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発明の名称 動圧軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16849(P2007−16849A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−197700(P2005−197700)
出願日 平成17年7月6日(2005.7.6)
代理人 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾
発明者 古森 功 / 堀 政治
要約 課題
軸受内部における流体の流通を確保し、安定した軸受性能を発揮し得る動圧軸受装置を提供する。

解決手段
軸受スリーブ8の外周面8bに、軸受スリーブ8の両端面8c、8d間で潤滑油を流通可能とする軸方向溝10bを形成すると共に、ハウジング7の小径部7dに、動圧溝8c1を設けた軸受スリーブ8の下端面8cと軸方向で当接する当接面7eを設け、かつこの当接面7eに、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間と軸方向溝10bとを連通させる径方向溝10aを形成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
底部を一体又は別体に有するハウジングと、ハウジングの内周に固定され、一端面に動圧発生部を設けた軸受スリーブと、ハウジングおよび軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、軸受スリーブの一端面とこれに対向する軸部材との間のスラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部と、ハウジングの内周と軸受スリーブの外周との間に設けられ、軸受スリーブの両端面間で流体を流通可能とする流体流路とを備えたものにおいて、
ハウジングに、軸受スリーブの一端面と軸方向で当接する当接面が設けられ、かつこの当接面に、スラスト軸受隙間と流体流路とを連通させる径方向溝が形成されることを特徴とする動圧軸受装置。
【請求項2】
流体流路は、軸受スリーブの外周に形成される軸方向溝で構成される請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項3】
流体流路は、ハウジングの内周に形成される軸方向溝で構成される請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項4】
軸方向溝と径方向溝の位置が周方向で一致している請求項2又は3記載の動圧軸受装置。
【請求項5】
径方向溝はハウジングと一体に型成形される請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項6】
ハウジングは、樹脂の射出成形で形成される請求項5記載の動圧軸受装置。
【請求項7】
動圧発生部は、複数の動圧溝を配列してなる請求項1記載の動圧軸受装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の動圧軸受装置を備えたディスク装置のスピンドルモータ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材を非接触支持する動圧軸受装置に関するものである。この動圧軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、その他の小型モータ用として好適である。
【背景技術】
【0002】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるスラスト軸受部としては、例えば軸受スリーブの端面に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、この軸受スリーブの端面と、これに対向するフランジ部の端面との間にスラスト軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、軸受スリーブの両端面間で潤滑油等の流体を流通させ、上記スラスト軸受隙間を含む軸受内部の圧力バランスを保つ等の目的で、軸受スリーブの外周面に軸方向の溝を形成したものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
その一方で、上記スラスト軸受隙間を適正に管理して、安定したスラスト支持力を得る目的で、軸受スリーブを固定するハウジングの内周に段部を設けたものが知られている。これによれば、軸受スリーブをハウジングの内周に例えば圧入、接着等の手段により固定する際、軸受スリーブの一端面がハウジングに設けた当接面と軸方向に当接するまで軸受スリーブをハウジングの内周に押し込むことで、軸受スリーブのハウジングに対する軸方向の位置決めが精度良くかつ簡便に行われる(例えば、特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開2003−239951号公報
【特許文献2】特開2003−232353号公報
【特許文献3】特開2002−061637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の当接面を備えた動圧軸受装置では、当接面に当接する軸受スリーブの一端面に設けられた動圧発生部、例えば所定形状に配列された複数の動圧溝が、この動圧発生部を設けた軸受スリーブの一端面とこれに対向するフランジ部の端面との間のスラスト軸受隙間と、流体流路とを連通させる機能を果たしている。
【0007】
しかしながら、上述のように、軸受スリーブの軸方向位置決めは、多少の圧入力(押込み力)を伴って行われるのが通常であるから、その押込み力によっては、当接面が弾性変形を生じ、これに当接する軸受スリーブ端面の動圧溝を塞ぐ場合がある。
【0008】
これでは、たとえ上記流体流路で軸方向の流通が確保されていても、動圧溝部が塞がれることによって、例えば上記スラスト軸受隙間と流体流路との間で半径方向の流体の流通が遮られ、軸受内部における流体の円滑な流通が妨げられる恐れがある。この種の問題は、当接面を、金属製の軸受スリーブに比して軟質な材料、例えば樹脂材料で形成する場合に特に顕著となる。
【0009】
本発明の課題は、軸受内部における流体の流通を確保し、高い軸受性能を安定的に発揮し得る動圧軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、底部を一体又は別体に有するハウジングと、ハウジングの内周に固定され、一端面に動圧発生部を設けた軸受スリーブと、ハウジングおよび軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、軸受スリーブの一端面とこれに対向する軸部材との間のスラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部と、ハウジングの内周と軸受スリーブの外周との間に設けられ、軸受スリーブの両端面間で流体を流通可能とする流体流路とを備えたものにおいて、ハウジングに、軸受スリーブの一端面と当接する当接面が設けられ、かつこの当接面に、スラスト軸受隙間と流体流路とを連通させる径方向溝が形成されることを特徴とする動圧軸受装置を提供する。
【0011】
このように、本発明では、ハウジングの当接面に、スラスト軸受隙間と流体流路との間を連通させる径方向溝を形成するようにした。これによれば、上述のように、軸受スリーブ端面の動圧溝(動圧発生部)が、押込み力に伴い弾性変形した当接面によって塞がれるといった事態を避け、軸受内部における流体の円滑な流通を確保することができる。従って、軸受内部における流体の圧力バランスが適正に保たれ、安定した軸受性能を長期に亘って発揮することが可能となる。
【0012】
また、この種の径方向溝は、ハウジングと一体に型成形、例えば樹脂や金属の射出成形で形成することができる。これにより、径方向溝を高精度かつ低コストに形成することができる。また、ハウジング本体の成形後に、別途切削等の機械加工を施す手間を省き、かつ切粉の発生を避けることで、成形後の洗浄作業を簡素化し、かかる作業効率の向上およびコンタミの発生防止とを図ることができる。
【0013】
上記径方向溝は、軸受スリーブの一端面に設けられた動圧発生部が所定形状に配列された複数の動圧溝からなる場合に特に有効である。すなわち、動圧発生部として形成される動圧溝は、その溝深さが数μm〜数十μmとそれほど深くないので、弾性変形を生じた当接面によって容易に塞がれる可能性がある。これに対して、本発明のように、径方向溝をハウジングの当接面に形成すれば、動圧溝に比べて溝深さを大きくとることができる。従って、当接面の弾性変形によって、動圧溝が塞がれるといった事態を確実に回避し、かつ軸受内部の流体の流通量に合わせて、適宜径方向溝のサイズ(溝深さ)を設定することができる。
【0014】
ハウジングの内周と軸受スリーブの外周との間に形成される流体流路は、例えば軸受スリーブの外周に形成された軸方向溝で構成することができ、またハウジングの内周に形成された軸方向溝で構成することもできる。後者の場合、軸方向溝および径方向溝を共にハウジングと一体に型成形することにより、加工工程を簡略化して、さらなる低コスト化を図ることができる。また、これら軸方向溝の形成位置と、径方向溝の形成位置とを円周方向で一致させることで、流体の流体流路が遮断され、あるいは迂回するといった事態を避け、より効率的に流体の流通を図ることができる。
【0015】
上記構成の動圧軸受装置は、この動圧軸受装置を備えたディスク装置のスピンドルモータとして提供することもできる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、軸受内部における流体の流通を確保し、高い軸受性能を安定的に発揮し得る動圧軸受装置を低コストに提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、ディスクハブ3を取付けた軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の外周に取付けられている。動圧軸受装置1のハウジング7は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)Dが1又は複数枚保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
【0019】
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、底部7bを有するハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8と、ハウジング7および軸受スリーブ8に対して相対回転する軸部材2とを主な構成要素として構成される。なお、説明の便宜上、ハウジング7の底部7bの側を下側、底部7bと反対の側を上側として以下説明する。
【0020】
軸部材2は、例えばSUS鋼などの金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられるフランジ部2bとを備える。なお、軸部材2は、金属材料と樹脂材料とのハイブリッド構造とすることもでき、その場合、軸部2aの少なくとも外周面2a1を含む鞘部が上記金属で形成され、残りの箇所(例えば軸部2aの芯部やフランジ部2b)が樹脂で形成される。なお、フランジ部2bの強度を確保するため、フランジ部2bを樹脂・金属のハイブリッド構造とし、軸部2aの鞘部と共に、フランジ部2bの芯部を金属製とすることもできる。
【0021】
軸受スリーブ8は、例えば金属製の非孔質体あるいは焼結金属からなる多孔質体で円筒状に形成される。この実施形態では、銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。もちろん、非孔質と多孔質とを問わず、軸受スリーブ8を樹脂やセラミック等、金属以外の材料で形成することも可能である。
【0022】
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として、例えば図3(a)に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をヘリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。この動圧溝8a1、8a2の形成領域はラジアル軸受面として、軸部2aの外周面2a1と対向し、軸部材2の回転時には、外周面2a1との間に後述するラジアル軸受部R1、R2のラジアル軸受隙間を形成する(図2を参照)。また、上側の動圧溝8a1の形成領域では、動圧溝8a1が、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。
【0023】
軸受スリーブ8の外周面8bには、軸方向に延びる溝10bが軸方向全長に亘って1又は複数本形成される。この実施形態では、3本の軸方向溝10bを円周方向等間隔に形成している。これら軸方向溝10bは、軸受スリーブ8をハウジング7の内周に固定した状態では、対向するハウジング7の内周面7cとの間に潤滑油の流体流路を構成する(図2を参照)。また、これら軸方向溝10bは、例えば軸受スリーブ8本体をなす圧粉体の成形型に予め軸方向溝10bに対応する箇所を設けておくことで、軸受スリーブ8本体の圧粉体成形と同時に成形することができる。
【0024】
軸受スリーブ8の下端面8cの全面または一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、図3(b)に示すように、複数の動圧溝8c1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝8c1の形成領域はスラスト軸受面として、フランジ部2bの上端面2b1と対向し、軸部材2の回転時には、上端面2b1との間に後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0025】
軸受スリーブ8の上端面8dの、径方向の略中央部には、図3(a)に示すように、V字断面の周方向溝8d1が全周に亘って形成される。周方向溝8d1によって区画された上端面8dの内径側領域には、1又は複数本の半径方向溝8d2が形成される。この半径方向溝8d2は、図2に示すように、軸受スリーブ8にシール部9を当接させた状態では、周方向溝8d1と軸受スリーブ8の内周面8a上端との間を連通する。
【0026】
ハウジング7は、LCPやPPS、PEEK等の結晶性樹脂、あるいはPSU、PES、PEI等の非晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物で射出成形され、例えば図2に示すように、側部7aと、側部7aの下端に一体に形成された底部7bとを有する。ハウジング7を形成する上記樹脂組成物としては、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて上記ベース樹脂に適量配合したものが使用可能である。
【0027】
底部7bの上端面7b1の全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図4に示すように、複数の動圧溝7b11をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝7b11の形成領域はスラスト軸受面として、フランジ部2bの下端面2b2と対向し、軸部材2の回転時には、下端面2b2との間に後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
【0028】
ハウジング7の内周面7cには、軸受スリーブ8の外周面8bが、例えば接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)、圧入、溶着等の適宜の手段で固定される。
【0029】
内周面7cの下端には、側部7aよりも小径な小径部7dが形成される。この実施形態では、小径部7dの内周面7d1と側部7aの内周面7cとの間の段差が、軸受スリーブ8の動圧発生部を設けた下端面8cと当接する当接面7eとなる。これにより、小径部7dの軸方向寸法は、当接面7eに軸受スリーブ8の下端面8cを当接させた状態では、軸受スリーブ8の下端面8cから底部7bの上端面7b1までの軸方向幅に一致する。
【0030】
小径部7dの上端面となる当接面7eには、放射状に延びる径方向の溝10aが1又は複数本形成される。径方向溝10aは、この実施形態では、図4に示すように、円周方向等間隔に3箇所設けられる。これら径方向溝10aは、軸受スリーブ8の下端面8cを当接面7eに当接させた状態では、その外径端が軸方向溝10bを介して軸受スリーブ8の上端面8dと連通する。また、径方向溝10aの内径端が、小径部7dとフランジ部2bとの径方向隙間を介して、軸受スリーブ8の下端面8cとフランジ部2bの上端面2b1との軸方向隙間(第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間となる領域)にも連通する(何れも図2を参照)。これら径方向溝10aは、例えば底部7bの上端面7b1の動圧溝7b11と共に、ハウジング7を成形する成形型の所要部位(当接面7eや上端面7b1を成形する部位)に、径方向溝10aおよび動圧溝7b11を成形する溝型を加工しておくことで、ハウジング7と同時に型成形することができる。
【0031】
上記構成の小径部7dおよび当接面7eが形成されたハウジング7の内周に軸受スリーブ8を、その内周に軸部材2を挿入した状態で、ハウジング7の内周に所定の圧入代でもって押し込んで行き、軸受スリーブ8の下端面8cが小径部7dの上端面、すなわち当接面7eと当接したところで軸受スリーブ8のハウジング7に対する軸方向位置を決定する。その後、例えばハウジング7の内周面7cに予め塗布しておいた接着剤を固化させることで、軸受スリーブ8の外周面8bをハウジング7の内周面7cに接着固定する。この際、軸受スリーブ8の下方への押込みに伴い、樹脂製の当接面7eが弾性変形し、当接する下端面8cに設けた動圧溝8c1を塞いだ場合であっても、当接面7eの側に設けた径方向溝10aによって、軸方向溝10bと、上記スラスト軸受隙間となる領域との間で連通状態が確保される。また、上述の理由から、軸受スリーブ8の下端面8cの、当接面7eとの当接部位に位置する動圧溝8c1は省略することもできる。
【0032】
また、この実施形態では、径方向溝10aと軸方向溝10bの位置が周方向で一致するように、軸受スリーブ8をハウジング7の内周に固定しているが、軸方向溝10bと径方向溝10aの円周方向位置は必ずしも一致させる必要はなく、円周方向にずれていてもよい。この場合、径方向溝10aと軸方向溝10b間での流体(潤滑油)の流通は、軸受スリーブ8の下端外周に設けられたチャンファ8eと、当接面7e、および側部7aの内周面7cとの間の隙間を介して行われる(図2を参照)。
【0033】
シール手段としてのシール部9は、図2に示すように、例えば金属材料や樹脂材料でハウジング7とは別体に形成され、ハウジング7の側部7aの上端部内周に圧入、接着、溶着、溶接等の手段で固定される。この実施形態では、シール部9の固定は、シール部9の下端面9bを軸受スリーブ8の上端面8dに当接させた状態で行われる(図2を参照)。
【0034】
シール部9の内周面9aにはテーパ面が形成されており、このテーパ面と、テーパ面に対向する軸部2aの外周面2a1との間には、上方に向けて半径方向寸法が漸次拡大する環状のシール空間Sが形成される。シール部9で密封されたハウジング7の内部空間には、潤滑油が注油され、ハウジング7内が潤滑油で満たされる(図2中の散点領域)。この状態では、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。
【0035】
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8のラジアル軸受面(内周面8aの動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心m側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝8a1、8a2の動圧作用によって、軸部材2をラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが構成される。
【0036】
これと同時に、軸受スリーブ8のスラスト軸受面(下端面8cの動圧溝8c1形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間のスラスト軸受隙間、およびハウジング7のスラスト軸受面(上端面7b1の動圧溝7b11形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの下端面2b2との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝7b11、8c1の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、軸部材2をスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と、第2スラスト軸受部T2とが構成される。この際、第1、第2スラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間(の総和)は、常に小径部7dの軸方向幅からフランジ部2bの軸方向幅を減じた値に設定される。これにより、両スラスト軸受隙間(の総和)が精度良く管理される。
【0037】
上述のように、軸受スリーブ8の外周に軸受スリーブ8両端面間の流体流路となる軸方向溝10bを、ハウジング7の当接面7eに径方向溝10aをそれぞれ設けることで、これら軸方向溝10b、径方向溝10aを介して、ハウジング7の下端内部に位置するスラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間と、ハウジング7の開口側に形成されるシール空間Sとの間が連通状態となる。これによれば、例えば何らかの理由でスラスト軸受部T1、T2の側の流体(潤滑油)圧力が過度に高まり、あるいは低下するといった事態を避けて、軸部材2をスラスト方向に安定して非接触支持することが可能となる。
【0038】
また、この実施形態では、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝8a1は、軸方向中心mに対して軸方向非対称(X1>X2)に形成されているため(図3参照)、軸部材2の回転時、動圧溝8a1による潤滑油の引き込み力(ポンピング力)は上側領域が下側領域に比べて相対的に大きくなる。そして、この引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間に満たされた潤滑油が下方に流動し、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間→径方向溝10a→軸方向溝10b→上端面8dと下端面9b外径側領域との間の軸方向隙間→周方向溝8d1→半径方向溝8d2という経路を循環して、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受隙間に再び引き込まれる。このように、潤滑油がハウジング7の内部空間を流動循環するように構成することで、各軸受隙間をはじめとする軸受内部の圧力バランスが適正に保たれる。また、軸受内部空間の潤滑油の好ましくない流れ、例えば潤滑油の圧力が局部的に負圧になる現象を防止して、負圧発生に伴う気泡の生成、気泡の生成に起因する潤滑油の漏れや振動の発生等の問題を解消することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、他の構成にも適用することができる。
【0040】
上記実施形態では、軸方向溝10bを、軸受スリーブ8の外周面8bに設けた場合を説明したが、軸方向溝10bは流体流路としてハウジング7の内周と軸受スリーブ8の外周との間に形成されていればよく、例えば図5に示すように、ハウジング7の内周面7cに形成することもできる。この場合には、軸受内部の流体を循環流通させるための径方向溝10aおよび軸方向溝10bを、何れもハウジング7の側に形成することができるので、軸受スリーブ8の外周面8bに軸方向溝10bを形成する手間が省ける。特に、軸受スリーブ8を焼結金属で形成する場合、この種の溝の成形は、圧粉体の成形と同時に行われるため、圧粉成形金型のダイやパンチには軸方向溝10bに対応したものが必要とされるが、ハウジング7の側に設けることで当該金型を簡素化でき、かかるコストの低減化が可能となる。
【0041】
また、上記実施形態では、径方向溝10aが形成される当接面7eを、ハウジング7と一体に設けた場合を説明したが、特にこの形態に限ることはなく、例えば当接面7eをハウジング7と別体に設けることも可能である。例えば図6は、ハウジング7の底部7bをハウジング7の側部7aと別体に形成し、かつ底部7bの側に当接面7eを設けた場合を図示している。同図において、当接面7eは、別体としての底部7bの外周から軸受スリーブ8側(図中上方向)に突出した円筒状の突出部7fの上端面を構成する。また、シール部9は、例えば樹脂の射出成形などでハウジング7と一体に形成される。
【0042】
この場合、予め軸受スリーブ8を、上端面8dを側部7aと一体形成されたシール部9の下端面9bと当接させた状態でハウジング7の内周に固定する。そして、別体としての底部7bをハウジング7の内周に押し込んで行き、軸受スリーブ8の下端面8cが底部7bの当接面7eと当接したところで軸受スリーブ8のハウジング7に対する軸方向位置を決定する。その後、例えばハウジング7の内周面7cに予め塗布しておいた接着剤を固化させることで、底部7bをハウジング7の内周に接着固定する。
【0043】
このように、別体としての底部7bをハウジング7に固定する場合であっても、当接面7eの側に径方向溝10aを設けることで、底部7bの押込みに伴う動圧溝8c1の閉塞の有無に依らず、軸方向溝10bと、各スラスト軸受隙間となる領域との間での連通状態を確保することができる。従って、常に軸受内部の圧力バランスを保ち、安定した軸受性能を発揮することができる。
【0044】
また、以上の実施形態では、軸受スリーブ8の側に周方向溝8d1や半径方向溝8d2を設けた場合を例示したが、これらの溝を対向するシール部9の側に設けることもできる。これによれば、軸受スリーブ8の、内周面8aおよび下端面8cを除く外表面を全て平滑な面とすることができるので、成形金型をさらに簡素化して、かかるコストをより一層低減することができる。さらには、内周面8aや下端面8cに形成される動圧溝8a1、8a2、8c1を対向する軸部材2の側に設けることで、軸受スリーブ8の外表面を全て平滑な面とすることもできる。
【0045】
また、以上の実施形態では、ハウジング7に形成される径方向溝10aを、断面V字状としたものを例示したが、もちろんこれ以外の溝形状(溝断面形状)とすることも可能である。また、径方向溝10aの本数についても、図示のように3本に限ることなく、2本あるいは4本以上設けることも可能である。また、径方向溝10aを設ける箇所は、樹脂製あるいは金属製とすることもでき、成形方法として、例えば樹脂や金属の射出成形、あるいは金属のプレス成形、鍛造成形等を採用することができる。
【0046】
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑流体の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、いわゆるステップ軸受や多円弧軸受を採用してもよい。なお、以下に示す図示例は、何れも軸受スリーブ8の内周面8aに動圧発生部を設けた場合を例示しているが、上述のように、これら動圧発生部を、内周面8aと対向する軸部2aの外周面2a1に設けても構わない。
【0048】
図7は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の一例を示している。同図において、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域は、複数の円弧面8a3(この図では3円弧面)で構成されている。各円弧面8a3は、回転軸心Oからそれぞれ等距離オフセットした点を中心とする偏心円弧面であり、円周方向で等間隔に形成される。各偏心円弧面8a3の間には軸方向の分離溝8a4がそれぞれ形成される。
【0049】
軸受スリーブ8の内周面8aに軸部材2の軸部2aを挿入することにより、軸受スリーブ8の偏心円弧面8a3および分離溝8a4と、軸部2aの真円状外周面2a1との間に、第1および第2ラジアル軸受部R1、R2の各ラジアル軸受隙間がそれぞれ形成される。ラジアル軸受隙間のうち、偏心円弧面8a3と真円状外周面2a1とで形成される領域は、隙間幅を円周方向の一方で漸次縮小させたくさび状隙間8a5となる。くさび状隙間8a5の縮小方向は軸部材2の回転方向に一致している。
【0050】
図8は、第1および第2ラジアル軸受部R1、R2を構成する多円弧軸受の他の実施形態を示すものである。この実施形態では、図7に示す構成において、各偏心円弧面8a3の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ回転軸心Oを中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおけるラジアル軸受隙間(最小隙間)8a6は一定となる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
【0051】
図8では、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が3つの円弧面8a7で形成されると共に、3つの円弧面8a7の中心は、回転軸心Oから等距離オフセットされている。3つの偏心円弧面8a7で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間8a8は、円周方向の両方向に対してそれぞれ漸次縮小した形状を有している。
【0052】
以上説明した第1および第2ラジアル軸受部R1、R2の多円弧軸受は、何れもいわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらには6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用してもよい。また、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成とする他、軸受スリーブ8の内周面8aの上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としてもよい。
【0053】
また、スラスト軸受部T1、T2の一方又は双方は、例えば図示は省略するが、スラスト軸受面となる領域に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。
【0054】
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2やスラスト軸受部T1、T2を動圧軸受で構成した場合を説明したが、これ以外の軸受で構成することもできる。例えば、ラジアル軸受面となる軸受スリーブ8の内周面8aを、動圧発生部としての動圧溝8a1や円弧面8a3を設けない真円内周面とし、この内周面と対向する軸部2aの真円状外周面2a1とで、いわゆる真円軸受を構成することができる。
【0055】
また、以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間に動圧作用を発生可能な流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置を組込んだ情報機器用スピンドルモータの断面図である。
【図2】動圧軸受装置の断面図である。
【図3】(a)は軸受スリーブの縦断面図、(b)は下端面図である。
【図4】ハウジングのA−A断面図である。
【図5】動圧軸受装置の他の構成例を示す図である。
【図6】動圧軸受装置の他の構成例を示す図である。
【図7】ラジアル軸受部の他の構成例を示す図である。
【図8】ラジアル軸受部の他の構成例を示す図である。
【図9】ラジアル軸受部の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
7a 側部
7b 底部
7c 内周面
7d 小径部
7e 当接面
8 軸受スリーブ
8a 内周面
8a1、8a2 動圧溝
8a3、8a7 偏心円弧面
8b 外周面
8c 下端面
8c1 動圧溝
8d 上端面
8d1 周方向溝
8d2 半径方向溝
9 シール部
10a 径方向溝
10b 軸方向溝
S シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部




 

 


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