米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 機械工学 -> トヨタ自動車株式会社

発明の名称 浮動型キャリパ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−64239(P2007−64239A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−247072(P2005−247072)
出願日 平成17年8月29日(2005.8.29)
代理人 【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
発明者 薮崎 直樹
要約 課題
爪部によって押圧される摩擦材の押圧状態のコントロールを容易に実現できる浮動型キャリパを提供する。

解決手段
浮動型キャリパ10は、第1パッド裏金22aで支持された第1ブレーキパッド16aと第2パッド裏金22bで支持された第2ブレーキパッド16bを含む。また、第1パッド裏金22aを押圧するピストン20とピストン20で駆動するハウジング部18に形成され、第2パッド裏金22bを押圧する爪部28を有する。爪部28は、強剛性領域28aを爪元側に有し、弱剛性領域28bを爪先側に有している。爪部28におて強剛性領域28aと弱剛性領域28bの位置を調整することにより、第2パッド裏金22bを押圧するときの押圧による変位(変形)分布をコントロールすることができる。
特許請求の範囲
【請求項1】
車輪とともに回転するディスクロータの両側の摩擦摺動面に対向してそれぞれ配置される第1摩擦材と第2摩擦材と、
前記第1摩擦材および第2摩擦材の前記ディスクロータに対向しない面をそれぞれ支持する第1パッド裏金と第2パッド裏金と、
前記ディスクロータの回転軸と実質的に平行な方向に前記第1パッド裏金を押圧して、前記第1パッド裏金が支持する第1摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段と、
前記押圧手段によって移動可能であり、前記ディスクロータを跨ぐハウジング部の先端側に形成され、前記第2パッド裏金を押圧して、前記第2パッド裏金が支持する第2摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる爪部と、
を含み、
前記爪部は、押圧する前記第2パッド裏金の曲げ剛性より剛性の強い強剛性領域を爪元側に有し、押圧する前記第2パッド裏金の曲げ剛性より剛性の弱い弱剛性領域を爪先側に有することを特徴とする浮動型キャリパ。
【請求項2】
前記爪部の押圧方向の厚みは、前記爪元側から所定位置まで第1厚み漸減率で漸減し、前記所定位置から前記爪部の先端まで前記第1厚み漸減率より小さい第2厚み漸減率で漸減することを特徴とする請求項1記載の浮動型キャリパ。
【請求項3】
前記爪部の幅は、前記爪元側から所定位置まで第1幅漸減率で漸減し、前記所定位置から前記爪部の先端まで前記第1幅漸減率より小さい第2幅漸減率で漸減することを特徴とする請求項1または請求項2記載の浮動型キャリパ。
【請求項4】
前記所定位置は、前記爪部の最大押圧力と前記押圧手段の押圧中心をもとに定められることを特徴とする請求項2または請求項3記載の浮動型キャリパ。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮動型キャリパに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制動を行う制動装置の一つとして、ディスクブレーキがある。このディスクブレーキは、車輪と共に回転するディスクロータとキャリパとで構成される。キャリパは、外形を形成すると共にシリンダとして機能するハウジング部を有して構成されている。そして、このハウジング部にはピストンが内包されていると共に、ディスクロータを挟んで配置される第1摩擦材および第2摩擦材、この第1摩擦材、第2摩擦材をそれぞれ支持する第1パッド裏金、第2パッド裏金が含まれている。そして、ハウジング部とピストンの間に油圧を導入することにより第1,第2摩擦材をディスクロータに対して押圧し、第1、第2摩擦材でディスクロータを把持して制動力を確保している。
【0003】
第1、第2摩擦材は、例えば扇形形状とされ、第1,第2パッド裏金は、この摩擦材を支持するように例えばほぼ同形状または矩形形状となっている。浮動型キャリパの場合、ディスクロータの一面側にピストンが配置され、ピストン自体が第1パッド裏金を押圧し第1摩擦材をディスクロータに押しつける。また、ピストンが油圧を受けると、ハウジング部がピストンからの反力を受けてディスクロータから離反する方向に移動する。ハウジング部は、ピストンを内包する側から延びるブリッジ部を有し、このブリッジ部がディスクロータを跨ぎ、その先端側に爪部を有している。この爪部は、ピストンが押圧するディスクロータ面の逆側に回り込み、第2パッド裏金を押圧し第2摩擦材をディスクロータに押しつけるように構成されている。したがって、浮動型キャリパは、一組のピストンとハウジング部により、ディスクロータを挟む一対の第1、第2摩擦材をディスクロータの両面に押圧して制動力を得ることができる構造になっている。
【0004】
ところで、ピストンに圧をかけた場合、ピストンが第1パッド裏金に当たり、爪部が第2パッド裏金に当たることになるが、ハウジング部の実質的な浮動状態は保たれる。そのため、ハウジング部の姿勢は、第1、第2摩擦材がディスクロータから受ける反力によって変化する。ハウジング部の姿勢が変化する状態において、例えば、第2パッド裏金に対して爪部の曲げ剛性が十分に高く爪部に変形が生じない場合、ハウジング部は、爪部側よりもピストン側の方が浮き上がって傾いた状態となりやすい。つまり、爪部の全体が第2パッド裏金の曲げ剛性よりも高い剛性を有する場合、ピストンの動作時に、ハウジング部の姿勢の変化により爪先側が爪元側よりも第2パッド裏金に近い位置で第2パッド裏金を押圧するため、爪先側の押圧力が最も大きくなる。その結果、爪先側が強く第2パッド裏金を押圧し、爪元側が爪先側より弱い押圧状態となる。このように、爪部による押圧力が不均一になると、第2パッド裏金が支持する摩擦材の偏摩耗が生じ易くなる。また、摩擦材の偏摩耗は、制動時の異音、いわゆる「ブレーキ鳴き」や振動の原因にもなる。
【0005】
従来、このようなディスクブレーキの偏摩耗を低減するための対策が種々行われている。例えば、特許文献1には、ディスクロータの回転方向の入口側の爪部および出口側の爪部の肉厚をディスクロータの周方向に対して互いにほぼ等しい寸法にすることにより偏摩耗を抑制する構成が開示されている。また、特許文献2には、浮動型キャリパのアウター爪を短くすることにより制動時に摩擦材に作用するモーメントの方向を常時一定にして、摩擦材の拘束を安定化し、ブレーキ鳴きを低減する構成が開示されている。
【特許文献1】特開平11−108087号公報
【特許文献2】特開2002−147504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、浮動型キャリパにおいては、摩擦材の偏摩耗の抑制やブレーキ鳴き、振動の抑制のための対策が種々試みられている。そして、今後も摩擦材の偏摩耗やブレーキ鳴き、振動など抑制するため新たなアプローチによる浮動型キャリパの改良が要望されている。例えば、爪部によって押圧される摩擦材の押圧状態のコントロールができるような構成の提案が望まれている。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、爪部によって押圧される摩擦材の押圧状態のコントロールを容易に実現できる浮動型キャリパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の浮動型キャリパは、車輪とともに回転するディスクロータの両側の摩擦摺動面に対向してそれぞれ配置される第1摩擦材と第2摩擦材と、前記第1摩擦材および第2摩擦材の前記ディスクロータに対向しない面をそれぞれ支持する第1パッド裏金と第2パッド裏金と、前記ディスクロータの回転軸と実質的に平行な方向に前記第1パッド裏金を押圧して、前記第1パッド裏金が支持する第1摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段と、前記押圧手段によって移動可能であり、前記ディスクロータを跨ぐハウジング部の先端側に形成され、前記第2パッド裏金を押圧して、前記第2パッド裏金が支持する第2摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる爪部と、を含み、前記爪部は、押圧する前記第2パッド裏金の曲げ剛性より剛性の強い強剛性領域を爪元側に有し、押圧する前記第2パッド裏金の曲げ剛性より剛性の弱い弱剛性領域を爪先側に有することを特徴とする。
【0009】
押圧手段の動作時、爪部の全体が第2パッド裏金の曲げ剛性よりも高い剛性を有する場合には、爪先側の押圧力が最も大きくなるが、本態様の浮動型キャリパによると、爪先側の曲げ剛性を、第2パッド裏金の曲げ剛性よりも小さくすることで、爪先側の押圧力を弱めることができる。これにより、第2パッド裏金に対する押圧力が最も大きくなる位置を、爪先ではなく爪先と爪元の間の位置に設定することが可能となる。そして、爪部の強剛性領域と弱剛性領域の形成位置を適切に設計することにより、第2パッド裏金に対する押圧力が最も大きくなる位置を意図的に設定することが可能となる。例えば、第2パッド裏金の押圧力が第2パッド裏金の内周側縁部分および外周側縁部分より中央部分で大きくなるようにすることができる。このように、爪先側に弱剛性領域を形成することで、浮動型キャリパにおいて、ディスクロータに対する第2摩擦材の押圧力のバランスコントロールが可能となる。
【0010】
また、上記態様において、前記爪部の押圧方向の厚みは、前記爪元側から所定位置まで第1厚み漸減率で漸減し、前記所定位置から前記爪部の先端まで前記第1厚み漸減率より小さい第2厚み漸減率で漸減するようにしてもよい。この態様によれば、爪部において第2パッド裏金に対する押圧力が最も大きくなる位置を、厚みの漸減率が変化する境界点ないしは境界点付近に設定できる。その結果、ディスクロータに対する第2摩擦材の押圧バランスのコントロールが可能になり、第2摩擦材の偏摩耗を抑制できる。
【0011】
また、上記態様において、前記爪部の幅は、前記爪元側から所定位置まで第1幅漸減率で漸減し、前記所定位置から前記爪部の先端まで前記第1幅漸減率より小さい第2幅漸減率で漸減するようにしてもよい。この態様によれば、爪部において第2パッド裏金に対する押圧力が最も大きくなる位置を、幅の漸減率が変化する境界点ないしは境界点付近に設定できる。その結果、ディスクロータに対する第2摩擦材の押圧バランスのコントロールが可能になり、第2摩擦材の偏摩耗を抑制できる。さらに例えば爪部の厚みと幅の両方で強剛性領域と弱剛性領域の剛性調整も可能になり、爪部の形状設計の自由度が向上できる。
【0012】
また、上記態様において、前記所定位置は、前記爪部の最大押圧力と前記押圧手段の押圧中心をもとに定められるようにしてもよい。この態様によれば、押圧手段の押圧中心の近傍を最大押圧領域にできる。つまり、第2パッド裏金を、ディスクロータに対して平行を保ちながら接触させることができる。その結果、第2摩擦材の偏摩耗が抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浮動型キャリパによれば、第2パッド裏金に対する押圧力が最も大きくなる位置を、意図的に設定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態の浮動型キャリパは、車輪とともに回転するディスクロータの両側の摩擦摺動面に対向してそれぞれ配置される第1摩擦材と第2摩擦材を含んでいる。また、この第1摩擦材のディスクロータに対向しない面が第1パッド裏金によって支持され、第2摩擦材のディスクロータに対向しない面が第2パッド裏金によって支持されている。また、ディスクロータの回転軸と実質的に平行な方向に第1パッド裏金を押圧して、第1パッド裏金が支持する第1摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段を含んでいる。この押圧手段は動作時にディスクロータを跨ぐハウジング部を移動可能である。ディスクロータを跨いだハウジング部の先端側には、第2パッド裏金を押圧して、第2パッド裏金が支持する第2摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる爪部が形成されている。そして爪部は、押圧する第2パッド裏金の曲げ剛性より剛性の強い強剛性領域を爪元側に有し、押圧する第2パッド裏金の曲げ剛性より剛性の弱い弱剛性領域を爪先側に有している。強剛性領域と弱剛性領域の爪部における位置を調整することにより、第2パッド裏金を押圧するときの押圧による変位(変形)分布、つまり押圧力分布を変化させることができる。例えば、第2パッド裏金の押圧力が第2パッド裏金の周縁部分より中央部分で大きくなるようにすることが可能になる。すなわち、意図的に第2摩擦材の中央部分を最大押圧部として、第2摩擦材をディスクロータに均等に接触させることができる。浮動型キャリパをこのような構造にすることにより、浮動型キャリパにおいて、ディスクロータに対する第2摩擦材の押圧による変位(変形)分布、つまり押圧力分布のコントロールができる。また、押圧力分布をコントロールすることにより、第2摩擦材の偏摩耗を抑制できる。
【0016】
図1は、本実施形態の浮動型キャリパ10の断面図である。図1は、図示しない車輪と共に回転するディスクロータ12と直交する面の断面図である。本実施形態の浮動型キャリパ10は、大別してマウンティング部14と、摩擦材であるブレーキパッド16、浮動型キャリパ10の外形を形成するハウジング部18および押圧手段として機能するピストン20とで構成されている。ブレーキパッド16は、ディスクロータ12の側面12aである摩擦摺動面に押圧されることによって制動力を発生する。また、ブレーキパッド16はディスクロータ12と接触しない側の面がパッド裏金22によって支持されている。図1の場合、ブレーキパッド16はディスクロータ12を挟んで、第1ブレーキパッド16aと第2ブレーキパッド16bとして配置されている。そして、第1ブレーキパッド16aは、第1パッド裏金22aによって支持され、第2ブレーキパッド16bは、第2パッド裏金22bによって支持されている。
【0017】
浮動型キャリパ10は、図1において左右方向に変位可能にマウンティング部14を介して車体側に取り付けられている。浮動型キャリパ10のハウジング部18には、図1に示すように、有底の穴24が穿設されており、この穴24には、ピストン20が摺動可能に嵌挿されている。穴24の底にはポート26が設けられ、図示しないマスターシリンダなどの油圧供給源が接続されている。つまり、運転者がブレーキペダルを操作することによりブレーキ油がポート26内に流入し、ピストン20を駆動するようになっている。
【0018】
ブレーキ油がポート26内に流入すると、ピストン20が図1に示す非動作状態から図中左方向に摺動し、第1パッド裏金22aを介して第1ブレーキパッド16aをディスクロータ12の右の側面12aに押圧する。第1ブレーキパッド16aがディスクロータ12に押圧されると、ピストン20は摺動を停止する。ピストン20が摺動を停止した後も、ブレーキ油がポート26内に流入すれば穴24内の油圧が上昇する。その結果、停止したピストン20が逆に穴24の内面を押圧し、ハウジング部18を図1中右方向に押圧する。ハウジング部18は図中左右方向に変位可能とされているので、油圧の上昇に伴って、ハウジング部18が図中右方向に変位することになる。
【0019】
ハウジング部18は、ディスクロータ12を跨ぐように延設されたブリッジ部18aを含み、その先端部に爪部28を有している。そして、ハウジング部18の右方向への変位に伴って、爪部28が第2パッド裏金22bを介して左側の第2ブレーキパッド16bをディスクロータ12の左の側面12aに押圧する。したがって、ディスクロータ12を一対の第1ブレーキパッド16a、第2ブレーキパッド16bにより押圧挟持する状態となり、ディスクロータ12を効率的に制動させることが可能となる。
【0020】
前述のように一対のブレーキパッド16は、パッド裏金22によって支持されている。このパッド裏金22が図1に示すように、マウンティング部14の一部を構成するトルクプレート30に当接可能になっている。回転するディスクロータ12にブレーキパッド16を接触させると、当該ブレーキパッド16はディスクロータ12に引き摺られる状態になりディスクロータ12に関して接線方向の接線力、つまり制動トルクを受けることになる。この接線力をパッド裏金22を介してトルクプレート30で受け止めることになる。言い換えれば、トルクプレート30はパッド裏金22の押圧時にディスクロータ12の回転方向に対してブレーキパッド16出口側のパッド裏金22の端面部と接触して接線力を受け止めることになる。なお、図1においては、トルクプレート30はパッド裏金22に対し紙面奥側のみしか示していないが、対向する位置(紙面手前側)にも存在する。
【0021】
ところで、浮動型キャリパ10の場合、第2パッド裏金22bは、ブリッジ部18aで片持ち支持された爪部28によって押圧され、第2ブレーキパッド16bをディスクロータ12に押しつけている。その結果、ピストン20に油圧をかけた場合、ピストン20が第1パッド裏金22aに当たり、爪部28が第2パッド裏金22bに当たることになるが、ハウジング部18の実質的な浮動状態は保たれる。そのため、ハウジング部18の姿勢は、第1ブレーキパッド16a、第2ブレーキパッド16bがディスクロータ12から受ける反力によって変化することになる。このようにハウジング部18の姿勢が変化するような浮動型キャリパ10の場合、第2パッド裏金22bに対する爪部28の曲げ剛性によって、爪部28および第2パッド裏金22bでの押圧による変位(変形)分布が変化する。図2は従来から採用されている爪部28全体の剛性が大きい場合を示すものであり、爪部28、第2パッド裏金22bおよび第2ブレーキパッド16bに対する押圧による変位(変形)分布(押圧力分布と同等)を模式的に説明した説明図である。なお、図2、および後述する図3、図4は、爪部28、第2パッド裏金22b、第2ブレーキパッド16b周辺の変形量を等高線で示したものである。また、ハッチングは実際の変形量を示すものではなく、変形の分布のみを示すものである。
【0022】
例えば、図2は、爪部28の押圧方向の厚みが十分に厚く、第2パッド裏金22bに対して爪部28の曲げ剛性が十分に高く爪部28が変形しない場合を示している。制動時にはハウジング部18の駆動により爪部28を第2パッド裏金22b側に引き寄せ、第2パッド裏金22bを押圧する。前述のように、ハウジング部18は浮動状態であるため、ハウジング部18の姿勢は、第1ブレーキパッド16a、第2ブレーキパッド16bがディスクロータ12から受ける反力によって変化する。ハウジング部18の姿勢が変化する状態において、第2パッド裏金22bに対して爪部28の曲げ剛性が十分に高く爪部に変形が生じない場合、ハウジング部18は、爪部28側よりもピストン20側の方が浮き上がって傾いた状態となりやすい。つまり、ピストン20の動作時に、ハウジング部18の姿勢の変化により爪先側が爪元側よりも第2パッド裏金22bに近い位置で第2パッド裏金22bを押圧するため、爪先側の押圧力が最も大きくなる。その結果、爪先側が強く第2パッド裏金22bを押圧し、爪元側が爪先側より弱い押圧状態となる。図2は変形が大きな等高線が第2ブレーキパッド16bの内周側(矢印A側)に偏っている状態を示している。このような状態で、第2ブレーキパッド16bとディスクロータ12とが接触すると、第2ブレーキパッド16bの内周側が多く削れる偏摩耗を生じる。また、偏摩耗は制動時のブレーキ鳴きや振動の発生原因になる。
【0023】
そこで、本実施形態においては、図1および図3に示すように、爪部28の爪元側に第2パッド裏金22bの曲げ剛性より剛性の強い強剛性領域28aを形成し、爪先側に第2パッド裏金22bの曲げ剛性より曲げ剛性の弱い弱剛性領域28bを形成し、爪先側の押圧力を弱めている。これにより、第2パッド裏金22bに対する押圧力が最も大きくなる位置を、爪先ではなく爪先と爪元の間の位置にすることが可能となる。
【0024】
図1、図3の場合、強剛性領域28aと弱剛性領域28bは、爪部28の押圧方向の厚みを調整することにより形成している。第2パッド裏金22bと爪部28は通常鉄などで形成され、材質自体の曲げ剛性が同等であるとする場合、爪部28の厚みを第2パッド裏金22bの厚みと同等か、それ以下にすることにより弱剛性領域28bを設定することができる。また、爪部28の厚みを第2パッド裏金22bの厚みより厚くすれば、強剛性領域28aを設定することができる。
【0025】
図2で示したように、爪部28全体の曲げ剛性が第2パッド裏金22bの剛性より大きい場合、先端側の押圧が強く、爪元側の押圧が低下する。しかしながら、爪部28の爪先側に弱剛性領域28bを形成した場合、弱剛性領域28bでは爪部28が変形されやすいため、その部分で押圧力を弱めることができる。図1、図3に示すように、爪部28の爪元側に強剛性領域28aを形成し、連続して弱剛性領域28bを爪先側に形成する場合、強剛性領域28aより爪先側に弱剛性領域28bによる弱い押圧領域が形成されるため、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの境界付近で最も押圧力が大きくなり、爪部28の爪元および爪先に向かうほど押圧力が低下するように押圧分布を設定することができる。つまり、爪部28の設計時に、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの切り替わる境界位置を適宜選択することにより、第2パッド裏金22bおよび第2ブレーキパッド16bに対して最も強く押圧するポイントを爪部28の形状により決めることができる。図3は、等高線が第2パッド裏金22bおよび第2ブレーキパッド16bの中央部(矢印B周辺)に集中している状態を示している。
【0026】
なお、図4に示すように、爪部28の押圧方向の厚み全体を薄くして第2パッド裏金22bに対して爪部28の曲げ剛性を低くし、爪部28全体を変形し易くした場合、相対的に押圧が強くなる位置が爪元側に偏る。つまり、制動時のハウジング部18の駆動により爪部28が第2パッド裏金22b側に引き寄せられ、第2パッド裏金22bを押圧しようとすると、片持ち支持の爪部28は第2パッド裏金22bに倣った形状となる。その結果、爪部28は爪先側が第2パッド裏金22bに接触してるだけの状態となり、爪元側が第2パッド裏金22bの外周側に当接し力が集中する姿勢となる。つまり、爪先側は実質的に浮き上がる姿勢となる。つまり、爪部28の爪元側が爪先側より強く第2パッド裏金22bを押圧する結果となる。図4は等高線が第2パッド裏金22bおよび第2ブレーキパッド16bの外周側(矢印C側)に偏っている状態を示している。このような状態で、第2ブレーキパッド16bとディスクロータ12とが接触すると、第2ブレーキパッド16bの外周側が多く削れる偏摩耗を生じる。また、偏摩耗は制動時のブレーキ鳴きや振動の発生原因になる。
【0027】
したがって、爪元側に強剛性領域を形成し、爪先側に弱剛性領域を形成し、強剛性領域と弱剛性領域の切り替わる境界位置を適切に設定することで、第2パッド裏金22bに対する押圧力が最も大きくなる位置を意図的に設定することが可能となる。
【0028】
本実施形態において、爪部28の押圧方向の厚みは、爪元側から所定位置まで第1厚み漸減率で漸減させて強剛性領域28aを形成し、さらに、所定位置から爪部28の先端まで第1厚み漸減率より小さい第2厚み漸減率で漸減させて弱剛性領域28bを形成している。強剛性領域28aにおいて、厚みを第1厚み漸減率で漸減することにより、強剛性領域28aの中においても押圧力調整が可能になる。すなわち、強剛性領域28aの先端側に向かい厚みを漸減することにより強剛性領域28aの先端側と爪元側の押圧力の差を少なくし、押圧力変化が爪元に向かって緩やかにつくようにしている。同様に、弱剛性領域28bにおいて、厚みを第2厚み漸減率で漸減することにより、弱剛性領域28bの中においても押圧力調整が可能になる。すなわち、弱剛性領域28bの先端側に向かい厚みを漸減することにより弱剛性領域28bの先端側と弱剛性領域28b元側の押圧力の差を少なくし、押圧力変化が緩やかにつくようにしている。このような漸減調整を行うことにより、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの切り替わり部分を中心に第2パッド裏金22bの周縁部に向かい押圧力が緩やかに低減するように押圧による変位(変形)分布、つまり押圧力分布をコントロールし押圧バランスの改善が可能になる。なお、第2厚み漸減率を第1厚み漸減率より小さくしているのは、もともと弱剛性領域28bにより低下している押圧力を必要以上に低下させないためである。
【0029】
なお、爪部28の厚み形状を漸減させず、強剛性領域28aを均一厚さの厚片部、弱剛性領域28bを均一厚さの薄片部とした場合、大きな剛性をもつ強剛性領域に接続された弱剛性領域の境界部分は、強剛性領域の影響を受けて変形し難い状態となる。その結果、最大となる押圧の位置が爪先側にシフトしてしまうと共に、そのシフト量もハウジング部18の駆動量に応じて変化してしまう。その結果、最大となる押圧位置を安定的に強剛性領域と弱剛性領域の境界の近傍にすることができなくなる。本実施形態のように爪部28の厚み形状を漸減させることにより、弱剛性領域の境界付近を変形し易い状態としている。そして、最大となる押圧位置を強剛性領域と弱剛性領域の境界の近傍にするようにしている。また、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの漸減率を同じにした場合も、弱剛性領域28bとなる部分が強剛性領域28aの剛性の影響を受けて弱剛性領域28bの特性が現れ難くなる。この場合、爪部28全体の剛性が大きい場合と類似する押圧力分布になる。つまり、爪先側の押圧力が大きくなってしまい押圧力分布として好ましくない。
【0030】
このように構成される爪部28において、図1、図3に示すように、例えば、爪部28の弱剛性領域28bをピストン20の押圧中心Oを基点に爪先側に向かって形成することができる。言い換えれば、ピストン20の押圧中心Oを基点に爪元側に強剛性領域28aを形成することができる。この場合、第2パッド裏金22bの中央を強い押圧力で押圧できる。その結果、第2パッド裏金22bをほぼ水平に押圧することができる。つまり、第2ブレーキパッド16bがディスクロータ12に対しほぼ均一の押圧力で押圧可能となり、第2ブレーキパッド16bの偏摩耗の抑制ができる。また、偏摩耗の抑制により、制動時のブレーキ鳴きや振動の低減にも寄与できる。
【0031】
なお、第2パッド裏金22bの中央を押圧しても、浮動型キャリパ10を搭載する車両の特性によって、第2パッド裏金22bに偏摩耗が生じる場合がある。このような場合、偏摩耗の傾向を解析し、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの境界位置を適宜選択することにより、意図的に爪部28による押圧バランスを変更し、偏摩耗の抑制を行うことができる。
【0032】
このように、本実施形態の浮動型キャリパ10によれば、爪部28の強剛性領域28aと弱剛性領域28bの設定状態を選択することにより、第2パッド裏金22bおよび第2ブレーキパッド16bに対する押圧状態をコントロール可能になる。その結果、第2パッド裏金22bの偏摩耗抑制を効率的に実施できる。
【0033】
図1、図3では、爪部28における強剛性領域28aと弱剛性領域28bを爪部28の押圧方向の厚みを調整することにより設定する例を示したが、図5に示すように、爪部28の幅を調整してもよい。図5においても、爪部28の爪元側に強剛性領域28aが設けられ、爪先側に弱剛性領域28bが設けられている。この場合も図3に示す例と同様に、幅の広い強剛性領域28aにおいて、爪先側の押圧が強くなり、爪元側の押圧が弱くなる。また、幅の狭い弱剛性領域28bにおいて、爪元側の押圧が強くなり、爪先側の押圧が弱くなる。図5に示すように、爪部28の爪元側に強剛性領域28aが形成され、連続して弱剛性領域28bが爪先側に形成される場合、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの境界位置近傍で最も押圧力が大きくなり、爪部28の爪元および爪先に向かうほど押圧力が低下するように押圧分布を設定することができる。つまり、爪部28の設計時に、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの境界位置を適宜選択することにより、第2パッド裏金22bおよび第2ブレーキパッド16bに対して最も強く押圧するポイントを爪部28の形状により決めることができる。
【0034】
また、図5の例において、爪部28の幅は、爪元側から所定位置まで第1幅漸減率で漸減させて強剛性領域28aを形成し、さらに、所定位置から爪部28の先端まで第1幅漸減率より小さい第2幅漸減率で漸減させて弱剛性領域28bを形成している。強剛性領域28aにおいて、厚みを第1幅漸減率で漸減することにより、強剛性領域28aの中においても押圧力調整が可能になる。すなわち、強剛性領域28aの先端側に向かい幅を漸減することにより強剛性領域28aの先端側と爪元側の押圧力の差を少なくし、押圧力変化が爪元に向かって緩やかにつくようにしている。同様に、弱剛性領域28bにおいて、幅を第2幅漸減率で漸減することにより、弱剛性領域28bの中においても押圧力調整が可能になる。すなわち、弱剛性領域28bの先端側に向かい幅を漸減することにより弱剛性領域28bの先端側と弱剛性領域28b元側の押圧力の差を少なくし、押圧力変化が緩やかにつくようにしている。このような漸減調整を行うことにより、強剛性領域28aと弱剛性領域28bの境界近傍を中心に第2パッド裏金22bの周縁部に向かい押圧力が緩やかに低減するように押圧による変位(変形)分布、つまり押圧力分布をコントロールし押圧バランスの改善が可能になる。爪部28の幅を調整する場合も厚みと同様に強剛性領域28aと弱剛性領域28bとで漸減率を変化させることによって、強剛性領域28aと弱剛性領域28bとの境界近傍を中心に緩やかに押圧力が変化する押圧力分布を形成することができる。その結果、良好な第2ブレーキパッド16bの偏摩耗抑制ができる。また、偏摩耗の抑制により制動時のブレーキ鳴きや振動の低減に寄与することができる。なお、爪部28の幅を漸減させずに、強剛性領域28aと弱剛性領域28bを形成する場合、または、第1幅漸減率、第2幅漸減率を同じにする場合、いずれの場合も爪部28の厚みの場合と同様に、弱剛性領域28bが強剛性領域28aの影響を受け、その特性が良好に出ないため好ましくない。
【0035】
なお、本実施形態では、爪部28で強剛性領域28aと弱剛性領域28bを形成する場合、爪部28の厚みまたは幅を調整する場合を示したが、爪部28の厚みおよび幅の両方を調整して所望の曲げ剛性の強剛性領域28aおよび弱剛性領域28bを形成してもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、爪部28の厚みおよび幅で調整することにより、爪部28の形状設計の自由度が向上する。
【0036】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る浮動型キャリパの断面図である。
【図2】浮動型キャリパの爪部の曲げ剛性が第2パッド裏金より大きい場合の第2パッド裏金および第2ブレーキパッドにおける押圧による変位(変形)状態が変化することを説明する説明図である。
【図3】本実施形態に係る浮動型キャリパの爪部に強剛性領域、弱剛性領域を設け曲げ剛性を調整することにより、第2パッド裏金および第2ブレーキパッドにおける押圧による変位(変形)状態が変化することを説明する説明図である。
【図4】浮動型キャリパの爪部の曲げ剛性が第2パッド裏金より小さい場合の第2パッド裏金および第2ブレーキパッドにおける押圧による変位(変形)状態が変化することを説明する説明図である。
【図5】本実施形態に係る浮動型キャリパの爪部幅を調整することにより、強剛性領域および弱剛性領域を形成することを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10 浮動型キャリパ、 12 ディスクロータ、 14 マウンティング部、 16 ブレーキパッド、 16a 第1ブレーキパッド、 16b 第2ブレーキパッド、 18 ハウジング部、 18a ブリッジ部、 20 ピストン、 22 パッド裏金、 22a 第1パッド裏金、 22b 第2パッド裏金、 24 穴、 26 ポート、 28 爪部、 28a 強剛性領域、 28b 弱剛性領域、 30 トルクプレート。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013