合を例示しているが、軸部21の外周面やフランジ部22の何れか一方の端面では、樹脂部24で被覆することなく軸素材23の表面を露出させ、この露出した表面に動圧発生部を有するラジアル軸受面Aやスラスト軸受面(BまたはC)を直接形成してもよい。この場合、軸素材22表面の各軸受面は、転造や鍛造等の塑性加工で形成することができる。また、以上の説明では、軸部21の外周面やフランジ部22の両端面22b1、22b2に、ラジアル軸受面Aおよびスラスト軸受面B、Cを形成した場合を例示しているが、これらの軸受面A〜Cは、軸部21の外周面やフランジ部22の両端面22b1、22b2と対向する面、具体的には軸受スリーブ8の内周面8a、軸受スリーブ8の下側端面8c、あるいは底部7cの上側端面7c1に形成することもできる。この場合、これら軸受面A〜Cに対向する樹脂部24の表面は、何れも動圧溝のない平滑面となる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、以下の図4〜図6に示す動圧軸受装置においても、好ましく適用することができる。なお、図1および図3に示す実施形態と同一の構成部材および要素には、同一記号を付与し、重複説明は省略する。
【0036】
図4は、本発明の構成を有する動圧軸受装置1の他の実施形態を示すものである。この実施形態においては、図3において別体であったハウジング7(側部7b)と軸受スリーブ8が、一体の軸受部材18で構成されている。軸受部材18は内周に軸部21を挿入可能なスリーブ部18bと、スリーブ部18bの外径側から軸方向上方に延び、その内周にシール部材9を固定可能にするシール固定部18aと、スリーブ部18bの外径側から軸方向下方に延びその内周に底部7cを固定可能にする底固定部18cとからなる。この形態では、部品点数の削減および組立工数の削減を図ることができるため、動圧軸受装置1をより一層低コスト化することができる。
【0037】
図5は、動圧軸受装置1の他の実施形態を示すものである。この動圧軸受装置1のスラスト軸受部Tは、ハウジング7の開口部側に位置し、一方のスラスト方向で軸部材2を軸受スリーブ8に対して非接触支持する。軸部材2の下端よりも上方にフランジ部22が設けられ、このフランジ部22の下側端面22bと軸受スリーブ8の上側端面8bとの間にスラスト軸受部Tが形成される。ハウジング7の開口部内周にはシール部材9が装着され、シール部材9の内周面9aと軸部材2の軸部21の外周面21aとの間にシール空間Sが形成される。シール部材9の下側端面9bはフランジ部22の上側端面22aと軸方向隙間を介して対向しており、軸部材2が上方へ変位した際には、フランジ部22の上側端面22aがシール部材9の下側端面9bと係合し、軸部材2の抜け止めがなされる。
【0038】
図6は、動圧軸受装置1の他の実施形態を示すものである。この実施形態では、図3および図4に示すものと比べ軸部材2のフランジ部22の軸方向幅を拡大させ、フランジ部22(を形成する樹脂部24)の外周面22cに動圧発生部としての動圧溝22a2が形成されている。第1ラジアル軸受部R1は、軸部21の外周面21aとこれに対向する軸受部材18の小径内周面18b4との間に形成され、第2ラジアル軸受部R2は、フランジ部22の外周面22cとこれに対向する軸受部材18の大径内周面18b5との間に形成される。この実施形態では、第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2の間の軸方向幅が拡大し、さらに第2ラジアル軸受部R2が図3および図4に示す実施形態よりも外径側に形成されるため、ラジアル軸受剛性およびスラスト軸受剛性を高めることができ、モーメント荷重に対する耐力を向上させることができる。
【0039】
以上説明した実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受面に形成される動圧発生部として、へリングボーン状やスパイラル状の動圧溝を例示しているが、ラジアル軸受部R1、R2を、この他にもいわゆる多円弧軸受やステップ軸受、あるいは非真円軸受で構成してもよい。これらの軸受ではそれぞれ、多円弧面、ステップ面、調和波形等の波状面が動圧発生部として形成される。
【0040】
図7は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の一例を示している。同図において、軸部21(樹脂部24)の外周面のラジアル軸受面となる領域が、複数の円弧面21a3で構成されている(この図では3円弧面)。各円弧面21a3は、それぞれ回転軸心Oから等距離オフセットした点を中心とする偏心円弧面であり、円周方向で等間隔に形成される。各偏心円弧面21a3の間には軸方向の分離溝21a4がそれぞれ形成される。
【0041】
上記構成の軸部21を軸受スリーブ8の内周面8aに挿入することにより、軸部21外周の偏心円弧面21a3および分離溝21a4と、軸受スリーブ8の内周面8aとの間に、ラジアル軸受部R1、R2の各ラジアル軸受隙間がそれぞれ形成される。ラジアル軸受隙間のうち、偏心円弧面21a3と内周面8aとで形成される領域は、隙間幅を円周方向の一方で漸次縮小させたくさび状隙間21a5となる。なお、くさび状隙間21a5の縮小方向は軸部21の回転方向に一致している。このような構成の多円弧軸受は、テーパ軸受と称されることもある。
【0042】
図8は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の他の例を示している。この例では、図7に示す構成において、各円弧面21a3の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ回転軸心Oを曲率中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)21a6は一定になる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
【0043】
図9は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の他の例を示している。この例では、軸部21(樹脂部24)の外周面のラジアル軸受面となる領域が、複数の円弧面21a7(この図では3円弧面)で構成されている。各円弧面21a7の中心は、それぞれ、回転軸心Oから等距離オフセットされている。各円弧面21a7で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間21a8は、円周方向の両方向に対して、それぞれ楔状に漸次縮小した形状を有している。なお、各円弧面21a7の相互間の境界部に、分離溝を形成しても良い。
【0044】
以上の各例における多円弧軸受は、いわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらに6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用しても良い。
【0045】
以上に述べたラジアル軸受部R1、R2の動圧溝、多円弧面、ステップ面等の動圧発生部は、射出成形後の樹脂部24の固化で生じるヒケを利用して形成することもできる。これは、樹脂部24の肉厚を円周方向で不均一にすることにより、円周方向で生じる収縮量に差(ヒケ)を持たせることで前記動圧発生部を形成するもので、例えば軸素材23の軸部分23aの外周面を断面非真円状に形成すると共に、これに対向する金型成形面を断面真円状に形成して形成してインサート成形を行えば、樹脂部24の肉厚を円周方向で不均一化して収縮量に差を持たせることができる。
【0046】
図10は一例として軸素材23を構成する軸部分23aを断面多角形状(図示例では、断面略三角形状)に形成すると共に、金型成形面21a’を断面真円状に形成したものである(同図(a)参照)。この場合、樹脂部24の固化に伴い、樹脂部24の薄肉領域よりも、樹脂部24の厚肉領域で、図10(b)中に示す矢印方向の収縮が顕著に発生するため、樹脂部24の外周面21aに動圧発生部としての多円弧面を形成することができる。
【0047】
図11は、他例として軸部分23aの外周面に半径方向の突出部26を円周方向等間隔に設けると共に、金型成形面21a’を断面真円状に形成したものである。この場合も、樹脂部24の固化に伴い、樹脂部24の肉厚の相違による収縮量の差から、樹脂部24の外周面に動圧発生部としてのステップ面を形成することができる。
【0048】
また、以上説明した実施形態では、スラスト軸受部T、T1、T2のスラスト軸受面に形成される動圧発生部として、スパイラル状に配列した動圧溝を例示しているが、スラスト軸受部T、T1、T2はこの他にも、スラスト軸受面にステップ面を形成したいわゆるステップ軸受、いわゆる波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる(図示省略)。
【0049】
なお、スラスト軸受部T、T1、T2の動圧発生部も、図10および図11に示すものと同様の手法で形成することができる。例えば動圧発生部としてステップ面を形成する場合、軸素材23の突出部分23bの端面をステップ状に形成すると共に、これに対向する金型成形面を凹凸のない平坦面としてインサート成形すれば、円周方向で生じる収縮量の差により、樹脂部24の端面にステップ面を形成することが可能となる。
【0050】
以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間やスラスト軸受隙間に動圧を発生させるための流体として潤滑油を例示したが、これ以外にも各軸受隙間に動圧を発生可能な流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)図は軸部材の断面図、(b)図は軸部材の下側端面を示す平面図である。
【図2】動圧軸受装置を組み込んだスピンドルモータの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の構成を有する動圧軸受装置の断面図である。
【図4】動圧軸受装置の他の形態を示す断面図である。
【図5】動圧軸受装置の他の形態を示す断面図である。
【図6】動圧軸受装置の他の形態を示す断面図である。
【図7】ラジアル軸受部の他の形態を示す断面図である。
【図8】ラジアル軸受部の他の形態を示す断面図である。
【図9】ラジアル軸受部の他の形態を示す断面図である。
【図10】(a)図は、軸部材を射出成形する際の軸部における断面図、(b)図は、樹脂部の固化後における軸部の断面図である。
【図11】樹脂部の固化後における軸部の他の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
7b 側部
7c 底部
8 軸受スリーブ
9 シール部材
21 軸部
22 フランジ部
23 軸素材
23a 軸部分
23b 突出部分
24 樹脂部
A ラジアル軸受面
B、C スラスト軸受面
R1 第1ラジアル軸受部
R2 第2ラジアル軸受部
S シール空間
T1 第1スラスト軸受部
T2 第2スラスト軸受部





 

 


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