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スプロケット - トヨタ自動車株式会社
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発明の名称 スプロケット
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9972(P2007−9972A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−189492(P2005−189492)
出願日 平成17年6月29日(2005.6.29)
代理人 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎
発明者 薄田 重浩
要約 課題
振動や騒音を十分に低減させつつ、緩衝部材の耐久性を向上させるスプロケットを提供する。

解決手段
アイドルスプロケットは、プライマリータイミングチェーン24を噛み合い歯に係合させ、カムシャフトの回転数と整数比となる回転数で、軸101を中心に回転するスプロケット本体61と、スプロケット本体61に固着された緩衝ゴム65とを備える。緩衝ゴム65は、軸101を中心に環状に延在し、プライマリータイミングチェーン24に接触する接触面68を有する。左右バンク間におけるプライマリータイミングチェーン24の張力は、カムシャフトが1回転する間の所定のタイミングで一時的に増大する。緩衝ゴム65は、接触面68がその所定のタイミングと同期する位相位置で突出するように形成されている。
特許請求の範囲
【請求項1】
エンジンのタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットであって、
スプロケット本体とタイミングチェーンとの間に緩衝部材が設けられ、
前記緩衝部材が、タイミングチェーンの張力が一時的に増加する位相位置で、タイミングチェーンと接する部位の厚さが、他の位相位置でタイミングチェーンと接する部位の厚さより厚い、スプロケット。
【請求項2】
前記スプロケットの回転軸に直交する平面で前記緩衝部材を切断した場合に、前記緩衝部材の外周面は、曲線のみからなるプロフィールから規定される、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項3】
前記エンジンは左右バンクを有し、その左右バンクの各々にカムシャフトが設けられ、カムシャフトにばね力を付勢させるバルブスプリングが前記左右バンクのそれぞれ設けられており、
前記タイミングチェーンの張力が一時的に増加する位相位置は、前記バルブスプリングのばね力が、左右バンクの間にある前記タイミングチェーンに張力として作用する位相位置である、請求項1または2に記載のスプロケット。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、V型多気筒エンジンのタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットに関し、より特定的には、V型6気筒エンジンのタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプロケットに関して、たとえば、特開平11−2312号公報には、衝撃吸収リングの本来の機能を保ちつつ、噛み合いの悪化を有効に防止することを目的とした低騒音振動スプロケットが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたスプロケットの側面には、衝撃吸収リングが装着されている。衝撃吸収リングは、山の数がスプロケットの歯数に一致する波型の外周形状を有する。その波型の山谷の高さは、スプロケットの歯底部の近傍においては、チェーンのリングプレートと衝撃吸収リングとがオーバーラップし、それ以外の部位では、チェーンのリングプレートと衝撃吸収リングとが干渉しないように設定されている。
【0003】
また、特開2001−208149号公報には、スプロケットとローラチェーンとの噛み合い時の騒音を効果的に抑えつつ、ローラチェーンの軽量化を図ることを目的としたチェーン伝動装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示されたチェーン伝動装置では、ドライブスプロケットの両側面に、環状弾性体が取り付けられている。環状弾性体の外周面には、ドライブスプロケットの歯部の径内方においてスプロケット軸に平行に延びる突出部が形成されている。環状弾性体は、ドライブスプロケットにローラチェーンが噛み合う時、外周面および突出部をローラチェーンのプレートに当てる。
【特許文献1】特開平11−2312号公報
【特許文献2】特開2001−208149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1および2では、チェーンがスプロケットに巻き付く際に振動や騒音が発生することを抑えるため、スプロケットに緩衝部材として機能する衝撃吸収リングや環状弾性体が設けられている。しかしながら、特許文献1に開示された低騒音振動スプロケットでは、衝撃吸収リングの山の部分が、チェーンのリングプレートに衝突し続けるため、その山の部分で衝撃吸収リングの摩耗が進行し易くなる。
【0005】
また、特許文献2に開示されたチェーン伝動装置でも、環状弾性体の同じ部位が、ローラチェーンのプレートと接触を繰り返すため、環状弾性体の摩耗が局所的に進行するおそれがある。また、環状弾性体とローラチェーンのプレートとが接触を繰り返すことによって熱が発生し、その熱によって環状弾性体が劣化するおそれもある。これらの理由から、特許文献1および2に開示された構造によってスプロケットで発生する振動や騒音を十分に低減させようとすると、緩衝部材の耐久性において懸念が生じる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、振動や騒音を十分に低減させつつ、緩衝部材の耐久性を向上させるスプロケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったスプロケットは、エンジンのタイミングチェーンの軌道を規制するスプロケットであって、スプロケット本体とタイミングチェーンとの間に緩衝部材が設けられ、緩衝部材が、タイミングチェーンの張力が一時的に増加する位相位置で、タイミングチェーンと接する部位の厚さが、他の位相位置でタイミングチェーンと接する部位の厚さより厚い。
【0008】
このように構成されたスプロケットによれば、タイミングチェーンの張力が一時的に増加する位相位置で、緩衝部材が厚く形成されている。この厚い部分では、タイミングチェーンと緩衝部材との干渉(圧縮)量が増大するため、スプロケットに加わる衝撃を緩衝部材によって効果的に吸収し、振動の発生を抑えることができる。一方、その他の位置では、タイミングチェーンと緩衝部材との干渉量が減少するため、その位置で緩衝部材に大きい応力が作用することを抑制できる。したがって、本発明によれば、スプロケットで発生する振動や騒音を十分に低減させつつ、緩衝部材の耐久性の向上を図ることができる。
【0009】
好ましくは、スプロケットの回転軸に直交する平面で緩衝部材を切断した場合に、緩衝部材の外周面は、曲線のみからなるプロフィールから規定される。このように構成されたスプロケットによれば、タイミングチェーンとの接触によって外周面に局所的な応力が加わることを防止できる。これにより、緩衝部材の耐久性をさらに向上させることができる。
【0010】
好ましくは、エンジンは左右バンクを有し、その左右バンクの各々にカムシャフトが設けられ、カムシャフトにばね力を付勢させるバルブスプリングが左右バンクのそれぞれ設けられており、タイミングチェーンの張力が一時的に増加する位相位置は、バルブスプリングのばね力が、左右バンクの間にあるタイミングチェーンに張力として作用する位相位置である。
【0011】
このように構成されたスプロケットによれば、バルブスプリングのばね力によって左右バンク間のタイミングチェーンの張力が増大する位相位置において、タイミングチェーンと緩衝部材との干渉量を増大させることができる。また、バルブスプリングのばね力が、左右バンク間のタイミングチェーンの張力に影響を及ぼさないタイミングまたは張力を減少させる位相位置には、タイミングチェーンと緩衝部材との干渉量を減少させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、この発明に従えば、振動や騒音を十分に低減させつつ、緩衝部材の耐久性を向上させるスプロケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態におけるアイドルスプロケットが用いられたエンジンを示す斜視図である。図中には、車両前方側から見たエンジンの様子が示されている。図2は、図1中のエンジンのバルブ系を示す斜視図である。
【0015】
図1および図2を参照して、エンジン10は、V字状に配置された左バンク11および右バンク12を備えるV型6気筒エンジンである。左バンク11および右バンク12の各々には、3つのシリンダが設けられており、各シリンダには、シリンダ内を往復運動するピストンが装填されている。そのピストンは、コネクティングロッドによって、エンジン10の出力軸であるクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトの端部には、クランクシャフトスプロケット29が取り付けられている。クランクシャフトスプロケット29は、エンジン10を構成するシリンダブロックの側面に位置して取り付けられている。
【0016】
左バンク11には、インテークカムシャフト37およびエキゾーストカムシャフト36が配設されている。右バンク12には、インテークカムシャフト38およびエキゾーストカムシャフト39が配設されている。これらのカムシャフトには、適当な輪郭曲線を持ったカムが、カムシャフトの軸方向に並んで複数、形成されている。カムシャフトが回転することによって、このカムが、各シリンダに設けられたインテークバルブおよびエキゾーストバルブを開閉駆動する。
【0017】
エキゾーストカムシャフト36の端部には、スプロケット30が設けられている。エキゾーストカムシャフト36の端部には、さらに、油圧によりエキゾーストカムシャフト36をスプロケット30に対して回転させ、エキゾーストカムシャフト36のカムタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構16が設けられている。
【0018】
同様に、インテークカムシャフト37の端部には、小径スプロケット32、大径スプロケット31および可変バルブタイミング機構17が、インテークカムシャフト37の軸方向に並んで設けられている。また、インテークカムシャフト38の端部には、小径スプロケット34、大径スプロケット33および可変バルブタイミング機構18が、インテークカムシャフト38の軸方向に並んで設けられている。また、エキゾーストカムシャフト39の端部には、スプロケット35および可変バルブタイミング機構19が、エキゾーストカムシャフト39の軸方向に並んで設けられている。
【0019】
スプロケット30、小径スプロケット32、大径スプロケット31、小径スプロケット34、大径スプロケット33およびスプロケット35は、カムシャフトハウジングの側面に位置して、各カムシャフトに設けられている。カムシャフトハウジングは、エンジン10を構成するシリンダヘッドに、シリンダヘッドの頂面側から締結される部品である。
【0020】
クランクシャフトスプロケット29、大径スプロケット31および大径スプロケット33には、プライマリータイミングチェーン24(以降、単にタイミングチェーン24とも呼ぶ)が掛け渡されている。タイミングチェーン24は、これら3つのスプロケットが、タイミングチェーン24の軌道の内側に位置するように掛け渡されている。タイミングチェーン24は、長尺のチェーンダンパー26により、クランクシャフトスプロケット29と大径スプロケット31との間で案内されている。タイミングチェーン24は、チェーンテンショナー機構を備える長尺のチェーンスリッパー25により、クランクシャフトスプロケット29と大径スプロケット33との間で案内されている。
【0021】
大径スプロケット31、大径スプロケット33およびクランクシャフトスプロケット29を結ぶ三角形の内側には、アイドルスプロケット51が設けられている。アイドルスプロケット51には、大径スプロケット31と大径スプロケット33との間で延びるタイミングチェーン24が掛けられている。タイミングチェーン24は、アイドルスプロケット51がタイミングチェーン24の軌道の外側に位置するように設けられている。タイミングチェーン24は、アイドルスプロケット51に対して鉛直方向下側から掛けられている。
【0022】
アイドルスプロケット51によって、タイミングチェーン24の軌道は、エンジン10のV型形状に沿わせた経路に調整されており、大径スプロケット31および大径スプロケット33に対するタイミングチェーン24の巻き付け量が増大するように調整されている。タイミングチェーン24は、チェーンダンパー26およびチェーンスリッパー25と比較して短尺のチェーンダンパー27により、大径スプロケット31および大径スプロケット33と、アイドルスプロケット51とのそれぞれの間で案内されている。
【0023】
小径スプロケット32とスプロケット30との間には、セカンダリータイミングチェーン21が掛け渡されている。小径スプロケット34とスプロケット35との間には、セカンダリータイミングチェーン22が掛け渡されている。以上に説明した構成により、クランクシャフトから出力された駆動力は、まず、タイミングチェーン24を介して、インテークカムシャフト37およびインテークカムシャフト38に伝達され、さらにセカンダリータイミングチェーン21および22を介して、エキゾーストカムシャフト36および39に伝達される。
【0024】
図3は、図1中のエンジンを構成するシリンダブロックを示す斜視図である。図1から図3を参照して、シリンダブロック45には、右バンク12に位置して、#1、#3および#5の番号がそれぞれ割り振られたシリンダ(以降、#1シリンダ、#3シリンダおよび#5シリンダと呼ぶ)が、車両前方から車両後方に順に並んで形成されている。また、シリンダブロック45には、左バンク11に位置して、#2、#4および#6の番号がそれぞれ割り振られたシリンダ(以降、#2シリンダ、#4シリンダおよび#6シリンダと呼ぶ)が、車両前方から車両後方に順に並んで形成されている。本実施の形態では、点火順序を、♯1シリンダ、♯2シリンダ、♯3シリンダ、♯4シリンダ、♯5シリンダ、♯6シリンダ、♯1シリンダ…の順とする。点火順序が前後するシリンダ間の爆発間隔は、120°CA(crank angle;クランク角)である。
【0025】
図4は、車両前方側から見た図1中のエンジンのインテークバルブを示す図である。図4を参照して、♯1シリンダから♯6シリンダの各シリンダには、インテークバルブ90が設けられている。インテークバルブ90は、開弁位置と閉弁位置との間で往復運動するバルブ94と、バルブ94に対して閉弁位置に向かうばね力を付勢させるバルブスプリング91と、バルブ94に連結され、インテークカムシャフト38および37に形成されたカムに当接するローラーロッカーアーム92と、ローラーロッカーアーム92に設けられ、バルブクリアランスを調整するラッシュアジャスタ93とを備える。
【0026】
インテークカムシャフト38には、♯1シリンダ、♯3シリンダおよび♯5シリンダのインテークバルブ90をそれぞれ開閉駆動するカム71、カム73およびカム75が、カムシャフトの軸方向に並んで形成されている。また、インテークカムシャフト37には、♯2シリンダ、♯4シリンダおよび♯6シリンダのインテークバルブ90をそれぞれ開閉駆動するカム72、カム74およびカム76が、カムシャフトの軸方向に並んで形成されている。インテークカムシャフト38および37は、図中の矢印105に示す同じ方向に回転する。
【0027】
これらのカムは、インテークカムシャフト38および37の軸中心から半径方向に突出するように形成されたノーズを有する。これらのカムは、各カムのノーズの位相位置が、シリンダの点火順序に合わせて互いに適当にずれるように形成されている。
【0028】
より詳細には、インテークカムシャフト38において、♯3シリンダのバルブを開閉駆動するカム73のノーズは、♯1シリンダのバルブを開閉駆動するカム71のノーズに対して、遅角方向(インテークカムシャフト38が回転する矢印105に示す方向の反対方向)に120°ずれた位置に形成されている。また、♯5シリンダのバルブを開閉駆動するカム75のノーズは、カム73のノーズに対して遅角方向に120°ずれた位置に形成されている。
【0029】
インテークカムシャフト37において、♯4シリンダのバルブを開閉駆動するカム74のノーズは、♯2シリンダのバルブを開閉駆動するカム72のノーズに対して、遅角方向に120°ずれた位置に形成されている。また、♯6シリンダのバルブを開閉駆動するカム76のノーズは、カム74のノーズに対して遅角方向に120°ずれた位置に形成されている。インテークカムシャフト37に形成されたカム72のノーズの位相位置は、インテークカムシャフト38に形成されたカム71のノーズの位相位置に対して、遅角方向に60°ずれた位置に形成されている。
【0030】
また、図2中のエキゾーストカムシャフト39には、♯1シリンダ、♯3シリンダおよび♯5シリンダのエキゾーストバルブを開閉駆動するカムが形成されており、図2中のエキゾーストカムシャフト36には、♯2シリンダ、♯4シリンダおよび♯6シリンダのエキゾーストバルブを開閉駆動するカムが形成されている。
【0031】
エンジン10の稼動時、インテークカムシャフト38および37が回転して、カム71から76の各ノーズがローラーロッカーアーム92に接触すると、ローラーロッカーアーム92は徐々に押し下げられていく。これにより、バルブ94は、バルブスプリング91のばね力によって保持された閉弁位置から開弁位置に向けて運動し始め、ノーズがローラーロッカーアーム92を最も大きく押し下げた位置(最大リフト位置)で、開弁位置に達する。ノーズが最大リフト位置を通り過ぎると、バルブスプリング91のばね力によって、バルブ94は開弁位置から閉弁位置に向けて運動し始める。
【0032】
図5は、図1中のエンジンのタイミングチェーンに作用する力を説明するための模式図である。図4および図5を参照して、たとえば、右バンク12の♯1シリンダで、カム71がローラーロッカーアーム92を押し下げ、バルブ94が閉弁位置から開弁位置に向けて運動する時、左バンク11の♯6シリンダでは、カム76が最大リフト位置を超え、バルブ94が開弁位置から閉弁位置に向けて運動している。
【0033】
このとき、カム71は、バルブスプリング91のばね力により、インテークカムシャフト38の回転方向とは反対方向の矢印110に示す方向に力を受ける。また、カム76は、バルブスプリング91のばね力により、インテークカムシャフト37の回転方向と同じ方向の矢印111に示す方向に力を受ける。これらの力は、インテークカムシャフト38および37を介して大径スプロケット33および31に伝わり、結果、右バンク12と左バンク11との間のタイミングチェーン24に、バルブスプリング91のばね力に起因した張力が作用する。
【0034】
またこのとき、可変バルブタイミング機構16から19の作動状態によっては、右バンク12の♯5シリンダで、エキゾーストバルブを開閉駆動するカムが、ローラーロッカーアーム92を押し下げ、エキゾーストバルブが閉弁位置から開弁位置に向けて運動している。また、左バンク11の♯4シリンダで、エキゾーストバルブを開閉駆動するカムが、最大リフト位置を超え、エキゾーストバルブが開弁位置から閉弁位置に向けて運動している。この場合、バルブスプリング91のばね力によって、♯5シリンダでは、矢印112に示す方向の力がエキゾーストカムシャフト39を介してスプロケット35に作用し、♯4シリンダでは、矢印113に示す方向の力がエキゾーストカムシャフト36を介してスプロケット30に作用する。この結果、右バンク12と左バンク11との間のタイミングチェーン24には、張力がさらに大きく作用する。
【0035】
図6は、アイドルスプロケットで発生するチェーンノイズの変化を表わすグラフである。図6を参照して、図中の横軸には、エンジンの1サイクルに相当する0°から720°までの範囲のクランク角が表わされている。また、縦軸に表わすバルブリフト量は、「0」の位置が閉弁位置である。
【0036】
おおよそ120°CAから240°CAの間にある区間210において、右バンク12の♯1シリンダのインテークバルブのバルブリフト量が、曲線201によって示されており、♯5シリンダのエキゾーストバルブのバルブリフト量が、曲線205によって示されている。また、左バンク11の♯6シリンダのインテークバルブのバルブリフト量が、曲線206によって示されており、♯4シリンダのエキゾーストバルブのバルブリフト量が、曲線204によって示されている。
【0037】
この区間210は、上述のバルブスプリング91のばね力に起因した張力がタイミングチェーン24に作用する区間に相当する。タイミングチェーン24に張力が作用すると、タイミングチェーン24が撓んだ状態から強く張った状態に急激に変化し、タイミングチェーン24からアイドルスプロケットに加わる衝撃が増大する。このため、従来のV型6気筒エンジンでは、区間210において、アイドルスプロケットで発生するチェーンノイズ(噛み合い音)が大きくなる。
【0038】
また、図4中で、右バンク12の♯3シリンダでカム73がローラーロッカーアーム92を押し下げながら回転し、左バンク11の♯2シリンダでカム72が最大リフト位置を超えて回転するタイミングと、右バンク12の♯5シリンダでカム75がローラーロッカーアーム92を押し下げながら回転し、左バンク11の♯4シリンダでカム74が最大リフト位置を超えて回転するタイミングとにおいても、アイドルスプロケットで発生するチェーンノイズが大きくなる。つまり、V型6気筒エンジンでは、チェーンノイズが大きくなるタイミングが、エンジンの1サイクル中に3回存在する。
【0039】
図7は、図1中のVII−VII線上に沿ったアイドルスプロケットの断面図である。図7を参照して、アイドルスプロケット51は、軸101を中心軸とした外周面52aを有するアイドラシャフト52と、軸受け部材55を介して外周面52a上に嵌装されたスプロケット本体61と、スプロケット本体61に固着され、タイミングチェーン24から受ける衝撃を吸収する緩衝ゴム65とを備える。
【0040】
アイドラシャフト52は、シリンダブロック45の側面45cに締結されている。アイドラシャフト52は、側面45cから突出し、軸101に沿って延びるように形成されている。アイドラシャフト52は、その延びる先端に、外周面52aから半径方向に広がる鍔部58を有する。アイドラシャフト52の端面には、六角孔53が形成されている。六角孔53は、アイドラシャフト52をシリンダブロック45に締結する際に、六角レンチを差し込む孔として用いられる。
【0041】
スプロケット本体61は、環状部62と、タイミングチェーン24と噛み合う複数の噛み合い歯63とから構成されている。環状部62は、軸101を中心として所定の厚みで環状に延びており、シリンダブロック45の側面45cと鍔部58との間に位置決めされている。環状部62は、軸101を中心軸とした外周面62aを有する。噛み合い歯63は、軸101の周りで外周面62aから所定の角度ごとに突出して形成されている。
【0042】
軸受け部材55は、アイドラシャフト52の外周面52aと環状部62との間に配置され、スプロケット本体61に固着されている。軸受け部材55は、アイドラシャフト52と焼き付きにくい材料から形成されている。スプロケット本体61は、軸受け部材55がアイドラシャフト52の外周面52a上で摺動することによって、軸101を中心に回転する。
【0043】
アイドルスプロケット51は、スプロケット本体61の回転数とカムシャフトの回転数との比が、整数比となるように形成されている。本実施の形態では、スプロケット本体61の回転数とカムシャフトの回転数との比が、2対1であり、カムシャフトが1回転する間にスプロケット本体61が2回転する。
【0044】
アイドラシャフト52には、シリンダブロック45の側面45cに向い合う位置から、外周面52aに向かって延び、さらに、外周面52aの周方向に帯状に延びる潤滑油供給路56が形成されている。シリンダブロック45には、シリンダブロック45内のメインギャラリーから潤滑油供給路56に連通する潤滑油供給路46が形成されている。メインギャラリーを流れる潤滑油は、潤滑油供給路46および56を順に通って、軸受け部材55とアイドラシャフト52との摺動面に供給される。潤滑油は、その後、環状部62と、シリンダブロック45および鍔部58との接触面に供給され、さらに緩衝ゴム65にも供給される。
【0045】
緩衝ゴム65は、リング形状を有し、環状部62に嵌装された状態で外周面62aに接着されている。緩衝ゴム65は、軸101の軸方向に沿った噛み合い歯63の両側にそれぞれ配置されている。緩衝ゴム65は、弾性を有し、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)またはウレタンゴムから形成されている。
【0046】
図8は、図7中のVIII−VIII線上に沿ったスプロケットの断面図である。図7および図8を参照して、緩衝ゴム65は、軸101の周りで環状に延在する接触面68を有する。接触面68は、噛み合い歯63と噛み合うタイミングチェーン24のチェーンプレート81と接触する。接触面68は、軸101周りの所定の位相位置で突出している。その所定の位相位置は、タイミングチェーン24にバルブスプリング91のばね力に起因した張力が作用するタイミングに同期する位置である。本実施の形態では、接触面68は、軸101周りの3箇所で120°間隔に突出している。
【0047】
接触面68は、軸101を中心に相対的に大きい半径を有する領域68nと、相対的に小さく、一定の半径を有する領域68mとを含む。緩衝ゴム65は、領域68nで外周面62aと接触面68との間の厚みが相対的に大きく、領域68mで外周面62aと接触面68との間の厚みが相対的に小さくなるように形成されている。緩衝ゴム65は、軸101に直交する平面で切断した場合に、接触面68が、曲線のみからなるプロフィールとなって表われるように形成されている。接触面68は、領域68nにおいて、領域68mとの境界位置を除いて半径がほぼ一定となるように形成されている。また、接触面68は、領域68nにおいて、領域68mとの境界位置から領域68nの中心位置に向かうに従って半径が大きくなるように形成されていても良い。
【0048】
なお、接触面68が突出する位相位置は、タイミングチェーン24にバルブスプリング91のばね力に起因した張力が作用するタイミングの区間内にあれば良く、必ずしも、接触面68が突出する位相の範囲が、タイミングチェーン24に張力が作用するタイミングの区間に完全に一致している必要はない。また、エンジン10の組み立て時には、タイミングチェーン24の適当な位置にマーキングし、そのマーキングを基準にして、アイドルスプロケット51と大径スプロケット31および33との位相合わせを行なっても良い。
【0049】
このような構成により、図6中に示すチェーンノイズが大きくなるタイミングでは、接触面68が突出して形成されているため、緩衝ゴム65を大きく圧縮させて、タイミングチェーン24から受ける衝撃をより効果的に吸収することができる。これにより、アイドルスプロケット51で発生する振動や騒音を十分に抑制することができる。また、本実施の形態は、アイドルスプロケット51で発生する騒音に対して源流対策となるため、遮音構造を設ける場合と比較して、コストの増大を抑えることができる。
【0050】
一方、チェーンノイズが小さいタイミングでは、チェーンプレート81と緩衝ゴム65との干渉量が小さくなるため、接触面68に負荷する応力を小さく抑えることができる。また、本実施の形態では、図8中に示す断面において接触面68が曲線のみからなるプロフィールとなって表われているため、チェーンプレート81との接触によって接触面68に局所的に大きい応力が加わることを防止できる。これにより、緩衝ゴム65の劣化を長期間に渡って抑制し、緩衝ゴム65の耐久性を向上させることができる。
【0051】
この発明の実施の形態におけるスプロケットとしてのアイドルスプロケット51は、V型多気筒エンジンとしてのエンジン10の右バンク12と左バンク11との間に配置され、左右バンクのカムシャフトとしてのインテークカムシャフト38および37の間に掛け渡されたタイミングチェーンとしてのプライマリータイミングチェーン24の軌道を規制するスプロケットである。アイドルスプロケット51は、プライマリータイミングチェーン24を噛み合い歯63に係合させ、インテークカムシャフト38および37の回転数と整数比となる回転数で、所定の軸としての軸101を中心に回転するスプロケット本体61と、スプロケット本体61に固着された緩衝部材としての緩衝ゴム65とを備える。緩衝ゴム65は、軸101を中心に環状に延在し、プライマリータイミングチェーン24に接触する外周面としての接触面68を有する。右バンク12と左バンク11との間におけるプライマリータイミングチェーン24の張力は、インテークカムシャフト38および37が1回転する間の所定のタイミングで増大する。緩衝ゴム65は、接触面68が所定のタイミングと同期する位相位置で突出するように形成されている。すなわち、プライマリータイミングチェーン24の張力が一時的に増加する位相位置で、プライマリータイミングチェーン24と接する緩衝ゴム65の部位の厚さが、他の位相位置においてプライマリータイミングチェーン24と接する緩衝ゴム65の厚さより厚い。
【0052】
このように構成された、この発明の実施の形態におけるアイドルスプロケット51によれば、チェーンノイズが大きくなり、タイミングチェーン24の衝撃を和らげたい区間でのみ、緩衝ゴム65を大きく圧縮させているため、騒音低減の効果を損なうことなく、緩衝ゴム65の耐久性を向上させることができる。この際、所望のアウトラインを備える緩衝ゴム65の成形は比較的容易に行なわれるため、製造コストの増大を招くことがない。また、緩衝ゴム65以外のダンパーを別途設ける必要がないため、車両重量も小さく抑えることができる。また、タイミングチェーン24の寿命が短くとなるということもない。
【0053】
なお、本実施の形態では、本発明をV型6気筒エンジンに適用した場合について説明したが、これに限定されず、たとえば、タイミングチェーンに負荷する張力が一定のタイミングで増大するV型8気筒エンジンに適用することも可能である。さらに、V型でないエンジン、たとえば、直列型、水平対向型、W型エンジンに本発明を適用することが可能である。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施の形態におけるアイドルスプロケットが用いられたエンジンを示す斜視図である。
【図2】図1中のエンジンのバルブ系を示す斜視図である。
【図3】図1中のエンジンを構成するシリンダブロックを示す斜視図である。
【図4】車両前方側から見た図1中のエンジンのインテークバルブを示す図である。
【図5】図1中のエンジンのタイミングチェーンに作用する力を説明するための模式図である。
【図6】アイドルスプロケットで発生するチェーンノイズの変化を表わすグラフである。
【図7】図1中のVII−VII線上に沿ったアイドルスプロケットの断面図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線上に沿ったスプロケットの断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 エンジン、11 左バンク、12 右バンク、24 プライマリータイミングチェーン、37,38 インテークカムシャフト、51 アイドルスプロケット、61 スプロケット本体、63 噛み合い歯、65 緩衝ゴム、68 接触面、91 バルブスプリング、101 軸。




 

 


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