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発明の名称 針状ころ軸受および針状ころ軸受の保持器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10109(P2007−10109A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−194897(P2005−194897)
出願日 平成17年7月4日(2005.7.4)
代理人 【識別番号】100091409
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英彦
発明者 市川 健一
要約 課題
ころを安定して案内することができる針状ころ軸受および針状ころ軸受の保持器を提供する。

解決手段
柱部22は、内径面28側に断面形状がV字状に押し曲げられている。PCD26においては、側壁面25の中央部には、外径面27側のせん断面23が位置し、側壁面25の端部には、内径面28側の破断面24が位置している。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数の針状ころと、
前記針状ころを保持する保持器とを有する針状ころ軸受であって、
前記保持器は、一対の環状部と、前記針状ころを収容するポケットを形成するように前記一対の環状部を連結する柱部とを含み、
前記柱部の側壁面は、前記ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面と、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面とを有し、
前記針状ころは、前記せん断面によって案内される、針状ころ軸受。
【請求項2】
前記柱部は、その中央部が径方向内側に凹んだ形状を有しており、前記せん断面は、径方向外側に位置し、前記破断面は、径方向内側に位置している、請求項1に記載の針状ころ軸受。
【請求項3】
針状ころを案内する前記せん断面の軸方向の長さは、針状ころの軸方向の長さの60%以上である、請求項1または2に記載の針状ころ軸受。
【請求項4】
複数の針状ころを保持する針状ころ軸受の保持器であって、
一対の環状部と、前記針状ころを収容するポケットを形成するように前記一対の環状部を連結する柱部とを含み、
前記柱部は、その中央部が径方向内側に凹んだ形状を有し、
前記柱部の側壁面は、その径方向外側に、前記ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面を有し、その径方向内側に、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面を有している、針状ころ軸受の保持器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、針状ころ軸受および針状ころ軸受の保持器に関し、特に、2サイクルエンジンのコンロッド等に使用されるシェル形針状ころ軸受およびこのようなシェル形針状ころ軸受に含まれる保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
シェル形針状ころ軸受は、軸受投影面積が小さいにもかかわらず、高荷重の負荷を受けることができ、かつ、高剛性であるため、排気量の小さい2サイクルエンジンのコンロッド等に使用されている。ここで、シェル形針状ころ軸受は、鋼板を絞り加工等して成型されたシェル形外輪と、針状ころと、シェル形外輪の内径面に沿うように配置される保持器とを含む。保持器には、針状ころを保持するためのポケットが設けられ、各ポケットの間に位置する柱部で、各針状ころの間隔を保持する。
【0003】
ここで、上記したシェル形針状ころ軸受に含まれる保持器の製造方法について、簡単に説明する。まず、保持器の材料となる帯鋼を、ころを保持することができる大きさのポケット穴を開口するようポケット抜きする。その後、帯鋼の断面形状がV字状となるようにプレス加工する。プレス加工後、保持器の円周長さとなるように切断し、切断された帯鋼を円筒状に折り曲げ、折り曲げられた帯鋼の端面同士を溶接等により接合し、熱処理工程を行い、保持器を製造する。
【0004】
ここで、帯鋼の断面形状がV字状となるプレス加工を行うと、径方向の断面高さを大きく確保することができるため、次のような効果が生じる。図7は、プレス加工を行った後に、切断された帯鋼を円筒状に折り曲げる前後の径方向の断面図である。保持器104が円筒状に折り曲げられる前(図7(a))の柱部106の内径面112側の間隔は、保持器104が円筒状に折り曲げられた後(図7(b))に小さくなるため、ポケットに保持された針状ころ103が内径面112側に抜け落ちることを防止することができる。この場合、さらに、柱部106の外径面111側に、ころ抜け防止部を設けることにより、針状ころ103が外径面111側に抜け出るのを防止するようにしてもよい。
【0005】
また、図8は、針状ころ103が保持された保持器104が、外輪102および軸101に組み込まれた状態を示す図であり、断面形状がV字状となるプレス加工を行うことにより、針状ころ103を案内するのに最も挙動が安定する位置であるPCD(Pitch Circle Diameter)105付近で、針状ころ103を案内することもできる。
【0006】
なお、上記した工程により製造された保持器と同様の形状を有する針状ころ軸受の保持器が、特開2005−98368号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開2005−98368号公報(段落番号0040、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したポケット抜き工程では、打ち抜き刃を有するポンチ等で、保持器の材料に対し、ポケット形状に刃先を押し当てて打ち抜くことにより行う。この場合、打ち抜かれたポケットの側壁面、すなわち、各ポケットの間に位置する柱部の側壁面には、せん断面および破断面が発生することになる。せん断面とは、ポンチ等の打ち抜き刃の刃先によって打ち抜かれて切断される平滑な面である。また、破断面とは、ポンチ等の打ち抜き刃によって打ち抜くときに、刃先によって押し込まれた材料で引きちぎられるように切断される粗い面である。
【0008】
ここで、ポケット抜き工程において、円筒状に折り曲げられたときに、内径面となる側からポケットを打ち抜くと、柱部の側壁面の外径面となる側に破断面が位置することになる。
【0009】
図9は、この場合の保持器104の径方向の断面図であり、図10は、この場合の保持器104の軸方向の断面図である。図10において、点線で示された部分は、保持器104のポケットに保持された針状ころ103を示しており、一点鎖線は、PCD105を示す。図9および図10を参照して、内径面112側となる図中の矢印Xの方向からポケット抜きを行うと、側壁面110の内径面112側にはせん断面108が位置し、側壁面110の外径面111側には破断面109が位置することになる。ここで、保持器104はV字状にプレス加工されているため、針状ころ103を保持したときに、側壁面110の中央部のPCD105付近に、破断面109が位置し、側壁面110の端部のPCD105付近にせん断面108が位置することになる。
【0010】
この場合のPCD105における側壁面110の形状曲線114を、針状ころ103の外形輪郭線113と重ねて、図11に示す。図11を参照して、側壁面110のうち、中央部は破断面109であり、端部はせん断面108である。そうすると、形状曲線114は外形輪郭線113に対して、中央部に凹んだ形状となり、針状ころ103は、側壁面110の端部のせん断面108に接触して案内されることになる。
【0011】
しかし、針状ころ103の端部は面取り部であり、また、側壁面110の端部は針状ころ103の外形輪郭線113と沿う形状ではないため、適切に接触することができず、安定して針状ころ103を案内することができない。
【0012】
この発明は、ころを安定して案内することができる針状ころ軸受および針状ころ軸受の保持器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る針状ころ軸受は、複数の針状ころと、針状ころを保持する保持器とを有する針状ころ軸受である。上記した保持器は、一対の環状部と、針状ころを収容するポケットを形成するように一対の環状部を連結する柱部とを含む。ここで、柱部の側壁面は、ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面と、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面とを有する。上記した針状ころは、せん断面によって案内される。
【0014】
このように構成することにより、ころを案内する柱部の側壁面のうち、中央部の、平滑で、ころの外形に沿うせん断面でころを案内することができるため、ころを安定して案内することができる。
【0015】
好ましくは、柱部は、その中央部が径方向内側に凹んだ形状を有しており、中央部のせん断面は、径方向外側に位置し、破断面は、径方向内側に位置している。こうすることにより、PCD付近にせん断面を位置することができ、ころの挙動を安定させて案内することができる。
【0016】
より好ましくは、針状ころを案内するせん断面の軸方向の長さは、針状ころの軸方向の長さの60%以上である。こうすることにより、ころを案内するせん断面を多くすることができ、ころの挙動をより安定させることができる。
【0017】
この発明の他の局面においては、針状ころ軸受の保持器は、複数の針状ころを保持する。上記した保持器は、一対の環状部と、針状ころを収容するポケットを形成するように一対の環状部を連結する柱部とを含む。上記した柱部は、その中央部が径方向内側に凹んだ形状を有する。ここで、柱部の側壁面は、その径方向外側に、ポケットを形成するように打ち抜き刃によって打ち抜かれるせん断面を有し、その径方向内側に、打ち抜き刃によって押し込まれる材料で引きちぎられる破断面を有している。
【0018】
このような針状ころ軸受の保持器を使用することにより、ころを安定して案内することができる針状ころ軸受を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ころを案内する柱部の側壁面のうち、中央部の、平滑で、ころの外形に沿うせん断面でころを案内することができ、ころを安定して案内することができる。
【0020】
その結果、ころのスキューの発生を抑制することができ、耐焼付き性を向上させることができる。
【0021】
また、このような針状ころ軸受の保持器を使用することにより、ころを安定して案内することができる針状ころ軸受を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受をシェル形針状ころ軸受として使用し、コンロッドに取り付けられた状態を示す断面図である。図1を参照して、針状ころ軸受11は、外輪12と、外輪12の内径面に沿うように配置される複数の針状ころ13と、針状ころ13を保持する保持器14とを有する。保持器14は、外輪12の両端面側に位置する一対の環状部と、各針状ころを収容するポケットを形成するように一対の環状部を連結する柱部とを有する。針状ころ軸受11は、コンロッド15に設けられた係合穴に取り付けられる。
【0023】
ここで、針状ころ軸受11を構成する部材のうち、保持器14の製造方法について説明する。
【0024】
図2は、この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受11の保持器14を製造する工程を示すフローチャートである。また、図3は、図2に示された工程のうち、代表的な工程を表す概略図である。図2および図3を参照して、保持器14の製造方法について説明する。
【0025】
まず、保持器14の材料となる鋼板を、帯鋼の状態(図3(a))において、針状ころ13を保持するポケットを形成するためのポケット抜き工程(図3(b))を行う。ポケット抜き工程は、打ち抜き刃を有するポンチで、帯鋼に対し、ポケット形状に刃先を押し当てて打ち抜くことにより行う。ここで、ポンチの打ち抜く方向であるが、後の曲げ工程で円筒状に折り曲げたときに、外径面となる側から打ち抜きを行う。
【0026】
こうすることにより、最終的に製造された保持器について、外径面となる側の柱部の側壁面はせん断面となり、内径面となる側の柱部の側壁面は破断面となる。
【0027】
次に、ポケットが打ち抜かれた帯鋼を、断面形状がV字状となるように成型するプレス工程(図3(c))を行う。ここで、V字状とは、ポケットが打ち抜かれた帯鋼の中央部と環状部とが円筒状に折り曲げられたときに、径方向に段差が設けられるように押し曲げることをいう。これは、後に外径面となる側から内径面となる側に向かって、プレスで押圧することによって行う。したがって、プレス工程によって、柱部の中央部は、環状部よりも径方向の内側に凹んだ形状となる。
【0028】
その後、保持器14の円周長さとなるように、帯鋼を切断する切断工程を行う。次に、切断された帯鋼を、外輪12の内径面に沿うような円筒状に折り曲げる曲げ工程(図3(d))を行い、その後、両端面を溶接等により接合する接合工程(図3(e))を行った後、軟窒化処理や浸炭焼入処理等の熱処理工程を行って、保持器14が製造される。
【0029】
なお、このようにして製造された保持器14のポケットに、複数の針状ころ13を組み込み、針状ころ13が組み込まれた保持器14を外輪12に取り付け、針状ころ軸受11が製造される。
【0030】
図4は、上記した製造工程で製造された保持器14の軸方向の断面図である。図4において、点線で示された部分は、保持器14のポケットに保持された針状ころ13を示しており、一点鎖線は、PCD26を示す。また、この場合のPCD26における側壁面25の形状曲線32を、針状ころ13の外形輪郭線31と重ねて、図5に示す。
【0031】
図4および図5を参照して、柱部22は、上述したプレス工程において、内径面28側に断面形状がV字状となるように押し曲げられている。したがって、柱部22の中央部は、環状部21よりも内径面28側に位置することになる。
【0032】
また、上述したポケット抜き工程において、外径面27側からポンチの打ち抜き刃を押し当てて打ち抜いているため、柱部22の側壁面25においては、外径面27側にはせん断面23が位置し、内径面28側には破断面24が位置している。したがって、PCD26においては、側壁面25の中央部には、外径面27側のせん断面23が位置し、側壁面25の端部には、内径面28側の破断面24が位置することになる。
【0033】
ここで、側壁面25の中央部に位置するせん断面23の形状曲線32は平滑で、針状ころ13の外形輪郭線31に沿う形状となる。そうすると、針状ころ13の中央部と側壁面25の中央部は適切に接触することができ、安定して針状ころ13を案内することができる。
【0034】
なお、針状ころ13を案内するせん断面23の軸方向の長さは、針状ころ13の軸方向の長さの60%以上であることが好ましい。ここで、せん断面23の長さをころ長さの60%以上とするには、上記したプレス工程において、PCD26上のせん断面23の長さを、ころ長さの60%以上になるように押し曲げることにより行ってもよい。具体的には、図4中のAの寸法、すなわち、PCD26における一方の環状部21側の破断面24の寸法を、ポケットの軸方向の長さであるBの寸法の20%以下となるように、V字状に、かつ、径方向に押し曲げることにより行う。図5において、形状曲線32の中央部に位置する平滑で外形輪郭線31に沿う形状は、ころ長さの60%以上である。
【0035】
こうすることにより、ころと適切に接触するせん断面23を多くすることができ、ころの挙動を抑え、より安定して針状ころ13を案内することができる。
【0036】
ここで、実施例として、図5で示したせん断面がころ長さの60%以上である保持器が含まれる針状ころ軸受、サンプルAとして、図6の形状曲線33に示す、せん断面がころ長さの50%である保持器が含まれる針状ころ軸受、従来品として、従来の保持器が含まれる針状ころ軸受について、各針状ころ軸受をコンロッドに使用して、耐焼付き性を確認する試験を実施した。
【0037】
試験条件は、以下の通りである。また、本試験結果を、表1に示す。
【0038】
混合比 :ガソリン/潤滑オイル=50/1
運転パターン :フルスロットル
運転時間 :2時間又は焼き付くまで
【0039】
【表1】


【0040】
表1は、上記した試験の結果を示す表である。表1を参照して、従来品においては、針状ころ軸受10個中、8個に対して焼付きが発生した。また、サンプルAにおいては、針状ころ軸受10個中、6個に対して焼付きが発生した。実施例においては、針状ころ軸受10個中、焼付きが発生した軸受はなかった。
【0041】
したがって、せん断面の軸方向の長さがころ長さの60%以上である場合は、焼付きが発生しなかったので、せん断面の軸方向の長さは60%あれば十分である。
【0042】
なお、上記の実施の形態においては、シェル形針状ころ軸受について説明したが、これに限らず、ソリッド形針状ころ軸受であってもよい。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明に係る針状ころ軸受および針状ころ軸受の保持器は、ころを安定して案内することができるため、ころのスキューを抑制し、耐焼付き性を向上させた2サイクルエンジンのコンロッド等に使用される針状ころ軸受およびこのような針状ころ軸受に使用される保持器に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受11をコンロッド15に取り付けた状態を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受11の保持器14の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】保持器14の製造工程のうち、代表的な工程を示す概略図であり、帯鋼の状態(a)、ポケット抜き工程(b)、プレス工程(c)、曲げ工程(d)、溶接工程(e)を示す。
【図4】この発明の一実施形態に係る針状ころ軸受11の保持器14の軸方向の断面図である。
【図5】せん断面23を60%以上とした場合のPCD26における側壁面25の形状曲線32を、針状ころ13の外形輪郭線31と重ねて示す図である。
【図6】せん断面23を50%としたサンプルAのPCD26における側壁面25の形状曲線33を、針状ころ13の外形輪郭線31と重ねて示す図である。
【図7】保持器104の材料である帯鋼を円筒状に折り曲げる前(a)および折り曲げた後(b)の状態を示す径方向の断面図である。
【図8】V字状にプレス加工を行った保持器104のポケットに、針状ころ103を保持した状態を示した図である。
【図9】従来における内径面112側にせん断面108、外径面111側に破断面109が位置された場合の径方向の断面図である。
【図10】従来における内径面112側にせん断面108、外径面111側に破断面109が位置された場合の軸方向の断面図である。
【図11】従来におけるPCD105における側壁面110の形状曲線114を、針状ころ103の外形輪郭線113と重ねて示す図である。
【符号の説明】
【0046】
11 針状ころ軸受、12 外輪、13 針状ころ、14 保持器、15 コンロッド、21 環状部、22 柱部、23 せん断面、24 破断面、25 側壁面、26 PCD、27 外径面、28 内径面、31 外形輪郭線、32,33 形状曲線。




 

 


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