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発明の名称 ガス容器およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−10004(P2007−10004A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−190346(P2005−190346)
出願日 平成17年6月29日(2005.6.29)
代理人 【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
発明者 石川 武史
要約 課題
経時的なガスリークを適切に抑制し、気密性を高めることができるガス容器およびその製造方法を課題とする。

解決手段
少なくとも一部が中空円筒状のライナ構成部材21を複数個接合して構成された樹脂ライナ11と、樹脂ライナ11の外周に配置された補強層12と、を有するガス容器1であって、樹脂ライナ11に接合され、ライナ構成部材21,21間の接合境界40を覆う被覆部材4を備えたものである。被覆部材4は、接合境界40を外部から覆う。
特許請求の範囲
【請求項1】
少なくとも一部が中空円筒状のライナ構成部材を複数個接合して構成された樹脂ライナと、前記樹脂ライナの外周に配置された補強層と、を有するガス容器であって、
前記樹脂ライナに接合され、ライナ構成部材間の接合境界を覆う被覆部材を備えたガス容器。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記樹脂ライナと前記補強層との間に位置して、ライナ構成部材間の接合境界を外部から覆う請求項1に記載のガス容器。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記接合境界を含む両側のライナ構成部材の外周面に接合されている請求項2に記載のガス容器。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記ライナ構成部材と同種の樹脂材料からなる請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項5】
前記被覆部材の膨張係数は、前記ライナ構成部材の膨張係数より小さい請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項6】
前記被覆部材は、環状の部材である請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項7】
前記被覆部材は、レーザ溶着によりライナ構成部材同士の接合部分に接合されている請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項8】
前記被覆部材は、レーザ透過性を有し、
前記ライナ構成部材は、レーザ吸収性を有する請求項7に記載のガス容器。
【請求項9】
前記被覆部材は、接着剤によりライナ構成部材同士の接合部分に接合されている請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項10】
前記被覆部材とライナ構成部材同士の接合部分とを係合する係合構造を備えた請求項1ないし9のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項11】
前記被覆部材とライナ構成部材同士の接合部分との間には、これらの間をシールするシール部材が介装されている請求項1ないし10のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項12】
前記シール部材は、ライナ構成部材間の接合境界を挟んだ両側に位置し又は前記接合境界に接した状態で位置している請求項11に記載のガス容器。
【請求項13】
少なくとも一部が中空円筒状のライナ構成部材を複数個接合して構成された樹脂ライナと、前記樹脂ライナの外周に配置された補強層と、を有するガス容器の製造方法であって、
前記複数のライナ構成部材同士を接合して前記樹脂ライナを構成した後、ライナ構成部材間の接合境界を被覆部材で覆い、その後、前記被覆部材と前記樹脂ライナとを接合して、前記樹脂ライナの外周に前記補強層を配置するガス容器の製造方法。
【請求項14】
樹脂ライナと、前記樹脂ライナの外周に配置された補強層と、前記樹脂ライナの一端に設けられた口金と、を有するガス容器であって、
前記樹脂ライナおよび前記口金の少なくとも一つに接合され、前記樹脂ライナと前記口金との境界を覆う被覆部材を備えたガス容器。
【請求項15】
前記被覆部材は、前記樹脂ライナと前記口金との境界を、当該ガス容器の外部側から覆う請求項14に記載のガス容器。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ライナとその外周に配置した補強層とを有するガス容器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水素やCNG(圧縮天然ガス)を貯留するガス容器として、軽量化等の観点から、内殻を樹脂ライナで構成し、樹脂ライナの外周面をFRPなどの補強層(外殻)で補強したものが開発されている(例えば、特許文献1ないし4参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のガス容器の樹脂ライナは、お碗状の一対のライナ構成部材を接合して、全体として密閉円筒状としたものである。この場合、一対のライナ構成部材をポリエチレンなどの熱可塑性樹脂で形成し、一対のライナ構成部材の端部同士を熱板溶着することで、一体化された樹脂ライナを構成している。また、ライナ構成部材の縮径した端壁部に口金をインサート成形している。
【0004】
特許文献2や特許文献3に記載のガス容器は、ブロー成形の際に樹脂ライナと口金とを一体的に接合している。そして、樹脂ライナと口金との接合強度を高めるべく、口金に締付け部材を設けたり、口金と樹脂ライナとの間に凹凸形状を設けたりしている。
【特許文献1】特開2004−211783号公報(第2図および第5頁)
【特許文献2】特開平8−210388号公報
【特許文献3】特開平8−219389号公報
【特許文献4】特開2004−197812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のガス容器は、樹脂ライナを溶着によって継ぎ合わせて製造しているため、溶着時の位置決めや溶着時間によっては、ライナ構成部材同士の接合境界(溶接線)からガスがリークするおそれがあった。
また、このガスリークに関する問題は、特許文献1ないし3に記載の樹脂ライナと口金との境界においても生じることが考えられる。
【0006】
本発明は、経時的なガスリークを適切に抑制し、気密性を高めることができるガス容器およびその製造方法を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく、本発明のガス容器は、少なくとも一部が中空円筒状のライナ構成部材を複数個接合して構成された樹脂ライナと、樹脂ライナの外周に配置された補強層と、を有するガス容器であって、樹脂ライナに接合され、ライナ構成部材間の接合境界を覆う被覆部材を備えている。
【0008】
本発明のガス容器の製造方法は、少なくとも一部が中空円筒状のライナ構成部材を複数個接合して構成された樹脂ライナと、樹脂ライナの外周に配置された補強層と、を有するガス容器の製造方法であって、複数のライナ構成部材同士を接合して樹脂ライナを構成した後、ライナ構成部材間の接合境界を被覆部材で覆い、その後、被覆部材と樹脂ライナとを接合して、樹脂ライナの外周に補強層を配置するものである。
【0009】
これらの構成によれば、ライナ構成部材間の接合境界を被覆部材で覆っているため、接合境界からのガスのリークを遮断又はリーク経路を長くすることができる。これにより、ガス容器からの経時的なガスリークを適切に抑制することができ、ガス容器の気密性を高め得る。また、被覆部材により接合境界の強度を高め得る。
【0010】
ここで、「少なくとも一部(一端側)が中空円筒状のライナ構成部材」には、ライナ構成部材が全体として円筒状、環状、お碗状、ドーム状等の形状を有することが含まれる。例えば、一対の(半割りの)ライナ構成部材により樹脂ライナが構成される場合には、各ライナ構成部材は、全体としてお碗状に形成される。また、三以上のライナ構成部材により樹脂ライナが構成される場合には、樹脂ライナの両端のライナ構成部材はそれぞれ全体としてお碗状に形成され、この間に位置するライナ構成部材は全体として中空の円筒状または環状に形成される。
【0011】
本発明のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、樹脂ライナと補強層との間に位置して、ライナ構成部材間の接合境界を外部から覆うことが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、樹脂ライナに被覆部材を作業性良く接合することができる。
【0013】
この場合、被覆部材は、接合境界を含む両側のライナ構成部材の外周面に接合されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、ガスのリークをより一層抑制し得る。
【0015】
本発明のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、ライナ構成部材と同種の樹脂材料からなることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、被覆部材とライナ構成部材との接合性を高め得る。例えば、被覆部材とライナ構成部材との溶着性や接着性を高め得る。
【0017】
本発明の別の観点からすれば、被覆部材の膨張係数は、ライナ構成部材の膨張係数より小さいことが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、ガス容器の内圧に伴って樹脂ライナが膨張しても、被覆部材は樹脂ライナよりも小さい膨張量で膨張する。これにより、樹脂ライナと被覆部材との密着力を高めることができ、気密性を向上することができる。
【0019】
本発明のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、環状の部材であることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、ライナ構成部材間の接合境界を周方向に亘って被覆部材で覆うことができる。
【0021】
本発明のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、レーザ溶着によりライナ構成部材同士の接合部分に接合されていることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、熱的影響箇所を最小限にしつつ、ライナ構成部材同士の接合部分と被覆部材とを短時間且つ低コストで接合することができる。
【0023】
この場合、被覆部材はレーザ透過性を有し、ライナ構成部材はレーザ吸収性を有することが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、レーザに対する透過性または吸収性の特性を被覆部材またはライナ構成部材に持たせているため、これらを適切に接合することができる。
【0025】
本発明の好ましいガス容器の一態様によれば、被覆部材は、接着剤によりライナ構成部材同士の接合部分に接合されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、ライナ構成部材同士の接合部分と被覆部材とを簡易に接合することができる。なお、接着剤は、ガス透過性の低い材料であることが好ましい。
【0027】
本発明のガス容器の一態様によれば、被覆部材とライナ構成部材同士の接合部分とを係合する係合構造を備えたことが、好ましい。
【0028】
この構成によれば、製造過程において、被覆部材とライナ構成部材同士の接合部分とを係合構造により係合して、両者を接合することができる。これにより、治具などを用いずとも、両者の位置ずれを好適に抑制し得る。また、製造後においても、被覆部材とライナ構成部材同士の接合部分とは、係合構造により係合されているため、強度を高め得る。なお、係合構造は、例えば、被覆部材に設けた凹状の係合部と、ライナ構成部材同士の接合部分に設けられた凸状の係合受け部と、で構成すればよい。
【0029】
本発明のガス容器の一態様によれば、被覆部材とライナ構成部材同士の接合部分との間には、これらの間をシールするシール部材が介装されていることが、好ましい。
【0030】
この構成によれば、ガスのリークをより一層抑制することができる。
【0031】
この場合、シール部材は、ライナ構成部材間の接合境界を挟んだ両側に位置し又は接合境界に接した状態で位置していることが、好ましい。
【0032】
この構成によれば、例えば後者の位置の場合には、シール部材で接合境界を直接シールすることができる。
【0033】
本発明の他のガス容器は、樹脂ライナと、樹脂ライナの外周に配置された補強層と、樹脂ライナの一端に設けられた口金と、を有するガス容器であって、樹脂ライナおよび口金の少なくとも一つに接合され、樹脂ライナと口金との境界を覆う被覆部材を備えたものである。
【0034】
この構成によれば、樹脂ライナと口金との境界を被覆部材で覆っているため、この境界からのガスのリークを遮断又はリーク経路を長くすることができる。これにより、ガス容器からの経時的なガスリークを適切に抑制することができ、ガス容器の気密性を高め得る。また、この境界部分の強度を被覆部材により高め得る。なお、被覆部材は、樹脂ライナと口金との境界を覆いつつ、これらの両方に接合されることが好ましい。
【0035】
本発明の他のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、樹脂ライナと口金との境界を、ガス容器の外部側から覆うことが、好ましい。
【0036】
この構成によれば、樹脂ライナおよび/または口金に被覆部材を作業性良く接合することができる。
【0037】
本発明の他のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、樹脂ライナと同種の樹脂材料からなることが、好ましい。
【0038】
この構成によれば、被覆部材と樹脂ライナとの接合性を高め得る。
【0039】
本発明の別の観点からすれば、被覆部材の膨張係数は、樹脂ライナの膨張係数より小さいこと、が好ましい。
【0040】
この構成によれば、ガス容器の内圧により樹脂ライナと被覆部材との密着力が高まり、気密性を向上し得る。
【0041】
本発明の他のガス容器の一態様によれば、被覆部材は環状の部材であることが、好ましい。
【0042】
この構成によれば、樹脂ライナと口金との境界を周方向に亘って被覆部材で覆うことができる。
【0043】
本発明の他のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、樹脂ライナおよび口金の少なくとも一つに接着剤により接合されていることが、好ましい。
【0044】
この構成によれば、被覆部材を簡易に接合することができる。
【0045】
本発明の他のガス容器の一態様によれば、被覆部材は、樹脂ライナにレーザ溶着により接合されていることが、好ましい。
【0046】
この構成によれば、熱的影響箇所を最小限にしつつ、被覆部材と樹脂ライナとを短時間且つ低コストで接合することができる。
【0047】
本発明の他のガス容器の一態様によれば、被覆部材と前記境界の近傍との間には、これらの間をシールするシール部材が介装されていることが、好ましい。
【0048】
この構成によれば、ガスのリークをより一層抑制することができる。
【0049】
この場合、シール部材は、前記境界を含む両側に位置し又は前記境界に接した状態で位置していることが、好ましい。
【発明の効果】
【0050】
以上説明した本発明のガス容器およびその製造方法によれば、経時的なガスリークを適切に抑制し、気密性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るガス容器およびその製造方法について説明する。このガス容器は、樹脂ライナの構成要素であるライナ構成部材間の接合境界や、樹脂ライナと口金との境界を被覆部材で覆うことで、ガスのリークを抑制したものである。以下の第1実施形態〜第3実施形態では、ライナ構成部材間の接合境界を被覆部材で覆ったガス容器について説明する。第4実施形態以降では、口金側に被覆部材を設けたガス容器について説明する。なお、第2実施形態以降では、第1実施形態と共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
<第1実施形態>
図1に示すように、ガス容器1は、全体として密閉円筒状の容器本体2と、容器本体2の長手方向の両端部に取り付けられた口金3,3と、容器本体2のライナ間のつなぎ目に設けられたパッチ4(被覆部材)と、を具備している。容器本体2の内部は、各種のガスを貯留する貯留空間5となっている。ガス容器1は、常圧のガスを充填することもできるし、常圧に比して圧力が高められたガスを充填することもできる。すなわち、本発明のガス容器1は、高圧ガス容器として機能することができる。
【0053】
例えば、燃料電池システムでは、高圧の状態で用意された燃料ガスを減圧して、燃料電池の発電に供している。本発明のガス容器1は、高圧の燃料ガスを貯留するのに適用することができ、燃料ガスとしての水素や、原燃料の圧縮天然ガス(CNG)などを貯留することができる。ガス容器1に充填される水素の圧力としては、例えば35MPaあるいは70MPaであり、CNGの圧力としては、例えば20MPaである。以下は、高圧水素ガス容器を一例に説明する。
【0054】
容器本体2は、ガスバリア性を有する内側の樹脂ライナ11(内殻)と、樹脂ライナ11の外周に配置された補強層12(外殻)と、の二層構造を有している。補強層12は、例えば炭素繊維とエポキシ樹脂を含むFRPからなる。補強層12は、樹脂ライナ11の外表面およびパッチ4の外表面を被覆するようにこれらを巻きつけている。
【0055】
口金3は、例えばステンレスなどの金属で形成され、容器本体2の半球面状をした端壁部の中心に設けられている。口金3の開口部の内周面には、めねじが刻設されており、配管やバルブアッセンブリ14(バルブボデー)などの機能部品が、このめねじを介して口金3にねじ込み接続可能となっている。なお、図1では、一の口金3にのみに設けたバルブアッセンブリ14を二点鎖線で示した。
【0056】
例えば、燃料電池システム上のガス容器1は、バルブや継手等の配管要素を一体的に組み込んだバルブアッセンブリ14を介して、貯留空間5と図示省略した外部のガス流路との間が接続される。そして、バルブアッセンブリ14およびガス流路を通って、貯留空間5に水素が充填されると共に貯留空間5から水素が放出される。
【0057】
樹脂ライナ11は、長手方向の中央で二分割された一対のライナ構成部材21,21(割体)を接合して構成されている。すなわち、樹脂ライナ11は、ほぼ同形状の半割り中空体からなる一対のライナ構成部材21,21同士を接合して、密閉型(ただし、口金3側の開口を除く。)の容器状となる。樹脂ライナ11を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などが挙げられる。
【0058】
ライナ構成部材21は、回転成形やブロー成形などの各種の成形法で形成することができ、本実施形態では、成形精度が良好な射出成形により形成されている。射出成形の際に、ライナ構成部材21と口金3とを一体的に結合(接合)することができる。すなわち、口金3にライナ構成部材21をインサート成形(一体成形)している。
【0059】
ライナ構成部材21は、樹脂ライナ11の軸方向に所定の長さで延在する胴部31を有している。胴部31の軸方向の両端側は、開口しており、口金3がインサート成形された一端側32は、他端側の略円筒状の接合部33に比べて縮径している。なお、二つのライナ構成部材21,21にそれぞれ口金3,3を設けたが、一方のライナ構成部材21の口金3を省略した場合には、胴部31の一端側32は閉塞端となる。
【0060】
ここで、本明細書では、ライナ構成部材21とは、分割構造の樹脂ライナ11を構成する部材をいい、上述のように、少なくとも一端側(一部)が中空円筒状の形状を有するものをいう。したがって、ライナ構成部材21の形状には、その全体の形状が円筒状、環状、お碗状、ドーム状等であることが含まれる。
【0061】
一対のライナ構成部材21,21は、互いの接合部33,33の端面同士を突き合わせて、その端面同士が所定の溶接法で接合されている。所定の溶接法は、熱板溶接や、電子ビーム溶接など各種の方法を用いることができ、本実施形態では、接合部33周辺への熱的影響箇所を最小限にして短時間で接合可能なレーザ溶接を用いている。
【0062】
レーザ溶接により、接合部33,33の端面同士が溶融して固化し、この端面同士を樹脂ライナ11の周方向に亘って一体的に接合した溶着部が形成される。この溶着部は、ライナ構成部材21,21間の接合境界、またはつなぎ目などと言い換えることができる。以下の説明では、この溶着部を主として「接合境界40」と記載する。また、以下の説明では、接合境界40およびこれを挟む接合部33,33からなる領域、すなわちパッチ4が面する樹脂ライナ11の領域を、ライナ構成部材21,21同士の接合部分41と記載する。
【0063】
なお、一方の接合部33の接合端面をテーパ状とし、他方の接合部33の接合端面を逆テーパ状とすることが好ましい。こうすることで、溶融面積を好適に確保することができ、樹脂ライナ11の接合強度などを向上することができる。
【0064】
図1ないし図3に示すように、被覆部材としてのパッチ4は、樹脂ライナ11と補強層12との間に位置して、接合境界40を外部から周方向に亘って覆っている。パッチ4は、環状の部材からなり、接合部分41の外径に対応した内径を有している。このため、パッチ4の内側に樹脂ライナ11をその軸方向から挿入すると、パッチ4の内周面が接合部分41の外周面に密着するようになっている。
【0065】
パッチ4は、接合境界40を含む両側のライナ構成部材21,21に例えば均等に密着して、これらに接合される。すなわち、パッチ4の軸方向の半部(幅方向の半部)は、一方のライナ構成部材21の接合部33に密着して接合され、パッチ4の軸方向の残りの半部は、他方のライナ構成部材21の接合部33に密着して接合される。
【0066】
パッチ4の軸方向の長さは、接合境界40とその近傍とを被覆可能な程度であればよく、例えば1cm〜2cmであり、好ましくは1.5cmである。また、パッチ4の厚みは、樹脂ライナ11や補強層12の厚みよりも小さいことが好ましく、好ましくは0.1cmまたは樹脂ライナ11の1/5であり、より好ましくは0.25cmまたは樹脂ライナ11の1/2である。
【0067】
パッチ4は、アルミニウムなどの金属、ガラス繊維布、または硬質の樹脂により形成することができる。この硬質の樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることができる。本実施形態のパッチ4は、樹脂ライナ11と同種の樹脂材料で形成されている。すなわち、樹脂製パッチ4は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などで形成されている。このように、同種の樹脂材料とすることで、パッチ4と樹脂ライナ11との接合性を高めることが可能となる。
【0068】
パッチ4は、例えば溶接法により接合部分41に接合される。溶接法は、超音波溶接やスポット溶接など適宜の方法を用いることができるが、本実施形態では、ライナ構成部材21,21同士の接合と同様にレーザ溶接を用いている。レーザ溶接が好適に行われるように、好ましい態様におけるパッチ4および樹脂ライナ11は、レーザに対する所定の特性を有している。
【0069】
具体的には、パッチ4は、レーザ透過性の熱可塑性樹脂で形成され、ライナ構成部材21は、レーザ吸収性の熱可塑性樹脂で形成される。レーザ透過性の熱可塑性樹脂は、レーザ溶着に必要なエネルギーをレーザ吸収性側の接合部分41に到達させる程度に、レーザに対する透過性を有していればよい。したがって、レーザ透過性の熱可塑性樹脂であっても、レーザ吸収性の特性を僅かに有していてもよい。
【0070】
レーザ透過性の熱可塑性樹脂としては、上記した例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などを挙げることができるが、これらにガラス繊維などの補強繊維や着色剤を添加したものであってもよい。例えば、レーザ透過性のパッチ4は、白色、半透明または透明に形成される。
【0071】
レーザ吸収性の熱可塑性樹脂は、レーザに対する吸収性を有していればよく、吸収したレーザにより発熱して溶融するものであればよい。レーザ吸収性の熱可塑性樹脂としては、上記した例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などを挙げることができるが、これらにガラス繊維などの補強繊維や着色剤を添加したものであってもよい。例えば、レーザ吸収性の熱可塑性樹脂が、レーザ透過性の熱可塑性樹脂と同一の樹脂である場合には、レーザ透過性の熱可塑性樹脂よりもカーボンを多く添加することで形成される。この場合には、接合部分41は、例えば黒色に形成される。
【0072】
パッチ4と接合部分41とは、これらの周方向に亘ってレーザ溶着により互いに接合されている。レーザ溶着は、パッチ4の外側から図示省略したレーザトーチによりレーザを照射し、接合部分41の外周面の樹脂を加熱溶融すると共に、この外周面からの熱伝達によりパッチ4の内周面の樹脂を加熱溶融することで行われる。
【0073】
したがって、レーザ溶着後には、パッチ4と接合部分41との間には、レーザ吸収性およびレーザ透過性の両方の樹脂が入り絡まった状態の溶着部が存在する。溶着部は、パッチ4の内周面の全領域を接合部分41に溶着した部分であってもよいし、パッチ4の内周面を部分的に接合部分41に溶着した部位であってもよい。本実施形態では部分的溶接を施して、図3に溶着部の溶接ライン42,42を示すように、パッチ4の両側の内周縁部を接合部分41にレーザ溶着している。
【0074】
なお、レーザ溶着のための特性を考慮すると、パッチ4および接合部分41の少なくとも一方には、発熱性材料を含ませておくとよい。こうすることで、レーザ溶着の際の樹脂の溶融を促進することができ、より一層適切に接合することができる。発熱性材料は、セラミックス、黒鉛、樹脂および金属の少なくも一つであればよい。また、発熱性材料は塗布により設けてもよいし、発熱性材料を練入したシートを貼付することで設けるようにしてもよい。
【0075】
また、レーザ溶着のための特性を考慮すると、ライナ構成部材21全体にレーザ吸収性をもたせるのではなく、接合部分41のみがレーザ吸収性を有していてもよい。
例えば、ライナ構成部材21,21の一方をレーザ吸収性の樹脂で、他方をレーザ透過性の樹脂で形成した場合には、ライナ構成部材21,21同士による形成される接合部分41は、その半部がレーザ透過性となってしまう。この場合には、接合部分41とパッチ4とをレーザ溶着する前に、接合部分41の外周面にレーザ吸収性を有する吸収剤を塗布したり、この種の吸収剤を練入したシートを貼付したりして、接合部分41の全外周面にレーザ吸収性の特性をもたせればよい。
【0076】
図4は、パッチ4と接合部分41とを他の接合法により接合した例を示す断面図である。
パッチ4は、接着剤により接合部分41の外周面に接合されている。このため、パッチ4と接合部分41との間には、接着剤による接着層50が介在している。接着層50は、パッチ4の内周面の全域を接合部分41に接合させている。
【0077】
接着層50の接着剤は、エポキシ等を主成分とする熱硬化系のものや、液状ガスケット(FIPG:Formed In Place Gasket)系のものを用いることができる。液状ガスケットは、接着後の断面積が極力小さくなるように、シール厚が小さいものを用いることが好ましい。また、接着剤は、ガス透過性の低い材料を用いることが好ましく、そのガス透過性は、樹脂ライナ11やパッチ4のそれよりも低いことが好ましい。また、接着剤は、水素吸着性能を有する材料を用いてもよい。この種の接着剤は、例えばエポキシを主成分として、水素吸蔵合金、活性炭素繊維、活性炭素粉末、カーボンナノチューブなどを少なくとも一種類添加してもよい。
【0078】
ここで、ガス容器1の製造方法について簡単に説明する。
先ず、例えば、予め成形した一の口金3を金型内に配置し、この金型内に所定の熱可塑性樹脂を射出して、ライナ構成部材21および口金3を一体成形する。この口金3付きライナ構成部材21を二組製造する。次に、ライナ構成部材21,21同士の接合部33,33同士を面接触させ、この部分を周方向に亘ってレーザ溶着する。レーザ溶着後の接合部分41を外側からパッチ4で覆い、接合部分41とパッチ4とをレーザ溶着または接着剤等で接合する。その後、フィラメントワインディング法等により樹脂ライナ11およびパッチ4の外表面に補強層12を形成することで、ガス容器1が製造される。
【0079】
なお、ライナ構成部材21,21同士のレーザ溶着や、接合部分41とパッチ4とのレーザ溶着に先行して、これらを予備加熱しておくことが好ましい。これにより、レーザ溶着時の表面焼けを抑制できると共に、レーザ溶着を短時間にできる。また、接合部分41とパッチ4とのレーザ溶着の際には、これらの間がより一層密着するように、樹脂ライナ11の内外に圧力差を付与してもよい。圧力差の付与は、例えば口金3の開口部を利用して、樹脂ライナ11の内部の密閉空間を減圧または加圧すればよい。さらに、レーザ溶着を低酸素雰囲気で行うようにするとよい。
【0080】
ここで、本発明のガス容器1の作用について従来のガス容器1´と比較して説明する。
図5は、従来のガス容器1´の接合部分41´を拡大して示す図である。一般に、接合境界40´では、ガス容器1´内の水素ガスの濃縮により局所的にガス圧が高まり易い。このため、接合境界40´を起点として、経時的に水素ガスがリークする可能性があった。また、接合境界40´には応力集中等が働き、樹脂ライナ11´の強度低下のおそれがあった。
【0081】
図6は、本発明のガス容器1の接合部分41を拡大して示す図である。上記のように、接合部分41を塞ぐように覆うパッチ4により、接合境界40を起点とした経時的な水素ガスのリークを遮断することができる。また、完全に遮断できないとしても、水素ガスのリーク経路が長くなるため、単位時間当たりのリーク量を減少することができる。
【0082】
すなわち、図5に示す従来のリーク経路(樹脂ライナ11´の厚みに相当)に比べて、図6に示す本発明のリーク経路は、パッチ4の軸方向の長さだけ長くなるため、単位時間当たりの水素ガスのリークを適切に抑制することができる。また、パッチ4の厚さ分だけ接合部分41の肉厚が増加するため、接合部分41周辺の剛性が高くなり、樹脂ライナ11の強度を向上することができる。
【0083】
以上のように、本実施形態のガス容器1によれば、接合境界40をパッチ4で覆っているため、経時的な水素ガスのリークを適切に抑制することができ、気密性や強度を高めることができる。
【0084】
なお、パッチ4を半リング形状や1/3リング形状など、適宜の分割リング形状としてもよい。こうすることで、特に接着剤によりパッチ4を接合部分41に接合する場合の作業性を高めることができる。この場合、分割したパッチ4(パッチのピース)を接合部分41に接合した後、パッチ4間(パッチのピース同士)も接着剤等により接合することが好ましい。
【0085】
また、本発明のガス容器1は、接合部分41をその内側からパッチ4で覆うようにする態様を排除するものではない。この場合には、パッチ4を分割リングで形成し、このパッチ4を口金3の開口部から樹脂ライナ11内に挿入して、接合部分41に接合すればよい。なお、ライナ構成部材21が二つの場合について説明したが、三つ以上も同様である。すなわち、本発明は、軸方向に並ぶ複数のライナ構成部材を接合した樹脂ライナ11に適用することができる。
【0086】
以上、適宜説明した変形例は、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、後述の他の実施形態においても適用することができる。
【0087】
<第2実施形態>
次に、図7を参照して、第2実施形態に係るガス容器1について相違点を中心に説明する。第1実施形態との相違点は、パッチ4と接合部分41とを係合する係合構造60を設けたことである。
【0088】
係合構造60は、パッチ4の内周面に形成された凹溝状の係合部61と、接合部分41に形成された凸状の係合受け部62と、で構成されている。係合部61は、パッチ4の内周面の中央に周方向に亘って形成されている。パッチ4は、単一の環状部材であってもよいが、係合構造60を考慮すると、上記した分割リング構造が好ましい。
【0089】
係合受け部62は、係合部61に対応して、接合部分41の外周面に周方向に亘って形成されている。すなわち、係合受け部62は、一対のライナ構成部材21,21の各接合部33,33に形成された環状突部からなる。係合部61が係合受け部62に係合した状態では、パッチ4は、係合部61の底面65が接合部分41に接触してこれを覆うと共に、係合部61の両外側の内周面66,67が樹脂ライナ11の外周面に接触する。この状態で、パッチ4と接合部分41とがレーザ溶着や接着剤等によって接合される。
【0090】
本実施形態によれば、パッチ4が、係合構造60により接合部分41を保持するようになるため、接合部分41の強度を高めることができる。また、パッチ4を接合部分41に接合する際に、係合構造60により両者の位置ずれを好適に抑制することができ、接合精度を高め得る。さらに、第1実施形態よりも、接合境界40を起点としてリーク経路が長くなるため、経時的な水素ガス(高圧ガス)のリークを適切に抑制することができる。
【0091】
また、ガス容器1の内部に水素ガスを充填すると、その内圧によって、半径応力、軸応力および円周応力が作用する。それゆえ、図示矢印方向に、樹脂ライナ11が半径方向において膨張するような力が作用すると共に、接合界面40においてライナ構成部材21,2同士が分離するような力が作用する。上記の係合構造60を備えたパッチ4によれば、接合界面40におけるライナ構成部材21,21同士の分離を構造上、抑制することができる。
【0092】
ガス充填時の内圧に伴うガス容器1の変形を考慮すると、パッチ4には、樹脂ライナ11よりも膨張係数の小さい材料を用いることが好ましい。こうすることで、樹脂ライナ11の膨張量よりもパッチ4の膨張量が小さくなる。つまり、パッチ4が、接合部分41よりも径方向に膨張しないようになる。これにより、ガス充填時のパッチ4と接合部分41との密着力を高めることができ、ガス容器1の気密性をより一層向上することができる。この点、第1実施形態も同様であり、第1実施形態のパッチ4も樹脂ライナ11より膨張係数が小さいことが好ましい。
【0093】
なお、係合構造60として凹凸構造を例に説明したがこれに限るものではない。例えば、係合構造60として螺合構造を用いてもよい。その場合には、パッチ4の内周面にめねじを刻設し、接合部分41の外周面におねじを刻設すればよい。
【0094】
<第3実施形態>
次に、図8および図9を参照して、第3実施形態に係るガス容器1について相違点を中心に説明する。第1実施形態との相違点は、パッチ4と樹脂ライナ11の接合部分41との間に位置し、パッチ4と接合部分41との間をシールするためのシール部材(71,72,91)を介装したことである。
【0095】
図8に示すように、シール部材71,72は、接合境界40を挟んだ(含んだ)両側の位置に一対が設けられている。各シール部材71,72は、Oリングからなる。一方、パッチ4には、各シール部材71,72を装着するための一対の環状溝81,82が形成されている。パッチ4は、一対の環状溝81,82間の内周面84が接合境界40の位置で樹脂ライナ11に面接触して接合されると共に、各環状溝81,82の外側の内周面85,86が接合境界40の近傍で樹脂ライナ11に面接触して接合される。このような構成により、接合境界40から水素ガスがリークしても、一対のシール部材71,72によって、さらなるリークを遮断することができる。
【0096】
図9は、シール部材の他の態様を示している。
図9に示すように、シール部材91は、接合境界40に接した状態で設けられている。パッチ4には、シール部材91を配置するための環状溝92が形成されている。シール部材91は、シール機能を有するゴムで構成すればよく、環状溝92に焼付け等によって固着されている。パッチ4は、環状溝92の外側の内周面94,95が接合境界40の近傍で樹脂ライナ11に面接触して接合される。したがって、シール部材91により接合境界40を外側から直接押さえつけるため、接合境界40からの水素ガスのリークを遮断することができる。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、いずれのシール部材(71と72、又は91)の態様であっても、経時的な水素ガスのリークをより一層抑制することができる。特に、ガス貯蔵時の内圧に起因した樹脂ライナ11の膨張により、シール部材(71,72,91)はより潰れ込むようになるため、容器内圧が高圧であるほど、シール性が高まる構造となる。なお、本実施形態のシール構造と実施形態2の係合構造60とを併用してもよい。
【0098】
<第4実施形態>
次に、図10を参照して、第4実施形態に係るガス容器1について相違点を中心に説明する。上記各実施形態との相違点は、上記のような被覆部材としてのパッチ101を口金3側に設け、口金3と樹脂ライナ11との間からの水素ガスのリークを抑制した点である。
【0099】
図10に示すように、パッチ101は、樹脂ライナ11と口金3との周方向に亘る境界110(つなぎ目)を、ガス容器1の外部から周方向に亘って覆っている。パッチ101は、アルミニウムなどの金属、ガラス繊維布、またはエポキシ樹脂などの硬質の樹脂により形成することができる。例えば、パッチ101は、樹脂ライナ11と同種の熱可塑性の樹脂材料で形成され、レーザ透過性を有している。これに対応して、樹脂ライナ11(ライナ構成部材21)は、レーザ吸収性を有している。レーザに対する特性については、第1実施形態で説明した内容を適用することができる。
【0100】
パッチ101は、環状の部材からなり、その内側に口金3を挿入可能に構成されている。パッチ101は、樹脂ライナ11の外周面に接合される環状の第1の接合面121と、口金3の外周面に接合される環状の第2の接合面122と、を有している。
【0101】
詳細には、第1の接合面121は、樹脂ライナ11の半球面状をした端壁部32の外周面に対応して形成され、接合状態で端壁部32の外周面に密着する。第2の接合面122は、口金3のテーパ部3aの外周面に対応して形成され、接合状態で口金3の外周面に密着する。第1の接合面121は、パッチ101の端面により形成され、第2の接合面122は、パッチ101の中空部を構成する内周面により形成されている。
【0102】
第1の接合面121は、その外周縁がレーザ溶着により端壁部32の外周面に周方向に亘って接合されている。そのレーザ溶着部を符号131で示す。なお、第1の接合面121と端壁部32とを他の溶接法や接着剤により接合してもよい。
【0103】
第2の接合面122は、その全面が接着剤によりテーパ部3aの外周面に周方向に亘って接合されている。その接着剤による接着層を符号132で示す。接着剤は、第1実施形態で説明した接着層50の接着剤と同様に、熱硬化系接着剤や液状ガスケットを用いることができ、シール厚が小さいことが好ましい。また、接着剤は、樹脂ライナ11やパッチ101よりもガス透過性の低い材料であることが好ましい。
【0104】
本実施形態のガス容器1の製造過程においては、口金3付きのライナ構成部材21を互いに接合するレーザ溶着に前後して、パッチ101を口金3の外周側にはめ込み、口金3とライナ構成部材21との境界110をパッチ101で覆うようにする。そして、パッチ101の第1の接合面121を口金3にレーザ溶着で接合し、パッチ101の第2の接合面122をライナ構成部材21に接着剤で接合する。また、ライナ構成部材21,21間の接合境界(40)をパッチ(4)で覆う。最終的に、フィラメントワインディング法等により樹脂ライナ11の外表面に補強層12を形成する。補強層12と樹脂ライナ11との間に、本実施形態のパッチ101および第1実施形態のパッチ(4)が位置するようになり、ガス容器1が製造される。
【0105】
なお、第1実施形態と同様に、レーザ溶着が良好に行われるように、パッチ101とライナ構成部材21とを予備加熱してもよい。また同様に、パッチ101とライナ構成部材21との間がより一層密着するように、レーザ溶着の際に樹脂ライナ11の内外に圧力差を付与してもよいし、レーザ溶着を低酸素雰囲気で行うようにしてもよい。
【0106】
ここで、本発明のガス容器1の作用について従来のガス容器1´´と比較して説明する。
図11は、従来のガス容器1´´を示す図である。ガス容器1´´の製造上、境界110´´を起点として、経時的に水素ガスがリークする可能性があった。また、境界110´´には応力集中等が働き、強度に悪影響を与えるおそれがあった。
【0107】
図12は、本発明のガス容器1を示す図である。上記のように、境界110を塞ぐように覆うパッチ101により、境界110を起点とした経時的な水素ガスのリークを遮断することができる。また、完全に遮断できないとしても、水素ガスのリーク経路がテーパ部3aの長さだけ長くなるため、単位時間当たりのリーク量を減少することができる。さらに、パッチ101によって、口金3周辺の剛性が高くなり、この部分の強度を向上することができる。また、一般に口金3は振動や配管要素からの外力によって緩むことがあるが、パッチ101が口金3と樹脂ライナ11との両者に亘って接合しているため、口金3の緩みも好適に抑制することができる。
【0108】
以上のように、本実施形態のガス容器1によれば、口金3とライナ構成部材21との境界110をパッチ101で覆っているため、経時的な水素ガスのリークを適切に抑制することができ、気密性や強度を高めることができる。特に、パッチ101の材料として樹脂ライナ11の材料よりも膨張係数の小さいものを用いれば、ガス貯蔵時の樹脂ライナ11の膨張の際に、パッチ101とライナ構成部材21との間の密着力を高めることができる。これにより、気密性をより一層向上することができる。
【0109】
なお、本発明のガス容器1は、その内側から境界110をパッチ101で覆うようにする態様を排除するものではない。また、パッチ101を樹脂ライナ11にのみ、あるいはパッチ101を口金3にのみ接合するようにしてもよいが、上記のように、パッチ101を両者に接合した方がガスのリークを適切に抑制することができる。
【0110】
<第5実施形態>
次に、図13および図14を参照して、第5実施形態に係るガス容器1について相違点を中心に説明する。第4実施形態との相違点は、パッチ101と境界110の近傍との間に、これらの間をシールするためのシール部材(141,142,150)を介装したことである。
【0111】
図13に示すように、二つのシール部材141,142は、Oリングからなり、境界110を挟んだ両側の位置に設けられている。一方のシール部材141は、パッチ101の端面に形成した環状溝145に装着されて、パッチ101と端壁部32との間をシールする。他方のシール部材142は、パッチ101の内周面に形成した環状溝146に装着されて、パッチ101とテーパ部3aとの間をシールする。
【0112】
そして、パッチ101は、環状溝145を除く端面の部分(例えば外周縁部)が端壁部32に例えばレーザ溶接で接合され、環状溝146を除く内周面の部分がテーパ部3aに接着剤で接合される。このような構成により、境界110から水素ガスがリークしても、二つのシール部材141,142によって、さらなるリークを遮断することができる。
【0113】
図14は、シール部材の他の態様を示している。
図14に示すように、シール部材150は、境界110に接した状態で設けられ、さらに境界110を挟んだ両側にも延在している。シール部材150は、シール機能を有するゴムで構成すればよく、パッチ101に焼付け等によって予め固着されている。すなわち、シール部材150は、第1の接合面121に固着された第1のシール層151と、第2の接合面122に固着された第2のシール層152と、を連ねて構成されており、第1のシール層151と第2のシール層152との交差部が境界110に接している。
【0114】
この場合には、パッチ101は、シール部材150を介して端壁部32およびテーパ部3aの両者に接着剤により接合されている。したがって、シール部材150により境界110を外側から直接押さえつけて塞ぐため、境界110からの水素ガスのリークを確実性良く遮断することができる。
【0115】
以上のように、本実施形態によれば、いずれのシール部材(141と142、または150)の態様であっても、経時的な水素ガスのリークをより一層抑制することができる。特に、パッチ101の材料を樹脂ライナ11の材料よりも膨張係数の小さいものを用いれば、ガス貯蔵時の内圧に起因した樹脂ライナ11の膨張時に、シール部材(141,142,150)はより潰れ込むようになり、シール性が高まる。容器内圧が高圧であるほど、シール性が高まる構造となり、ガス容器1の気密性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
上記した本発明のガス容器1は、燃料電池システムを搭載した車両などに用いるのに好適である。また、車両以外の航空機や船舶など、ガス容器1に貯留されたガスを動力源として用いる輸送機関にも、本発明のガス容器1を好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1実施形態に係るガス容器の断面図である。
【図2】第1実施形態に係るガス容器の樹脂ライナと被覆部材とを分解して示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るガス容器の一部を裁断して示す断面図である。
【図4】第1実施形態の変形例に係るガス容器の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】従来のガス容器のガスのリークについて説明する断面図である。
【図6】第1実施形態にガス容器のガスのリークについて説明する断面図である。
【図7】第2実施形態に係るガス容器の係合構造を示す断面図であり、(a)係合前の状態、(b)係合後の状態を示すものである。
【図8】第3実施形態に係るガス容器の一部を拡大して示す断面図である。
【図9】第3実施形態の変形例に係るガス容器の一部を拡大して示す断面図である。
【図10】第4実施形態に係るガス容器を示す図であり、(a)口金まわりの断面図、(b)口金まわりの側面図である。
【図11】従来のガス容器のガスのリークについて説明する断面図である。
【図12】第4実施形態に係るガス容器のガスのリークについて説明する断面図である。
【図13】第5実施形態に係るガス容器の一部を拡大して示す断面図である。
【図14】第5実施形態に係るガス容器の一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1:ガス容器、3:口金、4:パッチ(被覆部材)、11:樹脂ライナ、12:補強層、21:ライナ構成部材、40:接合境界、41:接合部分、50:接着層、60:係合構造60、71,72,91:シール部材、101:パッチ(被覆部材)、141,142,150:シール部材





 

 


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