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発明の名称 クラッチ制御初期圧学習方法及びクラッチ駆動制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−71311(P2007−71311A)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
出願番号 特願2005−259714(P2005−259714)
出願日 平成17年9月7日(2005.9.7)
代理人 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
発明者 近藤 宏紀 / 田村 忠司 / 松井 康成 / 谷口 浩司 / 豊田 晋哉
要約 課題
ロックアップクラッチなどのクラッチ機構のスリップ状態を確実かつ高精度に検出して高精度な学習を行い、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定。

解決手段
ロックアップクラッチのスリップ回転数の瞬時値と時間積算値とが各目標スリップ回転数にそれぞれ到達するまでの時間を瞬時値解放時間Tnslipabs及び積算値解放時間Tnslipsumとして計測する。この両解放時間Tnslipabs,Tnslipsumに対する評価(S160,S162,S174)により学習ゲインKGを設定し(S166,S168,S172)学習値補正量dPofsを算出する(S167)ことで制御初期圧の学習を実行している。このように瞬時値解放時間Tnslipabsと積算値解放時間Tnslipsumとを共に評価することによりそれぞれの欠点が補完でき課題が達成される。
特許請求の範囲
【請求項1】
回転駆動源側の出力回転軸と回転負荷側の入力回転軸との間を接続しているクラッチ機構に対して、圧力源からの駆動圧力を調節することにより、締結状態のクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御するための制御初期圧の学習方法であって、
制御開始から前記クラッチ機構のスリップ回転数の瞬時値が瞬時基準値に到達するまでの第1経過時間と、制御開始から前記スリップ回転数の時間積算値が積算基準値に到達するまでの第2経過時間とを計測し、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて、制御初期圧の学習を実行することを特徴とするクラッチ制御初期圧学習方法。
【請求項2】
請求項1において、前記制御初期圧の学習は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて、制御初期圧の学習値を更新することにより実行されることを特徴とするクラッチ制御初期圧学習方法。
【請求項3】
請求項2において、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との目標経過時間への収束有無の組み合わせの分類であり、
前記学習値の更新は、前記収束有無の組み合わせの分類に応じて学習値補正量を算出し、該学習値補正量による旧学習値に対する補正により新学習値を算出することで行われることを特徴とするクラッチ制御初期圧学習方法。
【請求項4】
請求項3において、前記収束有無の組み合わせの分類は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束している場合と、両方が収束している場合とに分けるものであり、
前記一方のみが収束している場合には、前記第1経過時間と前記第2経過時間との差に対応する学習ゲインを算出して、収束した方の経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出し、
前記両方が収束している場合には、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との比較に基づいて学習ゲインを算出して、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出することを特徴とするクラッチ制御初期圧学習方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記回転駆動源は車両に搭載された内燃機関及び電動モータの内の一方又は両方であり、前記クラッチ機構はトルクコンバータに設けられたロックアップクラッチであることを特徴とするクラッチ制御初期圧学習方法。
【請求項6】
回転駆動源側の出力回転軸と回転負荷側の入力回転軸との間を接続しているクラッチ機構を、圧力源から供給される駆動圧力の調節により駆動するクラッチ駆動制御装置であって、
解放制御又はスリップ制御の開始から前記クラッチ機構のスリップ回転数の瞬時値が瞬時基準値に到達するまでの第1経過時間を検出する第1経過時間検出手段と、
解放制御又はスリップ制御の開始から前記スリップ回転数の時間積算値が積算基準値に到達するまでの第2経過時間を検出する第2経過時間検出手段と、
前記第1経過時間検出手段にて検出された前記第1経過時間と、前記第2経過時間検出手段にて検出された前記第2経過時間との評価に基づいて、制御初期圧の学習値を算出する学習値算出手段と、
前記クラッチ機構の解放制御又はスリップ制御を、前記学習値算出手段にて算出された学習値に基づいて設定した制御初期圧から開始する駆動圧力制御手段と、
を備えたことを特徴とするクラッチ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項6において、前記学習値算出手段は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて、旧学習値を補正して新学習値を算出することを特徴とするクラッチ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項7において、前記学習値算出手段は、
前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価として、前記第1経過時間と前記第2経過時間との目標経過時間への収束有無の組み合わせを分類する経過時間評価手段と、
前記経過時間評価手段による分類に応じて学習値補正量を算出する学習値補正量算出手段と、
前記学習値補正量算出手段により算出される学習値補正量により旧学習値を補正して新学習値を算出する学習値更新手段と、
を備えたことを特徴とするクラッチ駆動制御装置。
【請求項9】
請求項8において、前記経過時間評価手段は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束している場合と両方が収束している場合とに分類し、
前記学習値補正量算出手段は、
前記経過時間評価手段の分類が前記第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束しているものである場合には、前記第1経過時間と前記第2経過時間との差に対応する学習ゲインを算出して、収束した方の経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出し、
前記経過時間評価手段の分類が前記第1経過時間と前記第2経過時間との両方が収束しているものである場合には、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との比較に基づいて学習ゲインを算出して、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出することを特徴とするクラッチ駆動制御装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかにおいて、前記回転駆動源は車両に搭載された内燃機関及び電動モータの内の一方又は両方であり、前記クラッチ機構はトルクコンバータに設けられたロックアップクラッチであることを特徴とするクラッチ駆動制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動源側の出力回転軸と回転負荷側の入力回転軸との間を接続しているクラッチ機構に対して圧力源からの駆動圧力の調節により締結状態のクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御するための制御初期圧の学習方法及びクラッチ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータに備えられているロックアップクラッチを、フィードバックにてスリップ制御するに際して、スリップ制御開始時の初期圧を学習補正する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術では、ロックアップクラッチがスリップし始めるまでの時間とその目標時間との差から学習補正量を算出して学習値を設定している。
【特許文献1】特開2003−65432号公報(第12−13頁、図14−15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし特許文献1の手法による学習値設定では、エンジン回転数とタービン回転数との差を計測したスリップ量(スリップ回転数)の瞬時値の大きさを所定値と比較することで、ロックアップクラッチがスリップし始めるまでの時間としている。
【0004】
このようなスリップ回転数の瞬時値と所定値とを比較したのみでは、確実に解放した状態は判定できるが、解放し始めるタイミングを把握しにくく、スリップ状態が精度良く得られにくいという問題が有り、スリップ開始タイミングがばらついて精度の高い学習値が得にくい。
【0005】
本発明は、確実かつ高精度にスリップ状態を検出し該スリップ状態に基づいて高精度な学習を行って、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載のクラッチ制御初期圧学習方法は、回転駆動源側の出力回転軸と回転負荷側の入力回転軸との間を接続しているクラッチ機構に対して、圧力源からの駆動圧力を調節することにより、締結状態のクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御するための制御初期圧の学習方法であって、制御開始から前記クラッチ機構のスリップ回転数の瞬時値が瞬時基準値に到達するまでの第1経過時間と、制御開始から前記スリップ回転数の時間積算値が積算基準値に到達するまでの第2経過時間とを計測し、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて、制御初期圧の学習を実行することを特徴とする。
【0007】
クラッチ機構のスリップ回転数の瞬時値と時間積算値とが、各基準値にそれぞれ到達するまでの経過時間を、第1経過時間及び第2経過時間として計測している。そして第1経過時間と第2経過時間との両方に対する評価に基づいて制御初期圧の学習を実行している。
【0008】
このようにスリップ回転数の瞬時値について計測された第1経過時間のみでなく、スリップ回転数の時間積算値について計測された第2経過時間をも評価している。そしてこの両方の評価に基づいて制御初期圧の学習を実行している。
【0009】
第2経過時間はスリップ回転数の時間積算値が積算基準値に到達するまでの時間であり、回転数演算精度や回転変動による影響を受け易いが、解放し始めたタイミングについては精度良く検出できる。このため瞬時値による第1経過時間では問題となる解放し始めのタイミングを把握しにくいと言う欠点を、第1経過時間と共に第2経過時間をも評価することにより補完できる。
【0010】
しかも、瞬時値による第1経過時間では、回転数演算精度や回転変動による影響は比較的受け難いので、時間積算値による第2経過時間の欠点を補完できる。このため回転数演算精度や回転変動による影響を受け難く、かつ精度良く解放し始めるタイミングを把握できるようになる。
【0011】
したがって第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することにより、確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づく学習ができ、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0012】
請求項2に記載のクラッチ制御初期圧学習方法では、請求項1において、前記制御初期圧の学習は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて、制御初期圧の学習値を更新することにより実行されることを特徴とする。
【0013】
このように第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習値を更新することにより、学習を行っても良い。
したがって制御初期圧の学習を実行しても、確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づく学習ができ、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0014】
請求項3に記載のクラッチ制御初期圧学習方法では、請求項2において、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との目標経過時間への収束有無の組み合わせの分類であり、前記学習値の更新は、前記収束有無の組み合わせの分類に応じて学習値補正量を算出し、該学習値補正量による旧学習値に対する補正により新学習値を算出することで行われることを特徴とする。
【0015】
評価として、第1経過時間と第2経過時間との目標経過時間への収束有無の組み合わせの分類を行っても良い。この場合、学習値の更新は、収束有無の組み合わせの分類に応じて学習値補正量を算出し、この学習値補正量による旧学習値に対する補正により新学習値を算出することで行われる。
【0016】
このことによっても第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することができる。このようにして確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づく学習により、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0017】
請求項4に記載のクラッチ制御初期圧学習方法では、請求項3において、前記収束有無の組み合わせの分類は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束している場合と、両方が収束している場合とに分けるものであり、前記一方のみが収束している場合には、前記第1経過時間と前記第2経過時間との差に対応する学習ゲインを算出して、収束した方の経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出し、前記両方が収束している場合には、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との比較に基づいて学習ゲインを算出して、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出することを特徴とする。
【0018】
分類としては、第1経過時間と第2経過時間との一方のみが収束している場合と、両方が収束している場合とに分類しても良い。そして各分類に応じた学習ゲインを上述のごとく算出し、第1経過時間又は第2経過時間と目標経過時間との差と、学習ゲインとの積から学習値補正量を算出することができる。
【0019】
このことによっても第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することができる。そして、このような確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づく学習により、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0020】
請求項5に記載のクラッチ制御初期圧学習方法では、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記回転駆動源は車両に搭載された内燃機関及び電動モータの内の一方又は両方であり、前記クラッチ機構はトルクコンバータに設けられたロックアップクラッチであることを特徴とする。
【0021】
このように車両に搭載された内燃機関及び電動モータを回転駆動源とした場合には、解放制御又はスリップ制御の対象は、トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチとして構成することができる。このことによっても第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することができる。そして、このような確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づく学習により、クラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定でき、制御対象において、より安定した解放制御又はスリップ制御が実行できる。
【0022】
請求項6に記載のクラッチ駆動制御装置は、回転駆動源側の出力回転軸と回転負荷側の入力回転軸との間を接続しているクラッチ機構を、圧力源から供給される駆動圧力の調節により駆動するクラッチ駆動制御装置であって、解放制御又はスリップ制御の開始から前記クラッチ機構のスリップ回転数の瞬時値が瞬時基準値に到達するまでの第1経過時間を検出する第1経過時間検出手段と、解放制御又はスリップ制御の開始から前記スリップ回転数の時間積算値が積算基準値に到達するまでの第2経過時間を検出する第2経過時間検出手段と、前記第1経過時間検出手段にて検出された前記第1経過時間と、前記第2経過時間検出手段にて検出された前記第2経過時間との評価に基づいて、制御初期圧の学習値を算出する学習値算出手段と、前記クラッチ機構の解放制御又はスリップ制御を、前記学習値算出手段にて算出された学習値に基づいて設定した制御初期圧から開始する駆動圧力制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
学習値算出手段は、第1経過時間と第2経過時間との両方の評価に基づいて制御初期圧の学習値を算出している。したがって駆動圧力制御手段は第1経過時間と第2経過時間との両方の評価を反映した制御初期圧からクラッチ機構の解放制御又はスリップ制御を開始することになる。
【0024】
このため前述したごとくの第1経過時間と第2経過時間との各欠点を相互に補って、学習値算出手段は確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づく学習ができ、駆動圧力制御手段はクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0025】
請求項7に記載のクラッチ駆動制御装置では、請求項6において、前記学習値算出手段は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価に基づいて、旧学習値を補正して新学習値を算出することを特徴とする。
【0026】
このように学習値算出手段は、第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて旧学習値を補正して新学習値を算出することにより、確実かつ高精度に検出したスリップ状態を反映した制御初期圧の学習値を算出できる。このことにより駆動圧力制御手段はクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0027】
請求項8に記載のクラッチ駆動制御装置では、請求項7において、前記学習値算出手段は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との評価として、前記第1経過時間と前記第2経過時間との目標経過時間への収束有無の組み合わせを分類する経過時間評価手段と、前記経過時間評価手段による分類に応じて学習値補正量を算出する学習値補正量算出手段と、前記学習値補正量算出手段により算出される学習値補正量により旧学習値を補正して新学習値を算出する学習値更新手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
学習値算出手段は、経過時間評価手段により、第1経過時間と第2経過時間との目標経過時間への収束有無の組み合わせの分類を行っても良い。そして学習値補正量算出手段はこの分類に応じて学習値補正量を算出する。
【0029】
この学習値補正量を用いて、学習値更新手段は旧学習値を補正して新学習値を算出することから、学習値算出手段は第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することができ、確実かつ高精度に検出したスリップ状態を反映した学習値を算出できる。このことにより、駆動圧力制御手段はクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0030】
請求項9に記載のクラッチ駆動制御装置では、請求項8において、前記経過時間評価手段は、前記第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束している場合と両方が収束している場合とに分類し、前記学習値補正量算出手段は、前記経過時間評価手段の分類が前記第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束しているものである場合には、前記第1経過時間と前記第2経過時間との差に対応する学習ゲインを算出して、収束した方の経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出し、前記経過時間評価手段の分類が前記第1経過時間と前記第2経過時間との両方が収束しているものである場合には、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との比較に基づいて学習ゲインを算出して、前記第1経過時間又は前記第2経過時間と前記目標経過時間との差と前記学習ゲインとの積から前記学習値補正量を算出することを特徴とする。
【0031】
経過時間評価手段の分類としては、第1経過時間と前記第2経過時間との一方のみが収束している場合と、両方が収束している場合とに分類しても良い。そして学習値補正量算出手段は、各分類に応じた学習ゲインを上述のごとく算出し、第1経過時間又は第2経過時間と目標経過時間との差と、学習ゲインとの積から学習値補正量を算出することができる。
【0032】
このことによっても学習値算出手段は第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することができ、確実かつ高精度に検出したスリップ状態を反映した学習値を算出できる。このことにより、駆動圧力制御手段はクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0033】
請求項10に記載のクラッチ駆動制御装置では、請求項6〜9のいずれかにおいて、前記回転駆動源は車両に搭載された内燃機関及び電動モータの内の一方又は両方であり、前記クラッチ機構はトルクコンバータに設けられたロックアップクラッチであることを特徴とする。
【0034】
このように車両に搭載された内燃機関及び電動モータを回転駆動源とした場合には、解放制御又はスリップ制御の対象は、トルクコンバータに設けられたロックアップクラッチとして構成することができる。このことによっても学習値算出手段は第1経過時間と第2経過時間との評価に基づいて制御初期圧の学習を実行することができ、確実かつ高精度に検出したスリップ状態を反映した学習値を算出できる。このことにより、駆動圧力制御手段はクラッチ機構を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧を高精度に設定できる。
【0035】
したがって制御対象において、より安定した解放制御又はスリップ制御が実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された車両用エンジン2及び自動変速機4のブロック図である。回転駆動源であるエンジン2はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関が該当する。このようなエンジン以外に電動モータを用いても良く、内燃機関と電動モータとからなるハイブリッドエンジンでも良い。
【0037】
自動変速機4は、エンジン2側にトルクコンバータ6が配置され、エンジン2のクランク軸2aからトルクコンバータ6のコンバーターカバー6aに回転力が伝達される。このことによりコンバーターカバー6aと一体化しているポンプインペラー6bが内部の流体(ここでは作動油)を介してタービンランナー6cを回転させる。タービンランナー6cは自動変速機本体8の入力軸8aを回転させる。このことにより自動変速機本体8内部のギヤ段状態に対応して変速された回転力が、出力軸8bから駆動系を介して車輪側に伝達される。
【0038】
トルクコンバータ6にはロックアップクラッチ10(クラッチ機構に相当)が設けられ、ロックアップクラッチ10を締結状態とすることにより、エンジン2のクランク軸2aと自動変速機本体8の入力軸8aとの直接接続を可能としている。
【0039】
ロックアップクラッチ10の締結制御・解放制御は変速用ECU(電子制御ユニット)12により油圧制御回路14が制御されることによりなされる。ここでは一定圧のコンバーター圧Pcに対して解放圧Prを調節することにより、コンバーター圧Pcと解放圧Prとの差圧dP(Pa)により、ロックアップクラッチ10の締結・解放制御がなされる。尚、解放制御に加えてあるいは解放制御に代えてスリップ制御を実行しても良い。
【0040】
変速用ECU12は、クランク軸2aの回転数を検出しているエンジン回転数センサ16からエンジン回転数Ne信号を入力している。更に自動変速機本体8の入力軸8aの回転数を検出している入力軸回転数センサ18から入力軸回転数Ni信号、出力軸8bの回転数を検出している出力軸回転数センサ20から出力軸回転数No信号を入力している。この他、シフトポジション信号、スロットル開度信号、その他の信号を入力している。又、エンジン制御用ECUとも相互にデータ通信を行っている。変速用ECU12は、これらの信号やデータに基づいてトルクコンバータ6の油圧制御回路14や自動変速機本体8のギヤ切替のための油圧制御回路22を駆動することでオイルポンプなどの圧力源からの供給圧力を調節し、自動変速機4に対する制御を行っている。
【0041】
変速用ECU12が実行する解放制御では制御初期時に上記差圧dPをまず制御初期圧Piniに制御している。この最初に設定される制御初期圧Piniの状態は、以後の解放制御を円滑に開始させる上で重要である。したがって適切な制御初期圧Piniを得るために解放制御においては制御初期圧Pini設定用の学習値Pofs(Pa)を求めている。尚、学習値Pofsの算出が重要なことはスリップ制御を実行する場合も同様である。
【0042】
図2のフローチャートにロックアップ解放制御圧算出処理を、図3のフローチャートに制御初期圧用学習値設定処理を、図4,5のフローチャートに学習値補正量算出処理を示す。なお個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0043】
ロックアップ解放制御圧算出処理(図2)について説明する。本処理は、車両減速時などにおいて行われるロックアップクラッチ10の解放制御時に、短時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0044】
本処理が開始されると、まず解放制御初期か否かが判定される(S100)。解放制御初期であれば(S100でyes)、基本制御圧力Plc(Pa)が、この時の車両減速度DGをパラメータとして図6に示すマップMAPplcから算出される(S102)。ここでは車両減速度DGが大きいほど(加速度としてはマイナスであって小さいほど)、基本制御圧力Plcとしては大きい値が設定される。尚、車両減速度DGは出力軸回転数Noの減速から計算される。特別に車両にGセンサを設けて検出しても良い。
【0045】
次に最初に前記差圧dPに反映されるロックアップ解放制御圧Plcoff(0)に、制御初期圧Piniが設定される(S104)。この制御初期圧Piniは式1により、基本制御圧力Plcと学習値Pofsとから算出される。
【0046】
[式1] Pini ← Plc + Pofs
ここで学習値Pofsは後述するごとく前回の解放制御時に算出されている値である。
こうして一旦本処理を終了する。このことによりコンバーター圧Pcと解放圧Prとの差圧dP(=Pc−Pr)が計算上の制御初期圧Piniとなるように、変速用ECU12にて油圧制御回路14が調節されることになる。
【0047】
そして次の制御周期では、解放制御初期ではないので(S100でno)、式2のごとく、旧ロックアップ解放制御圧Plcoff(i-1)に対する変動値dPlcoff(<0)の加算により新たなロックアップ解放制御圧Plcoff(i)が算出される(S106)。
【0048】
[式2] Plcoff(i) ← Plcoff(i-1) + dPlcoff
尚、(i)は今回の制御周期で算出されたロックアップ解放制御圧Plcoffを表し、(i-1)は前回の制御周期で算出されたロックアップ解放制御圧Plcoffを表している。他の式についても同じである。
【0049】
本実施の形態では、ロックアップクラッチ10の締結状態から完全解放状態までロックアップ解放制御圧Plcoffを変化させるので、この変動値dPlcoffはマイナスの値であるが、値としては一定値でも良く、旧ロックアップ解放制御圧Plcoff(i-1)の一定割合でも良い。尚、完全に解放するのではなくスリップ制御を実行するのであれば、フィードバック制御により目標スリップ率となるように変動値dPlcoffが設定されることになる。
【0050】
以後、解放制御が継続する限り、制御周期毎に、ステップS100にてnoと判定されてステップS106が実行され、ロックアップ解放制御圧Plcoffが次第に減少する。そして最終的に完全にロックアップクラッチ10が解放状態となれば、解放制御が終了して、ロックアップクラッチ10は解放状態に維持される。
【0051】
前記式1にて用いられる学習値Pofsは制御初期圧用学習値設定処理(図3)にて算出される。本処理もロックアップクラッチ10の解放制御時に短時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0052】
本処理が開始されると、まず学習完了か否かが判定される(S120)。後述する学習値補正量算出処理(図4,5)にて新たな学習値補正量dPofsが未だ設定されていない間は学習完了ではないので(S120でno)、このまま一旦本処理を終了する。
【0053】
そして学習値補正量算出処理(図4,5)にて新たに学習値補正量dPofsが設定されると学習完了であるので(S120でyes)、次に式3のごとくに、旧学習値Pofs(i-1)が、学習値補正量dPofsにて補正されて、新学習値Pofs(i)が算出される(S122)。
【0054】
[式3] Pofs(i) ← Pofs(i-1) + dPofs
こうして新たに学習値Pofs(i)が算出されれば(S122)、次に本処理の終了が設定されて(S124)、本処理の周期的実行は終了する。したがって、再度、解放制御が開始されるまで制御初期圧用学習値設定処理(図3)は実行されることはない。
【0055】
学習値補正量算出処理(図4,5)について説明する。本処理もロックアップクラッチ10の解放制御時に短時間周期で繰り返し実行される処理である。
本処理が開始されると、まず学習許可がなされているか否かが判定される(S150)。この学習許可は変速用ECU12が別途判定処理を行っている。例えば油圧制御回路14での油温が過剰に高温化した等で油圧制御に支障を来すおそれがある場合には学習許可を出さない。したがってステップS150ではnoと判定されて、一旦本処理を終了することになる。このため実質的な処理はなされない。
【0056】
学習許可がなされている場合には(S150でyes)、瞬時値解放時間Tnslipabsの算出が完了しているか否かが判定される(S152)。
この瞬時値解放時間Tnslipabs(第1経過時間に相当)の算出は図7に示すごとく行われる。この瞬時値解放時間Tnslipabs算出処理(図7)は一定の短時間周期で繰り返し実行される処理である。まずスリップ回転数の瞬時値LCslipabsが瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabs以上となったか否かが判定される(S180)。ここでスリップ回転数の瞬時値LCslipabsは、エンジン回転数センサ16にて検出されているエンジン回転数Neと入力軸回転数センサ18にて検出されている入力軸回転数Niとの差(Ne−Ni)である。瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabs(瞬時基準値に相当)は、スリップ開始状態を高精度に捉えるために、実験や理論計算により設定されている値であり、確実にスリップが始まったことを確認できる値が予め設定されている。
【0057】
ここで、まだ瞬時値LCslipabsが瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabsより小さければ(S180でno)、瞬時値解放時間Tnslipabsのカウントアップが行われる(S182)。ここでは瞬時値解放時間Tnslipabsのインクリメントが行われる。尚、各解放制御開始時には、瞬時値解放時間Tnslipabsの初期値として0が設定される。
【0058】
したがって、LCslipabs<TGslipabsである間は(S180でno)、瞬時値解放時間Tnslipabsの値は0から時間経過に応じて上昇してゆくことになる。
【0059】
そして次第にエンジン2のクランク軸2aと自動変速機本体8の入力軸8aとの回転数差(Ne−Ni)が大きくなり、LCslipabs≧TGslipabsとなると(S180でyes)、瞬時値解放時間Tnslipabsの算出は完了とされる(S184)。したがって解放制御開始時からスリップ回転数の瞬時値LCslipabsが瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabsに到達するまでの時間に相当する値が瞬時値解放時間Tnslipabsに設定されることになる。
【0060】
図4の説明に戻り、瞬時値解放時間Tnslipabs算出処理(図7)による瞬時値解放時間Tnslipabsの算出完了前であれば(S152でno)、このまま本処理を終了する。
【0061】
瞬時値解放時間Tnslipabs算出処理(図7)のステップS184が実行されて瞬時値解放時間Tnslipabsの算出が完了すれば(S152でyes)、次に積算値解放時間Tnslipsumの算出が完了しているか否かが判定される(S154)。
【0062】
この積算値解放時間Tnslipsum(第2経過時間に相当)の算出は図8に示すごとく行われる。積算値解放時間Tnslipsum算出処理(図8)は一定の短時間周期で繰り返し実行される処理である。まずスリップ回転数の時間積算値LCslipsumが式4により算出される(S190)。
【0063】
[式4] LCslipsum(i) ← LCslipsum(i-1) + Slip
尚、スリップ回転数Slipは、この時のエンジン回転数Neと入力軸回転数Niとの差(Ne−Ni)である。
【0064】
上記式4により時間周期でスリップ回転数の時間積算値LCslipsumにスリップ回転数Slipが積算されてゆく。
次にスリップ回転数の時間積算値LCslipsumが積算値用目標スリップ回転数TGslipsum以上となったか否かが判定される(S192)。ここで積算値用目標スリップ回転数TGslipsum(積算基準値に相当)は、スリップ回転数の時間積算値LCslipsumによってスリップ開始状態を高精度に捉えるために、実験や理論計算により設定されている値であり、確実にスリップが始まったことを確認できる値が予め設定されている。
【0065】
ここで、まだ時間積算値LCslipsumが積算値用目標スリップ回転数TGslipsumより小さければ(S192でno)、積算値解放時間Tnslipsumのカウントアップが行われる(S194)。ここでは積算値解放時間Tnslipsumのインクリメントが行われる。尚、各解放制御開始時には、積算値解放時間Tnslipsumの初期値として0が設定される。
【0066】
したがって、LCslipsum<TGslipsumである間は(S192でno)、積算値解放時間Tnslipsumの値は0から時間経過に応じて上昇してゆくことになる。
【0067】
そしてエンジン2のクランク軸2aと自動変速機本体8の入力軸8aとのスリップ状態が継続して、LCslipsum≧TGslipsumとなると(S192でyes)、積算値解放時間Tnslipsumの算出は完了とされる(S196)。したがって解放制御開始時からスリップ回転数の時間積算値LCslipsumが積算値用目標スリップ回転数TGslipsumに到達するまでの時間に相当する値が積算値解放時間Tnslipsumに設定されることになる。
【0068】
図4の説明に戻り、積算値解放時間Tnslipsum算出処理(図8)による積算値解放時間Tnslipsumの算出完了前であれば(S154でno)、このまま本処理を終了する。
【0069】
積算値解放時間Tnslipsum算出処理(図8)のステップS196が実行されると積算値解放時間Tnslipsumの算出が完了したことになる(S154でyes)。したがって次に積算値解放時間Tnslipsumと目標解放時間Tref(目標経過時間に相当)との差の絶対値(|Tnslipsum−Tref|)が基準値αより小さいか否かが判定される(S156)。
【0070】
ここで、|Tnslipsum−Tref|<αであれば(S156でyes)、すなわち積算値解放時間Tnslipsumが目標解放時間Trefに収束していれば、解放時間Tnslipには、この積算値解放時間Tnslipsumが設定される(S158)。
【0071】
一方、|Tnslipsum−Tref|≧αであれば(S156でno)、積算値解放時間Tnslipsumが目標解放時間Trefに収束していないことから、ステップS158は実行しない。
【0072】
ステップS158の次に、あるいはステップS156でnoと判定された後に、瞬時値解放時間Tnslipabsと目標解放時間Trefとの差の絶対値(|Tnslipabs−Tref|)が基準値αより小さいか否かが判定される(S160)。
【0073】
ここで、|Tnslipabs−Tref|<αであれば(S160でyes)、すなわち瞬時値解放時間Tnslipabsが目標解放時間Trefに収束していれば、次に解放時間Tnslipに積算値解放時間Tnslipsumが設定されているか否かが判定される(S162)。すなわちステップS158が実行されているか否かが判定される。
【0074】
ここで解放時間Tnslipに積算値解放時間Tnslipsumが設定されているとする(S162でyes)。すなわち積算値解放時間Tnslipsumも瞬時値解放時間Tnslipabsも共に目標解放時間Trefに収束している場合には、次に解放時間Tnslipが目標解放時間Tref以上か否かが判定される(S164)。
【0075】
Tnslip≧Trefであれば(S164でyes)、後述する式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKG2を設定する(S166)。
一方、Tnslip<Trefであれば(S164でno)、後述する式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKG3を設定する(S168)。
【0076】
すなわちステップS162にてyesと判定された場合は、解放時間Tnslip(=Tnslipsum)と目標解放時間Trefとの大小関係に基づいて、一定値の学習ゲインKG2,KG3のいずれかを、後述する式5の学習ゲインKGとして用いることになる。
【0077】
この学習ゲインKG2,KG3は実験や理論計算にて定めたものであり、自動変速機4、トルクコンバータ6、ロックアップクラッチ10、油圧制御回路14,22の種類により適宜設定される値である。したがって学習ゲインKG2,KG3は異なる値の場合も同一値である場合もある。尚、学習ゲインKG2,KG3のいずれか一方又は両方を、解放時間Tnslipと目標解放時間Trefとの差に応じて変更する構成としても良い。
【0078】
ステップS166あるいはステップS168の次には、式5により学習値補正量dPofsが算出される(S167)。
[式5] dPofs ← KG・(Tnslip−Tref)
すなわち目標解放時間Trefと解放時間Tnslipとの差と学習ゲインKGとの積により、学習値補正量dPofsが算出される。
【0079】
ステップS162にてnoと判定された場合には、瞬時値解放時間Tnslipabsのみが目標解放時間Trefに収束していることになるので、解放時間Tnslipには瞬時値解放時間Tnslipabsが設定される(S170)。
【0080】
又、ステップS160にてnoと判定された場合には、解放時間Tnslipに積算値解放時間Tnslipsumが設定されているか否かが判定される(S174)。すなわちステップS158が実行されているか否かが判定される。ここで解放時間Tnslipに積算値解放時間Tnslipsumが設定されていれば(S174でyes)、積算値解放時間Tnslipsumのみが目標解放時間Trefに収束しているので、前記ステップS170の処理はなされない。
【0081】
そして、ステップS170の次に、あるいはステップS174にてyesと判定された次に、積算値解放時間Tnslipsumと瞬時値解放時間Tnslipabsとの差に応じて、図9に示す学習ゲインマップMAPkg1から前記式3の学習ゲインKGを求める(S172)。すなわち|Tnslipsum−Tnslipabs|が大きいほど、大きい学習ゲインKGが設定されることになる。尚、Tnslipsum>Tnslipabs側と、Tnslipsum<Tnslipabs側とで、同一の傾向で学習ゲインKGが増加しているとは限らず、自動変速機4、トルクコンバータ6、ロックアップクラッチ10、油圧制御回路14,22の種類により適宜設定される。
【0082】
そして前記式5により学習値補正量dPofsが算出される(S167)。
ステップS160及びステップS174にて共にnoと判定された場合には、学習ゲインKGの設定は行われず、前記式5による学習値補正量dPofsの算出も行われない。
【0083】
図10のタイミングチャートに本実施の形態における処理の一例を示す。タイミングt0前はロックアップクラッチ10は完全締結状態である。タイミングt0に解放制御が開始されると、直ちにコンバーター圧Pcと解放圧Prとの差圧dPは制御初期圧Piniに調節される。以後、変動値dPlcoff(<0)分の減少が行われて最終的にはロックアップクラッチ10は完全に解放される。尚、差圧dPを制御初期圧Piniに調節した後に、スリップ制御により変動値dPlcoffを調節する処理を行っても良い。
【0084】
前記図2〜5,7,8の各処理はタイミングt0から開始され、前記図3〜5,7,8による学習値Pofsの算出は、新たな学習値Pofs(i)の算出が完了したことにより、ここではタイミングt1で終了している。
【0085】
図10の例では、その後に(t2)、燃料カットも実行されている。この燃料カットの実行によって変動値dPlcoffを変更しても良い。
上述した構成において、瞬時値解放時間Tnslipabs算出処理(図7)が第1経過時間検出手段としての処理に、積算値解放時間Tnslipsum算出処理(図8)が第2経過時間検出手段としての処理に相当する。制御初期圧用学習値設定処理(図3)及び学習値補正量算出処理(図4,5)が学習値算出手段としての処理に、ロックアップ解放制御圧算出処理(図2)が駆動圧力制御手段としての処理に相当する。
【0086】
学習値補正量算出処理(図4,5)のステップS156,S160,S162,S174が経過時間評価手段としての処理に相当する。ステップS164,S166,S167,S168,S172が学習値補正量算出手段としての処理に相当する。制御初期圧用学習値設定処理(図3)のステップS122が学習値更新手段としての処理に相当する。
【0087】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).ロックアップクラッチ10のスリップ回転数の瞬時値LCslipabsが、瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabsに到達するまでの経過時間を、瞬時値解放時間Tnslipabsとして計測している(図7)。更にロックアップクラッチ10のスリップ回転数の時間積算値LCslipsumが、積算値用目標スリップ回転数TGslipsumに到達するまでの経過時間を、積算値解放時間Tnslipsumとして計測している(図8)。
【0088】
そしてこの瞬時値解放時間Tnslipabs及び積算値解放時間Tnslipsumの両方に対する評価に基づいて制御初期圧Piniの学習を実行している(図3〜5)。すなわち瞬時値解放時間Tnslipabs及び積算値解放時間Tnslipsumの目標解放時間Trefへの収束有無の組み合わせの分類を行うことで評価し、分類に応じて学習ゲインKGを設定して、旧学習値Pofs(i-1)を新学習値Pofs(i)に更新している。
【0089】
このようにスリップ回転数の瞬時値LCslipabsについて計測された瞬時値解放時間Tnslipabsのみでなく、時間積算値LCslipsumについて計測された積算値解放時間Tnslipsumをも評価している。そしてこの両方の評価に基づいて制御初期圧Piniの学習を実行している。
【0090】
積算値解放時間Tnslipsumは回転数演算精度や回転変動による影響を受け易いが、解放し始めたタイミングについては精度良く検出できる。このため瞬時値解放時間Tnslipabsでは解放し始めのタイミングを把握しにくいと言う欠点を、瞬時値解放時間Tnslipabsと共に積算値解放時間Tnslipsumをも評価することにより補完できる。
【0091】
しかも、瞬時値解放時間Tnslipabsでは、回転数演算精度や回転変動による影響は受け難いので、積算値解放時間Tnslipsumの欠点を補完できる。このため確実に精度良く解放し始めるタイミングを把握できるようになる。
【0092】
したがって図3〜5,7,8により制御初期圧Piniの学習を実行することにより、確実かつ高精度に検出したスリップ状態に基づいて学習ができ、ロックアップクラッチ10を解放制御又はスリップ制御する際の制御初期圧Piniを高精度に設定できる。
【0093】
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態においては、解放圧Prを調節することによりロックアップクラッチの締結・解放制御(あるいはスリップ制御)がなされていた。これとは、逆に、コンバーター圧Pcを調節することにより、コンバーター圧Pcと解放圧Prとの差圧によりロックアップクラッチの締結・解放制御(あるいはスリップ制御)を実行しても良い。又、解放圧Prとコンバーター圧Pcとの両方を調節してロックアップクラッチの締結・解放制御(あるいはスリップ制御)を実行しても良い。
【0094】
(b).前記学習値補正量算出処理(図4,5)では、積算値解放時間Tnslipsumと瞬時値解放時間Tnslipabsとが共に目標解放時間Trefに収束していれば(S162でyes)、解放時間Tnslipと目標解放時間Trefとの比較により(S164)、学習ゲインKGを決定していた。この時の解放時間Tnslipは積算値解放時間Tnslipsumであるので、2つの解放時間Tnslipsum,Tnslipabsが収束している時には、積算値解放時間Tnslipsumと目標解放時間Trefとの比較により、学習ゲインKGを決定することになる。
【0095】
この代わりにステップS164では、図11に部分的に示すごとく瞬時値解放時間Tnslipabsと目標解放時間Trefとの比較により学習ゲインKGを決定するようにしても良い。
【0096】
すなわちステップS162にてyes(図5)の場合に、瞬時値解放時間Tnslipabsが目標解放時間Tref以上か否かが判定される(S164a)。
Tnslipabs≧Trefであれば(S164aでyes)、前記式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKG4を設定する(S166a)。
【0097】
一方、Tnslipabs<Trefであれば(S164aでno)、前記式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKG5を設定する(S168a)。
すなわちステップS162にてyesと判定された場合は、瞬時値解放時間Tnslipabsと目標解放時間Trefとの大小関係に基づいて、一定値の学習ゲインKG4,KG5のいずれかを、前記式5の学習ゲインKGとして用いることになる。
【0098】
この学習ゲインKG4,KG5は実験や理論計算にて定めたものであり、自動変速機、トルクコンバータ、ロックアップクラッチ、油圧制御回路の種類により適宜設定される値である。したがって学習ゲインKG4,KG5は異なる値の場合も同一値である場合もある。尚、学習ゲインKG4,KG5のいずれか一方又は両方を、瞬時値解放時間Tnslipabsと目標解放時間Trefとの差に応じて変更する構成としても良い。
【0099】
(c).図11の代わりに、図12に部分的に示すごとく積算値解放時間Tnslipsumと瞬時値解放時間Tnslipabsとの両方を目標解放時間Trefと比較して学習ゲインKGを決定するようにしても良い。
【0100】
すなわちステップS162にてyes(図5)の場合に、瞬時値解放時間Tnslipabsが目標解放時間Tref以上か否かが判定される(S164a)。
Tnslipabs≧Trefであれば(S164aでyes)、次に積算値解放時間Tnslipsumが目標解放時間Tref以上か否かが判定される(S164b)。Tnslipsum≧Trefであれば(S164bでyes)、前記式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKGaを設定する(S165a)。Tnslipsum<Trefであれば(S164bでno)、前記式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKGbを設定する(S165b)。
【0101】
一方、Tnslipabs<Trefであれば(S164aでno)、次に積算値解放時間Tnslipsumが目標解放時間Tref以上か否かが判定される(S164c)。Tnslipsum≧Trefであれば(S164cでyes)、前記式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKGcを設定する(S165c)。Tnslipsum<Trefであれば(S164cでno)、前記式5にて用いる学習ゲインKGに一定値の学習ゲインKGdを設定する(S165d)。
【0102】
すなわちステップS162にてyesと判定された場合、瞬時値解放時間Tnslipabsと目標解放時間Trefとの大小関係及び積算値解放時間Tnslipsumと目標解放時間Trefとの大小関係に基づき、学習ゲインKGa,KGb,KGc,KGdのいずれかを学習ゲインKGとして用いている。
【0103】
この学習ゲインKGa,KGb,KGc,KGdは実験や理論計算にて定めたものであり、自動変速機、トルクコンバータ、ロックアップクラッチ、油圧制御回路の種類により適宜設定される一定値である。したがって学習ゲインKGa,KGb,KGc,KGdは異なる値の場合も同一値である場合もある。尚、学習ゲインKGa,KGb,KGc,KGdのいずれか1つ又は複数を、瞬時値解放時間Tnslipabsと目標解放時間Trefとの差、あるいは積算値解放時間Tnslipsumと目標解放時間Trefとの差に応じて、あるいは両方の差に応じて変更する構成としても良い。
【0104】
(d).前記実施の形態は、目標解放時間Trefは、瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabsと積算値用目標スリップ回転数TGslipsumとの設定により、瞬時値解放時間Tnslipabsと比較する場合と積算値解放時間Tnslipsumと比較する場合とで同一値となるようにしている。ただし瞬時値用目標スリップ回転数TGslipabsと積算値用目標スリップ回転数TGslipsumとの設定によっては、異なる値を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施の形態1の車両用エンジン及び自動変速機のブロック図。
【図2】実施の形態1の変速用ECUにおけるロックアップ解放制御圧算出処理のフローチャート。
【図3】同じく制御初期圧用学習値設定処理のフローチャート。
【図4】同じく学習値補正量算出処理のフローチャート。
【図5】同じく学習値補正量算出処理のフローチャート。
【図6】同じく車両減速度DGから基本制御圧力Plcを算出するマップMAPplcの内容を示すグラフ。
【図7】同じく瞬時値解放時間Tnslipabs算出処理のフローチャート。
【図8】同じく積算値解放時間Tnslipsum算出処理のフローチャート。
【図9】同じく積算値解放時間Tnslipsumと瞬時値解放時間Tnslipabsとの差から学習ゲインKGを求める学習ゲインマップMAPkg1の内容を示すグラフ。
【図10】同じく処理の一例を示すタイミングチャート。
【図11】学習値補正量算出処理の変形例を示すフローチャート。
【図12】学習値補正量算出処理の変形例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0106】
2…車両用エンジン、2a…クランク軸、4…自動変速機、6…トルクコンバータ、6a…コンバーターカバー、6b…ポンプインペラー、6c…タービンランナー、8…自動変速機本体、8a…入力軸、8b…出力軸、10…ロックアップクラッチ、12…変速用ECU、14…油圧制御回路、16…エンジン回転数センサ、18…入力軸回転数センサ、20…出力軸回転数センサ、22…油圧制御回路。




 

 


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