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発明の名称 水冷式エンジンの冷却構造
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−9745(P2007−9745A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−188788(P2005−188788)
出願日 平成17年6月28日(2005.6.28)
代理人 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
発明者 大垣 重郎 / 安木 哲
要約 課題
シリンダボアの周囲全体が均等に冷却されないことに起因して、ヘッドガスケットのシール性が損なわれるのを回避することのできる水冷式エンジンの冷却構造を提供する。

解決手段
エンジンは、シリンダボア20の周囲にウォータジャケット24を備えている。エンジンのシリンダブロックには、その外部からウォータジャケット24に冷却水を導入するための冷却水孔39が設けられている。冷却水孔39とこれに対向するシリンダライナ26aの外周壁との間には、半球面形状をなす格子部材45が設けられている。格子部材45は、その網目Eが冷却水孔39に対向するように配設されている。
特許請求の範囲
【請求項1】
シリンダボア周囲にウォータジャケットが形成され、前記ウォータジャケットの外側壁に冷却水孔が設けられたシリンダブロックを備え、前記シリンダブロックの端部にヘッドガスケットを介してシリンダヘッドを組み付けてなる水冷式エンジンの冷却構造であって、
前記冷却水孔と同冷却水孔に対向する前記ウォータジャケットの内側壁との間に格子部材を設け、同格子部材の格子の少なくとも一部が前記冷却水孔に対向するように配設してなる
ことを特徴とする水冷式エンジンの冷却構造。
【請求項2】
請求項1記載の水冷式エンジンの冷却構造において、
前記格子部材は、前記ウォータジャケットの内側壁に対し凸状の半球面形状を有してなる
ことを特徴とする水冷式エンジンの冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水冷式エンジンの冷却構造において、
前記格子部材は、互いに直交する線材が交互に上下する網からなる
ことを特徴とする水冷式エンジンの冷却構造。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の水冷式エンジンの冷却構造において、
前記シリンダブロックは、シリンダボアを画定するシリンダライナ部とシリンダ外壁部とを備え、前記シリンダライナ部の外周面と前記シリンダ外壁部の内周面との間にウォータジャケットを形成するとともに、それら外周面及び内周面の間においてシリンダヘッド側の端部および反対側の端部にそれぞれシール部材を介装してなる
ことを特徴とする水冷式エンジンの冷却構造。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式エンジンの冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水冷式エンジンには、シリンダボア周囲に冷却水を循環させるためのウォータジャケットが形成されている。このような水冷式エンジンでは、ウォータポンプが駆動されウォータジャケット内の冷却水を循環させることによって、混合気の燃焼に伴い高温となるシリンダボア周囲から熱を奪い、同エンジンを適正な温度に保つようにしている。
【0003】
一般に、エンジンは、シリンダブロックの上部に、ヘッドガスケットを介してシリンダヘッドが組み付けられて構成されている。こうしたエンジンでは、シリンダヘッドが載置されるシリンダブロックの上端部付近、即ち、燃焼室が形成されるシリンダボアの上端部付近が混合気の燃焼に伴って最も高温になる。これにより、シリンダボアの外周壁の上端部付近が、それ以外の部位(中央部や下端部等)に比して熱膨張による寸法変化が大きくなり、その分、冷却されたときの熱収縮による寸法変化も大きくなる傾向にある。そのため、シリンダボアの外周壁が冷却されたときの熱収縮に起因して、上記ヘッドガスケットに作用する面圧が不均一になり易く、その結果、ヘッドガスケットのシール性が損なわれるおそれがあった。なお、シリンダボアの外周壁が局部的に過冷却されるのを抑止するため、冷却水孔からの冷却水をシリンダの外周壁に直接当てないようにする構成が特許文献1又は特許文献2に記載されている。特許文献1には、有底筒状体であって、その周壁に複数の孔が透設されたものを冷却水孔に嵌め込むようにした構成が記載されている。また、特許文献2には、冷却水孔とシリンダボアの外周壁との間に三角柱状のボス部を設け、同ボス部の稜線部を冷却水孔に向けて配設するようにした構成が記載されている。
【特許文献1】特開平9−68041号公報
【特許文献2】特開2002−115600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載の構成によれば、冷却水孔に嵌め込まれた有底筒状体の底壁がシリンダボアの外周壁に当接されているため、冷却水により有底筒状体の底壁が冷却されるのに伴って、同底壁の当接部分が局部的に過冷却されるおそれがある。また、特許文献2記載の構成によれば、ボス部のシリンダボア側に冷却水が滞留し易くなるため、その滞留部分ではそれ以外の部分に比して冷却効果が低下して、シリンダボアの外周壁において局部的に冷却されない部分、所謂ヒートスポットを生じさせるおそれがある。従って、上記各文献の構成によれば、冷却水孔から導入された冷却水をシリンダボアの外周壁に直接当てないようにすることはできるものの、シリンダボアの周囲全体を均等に冷却することができるとは言い難い。そのため、冷却水孔の位置をシリンダボアの上端部付近に設定した場合には、ヘッドガスケットに作用する面圧を均一に保つのが極めて困難となり、その結果、ヘッドガスケットのシール性が損なわれてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダボアの周囲全体が均等に冷却されないことに起因して、ヘッドガスケットのシール性が損なわれるのを回避することのできる水冷式エンジンの冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シリンダボア周囲にウォータジャケットが形成され、前記ウォータジャケットの外側壁に冷却水孔が設けられたシリンダブロックを備え、前記シリンダブロックの端部にヘッドガスケットを介してシリンダヘッドを組み付けてなる水冷式エンジンの冷却構造であって、前記冷却水孔と同冷却水孔に対向する前記ウォータジャケットの内側壁との間に格子部材を設け、同格子部材の格子の少なくとも一部が前記冷却水孔に対向するように配設してなることを要旨とする。
【0007】
同構成によれば、冷却水孔とこれに対向するウォータジャケットの内側壁との間に格子部材を設け、同格子部材の格子の少なくとも一部が冷却水孔に対向するように配設されている。この場合、冷却水孔から導入された冷却水は、格子部材の格子を通過することでその勢いが弱められてウォータジャケットの内側壁、即ちシリンダボアの外周壁に到達するようになる。このように、冷却水孔から導入された冷却水をシリンダボアの外周壁に直接当てないようにすることで、同シリンダボアの外周壁が冷却水孔からの冷却水によって局部的に過冷却されるのを抑制することができる。そのため、冷却水孔の位置をシリンダボアのシリンダヘッド側の端部付近に設定したとしても、シリンダボアの外周壁が局部的に過冷却されて生じる熱収縮を極力小さく抑えることができる。よって、シリンダボアの周囲全体が均等に冷却されないことに起因して、ヘッドガスケットに作用する面圧が不均一になるのを抑止でき、同ヘッドガスケットのシール性が損なわれないようにすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記格子部材は、前記ウォータジャケットの内側壁に対し凸状の半球面形状を有してなることを要旨とする。
同構成によれば、冷却水孔から導入された冷却水を、ウォータジャケットの内側壁、即ちシリンダボアの外周壁に対し垂直方向のみならず、同方向を中心とした広い範囲に分散させてウォータジャケットに供給することができる。これにより、冷却水孔からの冷却水をシリンダボアの外周壁に直接当てないようにしつつ、ウォータジャケットに導入された冷却水をシリンダボアの周囲においてスムーズに供給させることが可能になる。従って、請求項2記載の格子部材を採用することによって、シリンダボアの周囲がより均等に冷却されるようになるため、ヘッドガスケットに作用する面圧をより均一にすることができ、同ヘッドガスケットのシール性が損なわれるのを一層回避することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記格子部材は、互いに直交する線材が交互に上下する網からなることを要旨とする。
同構成によれば、網目サイズの異なる網を用いて格子部材を形成することで、同格子部材を通過する冷却水の流量を適宜調整することができる。また、この場合、格子部材の形成材料としては安価で、かつ成形容易な網を採用しているため、同格子部材を製造する際のコストを低く抑えることもできる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の発明において、前記シリンダブロックは、シリンダボアを画定するシリンダライナ部とシリンダ外壁部とを備え、前記シリンダライナ部の外周面と前記シリンダ外壁部の内周面との間にウォータジャケットを形成するとともに、それら外周面及び内周面の間においてシリンダヘッド側の端部および反対側の端部にそれぞれシール部材を介装してなることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、シリンダ外壁部にその外部から冷却水を導入する冷却水孔を形成する場合、その孔位置をシリンダボア上部に対応して設定したとしても、ウォータジャケットのシリンダヘッド側の端部に介装されたシール部材に、冷却水孔から導入された冷却水の圧力の影響が極力及ばないようにすることができる。これにより、ウォータジャケットを境にして分割された分割式シリンダブロックにおいて、ウォータジャケットのシリンダヘッド側端部におけるシール性が損なわれないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を車載用ガソリンエンジン(以下、エンジンと称す)の冷却構造に具体化した一実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
図1に示されるように、エンジン11は、シリンダブロック12と、その上部にヘッドガスケット15を介して組み付けられるシリンダヘッド16とを備えている。シリンダヘッド16の上方にはヘッドカバー(図示略)が、また、シリンダブロック12の下方にはオイルパン(図示略)がそれぞれ取付けられる。
【0013】
次に、シリンダブロック12の構成について図2〜図4を参照して説明する。
図2に示されるように、シリンダブロック12において、その上部には4つのシリンダボア20が設けられ、下部にはクランクケース部21が設けられている。クランクケース部21は、その下方に取付けられるオイルパンとともにクランクケースを形成する。また、シリンダブロック12の頂部には、図1に示されるシリンダヘッド16が載置される平板状のアッパデッキ22が設けられている。
【0014】
図3に示されるように、シリンダブロック12は、各シリンダボア20の周囲にウォータジャケット24を備えている。ウォータジャケット24は、隣接するシリンダボア20間の連結部位を避けつつ、各シリンダボア20の外周面を包囲するように略環状に形成されている。シリンダブロック12は、このウォータジャケット24を形成する領域を境に以下に示される2つの構造体に分割されている。
【0015】
図4に示されるように、シリンダブロック12は、シリンダボア20を画定するシリンダライナ部25と、ウォータジャケット24の外側壁を構成するシリンダブロック本体30とに分割形成されている。シリンダライナ部25は、4つのシリンダライナ26aが一体に連結されたシリンダ連結体26と、その上部に設けられた上記アッパデッキ22とを備えている。シリンダ連結体26は、各気筒となる円筒状のシリンダライナ26aを直線状に配列し、それらの外周面同士を繋げるようにして一体に形成されている。
【0016】
シリンダ連結体26の上端部には、シリンダブロック12の頂部を構成するアッパデッキ22が一体形成されている。アッパデッキ22は平板状をなし、その上面にヘッドガスケット15を介してシリンダヘッド16が載置される(図1参照)。アッパデッキ22には、シリンダライナ部25とシリンダブロック本体30との締結に用いられる締結孔27や、ウォータジャケット24に連通される冷却水通路28が所定の位置にそれぞれ複数個ずつ形成されている。また、シリンダ連結体26の下端部には、各シリンダライナ26aの外周面に沿って支持突部29が周設されている。
【0017】
一方、シリンダブロック本体30は、クランクケース部21と、シリンダ連結体26の外周を囲むシリンダ外壁部31とを備えている。シリンダブロック本体30は、クランクケース部21の上部にシリンダ外壁部31を突出させた形状をなし、その外周には、複数の補強リブ33が縦横に延伸されるように形成されている。
【0018】
シリンダ外壁部31は、その内側にシリンダ連結体26の外周面と対向して配置される対向面を有してなり、全体として略四角枠状に形成されている。シリンダ外壁部31の上端部にはフランジ部35が設けられ、同フランジ部35の上面がシリンダライナ部25のアッパデッキ22の下面を当接支持する上部受け面35aとなっている。上部受け面35aにおいて、アッパデッキ22の締結孔27と対応する位置には、シリンダライナ部25とシリンダブロック本体30との締結に用いられる締結穴37が開口されている。
【0019】
図4及び図6に示されるように、シリンダ外壁部31の側壁には、外部からウォータジャケット24に冷却水を導入するための冷却水孔39が設けられている。冷却水孔39は、シリンダ外壁部31の外側と内側とを連通するように形成され、その孔位置は、シリンダ外壁部31の軸方向の上端部、即ち、シリンダライナ部25の軸方向の上端部に対応する位置に設定されている。この冷却水孔39は、冷却水配管等を通じて、エンジン11の外側部に取付けられるウォータポンプ(図示せず)に接続されている。このため、エンジン11では、クランクシャフト10(図1参照)の回転力を得てウォータポンプが駆動されることによって、同ウォータポンプから吐出された冷却水が冷却水孔39からウォータジャケット24に供給されるようになっている。
【0020】
次に、ヘッドガスケット15及びシリンダヘッド16の構成について説明する。
図5及び図6に示されるように、シリンダヘッド16には、シリンダボア20の上端部に形成される燃焼室60と連通する吸・排気通路61、62や、シリンダブロック12との締結に用いられる締結孔67等が形成されている。また、シリンダヘッド16には、これら吸・排気通路61、62や締結孔67等を避けるようにしてウォータジャケット64が形成されるとともに、このウォータジャケット64に連通する冷却水通路68がシリンダヘッド16の下面に開口されている。
【0021】
シリンダヘッド16と、シリンダブロック12を構成するシリンダライナ部25との間には、それらの隙間を気密に、かつ液密に閉塞するシール部材としてのヘッドガスケット15が介装されている。このヘッドガスケット15には、シリンダヘッド16とシリンダブロック12との締結に用いられる孔部57や、シリンダヘッド16の冷却水通路68とシリンダブロック12の冷却水通路28とを連通させる孔部58が透設されている。
【0022】
上記のように構成されたシリンダブロック12、ヘッドガスケット15及びシリンダヘッド16は図5に示される締結構造によって組み付けられている。
同図に示されるように、シリンダヘッド16の締結孔67、ヘッドガスケット15の孔部57、アッパデッキ22の締結孔27及びシリンダブロック本体30の締結穴37がそれぞれ同軸上に配置されている。そして、シリンダヘッド16の締結孔67の上方から挿入されるヘッドボルト77が、ヘッドガスケット15の孔部57、アッパデッキ22の締結孔27を挿通し、シリンダブロック本体30の締結穴37に締結されている。こうしたヘッドボルト77による締結を通じて、シリンダライナ部25がシリンダブロック本体30に組み付けられるとともに、ヘッドガスケット15及びシリンダヘッド16がアッパデッキ22の上部に組み付けられている。
【0023】
このようにシリンダライナ部25がシリンダブロック本体30に組み付けられた状態では、シリンダライナ部25のシリンダ連結体26が、シリンダブロック本体30のシリンダ外壁部31の内側に挿入されている。また、シリンダライナ部25の上端部において、アッパデッキ22の下面がシリンダ外壁部31の上部受け面35aに当接支持され、下端部において支持突部29の先端面がシリンダ外壁部31の内周面に当接支持されている。そして、シリンダ外壁部31の内周面とシリンダ連結体26の外周面とが対向して配置されるとともに、それらシリンダ外壁部31の内周面とシリンダ連結体26の外周面との間にはウォータジャケット24が形成されている。
【0024】
また、アッパデッキ22の下面とシリンダ外壁部31の上部受け面35aとの間、及びシリンダ連結体26の支持突部29の先端面とシリンダ外壁部31の内周面との間には、それぞれシール部材41、42が介装されている。これらシール部材41,42によって、ウォータジャケット24のシリンダヘッド16側の端部とその反対側に位置するクランクケース部21側の端部とにおいてシール性が確保されている。
【0025】
また、上記のような組み付け状態では、シリンダヘッド16の冷却水通路68、ヘッドガスケット15の孔部58及びシリンダブロック12の冷却水通路28がそれぞれ連通されている。これにより、冷却水孔39を通じて冷却水が供給されると、その冷却水は、シリンダブロック12のウォータジャケット24に導入されるとともに、アッパデッキ22の冷却水通路28、ヘッドガスケット15の孔部58を通過した後、冷却水通路68を通じてシリンダヘッド16のウォータジャケット64にも導入されるようになる。こうして、シリンダブロック12及びシリンダヘッド16の両方に冷却水が循環されることによって、エンジン11の駆動により高温となる各部位が冷却されるようになっている。
【0026】
また、ヘッドボルト77による締結を通じて、ヘッドガスケット15の両面に作用する面圧が高められているため、ヘッドガスケット15のシール性が十分に発揮されて、シリンダヘッド16とシリンダライナ部25との間の隙間が一層気密に、かつ液密に閉塞されるようになっている。しかしながら、特にエンジン11の駆動時にあっては、図6に示されるように、燃焼室60付近、即ちシリンダライナ部25の上端部付近がそれ以外の部位に比して高温となることから、シリンダヘッド16及びシリンダライナ部25はそれらの境界部付近において熱膨張による寸法変化が大きくなる。その分、冷却水により冷却されたときの熱収縮による寸法変化も大きくなり易い傾向にあるため、ヘッドガスケット15に作用する高い面圧を均一に保つことが困難になり、ヘッドガスケット15のシール性が十分に発揮されなくなるおそれがあった。
【0027】
こうしたことから、本実施形態においては、冷却水孔39とこれに対向するウォータジャケット24の内側壁、詳しくは、冷却水孔39とこれに最も近接して配設されるシリンダライナ26aの外周壁との間に、半球面形状をなす格子部材45が設けられている。
【0028】
次に、格子部材45の構成及びその配設態様について図7及び図8を参照して説明する。
図7及び図8に示されるように、格子部材45は、複数の線材46を互いに直交させ、交互に上下させてなる金属製の網からなる。格子部材45は、金属製の網を所定の形状に打ち抜いたものを、半球面形状にプレス成形することにより形成されている。こうして形成された格子部材45は、凸状をなす側をシリンダライナ26aの外周壁に向けて配置し、冷却水孔39の開口をウォータジャケット24側から塞ぐようにして配設されている。また、この場合、格子部材45は、その中心軸C1と冷却水孔39の中心軸C2とがそれぞれ一致するように配設されている。
【0029】
格子部材45は、凸状をなす側と反対側の開口縁部45aがシリンダ外壁部31の内周壁に固定されている。この場合、格子部材45の固定方法としては、例えば、溶着や、ブラケット等の固定具による支持固定等が挙げられる。このように格子部材45を配設した状態にあっては、同格子部材45についてその中心軸C1周りに位置する網目Eが冷却水孔39に対向するように配置されている。従って、冷却水孔39から導入された冷却水は、格子部材45の網目Eを通過してからシリンダライナ26aの外周壁に到達するようになっている。
【0030】
続いて、格子部材45の作用について図9及び図10を参照して説明する。
図9及び図10に示されるように、ウォータポンプから吐出された冷却水は、所定の吐出圧をもって冷却水孔39を通過しウォータジャケット24に導入される。ここでは、冷却水孔39とこれに対向して配設されたシリンダライナ26aの外周壁との間に格子部材45が配設されているため、冷却水孔39から導入された冷却水は、格子部材45の網目Eを通過することによってその勢いが弱められてシリンダライナ26aの外周壁に到達するようになる。つまり、シリンダライナ26aの外周壁について冷却水孔39と対向する部位、本実施形態において、シリンダライナ26aの上端部付近では、冷却水孔39からの冷却水はその勢いが弱められているため、冷却水孔39からの冷却水により局部的に過冷却されるのが抑制される。よって、シリンダライナ26aの上端部付近では、上述したように熱膨張による寸法変化が大きくなっているものの、局部的な過冷却が抑制されるため熱収縮に伴う寸法変化の大きさが極力小さく抑えられる。従って、上記熱収縮による寸法変化に起因してヘッドガスケット15に作用する面圧が局部的に低下するのが抑止され、同ヘッドガスケット15のシール性が好適に維持されるようになる。
【0031】
また、この場合、冷却水孔39から導入された冷却水は、格子部材45の網目Eを通過することによってシリンダライナ26aの外周壁に対し垂直方向のみならず、同方向を中心とした広い範囲に分散してウォータジャケット24に供給されるようになる。これにより、ウォータジャケット24に導入された冷却水がシリンダライナ26aの周囲にスムーズに供給されるため、冷却水孔39からの冷却水により局部的に過冷却される部位が生じたり、冷却水が滞留してヒートスポットが生じたりすることが抑止される。その結果、シリンダライナ26aの周囲がより均一に冷却されるようになるため、ヘッドガスケット15に作用する面圧が局部的に低下することが一層抑止され、同ヘッドガスケット15のシール性が一層好適に維持されるようになる。
【0032】
上記実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)冷却水孔39とこれに対向するシリンダライナ26aの外周壁との間には格子部材45が設けられ、同格子部材45の網目Eが冷却水孔39に対向するようにして配設されている。この場合、冷却水孔39から導入された冷却水は、格子部材45の網目Eを通過することでその勢いが弱められてウォータジャケット24の内側壁、即ちシリンダライナ26aの外周壁に到達するようになる。このように、冷却水孔39から導入された冷却水をシリンダライナ26aの外周壁に直接当てないようにすることで、同シリンダライナ26aの外周壁が冷却水孔39からの冷却水によって局部的に過冷却されるのを抑制することができる。そのため、冷却水孔39の位置をシリンダボア20のシリンダヘッド16側の端部付近に設定したとしても、シリンダライナ26aの外周壁が局部的に過冷却されて生じる熱収縮を極力小さく抑えることができる。よって、シリンダボア20の周囲全体が均等に冷却されないことに起因して、ヘッドガスケット15に作用する面圧が不均一になるのを抑止でき、同ヘッドガスケット15のシール性が損なわれないようにすることができる。
【0033】
また、本実施形態のように、シリンダブロック12がウォータジャケット24となる領域を境にして分割された分割式シリンダブロックであり、冷却水孔39の孔位置がシリンダ外壁部31の軸方向の上端部に設定されている場合には、冷却水孔39から導入された冷却水の圧力の影響がシール部材41に極力及ばないようにすることができる。従って、冷却水孔39とこれに対向するシリンダライナ26aの外周壁との間に格子部材45を設けることで、ウォータジャケット24のシリンダヘッド16側端部におけるシール性が損なわれないようにすることができる。
【0034】
(2)格子部材45は半球面形状に形成され、その凸状をなす側をシリンダライナ26aの外周壁に向けて配設されている。この場合、冷却水孔39から導入された冷却水を、ウォータジャケット24の内側壁、即ちシリンダライナ26aの外周壁に対し垂直方向のみならず、同方向を中心とした広い範囲に分散させてウォータジャケット24に供給することができる。これにより、冷却水孔39からの冷却水をシリンダライナ26aの外周壁に直接当てないようにしつつ、ウォータジャケット24に導入された冷却水をシリンダボア20の周囲においてスムーズに供給することが可能になる。従って、シリンダボア20の周囲がより均等に冷却されるようになるため、ヘッドガスケット15に作用する面圧をより均一にすることができ、同ヘッドガスケット15のシール性が損なわれるのを一層回避することができるようになる。
【0035】
(3)格子部材45は、複数の線材を互いに直交させ、交互に上下させてなる網により形成されている。この場合、網目サイズの異なる網を用いて格子部材45を形成することで、同格子部材45を通過する冷却水の流量を適宜調整することができる。また、格子部材45の形成材料としては安価で、かつ成形容易な網を採用しているため、同格子部材45を製造する際のコストを低く抑えることもできる。
【0036】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、格子部材45は半球面形状をなしていたが、その形状を、例えば、略箱状、断面コ字状、平板状といった形状に変更してもよい。
【0037】
・本実施形態において、格子部材45はその全体が網により形成されていたが、冷却水孔39に対向する箇所のみを部分的に網で形成するようにしてもよい。また、その場合には、冷却水孔39に対向しない箇所についても部分的に網で形成するようにしてもよい。
【0038】
・本実施形態において、格子部材45はその全体が網により形成されていたが、冷却水孔39に対向する箇所に複数の孔を備えたものであれば、網以外の構造材を用いて格子部材45を形成してもよい。なお、この場合、孔の形状としては、例えば、スリット状の孔(細孔)、円形孔、多角形孔等が挙げられる。
【0039】
・本実施形態において、格子部材45は金属製の網により形成されていたが、布製、或いは樹脂製の網を用いて同格子部材45を形成するようにしてもよい。
・本実施形態において、格子部材45はその中心軸C1と冷却水孔39の中心軸C2とがそれぞれ一致するように配設されていたが、同格子部材45の網目Eの一部が冷却水孔39に対向して配置されるのであれば、格子部材45及び冷却水孔39についてそれらの中心軸C1,C2を一致させなくてもよい。
【0040】
・本実施形態において、エンジン11では分割式のシリンダブロック12が採用されていたが、このシリンダブロック12を、シリンダライナ部25とシリンダブロック本体30とが一体成形されたシリンダブロックに変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態における水冷式エンジンの全体構成を示す斜視図。
【図2】同じく水冷式エンジンの主要部をなすシリンダブロックの斜視図。
【図3】同じくシリンダブロックの平面図。
【図4】同じくシリンダブロックの分割構造を示す分解斜視図。
【図5】図1のA−A断面図。
【図6】図1のB−B断面図。
【図7】格子部材の構成及びその配設態様を示す平面図。
【図8】格子部材の構成及びその配設態様を示す側面図。
【図9】格子部材を通過する冷却水の流れを示す断面図。
【図10】格子部材を通過する冷却水の流れを示す断面図。
【符号の説明】
【0042】
11…エンジン、12…シリンダブロック、15…ヘッドガスケット、16…シリンダヘッド、20…シリンダボア、24…ウォータジャケット、25…シリンダライナ部、31…シリンダ外壁部、39…冷却水孔、41,42…シール部材、45…格子部材、46…線材。




 

 


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