米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 機械工学 -> NTN株式会社

発明の名称 動圧軸受装置およびこれを備えたモータ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16850(P2007−16850A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−197703(P2005−197703)
出願日 平成17年7月6日(2005.7.6)
代理人 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾
発明者 山下 信好
要約 課題
この種の動圧軸受装置におけるモータ側の部材との位置決め基準面を高精度に仕上げる。

解決手段
ハウジング部9の外周上端に設けたシール面9dと、外周下端に設けた円筒面9eとの間に外周側段部9fを設け、外周側段部9fの端面9f1上に、軸方向下方に延びる略円柱状の凸部10を設ける。これにより、凸部10に隣接する端面9f1形成領域が逃げ部となる。凸部10の端面10aは、第一スラスト軸受面9aに背向しかつ平行な端面であり、例えばプレス加工によって、第一スラスト軸受面9aに対する平行度が10μm以下、端面10a自体の平面度が10μm以下に仕上げられる。
特許請求の範囲
【請求項1】
軸部材と、スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材にスラスト方向の浮上力を付与するスラスト軸受部と、内周に軸部材を挿入したスリーブ部と、スリーブ部の外径側に配置されたハウジング部とを備え、モータに組込まれる動圧軸受装置において、
ハウジング部が、モータ側の部材との間の軸方向相対位置を規定する基準面と、基準面に隣接する逃げ部とを備えていることを特徴とする動圧軸受装置。
【請求項2】
前記基準面が塑性加工で形成される請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項3】
ハウジング部に前記スラスト軸受隙間に面するスラスト軸受面が設けられ、前記基準面のスラスト軸受面に対する平行度が10μm以下である請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項4】
前記基準面の平面度が10μm以下である請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項5】
前記基準面と逃げ部とを円周方向又は半径方向に並列配置した請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか記載の動圧軸受装置と、ステータコイルと、ステータコイルとの間に励磁力を生じるロータマグネットとを備え、スラスト軸受部によるスラスト方向への浮上力とは反対の向きのスラスト力が軸部材に付与されるモータ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置に関するものである。この種の軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるスラスト軸受部としては、例えば軸受スリーブやハウジングの軸方向端面に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、これら軸方向端面と、これらに対向する軸部材のフランジ部両端面との間にスラスト軸受隙間を形成するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−239951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の軸受装置は、軸受スリーブやハウジング、軸部材をはじめとする種々の部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い軸受性能を確保すべく、各部品の加工精度や組立て精度を高める努力がなされている。その一方で、情報機器の低価格化・小型化の傾向に伴い、この種の軸受装置に対する低コスト化・小型化の要求が高まっている。
【0005】
動圧軸受装置を上述の如くディスク駆動装置などに組込んで使用する場合、動圧軸受装置の各構成部品間の組立て精度のみならず、これを組込むモータ(の構成部品)との間で高い組立て精度が要求される。このような場合に、動圧軸受装置の構成部品とモータ側の部材との間の相対位置を決定する基準となる面(以下、「基準面」という。)を動圧軸受装置の側(例えばハウジングの側)に設け、この面を基準にモータ側の部材と動圧軸受装置とのアセンブリを行う方法が有効である。
【0006】
この種の基準面には、例えばスラスト軸受面に対する高い平行度あるいはそれ自体の高い平面度など、高い形状精度が要求されるが、現状では、かかる基準面を高精度に仕上げることは難しい。
【0007】
本発明の課題は、この種の動圧軸受装置におけるモータ側の部材との位置決め基準面を高精度に仕上げることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、軸部材と、スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材にスラスト方向の浮上力を付与するスラスト軸受部と、内周に軸部材を挿入したスリーブ部と、スリーブ部の外径側に配置されるハウジング部とを備え、モータに組込まれるものにおいて、ハウジング部が、モータ側の部材との間の軸方向相対位置を規定する基準面と、基準面に隣接する逃げ部とを備えていることを特徴とする動圧軸受装置を提供する。なお、ここでいうモータ側の部材はモータの構成部品であれば足り、例えばモータのステータコイルを固定する部材を含む。また、ここでいうハウジング部は動圧軸受装置の構成部材であり、その形状は問わない。
【0009】
上述のように、本発明は、モータ側の部材との軸方向相対位置を規定する基準面をハウジング部に設け、かつこの基準面に隣接して逃げ部を設けたことを特徴とするものであり、かかる構成によれば、逃げ部を設けない場合の基準面と比べてその面積が減じられる。そのため、例えば基準面をプレス仕上げする場合でも、基準面におけるプレス加工時の面圧を高めて、かかる仕上げ面の形状精度を容易に向上させることが可能となる。あるいは基準面を機械加工で仕上げる場合、加工面積を減じて加工時(例えば切削時)の発熱量を抑えることや、工具摩耗を抑制することなどで、仕上げ面(基準面)の形状精度を高めることができる。何れの場合であっても、基準面を高精度に仕上げることで、動圧軸受装置のモータ側の部材に対する軸方向相対位置を正確に規定することができ、かかる軸受性能あるいはモータ性能を向上させることができる。
【0010】
特に、基準面がプレス加工や鍛造等の塑性加工で形成される場合、基準面に隣接する逃げ部が、基準面の塑性変形分を逃がす役割を果たす。そのため、基準面となる仕上げ面の形状精度をより高めることができる。
【0011】
ハウジング部に、スラスト軸受隙間に面するスラスト軸受面を設ける場合、モータ側の部材との位置決め(組立て)精度を確保する観点から、前記基準面のスラスト軸受面に対する平行度は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であればなお好ましい。ここでいう平行度は、基準平面(ここではスラスト軸受面を指す。)に対して平行な幾何学的平面からの平行であるべき平面形体(ここでは基準面を指す。)の狂いの大きさをいい、その大きさは、基準平面(スラスト軸受面)に平行な幾何学的に正しい2平面でその平面形体(基準面)を挟んだとき、平行2平面の間隔が最小になる場合の、2平面の間隔で表される。
【0012】
同様に、前記基準面の平面度は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であればなお好ましい。ここで、平面度は、平面形体(平面度の対象となる面。ここでは基準面を指す。)を2つの平行な幾何学的に正しい平面で挟んだとき、平行2平面の間隔が最小となる場合の、2平面の間隔で表される。なお、ここでいうスラスト軸受面は何れも、動圧作用を生じるスラスト軸受隙間に面したものであればよく、動圧作用を生じるための動圧溝の有無は問わない。
【0013】
前記基準面および逃げ部の配置態様として、例えば基準面と逃げ部とを円周方向に並列配置したものが構成可能である。あるいは、基準面と逃げ部とを半径方向に並列配置したものが構成可能である。
【0014】
上記構成の動圧軸受装置は、この動圧軸受装置と、ステータコイルと、ステータコイルとの間に励磁力を生じるロータマグネットとを備えるモータとして好適に提供することができる。特に、スラスト軸受部によるスラスト方向への浮上力とは反対の向きのスラスト力を軸部材に付与するモータに組込んで使用する場合には、軸部材のスラストバランスを高精度に保つことができ、好適である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、この種の動圧軸受装置におけるモータ側の部材との位置決め基準面を高精度に仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を有する回転部材3を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、例えば半径方向のギャップを介して対向するステータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット6とを備えている。ステータコイル4はブラケット6のコイル取付け部6cに取付けられ、ロータマグネット5は回転部材3の外周に取付けられる。動圧軸受装置1はブラケット6の内周に固定される。回転部材3には、図示は省略するが、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)が一又は複数枚保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、回転部材3および回転部材3に保持されたディスクが軸部材2と一体に回転する。
【0018】
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、スリーブ部8と、スリーブ部8の外径側に配置されるハウジング部9と、スリーブ部8およびハウジング部9に対して相対回転する回転部材3と、ハウジング部9の軸方向一端を封口する蓋部材12とを主に備えている。なお、説明の便宜上、軸方向両端に形成されるハウジング部9の開口部のうち、蓋部材12で封口される側を下側、封口側と反対の側を上側として以下説明する。
【0019】
回転部材3は、例えばハウジング部9の開口側に配置されるハブ部11と、スリーブ部8の内周に挿入される軸部材2とを備えている。
【0020】
ハブ部11は例えば金属で形成され、ハウジング部9の開口側(上側)を覆う円盤部11aと、円盤部11aの外周部から軸方向下方に延びる筒状部11bと、筒状部11bの外周に設けられるディスク搭載面11cおよび鍔部11dとで構成される。この場合、回転部材3の回転時、ディスク搭載面11cに載置されるディスクの振れ精度を考慮して、軸部材2の外周面2aに対するディスク搭載面11cの直角度を高めるための仕上げ加工をディスク搭載面11cに施すことも可能である。同様に、回転部材3の回転時、後述する第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間のばらつきを抑える観点から、軸部材2の外周面2aに対する円盤部11aの下端面11a1の直角度を高めるための仕上げ加工を下端面11a1に施すことも可能である。図示されていないディスクは、円盤部11aの外周に外嵌され、ディスク搭載面11cに載置される。そして、図示しない適当な保持手段(クランパなど)によってディスクがハブ部11に保持される。もちろん、ハブ部11は金属に限らず、例えば樹脂の射出成形によって形成しても構わない。
【0021】
軸部材2は、この実施形態ではハブ部11と一体に形成され、その下端に抜止めとしてフランジ部2bを別体に備えている。フランジ部2bは、金属製で、例えばねじ結合等の手段により軸部材2の軸部に固定される。軸部材2は、ハブ部11と別体に形成することもできるが、その場合には、ハブ部11との組立て精度(直角度など)を考慮して、例えば軸部材2を金属製、ハブ部11を樹脂製とし、軸部材2をインサート部品としてハブ部11を型成形(インサート成形)するのが好ましい。
【0022】
スリーブ部8は、例えば真ちゅう等の銅合金やアルミ合金などの金属で形成することもでき、焼結金属からなる多孔質体で形成することもできる。この実施形態では、銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。
【0023】
スリーブ部8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として複数の動圧溝を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば図3に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をヘリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。
【0024】
スリーブ部8の下端面8cの全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝形成領域は第二スラスト軸受面として、フランジ部2bの上端面2b1と対向し、軸部材2(回転部材3)の回転時には、上端面2b1との間に第二スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0025】
ハウジング部9は、金属又は樹脂で円筒状に形成される。この実施形態では、ハウジング部9は、その軸方向両端を開口した形状をなし、かつ一端側を蓋部材12で封口している。他端側の端面(上端面)の全面または一部環状領域には、第一スラスト軸受面9aが設けられる。この実施形態では、第一スラスト軸受面9aに、スラスト動圧発生部として、例えば図4に示すように複数の動圧溝9a1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この第一スラスト軸受面9a(動圧溝9a1形成領域)は、ハブ部11の円盤部11aの下端面11a1と対向し、回転部材3の回転時には、下端面11a1との間に後述する第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0026】
ハウジング部9の下端側を封口する蓋部材12は、金属あるいは樹脂で形成され、ハウジング部9の下端内周に設けられた内周側段部9bに固定される。ここで、固定手段は特に限定されず、例えば接着(ルーズ接着、圧入接着を含む)、圧入、溶着(例えば超音波溶着)、溶接(例えばレーザ溶接)などの手段を、材料の組合わせや要求される固定強度、密封性などに合わせて適宜選択することができる。
【0027】
ハウジング部9の内周面9cには、スリーブ部8の外周面8bが、例えば接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)、圧入、溶着等の適宜の手段で固定される。
【0028】
ハウジング部9の外周には、上方に向かって漸次拡径するテーパ状のシール面9dが形成される。このテーパ状のシール面9dは、筒状部11bの内周面11b1との間に、ハウジング部9の封口側(下方)から開口側(上方)に向けて半径方向寸法が漸次縮小した環状のシール空間Sを形成する。このシール空間Sは、軸部材2およびハブ部11の回転時、第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間の外径側と連通している。
【0029】
ハウジング部9外周の下端には径一定の円筒面9eが形成される。この円筒面9eは、この実施形態ではブラケット6の内周面6aとの接着固定面となり、後述するブラケット6の取付け時、内周面6aに接着剤を介して接着固定される(図2を参照)。
【0030】
ハウジング部9外周の軸方向中間位置、この図示例でいえば、シール面9dと円筒面9eとの間に外周側段部9fが形成される。外周側段部9fには、例えば図5に示すように、この外周側段部9fの端面9f1から軸方向下方に向けて突出した凸部10が1又は複数箇所形成される。この場合、凸部10を除いた外周側段部9fの端面9f1形成領域が、凸部10に隣接する逃げ部となる。この実施形態では、凸部10は略円柱状をなし、外周側段部9fの端面9f1上に、周方向等間隔に3箇所設けられる。
【0031】
凸部10の端面10aは、後述するブラケット6の取付け時における位置決め基準面となり、第一スラスト軸受面9aと背向しかつ平行となるよう形成される。具体的には、端面10aの第一スラスト軸受面9aに対する平行度は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であればより好ましい。また端面10aの平面度は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であればより好ましい。
【0032】
上述の端面10aおよび端面10aを設けた凸部10は、例えば金属の鍛造加工でハウジング部9の形成と同時に形成することができる。この場合、端面10aを設けた凸部10のみが外周側段部9fの端面9f1から突出していることから、例えば上記鍛造成形の後、端面10aをプレス加工等で面仕上げする際、プレス面(成形面)は端面10aのみとなる。また、凸部10に隣接する逃げ部(端面9f1形成領域)は、プレス時の凸部10の塑性変形分を吸収する(逃がす)箇所として機能する。そのため、例えば凸部10を設けずに外周側段部9fの端面9f1全面を基準面としてプレス仕上げする場合と比べて、そのプレス面積を減じることができ、これにより端面10aのプレス面圧を高めることができる。従って、高い形状精度(平行度、平面度)を有する端面10aを形成することができ、かかる端面10aと第一スラスト軸受面9aとの間の軸方向間隔を高精度に管理することが可能となる。
【0033】
上述のように高精度に仕上げられた端面10aは、モータ側の部材であるブラケット6の取付け時、その軸方向位置決め基準面として機能する。この実施形態では、図2に示すように、ブラケット6の端面6bを、ハウジング部9の凸部端面10aに当接させ、これによりブラケット6に対するハウジング部9の軸方向位置を決定する。この状態で、例えばブラケット6の内周面6aにハウジング部9の円筒面9eを接着固定することにより、動圧軸受装置1のブラケット6に対する位置決めが高精度になされると共に、動圧軸受装置1がモータ側に組込まれる。
【0034】
また、この実施形態では、ブラケット6に対する動圧軸受装置1の位置決めが行われることで、ハブ部11(のディスク搭載面11c)に設けられるディスクの軸方向位置が高精度に設定可能となる。これにより、ディスクとディスクヘッドとの間の対向間隔を適正に管理することができ、ディスクヘッドによるディスク情報の読み取りあるいは書き込み精度の向上を図ることができる。
【0035】
また、ブラケット6に対する動圧軸受装置1の軸方向の位置決めが高精度に行われることで、ブラケット6に固定したステータコイル4に対するロータマグネット5の軸方向相対位置を正確に設定することができる。そのため、ステータコイル4とラジアル方向に対向配置されるロータマグネット5との軸方向へのずれを極力小さくすることができ、このずれに起因した軸方向への引斥力が回転部材3に不規則に付与される事態を極力回避することができる。従って、後述する第一スラスト軸受部T1および第二スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を適正かつ高精度に管理して、かかる軸受性能の向上を図ることができる。
【0036】
上記構成の動圧軸受装置1の内部には潤滑油が充填され、潤滑油の油面は常にシール空間S内に維持される。潤滑油としては、種々のものが使用可能であるが、特にHDD等のディスク駆動装置用の流体軸受装置に提供される潤滑油には、低蒸発率及び低粘度性が要求され、例えばジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼテート(DOZ)等のエステル系潤滑油が好適である。
【0037】
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2(回転部材3)の回転時、スリーブ部8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸部材2の外周面2aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝8a1、8a2の動圧作用によって、軸部材2をラジアル方向に非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2とがそれぞれ構成される。
【0038】
これと同時に、ハウジング部9の第一スラスト軸受面9a(動圧溝9a1形成領域)とこれに対向するハブ部11(円盤部11a)の下端面11a1との間のスラスト軸受隙間、およびスリーブ部8の下端面8c(動圧溝形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、回転部材3をスラスト方向に非接触支持する第一スラスト軸受部T1と第二スラスト軸受部T2とがそれぞれ構成される。
【0039】
以上、本発明の第1実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されることなく、他の構成を採ることもできる。以下、動圧軸受装置の他の構成例について説明する。なお、以下に示す図において、第1実施形態と構成・作用を同一にする部位および部材については、同一の参照番号を付し、重複説明を省略する。
【0040】
図8は、本発明の第2実施形態に係る動圧軸受装置21を示している。この動圧軸受装置21も、図1に示すHDD等のディスク駆動用スピンドルモータに組込まれて使用され、例えば同図に示すステータコイル4、ロータマグネット5、ブラケット6と共にモータを構成している。動圧軸受装置21は、スリーブ部28と、ハウジング部29と、スリーブ部28およびハウジング部29に対して相対回転する回転部材23とを主に備えている。なお、この実施形態においても、ハウジング部29の封口側(底部29bの側)を下側、封口側と反対の側を上側として以下説明する。
【0041】
回転部材23は、主に軸部材22と、ハブ部11とで構成される。このうち、軸部材22は、例えばステンレス鋼等の金属材料で同一径の軸状に形成される。
【0042】
スリーブ部28は、ハウジング部29とは別体に、例えば銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)、圧入、溶着等の固定手段によって後述するハウジング部29の内周面29cの所定位置に固定される。
【0043】
この実施形態では、上述の如く、ハウジング部29の第一スラスト軸受面29aと、これに対向する円盤部11aの下端面11a1との間にのみスラスト軸受隙間が形成され、軸部材22の下端側でスラスト軸受隙間は形成されない。そのため、第2実施形態におけるスリーブ部28は、その内周面28aに、図3に示すような複数の動圧溝を有する一方で、上端面や下端面は動圧溝のない平滑な面となる。
【0044】
ハウジング部29は有底筒状をなし、例えばステンレス鋼等の金属材料を鍛造成形して形成される。このハウジング部29は、図2に示すハウジング部9と蓋部材12とを一体化した形状をなし、底部29bによってその軸方向一端を封口している。
【0045】
ハウジング部29の開口側端面(上端面)の全面または一部環状領域には、スラスト軸受面29aが形成され、このスラスト軸受面29aに、スラスト動圧発生部として、図示は省略するが、例えば図4と同じ形状に動圧溝を配列した領域が形成される。このスラスト軸受面(動圧溝形成領域)29aは、ハブ部11の円盤部11aの下端面11a1と対向し、軸部材22(回転部材23)の回転時には、下端面11a1との間にスラスト軸受部T11のスラスト軸受隙間を形成する(図8を参照)。
【0046】
ハウジング部29の上方部外周には、上方に向かって漸次拡径するテーパ状のシール面29dが形成され、このシール面29dと、ハブ部11に設けられた筒状部11bの内周面11b1との間に、上方に向かって漸次縮小するテーパ状のシール空間Sが形成される。ハウジング部29外周の下端には径一定の円筒面29eが形成され、後述するブラケット6の取付け時、内周面6aに接着剤を介して接着固定される。
【0047】
また、ハブ部11の筒状部11bの下端内周には、軸部材22(回転部材23)の軸方向上方への相対変位時、ハウジング部29と軸方向で係合して、軸部材22を係止する係止部材31が取付けられている。
【0048】
ハウジング部29外周の、シール面29dと円筒面29eとの間に外周側段部29fが形成される。外周側段部29fには、例えば図8に示すように、この外周側段部29fの端面29f1から軸方向下方に向けて突出した凸部30が1又は複数箇所(この実施形態では3箇所)形成される。この場合、凸部30を除く端面29f1の形成領域が、凸部30に隣接する逃げ部となる。
【0049】
凸部30の端面30aは、後述するブラケット6の取付け時における基準面となり、第一スラスト軸受面29aと背向しかつ平行となるよう形成される。この場合においても、端面30aを設けた凸部30のみが外周側段部29fの端面29f1から突出していることで、その仕上げ加工面積(プレス面積)を減じて、かかるプレス面圧を高めることができる。従って、第1実施形態と同様、高い形状精度(平行度、平面度)を有する端面30aを得ることができ、端面30aと第一スラスト軸受面29aとの間の軸方向間隔を高精度に管理することが可能となる。
【0050】
上述のように高精度に仕上げられた端面30aは、モータ側の部材であるブラケット6の取付け時、その軸方向位置決め基準面として機能する。この実施形態では、第1実施形態とは異なり、ブラケット6の端面6bを凸部30の端面30aに直接当接させず、位置決め用の治具(図示は省略する。)を当接させることで、ブラケット6に対するハウジング部29の軸方向位置を決定する。そして、環状の係止部材31を筒状部11bの下端内周に固定した後、ブラケット6を図6に示す位置、すなわち基準面となる端面30aから端面6bが軸方向に所定距離離れた位置でもってハウジング部29をブラケット6に固定する。
【0051】
従って、この実施形態においても、ブラケット6に対するハウジング部29の軸方向位置決めを高精度に行うことができ、第一実施形態と同様の作用効果(スラスト軸受隙間を適正かつ高精度に管理、ディスクヘッドによるディスク情報の読み取りあるいは書き込み精度の向上)を得ることができる。
【0052】
特に、この種の動圧軸受(いわゆるシングルスラストタイプの動圧軸受)においては、ステータコイル4の軸方向位置とロータマグネット5の軸方向位置とをずらすことで、回転部材23に下方への押し付け力を付与し、第一スラスト軸受部T11による浮上力とのバランスを保つようにしている。そのため、ブラケット6に対する動圧軸受装置21の軸方向位置決めを高精度に行うことで、ステータコイル4とロータマグネット5との軸方向へのずれ量をより厳密に管理することができ、これにより、回転部材23のスラストバランスを高精度に保つことができる。
【0053】
なお、以上の実施形態(第1、第2実施形態)では、ハウジング部9、29とスリーブ部8とをそれぞれ別体に形成し、ハウジング部9、29にスリーブ部8、28を固定することで動圧軸受装置1、21を構成した場合を説明したが、これらを一体化したもので動圧軸受装置1、21を構成することも可能である。その場合には、ハウジング部9、29とスリーブ部8、28との一体品を樹脂の射出成形で形成することもでき、あるいは金属の鍛造加工で形成することもできる。
【0054】
また、以上の実施形態(第1、第2実施形態)では、凸部10を略円柱状とし、かかる凸部10を外周側段部9fの端面9f1に、周方向等間隔に3箇所形成した場合を説明したが、もちろんこれ以外の形態を採用することも可能である(以下、凸部30についても共通するものとする。)。例えば図6は、断面矩形状の凸部13を周方向等間隔に3箇所形成した場合を示している。この場合、外周側段部9fは、隣接する凸部13、13間に、いわゆる逃げ部としてのヌスミを複数設けた形状をなす。また、凸部13の端面13aが上記基準面となる。あるいは図7は、円環状の凸部(突条部)14を外周側段部9fの外径側に設けた場合を例示している。この場合、外周側段部9fは、その凸部14を除く内周側を全周に亘って凹状とした形状(逃げ部)をなす。また、凸部14の環状をなす端面14aが上記基準面となる。もちろん図示した以外の形状であっても、その端面の面積が、凸部10を設けた端面(図5〜7でいえば外周側段部9fの端面9f1)の面積より小さい限り、周方向あるいは径方向に間欠して設けることが可能である。
【0055】
また、第1、第2実施形態では、凸部10を、シール面9dと円筒面9eとの間に設けた外周側段部9fに形成した場合を例示したが、凸部10は、その端面10aが、ブラケット6などのモータ側の部材との間の軸方向相対位置を規定する基準面として機能する限り、任意の箇所に形成することができる。段部以外に凸部10を形成可能な箇所として、例えばハウジング部9の軸方向端面、特にハウジング部9の第一スラスト軸受面9aとは反対の側(封口側)に位置する軸方向端面9g(図2、図5〜図7を参照)を挙げることができる。
【0056】
また、以上の実施形態では、基準面となる端面10aを、プレス加工で仕上げる場合を説明したが、これ以外の仕上げ加工、例えば切削加工等を用いる場合であっても、同様に本発明を適用することができる。
【0057】
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2、T11として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑流体の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、図示は省略するが、軸方向の溝をスリーブ部8の円周方向の複数箇所に形成した、いわゆるステップ状の動圧発生部、あるいは、円周方向に複数の円弧面を配列し、対向する軸部材2、22の外周面2a、22aとの間に、くさび状の径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆる多円弧軸受を採用してもよい。
【0059】
あるいは、ラジアル軸受面となるスリーブ部8の内周面8aを、動圧発生部としての動圧溝や円弧面等を設けない真円内周面とし、この内周面と対向する軸部材2の真円状外周面2aとで、いわゆる真円軸受を構成することができる。
【0060】
また、スラスト軸受部T1、T2、T11の少なくとも一方は、同じく図示は省略するが、スラスト軸受面となる領域に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。
【0061】
また、以上の説明では、スリーブ部8、28やハウジング部9、29の側にラジアル軸受面(内周面8a)やスラスト軸受面9a、29aががそれぞれ形成される場合を説明したが、これら動圧発生部が形成される軸受面は固定側の部材に限らず、例えばこれらに対向する軸部材2やフランジ部2bあるいはハブ部11の側(回転側)に設けることもできる。
【0062】
また、以上の説明では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間に動圧作用を発生可能な流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動圧軸受装置を組込んだスピンドルモータの断面図である。
【図2】第1実施形態に係る動圧軸受装置の断面図である。
【図3】スリーブ部の断面図である。
【図4】ハウジング部を矢印Aの方向から見た上端面図である。
【図5】ハウジング部を矢印Bの方向から見た斜視図である。
【図6】ハウジング部の他の構成を示す斜視図である。
【図7】ハウジング部の他の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る動圧軸受装置の断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、21 動圧軸受装置
2、22 軸部材
3、23 回転部材
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 ブラケット
6a 内周面
6b 端面
8 スリーブ部
9、29 ハウジング部
9a、29a 第一スラスト軸受面
9a1 動圧溝
9d シール面
9e 円筒面
9f、29f 外周側段部
9f1、29f1 端面
10、13、14、30 凸部
10a、13a、14a、30a 端面
11 ハブ部
11a 円盤部
11b 筒状部
11c ディスク搭載面
31 係止部材
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2、T11 スラスト軸受部
S シール空間




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013