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発明の名称 内燃機関のノック抑制装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−64187(P2007−64187A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−255168(P2005−255168)
出願日 平成17年9月2日(2005.9.2)
代理人 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
発明者 木野村 茂樹
要約 課題
燃焼の悪化を生じることなくノックを抑制する。

解決手段
機関1は排気通路3に三元触媒9を備え、筒内に直接燃料噴射が可能な燃料噴射弁9を備える。機関の電子制御ユニット(ECU)30は、機関がノックの生じやすい領域で運転されている場合には1行程サイクル中に2回の燃料噴射を行うことによりノックを抑制する。ここで、2回目の燃料噴射は1回目の燃料噴射により噴射された燃料が燃焼を開始した後に行う。1回目の燃料噴射は、機関の回転数が所定値より高い場合には吸気行程中に行い燃焼室内に均質な混合気を形成するようにし、機関の回転数が所定値より低い場合には圧縮行程中に行い、点火プラグ周りに混合気を成層させる。機関運転条件に応じて1回目の燃料噴射のタイプが選択されるため、回転数にかかわらず燃焼の悪化を防止しながら効果的にノックを抑制することが可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
予め定められたノックが発生しやすい運転領域では、気筒圧縮上死点より以前に気筒内に第1の燃料噴射を行い、噴射した燃料を火花点火により燃焼させるとともに、前記第1の燃料噴射終了後に第2の燃料噴射を行い、噴射した燃料を拡散燃焼により燃焼させる内燃機関のノック抑制装置において、
前記第1の燃料噴射として、気筒吸気行程に燃料噴射を行い燃焼室内全体に均一な混合気を形成する均質燃焼噴射と、気筒圧縮行程に燃料噴射を行い燃焼室内の一部の領域にのみ混合気を成層させる成層燃焼噴射とのいずれか一方を機関回転数に応じて選択することを特徴とする、内燃機関のノック抑制装置。
【請求項2】
前記第1の燃料噴射として、機関回転数が予め定めた回転数より低い領域では前記成層燃焼噴射を、前記予め定めた回転数より高い領域では前記均質燃焼噴射を、選択することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関のノック抑制装置。
【請求項3】
前記第1の燃料噴射として前記均質燃焼噴射噴射を行う場合には、第1の燃料噴射における燃料噴射量を前記第2の燃料噴射における燃料噴射量より多く設定し、前記第1の燃料噴射として前記成層燃焼噴射を行う場合には、第1の燃料噴射における燃料噴射量を前記第2の燃料噴射における燃料噴射量より少なく設定することを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関のノック抑制装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のノック抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の出力増大と燃費の向上との要求に応じるため、内燃機関では圧縮比を高く設定したり、過給を行うようになって来ている。
ところが、機関の圧縮比を増大、或は過給を行う機関では、特に高負荷低回転領域ではノックが生じやすくなる傾向がある。
【0003】
ノックは、燃焼室内のエンドガスが圧縮行程時の断熱圧縮と燃焼室壁面からの輻射熱などにより自己発火するために生じる。高圧縮比機関では圧縮上死点での燃焼室圧力が高くなり燃焼速度が大きくなるため、点火時のエンドガスの圧力上昇速度が大きくなりノックが生じやすくなる。また、一般に燃焼室圧力が高くなる高過給機関や高負荷運転時にもノックが発生しやすくなる。
【0004】
従来、ノックの生じやすい領域で機関を運転する場合や、或は実際に機関運転中にノックが生じた場合には、機関の点火時期を遅角させることによりノックを抑制することが行われている。ところが、点火時期遅角によりノックを抑制する場合、機関燃焼室圧力が高くなるほど点火時期の遅角量を大きくする必要が生じる。
【0005】
このため、高圧縮比機関や高過給機関ではノック抑制のための点火時期遅角量が大きくなり、機関出力トルクの低下と燃費の増大を生じる問題があった。
【0006】
この問題を防止するため、例えば特許文献1はノック防止のために燃料噴射を2回に分けて行うことを開示している。
すなわち、特許文献1では燃料噴射を前段と後段に分けて筒内に噴射し、前段の燃料が点火された後に後段の燃料を噴射することにより、後段の燃料を燃焼させている。
【0007】
通常1回で噴射する量の燃料を前段と後段との2回に分けて噴射することにより、前段で噴射される燃料の量は燃料を1回で噴射する場合に比べてかなり少なくなる。このため、前段で噴射された燃料の着火時には燃焼室内の混合気の空燃比は理論空燃比よりかなりリーンになっている。
【0008】
一般に、混合気の空燃比がリーンになるほど混合気の燃焼速度は小さくなる。このため、前段で噴射された燃料の着火時には燃焼室圧力が高い場合であってもノックが生じにくくなり、点火時期を遅角させなくてもノックの発生を抑制することができる。
【0009】
また、後段の燃料は前段の燃料が点火されて火炎が形成された中に噴射されるため、燃焼室内に予混合気を形成することなく拡散燃焼するため、少ない量の燃料であっても安定した燃焼を行うことができる。
【0010】
また、この場合には排気の空燃比は機関の吸入空気量と、前段と後段との合計燃料噴射量の比となるため、前段での燃焼をノック抑制のためにリーン空燃比の燃焼とした場合であっても、全体としては排気空燃比は理論空燃比になるため、三元触媒により高い効率で排気中のHC、CO、NOXの三成分を同時に浄化することが可能となる。
【0011】
【特許文献1】特開平9−126028号公報
【特許文献2】特開2004−245126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の排気浄化装置では、前段(1回目)の燃料噴射時期として排気弁が閉弁した後(吸気行程初期)とすることにより、噴射された燃料の霧化時間を十分にとって燃焼室内に均一な混合気を形成する場合、或は圧縮行程開始後に前段燃料の噴射を行うことにより、燃焼室内に燃料と空気とを成層化する場合とが開示されている。
【0013】
しかし、特許文献1では燃焼室内に均一な混合気を形成するように前段燃料を噴射する場合(すなわち、均質燃焼噴射)と燃料と空気とを成層化するように前段燃料を噴射する場合(すなわち、成層燃焼噴射)とをどのように使い分けるかについては全く考慮されていない。
【0014】
例えば、燃焼室内圧力が高くなるにつれてリーン空燃比でもノックが生じやすくなるため、高過給高圧縮比機関では、ノックを抑制するために前段の燃料噴射により形成される混合気の空燃比をかなりリーン空燃比にする必要がある。すなわち、この場合、均質燃焼を行うには少ない燃料噴射量で燃焼室内に均一な混合気を形成することが必要となり、機関の運転状態によっては混合気の濃度が不均一になり火花による着火や燃焼が不安定になる場合がある。
【0015】
また、成層燃焼噴射により前段燃料を噴射する場合には、点火栓付近にのみ着火可能な空燃比の混合気を成層化することができるため、均質燃焼噴射における上記のような問題は生じないものの、機関運転状態によっては噴射した燃料を適切に成層化することができない場合があり、前段燃料の燃焼が不安定になる場合がある。
【0016】
本発明は上記従来技術の問題に鑑み、前段燃料噴射において均質燃焼噴射と成層燃焼噴射とを機関運転状態に応じて適切に使い分けることにより、ノックを効果的に抑制するとともに安定した燃焼を行うことが可能な内燃機関のノック抑制装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、予め定められたノックが発生しやすい運転領域では、気筒圧縮上死点より以前に気筒内に第1の燃料噴射を行い、噴射した燃料を火花点火により燃焼させるとともに、前記第1の燃料噴射終了後に第2の燃料噴射を行い、噴射した燃料を拡散燃焼により燃焼させる内燃機関のノック抑制装置において、前記第1の燃料噴射として、気筒吸気行程に燃料噴射を行い燃焼室内全体に均一な混合気を形成する均質燃焼噴射と、気筒圧縮行程に燃料噴射を行い燃焼室内の一部の領域にのみ混合気を成層させる成層燃焼噴射とのいずれか一方を機関回転数に応じて選択することを特徴とする、内燃機関のノック抑制装置が提供される。
【0018】
すなわち、請求項1の発明では火花点火を行う第1の燃料噴射として、均質燃焼噴射と成層燃焼噴射とを機関回転数に応じて切替えて実行する。
例えば、ノックが発生しやすい高負荷運転領域において機関回転数が高い場合には吸気流速が大きく燃焼室内の気流の乱れも大きくなる。このため、成層燃焼噴射を行うと気流の乱れのために混合気を成層させることが困難になり、火花による点火が正常に行えなくなる場合がある。
【0019】
一方、機関回転数が低い領域では燃焼室内の乱れが少ないため、比較的少量の燃料を均質燃焼噴射として噴射する場合には混合気が均一に形成されにくい場合が生じる。
【0020】
本発明では、第1の燃料噴射として成層燃焼噴射と均質燃焼噴射とを機関回転数に応じて切替えるようにしたことにより、それぞれの回転数領域に応じた燃料噴射を行うことが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、前記第1の燃料噴射として、機関回転数が予め定めた回転数より低い領域では前記成層燃焼噴射を、前記予め定めた回転数より高い領域では前記均質燃焼噴射を、選択することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関のノック抑制装置が提供される。
【0022】
すなわち、請求項2の発明では機関回転数が低い領域では第1の燃料噴射として成層燃焼噴射が行われる。ノックが生じやすい運転領域(例えば高負荷運転領域)では機関回転数が低いほどノックが生じやすくなる。一方、混合気を点火栓近傍に成層させる成層燃焼噴射では燃料は成層混合気中のみに存在し、燃焼室壁面付近のエンドガス中には燃料が存在しない。このため、ノックが生じやすい運転領域の中でも特にノックが生じやすくなる低回転領域で成層燃焼噴射を行うことにより、極めて効果的にノックを抑制することが可能となる。
【0023】
一方、ノックが生じやすい運転領域でも回転数が高くなるにつれて比較的ノックは生じにくくなる。また、高回転領域では燃焼室内の気流の乱れにより混合気を成層させることが困難になる反面、燃焼室全体に均質な混合気を形成させやすくなる。
このため、ノックが生じやすい領域では均質燃焼噴射を行い安定した燃焼を行うことが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、前記第1の燃料噴射として前記成層燃焼噴射を行う場合には、第1の燃料噴射における燃料噴射量を前記第2の燃料噴射における燃料噴射量より少なく設定し、前記第1の燃料噴射として前記均質燃焼噴射噴射を行う場合には、第1の燃料噴射における燃料噴射量を前記第2の燃料噴射における燃料噴射量より多く設定することを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関のノック抑制装置が提供される。
【0025】
すなわち、請求項3の発明では、第1の燃料噴射として成層燃焼噴射を行う場合には比較的少量の燃料のみを噴射する。前述したように、成層燃焼噴射を行う低回転領域では特にノックが生じやすくなっている。このため、第1の燃料噴射ではできるだけ少量の燃料を点火栓周りに成層させるようにして、エンドガスに燃料が含まれないようにする必要がある。このため、本発明では成層燃焼噴射時に第1の燃料噴射で噴射する燃料の量は第2の燃料噴射で噴射する燃料の量より少なく設定する。
【0026】
また、高回転領域では比較的ノックが生じにくくなっているため、エンドガスに多少の燃料が含まれていてもノックは生じない。また、第1の燃料噴射で噴射する燃料の量を多く設定するほど爆発行程における燃焼パターンは通常のパターンに近づき機関の熱効率は向上する。このため、本発明では均質燃焼噴射時には比較的多量の燃料を噴射することとして、第1の燃料噴射で噴射する燃料の量を第2の燃料噴射で噴射する燃料の量より多く設定する。
【0027】
これにより、本発明ではノックを効果的に抑制するとともに、全体として効率の高い運転を行うことが可能となっている。
【発明の効果】
【0028】
各請求項に記載の発明によれば、第1の燃料噴射として成層燃焼噴射と均質燃焼噴射とを機関回転数に応じて切替えることにより、効果的にノックを抑制しながら安定した効率の高い燃焼を行うことが可能となる共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を自動車用内燃機関に適用した実施形態の概略構成を模式的に示す図である。
図1において、1は自動車用ガソリンエンジンを示す。本実施形態ではエンジン1は吸気通路(図示せず)に過給器を備えた過給機関とされている。また、本実施形態ではエンジン1は各気筒燃焼室に直接燃料を噴射する筒内燃料噴射弁9を備えている。
【0030】
図1において、3はエンジン1の排気通路、5は排気通路3上に配置された排気浄化触媒を示す。本実施形態では、排気浄化触媒5としては流入する排気の空燃比が理論空燃比近傍の領域にある場合に排気中のHC、CO、NOXの3成分を同時に浄化可能な三元触媒が使用されている。
【0031】
図1に30で示すのは、エンジン1の電子制御ユニット(ECU)である。ECU30は、例えば公知の形式のマイクロコンピュータとして構成され、機関の燃料噴射、点火時期などの基本制御を行う他、本実施形態ではエンジン1のノックが生じやすい運転領域で後述するようにノックの発生を防止するノック抑制操作を行う。
【0032】
これらの制御を行うため、ECU30の入力ポートには、エンジン1の吸気通路に設けられた吸気圧センサ33から機関吸気圧力PMに対応する電圧信号が、またエンジン1のクランク軸近傍に配置されたクランク角センサ35からクランク軸一定回転角度毎にパルス信号が、それぞれ供給されている。
【0033】
ECU30は、クランク角センサから入力するクランク角パルス信号の周波数から機関回転数NEを算出するとともに、基準位置(例えば、#1気筒の圧縮上死点)からのパルス数に基づいて現在のクランク角を算出する。
また、ECU30は上記により算出した機関回転数NEと吸気圧センサ33で検出したエンジン吸気圧力PMとに基づいて、エンジン1の各気筒における燃焼空燃比を目標空燃比(本実施形態では理論空燃比)に維持するための燃料噴射量を算出する。
【0034】
ECU30の出力ポートは、図示しない燃料噴射回路を介して各気筒の燃料噴射弁9に接続され、上記により算出された量の燃料を予め定めたタイミングで気筒内に噴射している。
また、ECU30の出力ポートは、点火回路を介して各気筒の点火プラグ(図示せず)に接続され、機関の回転数と負荷(例えば燃料噴射量)とから定るタイミングで燃焼室内の混合気に点火を行う。
【0035】
通常、各気筒では所定クランク角度だけ圧縮行程より前のタイミングで点火が行われ、圧縮上死点直後に燃焼室内圧力が最大値に到達するようにされており、気筒膨張行程で燃焼エネルギーを最大限に機械エネルギーに変換するようにされている。
ところが、機関の運転状態によっては、気筒の圧縮上死点到達前に気筒末端の混合気(エンドガス)に自着火を生じ筒内圧力が急激に上昇するノック(ノッキング)が生じる場合がある。
【0036】
ノックは、点火プラグによる混合気の着火に伴う燃焼室内の圧力上昇による断熱圧縮と火炎の輻射熱とにより、エンドガスが自発火し圧縮上死点前に燃焼室内に大きな圧力波が発生するために生じる。ノックが生じるとエンジンに異音や振動が発生するのみならず、極端な場合にはバルブなどに機械的損傷を生じる場合がある。
ノックは、圧縮圧力が高くなるにつれて発生しやすくなるため、機関負荷が高くなるほど生じやすくなり、圧縮比の高い機関や過給を行う機関では特に発生しやすくなる。
【0037】
図2は、一般的にノックが発生しやすい機関運転領域を示す図であり、図2の横軸は機関回転数NEを、縦軸は機関負荷(燃料噴射量)を示している。図2の斜線で示した領域はノックが発生しやすい運転領域(以下、「ノック域」という)を示している。ノック域は、各回転数の全負荷(WOT)付近の負荷領域であり、回転数NEが低いほどノック域の下限負荷は小さくなりノックが生じやすくなる。
【0038】
通常、ノック域ではノックを抑制するために点火時期の遅角が行われる。
点火時期が遅角されると、混合気の着火による圧力と温度の上昇のタイミング遅くなるため圧縮上死点近傍でのエンドガスの自発火が生じにくくなり、ノックの発生が抑制される。
【0039】
図3は、点火時期を遅角させた場合の燃焼時の筒内圧の変化を示す図である。図3において、横軸はクランク角CAを、縦軸は筒内圧PCを、それぞれ表している。また、横軸のTDCは圧縮上死点を、IG0は通常時の点火時期を、IGRはノック抑制時の遅角した点火時期を、またFIは燃料噴射開始タイミングを、それぞれ示している。
また、図3の点線は通常運転時の筒内圧変化を、実線は点火時期遅角時の燃焼室内圧力変化を、それぞれ示している。
【0040】
図3点線に示すように通常運転時には上死点TDCより十分前に点火が行われ(IG0)、燃焼による筒内圧力の上昇は上死点直後に最大になる(図3、Peak−N)。
しかし、図3実線に示すようにノック抑制のために点火時期を遅角(IGR)すると、燃焼開始の遅れにより圧縮上死点よりかなり後の膨張行程中に筒内圧力が最大値に到達するようになり、膨張行程中に燃焼エネルギーが十分に機械エネルギーに変換されないまま筒内から排気が排出されるようになる。
【0041】
また、燃焼が生じる期間が全体として上死点より後に移行するようになり燃焼開始時の筒内圧力も最大圧縮圧力より低くなため、燃焼時の筒内最大圧力そのものも点火時期を遅角しない場合に比べて低くなる(図3、Peak−R)。
このため、点火時期の遅角によるノック抑制を行うと、出力トルクの低下と熱効率低下による燃費の悪化とが生じるようになるのである。
【0042】
本実施形態では、前述の特許文献1(特開平9−126028号公報)と同様に、1行程サイクル中に燃料を2回に分けて噴射し燃焼させることにより、ノックを抑制しつつ上記出力トルクの低下と燃費の悪化が生じることを防止している。
【0043】
図4は本実施形態における、2回噴射によるノック抑制を行った場合の筒内圧の変化を説明する図3と同様な図である。
図4において、TDCは図3と同様圧縮上死点と点火時期を示す。また、本実施形態では点火時期は通常時と同じ点火時期(IG0)とされる。すなわち、点火時期の遅角は行わない。
【0044】
更に、図4の例では燃料噴射は図3と同じ吸気行程中に1回(図4、FI1)と点火時期IG0の後に1回(図4、FI2)の計2回行われる。
図4の例では、1回目と2回目の燃料噴射の燃料噴射量の合計はノック抑制を行わない場合と同じ量(すなわち、排気空燃比を理論空燃比に維持することができる量)に設定されている。
【0045】
図4の例では、1回目の燃料噴射(FI1)は吸気行程中に行われ、燃焼室内に均一な混合気を形成するが、1回目の燃料噴射量は燃焼室内に理論空燃比の混合気を形成できる量より少ないため、1回目の燃料噴射により燃焼室内に形成される混合気の空燃比はリーン空燃比になっている。
このため、通常の点火タイミング(図4IG0)で点火が行われた場合でもエンドガス中の燃料濃度が低いため自発火が生じにくくなり、ノックが抑制される。
【0046】
2回目の燃料噴射(FI2)は、1回目の燃料噴射により噴射された燃料の燃焼が開始された後、上死点到達直後に行われる。この場合、燃焼室内では既に燃焼が開始しているため、噴射された燃料は燃焼室内に混合気を形成することなく拡散燃焼を行うようになる。このため、2回目の燃料噴射(拡散燃焼噴射)ではノックが生じることはない。
【0047】
上述のように、1回目と2回目の燃料噴射量の合計は通常時の燃料噴射量と同一になるように設定されている。このため、燃焼室内の燃焼の最終的な空燃比は理論空燃比に維持されるようになり、三元触媒による排気浄化が影響を受けることが防止される。
【0048】
また、図4から判るように、2回噴射の場合には1回目に噴射された燃料の点火は通常のタイミングで行われるため、図3の場合とは異なり1回目の噴射による燃焼圧力は上死点TDC近傍でピークに到達する。そして、このピーク圧力近傍で2回目の燃料噴射が行われ、噴射された燃料が直ちに燃焼を開始するため、燃焼圧力は更に上昇し2回目の燃料噴射タイミング付近で最大圧力に到達する。
【0049】
このため、燃焼全体としてのピーク圧力は上死点直後に得られるようになり(図4、Peak)、通常運転時の筒内圧力(図3、点線)と略同じ筒内圧変化が得られる。
従って、2回噴射を行うことにより通常運転時と同等な出力トルクと熱効率とを維持しつつノックを効果的に抑制することが可能となる。
【0050】
図4では、1回目の噴射は燃焼室内に均質な混合気を形成するように吸気行程初期に行われているが、図5に示すように1回目の燃料噴射(FI1)を圧縮行程後半に行って点火プラグ周りのみに可燃空燃比の混合気を成層させた場合も図4と同様に全体として通常運転時と同じ空燃比をを維持しながら出力トルクや効率を低下させずにノックを効果的に抑制することが可能となる。
【0051】
ところが実際には、1回目の燃料噴射として、上記のように燃焼室内全体に均質な混合気を形成する燃料噴射(均質燃焼噴射)と、点火プラグ周辺のみに混合気を成層させる燃料噴射(成層燃焼噴射)を行うかは機関の運転状況に応じて決めないと問題が生じる場合がある。
【0052】
例えば、1回目の燃料噴射として均質燃料噴射を行う場合には、噴射した燃料で燃焼室全体に均一な混合気を形成する必要があり、少量の燃料を効率的に燃焼室全体に拡散混合させるために、燃焼室内に流入する吸気流に比較的大きな乱れが必要となる。このため、例えば吸気流速が比較的小さくなり、燃焼室内の乱れが小さくなる低回転領域で1回目の燃料噴射として均質燃焼噴射を行うと、燃焼室内の燃料の混合が不十分になり、点火プラグによる着火や燃焼が不安定になる場合が生じる。
【0053】
一方、1回目の燃料噴射として成層燃焼噴射を行う場合には、噴射した少量の燃料を点火プラグ周りに成層させる必要があるため、上記とは反対に吸気流速が高く燃焼室内の乱れが大きい高回転領域で成層燃焼噴射を行うと混合気が拡散してしまい点火プラグ周りに可燃空燃比の混合気が成層しなくなる。このため、高回転領域で1回目の燃料噴射として成層燃焼噴射を行うと失火が生じやすくなる問題がある。
【0054】
ところで、前述したようにノックは圧縮行程時の燃焼室内エンドガスの自発火により生じる。このため、ノック抑制の観点からは少量ではあるがエンドガスに燃料が含まれる均質燃焼より、エンドガスに全く燃料が含まれない成層燃焼の方が好ましい。
【0055】
一方、ノックが生じやすい運転領域(ノック域:図2斜線部分)の中にあっても、回転数が低くなるにつれてノックは生じやすくなるが、回転数が低くなればそれに応じて吸気流の速度も低下し燃焼室内の乱れは小さくなり、成層燃焼に有利になる。
【0056】
そこで、本発明ではノック域において2回噴射を行ってノックを抑制する際に、回転数が低い領域(例えば、図2において回転数Nc以下の領域)では1回目の噴射として成層燃焼噴射を行う。
【0057】
この場合には、ノック抑制の観点から1回目の成層燃焼噴射では燃料噴射量を出来るだけ少なく設定し、2回目の燃料噴射(拡散燃焼)で残りの燃料を噴射して1燃焼サイクルの全体で空燃比が理論空燃比になるようにする(例えば1回目の成層燃焼噴射では全体の燃料の約30パーセント程度を噴射し、2回目の拡散燃焼の噴射で70パーセントを噴射する。)
これにより、特にノックが生じやすい低回転領域においてもノックを効率的に抑制するとともに、成層燃焼における失火や燃焼悪化が生じることを防止することが可能となる。
【0058】
一方、本発明では、ノック域において回転数が上記Ncより高い領域では、1回目の燃料噴射として均質燃焼噴射を行う。この領域では吸気流速が高く燃焼室内の乱れが大きくなっているため、均質燃焼噴射を行うことによりリーン空燃比の均質な混合気を良好に生成可能となるため、混合気の着火と燃焼が安定するようになる。この場合、均質燃焼噴射を行うことにより、エンドガスにも多少の燃料が含まれるようになるが、ノック域の比較的回転数が高い領域ではノックの生じやすさは比較的低くなっており、エンドガスに多少の燃料が含まれていてもノックは生じない。
【0059】
1回目の燃料噴射として均質燃焼噴射を行う場合には、成層燃焼の場合とは逆に均質燃焼噴射時に噴射する燃料の量を大きく設定する(例えば全体の量の70パーセント程度)。これにより、混合気が過度にリーンになることを防止し、2回噴射を行う場合にも通常の燃焼パターンに近い燃焼を行って機関効率を高く維持することができる。
【0060】
すなわち、本発明では機関がノック域で運転される場合には、2回噴射を行ってノックを抑制するとともに、所定の回転数以下の低回転領域では1回目の噴射として成層燃焼噴射を行い、所定の回転数より高い領域では1回目の噴射として均質燃焼噴射を行うようにしたことにより、燃焼の悪化などを生じることなく効果的にノックを抑制することが可能となっている。
【0061】
上記のように、回転数Ncを境に成層燃焼噴射と均質燃焼噴射とを使い分けるようにした結果、本実施形態では、ノック域のうち、図2にIで示す領域(低回転領域)では成層燃焼噴射+拡散燃焼噴射の2回噴射が、IIで示す領域(高回転領域)では均質燃焼噴射+拡散燃焼噴射の2回噴射が、また、IIIで示す領域では通常の1回噴射が、それぞれ行われるようになる。
なお、成層燃焼噴射を採用するか、均質燃焼噴射を採用するかの境界の回転数(図2、Nc)は機関の型式などにより変化するため、実際の機関を用いた実験等により定めることが好ましい。
【0062】
図6は、本実施形態におけるノック抑制操作を具体的に説明するフローチャートである。本操作はECU30により一定時間毎に繰返されるルーチンにより実行される。
図6の操作では、まずステップ601で機関回転数NEと機関負荷を代表するパラメータ(例えば燃料噴射量FINJ)を読込み、ステップ603ではステップ601で読込んだ機関回転数NEと負荷FINJとに基づいて、現在の機関運転領域が図2のノック域に該当するか否かを判断する。
【0063】
ステップ603で現在の運転領域がノック域に該当しない場合には、ステップ605に進み通常の燃料噴射、すなわち1行程サイクルに1回の燃料噴射が行われる。
また、ステップ603で、現在の運転領域がノック域にあった場合には、1行程中に2回に分けて燃料噴射を行い、ノックを抑制することとし、その際に1回目の噴射として、成層燃焼噴射を行うか均質燃焼噴射を行うかを選択するために、ステップ607で現在の機関回転数NEが所定回転数Nc(図2)以下か否かが判断される。
【0064】
現在の機関回転数NEが所定回転数Nc以下であった場合には、ステップ609に進み、1回目の燃料噴射として成層燃焼噴射を行う2回噴射、すなわち成層燃焼噴射+拡散燃焼噴射の2回噴射を選択する。
【0065】
また、ステップ607で現在の機関回転数NEが所定回転数NCより高い場合には、ステップ611に進み均質燃料噴射+拡散燃料噴射の2回噴射を選択する。
【0066】
これにより、機関運転状態に応じた1回目の噴射が行われ、燃焼の悪化を生じることなく効果的にノックが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を自動車用内燃機関に適用した場合の、実施形態の概略構成を説明する図である。
【図2】ノック域の一例を示す図である。
【図3】点火時期遅角によるノック抑制実行時の燃焼室内圧力変化を模式的に示す図である。
【図4】2回噴射によるノック抑制実行時の燃焼室内圧力変化を模式的に示す図である。
【図5】2回噴射によるノック抑制実行時の燃焼室内圧力変化を模式的に示す図である。
【図6】本発明のノック抑制操作の一実施形態を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 機関本体
3 排気通路
5 三元触媒
9 筒内燃料噴射弁
30 ECU(電子制御ユニット)
33 吸気圧センサ
35 クランク角センサ




 

 


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