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発明の名称 車輪用軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16814(P2007−16814A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−196346(P2005−196346)
出願日 平成17年7月5日(2005.7.5)
代理人 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
発明者 柴田 靖史 / 小畑 卓也 / 田窪 孝康
要約 課題

背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受で構成された車輪用軸受装置において、軸力による内輪の大鍔の倒れを防止し、円錐ころとの良好な接触状態を維持した車輪用軸受装置を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
内周にテーパ状の複列の外側転走面が形成された外方部材と、
一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向するテーパ状の複列の内側転走面が形成された内方部材と、
この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の円錐ころとを備え、
前記内側転走面の大径側端部に前記円錐ころを案内する大鍔を有する背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受で構成された車輪用軸受装置において、
前記内輪の大端面と、この大端面に当接する相手部材の端面との接触外径が、前記内輪の鍔底径か、それよりも僅かに小径になるように構成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記内輪の大端面に、その外径から前記大鍔の鍔底径に亙って環状凹所が形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記内輪の大端面に当接する相手部材の肩部の端面に、その外径から前記内輪の鍔底径に対応する位置に亙って環状凹所が形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記内輪の大端面に当接する相手部材の肩部の外径が、前記内輪の鍔底径に相当する位置まで小径に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記内方部材が、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなり、前記保持器がポケット内に前記円錐ころを脱落阻止状態に保持可能なものとすると共に、前記ハブ輪および内輪のうち少なくとも内輪の内側転走面の小径側端部に小鍔が設けられていない請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、トラックやワゴン車等、比較的重量が嵩む車両の車輪を支承する車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車輪用軸受装置には、駆動輪用のものと従動輪用のものとがある。特に、自動車の懸架装置に対して車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置は、低コスト化は言うまでもなく、燃費向上のための軽量・コンパクト化が進んでいる。その従来構造の代表的な一例として、図4に示すような駆動輪用の車輪用軸受装置が知られている。
【0003】
この車輪用軸受装置50は第3世代と称され、ハブ輪51と内輪52とからなる内方部材53と、この内方部材53に外挿された外方部材54と、両部材53、54間に収容された複列の円錐ころ55、55とを備えている。ハブ輪51は、その一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ56を一体に有し、外周にテーパ状の内側転走面51aと、この内側転走面51aから軸方向に延びる円筒状の小径段部51bが形成されている。また、車輪取付フランジ56の円周等配位置には車輪を固定するためのハブボルト56aが植設されている。ハブ輪51の小径段部51bには、外周に内側転走面52aが形成された内輪52が圧入されている。
【0004】
外方部材54は、外周に車体(図示せず)に取り付けられる車体取付フランジ54bを一体に有し、内周にテーパ状の複列の外側転走面54a、54aが形成され、この複列の外側転走面54a、54aと対向する前記内側転走面51a、52aの間に複列の円錐ころ55、55が保持器57を介して転動自在に収容されている。外方部材54の両端部にはシール58、59が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩を防止すると共に、外部からの雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0005】
ここで、円錐ころ55は、ハブ輪51および内輪52の内側転走面51a、52aの大径側端部に形成された大鍔60、61によって案内され、ハブ輪51および内輪52の小径側端部には、円錐ころ55の脱落を防止するための小鍔が設けられていない。そして、ハブ輪51と内輪52の正面側(小径側)端面が突き合された状態でセットされ、所謂背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受を構成している。また、保持器57は合成樹脂を射出成形することによって形成され、そのポケット62は、円錐ころ55が内径側へ脱落しようとした時に、脱落を阻止できるような形状に形成されている。
【0006】
これにより、軸受部の組立は、外方部材54に円錐ころ・保持器アッセンブリーを嵌挿した後、ハブ輪51と内輪52を自動機によって容易に組み立てることができる。さらに、小鍔が不要となるため、重量軽減と加工工数の削減が図れ、低コストができると共に、ハブ輪51および内輪52の軸方向長さが短縮でき、設計の自由度が大となってコンパクト化ができる。
【特許文献1】特開平11−44322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした従来の車輪用軸受装置50は、等速自在継手を構成する外側継手部材62がトルク伝達可能に連結され、内輪52は、ハブ輪51と外側継手部材63の肩部64とで挟持された状態で、固定ナット65によって軸方向に固定される。ここで、図5(a)に示すように、肩部64の端面64aと内輪52の大端面52bとの接触外径Aが、内輪52の大鍔61の鍔底径Bよりも大きい場合、肩部64の端面64aの直角度が加工誤差等で崩れ、大径側が内輪52側に傾斜していると、図5(b)に示すように、図示しない固定ナットで外側継手部材63がハブ輪51に締結された時、内輪52の大鍔61が軸力によって変形して倒れる恐れがある(図中矢印にて示す)。円錐ころ55を案内するこの大鍔61が倒れると、大鍔61と円錐ころ55との接触がエッジ当りとなって大鍔61の案内面や円錐ころ55の端面にかじりが発生し、異常摩耗や温度上昇の要因となって好ましくない。さらにこの大鍔61の倒れが大きい場合には早期焼付きを起こしかねないため、こうした円錐ころ軸受においては、内輪52の大端面52bや外側継手部材63の肩部64の端面64aの平面度および直角度を特に精度良く規制する必要があった。
【0008】
特に、こうした従来の車輪用軸受装置50、すなわち、ハブ輪51の外周に直接内側転走面51aが形成され、ハブ輪51の小径段部51bに内輪52が圧入される第3世代構造の車輪用軸受装置50においては、ハブ輪51に直接大鍔60が形成されているため、ハブ輪51の大鍔60に関しては倒れの問題はないものの、外側継手部材63と内輪52との接触状態において、内輪52に小鍔が設けられていないため、内輪52を最後に圧入する組立工程で、内輪52の圧入作業を慎重、かつ精度良く行なわなければ、小鍔を有する一般的な円錐ころ軸受以上に円錐ころ55の位置が安定しないという問題が内在していた。したがって、こうした従来の車輪用軸受装置50では、組立後の馴らし運転が謂わば必須項目となっていた。これでは、組立作業性が低下すると共に、組立工数が増大するため改善が求められていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受を備えた車輪用軸受装置において、軸力による内輪の大鍔の倒れを防止し、円錐ころとの良好な接触状態を維持した車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周にテーパ状の複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向するテーパ状の複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の円錐ころとを備え、前記内側転走面の大径側端部に前記円錐ころを案内する大鍔を有する背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受で構成された車輪用軸受装置において、前記内輪の大端面と、この大端面に当接する相手部材の端面との接触外径が、前記内輪の鍔底径か、それよりも僅かに小径になるように構成されている。
【0011】
このように、ハブ輪の外周に小径段部が形成され、この小径段部に内側転走面の大径側端部に円錐ころを案内する大鍔を有する内輪が圧入されて背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受を構成する第1世代乃至第3世代構造の車輪用軸受装置において、内輪の大端面と、この大端面に当接する相手部材の端面との接触外径が、内輪の鍔底径か、それよりも僅かに小径になるように構成されているので、相手部材における肩部の端面の平面度あるいは直角度が加工誤差等で崩れ、内輪側に傾斜していても、内輪の大鍔が軸力によって変形して倒れるのを確実に防止することができる。したがって、大鍔と円錐ころとの接触がエッジ当りとなって大鍔の案内面や円錐ころの端面にかじりが発生するのを防止し、耐久性を向上させた車輪用軸受装置を提供することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明のように、前記内輪の大端面に、その外径から前記大鍔の鍔底径に亙って環状凹所が形成されていても良いし、また、請求項3に記載の発明のように、前記内輪の大端面に当接する相手部材の肩部の端面に、その外径から前記内輪の鍔底径に対応する位置に亙って環状凹所が形成されていても良い。さらには、請求項4に記載の発明のように、前記内輪の大端面に当接する相手部材の肩部の外径が、前記内輪の鍔底径に相当する位置まで小径に形成されていても良い。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記内方部材が、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなり、前記保持器がポケット内に前記円錐ころを脱落阻止状態に保持可能なものとすると共に、前記ハブ輪および内輪のうち少なくとも内輪の内側転走面の小径側端部に小鍔が設けられていないので、軽量・コンパクト化ができ、軸受部の組立は、外方部材に円錐ころ・保持器アッセンブリーを嵌挿した後、ハブ輪と内輪を自動機によって容易に組み立てることができると共に、内輪の圧入作業が簡便化でき、組立後の馴らし運転が不要となって組立作業性が一段と向上して低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車輪用軸受装置は、内周にテーパ状の複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向するテーパ状の複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の円錐ころとを備え、前記内側転走面の大径側端部に前記円錐ころを案内する大鍔を有する背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受で構成された車輪用軸受装置において、前記内輪の大端面と、この大端面に当接する相手部材の端面との接触外径が、前記内輪の鍔底径か、それよりも僅かに小径になるように構成されているので、相手部材における肩部の端面の平面度あるいは直角度が加工誤差等で崩れ、内輪側に傾斜していても、内輪の大鍔が軸力によって変形して倒れるのを確実に防止することができる。したがって、大鍔と円錐ころとの接触がエッジ当りとなって大鍔の案内面や円錐ころの端面にかじりが発生するのを防止し、耐久性を向上させた車輪用軸受装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
外周に車体取付フランジを一体に有し、内周にテーパ状の複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入された一対の内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向するテーパ状の複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の円錐ころとを備え、前記内側転走面の大径側端部に前記円錐ころを案内する大鍔を有する背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受で構成された車輪用軸受装置において、前記内輪の大端面に、その外径部から前記大鍔の鍔底径に亙って環状凹所が形成され、前記内輪の大端面と、この大端面に当接する相手部材の肩部の端面との接触外径が、前記内輪の鍔底径か、それよりも僅かに小径になるように設定されている。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、図2は図1の要部拡大図で、(a)は固定ナットで締結する前の状態を示し、(b)は締結後の状態を示している。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウトボード側(図面左側)、中央寄り側をインボード側(図面右側)という。
【0017】
この車輪用軸受装置は駆動輪側の第2世代と称され、内方部材1と外方部材10、および両部材1、10間に転動自在に収容された複列の円錐ころ6、6とを備えている。内方部材1は、ハブ輪2と、このハブ輪2に圧入された一対の内輪3、3とからなる。
【0018】
ハブ輪2は、アウトボード側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ4を一体に有し、この車輪取付フランジ4の円周等配位置に車輪を固定するためのハブボルト5が植設されている。また、ハブ輪2の外周には車輪取付フランジ4から軸方向に延びる円筒状の小径段部2aが形成され、内周にはセレーション(またはスプライン)2bが形成されている。
【0019】
内輪3は、ハブ輪2の小径段部2aに所定のシメシロを介して圧入され、外周にテーパ状の内側転走面3aと、この内側転走面3aの大径側端部に円錐ころ6を案内する大鍔3bおよび小径側端部に円錐ころ6の脱落を防止する小鍔3cがそれぞれ形成されている。そして、これら一対の内輪3、3の正面側端面が突き合された状態でセットされ、所謂背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受を構成している。
【0020】
外方部材10は、外周に車体(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ10bを一体に有し、内周にテーパ状の複列の外側転走面10a、10aが形成されている。そして、それぞれの転走面10a、2aと10a、3a間に複列の円錐ころ6、6が収容され、保持器7、7によりこれら複列の円錐ころ6、6が転動自在に保持されている。また、外方部材10の両端部にはシール8、9が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0021】
ハブ輪2はS53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中炭素鋼で形成され、車輪取付フランジ4のインボード側の基部から小径段部2aに亙り高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。これにより、車輪取付フランジ4に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、ハブ輪2の耐久性が向上する。
【0022】
一方、内輪3はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。また、外方部材10は、S53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中炭素鋼で形成され、複列の外側転走面10a、10aをはじめ、シール8、9が嵌合する端部内径面に亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、外方部材10は、内輪3と同様、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼で形成して、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理しても良い。
【0023】
ハブ輪2には等速自在継手を構成する外側継手部材11がトルク伝達可能に連結され、内輪3は、ハブ輪2と外側継手部材11の肩部12とで挟持された状態で、固定ナット13によって軸方向に固定されている。
【0024】
外側継手部材11は、カップ状のマウス部14と、このマウス部14の底部となる肩部12と、この肩部12から軸方向に延びるステム部16とを一体に有し、ステム部16の外周にはハブ輪2のセレーション2bに係合するセレーション(またはスプライン)16aと、このセレーション16aの端部に雄ねじ16bが形成されている。
【0025】
図2(a)は、ハブ輪2に外側継手部材11のステム部16を内嵌した状態を示す要部拡大図である(ここではシール9を省略している)。内輪3の大端面17に当接する外側継手部材11の肩部12の外径は、内輪3の大鍔3bの外径と略同径に形成されている。ここで、内輪3の大端面17に環状凹所18が形成されている。この環状凹所18は、大鍔3bの外径から鍔底径Bに亙って形成されている。
【0026】
この状態で、固定ナット(図示せず)によって一対の内輪3、3が所定の緊締力で軸方向に固定されると、図2(b)に示すように、環状凹所18は、大鍔3bの外径から鍔底径Bに亙って形成されているため、内輪3の大端面17と肩部12の端面15との接触外径Aが、内輪3の鍔底径Bか、それよりも僅かに小径になる(A≦B)。これにより、肩部12の端面15の平面度あるいは直角度が加工誤差等で崩れ、内輪3側に傾斜していても、内輪3の大鍔3bが軸力によって変形して倒れるのを確実に防止することができる。したがって、大鍔3bと円錐ころ6との接触がエッジ当りとなって大鍔3bの案内面や円錐ころ6の端面にかじりが発生するのを防止し、耐久性を向上させた車輪用軸受装置を提供することができる。
【0027】
なお、ここでは、アウトボード側の内輪3と外側継手部材11の肩部12との接触状況について説明したが、本実施形態では、図示はしないが、インボード側の内輪3においても同様、内輪の大端面とハブ輪との接触外径が、内輪の鍔底径よりも僅かに小径になるように、大端面の外径から鍔底径に亙って環状凹所が形成されている。これにより、内輪の大端面に当接するハブ輪における肩部の端面の平面度あるいは直角度が加工誤差等で崩れ、内輪側に傾斜して形成されていても、内輪の大鍔が軸力によって変形して倒れるのを確実に防止することができる(図1参照)。
【0028】
なお、本実施形態は、駆動輪側の第2世代と呼称される車輪用軸受装置を例示したが、本発明に係る車輪用軸受装置は駆動輪側に限定されず、従動輪側の車輪用軸受装置であっても良い。また、第2世代に限らず、従来の車輪用軸受装置として例示した第3世代構造であっても良い。この場合、内輪3の圧入作業が簡便化できると共に、組立後の馴らし運転が不要となって組立作業性が一段と向上して量産に好適となり、低コスト化を図ることができる。
【実施例2】
【0029】
図3は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
図3(a)は、図2(a)と同様、ハブ輪に外側継手部材を内嵌した状態を示す要部拡大図である。内輪3’の大端面17’に当接する外側継手部材の肩部19の外径は、内輪3’の大鍔3b’の外径と略同径に形成されている。ここで、肩部19の端面15’に環状凹所20が形成されている。この環状凹所20は、肩部19の外径から内輪3’の鍔底径Bに対応する位置に亙って形成されている。
【0031】
この状態で、固定ナット(図示せず)によって内輪3’が所定の緊締力で軸方向に固定されると、図3(b)に示すように、環状凹所20は、肩部19の外径から内輪3’の鍔底径Bに亙って形成されているため、内輪3’の大端面17’と肩部19の端面15’との接触外径Aが、内輪3’の鍔底径Bか、それよりも僅かに小径になる(A≦B)。これにより、前述した実施形態と同様、肩部19の端面15’の平面度あるいは直角度が加工誤差等で崩れ、内輪3’側に傾斜していても、内輪3’の大鍔3b’が軸力によって変形して倒れるのを確実に防止することができる。したがって、大鍔3b’と円錐ころ6との接触がエッジ当りとなって大鍔3b’の案内面や円錐ころ6の端面にかじりが発生するのを防止することができる。
【0032】
なお、ここでは、外側継手部材の肩部19の端面15’に環状凹所20を形成することにより、内輪3’の大鍔3b’が軸力によって変形して倒れるのを防止するようにしたが、これに限らず、図示はしないが、内輪の大端面に当接する相手部品、すなわち、外側継手部材の肩部あるいはハブ輪の肩部の外径を、内輪の鍔底径に相当する位置まで小径に形成することによって同様の効果を得ることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る車輪用軸受装置は、ハブ輪の小径段部に複列の円錐ころ軸受の内輪が圧入された第1世代乃至第3世代構造の車輪用軸受装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】(a)は、同上、固定ナットで締結する前の状態を示す要部拡大断面図である。(b)は、同上、固定ナットで締結した後の状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】(a)は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大断面図で、固定ナットで締結する前の状態を示している。(b)は、同上、固定ナットで締結した後の状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【図5】(a)は、同上、固定ナットで締結する前の状態を示す要部拡大図である。(b)は、同上、固定ナットで締結した後の状態を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・・・・・・内方部材
2・・・・・・・・・ハブ輪
2a・・・・・・・・小径段部
2b、16a・・・・セレーション
3a・・・・・・・・内側転走面
3、3’・・・・・・内輪
3b、3b’・・・・大鍔
3c・・・・・・・・小鍔
4・・・・・・・・・車輪取付フランジ
5・・・・・・・・・ハブボルト
6・・・・・・・・・円錐ころ
7・・・・・・・・・保持器
8、9・・・・・・・シール
10・・・・・・・・外方部材
10a・・・・・・・外側転走面
10b・・・・・・・車体取付フランジ
11・・・・・・・・外側継手部材
12、19・・・・・肩部
13・・・・・・・・固定ナット
14・・・・・・・・マウス部
15、15’・・・・端面
16・・・・・・・・ステム部
16b・・・・・・・雄ねじ
17、17’・・・・大端面
18、20・・・・・環状凹所
50・・・・・・・・車輪用軸受装置
51・・・・・・・・ハブ輪
51a、52a・・・内側転走面
51b・・・・・・・小径段部
52・・・・・・・・内輪
52b・・・・・・・大端面
53・・・・・・・・内方部材
54・・・・・・・・外方部材
54a・・・・・・・外側転走面
54b・・・・・・・車体取付フランジ
55・・・・・・・・円錐ころ
56・・・・・・・・車輪取付フランジ
56a・・・・・・・ハブボルト
57・・・・・・・・保持器
58、59・・・・・シール
60、61・・・・・大鍔
62・・・・・・・・ポケット
63・・・・・・・・外側継手部材
64・・・・・・・・肩部
64a・・・・・・・端面
65・・・・・・・・固定ナット
A・・・・・・・・・内輪の大端面と肩部の端面との接触外径
B・・・・・・・・・内輪の大鍔の鍔底径




 

 


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