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車輪用軸受装置 - NTN株式会社
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発明の名称 車輪用軸受装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10041(P2007−10041A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−191551(P2005−191551)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
発明者 平井 功
要約 課題

軽量化を図った軽合金製ナックルに装着され、温度上昇による予圧低下と軸受クリープを防止した車輪用軸受装置を提供する。

解決手段
特許請求の範囲
【請求項1】
懸架装置を構成し、軽合金からなるナックルと、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、この車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪と、このハブ輪の小径段部と前記ナックルとの間に嵌合された車輪用軸受とを備え、この車輪用軸受が、内周に複列の外側転走面が形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体を有する複列の転がり軸受からなり、この複列の転がり軸受によって前記ハブ輪が前記ナックルに対して回転自在に支承された車輪用軸受装置において、
前記外輪の外周に環状溝が形成され、この環状溝に耐熱性の合成樹脂からなる樹脂バンドが射出成形によって充填されると共に、前記環状溝の側壁が、開口方向に広がるように傾斜し、当該環状溝の断面が略台形形状に形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記樹脂バンドがポリアミド系の合成樹脂からなり、その線膨張係数が8〜16×10−5/℃に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記側壁の傾斜角が前記外輪の外周面に対して30〜60°の範囲に設定されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記樹脂バンドの外径が前記外輪の外径よりも僅かに大径に形成されている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記樹脂バンドが、成形後に研削加工により所定の外径寸法に形成されている請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、詳しくは、懸架装置を構成するナックルが軽合金製からなり、このナックルに取り付けられる車輪用軸受の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪用軸受装置は、車輪を固定する車輪取付フランジを一体に有するハブ輪と、そのハブ輪を回転自在に支持する車輪用軸受と、この車輪用軸受を車体に支持するナックルと、ハブ輪と連結してドライブシャフトの動力をこのハブ輪に伝達する等速自在継手とを主要部として構成されている。
【0003】
従来からこの車輪用軸受装置を構成する部品、特にナックルには、線膨張係数がハブ輪等と同種の可鍛鋳鉄等の鉄系金属が採用されてきたが、近年、装置の軽量化を狙ってアルミ合金やマグネシウム合金等の軽合金製のものを採用する傾向がある。しかしながら、ナックルをこうした軽合金で形成した場合、ナックルと車輪用軸受の線膨張係数の違いにより、例えば、走行時の温度上昇によってナックルとの嵌合シメシロが少なくなったり、あるいは解放される恐れがあった。その結果、組立時の軸受予圧が維持できなくなる、所謂予圧抜けといった不具合が発生した。
【0004】
こうした問題を回避するために従来の車輪用軸受装置において、温度上昇時の軸受予圧を確保するため初期の予圧量を高く設定すると共に、クリープを防止するために、温度上昇時のシメシロ低下量を見込んで初期のシメシロを大きく設定していた。ここで、クリープとは、嵌合シメシロ不足や嵌合面の加工精度不良等により軸受が周方向に微動して嵌合面が鏡面化し、場合によってはかじりを伴い焼付きや溶着する現象をいう。
【0005】
しかしながら、予圧抜けを防止するために車輪用軸受の初期予圧量を高く設定すると、当然のことながら車輪用軸受に余分な荷重を常時負荷することになって軸受寿命が短くなる。また、温度変化によって予圧量が大きく変化するのに伴い軸受剛性が変動し、車両の走行安定性に悪影響を及ぼす。さらには、クリープを防止するために初期のシメシロを大きく設定すると、車輪用軸受を圧入する時にナックルをかじる恐れがあるため、ナックルを予め加熱した状態で車輪用軸受を圧入する必要がある。これでは組立工数がアップしてコスト高騰を招来することになる。
【0006】
ここで、本出願人は図8に示すような未公開の先行特許出願(特願2003−399127号)で、車輪用軸受装置を提案している。この車輪用軸受装置は、アウトボード側の端部に車輪WおよびブレーキロータBを取り付けるための車輪取付フランジ54を一体に有し、この車輪取付フランジ54から軸方向に延びる小径段部55が形成されたハブ輪51と、このハブ輪51に小径段部55に配設された複列の転がり軸受からなる車輪用軸受53と、軽合金からなるナックル52とを備えている。車輪用軸受53はナックル52に所定のシメシロで圧入されると共に、ナックル52に対してハブ輪51を回転自在に支承している。
【0007】
ハブ輪51の小径段部55に圧入された車輪用軸受53は、等速自在継手57を構成する外側継手部材58の肩部59とハブ輪51とで挟持された状態で固定ナット61によって締結されている。外側継手部材58は、肩部59から軸方向に延びるステム部60が一体に形成されている。このステム部60の外周には、ハブ輪51のセレーション56に係合するセレーション60aとねじ部60bが形成され、エンジンからのトルクを図示しないドライブシャフトおよび等速自在継手57、そしてこのセレーション56、60aを介してハブ輪51に伝達している。
【0008】
車輪用軸受53は、図9に示すように、外輪62と一対の内輪63、63と複列のボール64、64とを備えた複列アンギュラ玉軸受からなる。外輪62の内周面には複列の外側転走面62a、62aが一体に形成され、内輪63の外周面には、複列の外側転走面62a、62aに対向する内側転走面63aが形成されている。複列のボール64、64がこれら転走面62a、63a間にそれぞれ収容され、保持器65、65で転動自在に保持されている。また、車輪用軸受53の端部にはシール66、67が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部からの雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0009】
ここで、外輪62の外周には一対の環状溝68、68が形成されている。これらの環状溝68、68は、外側転走面62a、62aの溝底位置にそれぞれ形成されている。そして、これらの環状溝68、68には、PA(ポリアミド)11をベースとした耐熱性の熱可塑性合成樹脂が射出成形により充填され、樹脂バンド69が形成されている。
【0010】
これにより、温度上昇時、ナックル52と車輪用軸受53の線膨張係数の違いにより、ナックル52が車輪用軸受53以上に熱膨張したとしても、樹脂バンド69がナックル52の熱膨張以上に膨張してその変化に追従することができる。したがって、嵌合シメシロの低下を抑制し、軸受クリープの発生を防止することができると共に、初期に設定した軸受予圧が低下するのを防止することができる。なお、係る先行技術は文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この従来の車輪用軸受装置において、車輪用軸受53の外輪62に設けられた樹脂バンド69は高温で射出成形されるため、図10(a)に示すように、成形直後は、環状溝68に充足しているが、成形後は、(b)に示すように、自然冷却されることで環状溝68の径方向・軸方向共に収縮する。径方向の収縮は、射出成形型を大径に設定し、この収縮分を見込んで大きめに成形することが可能であるが、軸方向の収縮分は、環状溝68の側壁68aで拘束されているため修正することは難しい。これにより、樹脂バンド69と環状溝68の側壁68aとの間に軸方向の空隙70が生じてしまう。
【0012】
このような状態で車輪用軸受53がナックル52に圧入された場合、図11(a)に示すように、樹脂バンド69と環状溝68の側壁68aとの間に依然軸方向の空隙70が存在したままとなる。ここで、車両運転時、軸受温度が上昇した場合、(b)に示すように、樹脂バンド69が熱膨張し、体積膨張分が大半この空隙70を充足することになるため、嵌合シメシロの低下を抑制し、軸受クリープの発生を防止すると言った所望の効果を発揮することができなくなる。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を図った軽合金製ナックルに装着され、温度上昇による予圧低下と軸受クリープを防止した車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、懸架装置を構成し、軽合金からなるナックルと、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、この車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪と、このハブ輪の小径段部と前記ナックルとの間に嵌合された車輪用軸受とを備え、この車輪用軸受が、内周に複列の外側転走面が形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体を有する複列の転がり軸受からなり、この複列の転がり軸受によって前記ハブ輪が前記ナックルに対して回転自在に支承された車輪用軸受装置において、前記外輪の外周に環状溝が形成され、この環状溝に耐熱性の合成樹脂からなる樹脂バンドが射出成形によって充填されると共に、前記環状溝の側壁が、開口方向に広がるように傾斜し、当該環状溝の断面が略台形形状に形成されている構成を採用した。
【0015】
このように、軽合金からなるナックルとハブ輪の小径段部との間に嵌合された車輪用軸受を備え、ナックルに対してハブ輪が回転自在に支承された車輪用軸受装置において、外輪の外周に環状溝が形成され、この環状溝に耐熱性の合成樹脂からなる樹脂バンドが射出成形によって充填されると共に、環状溝の側壁が、開口方向に広がるように傾斜し、当該環状溝の断面が略台形形状に形成されているので、射出成形直後、自然冷却されることで樹脂バンドが斜めに収縮し、樹脂バンドと環状溝の側壁との間に発生する軸方向の空隙を最小限に抑制することができる。したがって、温度上昇時、ナックルと車輪用軸受との線膨張係数の違いによりナックルが車輪用軸受以上に熱膨張したとしても、樹脂バンドが効果的に径方向に膨張して嵌合シメシロの低下を抑制し、軸受クリープの発生を防止することができると共に、初期に設定した軸受予圧の変化を最小限に抑制することができる。
【0016】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記樹脂バンドがポリアミド系の合成樹脂からなり、その線膨張係数が8〜16×10−5/℃に設定されていれば、ナックルの線膨張係数よりも充分大きくなり、ナックルが車輪用軸受以上に熱膨張したとしても、この樹脂バンドがナックルの熱膨張以上に膨張してその変化に追従することができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、前記側壁の傾斜角が前記外輪の外周面に対して30〜60°の範囲に設定されていれば、射出成形後の冷却時、樹脂の収縮方向と側壁の傾斜角とが近くなり、樹脂バンドと環状溝の側壁の間に発生する軸方向の空隙を最小限に抑えることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明のように、前記樹脂バンドの外径が前記外輪の外径よりも僅かに大径に形成されていれば、温度上昇によるシメシロ低下を確実に防止することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、前記樹脂バンドが、成形後に研削加工により所定の外径寸法に形成されていれば、ナックルとのシメシロが安定し、予圧抜けと軸受クリープを一層効果的に防止することができると共に、圧入時、シメシロ過大による樹脂バンドの欠損もない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車輪用軸受装置は、懸架装置を構成し、軽合金からなるナックルと、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、この車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪と、このハブ輪の小径段部と前記ナックルとの間に嵌合された車輪用軸受とを備え、この車輪用軸受が、内周に複列の外側転走面が形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体を有する複列の転がり軸受からなり、この複列の転がり軸受によって前記ハブ輪が前記ナックルに対して回転自在に支承された車輪用軸受装置において、前記外輪の外周に環状溝が形成され、この環状溝に耐熱性の合成樹脂からなる樹脂バンドが射出成形によって充填されると共に、前記環状溝の側壁が、開口方向に広がるように傾斜し、当該環状溝の断面が略台形形状に形成されているので、射出成形直後、自然冷却されることで樹脂バンドが斜めに収縮し、樹脂バンドと環状溝の側壁との間に発生する軸方向の空隙を最小限に抑制することができる。したがって、温度上昇時、ナックルと車輪用軸受との線膨張係数の違いによりナックルが車輪用軸受以上に熱膨張したとしても、樹脂バンドが効果的に径方向に膨張して嵌合シメシロの低下を抑制し、軸受クリープの発生を防止することができると共に、初期に設定した軸受予圧の変化を最小限に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
懸架装置を構成し、軽合金からなるナックルと、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、この車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪と、このハブ輪の小径段部と前記ナックルとの間に嵌合された車輪用軸受とを備え、この車輪用軸受が、内周に複列の外側転走面が形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体を有する複列の転がり軸受からなり、この複列の転がり軸受によって前記ハブ輪が前記ナックルに対して回転自在に支承された車輪用軸受装置において、前記外輪の外周に環状溝が形成され、この環状溝に、ポリアミド系の合成樹脂からなり、その線膨張係数が8〜16×10−5/℃に設定された樹脂バンドが射出成形によって充填されると共に、前記環状溝の側壁が、開口方向に広がるように傾斜し、当該環状溝の断面が略台形形状に形成されている。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の車輪用軸受を示す縦断面図、図3は、図2の要部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で、車両の外側寄りとなる側をアウトボード側(図面左側)、中央寄り側をインボード側(図面右側)という。
【0023】
この車輪用軸受装置は、ハブ輪1と、このハブ輪1に圧入され、ナックル2に対してハブ輪1を回転自在に支承する車輪用軸受3とを主たる構成としている。ハブ輪1はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、アウトボード側の端部に車輪WおよびブレーキロータBを取り付けるための車輪取付フランジ4と、この車輪取付フランジ4から軸方向に延びる円筒状の小径段部5が形成されている。車輪取付フランジ4には車輪WおよびブレーキロータBを締結するハブボルト4aが周方向等配に植設されている。また、ハブ輪1の内周面にはトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)6が形成されると共に、小径段部5の外周面には後述する車輪用軸受3が圧入されている。
【0024】
車輪用軸受3は、等速自在継手7を構成する外側継手部材8の肩部9とハブ輪1とで挟持された状態で固定されている。外側継手部材8は、肩部9から軸方向に延びるステム部10が一体に形成され、このステム部10の外周には、ハブ輪1のセレーション6に係合するセレーション(またはスプライン)10aとねじ部10bが形成されている。そして、エンジンからのトルクが図示しないドライブシャフトおよび等速自在継手7、およびこのステム部10のセレーション10aを介してハブ輪1に伝達される。
【0025】
ここで、ステム部10のセレーション10aには、軸線に対して所定の角度傾斜した捩れ角が設けられ、外側継手部材8の肩部9が車輪用軸受3に当接するまでステム部10がハブ輪1に圧入嵌合されている。これにより、セレーション6、10aの嵌合部に予圧が付与されて周方向のガタが殺されている。また、ステム部10の端部に形成されたねじ部10bに固定ナット11が所定の締付トルクで締結されることにより、車輪用軸受3に所望の軸受予圧が得られる。すなわち、車輪用軸受3が、ハブ輪1に対して軸受クリープを防止し、かつ所望の予圧量になるように所定のシメシロで圧入されている。一方、ナックル2は、アルミ合金等の軽合金で形成されている。これにより、従来の鋳鉄等に比べ、剛性不足を補うために各部を肉厚に設計したとしてもその重量は半減し、軽量化が達成できる。そして、このナックル2に車輪用軸受3が所定のシメシロで圧入されている。
【0026】
車輪用軸受3は、図2に拡大して示すように、外輪12と、この外輪12に内挿された一対の内輪13、13と、内外輪13、12間に収容された複列の転動体(ボール)14、14とを備えた複列アンギュラ玉軸受からなる。外輪12はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、内周には複列の外側転走面12a、12aが一体に形成されている。
【0027】
内輪13はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、その外周には複列の外側転走面12a、12aに対向する内側転走面13aが形成されている。そして、複列の転動体14、14がこれら転走面12a、13a間にそれぞれ収容され、保持器15、15によって転動自在に保持されている。また、車輪用軸受3の端部にはシール16、17が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。なお、本実施形態では、車輪用軸受3として転動体14にボールを用いた複列アンギュラ玉軸受を例示したが、これに限らず、例えば、転動体14に円すいころを用いた複列円すいころ軸受であっても良い。
【0028】
ここで、外輪12の外周には一対の環状溝18、18が形成されている。これらの環状溝18、18は、複列の外側転走面12a、12aの溝底位置にそれぞれ形成されている。これにより、予圧抜けと軸受クリープを効果的に防止することができる。また、これらの環状溝18、18には、PA(ポリアミド)11をベースとした耐熱性の熱可塑性合成樹脂が射出成形により充填され、樹脂バンド19が形成されている。
【0029】
樹脂バンド19の材質は前記PA11に限らず、アルミ合金等の軽合金からなるナックル2の線膨張係数(2〜2.3×10−5/℃)よりも大きく、線膨張係数が8〜16×10−5/℃の範囲の合成樹脂なら良い。例えばPA66、さらにこれらの熱可塑性合成樹脂にGF(グラスファイバー)等の強化繊維を10〜30wt%の範囲で含有させたものを例示することができる。
【0030】
本実施形態では、図3に示すように、環状溝18の側壁18aが開口方向に広がるように傾斜して形成され、環状溝18の断面が略台形形状になるように構成されている。図4は成形時の外輪12を示す説明図であるが、(a)に示すように、樹脂バンド19は径方向の収縮分を見込んで外径が大きめに成形されると共に、成形直後は、樹脂バンド19が環状溝18内に充足している。そして、成形後は、(b)に示すように、自然冷却されることで環状溝18の径方向・軸方向共に収縮する。すると、樹脂バンド19の外径が僅かに縮径すると共に、環状溝18の側壁18aが傾斜して形成されているため、樹脂バンド19は斜めに収縮することになる。すなわち、樹脂バンド19の軸方向の収縮分は、環状溝18の側壁18aに沿って収縮することになり、樹脂バンド19と環状溝18の側壁18aとの間に発生する軸方向の空隙20を最小限に抑制することができる(成形直後の状態を図中2点鎖線にて示す)。
【0031】
ここで、環状溝18の側壁18aの傾斜角αは、外輪12の外周面に対して30〜60°の範囲に設定されている。この傾斜角αが30°未満になると、樹脂の収縮方向と側壁18aの傾斜角αが異なり、反って外径部に大きな空隙20が発生して好ましくない。一方、傾斜角αが60°を超えると、側壁18aの傾斜による効果が薄れると共に、外輪12をナックル2に圧入または引き抜く際に、環状溝18のエッジ状の角部によってナックル2の内径を削って損傷させる恐れがある。
【0032】
この状態で車輪用軸受3をナックル2に圧入した場合、図5(a)に示すように、ナックル2と環状溝18との間には僅かな空隙20が存在するも、車両運転時、軸受温度が上昇した場合、(b)に示すように、樹脂バンド19の体積膨張分の一部がこの空隙20を充足することになるが、閉塞された環状溝18内で大半がナックル2の熱膨張以上に径方向に熱膨張し、ナックル2が外輪12以上に熱膨張したとしてもその変化に追従することができる。したがって、ナックル2との嵌合シメシロの低下を抑制し、軸受クリープの発生を確実に防止することができると共に、初期に設定した軸受予圧が低下するのを防止することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、環状溝18の側壁18aが開口方向に広がるように傾斜して形成されているため、環状溝18の角部が鈍角となり、外輪12をナックル2に圧入または引き抜く際に、ナックル2の内径を削って損傷させるのを防止することができる。
【0034】
なお、外輪12の環状溝18に樹脂バンド19が射出成形された後は、センタレス研削盤等で樹脂バンド19の外周面が研削加工され、所定の外径寸法に形成されている。これにより、ナックル2とのシメシロが安定し、予圧抜けと軸受クリープを一層効果的に防止することができると共に、圧入時、シメシロ過大により樹脂バンド19が欠損することもない。また、樹脂バンド19は、外輪12の外径より僅かに(0〜50μm)突出して形成されている。突出量が0以下では、温度上昇によるシメシロ低下を確実に防止することが難しい。
【0035】
図6は、本出願人が実施した比較試験の結果、具体的には、樹脂バンドがない従来の車輪用軸受と外輪に樹脂バンドが設けられた車輪用軸受および本実施形態に係る車輪用軸受をそれぞれアルミ合金からなるナックルに圧入した状態で、温度変化と軸受内部すきまの変化との関係を比較測定した結果を示している。ここで、▲は外輪に樹脂バンドがない従来の車輪用軸受(比較例1)、■は外輪の外周面に断面矩形状の環状溝が形成され、この環状溝に樹脂バンドが充填された車輪用軸受(比較例2)、●は本発明に係る車輪用軸受を示している(実施例)。
【0036】
このグラフから明確なように、従来の車輪用軸受(比較例1)では、温度上昇に比例してリニアに軸受すきまが拡大しているが、樹脂バンドが設けられた車輪用軸受(比較例2)では、軸受すきまは60℃近傍までは漸次拡大するも、それ以降は樹脂バンドの効果が発揮され漸次軸受すきまが減少している。また、本実施形態に係る車輪用軸受(実施例)では、軸受すきまは40℃近傍までは漸次拡大するも、それ以降は環状溝の断面形状の違いが効果的に発揮され漸次軸受すきまが減少することが判る。
【0037】
このように、一般的な軸受使用温度範囲における軸受すきまの変化幅(A、B、C)が、樹脂バンドがない場合(C)が最も大きくC≫B>Aとなり、樹脂バンドの有無による効果が検証されると共に、環状溝の断面形状の違いが、軸受すきまの変化幅に顕著に影響を及ぼすことが判る。
【0038】
図7は、図6と同様、樹脂バンドがない従来の車輪用軸受と外輪に樹脂バンドが設けられた車輪用軸受および本実施形態に係る車輪用軸受をそれぞれアルミ合金からなるナックルに圧入した状態で、温度変化と軸受予圧の変化との関係、すなわち、軸受使用温度範囲における外輪の外側転走面の寸法変化との関係を比較測定した結果を示している。なお、図中の記号(▲、■、●)は、前述した比較試験結果に対応している。
【0039】
この図でも明確なように、従来のもの(比較例1)では、温度上昇に比例してリニアに軸受予圧が低下しているが、樹脂バンドが設けられた車輪用軸受(比較例2)では、軸受予圧は60℃近傍までは漸次減少するも、それ以降は樹脂バンドの効果が発揮され漸次軸受予圧が復帰して大きくなっている。また、本実施形態に係る車輪用軸受(実施例)では、軸受予圧は40℃近傍までは漸次減少するも、それ以降は環状溝の断面形状の違いが効果的に発揮され漸次軸受予圧が大きくなることが判る。
【0040】
このように、軸受予圧の変化幅(A、B、C)が、樹脂バンドがない場合(C)が最も大きくC≫B>Aとなり、樹脂バンドの有無による効果が検証され、樹脂バンドにより所定の予圧適正範囲を維持することが判る。また、環状溝の断面形状を略台形形状に形成することにより、軸受予圧の変化幅を効果的に抑制することができる。したがって、軸受予圧量の設定範囲を狭い範囲に規制する必要がなくなるため、製造コストを抑えることができる。また、軸受剛性を確保するために軸受予圧の上限を狙うことも可能となり、多様化する客先仕様にリーズナブルに対応することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る車輪用軸受装置は、鋼よりも線膨張係数が大きなアルミ合金等の軽合金からなるナックルに車輪用軸受が圧入された第1世代構造の車輪用軸受装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の車輪用軸受を示す縦断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図2に示す車輪用軸受における外輪の環状溝に樹脂バンドを充填した状態を示す説明図で、 (a)は射出成形直後の状態を示している。 (b)は成形後に自然冷却された状態を示している。
【図5】同上、車輪用軸受の外輪をナックルに圧入した状態を示す説明図で、 (a)は常温時の状態を示している。 (b)は車両運転中の昇温時の状態を示している。
【図6】車輪用軸受の温度変化と軸受すきまの変化の関係を比較測定した結果を示すグラフである。
【図7】車輪用軸受の温度変化と軸受予圧の変化の関係を比較測定した結果を示すグラフである。
【図8】本出願人が既に出願した車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【図9】図8の車輪用軸受を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す車輪用軸受における外輪の環状溝に樹脂バンドを充填した状態を示す説明図で、 (a)は射出成形直後の状態を示している。 (b)は成形後に自然冷却された状態を示している。
【図11】同上、車輪用軸受の外輪をナックルに圧入した状態を示す説明図で、 (a)は常温時の状態を示している。 (b)は車両運転中の昇温時の状態を示している。
【符号の説明】
【0044】
1・・・・・・ハブ輪
2・・・・・・ナックル
3・・・・・・車輪用軸受
4・・・・・・車輪取付フランジ
4a・・・・・ハブボルト
5・・・・・・小径段部
6、10a・・セレーション
7・・・・・・等速自在継手
8・・・・・・外側継手部材
9・・・・・・肩部
10・・・・・ステム部
10b・・・・ねじ部
11・・・・・固定ナット
12・・・・・外輪
12a・・・・外側転走面
13・・・・・内輪
13a・・・・内側転走面
14・・・・・転動体
15・・・・・保持器
16、17・・シール
18・・・・・環状溝
18a・・・・側壁
19・・・・・樹脂バンド
20・・・・・空隙
51・・・・・・ハブ輪
52・・・・・・ナックル
53・・・・・・車輪用軸受
54・・・・・・車輪取付フランジ
55・・・・・・小径段部
56、60a・・セレーション
57・・・・・・等速自在継手
58・・・・・・外側継手部材
59・・・・・・肩部
60・・・・・ステム部
60b・・・・ねじ部
61・・・・・固定ナット
62・・・・・外輪
62a・・・・外側転走面
63・・・・・内輪
63a・・・・内側転走面
64・・・・・ボール
65・・・・・保持器
66、67・・シール
68・・・・・環状溝
68a・・・・側壁
69・・・・・樹脂バンド
70・・・・・空隙
B・・・・・・ブレーキロータ
W・・・・・・車輪
α・・・・・・傾斜角




 

 


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