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発明の名称 静圧気体軸受スピンドル
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10057(P2007−10057A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−192129(P2005−192129)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 堀内 照悦
要約 課題
加工液などの軸受すき間およびシールすき間への侵入を抑制するとともに、排気手段への加工液などの吸入をも抑制した静圧気体軸受スピンドルを提供する。

解決手段
静圧気体軸受スピンドル1は、両端面に開口を有する貫通路12が形成された中空の回転軸10と、回転軸10の側面10Cおよび一方の端面10Aを取り囲むハウジング20とを備えている。ハウジング20には、回転軸10の一方の端面10Aが露出する排気室13が形成されている。ハウジング20には、一端において排気室13に排気室側開口を有し、他端においてハウジング20の外壁に外壁側開口を有する排気路14が形成されている。排気路14は、排気室13の内部を減圧するための排気手段に連結されている。
特許請求の範囲
【請求項1】
両端面に開口を有する貫通路が形成された中空の回転軸と、
前記回転軸の側面および一方の端面を取り囲むハウジングとを備え、
前記ハウジングには、前記回転軸の前記一方の端面が露出する排気室が形成され、
前記一方の端面に対向する前記排気室の内壁と前記一方の端面との間隔が、前記排気室に隣接する領域での前記回転軸の側面と前記側面に対向する前記ハウジングの側壁との間隔よりも大きくなるように、前記ハウジングおよび前記回転軸が構成されており、
前記ハウジングには、一端において前記排気室に排気室側開口を有し、他端において前記ハウジングの外壁に外壁側開口を有する排気路が形成されており、
前記排気路は、前記排気室の内部を減圧するための排気手段に連結されている、静圧気体軸受スピンドル。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記排気室と前記ハウジングの外部とを連通する排液路がさらに形成され、
前記排液路には前記排液路を遮断可能な開閉弁が設置されている、請求項1に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項3】
前記排液路と前記排気室との連結部である排液路開口は、前記排気室において前記回転軸の中心軸から最も遠い領域を含むように形成されている、請求項2に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項4】
前記排気室に隣接する前記回転軸の側面と前記ハウジングの側壁とが対向する領域であるシールすき間の一部分には、前記一部分に隣接する部分よりも前記回転軸の側面と前記ハウジングの側壁との間隔が広い円環状の溝である円周溝が形成されており、
前記ハウジングには、前記円周溝と前記排気室とを連通する排液孔がさらに形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項5】
前記貫通路の排気室側の開口である排気室側貫通路開口から前記排気室に排出される気体の流れる方向に、前記排気室側貫通路開口を前記排気室の内壁に向けて投影した場合において、前記排気室側貫通路開口の前記内壁に投影された領域が、前記排気室側開口とは重ならないように、前記回転軸と前記ハウジングとは構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静圧気体軸受スピンドル。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は静圧気体軸受スピンドルに関し、より特定的には、貫通路が形成された回転軸を備えた静圧気体軸受スピンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
精密加工装置、精密検査装置などに用いられる静圧気体軸受スピンドルにおいては、回転軸の端部に開口を有する貫通路が形成され、当該貫通路内が真空ポンプなどにより減圧されることにより、被加工物などを回転軸の端部に吸着可能とした真空チャック機構が採用される場合がある。
【0003】
真空チャック機構は、たとえば回転軸の端面と回転軸の側面とを連通する貫通路と、回転軸または回転軸の外周面に対向するハウジングの内壁に設けられて当該貫通路に連通した円環状の溝と、当該溝に連通するようにハウジングに形成され、かつ真空ポンプなどに連結された排気路により構成されている。これにより、真空ポンプなどにより貫通路を減圧することで、被処理物を回転軸の端面に吸着させることができる。また、このとき、貫通路から排気路を通って真空ポンプに至る排気経路は、回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間と交差するが、回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間の軸方向に垂直な断面における断面積を排気経路の排気方向に垂直な断面における断面積に対して十分小さくすることにより、貫通路を十分減圧することができる(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
ここで、前述の減圧された排気経路には回転軸の端面に形成された開口から異物が吸入されるおそれがある。特に、精密旋盤や精密研削盤などの加工機に使用される静圧気体軸受スピンドルの場合、研削液や切削液など(以下、加工液)の飛沫が飛散する環境で使用される場合が多い。このような場合、加工機の運転中に被加工物の切り屑を含んだ加工液が排気経路に吸入される場合がある。特許文献1に開示された静圧気体軸受スピンドルの構成では、排気経路が回転軸の側面とハウジングとの隙間に交差しているため、交差部分に隣接する静圧気体軸受の軸受すき間や、回転軸とハウジングとの隙間が狭くなった部分であるシールすき間に加工液が侵入し、回転軸の焼付き等の不具合が生じるおそれがある。また、加工液が真空ポンプなどの排気手段に吸入されて、当該排気手段に不具合が発生するおそれもある。
【0005】
これに対し、回転軸の側面に設けられる貫通路の開口を静圧気体軸受から離れた位置に形成した静圧気体軸受スピンドルが提案されている。これにより、加工液の軸受すき間への侵入が抑制される(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−145778号公報
【特許文献2】特開平8−166020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に開示された静圧気体軸受スピンドルの構成では、加工液の軸受すき間への侵入は抑制されるものの、排気経路が回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間に交差していることに変わりはないため、回転軸の側面に設けられる貫通路の開口に隣接するシールすき間への加工液の侵入は抑制されない。また、加工液の排気手段への吸入の問題も依然として有している。
【0007】
そこで、本発明の目的は、加工液などの軸受すき間およびシールすき間への侵入を抑制するとともに、排気手段への加工液などの吸入をも抑制した真空チャック機構を有する静圧気体軸受スピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った静圧気体軸受スピンドルは、両端面に開口を有する貫通路が形成された中空の回転軸と、回転軸の側面および一方の端面を取り囲むハウジングとを備えている。ハウジングには、回転軸の当該一方の端面が露出する排気室が形成されている。当該一方の端面に対向する排気室の内壁と当該一方の端面との間隔が、排気室に隣接する領域での回転軸の側面と側面に対向するハウジングの側壁との間隔よりも大きくなるように、ハウジングおよび回転軸が構成されている。ハウジングには、一端において排気室に排気室側開口を有し、他端においてハウジングの外壁に外壁側開口を有する排気路が形成されている。排気路は、排気室の内部を減圧するための排気手段に連結されている。
【0009】
前述のように、従来の真空チャック機構が採用された静圧気体軸受スピンドルにおいては、回転軸の端面および側面に開口を有する貫通路が形成されており、真空チャック機構の排気経路が回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間に交差している。そのため、被加工物などを吸着するために回転軸の端面に形成された開口から加工液などが真空チャック機構の貫通路内に吸入された場合、当該加工液などは回転軸の側面に形成された開口から回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間を越えて、排気経路内を移動する。このとき、当該加工液が回転軸の側面やそれに対向するハウジングの側壁に付着する場合がある。その結果、付着した加工液などが軸受すき間やシールすき間に侵入するおそれが生ずる。
【0010】
これに対し、本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、回転軸の両端面に開口を有する貫通路が形成されており、真空チャック機構の排気経路が回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間に交差していない。そのため、ハウジングによって閉じられた側である回転軸の一方の端面とは反対側である他方の端面に、被加工物などを吸着するために形成された貫通路の開口から加工液などが真空チャック機構の貫通路内に吸入された場合、当該加工液などは回転軸の上記一方の端面に形成された貫通路の開口を通って、回転軸の側面とハウジングの側壁との隙間を越えることなく、排気経路内を移動する。その結果、当該加工液が回転軸の側面やそれに対向するハウジングの側壁に付着することを回避することが可能となり、加工液などが軸受すき間やシールすき間に侵入することを抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明の静圧気体軸受スピンドルのハウジングには、回転軸の上記一方の端面が露出するように(端面に面するように)排気室が形成されている。そのため、貫通路に入った加工液は、上記一方の端面に形成された貫通路の開口を通ってこの排気室に溜まる。その結果、加工液などが軸受すき間やシールすき間に侵入することを一層抑制することができるとともに、排気手段への加工液などの吸入をも抑制することができる。
【0012】
さらに、上記一方の端面に対向する排気室の内壁と上記一方の端面との間隔が、排気室に隣接する領域での回転軸の側面と側面に対向するハウジングの側壁との間隔(シールすき間)よりも大きくなるように、ハウジングおよび回転軸が構成されている。そのため、排気室の内部を減圧することにより、回転軸の貫通路の内部を十分に減圧することができる。
【0013】
上記静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、ハウジングには、排気室とハウジングの外部とを連通する排液路がさらに形成されている。そして、排液路には排液路を遮断可能な開閉弁が設置されている。
【0014】
これにより、排気室に溜まった加工液を排気室から排液路を通して静圧気体軸受スピンドルの外部に排出することができる。また、排液路には開閉弁が設置されているため、排気手段が動作している状態においては、開閉弁を閉じておくことにより、排気室および貫通路を十分に減圧して真空チャック機構の機能を発揮させることができる。一方、排気手段が動作していない状態においては、開閉弁を開けることにより、排気室に溜まった加工液を排液路を通して静圧気体軸受スピンドルの外部に排出することができる。
【0015】
上記静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、排液路と排気室との連結部である排液路開口は、排気室において回転軸の中心軸から最も遠い領域を含むように形成されている。
【0016】
これにより、排液路開口が排気室の内壁において鉛直方向で最も下になるように静圧気体軸受スピンドルを設置することによって、排液路開口から加工液などをスムーズに排出することができる。さらに、このように設置することにより、貫通路の開口から加工液などが溜まる領域までの距離を大きくすることができるため、排気室に溜めることが可能な加工液などの量を多くすることができる。
【0017】
上記静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、排気室に隣接する回転軸の側面とハウジングの側壁とが対向する領域であるシールすき間の一部分には、当該一部分に隣接する部分よりも回転軸の側面とハウジングの側壁との間隔が広い円環状の溝である円周溝が形成されている。さらに、ハウジングには、円周溝と排気室とを連通する排液孔がさらに形成されている。
【0018】
これにより、排気室からシールすき間に加工液などが侵入した場合でも、当該加工液などは円周溝に溜まり、排液孔を通って排気室に戻る。その結果、加工液などがシールすき間をさらに逆流することを防止し、シールすき間の焼付きを回避するとともに、ハウジング内部に配置されたモータなどの損傷を回避することができる。
【0019】
上記静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、貫通路の排気室側の開口である排気室側貫通路開口から排気室に排出される気体の流れる方向に、排気室側貫通路開口を排気室の内壁に向けて投影した場合において、排気室側貫通路開口の上記内壁に投影された領域が、排気室側開口とは重ならないように、回転軸とハウジングとは構成されている。
【0020】
これにより、回転軸の貫通路に侵入した加工液などが直線的に排気室および排気路を通過して真空ポンプなどの排気手段に到達することを回避することができる。その結果、侵入した加工液などを吸入することによる真空ポンプなどの排気手段の不具合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、加工液などの軸受すき間およびシールすき間への侵入を抑制するとともに、排気手段への加工液などの吸入をも抑制した静圧気体軸受スピンドルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1の静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。また、図2は、図1の領域α付近を拡大して示した概略部分断面図である。図1および図2を参照して、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0024】
図1を参照して、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1は、両端面に開口を有する貫通路12が形成された中空の回転軸10と、回転軸10の側面10Cおよび一方の端面10Aを取り囲むハウジング20とを備えている。回転軸10の軸方向に垂直な断面における断面形状は円環状となっている。ハウジング20には、回転軸10の一方の端面10Aを露出する(端面10Aに面するように)排気室13が形成されている。図2を参照して、一方の端面10Aに対向する排気室13の内壁である第1の内壁13Aと一方の端面10Aとの間隔が、排気室13に隣接する領域での回転軸10の側面10Cと回転軸10の側面10Cに対向するハウジング20の側壁20Cとの間隔(シールすき間19の間隔)よりも大きくなるように、ハウジング20および回転軸10が構成されている。さらに、ハウジング20には、一端において排気室13に排気室側開口14Aを有し、他端においてハウジング20の外壁20Dに外壁側開口14Bを有する排気路14が形成されている。排気路14は、継ぎ手などの排気管16を介して排気室13の内部を減圧するための排気手段(図示しない)に連結されている。
【0025】
図1を参照して、回転軸10とハウジング20との間には、回転軸10を軸に垂直な方向(ラジアル方向)に軸支する静圧気体ジャーナル軸受31と、回転軸10を軸方向(アキシアル方向)に軸支する静圧気体スラスト軸受32とが配置されている。さらに、静圧気体軸受スピンドル1は軸受用気体供給部34を備えており、軸受用気体供給部34はハウジング20に形成された軸受用気体供給路33に連結されている。このような構成により、静圧気体軸受スピンドル1においては、図示しないエアコンプレッサなどの軸受用気体供給源から軸受用気体供給部34に供給された空気などの軸受用気体が軸受用気体供給路33からジャーナル給気絞り31Aおよびスラスト給気絞り32Aを通じて静圧気体ジャーナル軸受31および静圧気体スラスト軸受32に供給される。これにより、回転軸10とハウジング20との間の隙間において、供給された軸受用気体により気体膜が形成されて、回転軸10はハウジング20に対して回転自在に軸支されている。回転軸10には回転軸10の側面10Cの一部を取り囲むようにモータロータ42が設置されており、さらにハウジング20にはモータロータ42の外周面を囲むようにモータステータ41が設置されている。このモータステータ41およびモータロータ42はモータ40(ビルトインモータ)を構成している。これにより、回転軸10はモータ40の動力によってハウジング20に対して相対的に回転可能に構成されている。
【0026】
さらに、図2を参照して、ハウジング20には、排気室13とハウジング20の外部とを連通する排液路15がさらに形成され、排液路15には排液管17が連結されている。これにより、静圧気体軸受スピンドル1は排気室13に溜まった加工液などを排液路15から排液管17を介して静圧気体軸受スピンドル1の外部に排出可能な構成となっている。そして、排液路15には排液管17の内部に配置された排液路15を遮断可能な開閉弁18が設置されている。なお、開閉弁18は、排液路15の入り口から排液管17の出口までの任意の位置に設けることができる。
【0027】
次に、図1および図2を参照して、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1の動作について説明する。図1を参照して、モータ40のモータステータ41に図示しない電源から電力が供給されることにより、モータロータ42を軸回りに回転させる駆動力が発生する。これにより、ハウジング20に対して回転自在に軸支されている回転軸10はモータロータ42とともにハウジング20に対して相対的に回転する。さらに、図1および図2を参照して、排気管16を介して排気路14に連結された真空ポンプなどの排気手段(図示しない)が動作することにより排気室13の内部が減圧され、それにより貫通路12の内部も減圧される。このとき、貫通路12の内部が減圧されていることから、回転軸10の一方の端面10Aとは反対側に位置する他方の端面10Bに形成された貫通路12の開口であるチャッキング部11に被加工物などを接触させることにより、被加工物などが保持される。このようにして、静圧気体軸受スピンドル1の真空チャック機構は機能する。
【0028】
なお、回転軸10の中心軸に垂直な断面におけるシールすき間19の断面積は貫通路12の断面積よりも小さくなっている。これにより、排気室13の内部を減圧することで、貫通路12の内部が十分に減圧される。ここで、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドルにおいては、シールすき間19における回転軸10の外径を可能な範囲で小さくすることが好ましい。たとえば、シールすき間19における回転軸10の外径を、静圧気体ジャーナル軸受31を構成する部分における回転軸10の外径よりも小さくすることが好ましい。これにより、シールすき間19の幅を大きくしても、回転軸10の中心軸に垂直な断面におけるシールすき間19の断面積を小さくすることができるため、貫通路12の内部が十分に減圧される。そして、シールすき間19の幅を大きくすることで、静圧気体軸受スピンドル1の製造が容易になるとともに、回転軸10の振れによるハウジング20との接触を抑制することができる。
【0029】
ここで、たとえばチャッキング部11において被加工物を保持しつつ、静圧気体軸受スピンドル1で被加工物を回転させながら研削加工を実施する場合において、被加工物の着脱などの際に、切り屑である研削屑を含んだ加工液としての研削液がチャッキング部11から貫通路12の内部に侵入するおそれがある。貫通路12の内部に侵入した研削液は、貫通路12を排気室13に向けて移動し、排気室13に到達する。このとき、図1および図2において回転軸10が水平になるように静圧気体軸受スピンドル1が設置されている場合、排気室13に到達した研削液は排気室13の側壁である排気室側壁13Cが底になるように排気室13内の鉛直方向において最も下に位置する領域に溜まる。
【0030】
このように、研削液が貫通路12に侵入してから排気室13に溜まるまでの経路において、研削液は回転軸10の側面10Cとハウジング20の側壁20Cとの隙間を通過しない。すなわち、真空チャック機構の排気経路が回転軸10の側面10Cとハウジング20の側壁20Cとの隙間に交差していない。その結果、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1においては、研削液が静圧気体ジャーナル軸受31および静圧気体スラスト軸受32の軸受すき間に侵入する可能性が極めて低くなっており、かつ回転軸10の側面10Cとハウジング20の側壁20Cとの間隔が狭くなった部分であるシールすき間19に侵入する可能性も抑制されている。その結果、研削液の侵入による静圧気体軸受やシールすき間の焼付きの発生が抑制されるとともに、ハウジング20の内部に配置されたモータ40などの不具合の発生が抑制される。
【0031】
さらに、排気室13の内部に溜まった研削液は排液路15から排液管17を通じて静圧気体軸受スピンドル1の外部に排出することができる。より詳細に説明すると、研削などの加工が行われており、排気室13および貫通路12の内部が減圧されている状態では、開閉弁18は閉じられている。そのため、排液路15によって排気室13および貫通路12の内部の減圧は阻害されない。そして、加工作業が終了し、排気室13および貫通路12の内部の減圧状態が解消された後で、開閉弁18は開放される。これにより、排気室13の内部に溜まった研削液などを排液路15から排液管17を通じて静圧気体軸受スピンドル1の外部に排出することができる。なお、排気室13の外部に面した壁の少なくとも一部を、塩化ビニール、アクリル樹脂、ガラスなどの、加工液によって侵されない透明な材料で構成してもよい。このようにすると、排気室に侵入した加工液の量を容易に確認することができるので、適切な時期に開閉弁18を操作して排気室13に溜まった加工液を排出することができる。
【0032】
さらに、図1および図2に示すように、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1においては、回転軸10の一方の端部10Aは排気室13に突出している。別の観点から説明すると、回転軸10の一方の端面10Aと当該一方の端面10Aに対向する排気室13の第1の内壁13Aとの距離は、第1の内壁と排気室13の当該第1の内壁に対向する内壁である第2の内壁13Bとの距離よりも小さくなるように実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1は構成されている。これにより、排気室13に入った研削液がシールすき間19に侵入しにくくなっている。その結果、軸受すき間やシールすき間19の焼付きおよびモータ40などの不具合の発生が一層抑制されている。
【0033】
なお、実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1においては、シールすき間19の外周を取り囲むように黒鉛、フッ素樹脂、セラミックスなどの摺動性の良好な素材からなるスリーブが配置されていてもよい。さらに、回転軸10の側面10Cの表面における、ハウジング20の側壁20Cに対向する部分を、硬質クロムめっき、ニッケルめっき、セラミックス、焼入れ鋼などの耐摩耗性に優れた材料で構成してもよい。これにより、回転軸10の側面10Cとハウジング20の側壁20Cとが接触した場合でも、傷がつきにくく、シールすき間19の焼付きを一層抑制することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図3は、本発明の一実施の形態である実施の形態2の静圧気体軸受スピンドルの構成を説明するための概略部分断面図である。図1および図3を参照して、本発明の実施の形態2の静圧気体軸受スピンドルの構成を説明する。
【0035】
実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1と、上述した実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、実施の形態2では、図1の領域α付近が図3に示すような構成となっている点で実施の形態1とは異なっている。
【0036】
具体的には、図3を参照して実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1は、排気室13に隣接する回転軸10の側面10Cとハウジング20の側壁20Cとが対向する領域であるシールすき間19の一部分には、当該一部分に隣接する部分よりも回転軸10の側面10Cとハウジング20の側壁20Cとの間隔が広い円環状の溝である円周溝19Aが形成されている。そして、ハウジング20には、円周溝19Aと排気室13とを連通する排液孔19Bがさらに形成されている。
【0037】
次に、実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1の動作について説明する。実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1と、上述した実施の形態1の静圧気体軸受スピンドル1とは基本的に同様に動作する。しかし、実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1は上述のように円周溝19Aおよび排液孔19Bを有しているため、排気室13からシールすき間19の排気室側部分19Dに加工液などが侵入した場合でも、当該加工液などは円周溝19Aに溜まり、排液孔19Bを通って排気室13に戻る。その結果、加工液などがシールすき間19をさらに逆流してシールすき間19のハウジング内部側部分19Cに到達することを防止し、シールすき間19の焼付きを回避するとともに、ハウジング20内部に配置されたモータ40などの損傷を回避することができる。
【0038】
なお、円周溝19Aは図3に示すようにハウジング20側が凹となるように形成されていてもよいし、ハウジング20側および回転軸10側の両側が凹となるように形成されていてもよい。また、排液孔19Bは円周溝19Aのハウジング20側の凹部の底面において回転軸10から最も遠い領域を含む位置で円周溝19Aに連通していることが好ましい。これにより、当該連通している部分が円周溝19Aにおいて鉛直方向で最も下になるように静圧気体軸受スピンドル1を設置することで、シールすき間19の排気室側部分19Dに侵入した加工液などが円周溝19Aおよび、排液孔19Bを通ってスムーズに排気室13に戻るようにすることができる。
【0039】
(実施の形態3)
図4は、本発明の一実施の形態である実施の形態3の静圧気体軸受スピンドルの構成を説明するための概略部分断面図である。図1および図4を参照して、本発明の実施の形態3の静圧気体軸受スピンドルの構成を説明する。
【0040】
実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1と、上述した実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、実施の形態3では、図1の領域α付近が図4に示すような構成となっている点で実施の形態2とは異なっている。
【0041】
具体的には、実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1においては、排液路15と排気室13との連結部である排液路開口15Aは、排気室13において回転軸10の中心軸から最も遠い領域を含むように形成されている。さらに、実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1では貫通路12の排気室13側の開口である排気室側貫通路開口12Aから排気室13に排出される気体の流れる方向に、排気室側貫通路開口12Aを排気室13の第1の内壁13Aに向けて投影した場合において、排気室側貫通路開口12Aの上記第1の内壁13Aに投影された領域が、排気路14の排気室側開口14Aとは重ならないように、回転軸10とハウジング20とは構成されている。
【0042】
次に、実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1の動作について説明する。実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1と、上述した実施の形態2の静圧気体軸受スピンドル1とは基本的に同様に動作する。しかし、実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1では、上述のように、排液路開口15Aが、排気室13において回転軸10の中心軸から最も遠い領域を含むように形成されているため、排液路開口15Aが排気室13の内壁において鉛直方向で最も下になるように静圧気体軸受スピンドル1を設置することによって、排液路開口15Aから加工液などをスムーズに排出することができる。さらに、このように設置することにより、排気室側貫通路開口12Aから加工液などが溜まる領域までの距離を大きくすることができるため、排気室13に溜めることが可能な加工液などの量を多くすることができる。
【0043】
さらに、実施の形態3の静圧気体軸受スピンドル1では、上述のように、排気室側貫通路開口12Aから排気室13に排出される気体の流れる方向に、排気室側貫通路開口12Aを排気室13の第1の内壁13Aに向けて投影した場合において、排気室側貫通路開口12Aの上記第1の内壁13Aに投影された領域が、排気路14の排気室側開口14Aとは重ならないように、回転軸10とハウジング20とは構成されている。すなわち、貫通路12から排気室13を通って排気路14に至る排気経路が排気室13において屈曲している。そのため、回転軸10の貫通路12に侵入した加工液などが直線的に排気室13および排気路14を通過して真空ポンプなどの排気手段に到達することを回避することができる。その結果、侵入した加工液など吸入することによる真空ポンプなどの排気手段の不具合の発生を抑制することができる。
【0044】
なお、排気路14の排気室側開口14Aは排気室13の第1の内壁13Aに形成してもよいが、図4に示すように排気室側壁13Cに形成することが好ましい。これにより、貫通路12に侵入した加工液などが直線的に排気室13および排気路14を通過して真空ポンプなどの排気手段に到達することを回避し易くなる。
【0045】
また、排液路開口15Aについても、図4に示すように排気室側壁13Cに設けることができる。これにより、排液路開口15Aが排気室13の排気室側壁13Cにおいて鉛直方向で最も下になるように静圧気体軸受スピンドル1を設置することで、加工液の排出を一層スムーズに行なうことが可能となる。このとき、排気路14の排気室側開口14Aと排液路15の排液路開口15Aとが対向するように静圧気体軸受スピンドル1を構成してもよい。これにより、排気室に溜まった加工液の液面から排気室側開口14Aまでの距離を大きくすることができる。その結果、排気室に溜まった加工液の排気手段への吸入を抑制することができる。
【0046】
さらに、排液路開口15Aを排気室側壁13Cに設けた場合、回転軸10の中心軸および排気室側壁13Cにおける中心軸からの距離が最も大きい領域に含まれる点を含む断面において、排気室側壁13Cと回転軸10の中心軸との距離は回転軸10の中心軸からの距離が最も大きい領域に向けて徐々に距離が大きくなるように回転軸10およびハウジング20が構成されていることが好ましい。これにより、加工液の排出を一層スムーズに行なうことが可能となる。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の静圧気体軸受スピンドルは、被加工物などを回転軸の端部に吸着可能とする真空チャック機構が採用された静圧気体軸受スピンドルに特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1の静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の領域α付近を拡大して示した概略部分断面図である。
【図3】実施の形態2の静圧気体軸受スピンドルの構成を説明するための概略部分断面図である。
【図4】実施の形態3の静圧気体軸受スピンドルの構成を説明するための概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 静圧気体軸受スピンドル、10 回転軸、10A 一方の端面、10B 他方の端面、10C 回転軸の側面、11 チャッキング部、12 貫通路、12A 排気室側貫通路開口、13 排気室、13A 第1の内壁、13B 第2の内壁、13C 排気室側壁、14 排気路、14A 排気室側開口、14B 外壁側開口、15 排液路、15A 排液路開口、16 排気管、17 排液管、18 開閉弁、19 シールすき間、19A 円周溝、19B 排液孔、19C ハウジング内部側部分、19D 排気室側部分、20 ハウジング、20C 側壁、20D 外壁、31 静圧気体ジャーナル軸受、31A ジャーナル給気絞り、32 静圧気体スラスト軸受、32A スラスト給気絞り、33 軸受用気体供給路、34 軸受用気体供給部、40 モータ、41 モータステータ、42 モータロータ。




 

 


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