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発明の名称 インホイールモータの軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16840(P2007−16840A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−197339(P2005−197339)
出願日 平成17年7月6日(2005.7.6)
代理人 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
発明者 今中 宏則 / 石川 恭光 / 片山 康行
要約 課題

中空モータのロータを回転自在に支承する転がり軸受のクリープを防止すると共に、固定される相手部材の影響を受けず、所望の軸受精度を確保したインホイールモータの軸受装置を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、
前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、
前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、
これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、
これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、
前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、
前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定され、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する検出部が前記内輪に固定されると共に、
前記外ケースと内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成され、このキー溝に前記パルサーリングと検出部がそれぞれ係合されていることを特徴とするインホイールモータの軸受装置。
【請求項2】
前記パルサーリングが、円周方向に亙る特性を交互に、かつ等間隔に変化させる被検出部と、前記外輪に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部と、この嵌挿部から径方向外方に延びる立板部とを有する鋼板製の芯金を備え、この芯金の立板部が前記キー溝に係合されている請求項1に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項3】
前記外輪の内周に環状溝が形成されると共に、この環状溝に係合する突起が前記芯金の嵌挿部に形成されている請求項2に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項4】
前記外輪の端面にスリットが形成され、このスリットに前記芯金の立板部が係合されている請求項2または3に記載のインホイールモータの軸受装置。
【請求項5】
前記パルサーリングと検出部が、前記外輪と内輪の端面にそれぞれ固定ボルトを介して締結されている請求項1または2に記載のインホイールモータの軸受装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のダイレクトドライブホイールを駆動輪とする車両に用いられるインホイールモータの軸受装置に関し、特に、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が軸受に内蔵されたインホイールモータの軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等モータによって駆動される車両においては、モータを車輪に内蔵するインホイールモータシステムが採用されつつある。ここで、従来はモータステータ部が車両の懸架装置を構成するナックルにスピンドル軸が回転可能に固定されるため、ばね下重量がインホイールモータの分だけ増加し、その結果、タイヤ接地力変動が増加してロードホールディング性が悪化してしまうといった問題があった。
【0003】
そこで、こうした問題を解決するため、図7に示すようなインホイールモータが提案されている。このインホイールモータは、ステータ50Sを支持する非回転側ケース50aが、緩衝機構56を介してナックル57に対して弾性支持されると共に、ロータ50Rを支持する回転側ケース50bとホイール58とが、直動ガイド62、63を用いて連結したフレキシブルカップリング64により結合されている。ここで、緩衝機構56は、直動ガイド51を介して互いに車両の上下方向に作動するばね52およびダンパー53により結合された2枚のプレート54、55を備えている。また、直動ガイド62、63は、複数枚の中空円盤状のプレート59〜61の作動方向が互いに直交するように配置されている。
【0004】
こうしたインホイールモータシステムでは、モータ50を車両の足回り部品に対してフローティングマウントして、モータ50自身をダイナミックダンパーのウェイトとして作用させることができるので、不整路走行時の接地性能、乗り心地性能をともに向上させることができると共に、フレキシブルカップリング64により、モータ軸とホイール軸がどの方向にも偏心可能に結合されているので、モータ50からホイール58へのトルクを効率良く伝達させることができる。
【0005】
さらに、モータ50とホイール58間に形成される空隙にダストブーツ65、66を設けて外部から遮断するようにしたので空隙への石や塵芥等の侵入を防止でき、インホイールモータシステムの信頼性を向上させることができる。
【0006】
また、ケース50a、50b間には、ロータ50Rを回転自在に支持する軸受67が嵌合されている。図8に拡大して示すように、この軸受67の外側には固定カバー68、69が取り付けられ、互いに対向する面に階段状の切欠き68k、69kが設けられ、これら切欠き68k、69kに蓋部材68p、69pを取り付けて中空部70が形成されている。この中空部70内にモータ軸方向に摺動可能な中空円盤状の隔壁を構成する樹脂リング71が収容されている。これにより、モータ50の運転時、モータ50の発熱でモータ50内部の温度が上昇し、外気圧に対してモータ内圧が高くなってもこの圧力差によってモータ50内への水の浸入を防止することができ、コンパクトな構成の防水機構を実現することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−90696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のインホイールモータにおいて、乗り心地性能向上の観点からばね下重量を軽減する必要があり、軸受67に超薄肉の大径軸受が採用されている。然しながら、この種の超薄肉の大径軸受は以下に示すような問題点を抱えている。すなわち、通常、軸受は運転中にクリープが発生するのを防止するためにハウジングまたは軸に圧入固定されて使用されるが、こうした超薄肉の大径軸受の場合、軸受剛性が極めて低いため、ケース50a、50bに軸受67を圧入した時、これらケース50a、50bの加工精度の影響を受けて軸受加工時の精度が崩れ、所望の軸受精度を確保することが困難となる。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータのロータを回転自在に支承する転がり軸受のクリープを防止すると共に、固定される相手部材の影響を受けず、所望の軸受精度を確保したインホイールモータの軸受装置を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置を軸受に内蔵してコンパクト化を図ると共に、この回転速度検出装置の固定による軸受の変形を抑制した固定手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定され、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する検出部が前記内輪に固定されると共に、前記外ケースと内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成され、このキー溝に前記パルサーリングと検出部がそれぞれ係合されている構成を採用した。
【0011】
このように、中空モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、ステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、転がり軸受が、外ケースに内嵌された外輪と、内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、回転速度検出装置を構成するパルサーリングが外輪に固定され、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する検出部が内輪に固定されると共に、外ケースと内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成され、このキー溝にパルサーリングと検出部がそれぞれ係合されているので、内外輪を圧入固定せずとも、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される相手部材の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明のように、前記パルサーリングが、円周方向に亙る特性を交互に、かつ等間隔に変化させる被検出部と、前記外輪に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部と、この嵌挿部から径方向外方に延びる立板部とを有する鋼板製の芯金を備え、この芯金の立板部が前記キー溝に係合されていれば、被検出部と外輪との軸心を一致させることができ、回転速度検出装置の検出精度を高めることができると共に、軽量・コンパクト化ができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明のように、前記外輪の内周に環状溝が形成されると共に、この環状溝に係合する突起が前記芯金の嵌挿部に形成されていれば、外輪に対して、簡単な構成でパルサーリングを軸方向に位置決め固定できる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明のように、前記外輪の端面にスリットが形成され、このスリットに前記芯金の立板部が係合されていれば、外輪に対して、パルサーリングを周方向に簡便な手段で固定することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、前記パルサーリングと検出部が、前記外輪と内輪の端面にそれぞれ固定ボルトを介して締結されていれば、転がり軸受を変形させずに回転速度検出装置を確実に固定することができ、加工時の軸受精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るインホイールモータの軸受装置は、中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪に固定され、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する検出部が前記内輪に固定されると共に、前記外ケースと内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成され、このキー溝に前記パルサーリングと検出部がそれぞれ係合されているので、内外輪を圧入固定せずとも、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される相手部材の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
中空モータを使用したインホイールモータの軸受装置であって、前記モータのロータが内周面に固定された円筒状の外ケースと、前記モータのステータが外周面に固定された円筒状の内ケースと、これら両ケースの両端部間に形成される環状空間に装着された一対の転がり軸受と、これら一対の転がり軸受のうち一方の転がり軸受に内蔵され、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置とを備えたインホイールモータの軸受装置において、前記転がり軸受が、前記外ケースに内嵌された外輪と、前記内ケースに外嵌された内輪と、この内輪と前記外輪との間に転動自在に収容された複数の転動体とを備え、前記回転速度検出装置を構成するパルサーリングが前記外輪の端面に固定ボルトを介して締結され、このパルサーリングに所定のエアギャップを介して対向する検出部が前記内輪の端面に固定ボルトを介して締結されると共に、前記外ケースと内ケースの軸受嵌合部にキー溝が形成され、このキー溝に前記パルサーリングと検出部がそれぞれ係合されている。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第1の実施形態を示す要部断面図、図2は、図1の要部拡大図である。なお、この実施形態では、全体構成は、従来技術で説明した部分と共通するため重複した説明を避け、本発明に係る軸受装置の特徴部分のみの説明を行う。
【0019】
このインホイールモータの軸受装置は、中空状のモータ1と、このモータ1が装着された外ケース2および内ケース3と、これらケース2、3間に固定された一対の転がり軸受4と、ケース2、3間に形成される環状空間の開口部を密閉するシール5とを備えている。モータ1は、ロータ1aと、このロータ1aに所定の径方向すきまを介して対向配置されたステータ1bとからなる。
【0020】
回転側の外ケース2は円筒状に形成され、その中央部の内周面にロータ1aが固定されている。一方、固定側の内ケース3は円筒状に形成され、その中央部の外周面にステータ1bが固定されている。後述する転がり軸受4は内ケース3に対して外ケース2を回転自在に支持し、これらケース2、3間に固定されている。
【0021】
内ケース3は、端部に小径段部3aが形成され、固定リング6が圧入されている。固定リング6は、後述する転がり軸受4が軸方向に移動するのを防止している。シール5は、この固定リング6と外ケース2との間に介装されている。このシール5は、外ケース2の端部内周面に嵌合され、断面が略L字状で、全体として円環状に形成された第1のシール板7と、この第1のシール板7に対向配置して固定リング6の外周面に嵌合され、断面が略L字状で、全体として円環状に形成された第2のシール板(スリンガ)8とからなる。
【0022】
第1のシール板7は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成された芯金9と、この芯金9に一体に加硫接着され、内縁部にサイドリップ10aおよび一対のラジアルリップ10b、10cを有するシール部材10とからなる。
【0023】
第2のシール板8は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成されている。この第2のシール板13は、固定リング6に圧入される円筒部8aと、この円筒部8aから径方向外方に延びる立板部8bとからなる。そして、前記第1のシール板7のサイドリップ10aがこの立板部8bに摺接されると共に、一対のラジアルリップ10b、10cが円筒部8aに摺接され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。ここで、第1のシール板7と第2のシール板8の外縁とは僅かな径方向すきまを介して対峙し、所謂ラビリンスシール11を構成している。本実施形態のシール5は、このようなシール構成を採用しているので、長期間に亙って強固な、かつ安定した密封性を備え、転がり軸受4の耐久性を向上させることができる。
【0024】
転がり軸受4は深溝玉軸受からなり、図2に拡大して示すように、内周に外側転走面12aが形成された外輪12と、外周に内側転走面13aが形成された内輪13と、両転走面12a、13a間に保持器14を介して転動自在に収容された転動体(ボール)15とを備えている。この転がり軸受4には、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御し、車輪(図示せず)の回転速度を検出する回転速度検出装置16が内蔵されている。
【0025】
回転速度検出装置16は、内周に凹凸17aが形成され、被検出部となるパルサーリング17と、このパルサーリング17に所定の径方向すきま(エアギャップ)を介して対向配置された回転速度センサ18を有する円環状の検出部19とからなる。なお、パルサーリング17は、内周に凹凸17aが形成されたものに限らず、円周方向に亙る特性を交互に、かつ等間隔に変化させるものであれば良く、例えば、周方向に交互に磁極N、Sが着磁された磁気エンコーダであっても良い。また、このパルサーリング17の形式に伴い、回転速度センサ18も、ホールIC素子、磁気抵抗素子(MR素子)等を適宜選択して適用できる。
【0026】
ここで、本実施形態では、パルサーリング17は外輪12の端面に固定ボルト20を介して締結されている。さらに、外ケース2の軸受嵌合部2aには軸方向に延びるキー溝21が形成され、このキー溝21にパルサーリング17の外周部が係合されている。これにより、外輪12を変形させずにパルサーリング17を固定することができると共に、外輪12を外ケース2の軸受嵌合部2aに圧入しなくても外ケース2に固定することができる。したがって、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される相手部材、ここでは外ケース2の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。なお、図示はしないが、キー溝21は、周方向1箇所に限らず複数個形成し、このキー溝の数に対応してパルサーリングの外周に複数の凸部を形成し、パルサーリングの外郭を花弁状に形成しても良い。これにより、パルサーリングの組立の簡便化を図ることができる。
【0027】
一方、検出部19は内輪13の端面に固定ボルト20を介して締結されている。さらに、内ケース3の外周には軸方向に延びるキー溝22が形成され、このキー溝22に検出部19の内周部が係合されている。これにより、内輪13を変形させずに検出部19を固定することができると共に、内輪13を内ケース3の外周(軸受嵌合部)に圧入しなくても固定することができる。したがって、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される相手部材、ここでは内ケース3の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。なお、図示はしないが、キー溝22は、周方向1箇所に限らず複数個形成し、このキー溝の数に対応して検出部の内周に複数の凸部を形成し、検出部の外郭を花弁状に形成しても良い。これにより、検出部の組立の簡便化を図ることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、転がり軸受4として深溝玉軸受を例示したが、これに限らず、ラジアル荷重とスラスト荷重を負荷できれば良く、例えば、一対のアンギュラ玉軸受を使用しても良い。そして、このアンギュラ玉軸受に軽予圧を付与することにより、モータ1の回転時におけるロータ1aの軸方向振れを可及的に抑制することができる。したがって、モータ1の重量が加速度を伴いスラスト荷重となってこの転がり軸受4に負荷されても、軸受寿命の低下やロータ1aの軸方向振れを抑制することができ、車両の乗り心地を向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
図3(a)は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大図、図3(b)は、(a)の側面図である。なお、この第2の実施形態は前述した第1の実施形態(図2)と基本的には回転速度検出装置の構成が異なるのみで、その他同一部分、部位には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施形態では、回転速度検出装置23は、パルサーリング24と、このパルサーリング24に所定の径方向すきまを介して対向配置された円環状の検出部25とからなる。パルサーリング24は、芯金26と、この芯金26に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ27とからなる。芯金26は、耐食性を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって形成されている。また、この芯金26は、外輪12に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部26aと、この嵌挿部26aから径方向外方に延び、外輪12の端面に当接される立板部26bとを有し、断面が略L字状に、全体として円環状に形成されている。芯金26を外輪12に嵌挿させることにより、パルサーリング24と外輪12との軸心を一致させることができ、回転速度検出装置23の検出精度を高めることができると共に、軽量・コンパクト化を図ることができる。磁気エンコーダ27は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなる。
【0031】
一方、検出部25は、回転速度センサ28と、この回転速度センサ28を樹脂で一体モールドした保持部29と、この保持部29を保護するホルダー30とを備えている。回転速度センサ28は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路が組み込まれたICとからなる。また、ホルダー30は、耐食性を有する鋼板からプレス加工にて円板状に形成されている。なお、このホルダー30は、回転速度センサ28の感知性能に悪影響を及ぼさないように、非磁性体の鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)で形成されるのが好ましい。
【0032】
ここで、パルサーリング24は外輪12の端面に固定ボルト20を介して締結されている。さらに、外ケース2の軸受嵌合部2aには軸方向に延びるキー溝21が形成され、このキー溝21にパルサーリング24を構成する芯金26の立板部26bの一部が係合されている。これにより、外輪12を変形させずに、かつ、磁気エンコーダ27と外輪との軸心を一致させた状態で固定することができると共に、外輪12を外ケース2の軸受嵌合部2aに圧入しなくても外ケース2に固定することができる。したがって、簡単な構成で回転速度検出装置の検出精度を高めることができると共に、軸受クリープの発生を確実に防止することができ、また、固定される外ケース2の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0033】
一方、検出部25は内輪13の端面に固定ボルト20を介して締結されている。さらに、内ケース3の外周には軸方向に延びるキー溝22が形成され、このキー溝22に検出部25を構成するホルダー30の凸部30aが係合されている。これにより、内輪13を変形させずに検出部25を固定することができると共に、内輪13を内ケース3の外周に圧入しなくても固定することができる。したがって、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される内ケース3の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【実施例3】
【0034】
図4(a)は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第3の実施形態を示す要部拡大図、図4(b)は、(a)の側面図、図5は、本発明に係るパルサーリングを示す斜視図である。なお、この第3の実施形態は前述した前述した実施形態(図2、図3)と基本的には回転速度検出装置の構成が異なるのみで、その他同一部分、部位には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、回転速度検出装置31は、パルサーリング32と、このパルサーリング32に所定の軸方向すきまを(エアギャップ)介して対向配置された円環状の検出部33とからなる。パルサーリング32は、芯金34と、この芯金34に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ35とからなる。芯金34は、耐食性を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって円環状に形成されている。また、この芯金26は、外輪12に所定の径方向すきまを介して内嵌される円筒状の嵌挿部34aと、切り起こし加工により形成され、この嵌挿部34aから一部径方向外方に延びる立板部34bとを有している。磁気エンコーダ35は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなる。
【0036】
一方、検出部33は、回転速度センサ36と、この回転速度センサ36を樹脂で一体モールドした保持部37と、この保持部37を保護するホルダー38とを備えている。回転速度センサ36は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路が組み込まれたICとからなる。また、ホルダー38は、耐食性を有する鋼板からプレス加工にて円板状に形成されている。なお、このホルダー38は、回転速度センサ36の感知性能に悪影響を及ぼさないように、非磁性体の鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)で形成されるのが好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態では、パルサーリング32を構成する芯金34は、外輪12の内周面に所定の径方向すきまを介して嵌挿されている。外輪12’の内周面には環状溝39が形成され、この環状溝39に芯金34の舌片40が係合されている。図5に示すように、この舌片40は、芯金34の円筒状の嵌挿部34aから一部切り起こし加工によって形成されている。こうして形成された舌片40は、芯金34を外輪12’の内周面に嵌挿する過程では弾性変形し、環状溝39の位置に一致した時に復元して環状溝39に係合される。したがって、外輪12’を変形させずにパルサーリング32を軸方向に位置決め固定でき、磁気エンコーダ35と回転速度センサ36とのエアギャップを簡便な手段で所定値に設定することができる。
【0038】
また、前述した実施形態と同様、図4に示すように、外ケース2の軸受嵌合部2aには軸方向に延びるキー溝21が形成されると共に、このキー溝21に対応する外輪12’の端面にはスリット41が形成されている。このキー溝21とスリット41に芯金34の立板部34bが係合されている。これにより、固定ボルトで締結しなくても外輪12’に対して、パルサーリング32を簡便な手段で周方向に固定することができる。さらに、外輪12’を外ケース2の軸受嵌合部2aに圧入しなくても外ケース2に容易に固定することができ、外輪12’の変形を抑制しつつ、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される外ケース2の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0039】
一方、検出部33は内輪13の端面に固定ボルト20を介して締結されている。さらに、内ケース3の外周には軸方向に延びるキー溝22が形成され、このキー溝22に検出部33を構成するホルダー38の凸部30aが係合されている。これにより、内輪13を変形させずに検出部33を固定することができると共に、内輪13を内ケース3の外周に圧入しなくても固定することができる。したがって、簡単な構成で軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、固定される内ケース3の影響を受けず、所望の軸受精度を確保することができる。
【0040】
図6は、前述したパルサーリング(図5)の変形例を示す斜視図で、外輪との係合部の構成が異なる。なお、同一部分、部位には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
このパルサーリング42は、芯金43と、この芯金43に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ35とからなる。芯金43は、耐食性を有する鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって、断面が略L字状に、全体として円環状に形成されている。
【0041】
芯金43の円筒状の嵌挿部34aからプレス加工によって環状の突条44が形成されている。この突条44は、図示しない外輪の環状溝に係合され、外輪に対してパルサーリング42を軸方向に位置決め固定することができる。なお、嵌挿部34aから径方向に延びる立板部34bを周方向に複数形成すれば、嵌挿部34aの剛性が抑えられ、芯金43の嵌挿による外輪の変形を防止することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るインホイールモータの軸受装置は、中空モータを使用したインホイールモータにおいて、モータを回転自在に支承し、かつ、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が内蔵された転がり軸受を備えたインホイールモータの軸受装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第1の実施形態を示す要部断面図である。
【図2】同上、要部拡大図である。
【図3】(a)は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大図である。 (b)は、(a)の側面図である。
【図4】(a)は、本発明に係るインホイールモータの軸受装置の第3の実施形態を示す要部拡大図である。 (b)は、(a)の側面図である。
【図5】図4のパルサーリングを示す斜視図である。
【図6】図5のパルサーリングの変形例を示す斜視図である。
【図7】従来のインホイールモータを示す縦断面図である。
【図8】図1の軸受部を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・・・・・・・・・モータ
1a・・・・・・・・・・ロータ
1b・・・・・・・・・・ステータ
2・・・・・・・・・・・外ケース
2a・・・・・・・・・・軸受嵌合部
3・・・・・・・・・・・内ケース
3a・・・・・・・・・・小径段部
4・・・・・・・・・・・転がり軸受
5・・・・・・・・・・・シール
6・・・・・・・・・・・固定リング
7・・・・・・・・・・・第2のシール板
8・・・・・・・・・・・第2のシール板
8a・・・・・・・・・・円筒部
8b、26b、34b・・立板部
9、26、34、43・・芯金
10・・・・・・・・・・シール部材
10a・・・・・・・・・サイドリップ
10b、10c・・・・・ラジアルリップ
11・・・・・・・・・・ラビリンスシール
12、12’・・・・・・外輪
12a・・・・・・・・・外側転走面
13・・・・・・・・・・内輪
13a・・・・・・・・・内側転走面
14・・・・・・・・・・保持器
15・・・・・・・・・・転動体
16、23、31・・・・回転速度検出装置
17、24、32、42・パルサーリング
17a・・・・・・・・・凹凸
18、28、36・・・・回転速度センサ
19、25、33・・・・検出部
20・・・・・・・・・・固定ボルト
21、22・・・・・・・キー溝
26a、34a・・・・・嵌挿部
30a・・・・・・・・・凸部
27、35・・・・・・・磁気エンコーダ
29、37・・・・・・・保持部
30、38・・・・・・・ホルダー
39・・・・・・・・・・環状溝
40・・・・・・・・・・舌片
41・・・・・・・・・・スリット
44・・・・・・・・・・突条
50・・・・・・・・・・モータ
50R・・・・・・・・・ロータ
50S・・・・・・・・・ステータ
50a・・・・・・・・・非回転側ケース
50b・・・・・・・・・回転側ケース
51、62、63・・・・直動ガイド
52・・・・・・・・・・ばね
53・・・・・・・・・・ダンパー
54、55・・・・・・・プレート
56・・・・・・・・・・緩衝機構
57・・・・・・・・・・ナックル
58・・・・・・・・・・ホイール
59、60、61・・・・円盤状のプレート
64・・・・・・・・・・フレキシブルカップリング
65、66・・・・・・・ダストブーツ
67・・・・・・・・・・軸受
68、69・・・・・・・固定カバー
68k、69k・・・・・切欠き
68p、69p・・・・・蓋部材
70・・・・・・・・・・中空部
71・・・・・・・・・・樹脂リング




 

 


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