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発明の名称 アクチュエータおよびアクチュエータの組み立て方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−64314(P2007−64314A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−249803(P2005−249803)
出願日 平成17年8月30日(2005.8.30)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 木下 靖朗
要約 課題
モータ特性の検査が容易に実施されるアクチュエータおよびアクチュエータの組み立て方法を提供する。

解決手段
アクチュエータ10は、回転−直動変換機構12と、モータ71と、空間83を規定するハウジング81と、周り止めスプライン91とを備える。回転−直動変換機構12は、ナット51とサンシャフト31とを有し、ナット51に入力された回転運動を直線運動に変換してサンシャフト31から出力する。周り止めスプライン91は、サンシャフト31に設けられ、サンシャフト31の回転運動を規制する。回転−直動変換機構12には、サンシャフト31の直線運動を所定の範囲内に規制するストッパ36および37が設けられている。周り止めスプライン91は、空間83に回転−直動変換機構12およびモータ71が収容された状態で、ハウジング81の外側から組み付けられる。
特許請求の範囲
【請求項1】
回転子と軸部材とを有し、前記回転子に入力された回転運動を直線運動に変換して前記軸部材から出力する回転−直動変換機構と、
前記回転子を回転運動させるモータと、
前記回転−直動変換機構および前記モータを収容する内部空間を規定し、前記内部空間から前記軸部材が突出するケース体と、
前記軸部材に設けられ、前記軸部材の回転運動を規制する周り止め部とを備え、
前記回転−直動変換機構には、前記軸部材の直線運動を所定の範囲内に規制するストッパ機構が設けられており、
前記周り止め部は、前記内部空間に前記回転−直動変換機構および前記モータが収容された状態で、前記ケース体の外側から組み付けられる、アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータの組み立て方法であって、
前記モータの機能検査を実施する工程と、
前記機能検査を実施する工程の後、前記周り止め部を前記軸部材に設ける工程とを備える、アクチュエータの組み立て方法。
【請求項3】
前記モータの機能検査を実施する工程の前に、前記ケース体から突出する前記軸部材の一端に、ダイナモを接続するとともに、前記回転子と前記軸部材とを一体に固定する固定部材を前記回転−直動変換機構に接続する工程をさらに備える、請求項2に記載のアクチュエータの組み立て方法。
【請求項4】
前記ケース体には、前記回転−直動変換機構および前記モータが前記内部空間に搬入される開口部が形成されており、
前記モータの機能検査を実施する工程の前に、前記回転子と前記軸部材とを一体に固定する固定部材を、前記開口部を通して前記回転−直動変換機構に接続する工程と、
前記機能検査を実施する工程の後に、前記開口部を塞ぐ蓋部材を前記ケース体に設ける工程とをさらに備える、請求項2または3に記載のアクチュエータの組み立て方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、アクチュエータおよびアクチュエータの組み立て方法に関し、より特定的には、モータから入力された回転運動を直線運動に変換する回転−直動変換機構を備えるアクチュエータおよびそのアクチュエータの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクチュエータに関して、たとえば、特開平9−250579号公報には、ブレーキ開放時の応答性を向上させるとともに、パッドのクリアランスを一定に保つことを目的とした電気式ディスクブレーキが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された電気式ディスクブレーキは、モータへの通電により発生した回転運動を直線運動に変換するローラねじ機構を備える。
【0003】
ローラねじ機構は、円形ロータの内側に固定され、回転自在に支持されたナットと、ナットの内周面に形成されたねじに噛み合う複数のローラねじと、ローラねじと噛み合い、ディスクパッドに接続されたスクリューシャフトとから構成されている。運転者がブレーキペダルを踏んだことが検知されると、モータに電流が流れ、ナットが回転し始める。ナットの回転は、ローラねじを介してスクリューシャフトに伝わり、スクリューシャフトをディスクパッドに向けて押し出す。これにより、ディスクパッドがディスクロータを挟持し、ブレーキ力を発生させる。
【0004】
また、特開平10−196757号公報には、効率を向上させるとともに、1回転当たりの直動量を小さくすることを目的とした回転−直動変換機構が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−250579号公報
【特許文献2】特開平10−196757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示されたアクチュエータの製造工程では、モータが所定の回転数−トルク特性を発揮しているかを確かめるため、アクチュエータを組み立てたアセンブリの状態でモータを検査する必要がある。しかしながら、シャフトの最終的なストローク端を設けるため、シャフトの直線運動する範囲を規制するストッパが設置されていると、その範囲に応じてナットの回転可能な回転数も制限される。このため、モータの検査を実施することが困難となる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、モータ特性の検査が容易に実施されるアクチュエータおよびアクチュエータの組み立て方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったアクチュエータは、回転−直動変換機構と、モータと、ケース体と、周り止め部とを備える。回転−直動変換機構は、回転子と軸部材とを有し、回転子に入力された回転運動を直線運動に変換して軸部材から出力する。モータは、回転子を回転運動させる。ケース体は、回転−直動変換機構およびモータを収容する内部空間を規定し、その内部空間からは軸部材が突出する。周り止め部は、軸部材に設けられ、軸部材の回転運動を規制する。回転−直動変換機構には、軸部材の直線運動を所定の範囲内に規制するストッパ機構が設けられている。周り止め部は、内部空間に回転−直動変換機構およびモータが収容された状態で、ケース体の外側から組み付けられる。
【0008】
このように構成されたアクチュエータによれば、軸部材に周り止め部を設けず、モータおよび回転−直動変換機構をケース体に組み付けたアセンブリの状態で、モータの機能検査を実施し、検査が終了してから、周り止め部をケース体の外側から軸部材に設けることができる。この場合、モータの機能検査時に、回転−直動変換機構を一体化し、軸部材を回転子とともに回転させることが可能となる。これにより、ストッパ機構によってモータの回転数が制限されるということがなくなり、モータの機能検査を容易に実施することができる。
【0009】
この発明に従ったアクチュエータの組み立て方法は、上述に記載のアクチュエータの組み立て方法である。アクチュエータの組み立て方法は、モータの機能検査を実施する工程と、機能検査を実施する工程の後、周り止め部を軸部材に設ける工程とを備える。このように構成されたアクチュエータの組み立て方法によれば、モータの機能検査を容易に実施するとともに、組み立て時の作業性を向上させることができる。
【0010】
また好ましくは、アクチュエータの組み立て方法は、モータの機能検査を実施する工程の前に、ケース体から突出する軸部材の一端に、ダイナモを接続するとともに、回転子と軸部材とを一体に固定する固定部材を回転−直動変換機構に接続する工程をさらに備える。このように構成されたアクチュエータの組み立て方法によれば、モータの機能検査時、固定部材によって回転−直動変換機構を確実に一体化することができる。これにより、ダイナモを用いたモータの機能検査で、モータの特性を正確に把握することができる。
【0011】
また、ケース体には、回転−直動変換機構およびモータが内部空間に搬入される開口部が形成されている。好ましくは、アクチュエータの組み立て方法は、モータの機能検査を実施する工程の前に、回転子と軸部材とを一体に固定する固定部材を、開口部を通して回転−直動変換機構に接続する工程と、機能検査を実施する工程の後に、開口部を塞ぐ蓋部材をケース体に設ける工程とをさらに備える。このように構成されたアクチュエータの組み立て方法によれば、回転−直動変換機構およびモータを搬入する開口部を利用して、回転−直動変換機構に固定部材を接続することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、この発明に従えば、モータ特性の検査が容易に実施されるアクチュエータおよびアクチュエータの組み立て方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態におけるアクチュエータが用いられたバルブリフト可変機構を示す正面図である。図2は、図1中のバルブリフト可変機構を部分的に示す斜視図である。図2中では、内部構造が明確に把握できるように一部が破断されて表わされている。
【0015】
図1および図2を参照して、バルブリフト可変機構100は、内燃機関のバルブ(本実施の形態では、吸気バルブ)のバルブリフト量を可変とする機構である。内燃機関は、ガソリンエンジンであっても良いし、ディーゼルエンジンであっても良い。参照する図には示されていないが、図中の駆動軸20の先端には、駆動軸20を直線運動させるための本実施の形態におけるアクチュエータが接続されている。
【0016】
バルブリフト可変機構100は、内燃機関のシリンダヘッド内に設けられている。そのシリンダヘッド内には、カム103が形成されたカムシャフト102、揺動可能に軸支されたロッカアーム106およびロッカアーム106の揺動に応じて開閉駆動される吸気バルブ101が配設されている。バルブリフト可変機構100は、一方向に延びる駆動軸20と、駆動軸20の外周面を覆う支持パイプ108と、支持パイプ108の外周面上で駆動軸20の軸方向に並んで配置された入力アーム104および揺動カム105とを備える。
【0017】
なお、この内燃機関では、各気筒にそれぞれ一対の吸気バルブ101およびロッカアーム106が設けられており、一対の吸気バルブ101が、1つのカム103によって開閉駆動される。バルブリフト可変機構100には、各気筒に設けられた1つのカム103に対応して、1つの入力アーム104が設けられている。入力アーム104の両側には、各気筒に設けられた一対の吸気バルブ101のそれぞれに対応して、2つの揺動カム105が設けられている。
【0018】
支持パイプ108は、中空円筒状に形成されており、カムシャフト102に対して平行に配置されている。支持パイプ108は、軸方向へ移動したり、回転したりしないようにシリンダヘッドに固定されている。支持パイプ108の内部には、その軸方向に摺動可能なように駆動軸20が挿入されている。支持パイプ108の外周面上には、駆動軸20の軸芯を中心として揺動可能で、かつ、その軸方向には移動しないように、入力アーム104および2つの揺動カム105が設けられている。
【0019】
入力アーム104は、支持パイプ108の外周面から離れる方向に突出するアーム部104aと、アーム部104aの先端に回転可能に接続されたローラ部104bとを有する。入力アーム104は、ローラ部104bがカム103に当接可能な位置に配置されるように設けられている。
【0020】
揺動カム105は、支持パイプ108の外周面から離れる方向に突出する略三角形状のノーズ部105aを有する。ノーズ部105aの一辺(図1中の下方側の辺)には、凹状に湾曲したカム面105bが形成されている。吸気バルブ101には、バルブスプリングが設けられている。その付勢力によって、カム面105bには、ロッカアーム106に回転可能に取り付けられたローラ106aが押し付けられる。
【0021】
入力アーム104および揺動カム105は、一体となって駆動軸20の軸芯を中心として揺動する。このため、カムシャフト102が回転すると、カム103に当接された入力アーム104が揺動し、この入力アーム104の動きに連動して揺動カム105も揺動する。この揺動カム105の動きが、ロッカアーム106を介して吸気バルブ101に伝わり、これによって吸気バルブ101が開閉駆動される。
【0022】
バルブリフト可変機構100は、さらに、支持パイプ108の軸芯周りにおいて、入力アーム104と揺動カム105との相対位相差を変更する機構を備えており、この機構によって、吸気バルブ101のバルブリフト量を適宜変更する。つまり、両者の相対位相差を拡大すれば、入力アーム104および揺動カム105の揺動角に対するロッカアーム106の揺動角が拡大され、吸気バルブ101のバルブリフト量が増大される。また、両者の相対位相差を縮小すれば、入力アーム104および揺動カム105の揺動角に対するロッカアーム106の揺動角が縮小され、吸気バルブ101のバルブリフト量が低減される。
【0023】
次に、上記の相対位相差を変更する機構について、より詳細な説明を行なう。図2に示されるように、入力アーム104および2つの揺動カム105と、支持パイプ108の外周面との間に規定された空間には、支持パイプ108に対して、回転可能で、かつ軸方向に摺動可能に支持されたスライダギア107が収容されている。
【0024】
スライダギア107には、その軸方向の中央部に位置して、右ねじ螺旋状のヘリカルスプラインが形成されたヘリカルギア107bが設けられている。また、スライダギア107には、ヘリカルギア107bの両側に位置して、ヘリカルギア107bとは逆に左ねじ螺旋状のヘリカルスプラインが形成されたヘリカルギア107cがそれぞれ設けられている。
【0025】
一方、スライダギア107を収容する空間を規定する入力アーム104および2つの揺動カム105の表面には、ヘリカルギア107bおよび107cに対応したヘリカルスプラインがそれぞれ形成されている。つまり、入力アーム104には、右ねじ螺旋状のヘリカルスプラインが形成されており、そのヘリカルスプラインがヘリカルギア107bに噛み合っている。また、揺動カム105には、左ねじ螺旋状のヘリカルスプラインが形成されており、そのヘリカルスプラインがヘリカルギア107cに噛み合っている。
【0026】
スライダギア107には、一方のヘリカルギア107cとヘリカルギア107bとの間に位置して、周方向に延びる長穴107aが形成されている。また、支持パイプ108には、長穴107aの一部と重なるように、軸方向に延びる長穴108aが形成されている。支持パイプ108の内部に挿通された駆動軸20には、これら2つの長穴107aおよび108aの重なった部分を通じて突出する係止ピン20aが一体に設けられている。
【0027】
駆動軸20がその軸方向に移動すると、スライダギア107が係止ピン20aにより押されるため、ヘリカルギア107bおよび107cが同時に駆動軸20の軸方向に移動する。このようなヘリカルギア107bおよび107cの移動に対して、これらにスプライン係合された入力アーム104および揺動カム105は、軸方向に移動しないため、ヘリカルスプラインの噛み合いを通じて駆動軸20の軸芯周りに回動する。このとき、入力アーム104と揺動カム105とでは、形成されたヘリカルスプラインの向きが逆であるため、回動方向が互いに逆方向となる。これにより、入力アーム104と揺動カム105との相対位相差が変化し、既に説明したように吸気バルブ101のバルブリフト量が変更される。
【0028】
図3は、この発明の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図である。図3を参照して、アクチュエータ10は、空間83を規定するハウジング81と、空間83に配置され、回転運動を直線運動に変換する回転−直動変換機構12と、回転−直動変換機構12に対して回転運動を入力するモータ71とを備える。ハウジング81には、空間83が開口する開口部80mおよび80nが形成されている。ハウジング81には、開口部80nを塞ぐカバー88が設けられている。
【0029】
回転−直動変換機構12の主要部は、外周面31aを有し、軸201上に延びるサンシャフト31と、外周面31a上で軸201と平行に延び、軸201を中心とした周方向に並んで配設された複数のプラネタリシャフト41と、複数のプラネタリシャフト41を取り囲むように設けられ、軸201を中心に筒状に延びるナット51とから構成されている。サンシャフト31は、軸201上で駆動軸20と並ぶように配置されている。
【0030】
開口部80mおよび80nは、それぞれ、軸201が延びる方向(以下、単に軸201方向とも呼ぶ)に沿ったハウジング81の両端で開口している。開口部80mの開口面積は、開口部80nの開口面積よりも小さい。回転−直動変換機構12およびモータ71は、開口部80nから空間83に搬入される。
【0031】
サンシャフト31は、空間83から開口部80mを通じてハウジング81の外側に突出するように設けられている。サンシャフト31は、ハウジング81の外側に位置決めされた一方端31mと、カバー88によって開口部80nが塞がれた状態で空間83に収容される他方端31nとを有する。一方端31mは、図示しないカップリング機構等により駆動軸20と接続されている。
【0032】
サンシャフト31は、外周面31aにスプラインが形成されたスプライン部32と、外周面31aに雄ねじが形成されたねじ部33とを有する。スプライン部32は、相対的に一方端31mに近い位置に形成されており、ねじ部33は、相対的に他方端31nに近く、空間83に収容される位置に形成されている。軸201方向に沿ったねじ部33の両側には、外周面31aから鍔状に突出するストッパ36および37がそれぞれ設けられている。
【0033】
ナット51は、ハウジング81に固定されたベアリング65によって、軸201を中心に回転自在に支持されている。ナット51は、外周面31aと隙間を設けて向い合う内周面51bと、内周面51bの裏側に面する外周面51aと、軸201方向の両端で延在する一対の端面51cとを有する。内周面51bには、ねじ部33に形成された雄ねじとは逆向きの雌ねじが形成されている。端面51cは、ストッパ36および37と軸201方向に距離を隔てて対向している。
【0034】
ナット51には、雌ねじが形成された内周面51bの両側に位置して、リングギヤ61が固定されている。リングギヤ61の内周面61bには、軸201を中心とした周方向に歯が並ぶ平歯ギヤが形成されている。
【0035】
ナット51の外周面51aには、焼嵌め、圧入または接着剤等の手段を用いて、ロータ72が固定されている。ハウジング81には、コイル75が巻回されたステータ73が同様の手段により固定されている。ステータ73は、ロータ72の周りを取り囲むように、軸201を中心に環状に延びて形成されている。ロータ72は、軸201を中心とした周方向に沿って、ステータ73との間に所定の大きさの隙間を設けるように位置決めされている。ロータ72のステータ73に向い合う位置には、軸201を中心として所定の角度ごとに並ぶ永久磁石74が配設されている。
【0036】
モータ71は、ロータ72とステータ73とから構成されている。コイル75に通電することにより、ロータ72とステータ73との間に磁界が発生し、ナット51がロータ72とともに軸201を中心に回転する。
【0037】
図4は、図3中のIV−IV線上に沿った回転−直動変換機構の断面図である。図3および図4を参照して、プラネタリシャフト41は、ねじ部43と、ねじ部43の両側にそれぞれ形成されたギヤ部44pおよび44qとを有する。
【0038】
ねじ部43には、サンシャフト31のねじ部33に形成された雄ねじと、ナット51の内周面51bに形成された雌ねじとに螺合する雄ねじが形成されている。ねじ部43に形成される雄ねじは、ねじ部33に形成された雄ねじとは逆向きであり、内周面51bに形成された雌ねじとは同じ向きである。ギヤ部44pおよび44qには、リングギヤ61の内周面61bに形成された平歯ギヤと噛み合う平歯ギヤが形成されている。
【0039】
サンシャフト31のねじ部33に形成された雄ねじ、プラネタリシャフト41のねじ部43に形成された雄ねじおよびナット51の内周面51bに形成された雌ねじは、いずれも同一のピッチを有する多条ねじである。サンシャフト31の雄ねじ、プラネタリシャフト41の雄ねじおよびナット51の雌ねじのピッチ円直径を、それぞれ、Ds、DpおよびDnとし、各ねじの条数を、それぞれ、Ns、NpおよびNnとする。本実施の形態では、サンシャフト31を軸201方向にストロークさせるため、たとえば、Ns:Np:Nn=(Ds+1):Dp:Dnの関係を満たすように各ねじの条数が決定されている。なお、各ねじのピッチ円直径と条数とは、これ以外の関係も採り得る。
【0040】
軸201方向に沿ったプラネタリシャフト41の両側には、軸201を中心に環状に延びるリテーナ48および49がそれぞれ配設されている。プラネタリシャフト41の両端は、リテーナ48および49によって回転自在に支持されている。リテーナ48とリテーナ49とは、軸201を中心とした周方向に所定の間隔ごとに設けられ、プラネタリシャフト41と平行に延びる支柱46によって互いに結合されている。
【0041】
ハウジング81の開口部80mに隣接する位置には、周り止め設置部82が形成されている。周り止め設置部82は、サンシャフト31のスプライン部32を取り囲む位置に設けられている。周り止め設置部82には、たとえば圧入により、周り止めスプライン91が固定されている。周り止めスプライン91は、スプラインが形成された内周面91bを有する。周り止めスプライン91およびスプライン部32に形成されたスプラインが互いに係合することにより、軸201を中心とするサンシャフト31の回転運動が規制されている。
【0042】
周り止めスプライン91は、回転−直動変換機構12およびモータ71が空間83に収容された状態で、ハウジング81の外側から取り付け可能な位置に設けられている。本実施の形態では、周り止めスプライン91は、回転−直動変換機構12およびモータ71が搬入される開口部80nとは異なる開口部80mを通じて取り付け可能なように設けられている。空間83は、ハウジング81の内壁と、カバー88と、周り止めスプライン91とによって区画されている。軸201方向に直交する平面でハウジング81を切断した場合の空間83の面積は、周り止め設置部82に対して開口部80mの反対側で最も小さくなる。軸201方向に直交する平面でハウジング81を切断した場合の空間83の面積は、ナット51およびモータ71と周り止め設置部82との間で最も小さくなる。
【0043】
以上に説明したアクチュエータ10の構成により、ナット51が回転すると、その回転運動は、ナット51およびプラネタリシャフト41に形成されたねじの噛み合いにより、プラネタリシャフト41に伝わる。プラネタリシャフト41は、軸201方向に静止したまま、リテーナ48および49による支持と、リングギヤ61による案内とによって、自転しながら軸201を中心に公転する。
【0044】
プラネタリシャフト41の回転運動は、プラネタリシャフト41およびサンシャフト31にそれぞれ形成されたねじの噛み合いにより、サンシャフト31に伝わる。サンシャフト31は、周り止めスプライン91およびスプライン部32に形成されたスプラインの係合によってナット51と供回りすることなく、軸201方向に直動する。
【0045】
本実施の形態では、モータ71や回転−直動変換機構12に設けられたセンサ等に異常が発生した場合に、アクチュエータ10側の異常動作を内燃機関に伝達させないため、ストッパ36および37が設けられている。たとえば、モータ71の制御が不能となり、ナット51が回転し続けた場合、サンシャフト31も軸201方向にストロークし続ける。このとき、ストッパ36および37がナット51の端面51cに当接することにより、サンシャフト31を強制的に停止させることができる。これにより、図1および図2中のバルブリフト可変機構100や内燃機関本体が故障することを防止できる。
【0046】
続いて、図3中のアクチュエータの組み立て方法について説明を行なう。図5は、図3中のアクチュエータの組み立て工程の流れを示す図である。図6は、図5中に示す組み立て工程のうち、回転−直動変換機構の組み付け工程を説明するための断面図である。図7は、図5中に示す組み立て工程のうち、モータ検査工程を説明するための断面図である。
【0047】
図5および図6を参照して、まず、回転−直動変換機構12を組み立て、ナット51にロータ72を固定する。ベアリング65、ロータ72と回転−直動変換機構12とからなるサブアセンブリ、ステータ73を順次、開口部80nから空間83に搬入し、ハウジング81に組み付ける。なお、周り止めスプライン91は、後の工程で取り付けられる。
【0048】
図5および図7を参照して、次に、図6に示す工程で作製されたアクチュエータ10のアセンブリをモータ検査台94に設置する。サンシャフト31の一方端31mをダイナモ95に接続する。固定治具96により、サンシャフト31の他方端31nとナット51とを固定し、両者を一体化する。ステータ73を駆動電源93に接続する。
【0049】
駆動電源93からステータ73のコイル75に通電し、ナット51を回転させる。このとき、サンシャフト31のスプライン部32には、周り止めスプライン91が接続されていないため、サンシャフト31とナット51との間に介在する摩擦力により、サンシャフト31はナット51とともに軸201を中心に回転する。さらに、本実施の形態では、固定治具96によりサンシャフト31とナット51とが一体化されているため、サンシャフト31とナット51とが相対的に回転することを確実に防止できる。
【0050】
サンシャフト31の回転数およびトルクをダイナモ95で検出し、モータ71の回転数−トルク特性を測定する。また別に、ダイナモ95によってサンシャフト31をナット51とともに回転させる。ステータ73で発生する誘起電圧からモータ71の特性を判定する。なお、これらの検査は、いずれか一方のみが実施されても良い。
【0051】
このモータ71の検査時、回転止めスプライン91が設けられていると、サンシャフト31がストロークし、そのストロークの幅がストッパ36および37によって規制される。このため、モータ71を十分な回転数だけ回転させることができず、モータ71の検査が困難となる。一例として、サンシャフト31、プラネタリシャフト41およびナット51に形成されたねじのピッチが0.5mm/revであり、サンシャフト31の必要なストローク幅が7mmであるとすると、ストッパ36および37による規制により、モータ71を14回転より若干大きい回転数しか回転させることができない。
【0052】
これに対して、本実施の形態では、モータ71の検査時に回転止めスプライン91が設けられていないため、ナット51とサンシャフト31とを供回りさせることができる。これにより、回転−直動変換機構12の構造上の理由からモータ71の検査が困難になるという事態を回避することができる。
【0053】
また、アクチュエータ10で発揮されるモータ71の特性は、回転−直動変換機構12を構成する各部品の部品精度や、ステータ73またはロータ72の組み付け精度といった要因の影響を受ける。たとえば、ステータ73とロータ72とが同軸ずれを起こしている場合には、モータ71の特性は低下する。このため、ステータ73単体、ロータ72単体で実施されたモータ検査では、アクチュエータ10で発揮されるモータ特性が正確に確認されない。
【0054】
これに対して本実施の形態では、モータ71および回転−直動変換機構12をハウジング81に組み付けたアセンブリの形態で、モータ71の検査を実施するため、アクチュエータ10で発揮されるモータ特性を正確に測定することができる。
【0055】
一方、回転止めスプライン91がハウジング81の外側から取り付け不能な位置に設けられている場合には、検査後、アクチュエータ10のアセンブリを分解してから、回転止めスプライン91をサンシャフト31に設ける必要が生じる。この場合、検査時のアセンブリに対して再び組み立てられたアセンブリの再現性が不確かであるため、モータ71に実施された検査の信頼性が損なわれる。また、作業工程が多くなるため、アクチュエータ10の製造コストが増大する。
【0056】
検査終了後、アクチュエータ10のアセンブリをモータ検査台94から取り外す。固定治具96をナット51およびサンシャフト31から取り外す。
【0057】
図3および図5を参照して、次に、開口部80nを塞ぐようにカバー88をハウジング81に取り付ける。周り止め設置部82に、周り止めスプライン91を圧入する。最後に、アクチュエータ10の機能検査を実施する。具体的には、モータ71に通電してサンシャフト31を直動させ、サンシャフト31の推力を測定する。
【0058】
この発明の実施の形態におけるアクチュエータ10は、回転−直動変換機構12と、モータ71と、ケース体としてのハウジング81と、周り止め部としての周り止めスプライン91とを備える。回転−直動変換機構12は、回転子としてのナット51と軸部材としてのサンシャフト31とを有し、ナット51に入力された回転運動を直線運動に変換してサンシャフト31から出力する。モータ71は、ナット51を回転運動させる。ハウジング81は、回転−直動変換機構12およびモータ71を収容する内部空間としての空間83を規定し、空間83からはサンシャフト31が突出する。周り止めスプライン91は、サンシャフト31に設けられ、サンシャフト31の回転運動を規制する。回転−直動変換機構12には、サンシャフト31の直線運動を所定の範囲内に規制するストッパ機構としてのストッパ36および37が設けられている。周り止めスプライン91は、空間83に回転−直動変換機構12およびモータ71が収容された状態で、ハウジング81の外側から組み付けられる。
【0059】
このように構成された、この発明の実施の形態におけるアクチュエータ10によれば、周り止めスプライン91が、空間83にモータ71および回転−直動変換機構12が収容された状態でハウジング81の外側から組み付け可能な位置に設けられている。このため、周り止めスプライン91を設けることなく、アクチュエータ10のアセンブリの状態でモータ71の検査を行ない、検査後に周り止めスプライン91をサンシャフト31に組み付けることができる。これにより、モータ71の検査を容易かつ正確に行なうことができる。
【0060】
なお、本発明は、内燃機関のバルブリフト可変機構に適用されるものに限定されず、直線駆動が必要となる各種機構に適用される。また、本実施の形態では、回転運動を直線運動に変換する機構として遊星差動ねじ型の回転−直動変換機構12を用いたが、これに限定されず、たとえばボールねじや、台形送りねじに代表される送りねじを用いても良い。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施の形態におけるアクチュエータが用いられたバルブリフト可変機構を示す正面図である。
【図2】図1中のバルブリフト可変機構を部分的に示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図である。
【図4】図3中のIV−IV線上に沿った回転−直動変換機構の断面図である。
【図5】図3中のアクチュエータの組み立て工程の流れを示す図である。
【図6】図5中に示す組み立て工程のうち、回転−直動変換機構の組み付け工程を説明するための断面図である。
【図7】図5中に示す組み立て工程のうち、モータ検査工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 アクチュエータ、12 回転−直動変換機構、31 サンシャフト、31m 一方端、36,37 ストッパ、51 ナット、71 モータ、80m,80n 開口部、81 ハウジング、83 空間、88 カバー、91 周り止めスプライン、95 ダイナモ、96 固定治具。




 

 


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