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発明の名称 内燃機関の燃料圧制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16630(P2007−16630A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−196589(P2005−196589)
出願日 平成17年7月5日(2005.7.5)
代理人 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
発明者 井戸側 正直 / 寺岡 正彦 / 細川 修 / 前村 純
要約 課題
低温時における燃料洩れを防止するべく実行される燃料圧抑制処理をより適切に実行することのできる内燃機関の燃料圧制御装置を提供する

解決手段
デリバリパイプ20や燃料送油管21にて構成される高圧燃料配管の接続部にシール部材が配設されるエンジン10にあって、電子制御装置30は、そのシール部材のシール能力が維持されるように高圧燃料配管内の燃料圧を制御する。この電子制御装置30は、シール部材の温度と相関を有するエンジン10の温度状態量、すなわち冷却水温及び自動変速機40の油温のうち、少なくとも1つがシール部材のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低い場合には、高圧燃料配管内の燃料圧を低下させる燃料圧抑制処理を実行する。
特許請求の範囲
【請求項1】
燃料配管の接続部にシール部材が配設される内燃機関にあって、前記シール部材のシール能力が維持されるように前記燃料配管内の燃料圧を制御する燃料圧制御装置において、
前記シール部材の温度と相関を有する前記内燃機関の温度状態量であって、機関の冷却水温を含む複数の温度状態量のうちの少なくとも1つが前記シール部材のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低い場合には、前記燃料圧を低下させる燃料圧抑制処理を実行する制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項2】
前記燃料圧抑制処理の実行に際しては、予め設定された低温用の圧力にまで前記燃料圧は低下される
請求項1に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項3】
前記燃料圧抑制処理の実行に際しては、前記温度状態量の値が低いときほど前記燃料圧が低くなるように当該燃料圧は可変設定される
請求項1に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項4】
前記複数の温度状態量として、変速機の油温を含む
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項5】
前記複数の温度状態量として、外気温を含む
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項6】
前記複数の温度状態量として、機関潤滑油の温度を含む
請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項7】
前記複数の温度状態量として、吸気温を含む
請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項8】
前記複数の温度状態量として、前記燃料配管内の燃料温度を含む
請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項9】
前記燃料配管は、筒内噴射用の燃料噴射弁が接続される高圧燃料配管である
請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
【請求項10】
前記内燃機関は、機関始動時の冷却水温を高めるための加熱器を備える
請求項1〜9のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料配管の接続部にシール部材が配設される内燃機関にあって、そのシール部材によるシール性が維持されるように燃料配管内の燃料圧を制御する燃料圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、筒内噴射式内燃機関にあっては、燃料タンクの燃料を高圧燃料ポンプにより加圧し、この加圧した燃料をデリバリパイプ等によって構成される高圧燃料配管に供給するとともに、同デリバリパイプに接続された燃料噴射弁から気筒内に燃料を直接、噴射供給するようにしている。
【0003】
また、高圧燃料配管内の燃料圧、換言すれば燃料噴射弁から噴射される燃料の噴射圧は、例えば高圧燃料ポンプの吐出量を制御することにより、内燃機関の運転状態に適した圧力値に制御されている。ここで、筒内噴射式内燃機関においては、高圧となった気筒の内圧に抗して燃料を噴射しなければならず、また、良好な燃焼状態を確保すべく燃料噴霧を適度に微粒化する必要があるため、高圧燃料配管の燃料圧は通常、吸気ポート噴射式内燃機関と比較して高圧に設定されている。
【0004】
ところで、上記高圧燃料配管には、燃料のシール性を確保するために、デリバリパイプと燃料噴射弁との接続部や、高圧燃料ポンプとデリバリパイプとの接続部といった燃料洩れが懸念される部位に、Oリング等のシール部材を配設することが従来、広く行われている(例えば、特許文献1等)。
【特許文献1】特開2002−364487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、こうしたシール部材は低温時において柔軟性が失われ、そのシール能力が低下する傾向がある。そのため、こうしたシール部材を用いてシール能力を確保するようにした高圧燃料配管にあっては、例えば内燃機関の冷間始動時等に、シール部材が配される接続部から極微量ではあるものの燃料が洩れるおそれがある。
【0006】
そこで、こうした燃料洩れを防止するために、シール部材の温度が低いときには、高圧燃料ポンプからの吐出量を一時的に減少させて、燃料配管内の燃料圧を低下させる燃料圧抑制処理を実行することが望ましい。また、上述したようなシール部材の温度が低いか否かの判定は、当該シール部材の温度と相関を有する内燃機関の冷却水温を参照することで、ある程度適切に行うことができる。
【0007】
ここで、例えば極低温下にて機関始動がなされた場合にあって暖機途中に一旦機関停止がなされ、その後速やかに再始動されたときには、冷却水温は高いものの、シール部材の温度は低いままになっている可能性がある。
【0008】
また、極寒地などで使用される内燃機関には、その始動性を向上させるために、機関停止中において外部電源からの電力供給により機関冷却水を加熱する加熱器(ブロックヒータ等)が備えられている場合があり、こうした加熱器を備える内燃機関の機関始動時にも、冷却水温は高いものの、シール部材の温度は低くなっている可能性がある。
【0009】
こうした例にみられるように、冷却水温とシール部材の温度との相関は、場合によっては低くなることがあり、このように相関が低い状態では上記燃料圧抑制処理を適切に実行することができないといった不都合が発生するおそれがある。
【0010】
なお、筒内噴射式内燃機関の高圧燃料配管に限らず、吸気ポート噴射式内燃機関の燃料配管でも上述したようなシール部材は配設されている。また、高圧燃料配管内の燃料圧ほどではないにせよ、同吸気ポート噴射式内燃機関の燃料配管内にもある程度の燃料圧がかかっている。そのため、この吸気ポート噴射式内燃機関の燃料配管においても、上記高圧燃料配管と同様に低温時の燃料洩れが発生するおそれがあり、そうした燃料配管を備える内燃機関において上記燃料圧抑制処理を実行する場合にも、上述したような不都合の発生は懸念される。
【0011】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、低温時における燃料洩れを防止するべく実行される燃料圧抑制処理をより適切に実行することのできる内燃機関の燃料圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、燃料配管の接続部にシール部材が配設される内燃機関にあって、前記シール部材のシール能力が維持されるように前記燃料配管内の燃料圧を制御する燃料圧制御装置において、前記シール部材の温度と相関を有する前記内燃機関の温度状態量であって、機関の冷却水温を含む複数の温度状態量のうちの少なくとも1つが前記シール部材のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低い場合には、前記燃料圧を低下させる燃料圧抑制処理を実行する制御手段を備えることをその要旨とする。
【0013】
同構成によれば、冷却水温とシール部材の温度との相関が低くなるような状態であっても、シール部材の温度と相関を有する他の温度状態量がシール部材のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低くなっていれば、燃料圧を低下させる燃料圧抑制処理は実行されるようになる。すなわち同構成によれば、シール部材の温度が低くそのシール能力が確保されない状態を適切に判定することができ、もって低温時における燃料洩れを防止するべく実行される燃料圧抑制処理をより適切に実行することができるようになる。
【0014】
なお、同構成における上記シール能力確保可能温度とは、シール部材のシール能力を十分に確保することのできる最低温度のことをいい、シール能力確保可能温度に相当する温度とは、シール部材の温度がシール能力確保可能温度となっているときの温度状態量の値のことをいう。また、シール部材のシール能力低下による燃料洩れは機関始動時に生じやすいため、上記温度状態量とシール能力確保可能温度に相当する温度との比較判定や上記燃料圧抑制処理は、そうした機関始動時に行うことが望ましい。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料圧制御装置において、前記燃料圧抑制処理の実行に際しては、予め設定された低温用の圧力にまで前記燃料圧は低下されることをその要旨とする。
【0016】
同構成によれば、燃料圧抑制処理の実行時における燃料圧を簡易な態様で低下させることができるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料圧制御装置において、前記燃料圧抑制処理の実行に際しては、前記温度状態量の値が低いときほど前記燃料圧が低くなるように当該燃料圧は可変設定されることをその要旨とする。
【0017】
同構成によれば、シール能力の低下に応じて燃料圧を可変設定することができるようになるため、燃料圧抑制処理の実行中であっても、可能な限り燃料噴霧の微粒化を図ることができるようになる。
【0018】
冷却水温を含む前記複数の温度状態量であって、同冷却水温とは異なる温度状態量としては、請求項4から請求項8に記載の発明によるように、変速機の油温、外気温、機関潤滑油の温度、吸気温、あるいは燃料配管内の燃料温度等を採用することができる。
【0019】
まず、変速機の油温は車両の走行によって上昇するものであり、こうした変速機の油温が低い場合には車両走行がそれほどなされておらず、換言すれば機関運転がそれほどなされておらず、当該内燃機関の燃料配管に設けられる前記シール部材の温度は低くなっていると考えることができる。従って、変速機の油温は、シール部材の温度と相関を有する内燃機関の温度状態量として採用することができる。特に、自動変速機には潤滑油の温度を検出する油温センサが設けられていることが多く、そうした油温センサにて検出される変速機の油温を前記複数の温度状態量として含むようにした請求項4に記載の構成によれば、前記温度状態量を測定するためのセンサを別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができるようになる。
【0020】
また、近年の車両には、外気温を検出する外気温センサが設けられることも多いため、こうした外気温を前記複数の温度状態量として含むようにした請求項5に記載の構成によっても、前記温度状態量を測定するためのセンサを別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができるようになる。
【0021】
また、内燃機関の潤滑油の温度が低い場合にも、機関運転がそれほどなされておらず、当該内燃機関の燃料配管に設けられる前記シール部材の温度も低くなっていると考えることができる。従って、機関潤滑油の温度は、シール部材の温度と相関を有する内燃機関の温度状態量として採用することができ、こうした機関潤滑油の温度を前記複数の温度状態量として含むようにした請求項6に記載の構成によれば、前記温度状態量を適切に検出することができるようになる。
【0022】
また、吸気温は内燃機関から発生する熱によって上昇しやすいため、同吸気温が低い場合にも、機関運転がそれほどなされておらず、当該内燃機関の燃料配管に設けられる前記シール部材の温度は低くなっていると考えることができる。従って、吸気温は、シール部材の温度と相関を有する内燃機関の温度状態量として採用することができ、こうした吸気温を前記複数の温度状態量として含むようにした請求項7に記載の構成によっても、前記温度状態量を適切に検出することができるようになる。
【0023】
また、燃料配管内の燃料はシール部材に直接接触しており、その温度はシール部材の温度と高い相関性を有している。そこで、そうした燃料温度を前記複数の温度状態量として含むようにした請求項8に記載の構成によれば、シール部材の温度が低くそのシール能力が確保されていない状態を判定する際に信頼性の高い判定結果が得られるようになる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置において、前記燃料配管は、筒内噴射用の燃料噴射弁が接続される高圧燃料配管であることをその要旨とする。
【0025】
筒内噴射用の燃料噴射弁が接続される高圧燃料配管では、その内部の燃料圧が高く設定されるため、低温時における前記シール部材のシール能力低下に起因する燃料洩れが生じやすい。この点、同構成によれば、そうした高圧燃料配管で生じやすい燃料洩れをより確実に防止することができるようになる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料圧制御装置において、前記内燃機関は、機関始動時の冷却水温を高めるための加熱器を備えることをその要旨とする。
【0027】
上記加熱器を備える内燃機関では、機関始動時における冷却水温とシール部材の温度との相関が低くなりやすく、燃料圧抑制処理を適切に実行することができないおそれがある。この点、同構成によれば、そうした加熱器を備える内燃機関であっても燃料圧抑制処理を適切に実行することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明を車載ガソリンエンジンの燃料圧制御装置に適用するようにした一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、本発明にかかる燃料圧制御装置は、ガソリンエンジンのみならず、ディーゼルエンジンにも適用することができる。
【0029】
図1は、エンジン10及びその制御装置の構成を概略的に示している。
エンジン10には、各気筒に対応してその燃焼室に燃料を直接噴射する燃料噴射弁11が設けられている。この燃料噴射弁11は、デリバリパイプ20及び燃料送油管21を介して高圧燃料ポンプ22に接続されている。高圧燃料ポンプ22は、燃料タンク23内に設けられたフィードポンプ24に接続されている。このフィードポンプ24の吐出圧は、高圧燃料ポンプ22の燃料送油圧よりも低く設定されている。
【0030】
これらデリバリパイプ20及び燃料送油管21によって構成される高圧燃料配管において、デリバリパイプ20と燃料噴射弁11との接続部、デリバリパイプ20と燃料送油管21との接続部、あるいは同燃料送油管21と高圧燃料ポンプ22との接続部等々には、燃料洩れを防止するためのシール部材であるOリング60が配設されている。例えば、図2に示すように、燃料噴射弁11の燃料導入部11aにあって、デリバリパイプ20に挿入される先端部近傍の外周にはOリング60が配設されており、このOリング60によって、デリバリパイプ20と燃料噴射弁11との接続部におけるシール性が確保される。
【0031】
こうした高圧燃料配管系にあって、フィードポンプ24から高圧燃料ポンプ22に供給される低圧の燃料は、同高圧燃料ポンプ22によって高圧に加圧された後、燃料送油管21を通じてデリバリパイプ20に圧送される。このようにして圧送された燃料は、更にデリバリパイプ20から各気筒の燃料噴射弁11に分配供給され、同デリバリパイプ20内の燃料圧力と等しい噴射圧をもって燃料噴射弁11から対応する気筒の燃焼室内に噴射される。
【0032】
このように燃焼室に噴射された燃料は、吸気通路12を通じて同燃焼室内に供給される吸入空気と混合される。更に、その混合気は点火プラグによって着火されて燃焼した後、燃焼室から排気通路13に排出される。こうした混合気の燃焼によって得られる機関出力は、エンジン10のクランクシャフトを介して自動変速機40に伝達される。
【0033】
吸気通路12には、吸入空気量をその開度に応じて調量するためのスロットルバルブ14、及びこのスロットルバルブ14を開閉駆動するスロットルモータ17がそれぞれ設けられている。
【0034】
また、吸気通路12にあってスロットルバルブ14の上流側には、吸入空気量を検出する吸入空気量センサ31が設けられている。なお、この吸入空気量センサ31には、吸入空気の温度(吸気温THA)を検出する吸気温センサ32も備えられている。エンジン10には、クランクシャフトの回転速度(機関回転速度NE)及び同シャフトの回転角(クランク角CA)を検出するための回転速度センサ33、機関冷却水の温度(冷却水温THW)を検出する水温センサ34がそれぞれ設けられている。また、デリバリパイプ20には、その内部の燃料圧力(燃料圧PF)を検出する燃料圧センサ35が設けられている。そして、自動変速機40には、その内部に入れられた潤滑油の温度(AT油温THO)を検出する油温センサ36が設けられている。これら各センサ32〜38の検出信号は、電子制御装置30に入力される。
【0035】
また、エンジン10には、極低温下での機関始動性を向上させるために、加熱器50が設けられている。この加熱器50は、エンジン10のシリンダブロックに当該加熱器50を固定するための固定部及び電熱ヒータ等から構成されており、同電熱ヒータはシリンダブロック内に形成された冷却水通路内に挿入されている。この加熱器50には、機関停止中に外部電源から電力が供給され、その電力によって機関冷却水が所定の温度以上に加熱される。なお、機関冷却水を加熱することができるのであれば、この加熱器50の配設位置は適宜変更することができる。
【0036】
上記電子制御装置30は、エンジン10の各種制御を実行するものであり、入出力回路や演算処理を実行するCPUの他、その演算結果や各種制御に際して参照されるデータを記憶するメモリ等を備えている。そして、エンジン10の各種制御の1つとして、高圧燃料配管から燃料噴射弁11に供給される燃料の供給圧、即ち燃料噴射圧を調整するための制御を実行する。
【0037】
この燃料圧制御に際しては、燃料噴射弁11から噴射される燃料噴霧を適度に微粒化して良好な燃焼状態を確保すべく、機関回転速度NEや燃料噴射量といった機関運転状態に基づいて燃料噴射圧の目標値、即ち上記燃料圧PFについての目標である目標燃料圧PFTが設定される。そして、燃料圧PFと目標燃料圧PFTとの偏差に基づき高圧燃料ポンプ22の燃料吐出量がフィードバック制御される。こうしたフィードバック制御が行われることにより、実際の燃料圧PFは目標燃料圧PFTと一致するようになり、燃料噴射圧が機関運転状態に応じた適切な圧力に制御されるようになる。
【0038】
ここで、極低温雰囲気では、高圧燃料配管においてOリング60が配設された部位の温度が極端な低温状態となっており、このような状態では同Oリング60の温度低下に起因して当該Oリング60の柔軟性は失われ、そのシール能力は低下するようになる。そのため、このような状態では、配管内の燃料圧PFが高く設定されている高圧燃料配管において、Oリング60が配される接続部から極微量ではあるものの燃料が洩れるおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態における燃料圧制御では、Oリング60のシール能力が維持されるように高圧燃料配管内の燃料圧PFを制御することにより、そうした燃料洩れを防止するようにしている。より具体的には、Oリング60の温度が低いときには、高圧燃料ポンプ22からの燃料吐出量を一時的に減少させて、高圧燃料配管内の燃料圧PFを低下させる燃料圧抑制処理を実行するようにしている。
【0040】
ここで、Oリング60の温度が低いか否かの判定は、当該Oリング60の温度と相関を有する冷却水温THWを参照することで、ある程度適切に行うことができる。
しかし、例えば極低温下にて機関始動がなされた場合にあって暖機途中に一旦機関停止がなされ、その後速やかに再始動されたときには、冷却水温THWは高いものの、Oリング60の温度は低いままになっている可能性がある。
【0041】
また、エンジン10に設けられた前記加熱器50を使用する場合には、機関始動時において、冷却水温THWは高いものの、Oリング60の温度は低くなっている可能性がある。
【0042】
こうした例にみられるように、冷却水温THWとOリング60の温度との相関は、場合によっては低くなることがあり、このように相関が低い状態では、上記燃料圧抑制処理を適切に実行することができないおそれがある。例えば、Oリング60の温度が低いにもかかわらず、冷却水温THWが高い場合には上記燃料圧抑制処理が実行されないため、燃料圧PFを低下させる必要があるにもかかわらず、これが行われなくなってしまうおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、Oリング60の温度と相関を有するエンジン10の温度状態量であって、冷却水温THWを含む複数の温度状態量のうちの少なくとも1つがOリング60のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低い場合に、上記燃料圧抑制処理を実行するようにしている。より具体的には冷却水温THW及びAT油温THOといった複数の温度状態量のうちの少なくともいずれかがOリング60のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低い場合に、上記燃料圧抑制処理を実行するようにしている。
【0044】
そして、このような態様で燃料圧抑制処理の実行可否を判定することにより、低温時における燃料洩れを防止するべく実行される同燃料圧抑制処理をより適切に実行することができるようにしている。
【0045】
なお、上記シール能力確保可能温度とは、Oリング60のシール能力を十分に確保することのできる最低温度のことをいう。また、シール能力確保可能温度に相当する温度とは、Oリング60の温度がシール能力確保可能温度となっているときの温度状態量の値、すなわち同Oリング60の温度がシール能力確保可能温度となっているときの冷却水温THWやAT油温THOの値のことをいう。
【0046】
ちなみに、Oリング60のシール能力低下による燃料洩れは、機関始動時のような機関冷間時に生じやすい。そこで、本実施形態では、上記温度状態量とシール能力確保可能温度に相当する温度との比較判定、及び燃料圧抑制処理を機関始動時に行うようにしているが、このような機関始動時に限らず、常にそうした比較判定及び燃料圧抑制処理を行うようにしてもよい。
【0047】
図3に、燃料圧抑制処理の実行可否判定処理ついてその処理手順を示す。なお、本処理は、機関始動がなされたときから燃料圧抑制処理が終了するまで、あるいは燃料圧抑制処理の実行が不要であると判定されるまで、電子制御装置30によって繰り返し実行される。
【0048】
本処理が実行されるとまず、冷却水温THW及びAT油温THOが読み込まれ、以下の条件(a)が成立しているか否かが判定される(S100)。
(a)「冷却水温THW<第1の水温判定値α1」または「AT油温THO<第1の油温判定値β1」。
【0049】
ここで、第1の水温判定値α1及び第1の油温判定値β1には、上述したようなシール能力確保可能温度に相当する温度が設定されている。
また、上記複数の温度状態量として、自動変速機40の油温であるAT油温THOを含むようにしているのは、以下の理由による。
【0050】
すなわち、自動変速機40の油温はエンジン10が搭載された車両の走行によって上昇するものであり、そうしたAT油温THOが低い場合には車両走行がそれほどなされておらず、換言すれば機関運転がそれほどなされておらず、当該エンジン10の高圧燃料配管に設けられたOリング60の温度は低くなっていると考えることができる。このように、AT油温THOは、Oリング60の温度と相関を有するエンジン10の温度状態量として採用することができるためである。また、特に自動変速機40には潤滑油の温度を検出する油温センサ36が設けられていることが多く、そうした油温センサ36にて検出されるAT油温THOを上記複数の温度状態量として含むようにすれば、同温度状態量を測定するためのセンサを別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができるためでもある。
【0051】
そして、ステップS100において、条件(a)が成立していない旨判定される場合には(S100:NO)、燃料圧抑制処理の実行が禁止され(S130)、本処理は一旦終了される。この場合の燃料圧PFは上記設定される目標燃料圧PFTに調整される。
【0052】
一方、ステップS100において、条件(a)が成立している旨判定される場合、換言すれば冷却水温THW及びAT油温THOといった複数の温度状態量のうちの少なくともいずれかが上記判定値よりも低くなっている場合には(S100:YES)、引き続き次のような処理が行われる。すなわち、Oリング60の温度が低くそのシール性能が低下しているため、高圧燃料配管の接続部、より詳細にはOリング60の配設部から燃料洩れが発生するおそれがあると仮判定され、ステップS110の処理が行われる。
【0053】
このステップS110では、以下の条件(b)が成立しているか否かが判定される。
(b)「冷却水温THW<第2の水温判定値α2」及び「AT油温THO<第2の油温判定値β2」。
【0054】
ここで、第2の水温判定値α2及び第2の油温判定値β2は、それぞれ第1の水温判定値α1及び第1の油温判定値β1よりも所定温度だけ高い温度が設定されている。すなわち第2の水温判定値α2及び第2の油温判定値β2には、Oリング60のシール能力が十分に大きく、高圧燃料配管におけるシール性が確保されていると判断できる程度に同Oリング60の温度が高くなっているときの冷却水温THW及びAT油温THOがそれぞれ設定されている。
【0055】
そして、ステップS110において、条件(b)が成立していない旨判定される場合(S110:NO)、即ち冷却水温THW及びAT油温THOの少なくともいずれかについて、Oリング60のシール能力が十分に大きくなっていると判断できる程度に高くなっている場合には、高圧燃料配管におけるシール性が確保されていると判断することができる。そのため、ステップS110において否定判定されるときには、燃料圧抑制処理の実行は禁止され(S130)、本処理は一旦終了される。なお、この場合の燃料圧PFは上記設定される目標燃料圧PFTに調整される。
【0056】
一方、ステップS110において、条件(b)が成立している旨判定される場合には(S110:YES)、Oリング60の温度が低くそのシール性能が低下しているため、高圧燃料配管の接続部から燃料洩れが発生するおそれがあると本判定され、燃料圧抑制処理の実行が許可される(S120)。このように燃料圧抑制処理の実行が許可されると、予め設定されている値であって、Oリング60の配設部から燃料が洩れてしまうことを防止できる程度の燃料圧力である低温用燃料圧PFLが上記目標燃料圧PFTとして設定される。従って、燃料圧抑制処理の実行が許可されると、燃料圧PFは低温用燃料圧PFLに調整され、これにより高圧燃料配管の接続部からの燃料洩れは防止される。そして、燃料圧抑制処理の実行が許可されると本処理は一旦終了される。
【0057】
こうした上記実行可否判定処理の実行により、機関始動に際して、冷却水温THWが第1の水温判定値α1よりも低い場合、またはAT油温THOが第1の油温判定値β1よりも低い場合には、燃料圧抑制処理が実行される。そして機関始動後において冷却水温THWやAT油温THOが上昇し、冷却水温THWが第2の水温判定値α2以上となった時点、またはAT油温THOが第2の油温判定値β2以上となった時点で燃料圧抑制処理は中止される。
【0058】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)Oリング60の温度と相関を有するエンジン10の温度状態量であって、冷却水温THWを含む複数の温度状態量、より具体的には冷却水温THW及びAT油温THOといった複数の温度状態量をOリング60のシール能力確保可能温度に相当する温度(第1の水温判定値α1や第1の油温判定値β1)と比較するようにしている。そして、冷却水温THW及びAT油温THOの少なくともいずれかが、同シール能力確保可能温度に相当する温度よりも低い場合には、燃料圧抑制処理を実行するようにしている。
【0059】
従って、冷却水温THWとOリング60の温度との相関が低くなるような状態であっても、Oリング60の温度と相関を有する他の温度状態量がOリング60のシール能力確保可能温度に相当する温度よりも低くなっていれば、燃料圧PFを低下させる燃料圧抑制処理は実行されるようになる。すなわち、Oリング60の温度が低くそのシール能力が確保されない状態を適切に判定することができ、もって低温時における燃料洩れを防止するべく実行される燃料圧抑制処理をより適切に実行することができるようになる。
【0060】
(2)燃料圧抑制処理の実行に際しては、予め設定された低温用の圧力(低温用燃料圧PFL)にまで燃料圧PFを低下させるようにしているため、燃料圧抑制処理の実行時における燃料圧PFを簡易な態様で低下させることができるようになる。
【0061】
(3)自動変速機40には潤滑油の温度を検出する油温センサ36が設けられていることが多く、そうした油温センサ36にて検出されるAT油温THOを前記複数の温度状態量として含むようにしている。そのため、冷却水温THWとは異なる前記温度状態量を測定するためのセンサを別途設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができるようになる。
【0062】
(4)筒内噴射用の燃料噴射弁11が接続される高圧燃料配管では、その内部の燃料圧PFが高く設定されるため、低温時におけるOリング60のシール能力低下に起因する燃料洩れが生じやすい。この点、本実施形態では、そうした高圧燃料配管の燃料圧制御において上記燃料圧抑制処理や同処理の実行可否判定処理を実行するようにしている。従って、そうした高圧燃料配管で生じやすい燃料洩れをより確実に防止することができるようになる。
【0063】
(5)前記加熱器50を備えるエンジン10では、機関始動時における冷却水温THWとOリング60の温度との相関が低くなりやすく、燃料圧抑制処理を適切に実行することができないおそれがある。この点、本実施形態によれば、同加熱器50を備えるエンジン10であっても燃料圧抑制処理を適切に実行することができるようになる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態においてエンジン10のクランクシャフトに接続される変速機は、自動変速機であったが、手動変速機であってもその内部の潤滑油の温度を検出する油温センサを設けるようにすれば、上記(1)、(2)、(4)、及び(5)と同様の効果を得ることができる。
【0065】
・近年の車両には、例えばエアーコンディショナの温度制御用として、外気温を検出する外気温センサ37(先の図1に破線にて示す)が設けられることが多い。そこで、例えば、エンジンの変速機として、油温センサ36を備えていないことが多い手動変速機を備える場合には、前記AT油温THOの代わりにこうした外気温を前記複数の温度状態量として採用することにより、同温度状態量を測定するためのセンサを別途設ける必要がなくなり、構成の簡素化を図ることができるようになる。なお、上記実施形態におけるAT油温THOをこの外気温に変更することも可能である。
【0066】
また、エンジン10の潤滑油の温度が低い場合には、機関運転がそれほどなされておらず、エンジン10の高圧燃料配管に設けられるOリング60の温度も低くなっていると考えることができる。従って、機関潤滑油の温度は、Oリング60の温度と相関を有する内燃機関の温度状態量として採用することができる。そこで、エンジン10のオイルパンなどに機関潤滑油の温度を検出するためのエンジン油温センサ38を設け(先の図1に破線にて示す)、こうした機関潤滑油の温度を前記複数の温度状態量として含むようにしても、同温度状態量を適切に検出することができるようになる。
【0067】
また、吸気温はエンジン10から発生する熱によって上昇しやすいため、同吸気温が低い場合にも、機関運転がそれほどなされておらず、エンジン10の高圧燃料配管に設けられるOリング60の温度は低くなっていると考えることができる。従って、前記吸気温センサ32によって検出される吸気温も、Oリング60の温度と相関を有する内燃機関の温度状態量として採用することができ、こうした吸気温を前記複数の温度状態量として含むようにしても、同温度状態量を適切に検出することができるようになる。
【0068】
また、高圧燃料配管内の燃料はOリング60に直接接触しており、その温度はOリング60の温度と高い相関性を有している。そこで、例えばデリバリパイプ20等に燃料温度を検出する燃温センサ39を設け(先の図1に破線にて示す)、そうした燃料温度を前記複数の温度状態量として含むようにすれば、Oリング60の温度が低くそのシール能力が確保されていない状態を判定する際に信頼性の高い判定結果が得られるようになる。
【0069】
これら変形例によるように、上記実施形態では、冷却水温THWを含む前記複数の温度状態量であって、同冷却水温THWとは異なる温度状態量としてAT油温THOを採用するようにしたが、同冷却水温THWとは異なる温度状態量として、外気温、機関潤滑油の温度、吸気温、あるいは燃料配管内の燃料温度等を採用することもできる。
【0070】
なお、上記実施形態では、冷却水温THWを含む複数の内燃機関の温度状態量として、冷却水温THW及びAT油温THOといった2つの温度状態量を用いるようにした。この他、冷却水温THWとは異なる温度状態量として、AT油温THO、外気温、機関潤滑油の温度、吸気温、及び燃料配管内の燃料温度のうちの少なくとも2つ以上の温度状態量を採用するようにしてもよい。すなわち、冷却水温THWを含む複数の内燃機関の温度状態量として、3つ以上の温度状態量を用いるようにしてもよい。
【0071】
・前記加熱器50を備えていない内燃機関であっても、上述したような不都合、すなわち冷却水温とOリング60の温度との相関が低くなっている状態では燃料圧抑制処理を適切に実行することができないといった不都合が発生するおそれがある。そこで、こうした内燃機関においても、上記燃料圧抑制処理や同処理の実行可否判定処理を実行することにより、上記(1)〜(4)に記載の効果を得ることができる。
【0072】
・筒内噴射式内燃機関の高圧燃料配管に限らず、吸気ポート噴射式内燃機関の燃料配管でも上述したようなOリング60は配設されている。また、高圧燃料配管内の燃料圧ほどではないにせよ、同吸気ポート噴射式内燃機関の燃料配管内にもある程度の燃料圧がかかっている。そのため、吸気ポート噴射式内燃機関の燃料配管においても、上記高圧燃料配管と同様に低温時の燃料洩れが発生するおそれがあり、そうした燃料配管を備える内燃機関において上記燃料圧抑制処理を実行する場合にも、上述したような不都合が発生するおそれがある。すなわち冷却水温とOリング60の温度との相関が低くなっている状態では燃料圧抑制処理を適切に実行することができないおそれがある。そこで、こうした吸気ポート噴射式内燃機関においても、上記燃料圧抑制処理や同処理の実行可否判定処理を実行することにより、上記(1)〜(3)、及び(5)に記載の効果を得ることができる。なお、一般に吸気ポート噴射式内燃機関の燃料供給系には、上記高圧燃料ポンプ22が設けられていない。そのため、上記実施形態と同様に、高圧燃料ポンプ22からの燃料吐出量を調量することで燃料圧を調整するといったことはできない。しかし、例えば前記フィードポンプ24の送油量を調整したり、デリバリパイプ20等の燃料配管系に燃料圧調整用のバルブを設け、同バルブの駆動制御を行うようにしたりする、といった種々の態様にて吸気ポート噴射式内燃機関においてその燃料配管内の燃料圧を調整することは可能である。
【0073】
・上記実施形態において燃料配管の接続部に配設されるシール部材はOリング60であった。この他、液状パッキン等、低温下においてシール性能の低下が生じるシール部材が配設されたものであれば、本発明は同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明にかかる燃料圧制御装置が適用される内燃機関、及びその周辺構成を示す概略図。
【図2】同実施形態におけるデリバリパイプと燃料噴射弁との接続部についてその部分断面を示す模式図。
【図3】同実施形態における燃料圧抑制処理の実行可否判定処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0075】
10…エンジン、11…燃料噴射弁、11a…燃料導入部、12…吸気通路、13…排気通路、14…スロットルバルブ、17…スロットルモータ、20…デリバリパイプ、21…燃料送油管、22…高圧燃料ポンプ、23…燃料タンク、24…フィードポンプ、30…電子制御装置、31…吸入空気量センサ、32…吸気温センサ、33…回転速度センサ、34…水温センサ、35…燃料圧センサ、36…油温センサ、37…外気温センサ、38…エンジン油温センサ、39…燃温センサ、40…自動変速機、50…加熱器、60…Oリング。




 

 


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