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発明の名称 スプロケット
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9973(P2007−9973A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−189493(P2005−189493)
出願日 平成17年6月29日(2005.6.29)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 菊地 安信
要約 課題
振動や騒音が長期間に渡って効果的に抑制されるスプロケットを提供する。

解決手段
アイドルスプロケット51は、軸101を中心に延在する環状部62と噛み合い歯63を有するスプロケット本体61と、リング状のクッションゴム71とを備える。スプロケット本体61は、環状部62の外周上でチェーン24を係合させ、軸101を中心に回転する。クッションゴム71は、環状部62の外周面62aとの間に隙間72を設けて配置され、環状部62に回転自在に嵌め合わされている。クッションゴム71は、周方向に間隔を隔てた3以上の位置でチェーン24に接触する接触面71aを有する。クッションゴム71は、チェーン24と接触面71aとが接触することによって厚み方向に変形する。軸101に直交する平面でクッションゴム71を切断した場合に、接触面71aを規定する曲線が略真円となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
内燃機関のタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットであって、
環状部と噛み合い部からなるスプロケット本体と、
前記環状部の外周面との間に隙間を設けて配置され、前記環状部に回転自在に嵌め合わされたリング状の弾性部材とを備え、
前記弾性部材は、周方向に間隔を隔てた3以上の位置で前記タイミングチェーンに接触する接触面を有し、前記タイミングチェーンと前記接触面とが接触することによって厚み方向に変形し、
スプロケットの回転軸に直交する平面で前記弾性部材を切断した場合に、前記接触面を規定する曲線が略真円となる、スプロケット。
【請求項2】
前記環状部の外周面と向い合う前記弾性部材の内周面には、金属製のリング部材が固着されている、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項3】
前記環状部の外周面と前記弾性部材との間の隙間に油を供給する油供給機構をさらに備える、請求項1または2に記載のスプロケット。
【請求項4】
前記内燃機関は、V型多気筒エンジンであり、
前記V型多気筒エンジンの両バンクの間に配置され、その両バンクのカムシャフト間に掛け渡された前記タイミングチェーンの軌道を規制している、請求項1から3のいずれか1項に記載のスプロケット。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、内燃機関のタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットに関し、より特定的には、V型多気筒エンジンのタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプロケットに関して、たとえば、特開平11−2312号公報には、衝撃吸収リングの本来の機能を保ちつつ、噛み合いの悪化を有効に防止することを目的とした低騒音振動スプロケットが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたスプロケットの側面には、衝撃吸収リングが接着もしくは嵌め込みの形で装着されている。衝撃吸収リングは、山の数がスプロケットの歯数に一致する波型の外周形状を有する。その波型の山谷の高さは、スプロケットの歯底部の近傍においては、チェーンのリングプレートと衝撃吸収リングとがオーバーラップし、それ以外の部位では、チェーンのリングプレートと衝撃吸収リングとが干渉しないように設定されている。
【0003】
また、特開2001−208149号公報には、スプロケットとローラチェーンとの噛み合い時の騒音を効果的に抑えつつ、ローラチェーンの軽量化を図ることを目的としたチェーン伝動装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示されたチェーン伝動装置では、ドライブスプロケットの両側面に、環状弾性体が取り付けられている。環状弾性体の外周面には、ドライブスプロケットの歯部の径内方においてスプロケット軸に平行に延びる突出部が形成されている。環状弾性体は、ドライブスプロケットにローラチェーンが噛み合う時、外周面および突出部をローラチェーンのプレートに当てるように設定されている。
【0004】
また、特開2000−337478号公報には、クッション体を所定の位置に定めて、チェーンとの噛合点における衝突音を確実に低減させることを目的としたスプロケットが開示されている(特許文献3)。特許文献3に開示されたスプロケットには、鋼製またはプラスチック製のクッション部材が取り付けられている。クッション部材は、チェーンとの噛合開始点および噛合終了点で接触するように設けられている。
【特許文献1】特開平11−2312号公報
【特許文献2】特開2001−208149号公報
【特許文献3】特開2000−337478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1および2では、チェーンがスプロケットに巻き付く際に振動や騒音が発生することを抑えるため、スプロケットに衝撃吸収リングや環状弾性体が設けられている。しかしながら、特許文献1に開示された低騒音振動スプロケットでは、衝撃吸収リングの山の部分が、チェーンのリングプレートに衝突し続けるため、その山の部分で衝撃吸収リングの摩耗や変形が進行し易くなる。
【0006】
また、特許文献2に開示されたチェーン伝動装置でも、環状弾性体の同じ部位が、ローラチェーンのプレートと接触を繰り返すため、環状弾性体の摩耗や変形が局所的に進行するおそれがある。また、環状弾性体とローラチェーンのプレートとが接触を繰り返すことによって熱が発生し、その熱によって環状弾性体が劣化する懸念も生じる。これらの理由から、特許文献1および2に開示された構造では、スプロケットで生じる振動や騒音を長期間に渡って抑制することが難しい。
【0007】
また、エンジンのタイミングチェーンを案内する場合等、スプロケットによって案内するチェーンの張力が刻々と変化し、チェーンが大きく波打つ場合がある。このような場合、特許文献3に開示されたスプロケットでは、クッション部材とチェーンとが噛合開始点および噛合終了点の2箇所でしか接触していないため、スプロケットで生じる振動や騒音を効果的に抑制できないおそれがある。
【0008】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、振動や騒音が長期間に渡って効果的に抑制されるスプロケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従ったスプロケットは、内燃機関のタイミングチェーンの軌道を規制する。スプロケットは、環状部と噛み合い部からなるスプロケット本体と、リング状の弾性部材とを備える。スプロケット本体は、環状部の外周上でタイミングチェーンを係合させ、所定の軸を中心に回転する。弾性部材は、環状部の外周面との間に隙間を設けて配置され、環状部に回転自在に嵌め合わされている。弾性部材は、周方向に間隔を隔てた3以上の位置でタイミングチェーンに接触する接触面を有する。弾性部材は、タイミングチェーンと接触面とが接触することによって厚み方向に変形する。スプロケットの回転軸に直交する平面で弾性部材を切断した場合に、接触面を規定する曲線が略真円となる。
【0010】
なお、弾性部材が変形する厚み方向とは、所定の軸に直交する平面で弾性部材を切断した場合に略真円のプロフィールを有する接触面の半径方向である。
【0011】
このように構成されたスプロケットによれば、接触面がタイミングチェーンに接触することによって、タイミングチェーンで生じる振動を弾性部材で吸収し、騒音の低減を図ることができる。この際、弾性部材は、接触面をタイミングチェーンに接触させて回転しながら、タイミングチェーンを係止させて回転するスプロケット本体に対しても相対的に回転する。これにより、弾性部材が、接触面の一定の位置でタイミングチェーンと接触を繰り返すことを防止できる。また、接触面は、略真円の曲線となって断面に表われるように形成されているため、接触面の突出した位置とタイミングチェーンとが接触するということがない。したがって、接触面を、タイミングチェーンに対して接触面の周方向の全範囲で接触させることができ、弾性部材の摩耗や変形が局所的に進行することを防止できる。
【0012】
また、弾性部材と環状部の外周面との間には、隙間が設けられているため、弾性部材が環状部の外周面に固着されている場合と比較して、弾性部材の露出面積を増大させることができる。これにより、弾性部材からの熱放出を促進させ、熱に起因した弾性部材の劣化を抑制できる。また、弾性部材は、3以上の位置で接触面をタイミングチェーンに接触させながら、厚み方向に変形する。これにより、仮にスプロケット本体に係合するタイミングチェーンが大きく波打つ場合であっても、タイミングチェーンの振動を効果的に吸収することができる。以上の理由から、スプロケット本体で生じる振動や騒音を、弾性部材により長期間に渡って効果的に抑制することができる。
【0013】
また好ましくは、環状部の外周面と向い合う弾性部材の内周面には、金属製のリング部材が固着されている。このように構成されたスプロケットによれば、相対的な回転運動が起こる環状部と向い合う側に、比較的大きい強度を有するリング部材を配置することによって、弾性部材が環状部に回転自在に設けられた状態を確実に保持することができる。
【0014】
また好ましくは、スプロケットは、環状部の外周面と弾性部材との間の隙間に油を供給する油供給機構をさらに備える。このように構成されたスプロケットによれば、熱に起因した弾性部材の劣化を、さらに効果的に抑制することができる。
【0015】
また、内燃機関は、V型多気筒エンジンである。スプロケットは、V型多気筒エンジンの両バンクの間に配置され、その両バンクのカムシャフト間に掛け渡されたタイミングチェーンの軌道を規制している。このように構成されたスプロケットでは、タイミングチェーンが、両バンクのカムシャフトの双方から変動荷重を受けるため、バンク間に配置されたスプロケットで発生する振動や騒音が特に大きな問題となる。このため、本発明をV型多気筒エンジンの両バンク間に適用した場合に、上述の効果をより効果的に得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、この発明に従えば、振動や騒音が長期間に渡って効果的に抑制されるスプロケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態におけるアイドルスプロケットが用いられたエンジンを示す斜視図である。図2は、図1中のエンジンのバルブ系を示す斜視図である。図1および図2を参照して、エンジン10は、V字状に配置された左バンク11および右バンク12を備えるV型多気筒エンジンである。
【0019】
左バンク11および右バンク12の各々には、たとえば3つのシリンダが設けられており、各シリンダには、シリンダ内を往復運動するピストンが装填されている。そのピストンは、コネクティングロッドによって、エンジン10の出力軸であるクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトの端部には、クランクシャフトスプロケット29が取り付けられている。クランクシャフトスプロケット29は、エンジン10を構成するシリンダブロックの側面に位置して取り付けられている。
【0020】
左バンク11には、インテークカムシャフト37およびエキゾーストカムシャフト36が配設されている。右バンク12には、インテークカムシャフト38およびエキゾーストカムシャフト39が配設されている。これらのカムシャフトには、適当な輪郭曲線を持ったカムが、カムシャフトの軸方向に並んで複数、形成されている。カムシャフトが回転することによって、このカムが、各シリンダに設けられた吸気弁および排気弁を開閉駆動する。
【0021】
エキゾーストカムシャフト36の端部には、スプロケット30が設けられている。エキゾーストカムシャフト36の端部には、さらに、油圧によりエキゾーストカムシャフト36をスプロケット30に対して回転させ、エキゾーストカムシャフト36のカムタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構16が設けられている。
【0022】
同様に、インテークカムシャフト37の端部には、小径スプロケット32、大径スプロケット31および可変バルブタイミング機構17が、インテークカムシャフト37の軸方向に並んで設けられている。また、インテークカムシャフト38の端部には、小径スプロケット34、大径スプロケット33および可変バルブタイミング機構18が、インテークカムシャフト38の軸方向に並んで設けられている。また、エキゾーストカムシャフト39の端部には、スプロケット35および可変バルブタイミング機構19が、エキゾーストカムシャフト39の軸方向に並んで設けられている。
【0023】
スプロケット30、小径スプロケット32、大径スプロケット31、小径スプロケット34、大径スプロケット33およびスプロケット35は、カムシャフトハウジングの側面に位置して、各カムシャフトに設けられている。カムシャフトハウジングは、エンジン10を構成するシリンダヘッドに、シリンダヘッドの頂面側から締結される部品である。
【0024】
クランクシャフトスプロケット29、大径スプロケット31および大径スプロケット33には、プライマリータイミングチェーン24が掛け渡されている。プライマリータイミングチェーン24は、これら3つのスプロケットが、プライマリータイミングチェーン24の軌道の内側に位置するように掛け渡されている。プライマリータイミングチェーン24は、長尺のチェーンダンパー26により、クランクシャフトスプロケット29と大径スプロケット31との間で案内されている。プライマリータイミングチェーン24は、チェーンテンショナー機構を備える長尺のチェーンスリッパー25により、クランクシャフトスプロケット29と大径スプロケット33との間で案内されている。
【0025】
大径スプロケット31、大径スプロケット33およびクランクシャフトスプロケット29を結ぶ三角形の内側には、アイドルスプロケット51が設けられている。アイドルスプロケット51には、大径スプロケット31と大径スプロケット33との間で延びるプライマリータイミングチェーン24が掛けられている。プライマリータイミングチェーン24は、アイドルスプロケット51がプライマリータイミングチェーン24の軌道の外側に位置するように設けられている。プライマリータイミングチェーン24は、アイドルスプロケット51に対して鉛直方向下側から掛けられている。
【0026】
アイドルスプロケット51によって、プライマリータイミングチェーン24の軌道は、エンジン10のV型形状に沿わせた経路に調整されており、大径スプロケット31および大径スプロケット33に対するプライマリータイミングチェーン24の巻き付け量が増大するように調整されている。プライマリータイミングチェーン24は、チェーンダンパー26およびチェーンスリッパー25と比較して短尺のチェーンダンパー27により、大径スプロケット31および大径スプロケット33と、アイドルスプロケット51とのそれぞれの間で案内されている。
【0027】
小径スプロケット32とスプロケット30との間には、セカンダリータイミングチェーン21が掛け渡されている。小径スプロケット34とスプロケット35との間には、セカンダリータイミングチェーン22が掛け渡されている。以上に説明した構成により、クランクシャフトから出力された駆動力は、まず、プライマリータイミングチェーン24を介して、インテークカムシャフト37およびインテークカムシャフト38に伝達され、さらにセカンダリータイミングチェーン21および22を介して、エキゾーストカムシャフト36および39に伝達される。
【0028】
図3は、図1中のIII−III線上に沿ったアイドルスプロケットの断面図である。図3を参照して、アイドルスプロケット51は、軸101を中心軸とした外周面52aを有するアイドラシャフト52と、軸受け部材55を介して外周面52a上に嵌装されたスプロケット本体61と、スプロケット本体61に対して回転自在に設けられ、プライマリータイミングチェーン24(以下、単にチェーン24とも呼ぶ)から受ける振動を吸収するクッションゴム71とを備える。
【0029】
アイドラシャフト52は、図1中のエンジン10を構成するシリンダブロック45の側面45cに締結されている。アイドラシャフト52は、側面45cから突出し、軸101に沿って延びるように形成されている。アイドラシャフト52は、その延びる先端に、外周面52aから半径方向に広がる鍔部58を有する。アイドラシャフト52の端面には、六角孔53が形成されている。六角孔53は、アイドラシャフト52をシリンダブロック45に締結する際に、六角レンチを差し込む孔として用いられる。
【0030】
スプロケット本体61は、環状部62と、プライマリータイミングチェーン24と噛み合う複数の噛み合い歯63とから構成されている。環状部62は、軸101を中心として所定の厚みで環状に延びており、シリンダブロック45の側面45cと鍔部58との間に位置決めされている。環状部62は、アイドラシャフト52の外周面52aに向い合う内周面62bと、内周面62bの反対側に面する外周面62aとを有する。噛み合い歯63は、軸101の周りで、外周面62aから所定の角度ごとに突出するように形成されている。
【0031】
軸受け部材55は、アイドラシャフト52と焼き付きにくい材料から形成されている。軸受け部材55は、スプロケット本体61の内周面62bに固着されている。スプロケット本体61は、軸受け部材55がアイドラシャフト52の外周面52a上で摺動することによって、軸101を中心に回転する。
【0032】
アイドラシャフト52には、シリンダブロック45の側面45cに向い合う位置から、外周面52aに向かって延び、さらに、外周面52aの周方向に帯状に延びる潤滑油供給路56が形成されている。シリンダブロック45には、シリンダブロック45内のメインギャラリーから潤滑油供給路56に連通する潤滑油供給路46が形成されている。メインギャラリーを流れる潤滑油は、潤滑油供給路46および56を順に通って、軸受け部材55とアイドラシャフト52との摺動面に供給される。潤滑油は、その後、環状部62と、シリンダブロック45および鍔部58との接触面に供給される。
【0033】
図4は、図3中のIV−IV線上に沿ったアイドルスプロケットの断面図である。図3および図4を参照して、外周面62aの周りには、金属から形成されたリング74が配置されている。リング74は、軸101の軸方向に沿った噛み合い歯63の両側にそれぞれ配置されている。リング74は、外周面62aに向い合う内周面74bと、内周面74bと反対側に面する外周面74aとを有する。
【0034】
外周面74aには、リング形状を有するクッションゴム71が加硫接着されている。クッションゴム71は、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)またはウレタンゴムから形成されている。
【0035】
クッションゴム71は、クッションゴム71の外周面をなす接触面71aを有する。接触面71aは、噛み合い歯63と噛み合うチェーン24と接触する。軸101に直交する平面でクッションゴム71を切断した場合に、接触面71aを示すプロフィールは略真円となる。つまり、接触面71aは、円柱形状の外周面によって構成されている。環状部62には、リング74およびクッションゴム71を外周面62a上に保持するためのリング状ストッパ54が圧入されている。
【0036】
リング74は、内周面74bの直径Rが、スプロケット本体61の外周面62aの直径rよりも大きくなるように形成されている。チェーン24はアイドルスプロケット51に鉛直方向下側から掛けられているため、クッションゴム71は、環状部62に対して鉛直方向上側に寄った位置に位置決めされる。このとき、環状部62の最下部で外周面62aと内周面74bとが接触し、その他の位置で、外周面62aと内周面74bとの間に隙間72が形成される。隙間72の大きさは、環状部62の最上部で最も大きい値Bとなり、値Bの一例を挙げれば、外径rが40mmの時、0.5mm程度である。このような構成により、クッションゴム71は、軸101からずれた位置を中心に、スプロケット本体61に対して回転自在に設けられている。なお、図3および図4では、隙間72の大きさが誇張されて描かれている。
【0037】
軸受け部材55には、外周面55aから内周面55bまで貫通する潤滑油供給路59が形成されている。潤滑油供給路59は、外周面52aで帯状に延びる潤滑油供給路56に連通するように形成されている。環状部62には、潤滑油供給路59に連通する位置から、外周面62aまで延びる潤滑油供給路65が形成されている。潤滑油供給路56に流れる潤滑油の一部は、潤滑油供給路59および65を順に通って、隙間72に供給される。
【0038】
スプロケット本体61の回転時、軸受け部材55が外周面52a上で摺動すると、軸受け部材55とアイドラシャフト52との境界部分で熱が発生する。この熱は、軸受け部材55および環状部62を順に伝わってリング74およびクッションゴム71に向かう。しかしながら、本実施の形態では、隙間72に潤滑油が供給されるため、リング74およびクッションゴム71の温度上昇を抑えることができる。クッションゴム71を形成するゴム材料は、一般的に、温度が高いほど早期に硬化する性質を有する。このため、本実施の形態によれば、クッションゴム71の弾性特性が熱に起因して劣化することを抑制できる。
【0039】
図5は、図3中の矢印Vに示す方向から見たアイドルスプロケットの正面図である。図6は、図5中のVI−VI線上に沿ったプライマリータイミングチェーンの断面図である。図5および図6を参照して、チェーン24は、チェーン24が延びる方向に並ぶ複数のチェーンプレート81と、互いに隣り合うチェーンプレート81を連結する連結ピン82と、連結ピン82に内側から順に嵌め合わされたブッシュ83および回転ローラ84とから構成されている。回転ローラ84は、ブッシュ83に対して回転自在に設けられている。
【0040】
チェーンプレート81は、トラック形状(2つの半円状の円弧を直線でつないで形成される長円形状)の平板である。チェーンプレート81は、チェーン24が延びる方向に沿って直線上に延在し、クッションゴム71の接触面71aに接触する側辺81aを有する。側辺81aは、隣り合う連結ピン82の間で直線上に延在している。
【0041】
チェーン24の軌道がアイドルスプロケット51によって規制される時、互いに隣り合う回転ローラ84の間に噛み合い歯63が位置決めされ、チェーン24が噛み合い歯63に係合した状態となる。噛み合い歯63に係合した位置では、チェーン24が連結ピン82を屈曲点として軸101の周りで折れ曲がる。このとき、チェーンプレート81の側辺81aが、隣り合うチェーンプレート81間で互いに斜めに交差するように位置決めされる(各チェーンプレート81の側辺81aが、軸101の周りで多角形の辺をなすように位置決めされる)。一方、接触面71aは略真円のプロフィール上に延在する形状を有するため、接触面71aは、軸101の周りで所定の間隔ごとに側辺81aと接触する。接触面71aと側辺81aとが接触することによって、クッションゴム71は、接触面71aの半径方向に圧縮変形される。
【0042】
このような構成により、チェーン24が噛み合い歯63に係合した位置において、接触面71aには、側辺81aに接触する範囲86と、側辺81aから離間する範囲87とが交互に並んで形成される。範囲86は、チェーン24と噛み合い歯63との係合が開始する位置と、チェーン24と噛み合い歯63との係合が終了する位置と、これら2つの位置の間にある複数の位置との、3以上の位置に形成される。
【0043】
図4および図5を参照して、本実施の形態では、クッションゴム71がスプロケット本体61に対して回転自在に設けられているため、クッションゴム71とスプロケット本体61との間で相対的な回転が生じる。このため、クッションゴム71が1回転すると、次の回転時には、接触面71a上の範囲86および87がずれる。これにより、接触面71aの周方向の全範囲に渡って、接触面71aをチェーンプレート81に接触させることができる。
【0044】
この発明の実施の形態におけるスプロケットとしてのアイドルスプロケット51は、内燃機関としてのエンジン10のタイミングチェーンとしてのプライマリータイミングチェーン24の軌道を規制する。アイドルスプロケット51は、所定の軸としての軸101を中心に延在する環状部62と噛み合い部としての噛み合い歯63とを有するスプロケット本体61と、リング状の弾性部材としてのクッションゴム71とを備える。スプロケット本体61は、環状部62の外周上でプライマリータイミングチェーン24を係合させ、軸101(アイドルスプロケット51の回転軸)を中心に回転する。クッションゴム71は、環状部62の外周面62aとの間に隙間72を設けて配置され、環状部62に回転自在に嵌め合わされている。クッションゴム71は、周方向に間隔を隔てた3以上の位置でプライマリータイミングチェーン24に接触する接触面71aを有する。クッションゴム71は、プライマリータイミングチェーン24と接触面71aとが接触することによって厚み方向に変形する。軸101に直交する平面でクッションゴム71を切断した場合に、接触面71aを規定する曲線が略真円となる。
【0045】
このように構成された、この発明の実施の形態におけるアイドルスプロケット51によれば、接触面71aをチェーンプレート81と接触させることによって、プライマリータイミングチェーン24で発生する振動をクッションゴム71で吸収し、噛み合い音の低減を図ることができる。この際、接触面71aの全体がチェーンプレート81と接触するため、クッションゴム71が局所的に摩耗したり変形するということがない。また、潤滑油を用いてクッションゴム71を積極的に冷却することにより、クッションゴム71の特性の劣化を抑制することができる。これにより、クッションゴム71の寿命を長くして、振動や騒音の発生を長期間に渡って抑えることができる。
【0046】
本実施の形態におけるアイドルスプロケット51は、V型多気筒エンジンの両バンクに設けられたインテークカムシャフト37およびインテークカムシャフト38間に配置されており、これらのカムシャフト間に掛け渡されたプライマリータイミングチェーン24の軌道を規制している。しかしながら、これらのカムシャフトに形成されたカムには、バルブスプリングのばね力が作用し、そのばね力は、カムシャフトの回転とともに変化する。このため、インテークカムシャフト37およびインテークカムシャフト38は、その回転方向にトルク変動を受けながら回転することとなる。また加えて、インテークカムシャフト37およびインテークカムシャフト38は、セカンダリータイミングチェーン21および22を介して、同様にトルク変動を受けながら回転するエキゾーストカムシャフト36および39に連結されている。
【0047】
結果、インテークカムシャフト37とインテークカムシャフト38との間に掛け渡されたプライマリータイミングチェーン24は、大きく撓んだり、強く張ったりしながら、両者の間で駆動力の伝達を行なう。また、V型多気筒エンジンではその構造上、アイドルスプロケット51と大径スプロケット31および大径スプロケット33との間に、チェーンダンパー26やチェーンスリッパー25のような長尺の案内を設けることが困難になっている。このことも、プライマリータイミングチェーン24が、アイドルスプロケット51が設けられた位置で大きく波打つ原因の1つとなっている。
【0048】
アイドルスプロケット51で、このような状態のプライマリータイミングチェーン24を案内すると、アイドルスプロケット51が大きく振動することになる。しかしながら、本実施の形態では、接触面71aとチェーン24とが接触する範囲86が、プライマリータイミングチェーン24と噛み合い歯63との係合が開始する位置および係合が終了する位置以外の複数の位置にも、形成されている。このため、クッションゴム71は、係合の開始位置および係合の終了位置のそれぞれでプライマリータイミングチェーン24と噛み合い歯63との衝突によって生じる振動を吸収すると同時に、係合の開始位置と係合の終了位置との間でトルク変動によって生じるプライマリータイミングチェーン24の振動を吸収する。これにより、アイドルスプロケット51で発生する振動や騒音を長期間に渡って効果的に抑えることができる。以上説明した理由から、本発明は、V型多気筒エンジンの両バンク間で実施されるタイミングチェーンの案内に、より有効に利用される。
【0049】
なお、本発明を適用する内燃機関は、ガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであっても良い。また、V型以外の形状のエンジンに適用しても良い。また、本実施の形態では、アイドラシャフト52がシリンダブロック45に固定されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。アイドラシャフト52は、エンジン10を構成するシリンダヘッドに固定されていても良いし、シリンダブロック45やシリンダヘッドに締結されたカバー部材やブロック部材に固定されていても良い。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の実施の形態におけるアイドルスプロケットが用いられたエンジンを示す斜視図である。
【図2】図1中のエンジンのバルブ系を示す斜視図である。
【図3】図1中のIII−III線上に沿ったアイドルスプロケットの断面図である。
【図4】図3中のIV−IV線上に沿ったアイドルスプロケットの断面図である。
【図5】図3中の矢印Vに示す方向から見たアイドルスプロケットの正面図である。
【図6】図5中のVI−VI線上に沿ったプライマリータイミングチェーンの断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 エンジン、11 左バンク、12 右バンク、24 プライマリータイミングチェーン、37,38 インテークカムシャフト、51 アイドルスプロケット、59,65 潤滑油供給路、61 スプロケット本体、62 環状部、62a 外周面、71 クッションゴム、71a 接触面、72 隙間、74 リング、101 軸。




 

 


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