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発明の名称 自動変速機の摩擦係合装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−2991(P2007−2991A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−187488(P2005−187488)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
発明者 井上 雄二 / 田端 淳 / 鎌田 淳史
要約 課題
DLCコーティング処理のコストアップを最小限に抑えつつ、摩擦特性の向上が可能な摩擦係合装置を提供する。

解決手段
複数枚の第1摩擦プレート28と複数枚の第2摩擦プレート30とが互いに重ねられた形式のブレーキ装置22において、前記第1摩擦プレート28および前記第2摩擦プレート30の各摩擦面のうち、相対的に摩擦熱が生じ易い部分の摩擦面である端部摩擦プレート28aほど、耐熱性および耐摩耗性に優れたDLC−Si薄膜が厚く被着されることによって、互いの摩擦プレートの焼損および摩耗が好適に抑制される。
特許請求の範囲
【請求項1】
複数枚の第1摩擦プレートと複数枚の第2摩擦プレートとが互いに重ねられた形式の湿式摩擦係合装置であって、
前記第1摩擦プレートおよび前記第2摩擦プレートの各摩擦面のうち、相対的に摩擦熱が生じ易い部分の摩擦面ほど、ダイヤモンド状炭素薄膜が厚く被着されていることを特徴とする車両用自動変速機の摩擦係合装置。
【請求項2】
前記第1摩擦プレートおよび前記第2摩擦プレートの各摩擦面のうちの少なくとも一部の摩擦面には潤滑油溝が設けられ、
前記ダイヤモンド状炭素薄膜の膜厚が厚く被膜されている摩擦面と接する面ほど、前記潤滑油溝の溝面積が小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の摩擦係合装置。
【請求項3】
前記複数枚の第1摩擦プレートおよび第2摩擦プレートの各摩擦面のうち、相対的に摩擦熱が生じ易い摩擦面には、ダイヤモンド状炭素薄膜が被着され、相対的に摩擦熱が生じ難い摩擦面にはダイヤモンド状炭素薄膜が被着されていないものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用自動変速機の摩擦係合装置。
【請求項4】
前記複数枚の第1摩擦プレートのうちの厚み方向の両端に位置する端部摩擦プレートの摩擦面にはダイヤモンド状炭素薄膜が被着され、
前記複数枚の第1摩擦プレートおよび第2摩擦プレートの該端部摩擦プレートに挟まれるものの摩擦面にはダイヤモンド状炭素薄膜が被着されていないことを特徴する請求項3に記載の車両用自動変速機の摩擦係合装置。
【請求項5】
前記複数枚の第2摩擦プレートの摩擦面のうち、前記端部摩擦プレートに接する摩擦面は他の摩擦面に比較して前記潤滑油溝の面積が小さくされていることを特徴とする請求項4に記載の車両用自動変速機の摩擦係合装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用自動変速機に備えられる湿式摩擦係合装置に関するものであり、特にその湿式摩擦係合装置を構成する摩擦プレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用自動変速機は、エンジンと駆動輪との間に搭載されエンジンの出力を駆動輪に伝達する。この自動変速機内には、通常複数の遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤが互いに好適に連結されることによって複数の回転要素が構成される。さらに、それら回転要素の回転を他の回転要素に選択的に伝達するためのクラッチ装置および回転要素を選択的に回転停止させるためのブレーキ装置などの湿式摩擦係合装置が複数配置されている。
【0003】
上記湿式摩擦係合装置は、例えば、一方の回転要素にスプライン嵌合された複数枚の摩擦プレートと他方の回転要素にスプライン嵌合された複数枚の摩擦プレートとが交互に配置されることによって構成される摩擦係合要素を有し、その摩擦係合要素が油圧等によって作動するピストンによって互いに押圧されることによって動力が伝達される。
【0004】
近年、エンジンの高出力化に伴い、高トルクの出力を円滑に伝達できる摩擦係合装置が必要とされている。そこで、特許文献1には、摩擦プレートにシリコンを含んだダイヤモンド状炭素薄膜(以下DLC−Si薄膜という)を被着した摩擦係合装置が開示されている。このDLC−Si薄膜は耐熱性、耐摩耗性に優れ、μ−V特性は(動摩擦係数とすべり速度との関係)正勾配を示すことから動摩擦係数が高く、高トルクの出力に対しても円滑な係合が可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−343597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の特許文献1において、被着されているDLC−Si薄膜は、DLCコーティング処理のコストが高く、摩擦プレート全体にDLCコーティング処理を施すと大幅なコストアップを引き起こす恐れがあった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、DLCコーティング処理のコストアップを最小限に抑えつつ、摩擦特性の向上が可能な摩擦係合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、複数枚の第1摩擦プレートと複数枚の第2摩擦プレートとが互いに重ねられた形式の湿式摩擦係合装置において、前記第1摩擦プレートおよび前記第2摩擦プレートの各摩擦面のうち、相対的に摩擦熱が生じ易い部分の摩擦面ほど、ダイヤモンド状炭素薄膜が厚く被着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、相対的に摩擦熱が生じ易い部分の摩擦面にはDLC−Si薄膜が比較的厚く被着されているため、被着された摩擦プレートは、耐熱性および耐摩耗性に優れ、摩擦係合装置の円滑な係合を可能にする。一方、相対的に摩擦熱が少ない摩擦面には、DLC−Si薄膜を薄く被着するか、或いは被着しないことで、DLCコーティング処理によるコストアップの抑制が可能となる。
【0010】
ここで、請求項2にかかる発明では、請求項1に記載の自動変速機の摩擦係合装置において、前記第1摩擦プレートおよび前記第2摩擦プレートの各摩擦面のうちの少なくとも一部の摩擦面には潤滑油溝が設けられ、DLC−Si薄膜の膜厚が厚く被膜されている摩擦面と接する面ほど、前記潤滑油溝の溝面積が小さくされていることを特徴とする。このようにすれば、DLC−Si薄膜が厚く被着されている摩擦面に接する面は潤滑油溝の溝面積が小さくなるため潤滑油の供給量が少なく、DLC−Si薄膜が薄く被着されているか、或いは被着されていない摩擦面に接する面では潤滑油溝の溝面積が相対的に大きいため潤滑油の供給量が相対的に多くなる。ここで、DLC−Si薄膜が厚く被着されている摩擦面は、耐熱性、耐摩耗性に強いため潤滑油の供給量が少なくても摩擦プレートの焼損および摩耗が抑制される。一方、DLC−Si薄膜が薄く被着されているか、或いは被着されていない摩擦面は、相対的に多めの潤滑油が必要とされるが、上記の構成によって供給される潤滑油が多くなるため、摩擦係合要素内は効率よく潤滑油が分配される。また、DLC−Si薄膜が薄く被着されているか、或いは被着されていない摩擦面では、多くの潤滑油が供給されるので、耐熱性および耐摩擦性に非常に強くなることから、摩擦プレートの板厚を薄くする事も可能となり、全体としても自動変速機の軽量化が可能となる。
【0011】
また、請求項3にかかる発明では、請求項1または2に記載の自動変速機の摩擦係合装置において、前記複数枚の第1摩擦プレートおよび前記第2摩擦プレートの各摩擦面のうち、相対的に摩擦熱が生じ易い摩擦面には、ダイヤモンド状炭素薄膜が被着され、相対的に摩擦熱が生じ難い摩擦面にはダイヤモンド状炭素薄膜が被着されていないものであることを特徴とする。このようにすれば、相対的に摩擦熱が生じ易い摩擦面のみにDLC−Si薄膜を被着することで、DLCコーティング処理によるコストアップを最小限に抑制することができる。
【0012】
また、請求項4にかかる発明では、請求項3に記載の自動変速機の摩擦係合装置において、前記複数枚の第1摩擦プレートのうちの厚み方向の両端に位置する端部摩擦プレートの摩擦面にはダイヤモンド状炭素薄膜が被着され、前記複数枚の第1摩擦プレートおよび第2摩擦プレートの該端部摩擦プレートに挟まれるものの摩擦面にはダイヤモンド状炭素薄膜が被着されていないことを特徴する。このようにすれば、摩擦係合装置の係合の際、前記端部摩擦プレートは、隣接する摩擦プレートと局部接触し易く、その接触面での面圧は他の摩擦プレートの接触面に比べ高くなるので、端部摩擦プレートの摩擦面では摩擦熱が相対的に生じ易くなる。これより、その端部摩擦プレートにはDLC−Si薄膜を被着することによって、その摩擦熱に対処することができる。
【0013】
また、請求項5にかかる発明では、請求項4に記載の自動変速機の摩擦係合装置において、前記複数枚の第2摩擦プレートの摩擦面のうち、前記端部摩擦プレートに接する摩擦面は他の摩擦面に比較して前記潤滑油溝の面積が小さくされていることを特徴とする。このようにすれば、前記端部摩擦プレートはDLC−Si薄膜によって潤滑油が少なくても摩擦熱に対処できるため、その端部摩擦プレートに接する第2摩擦プレートの潤滑油溝の面積を小さくすることでその接触面に供給される潤滑油を減らし、残りの潤滑油を他の摩擦プレートに好適に分配することで効率的な潤滑が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施例が適用された車両用の自動変速機10の一部を示す要部断面図である。なお、図1において、自動変速機10は軸心Cに対して対称に構成され、その軸心Cよりも下側と後段部とが省略されている。
【0016】
自動変速機10は、図示しないエンジンと駆動輪との間に搭載され、エンジンの出力を駆動輪に伝達する。自動変速機10内に配置されるロックアップクラッチ14付のトルクコンバータ16は、エンジンから伝達されるクランクシャフトの回転を流体を介して自動変速機10の入力軸18に伝達する。
【0017】
また、自動変速機10内に備えられた遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置20であり、サンギヤS、遊星歯車P、その遊星歯車Pを自転および公転可能に支持するキャリヤCA、および遊星歯車Pを介して上記サンギヤSと噛み合うリングギヤRを備えている。
【0018】
上記遊星歯車装置20は、例えば、サンギヤSは入力軸18に連結されてその遊星歯車装置20の入力部材として機能し、キャリヤCAはブレーキ装置22に連結され選択的に回転停止させられるとともにその遊星歯車装置20の出力部材して機能し、リングギヤRは図示されないブレーキ装置に連結されることにより選択的に回転停止させられる。
【0019】
上記ブレーキ装置22は、遊星歯車装置20の径方向外側に配置され、ハブ24、摩擦係合要素26、およびピストン27によって主に構成されている油圧式摩擦係合装置である。
【0020】
摩擦係合要素26は、遊星歯車装置20のキャリヤCAに接続されているハブ24の外周面に軸心方向に移動可能、且つ相対回転不能ににスプライン嵌合されている複数枚の円環状の第2摩擦プレート30と、その第2摩擦プレート30の間に介在する複数枚の円環状の第1摩擦プレート28とで構成されている。
【0021】
第1摩擦プレート28の外周縁は、非回転部材であるハウジングケース32の筒部32aの内周部に設けられているスプライン溝34に軸心方向に移動可能にスプライン嵌合されている。なお、第1摩擦プレート28はハウジングケース32にスプライン嵌合されているため、そのハウジングケース32に対して相対回転不能とされている。
【0022】
図2はブレーキ装置22の摩擦係合要素26を拡大したものである。ハウジングケース32のスプライン溝34に嵌め入れられている第1摩擦プレート28は、その第1摩擦プレートの中で両端に位置する2枚の端部摩擦プレート28aとその内側に配置されている複数枚の内側摩擦プレート28bとで構成されている。
【0023】
端部摩擦プレート28aには、DLC−Si薄膜が被着されている。DLC−Si薄膜は、摩擦プレートの表面に予め被着された窒化層の表面に被着されている。この窒化層の層厚は、10μm〜600μmの範囲において設定可能であるが、より望ましい好適な範囲が50μm〜400μmであり、最も好適な範囲は100μm〜300μmである。窒化層の膜厚を10μmから600μmに設定することにより、イオン衝撃(スパッタリング)による多数の凹凸が形成される。
【0024】
また、上記窒化層の表面にイオン衝撃(スパッタリング)により形成された図示しない多数の微少な凹凸部は機械的なアンカー効果を有する。そのアンカー効果とは、接着剤が被着材の表面にある空隙(凹凸部)に侵入硬化し、釘又はくさびのような働きをすることをいう。その窒化層の表面には、DLC−Si薄膜が被覆されている。このDLC−Si膜は約2000Hvの硬さを備えている。
【0025】
また、DLC−Si薄膜は非晶質硬質炭素膜ともいう。従って、DLC−Si薄膜は非晶質(アモルファス)の炭素膜である。このDLCーSi薄膜の膜厚を0.1〜10μmの範囲にすることにより耐摩耗性が向上するが、さらに望ましくは1μmから5μmの膜厚の範囲とされている。この厚みが0.1μm未満では摩耗に対する耐久寿命が短く、実用に向かない。逆に10μmを越えると被膜が脆くなる。
【0026】
また、DLC−Si薄膜は、ダイヤモンド状炭素に対するシリコンの割合が1重量%〜80重量%の範囲で設定可能であるが、より望ましい範囲は5重量%から50重量%であり、最も好適な範囲は10重量%〜40重量%である。ダイヤモンド状炭素に対するシリコンの割合が1重量%未満の場合は、良好なDLC−Si薄膜を被膜形成することができない。ダイヤモンド状炭素に対するシリコンの割合が10重量%未満となると煤が発生しやすくなり、被膜自体が脆くなる。また、ダイヤモンド状炭素に対するシリコンの割合が80重量%を越えると炭素の比率が少なくなり、摩耗しやすくなる。なお、このダイヤモンド状炭素(DLC)にシリコンを含むことによってダイヤモンド状炭素の接着性が改善されている。
【0027】
ここで、端部摩擦プレート28aの表面加工法について説明する。なお、この表面加工方向については、例えば特開平10−130817号公報および特開平11−310868号公報に開示されている。
【0028】
すなわち、まず、端部摩擦プレート28aに公知の窒化処理を施す。これにより、この摩擦プレートには窒化層が形成される。この窒化層の表面に対して、ヘリウム、アルゴン等の希ガス或いは水素ガス等のクリーニングガスによるイオン衝撃(スパッタリング)を行う。そして、このイオン衝撃によって、この窒化層表面には機械的なアンカー効果を有する多数の微少な凹凸部が略均一に形成される。
【0029】
次に、その凹凸部が形成されている窒化層に対してイオンプレーティング(アーク、ホロカソード方式など)、スパッタリング、真空蒸着、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等により、DLC−Si薄膜を被覆形成する。
【0030】
このようにして被覆形成された端部摩擦プレート28aは、他の摩擦材に比べ耐摩耗性、耐熱性に優れており、μ−V特性(摩擦係数μとすべり速度Vとの関係)は正の勾配(右肩上がり)を有している。すなわち、すべり速度が大きくなるにつれて動摩擦係数も大きくなる。これにより、クラッチ係合開始後などのすべり速度が大きい時においても円滑な係合が可能となる。
【0031】
第2摩擦プレート30は、ハブ24のスプライン溝24aに嵌め入れられている。この第2摩擦プレート30の第1摩擦プレート28と接触する面において、端部摩擦プレート28aと接する摩擦面には端部摩擦材36が固着され、内側摩擦プレート28bと接する摩擦面には内側摩擦材38が固着されている。
【0032】
図3は、図2において端部摩擦材36が固着されている側の第2摩擦プレート30を矢印Aの方向から見た矢視図であり、図4は、図2において内側摩擦材38が固着されている側の第2摩擦プレート30を矢印Aの方向から見た矢視図である。なお、図3および図4は、円環状の第2摩擦プレート30の摩擦面の一部を示しており、他の部分は省略されている。
【0033】
それぞれの摩擦面には長方形状の摩擦材が径方向に2段に周期的に配置され、隣接する摩擦材の間には潤滑油が流入するための潤滑油溝39がそれぞれ形成されている。これら図3および図4を比較すると、図3の端部摩擦材36は図4の内側摩擦材38に比べ面積が広くなっているため、それぞれの摩擦材の間に形成されている潤滑油溝39の溝幅Dは図4に比べ図3の溝幅Dの方が狭くなっている。これより、端部摩擦プレート28aと接する側(図3)の潤滑油溝39の溝面積は内側摩擦プレート28bと接する側(図4)の溝面積に比べ小さく、端部摩擦プレート28aに接する側の第2摩擦プレート30は、流入できる溝面積が小さいことから潤滑油の流入量が相対的に少なくなる構造となっている。なお、図3および図4の第2摩擦プレート30の内周部はハブ24に嵌め入れられるためのスプライン歯構造となっており、第2摩擦プレート30のスプライン歯とハブ24のスプライン歯の間隙を通って潤滑油が摩擦係合要素26内に供給される。また、端部摩擦材36と内側摩擦材38とはその面積が異なるのみであり、摩擦材料として、例えばそれぞれペーパ、セミメタリック、焼結合金、コルク等が使用される。
【0034】
図1に戻り、ピストン27は、環状形状を有し、ハウジングケース32に突設されている第1突壁40および第2突壁42の間にOリングを介して摺動可能に嵌め入れられている。また、ピストン27の摩擦係合装置26側の背面には、ピストン27、第1突壁40、第2突壁42、およびハウジングケース32で囲まれる油密な油室44が形成されている。
【0035】
上述のように構成されているブレーキ装置22において図示しない油路から前記油室44に作動油が流入すると、その油室44内の油圧によってピストン27が摩擦係合要素26に向かって移動し、摩擦係合要素26を押圧する。ここで摩擦係合要素26のピストン27に押圧される側とは反対側ではスナップリング46がハウジングケース32の筒部32aの内周縁に固定され、摩擦係合要素26の軸心方向への移動を阻止しているので第1摩擦プレート28および第2摩擦プレート30は互いに係合させられる。この係合によって、遊星歯車装置20のキャリヤCAの回転はハブ24を介して回転停止させられる。
【0036】
ここで、摩擦係合要素26の押圧時において、摩擦係合要素26の両端に位置する端部摩擦プレート28aは、径方向に対してわずかに傾きながら第2摩擦プレート30に接触し易く、端部摩擦プレート28aとその端部摩擦プレート28aと接触する第2摩擦プレート30に固着されている端部摩擦材36とが局部的に高い面圧で接触し易くなっている。これより、端部摩擦プレート28aと端部摩擦材36との接触部の一部の面圧が他の部位に比べ高くなり摩擦熱が生じ易くなっている。
【0037】
この摩擦熱に対処するため、端部摩擦プレート28aにはDLC−Si薄膜が被着されている。このDLC−Si薄膜はその膜厚が厚くなるほど耐熱性および耐摩耗性が向上することが知られ、膜厚を好適に設定することによって摩擦熱による焼損および面圧の増大による摩耗を抑制することが可能となる。
【0038】
さらに、DLC−Si薄膜は耐熱性、耐摩耗性に優れるため、多量の潤滑油を必要としないという利点がある。潤滑油は入力軸18内に設けられている油路から遠心力によって摩擦係合要素26に供給される。潤滑油は、ハブ24のスプライン溝24aの隙間等からそれぞれの摩擦プレートに供給されるが、前述のように端部摩擦プレート28aと端部摩擦材36との接触面は潤滑油溝の溝面積が小さいため潤滑油の供給量が少なくなり、内側摩擦プレート28bと内側摩擦材38との接触面には端部摩擦プレート28aの接触面に比べ多くの潤滑油が供給され、効率よく摩擦係合要素26内の各プレートに潤滑油が行き渡る。
【0039】
上述のように、本実施例によれば、複数枚の第1摩擦プレート28と複数枚の第2摩擦プレート30とが互いに重ねられた形式のブレーキ装置22において、前記第1摩擦プレート28および前記第2摩擦プレート30の各摩擦面のうち、相対的に摩擦熱が生じ易い部分の摩擦面である端部摩擦プレート28aほど、耐熱性および耐摩耗性に優れたDLC−Si薄膜が厚く被着されることによって、互いの摩擦プレートの焼損および摩耗が好適に抑制される。
【0040】
また、本実施例によれば、DLC−Si薄膜の膜厚が厚く被膜されている摩擦面と接する面ほど潤滑油溝39の溝幅Dを狭くし、溝面積を小さくすることによって潤滑油の供給量を抑制させている。このようにすれば、DLC−Si薄膜が厚く被着されている摩擦プレートほど、潤滑油の供給量が少なくとも耐熱性および耐摩耗性に優れており、DLC−Si薄膜が被着されていない摩擦プレートに多くの潤滑油を供給することで潤滑油が効率よく分配される。
【0041】
また、本実施例によれば、相対的に摩擦熱が生じ難い摩擦面にはDLC−Si薄膜を被着させないことによって、DLC−Si薄膜の被着によるコストアップをいっそう抑制することができる。
【0042】
また、本実施例によれば、摩擦係合要素26のうち、その両端に配置されている端部摩擦プレート28aの摩擦面が最も摩擦熱が生じ易いため、その端部摩擦プレート28aにDLC−Si薄膜を被着させることで、実用的な摩擦係合装置となる。
【0043】
また、本実施例によれば、端部摩擦プレート28aはDLC−Si薄膜の被着により耐熱性および耐摩耗性に強いため、端部摩擦材36側の潤滑油溝39の溝面積を小さくすることで端部摩擦プレート28aに供給される潤滑油を減らし、内側摩擦材38側の溝面積を大きくすることで供給される潤滑油を増やすことにより潤滑油を効率よく活用することができる。さらに、内側摩擦プレート28bには潤滑油が多くの潤滑油が供給されるため、耐摩耗性および耐熱性に非常に強くなることから、内側摩擦プレート28bの板厚を薄くすることも可能となる。これによって、摩擦係合要素26の軸心方向長さを短縮することができ、全体としても自動変速機を軽量化することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0045】
例えば、図3および図4に示される潤滑油溝39の形状は、必ずしも本実施例に限られるものではなく、潤滑油の流量が好適に設定できる範囲において自由に設定することができる。例えば、潤滑油溝39をメッシュ状(網目状)、放射状、斜線状等に設けることによっても実施することができる。
【0046】
また、本実施例ではブレーキ装置22にDLC−Si薄膜を被着しているがブレーキ装置22に限られるものではなく、自動変速機内のクラッチ装置の摩擦係合要素にDLC−Si薄膜を被着することにより実施することも可能である。
【0047】
また、本実施例では、第1摩擦プレート28側にDLC−Si薄膜を被着し第2摩擦プレート30に摩擦材が固着されているが、第1摩擦プレート28に摩擦材を固着し、第2摩擦プレート30にDLC−Si薄膜を被着して実施することもできる。
【0048】
また、本実施例では、端部摩擦プレート28aにDLC−Si薄膜を被着し、内側摩擦プレート28bにはDLC−Si薄膜は被着されていないが、内側摩擦プレート28bにもDLC−Si薄膜を好適な膜厚で被着して実施することもできる。
【0049】
また、本実施例では、シリコンを含んだダイヤモンド状炭素薄膜(DLC−Si薄膜)を窒化層の表面に被覆したが、必ずしもダイヤモンド状炭素薄膜にシリコンを含む必要はなく、さらに、窒化層以外にも炭化層または炭窒化層の表面にDLCコーティングを施すことも可能である。
【0050】
また、本実施例では、端部摩擦プレート28a全体にDLC−Si薄膜が被着されているが、端部摩擦プレート28aが係合時に接触する摩擦面のみにDLC−Si薄膜を被着して実施することもできる。
【0051】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例が適用された自動変速機の要部断面図である。
【図2】図1の摩擦係合要素の拡大図である。
【図3】図2の端部摩擦プレートを矢印Aの方向からみた矢視図である。
【図4】図2の内側摩擦プレートを矢印Aの方向からみた矢視図である。
【符号の説明】
【0053】
28:第1摩擦プレート 30:第2摩擦プレート 39:潤滑油溝




 

 


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