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発明の名称 油圧式オートテンショナ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−2983(P2007−2983A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−186945(P2005−186945)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
発明者 中尾 吾朗
要約 課題
エンジンブロック側から偏荷重が負荷されるのを防止することができる球形部およびリターンスプリングのばね力が負荷されるばね座を有する油圧式オートテンショナのロッドの製作の容易化を図ることである。

解決手段
シリンダ11内に挿入されたロッド13の先端にエンジンブロック40側の球形内面で支持される球形部16を設け、その球形部16の下方に設けられてリターンスプリング14のばね力を受けるばね座17を設ける。ばね座17をロッド13と別体とし、そのばね座17の中心に形成されたテーパ孔18のテーパ内面とロッド13の外径面間に二つ割りのコレット19を組込み、そのコレット19によりロッド13にばね座17を固定して、ばね座付きロッドの製作の容易化を図る。
特許請求の範囲
【請求項1】
作動油が充填されたシリンダと、そのシリンダの上部開口を密封するシール部材と、そのシール部材をスライド自在に貫通するロッドと、前記シリンダの外側に組込まれて一端がロッドに設けられたばね座で支持され、他端がシリンダの外周下部に設けられたフランジで支持されたリターンスプリングとを有し、前記ロッドとシリンダとに負荷される収縮方向の押し込み力をシリンダの内部に設けられた油圧ダンパで緩衝するようにしたばね外装式の油圧式オートテンショナにおいて、前記ロッドとばね座を別体とし、ロッドの先端部にはエンジンブロック側の球形内面で接触案内される球形部を設け、その球形部の下方に前記ばね座を設け、そのばね座の中心に形成された下端小径のテーパ孔のテーパ内面とロッドの外径面間に周方向に二つ割りされたコレットを組込み、そのコレットの外周に前記テーパ孔のテーパ内面に適合するテーパ面を設けたことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項2】
前記コレットとロッドの相互間に、コレットを軸方向に位置決めする位置決め手段を設けた請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項3】
前記位置決め手段が、ロッドの外周に形成された係合溝と、コレットの内周に形成されて係合溝に係合する突条とから成る請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、オルタネータ等のエンジン補機を駆動する補機駆動用ベルトの張力調整に用いられる油圧式オートテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジン補機を駆動するベルト伝動装置においては、ベルトの張力調整用のテンションプーリを回転自在に支持する揺動可能なプーリアームにオートテンショナの調整力を付与してテンションプーリをベルトに押し付け、そのベルトの張力変化をオートテンショナで吸収してベルトの張力を一定に保つようにしている。
【0003】
上記オートテンショナとして、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。このオートテンショナは、作動油が充填されたシリンダと、そのシリンダの上部開口を密封するシール部材と、そのシール部材をスライド自在に貫通するロッドと、そのロッドとシリンダが伸長する方向にロッドとシリンダを付勢するリターンスプリングとを有し、上記ロッドとシリンダとに負荷される収縮方向の押し込み力をシリンダの内部に組込まれた油圧ダンパによって緩衝するようにしている。
【0004】
上記油圧式オートテンショナにおいては、シリンダの閉塞端およびロッドの先端に連結片を設け、各連結片に形成されたブッシュ挿入孔内にブッシュを挿入し、そのブッシュ内に挿入されるボルトの締付けによりブッシュをプーリアームやエンジンブロックに固定して、一方の連結片をプーリアームに揺動自在に連結し、他方の連結片をエンジンブロックに揺動自在に連結するようにしている。
【特許文献1】特開平10−299846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記油圧式オートテンショナのように、ボルトの締付けによりブッシュを固定し、そのブッシュを中心にしてロッド側連結片およびシリンダ側連結片を揺動自在に支持する構成であると、エンジンブロックのブッシュ固定面およびブッシュ端面の面精度が悪い場合、ブッシュに傾きが生じる。このとき、油圧式オートテンショナにも傾きが生じるため、ベルトの張力調整時、油圧式オートテンショナに偏荷重が作用して、ベルトの張力変化をスムーズに吸収することができず、また、油圧式オートテンショナの耐久性を低下させることになる。
【0006】
そのような不都合の発生を防止するには、ロッドの先端に球形部を設け、一方、エンジンブロックには軸受部材を取付け、その軸受部材に設けられた半球状凹部の球形内面で上記球形部を支持することにすれば、プーリアームから油圧式オートテンショナを介して軸受部材に負荷される軸方向荷重の反力をロッドの軸心上に負荷することができるため、油圧式オートテンショナに対する偏荷重の負荷防止対策にはきわめて有効であるが、ばね座および球形部がロッドと一体であると、形状が複雑になるため、加工が困難となり、加工コストが高くなるという問題が発生する。
【0007】
この発明の課題は、球形部およびばね座を有するロッドを簡単に形成することができるようにした偏荷重負荷防止対策用のばね外装式の油圧式オートテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、作動油が充填されたシリンダと、そのシリンダの上部開口を密封するシール部材と、そのシール部材をスライド自在に貫通するロッドと、前記シリンダの外側に組込まれて一端がロッドに設けられたばね座で支持され、他端がシリンダの外周下部に設けられたフランジで支持されたリターンスプリングとを有し、前記ロッドとシリンダとに負荷される収縮方向の押し込み力をシリンダの内部に設けられた油圧ダンパで緩衝するようにしたばね外装式の油圧式オートテンショナにおいて、前記ロッドとばね座を別体とし、ロッドの先端部にはエンジンブロック側の球形内面で接触案内される球形部を設け、その球形部の下方に前記ばね座を設け、そのばね座の中心に形成された下端小径のテーパ孔のテーパ内面とロッドの外径面間に周方向に二つ割りされたコレットを組込み、そのコレットの外周に前記テーパ孔のテーパ内面に適合するテーパ面を設けた構成を採用したのである。
【0009】
ここで、前記コレットとロッドの相互間に、コレットを軸方向に位置決めする位置決め手段を設けることによって、ばね座の軸方向への移動を確実に防止することができ、リターンスプリングの押圧力をロッドに確実に負荷することができる。
【0010】
上記位置決め手段として、ロッドの外周に周方向に延びる係合溝を設け、コレットの内周に形成された突条を上記係合溝に係合させるようにしたものを採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、ロッドの先端に球形部を形成することにより、エンジンブロック側に取付けられる軸受部材に球面を形成し、その球面で上記球形部を支持することにより、軸受部材からロッドに偏荷重が負荷されるのを防止することができ、油圧式オートテンショナを精度よく作動させることができると共に、耐久性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、ロッドにばね座を嵌合し、そのばね座に形成されたテーパ孔とロッドの外径面間に外周がテーパ面とされた二つ割りのコレットを組み込んだことにより、ばね座に負荷されるリターンスプリングの押圧力によって二つ割りコレットは径方向内方に押圧されてロッドの外径面と強く接触することになり、ロッドに対してばね座を強固に取付けることができ、球形部およびばね座を有するロッドを簡単に形成することができる。
【0013】
さらに、先端に球形部を有するロッドとばね座とが別体であるため、ロッドおよびばね座の加工が容易であり、コストの安いばね座つきロッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はベルト張力調整装置を示す。図示のように、プーリアーム1は支点軸2を中心に揺動自在に支持され、その一端部にはテンションプーリ3が回転自在に支持されている。プーリアーム1の他端部には油圧式オートテンショナ10が接続され、その油圧式オートテンショナ10によってプーリアーム1はテンションプーリ3がベルト4を押圧する方向に付勢されている。
【0015】
図2に示すように、油圧式オートテンショナ10は、作動油が充填されたアルミ合金から成る底付きのシリンダ11と、そのシリンダ11の上部開口を密封して作動油の油面上に空気溜りを形成するシール部材12と、そのシール部材12をスライド自在に貫通するロッド13と、上記シリンダ11の外側に設けられたリターンスプリング14と、シリンダ11の内部に設けられて、そのシリンダ11とロッド13に負荷される収縮方向の押し込み力を緩衝する油圧ダンパ15とを有している。
【0016】
ロッド13のシリンダ11外部に位置する先端には球形部16が設けられ、その球形部16の下方にばね座17が設けられている。
【0017】
図2および図3に示すように、ばね座17は下端が小径となるテーパ孔18を中心に有し、そのテーパ孔18のテーパ内面とロッド13の外径面間にコレット19が組込まれている。
【0018】
コレット19はテーパ孔18のテーパ内面に適合するテーパ面20を外周に有している。このコレット19は周方向に二つ割りとされている。
【0019】
コレット19とロッド13の相互間には、コレット19を軸方向に位置決めする位置決め手段21が設けられている。位置決め手段21は、ロッド13の外周に周方向に延びる係合溝22を形成し、コレット19の内周には突条23を設け、その突条23を係合溝22に係合してコレット19を位置決めしている。
【0020】
ばね座17の取付けに際しては、二つ割りのコレット19を、その内面の突条23がロッド13の係合溝22に係合するようロッド13の外側に沿わせたのち、ロッド13の下端部に予め嵌合したばね座17を、そのテーパ孔18内にコレット19が納まる位置まで引き上げるようにする。図4は、ばね座17の取付け状態を示す。
【0021】
リターンスプリング14は、ロッド13の先端部に設けられたばね座17とシリンダ11の外周下部に設けられたフランジ24間に組込まれて、シリンダ11とロッド13が伸長する方向にシリンダ11およびロッド13を付勢している。
【0022】
油圧ダンパ15は、シリンダ11の内部に嵌合された鋼製の底付きスリーブ25内にプランジャ26をスライド自在に組込んでシリンダ11の内部を圧力室27とリザーバ室28とに仕切り、そのプランジャ26に圧力室27とリザーバ室28を連通する通路29を設け、この通路29にチェックバルブ30を設けると共に、圧力室27内にプランジャスプリング31を組込んでプランジャ26をロッド13の下端部に押し付けている。
【0023】
ここで、チェックバルブ30は、圧力室27内の圧力がリザーバ室28内の圧力より高くなると、通路29を閉じるようになっている。
【0024】
ロッド13のシリンダ11内に位置する中間部にはウエアリング32が嵌合されている。ウエアリング32はシリンダ11とロッド13の相対的な伸縮時にロッド13と共に移動し、その移動時、シリンダ11の内径面で案内されるようになっている。
【0025】
シリンダ11の下端には連結片33が設けられ、その連結片33に形成されたブッシュ挿入孔34内にブッシュ35が挿入されている。
【0026】
上記の構成から成るばね外装式の油圧式オートテンショナ10において、ブッシュ35は、その内側に挿入されたボルト36の締付けによってプーリアーム1に固定される。
【0027】
一方、ロッド13の先端に設けられた球形部16は、エンジンブロック40にボルト止めされる軸受部材41によって揺動自在に支持される。
【0028】
ここで、軸受部材41の下面には略半球状の凹部42が形成され、その凹部42内に球形部16を包み込むライナ43が組込まれ、そのライナ43に形成された球形内面44が球形部16の球形表面と球面接触している。なお、ライナ43を省略し、ロッド13の球形部16を凹部42の球形内面に直接接触させるようにしてもよい。
【0029】
図1および図2に示すような油圧式オートテンショナ10の組付け状態において、負荷の変動によってベルト4が振動し、そのベルト4に弛みが生じると、リターンスプリング14の弾性力によりシリンダ11が下方向に移動すると共に、プーリアーム1がシリンダ11で押されて揺動し、テンションプーリ3がベルト4に押し付けられ、ベルト4の弛みが吸収される。
【0030】
シリンダ11が下方向に移動するとき、圧力室27内の圧力が低下するため、チェックバルブ30が通路29を開放し、リザーバ室28内の作動油は圧力室27内に流入する。このため、シリンダ11は下方向にスムーズに移動し、ベルト4の弛みを直ちに吸収する。
【0031】
一方、ベルト4の張力が増大すると、テンションプーリ3およびプーリアーム1を介してシリンダ11に押し上げ力が負荷される。このとき、圧力室27内の圧力はリザーバ室28内の圧力より高くなるため、チェックバルブ30は通路29を閉じ、圧力室27内の作動油によって押し上げ力が緩衝される。
【0032】
上記押し上げ力がリターンスプリング14のばね力より大きい場合、圧力室27内の作動油は、スリーブ25とプランジャ26の摺動面間に形成された微小なリーク隙間からリザーバ室28内に流れ、上記押し上げ力とリターンスプリング14のばね力とが釣り合う位置までシリンダ11がゆっくりと上昇して、ベルト4の張力を一定に保持する。
【0033】
ベルト4の張力を調整する油圧式オートテンショナ10は、ロッド13の先端に設けられた球形部16をエンジンブロック40に取付けられた軸受部材41の球形内面44によって支持しているため、エンジンブロック40の面精度が悪く、軸受部材41に傾きがあると、ライナ43と球形部16の接触面でずれ動きが生じて軸受部材41の傾きを吸収する。
【0034】
このため、油圧式オートテンショナ10から軸受部材41に負荷される押圧力の反力はロッド13の軸方向に作用することになり、油圧式オートテンショナ10に偏荷重が負荷されることはない。したがって、油圧式オートテンショナ10を精度よく作動させることができ、耐久性の低下を抑制することができる。
【0035】
上記のような球形部16を有するロッド13において、そのロッド13にリターンスプリング14のばね力を受けるばね座17が一体であると形状が複雑化して加工が困難となるが、実施の形態では、ロッド13に二つ割りのコレット19を介してばね座17を取付けるようにしているため、ロッド13の加工が容易であり、コストの低減を図ることができる。
【0036】
また、ロッド13に対してばね座17を簡単に組付けることができると共に、リターンスプリング14からばね座17に負荷されるばね力によって二つ割りのコレット19はロッド13の外径面に強く圧接するため、ばね座17をロッド13に強固に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係る油圧式オートテンショナを用いたベルト張力調整装置の正面図
【図2】図1に示す油圧式オートテンショナの縦断正面図
【図3】ばね座の組付け前の状態を示す分解斜視図
【図4】ばね座の組付け状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0038】
11 シリンダ
12 シール部材
13 ロッド
14 リターンスプリング
15 油圧ダンパ
16 球形部
17 ばね座
18 テーパ孔
19 コレット
20 テーパ面
21 位置決め手段
22 係合溝
23 突条
24 フランジ
40 エンジンブロック
41 軸受部材
44 球形内面




 

 


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