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インホイールモータの軸受装置 - NTN株式会社
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発明の名称 インホイールモータの軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16847(P2007−16847A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−197661(P2005−197661)
出願日 平成17年7月6日(2005.7.6)
代理人 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
発明者 石川 恭光 / 片山 康行 / 今中 宏則
要約 課題

中空モータを使用したインホイールモータにおいて、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置を軸受に内蔵してコンパクト化を図ると共に、この回転速度検出装置の固定による軸受の変形を抑制したインホイールモータの軸受装置を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、
前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、
前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、
これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、
これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、
前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、
前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定されると共に、
このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する回転速度センサが保持され、断面が略L字状に、全体として円環の一部となる扇型に形成された検出部が前記内輪の固着手段を介して固定されていることを特徴とするインホイールモータの軸受装置。
【請求項2】
前記検出部が、前記回転速度センサが包埋されたセンサホルダと、このセンサホルダを弾性部材を介してフローティング状態で支持する保持部とを備え、前記センサホルダの外周面に突条が形成され、前記パルサーリングの内周面に所定の接触圧で摺接されている請求項1に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項3】
前記内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成されると共に、前記検出部が鋼板製のカバーを備え、このカバーが前記キー溝に係合されている請求項1または2に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項4】
前記外ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成されると共に、前記パルサーリングが、前記外輪に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部と、この嵌挿部から径方向外方に延びる立板部とからなる鋼板製の芯金を備え、この芯金の立板部が前記キー溝に係合されている請求項1乃至3いずれかに記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項5】
前記外ケースが、両端部に径方向外方に延びるフランジを一体に有する外ケース本体と、この外ケース本体の軸方向外方部を閉塞する環状の蓋部材とからなり、前記外ケース本体と蓋部材の対向する端部内周に円筒状の嵌合部がそれぞれ形成され、これら嵌合部に前記外輪が所定の径方向すきまを介して内嵌されると共に、前記外ケース本体と蓋部材とで前記外輪の取付フランジが挟持され、当該取付フランジを貫通する固定ボルトを介して外輪が前記外ケースに締結されている請求項1乃至4いずれかに記載のインホイールモータの軸受装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のダイレクトドライブホイールを駆動輪とする車両に用いられるインホイールモータの軸受装置に関し、特に、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が軸受に内蔵されたインホイールモータの軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等モータによって駆動される車両においては、モータを車輪に内蔵するインホイールモータシステムが採用されつつある。ここで、従来はモータステータ部が車両の懸架装置を構成するナックルにスピンドル軸が回転可能に固定されるため、ばね下重量がインホイールモータの分だけ増加し、その結果、タイヤ接地力変動が増加してロードホールディング性が悪化してしまうといった問題があった。
【0003】
そこで、こうした問題を解決するため、図6に示すようなインホイールモータが提案されている。このインホイールモータは、ステータ50Sを支持する非回転側ケース50aが、緩衝機構56を介してナックル57に対して弾性支持されると共に、ロータ50Rを支持する回転側ケース50bとホイール58とが、直動ガイド62、63を用いて連結したフレキシブルカップリング64により結合されている。ここで、緩衝機構56は、直動ガイド51を介して互いに車両の上下方向に作動するばね52およびダンパー53により結合された2枚のプレート54、55を備えている。また、直動ガイド62、63は、複数枚の中空円盤状のプレート59〜61の作動方向が互いに直交するように配置されている。
【0004】
こうしたインホイールモータシステムでは、モータ50を車両の足回り部品に対してフローティングマウントして、モータ50自身をダイナミックダンパーのウェイトとして作用させることができるので、不整路走行時の接地性能、乗り心地性能をともに向上させることができると共に、フレキシブルカップリング64により、モータ軸とホイール軸がどの方向にも偏心可能に結合されているので、モータ50からホイール58へのトルクを効率良く伝達させることができる。
【0005】
さらに、モータ50とホイール58間に形成される空隙にダストブーツ65、66を設けて外部から遮断するようにしたので空隙への石や塵芥等の侵入を防止でき、インホイールモータシステムの信頼性を向上させることができる。
【0006】
また、ケース50a、50b間には、ロータ50Rを回転自在に支持する軸受67が嵌合されている。図7に拡大して示すように、この軸受67の外側には固定カバー68、69が取り付けられ、互いに対向する面に階段状の切欠き68k、69kが設けられ、これら切欠き68k、69kに蓋部材68p、69pを取り付けて中空部70が形成されている。この中空部70内にモータ軸方向に摺動可能な中空円盤状の隔壁を構成する樹脂リング71が収容されている。これにより、モータ50の運転時、モータ50の発熱でモータ50内部の温度が上昇し、外気圧に対してモータ内圧が高くなってもこの圧力差によってモータ50内への水の浸入を防止することができ、コンパクトな構成の防水機構を実現することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−90696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のインホイールモータにおいて、乗り心地性能向上の観点からばね下重量を軽減する必要があり、軸受67に超薄肉の大径軸受が採用されている。一方、装置の組立性の向上とコンパクト化を狙って、近年、こうした軸受に、車輪の回転速度を検出してアンチロックブレーキシステム(ABS)を制御するための回転速度検出装置が内蔵される仕様が増大してきている。然しながら、この種の超薄肉の大径軸受に回転速度検出装置を内蔵した場合、軸受の剛性が極めて低いため、軸受軌道輪に回転速度検出装置を圧入固定した時、軌道輪が変形して軸受加工時の精度が崩れ、所望の軸受精度を確保することが困難となる恐れがある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置を軸受に内蔵してコンパクト化を図ると共に、この回転速度検出装置の固定による軸受の変形を抑制したインホイールモータの軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定されると共に、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する回転速度センサが保持され、断面が略L字状に、全体として円環の一部となる扇型に形成された検出部が前記内輪の固着手段を介して固定されている構成を採用した。
【0010】
このように、中空モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、ステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、転がり軸受が、外ケースに内嵌された外輪と、内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、回転速度検出装置を構成するパルサーリングが外輪に固定されると共に、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する回転速度センサが保持され、断面が略L字状に、全体として円環の一部となる扇型に形成された検出部が固定ボルト等の内輪の固着手段を介して固定されているので、超薄肉の軸受であっても、内輪を変形させずに検出部を確実に固定することができる。したがって、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置を軸受に内蔵してコンパクト化が図れると共に、この回転速度検出装置の固定による軸受の変形を抑制したインホイールモータの軸受装置を提供することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明のように、前記検出部が、前記回転速度センサが包埋されたセンサホルダと、このセンサホルダを弾性部材を介してフローティング状態で支持する保持部とを備え、前記センサホルダの外周面に突条が形成され、前記パルサーリングの内周面に所定の接触圧で摺接されていれば、回転速度センサとパルサーリングとのエアギャップが、煩雑なすきま調整をすることなく所定値に正確かつ簡便に設定することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明のように、前記内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成されると共に、前記検出部が鋼板製のカバーを備え、このカバーが前記キー溝に係合されていれば、内輪を内ケースに圧入固定せずとも、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される内ケースの影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、前記外ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成されると共に、前記パルサーリングが、前記外輪に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部と、この嵌挿部から径方向外方に延びる立板部とからなる鋼板製の芯金を備え、この芯金の立板部が前記キー溝に係合されていれば、被検出部と外輪との軸心を一致させることができ、回転速度検出装置の検出精度を高めることができる。また、外輪を外ケースに圧入固定せずとも、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができ、固定される外ケースの影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明のように、前記外ケースが、両端部に径方向外方に延びるフランジを一体に有する外ケース本体と、この外ケース本体の軸方向外方部を閉塞する環状の蓋部材とからなり、前記外ケース本体と蓋部材の対向する端部内周に円筒状の嵌合部がそれぞれ形成され、これら嵌合部に前記外輪が所定の径方向すきまを介して内嵌されると共に、前記外ケース本体と蓋部材とで前記外輪の取付フランジが挟持され、当該取付フランジを貫通する固定ボルトを介して外輪が前記外ケースに締結されていれば、内ケースに対する外ケースの軸心が一致して回転精度を向上させることができると共に、外輪を圧入することなく外ケースに固定することができ、ケースの精度の影響を受けることなく軸受加工時の精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るインホイールモータの軸受装置は、中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定されると共に、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する回転速度センサが保持され、断面が略L字状に、全体として円環の一部となる扇型に形成された検出部が、前記内輪の固着手段を介して固定されているので、超薄肉の軸受であっても、内輪を変形させずに検出部を確実に固定することができる。したがって、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置を軸受に内蔵してコンパクト化が図れると共に、この回転速度検出装置の固定による軸受の変形を抑制したインホイールモータの軸受装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定されると共に、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する回転速度センサと、この回転センサが包埋されたセンサホルダと、このセンサホルダを弾性部材を介してフローティング状態で支持する保持部とを備え、断面が略L字状に、全体として円環の一部となる扇型に形成された検出部が前記内輪の外周一箇所に固定ボルトを介して固定され、前記センサホルダの外周面に突条が形成され、前記パルサーリングの内周面に所定の接触圧で摺接されている。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第1の実施形態を示す要部断面図、図2は、図1の要部拡大図である。なお、この実施形態では、全体構成は、従来技術で説明した部分と共通するため重複した説明を避け、本発明に係る軸受装置の特徴部分のみの説明を行う。
【0018】
このインホイールモータの軸受装置は、中空状のモータ1と、このモータ1が装着された外ケース2および内ケース3と、これらケース2、3間に固定された転がり軸受4と、ケース2、3間に形成される環状空間の開口部を密閉するシール5とを備えている。モータ1は、ロータ1aと、このロータ1aに所定の径方向すきまを介して対向配置されたステータ1bとからなる。
【0019】
回転側の外ケース2は円筒状に形成され、その中央部の内周面にロータ1aが固定されている。この外ケース2は、両端部に径方向外方に延びるフランジ6bを一体に有する外ケース本体6と、この外ケース本体6の軸方向外方部を閉塞する蓋部材7とからなる。一方、固定側の内ケース3は円筒状に形成され、その中央部の外周面にステータ1bが固定されている。後述する転がり軸受4は、内ケース3に対して外ケース2を回転自在に支持し、これらケース2、3間に固定されている。
【0020】
内ケース3は、その端部に小径段部3aが形成され、固定リング8が圧入されている。なお、固定リング8は、後述する転がり軸受4が軸方向に移動するのを防止している。シール5は、この固定リング8と蓋部材7との間に介装されている。このシール5は、蓋部材7の内周面に嵌合され、断面が略L字状で、全体として円環状に形成された第1のシール板9と、この第1のシール板9に対向配置して固定リング8の外周面に嵌合され、断面が略L字状で、全体として円環状に形成された第2のシール板(スリンガ)10とからなる。
【0021】
第1のシール板9は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成され、内縁部にサイドリップ11aおよび一対のラジアルリップ11b、11cを有するシール部材11が一体に加硫接着されている。
【0022】
第2のシール板10は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成されている。この第2のシール板10は、固定リング8に圧入される円筒部10aと、この円筒部10aから径方向外方に延びる立板部10bとからなる。そして、前記第1のシール板9のサイドリップ11aがこの立板部10bに摺接されると共に、一対のラジアルリップ11b、11cが円筒部10aに摺接され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。ここで、第1のシール板9と第2のシール板10の外縁とは僅かな径方向すきまを介して対峙し、所謂ラビリンスシールを構成している。本実施形態のシール5は、このようなシール構成を採用しているので、長期間に亙って強固な、かつ安定した密封性を備え、転がり軸受4の耐久性を向上させることができる。
【0023】
ここで、外ケース本体6および蓋部材7の対向する端部内周に円筒状の嵌合部6a、7aが形成され、これら嵌合部6a、7aに転がり軸受4の外輪12が所定の径方向すきまを介して内嵌されると共に、外輪12の取付フランジ12bが外ケース本体6と蓋部材7とで挟持された状態で、取付フランジ12bを貫通する固定ボルト24によって固定されている。具体的には、外ケース本体6には周方向に複数のボルト孔6cが穿設されると共に、蓋部材7には、このボルト孔6cに対応する位置に雌ねじ7bが形成されている。そして、外輪12の取付フランジ17bに、これらボルト孔6cおよび雌ねじ7bに対応して取付孔12cが形成され、固定ボルト24がボルト孔6cおよび取付孔12cを介して雌ねじ7bに締結されている。
【0024】
このように、本実施形態では、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータ1のロータ1aを回転自在に支承する転がり軸受4が超薄肉の大径軸受であっても外輪12の剛性が高まり、かつその加工性が向上して所望の加工精度が得られると共に、組立後の変形を防止することができ、固定される相手部材、ここでは、外ケース2の加工精度に影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0025】
転がり軸受4は深溝玉軸受からなり、図2に拡大して示すように、外周に径方向外方に延びる取付フランジ12bを一体に有し、内周に外側転走面12aが形成された外輪12と、外周に内側転走面13aが形成された内輪13と、両転走面12a、13a間に保持器14を介して転動自在に収容された転動体(ボール)15とを備えている。この転がり軸受4には、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御し、車輪(図示せず)の回転速度を検出する回転速度検出装置16が内蔵されている。なお、転がり軸受4は深溝玉軸受に限らず、ラジアル荷重とスラスト荷重が負荷できる転がり軸受であれば良く、例えば、アンギュラ玉軸受や円錐ころ軸受でも良い。
【0026】
回転速度検出装置16は、芯金17と、この芯金17に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ18とからなるパルサーリング19と、このパルサーリング19に所定の径方向すきま(エアギャップ)を介して対向配置された回転速度センサ20を有する検出部21とからなる。なお、パルサーリング19は、磁気エンコーダ18が接合されたものに限らず、円周方向に亙る特性を交互に、かつ等間隔に変化させるものであれば良く、例えば、周方向に凹凸あるいは穿孔が形成されたものであっても良い。また、このパルサーリング19の形式に伴い、回転速度センサ20も、ホールIC素子、磁気抵抗素子(MR素子)等を適宜選択して適用できる。
【0027】
ここで、本実施形態では、パルサーリング19の芯金17は、耐食性を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって形成されている。また、この芯金17は、外輪12に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部17aと、この嵌挿部17aから径方向外方に延び、外輪12の端面に当接される立板部17bとを有し、断面が略L字状に、全体として円環状に形成されている。そして、外輪12の内周面に環状溝22が形成され、この環状溝22に芯金17の舌片23が係合されている。
【0028】
舌片23は、図3に拡大して示すように、芯金17の嵌挿部17aから一部切り起こし加工によって形成されている。こうして形成された舌片23は、芯金17を外輪12の内周面に嵌挿する過程で弾性変形し、環状溝22の位置と一致した時に復元して環状溝22に係合される。したがって、外輪12を変形させずにパルサーリング19を軸方向に容易に位置決め固定できると共に、芯金17の嵌挿部17aを外輪12に嵌挿させることにより、パルサーリング19と外輪12との軸心を一致させることができ、回転速度検出装置16の検出精度を高めることができる。
【0029】
磁気エンコーダ18は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなる。ここでは、磁気エンコーダ18をエラストマ製としたものを例示したが、これに限らず、例えば、フェライト等からなる強磁性体粉を金属バインダーで固めた燒結金属製であっても良い。
【0030】
一方、検出部21は、回転速度センサ20と、この回転速度センサ20を樹脂で一体モールドし、断面が略L字状で、全体として円環の一部となる扇型に形成された保持部25とを備えている(図2参照)。回転速度センサ20は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路が組み込まれたICとからなる。
【0031】
この検出部21は内輪13の端面に固定ボルト24を介して締結されている。したがって、内輪13を変形させずに検出部21を確実に固定することができる。ここで、図4に示すように、回転速度センサ20はセンサホルダ26に包埋され、このセンサホルダ26は保持部25に対して弾性部材27を介してフローティング状態で支持されている。すなわち、保持部25の外周面に凹所25aが形成され、この凹所25aにセンサホルダ26が出没自在に収容されると共に、センサホルダ26の内周面に一対の凹所26a、26aが形成され、これら凹所26aにコイルスプリング等からなる弾性部材27が付勢状態で装着されている。また、センサホルダ26の外周面には、先端が円弧状に形成された一対の突条26b、26bが突設され、前記磁気エンコーダ18の内周面に所定の接触圧で摺接されている。こうした構成を採用することにより、回転速度センサ20と磁気エンコーダ18とのエアギャップは、煩雑なすきま調整をすることなく所定値に正確かつ簡便に設定することができる。
【実施例2】
【0032】
図5(a)は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大図、図5(b)は、(a)の側面図である。なお、この第2の実施形態は前述した第1の実施形態(図2)と基本的には回転速度検出装置の構成が異なるのみで、その他同一部分、部位には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
本実施形態では、回転速度検出装置28は、パルサーリング29と、このパルサーリング29に所定の径方向すきまを介して対向配置された検出部30とからなる。パルサーリング29は、芯金31と、この芯金31に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ32とからなる。
【0034】
芯金31は、耐食性を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって形成されている。また、この芯金31は、外輪12’に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部31aと、この嵌挿部31aから径方向外方に延び、外輪12’の端面に当接される立板部31bとを有し、断面が略L字状に、全体として円環状に形成されている。磁気エンコーダ32は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなる。
【0035】
ここで、転がり軸受4’は、内周に外側転走面12aが形成された外輪12’と、外周に内側転走面13aが形成された内輪13と、両転走面12a、13a間に保持器14を介して転動自在に収容された転動体15とを備えている。そして、パルサーリング29は、外輪12’の端面に固定ボルト24を介して締結されると共に、外ケース2の軸受嵌合部2aには軸方向に延びるキー溝33が形成され、このキー溝33に芯金31の立板部31bが係合されている。これにより、外輪12’を外ケース2の軸受嵌合部2aに圧入しなくても外ケース2に容易に固定することができ、外輪12’の変形を抑制しつつ、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができる。したがって、外輪12’は固定される外ケース2の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0036】
一方、検出部30は、回転速度センサ20と、この回転速度センサ20を樹脂で一体モールドした保持部25’と、この保持部25’を包持するカバー34とを備えている。検出部30は、前述した実施形態と同様、断面が略L字状で、全体として扇型に形成され、内輪13の端面に固定ボルト24を介して締結されると共に、内ケース3の外周面(軸受嵌合部)に軸方向に延びるキー溝35が形成され、このキー溝35にカバー34の凸部34aが係合されている。これにより、内輪13を変形させずに検出部30を固定することができると共に、内輪13を内ケース3の外周に圧入しなくても固定することができ、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができる。したがって、内輪13は固定される内ケース3の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0037】
また、カバー34は、耐食性を有する鋼板からプレス加工にて円板状に形成されているが、回転速度センサ20の感知性能に悪影響を及ぼさないように、非磁性体の鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)で形成されるのが好ましい。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係るインホイールモータの軸受装置は、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータを回転自在に支承し、回転速度検出装置を内蔵する転がり軸受を備えたインホイールモータの軸受装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第1の実施形態を示す要部断面図である。
【図2】同上、要部拡大図である。
【図3】図2のパルサーリングを示す斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った横断面図である。
【図5】(a)は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大図である。 (b)は、(a)の側面図である。
【図6】従来のインホイールモータを示す縦断面図である。
【図7】図6の軸受部を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・・・・・・・・・モータ
1a・・・・・・・・・・ロータ
1b・・・・・・・・・・ステータ
2・・・・・・・・・・・外ケース
2a・・・・・・・・・・軸受嵌合部
3・・・・・・・・・・・内ケース
3a・・・・・・・・・・小径段部
4、4’・・・・・・・・転がり軸受
5・・・・・・・・・・・シール
6・・・・・・・・・・・外ケース本体
6a、7a・・・・・・・嵌合部
6b・・・・・・・・・・フランジ
6c・・・・・・・・・・ボルト孔
7・・・・・・・・・・・蓋部材
7b・・・・・・・・・・雌ねじ
8・・・・・・・・・・・固定リング
9・・・・・・・・・・・第1のシール板
10・・・・・・・・・・第2のシール板
10a・・・・・・・・・・円筒部
10b、17b、31b・・立板部
11・・・・・・・・・・シール部材
11a・・・・・・・・・サイドリップ
11b、11c・・・・・ラジアルリップ
12、12’・・・・・・外輪
12a・・・・・・・・・外側転走面
12b・・・・・・・・・取付フランジ
12c・・・・・・・・・取付孔
13・・・・・・・・・・内輪
13a・・・・・・・・・内側転走面
14・・・・・・・・・・保持器
15・・・・・・・・・・転動体
16、28・・・・・・・回転速度検出装置
17、31・・・・・・・・芯金
17a、31a・・・・・嵌挿部
18、32・・・・・・・磁気エンコーダ
19、29・・・・・・・パルサーリング
20・・・・・・・・・・回転速度センサ
21、30・・・・・・・検出部
22・・・・・・・・・・環状溝
23・・・・・・・・・・舌片
24・・・・・・・・・・固定ボルト
25、25’・・・・・・保持部
25a、26a・・・・・凹所
26・・・・・・・・・・センサホルダ
26b・・・・・・・・・突条
27・・・・・・・・・・弾性部材
33、35・・・・・・・キー溝
34・・・・・・・・・・カバー
34a・・・・・・・・・凸部
50・・・・・・・・・・モータ
50R・・・・・・・・・ロータ
50S・・・・・・・・・ステータ
50a・・・・・・・・・非回転側ケース
50b・・・・・・・・・回転側ケース
51、62、63・・・・直動ガイド
52・・・・・・・・・・ばね
53・・・・・・・・・・ダンパー
54、55・・・・・・・プレート
56・・・・・・・・・・緩衝機構
57・・・・・・・・・・ナックル
58・・・・・・・・・・ホイール
59、60、61・・・・円盤状のプレート
64・・・・・・・・・・フレキシブルカップリング
65、66・・・・・・・ダストブーツ
67・・・・・・・・・・軸受
68、69・・・・・・・固定カバー
68k、69k・・・・・切欠き
68p、69p・・・・・蓋部材
70・・・・・・・・・・中空部
71・・・・・・・・・・樹脂リング




 

 


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