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発明の名称 インホイールモータの軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16939(P2007−16939A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−200101(P2005−200101)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
代理人 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
発明者 今中 宏則 / 石川 恭光 / 片山 康行
要約 課題

中空モータを支承する転がり軸受の剛性を高め、相手部材の影響を受けずに組立後の精度を確保すると共に、車両の乗り心地と軸受の耐久性を向上させたインホイールモータの軸受装置を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、
前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、
前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、
これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、
前記両ケースの開口端部に装着されたシールとを備えたインホイールモータの軸受装置において、
前記転がり軸受が、外周に取付フランジを一体に有する外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、
前記一対の転がり軸受のうち少なくとも一方の転がり軸受に所定の接触角が付与されていることを特徴とするインホイールモータの軸受装置。
【請求項2】
前記一対の転がり軸受が背面組み合わせのアンギュラ玉軸受で構成されている請求項1に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項3】
前記一対の転がり軸受が深溝玉軸受からなり、少なくとも一方の転がり軸受に軸方向の予圧をかけることにより所定の接触角が付与されている請求項1に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項4】
前記一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受が複列アンギュラ玉軸受または4点接触玉軸受で構成されている請求項1に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項5】
前記内ケースが、両端部に径方向外方に延びる固定フランジと、この固定フランジから軸方向外方に延びる円筒状の嵌合部および小径段部が形成された内ケース本体と、この内ケース本体の小径段部に圧入され、円筒状の嵌合部が形成された環状の固定リングとからなり、前記内ケース本体と固定リングの嵌合部に前記内輪が外嵌されると共に、前記固定リングの外周面に前記シールが圧入されている請求項1乃至4いずれかに記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項6】
前記固定フランジにピン孔が軸方向に貫通して形成され、このピン孔に対応して前記内輪の端面にピン孔が形成されると共に、これらピン孔にピンが圧入されている請求項5に記載のインホイールモータの軸受装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のダイレクトドライブホイールを駆動輪とする車両に用いられるインホイールモータの軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等モータによって駆動される車両においては、モータを車輪に内蔵するインホイールモータシステムが採用されつつある。ここで、従来はモータステータ部が車両の懸架装置を構成するナックルにスピンドル軸が回転可能に固定されるため、ばね下重量がインホイールモータの分だけ増加し、その結果、タイヤ接地力変動が増加してロードホールディング性が悪化してしまうといった問題があった。
【0003】
そこで、こうした問題を解決するため、図6に示すようなものが知られている。このインホイールモータは、ステータ50Sを支持する非回転側ケース50aを、直動ガイド51を介して互いに車両の上下方向に作動するばね52およびダンパー53により結合された2枚のプレート54、55を備えた緩衝機構56を介してナックル57に対して弾性支持すると共に、ロータ50Rを支持する回転側ケース50bとホイール58とを、複数枚の中空円盤状のプレート59〜61を作動方向が互いに直交するように配置された直動ガイド62、63を用いて連結したフレキシブルカップリング64により結合されている。
【0004】
こうしたインホイールモータシステムでは、モータ50を車両の足回り部品に対してフローティングマウントして、モータ50自身をダイナミックダンパーのウェイトとして作用させることができるので、不整路走行時の接地性能、乗り心地性能をともに向上させることができると共に、フレキシブルカップリング64により、モータ軸とホイール軸がどの方向にも偏心可能に結合されているので、モータ50からホイール58へのトルクを効率良く伝達させることができる。
【0005】
さらに、モータ50とホイール58間に形成される空隙にダストブーツ65、66を設けて外部から遮断するようにしたので空隙への石や塵芥等の侵入を防止でき、インホイールモータシステムの信頼性を向上させることができる。
【0006】
また、ケース50a、50b間には、ロータ50Rを回転自在に支持する軸受67が嵌合されている。図7に拡大して示すように、この軸受67の外側には固定カバー68、69が取り付けられ、互いに対向する面に階段状の切欠き68k、69kが設けられ、これら切欠き68k、69kに蓋部材68p、69pを取り付けて中空部70が形成されている。この中空部70内にモータ軸方向に摺動可能な中空円盤状の隔壁を構成する樹脂リング71が収容されている。これにより、モータ50の運転時、モータ50の発熱でモータ50内部の温度が上昇し、外気圧に対してモータ内圧が高くなってもこの圧力差によってモータ50内への水の浸入を防止することができ、コンパクトな構成の防水機構を実現することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−90696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のインホイールモータにおいて、乗り心地性能向上の観点からばね下重量を軽減する必要があり、軸受67に深溝玉軸受からなる超薄肉の大径軸受が採用されている。然しながら、この種の超薄肉の大径軸受は以下に示すような問題点を抱えている。すなわち、軸受剛性が極めて低いため、軸受67の製造時に軸受軌道輪の熱処理変形を抑制し、かつ加工時の変形を防止して所望の軸受精度に加工することが難しい。したがって、熱処理や切削加工時には特殊な治具を使用する等、工数が増えてコスト高騰が余儀なくされていた。また、所望の軸受精度に仕上げることができたとしても、ケース50a、50bに軸受67を圧入した場合、軸受67の剛性が低いため、これらケース50a、50bの加工精度の影響を受けて軸受加工時の精度が崩れ、所望の軸受精度を確保することが困難となる。
【0008】
さらに、この軸受67が通常の深溝玉軸受であれば、軸受内部すきま、特に、軸方向すきまが大きいため、モータ50の回転時におけるロータ50Rの軸方向振れが大きくなり以下の不具合が懸念される。すなわち、モータ50の重量が加速度を伴いスラスト荷重となって軸受67に負荷され、軸受67の寿命低下と乗り心地の悪化およびロータ50Rとその周辺の部品とが干渉する恐れがあることである。
【0009】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータのロータを回転自在に支承する転がり軸受の剛性を高めて加工性を向上させると共に、車両の乗り心地と軸受の耐久性を向上させたインホイールモータの軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、前記両ケースの開口端部に装着されたシールとを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、外周に取付フランジを一体に有する外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記一対の転がり軸受のうち少なくとも一方の転がり軸受に所定の接触角が付与されている構成を採用した。
【0011】
このように、中空モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、ステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された転がり軸受と、両ケースの開口端部に装着されたシールとを備えたインホイールモータの軸受装置において、転がり軸受が、外周に取付フランジを一体に有する外輪と、内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、一対の転がり軸受のうち少なくとも一方の転がり軸受に所定の接触角が付与されているので、軸受のアキシアル振れを抑えて車両の乗り心地と軸受の耐久性を向上させたインホイールモータの軸受装置を提供することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明のように、前記一対の転がり軸受が背面組み合わせのアンギュラ玉軸受で構成されていても良いし、また、請求項3に記載の発明のように、前記一対の転がり軸受が深溝玉軸受からなり、少なくとも一方の転がり軸受に軸方向の予圧をかけることにより所定の接触角が付与されていても良い。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、前記一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受が複列アンギュラ玉軸受または4点接触玉軸受で構成されていれば、この転がり軸受で両方向のスラスト荷重を負荷できるため、モータの重量が加速度を伴いスラスト荷重となってこの転がり軸受に負荷されても、寿命低下を来たすことはなく所望の寿命を確保することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明のように、前記内ケースが、両端部に径方向外方に延びる固定フランジと、この固定フランジから軸方向外方に延びる円筒状の嵌合部および小径段部が形成された内ケース本体と、この内ケース本体の小径段部に圧入され、円筒状の嵌合部が形成された環状の固定リングとからなり、前記内ケース本体と固定リングの嵌合部に前記内輪が外嵌されると共に、前記固定リングの外周面に前記シールが圧入されていれば、シールの圧入による変形が前記転がり軸受に及ばず、組立後の転がり軸受の精度を加工時の精度に確保することができる。
【0015】
好ましくは、請求項6に記載の発明のように、前記固定フランジにピン孔が軸方向に貫通して形成され、このピン孔に対応して前記内輪の端面にピン孔が形成されると共に、これらピン孔にピンが圧入されていれば、内輪の回り止めを確実に行うことができ、内輪を圧入することなく内ケースに固定することができる。したがって、組立による転がり軸受の変形を可及的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るインホイールモータの軸受装置は、中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、前記両ケースの開口端部に装着されたシールとを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、外周に取付フランジを一体に有する外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記一対の転がり軸受のうち少なくとも一方の転がり軸受に所定の接触角が付与されているので、超薄肉の大径軸受であっても軸受剛性が高まり、その加工性が向上して所望の加工精度が得られると共に、軸受のアキシアル振れを抑えて車両の乗り心地と軸受の耐久性を向上させたインホイールモータの軸受装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、前記両ケースの開口端部に装着されたシールとを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、外周に取付フランジを一体に有する外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記内ケースが、両端部に径方向外方に延びる固定フランジと、この固定フランジから軸方向外方に延びる円筒状の嵌合部および小径段部が形成された内ケース本体と、この内ケース本体の小径段部に圧入され、円筒状の嵌合部が形成された環状の固定リングとからなり、前記内ケース本体と固定リングの嵌合部に前記内輪が外嵌されると共に、前記外ケースが、両端部に径方向外方に延びるフランジを一体に有する外ケース本体と、この外ケース本体の軸方向外方部を閉塞する環状の蓋部材とからなり、これら外ケース本体と蓋部材とで前記外輪の取付フランジが挟持され、当該取付フランジを貫通する固定ボルトを介して前記外輪が前記外ケースに締結され、前記一対の転がり軸受が背面組み合わせのアンギュラ玉軸受で構成されている。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第1の実施形態を示す要部断面図、図2は、図1の転がり軸受を示す縦断面図である。なお、この実施形態では、全体構成は、従来技術で説明した部分と共通するため重複した説明を避け、本発明に係る軸受装置の特徴部分のみの説明を行う。
【0019】
インホイールモータの軸受装置は、中空状のモータ1と、このモータ1が装着された外ケース2および内ケース3と、これらケース2、3間に固定された一対の転がり軸受4と、ケース2、3間に形成される開口環状空間を密閉するシール5とを備えている。モータ1は、ロータ1aと、このロータ1aに所定の径方向すきまを介して対向配置されたステータ1bとからなる。
【0020】
ロータ1aは、回転側の外ケース2の内周面に固定されている。この外ケース2は、両端部に径方向外方に延びるフランジ6bを一体に有する円筒状の外ケース本体6と、この外ケース本体6の軸方向外方部を閉塞する環状の蓋部材7とからなる。一方、ステータ1bは、固定側の内ケース3の外周面に固定されている。この内ケース3は、両端部に径方向外方に延びる固定フランジ8bを一体に有する円筒状の内ケース本体8と、この内ケース本体8に外嵌された固定リング9とからなる。
【0021】
後述する転がり軸受4は内ケース3に対して外ケース2を回転自在に支持し、これらケース2、3間に固定されている。具体的には、外ケース本体6および蓋部材7の対向する端部内周に円筒状の嵌合部6a、7aが形成され、これら嵌合部6a、7aに転がり軸受4の外輪17が所定の径方向すきまを介して内嵌されると共に、外輪17の外周に一体に形成された取付フランジ17bを外ケース本体6と蓋部材7とで挟持した状態で、取付フランジ17bを貫通する固定ボルト10によって固定されている。ここで、外ケース本体6には周方向に複数のボルト孔6cが穿設されると共に、蓋部材7には、このボルト孔6cに対応する位置に雌ねじ7bが形成されている。また、外輪17の取付フランジ17bには、これらボルト孔6cおよび雌ねじ7bに対応して取付孔17cが形成されている。固定ボルト10は、ボルト孔6cおよび取付孔17cを介して雌ねじ7bに締結されている。
【0022】
内ケース本体8には、固定フランジ8bから軸方向に延びる円筒状の嵌合部8aと小径段部8cが形成され、この小径段部8cに環状の固定リング9が圧入されている。そして、内ケース本体8と固定リング9の対向する端部外周に形成された嵌合部8a、9aに内輪18が所定の径方向すきまを介して外嵌されている。ここで、内ケース本体8の固定フランジ8bにはピン孔8dが軸方向に貫通して形成され、このピン孔8dに対応する内輪18の端面にピン孔18bがそれぞれ形成されている。そして、これらピン孔8d、18bにピン11が軽圧入され、内輪18の回り止めをしている。これにより、内輪18を圧入することなく内ケース3に固定することができ、組立による転がり軸受4の変形を可及的に抑制することができる。なお、ここでは、ピン11により内輪18を固定する方法を例示したが、この方法に限らず、無論、内ケース3の嵌合部8a、9aに内輪18を僅かなシメシロ(とまりばめ)で外嵌することにより内輪18の回り止めを行っても良い。
【0023】
両ケース2、3の両端部、すなわち、蓋部材7と固定リング9とで形成される環状の開口部にはシール5が装着されている。このシール5は、蓋部材7の内周面に嵌合され、断面が略L字状で、全体として円環状に形成された第1のシール板12と、この第1のシール板12に対向配置して固定リング9の外周面に嵌合され、断面が略L字状で、全体として円環状に形成された第2のシール板13とからなる。
【0024】
第1のシール板12は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成された芯金14と、この芯金14に一体に加硫接着され、内縁部にサイドリップ15aおよび一対のラジアルリップ15b、15cを有するシール部材15とからなる。
【0025】
第2のシール板13は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成されている。この第2のシール板13は、固定リング9に圧入される円筒部13aと、この円筒部13aから径方向外方に延びる立板部13bとからなる。そして、前記第1のシール板12のサイドリップ15aがこの立板部13bに摺接されると共に、一対のラジアルリップ15b、15cが円筒部13aに摺接され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。ここで、第1のシール板12と第2のシール板13の外縁とは僅かな径方向すきまを介して対峙し、所謂ラビリンスシール16を構成している。本実施形態のシール5は、このようなシール構成を採用しているので、長期間に亙って強固な、かつ安定した密封性を備え、転がり軸受4の耐久性を向上させることができる。
【0026】
ここで、図2に拡大して示すように、転がり軸受4は所定の接触角αが付与されたアンギュラ玉軸受からなり、外輪17と内輪18、およびこれら外輪17と内輪18間に収容された複数の転動体(ボール)19とを備えている。なお、左右一対の転がり軸受4は、接触角αの向きがハの字型となる背面合せ、所謂DBセットとなるように組み立てられ、そこには軽予圧が付与されている。外輪17は、外周に径方向外方に延びる取付フランジ17bを一体に有し、内周に外側転走面17aが形成されている。また、外輪17はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ずぶ焼入れによって58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0027】
一方、内輪18は、外周に前記外側転走面17aに対向する内側転走面18aが形成され、一端面にピン孔18bが穿設されている。そして、内輪18は、外輪17と同様、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ずぶ焼入れによって58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。両転走面17a、18a間には保持器20を介して転動体19が転動自在に収容されている。保持器20はスナップオンタイプで、PA(ポリアミド)66をベースとしてGF(グラスファイバー)等の強化材が含まれた合成樹脂を射出成形によって形成されている。
【0028】
本発明に係る転がり軸受4は、外輪17に取付フランジ17bを一体に有し、この取付フランジ17bを介して外ケース2に固定されると共に、内輪18が内ケース3に所定の径方向すきまを介して嵌合されているので、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータ1のロータ1aを回転自在に支承する転がり軸受4が超薄肉の大径軸受であっても軸受剛性が高まり、かつその加工性が向上して所望の加工精度が得られると共に、組立後の変形を防止することができ、固定される相手部材、ここでは、外ケース2および内ケース3の加工精度に影響を受けず、所望の軸受精度を確保したインホイールモータの軸受装置を提供することができる。
【0029】
さらに、固定側となる内ケース3に対して外ケース2を回転自在に支承する転がり軸受4をアンギュラ玉軸受とし、軽予圧が付与されているので、モータ1の回転時におけるロータ1aの軸方向振れを可及的に抑制することができる。したがって、モータ1の重量が加速度を伴いスラスト荷重となってこの転がり軸受4に負荷されることによる軸受寿命の低下やロータ1aの軸方向振れによる車両の乗り心地の悪化を招来することはない。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。なお、この第2の実施形態は前述した第1の実施形態(図1)と基本的には軸受の構成が異なるのみで、その他同一部分、部位には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施形態では、内ケース3に対して外ケース2を回転自在に支承する一対の転がり軸受21、21は深溝玉軸受からなり、外輪22と内輪23、およびこれら外輪22と内輪23間に保持器20を介して転動自在に収容された複数の転動体19とを備えている。そして、一対の転がり軸受21、21のうち一方の転がり軸受21の外輪22または内輪23に軸方向の予圧が付与されている。ここでは、内輪23の一端面と固定リング9との間に皿ばね等からなる弾性部材24が介装されている。これにより、前述した実施形態と同様、転がり軸受21に所定の接触角が付与されて軸方向すきまを実質的にゼロにすることができ、モータ1の回転時におけるロータ1aの軸方向振れを抑制することができる。
【0032】
さらに、通常、深溝玉軸受においては、外輪および内輪の溝曲率直径がボール径の1.02〜1.06倍に設定されているところ、本実施形態では、一対の転がり軸受21、21のうち少なくとも予圧が付与された転がり軸受21の外輪22および内輪23の溝曲率直径がボール径の1.02倍以下に設定され、角振れが所定量以下に規制されている。これにより、軸受のアキシアル振れを一層抑制することができる。
【実施例3】
【0033】
図4は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第3の実施形態を示す要部断面図である。なお、この第2の実施形態は前述した前述した実施形態(図1、図3)と基本的には軸受の構成が異なるのみで、その他同一部分、部位には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、内ケース3に対して外ケース2を回転自在に支承する一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受(図示せず)は深溝玉軸受からなり、他方の転がり軸受25は複列アンギュラ玉軸受からなる。この転がり軸受25は、外輪26と内輪27、およびこれら外輪26と内輪27間に保持器20、20を介して転動自在に収容された複列の転動体19、19とを備えている。ここで、内輪27は外輪26よりも肉厚に形成され、内ケース3の嵌合部8a、9aに内輪27を僅かなシメシロ(とまりばめ)で外嵌することにより内輪27の回り止めを行っている。
【0035】
この転がり軸受4は、左右の接触角αの向きがハの字型となる背面合せに設定され、単一の転がり軸受に比べアキシアル振れが小さい。したがって、モータ1の回転時におけるロータ1aの軸方向振れを抑制することができる。また、両方向のスラスト荷重を負荷できるため、モータ1の重量が加速度を伴いスラスト荷重となってこの転がり軸受25に負荷されても、寿命低下を来たすことはなく所望の寿命を確保することができる。
【0036】
なお、ここでは、一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受25を複列アンギュラ玉軸受としたが、これに限らず、両方向のスラスト荷重を負荷できる転がり軸受であれば良く、例えば、図5に示すような4点接触玉軸受であっても良い。この転がり軸受28は、外輪29と内輪30、およびこれら外輪29と内輪30間に保持器31を介して転動自在に収容された複列の転動体19とを備えている。
【0037】
外輪29の内周には、所定の曲率半径を有する円弧状の断面形状からなる外側転走面29a、29aがそれぞれ形成されている。これらの外側転走面29a、29aは互いに協働してゴシックアーチの断面形状、すなわち、軸受の幅中心に対して軸方向に等距離オフセットした一対の曲率中心を有する円弧面で構成されている。一方、内輪30もこの外輪29と同様、外周には所定の曲率半径を有する円弧状の断面形状からなる転走面30a、30aがそれぞれ形成され、互いに協働してゴシックアーチの断面形状を有する円弧面で構成されている。そして、転動体19は、外輪29と内輪30に対して接触角αでもってそれぞれ2点で接触している。
【0038】
この転がり軸受28は、単列軸受でありながらラジアル荷重および両方向のスラスト荷重を負荷することができるため小スペース化ができると共に、径方向すきまに対して軸方向すきまの範囲を抑制することができるため、組立後の装置のガタを抑えることができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るインホイールモータの軸受装置は、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータを支持する転がり軸受を備えた軸受装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第1の実施形態を示す要部断面図である。
【図2】図1の転がり軸受を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。
【図4】本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第3の実施形態を示す要部断面図である。
【図5】図4の転がり軸受の変形例を示す縦断面図である。
【図6】従来のインホイールモータシステムの全体構成を示す縦断面図である。
【図7】図1の軸受部を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・・・・・・・・・モータ
1a・・・・・・・・・・ロータ
1b・・・・・・・・・・ステータ
2・・・・・・・・・・・外ケース
3・・・・・・・・・・・内ケース
4、21、25、28・・転がり軸受
5・・・・・・・・・・・シール
6・・・・・・・・・・・外ケース本体
7・・・・・・・・・・・蓋部材
6a、7a、8a、9a・嵌合部
6b・・・・・・・・・・フランジ
6c・・・・・・・・・・ボルト孔
7b・・・・・・・・・・雌ねじ
8・・・・・・・・・・・内ケース本体
8b・・・・・・・・・・固定フランジ
8c・・・・・・・・・・小径段部
8d、18b・・・・・・ピン孔
9・・・・・・・・・・・固定リング
10・・・・・・・・・・固定ボルト
11・・・・・・・・・・ピン
12・・・・・・・・・・第1のシール板
13・・・・・・・・・・第2のシール板
14・・・・・・・・・・芯金
15・・・・・・・・・・シール部材
15a・・・・・・・・・サイドリップ
15b、15c・・・・・ラジアルリップ
16・・・・・・・・・・ラビリンスシール
17、22、26、29・外輪
17a、29a・・・・・外側転走面
17b・・・・・・・・・取付フランジ
17c・・・・・・・・・取付孔
18、23、27、30・内輪
18a、30a・・・・・内側転走面
19・・・・・・・・・・転動体
20、31・・・・・・・保持器
24・・・・・・・・・・弾性部材
50・・・・・・・・・・モータ
50R・・・・・・・・・ロータ
50S・・・・・・・・・ステータ
50a・・・・・・・・・非回転側ケース
50b・・・・・・・・・回転側ケース
51、62、63・・・・直動ガイド
52・・・・・・・・・・ばね
53・・・・・・・・・・ダンパー
54、55・・・・・・・プレート
56・・・・・・・・・・緩衝機構
57・・・・・・・・・・ナックル
58・・・・・・・・・・ホイール
59、60、61・・・・円盤状のプレート
64・・・・・・・・・・フレキシブルカップリング
65、66・・・・・・・ダストブーツ
67・・・・・・・・・・軸受
68、69・・・・・・・固定カバー
68k、69k・・・・・切欠き
68p、69p・・・・・蓋部材
70・・・・・・・・・・中空部
71・・・・・・・・・・樹脂リング
α・・・・・・・・・・・接触角




 

 


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