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発明の名称 無端金属ベルトの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−2864(P2007−2864A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−180397(P2005−180397)
出願日 平成17年6月21日(2005.6.21)
代理人 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
発明者 白川 周平
要約 課題
厚さの異なる二種類のエレメントを、該エレメントが組み付けられるフープ積層体のフープ長に応じて効率的に組付けることのできる無端金属ベルトの製造方法を提供する。

解決手段
厚さの異なるエレメント1およびエレメント2をそれぞれ異なるロット(A〜D,a〜d)ごとに製造し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する工程と、フープ積層体の周長に適合するようにエレメント1とエレメント2それぞれのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出されたエレメント1およびエレメント2をフープ積層体に組付ける第二工程と、任意のエレメント間で試験体の引抜き試験をおこない、引抜き荷重と規定値との大小により、規定値に対応したクリアランス程度となっていない場合には、エレメント1またはエレメント2のロットごとの組付け枚数を入れ替えることによって微調整する第三工程と、からなる製造方法である。
特許請求の範囲
【請求項1】
厚さの異なる二種類のエレメントである複数の第一のエレメントおよび第二のエレメントに、フープ積層体を組付けることによって無端金属ベルトを製造する無端金属ベルトの製造方法であって、
第一のエレメントおよび第二のエレメントをそれぞれ異なるロットごとに製造し、各エレメントをロットごとに集積し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する第一工程と、フープ積層体の周長に適合するように前記平均板厚に基づいて、第一のエレメントのロットごとの組付け数量と第二のエレメントのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出された第一のエレメントおよび第二のエレメントにフープ積層体を組付ける第二工程と、任意のエレメント間に試験体を挿入し、該試験体を引抜く際の引抜き荷重と規定値との大小により、エレメント間のクリアランスが所定の規定値に対応したクリアランス程度となっているかを判断し、規定値に対応したクリアランス程度となっていない場合には、第一のエレメントまたは第二のエレメントのロットごとの組付け枚数を入れ替えることによって微調整する第三工程と、からなることを特徴とする無端金属ベルトの製造方法。
【請求項2】
第一のエレメントおよび第二のエレメントには、前記第三工程における組付け枚数の微調整の対象エレメントが予め設定されていることを特徴とする請求項1に記載の無端金属ベルトの製造方法。
【請求項3】
厚さの異なる二種類のエレメントである複数の第一のエレメントおよび第二のエレメントに、フープ積層体を組付けることによって無端金属ベルトを製造する無端金属ベルトの製造方法であって、
第一のエレメントおよび第二のエレメントをそれぞれ異なるロットごとに製造し、各エレメントをロットごとに集積し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する第一工程と、フープ積層体の周長に適合するように前記平均板厚に基づいて、第一のエレメントのロットごとの組付け数量と第二のエレメントのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出された第一のエレメントおよび第二のエレメントを直線状に並べて全長を測定し、該全長が、エレメントにフープ積層体を組付けた際の隣接エレメント間の所定のクリアランスを満足する全長となるかを判断し、満足しない全長の場合には選定されたエレメントの組替えをおこなう第二工程と、第二工程にて選定されたエレメントにフープ積層体を組付ける第三工程と、からなることを特徴とする無端金属ベルトの製造方法。
【請求項4】
第一のエレメントおよび第二のエレメントには、前記第二工程における組替え対象エレメントが予め設定されていることを特徴とする請求項3に記載の無端金属ベルトの製造方法。
【請求項5】
厚さの異なる二種類のエレメントである複数の第一のエレメントおよび第二のエレメントに、フープ積層体を組付けることによって無端金属ベルトを製造する無端金属ベルトの製造方法であって、
第一のエレメントおよび第二のエレメントをそれぞれ異なるロットごとに製造し、各エレメントをロットごとに集積し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する第一工程と、フープ積層体の周長に適合するように前記平均板厚に基づいて、第一のエレメントのロットごとの組付け数量と第二のエレメントのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出された第一のエレメントおよび第二のエレメントを直線状に並べて全長を測定し、該全長が、エレメントにフープ積層体を組付けた際の隣接エレメント間の所定のクリアランスを満足する全長となるかを判断し、満足しない全長の場合には選定されたエレメントの組替えをおこなう第二工程と、第二工程にて選定されたエレメントにフープ積層体を組付ける第三工程と、任意のエレメント間に試験体を挿入し、該試験体を引抜く際の引抜き荷重と規定値との大小により、エレメント間のクリアランスが所定の規定値に対応したクリアランス程度となっているかを判断し、規定値に対応したクリアランス程度となっていない場合には、第一のエレメントまたは第二のエレメントのロットごとの組付け枚数を入れ替えることによって微調整する第四工程と、からなることを特徴とする無端金属ベルトの製造方法。
【請求項6】
第一のエレメントおよび第二のエレメントには、前記第二工程における組替え対象エレメントが予め設定されており、さらに、前記第四工程における組付け枚数の微調整の対象エレメントが予め設定されていることを特徴とする請求項5に記載の無端金属ベルトの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式無段変速装置に使用される無端金属ベルトの製造方法に係り、特に、厚さの異なる二種類のエレメントを、該エレメントが組み付けられるフープ積層体のフープ長に応じて効率的に組付けることのできる無端金属ベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置に使用される高負荷伝動用の無端金属ベルトは、環状のフープを積層させてフープ積層体を形成し、各フープ積層体を複数のブロック(エレメント)にて係止固定させることによって形成されている。
【0003】
ところで、上記する無端金属ベルトの製造工程において、まずエレメントの製造は、プレス機にて極薄(通常は、例えば、厚さが1.75mmと1.9mmの二種類)の金属板から一気に4つのエレメント(例えば、エレメントA,B,C,D)を精密打ち抜き加工(ファインブランキング)し、かかる打ち抜き加工を連続しておこなうことにより、各板厚のエレメントを500個程度ずつ製造し(よって500×8種類で4000個程度)、それらをミキシングすることによって例えば1000個ずつの4つの箱に収容し、かかる箱の中から400個程度のエレメントを抜き出して整列機にて整列させ、別途製造された既述するフープ積層体にこのエレメント群を組付けることによっておこなわれている。400個程度のエレメント群を組付けると、両端部のエレメント間には若干の隙間(エンドプレー)が生じるが、この段階でこのエンドプレー長を測定し、板厚の異なるエレメントの組み合わせを演算しながら、エンドプレー内に演算長に見合う複数個のエレメントを嵌め込むことによって無端金属ベルトが大略形成されるが、エンドプレー長を満足するエレメントの組み合わせは、既に組み付けられた400個のエレメントも含めて微調整する必要が生じ、かかる調整には多大な時間と労力が費やされていた。また、最終段階で、さらに任意のエレメント間にシムを差込み、シムを引抜く際の引抜き荷重を算定し、該引抜き荷重が一定値以下の場合には、エレメント間隙間が許容隙間よりも大きいと判断され、したがって、既に差し込まれたエレメント群の中から、数枚のエレメントを抜き出し、上記差分値が一定値以上となるようにエレメントを組替えて再度挿入し直すという最終作業にもさらに多大な労力が必要とされていた。また、板厚の異なるエレメントを初期の段階で混ぜ合わせることとしていたため、各板厚のエレメント数が均等になることは稀であり、例えば総エレメント数が400枚の場合に、薄い板厚のエレメントが160枚、厚い板厚のエレメントが240枚といった具合に、その枚数比率が10%程度異なることが往々にして生じていた。このように、厚さの異なる二種類のエレメントを使用してなる無端金属ベルトの製造に際しては、より効率的な製造方法やシステムの開発が切望されているのが現状である。
【0004】
ところで、出願人は特許文献1において、無端金属ベルトの製造方法にかかる発明を開示している。この発明は、エレメントのピッチ線よりも外側の板厚と、ピッチ線上の板厚との板厚差を測定する測定ステップと、測定された板厚差に基づいてエレメント間のクリアランスを決定する決定ステップと、決定されたクリアランスとなるようにエレメントをフープに組付ける組付けステップとからなる製造方法に関するものである。これは、エレメント間のクリアランスと伝達効率との間の関係に基づき、伝達効率が最適になるようにエレメント間のクリアランスを決定することを目的とした発明である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−218802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の無端金属ベルトの製造方法によれば、伝達効率が最適になるようにエレメント間のクリアランスが決定されたエレメントを各ロットから抽出可能となる。しかし、この発明は、原則的に板厚の異なるエレメントを組み合わせてなる無端金属ベルトを対象としたものではなく、1種類の板厚のエレメントを各ロットごとに組み合わせて製造された無端金属ベルトに関するものであり、二種類の板厚のエレメントから構成される無端金属ベルトに対応することはできない。また、フープ積層体の周長に応じたロットごとのエレメントの選定がおこなわれるとはいっても、実際には、フープ積層体にエレメントを組付けた際のクリアランスと、別途に算定されたフープ積層体長およびエレメント組付け時のエレメント間のクリアランスには大きな相違があり、最終的な微調整、すなわち、エレメントの組替えをおこなう必要が生じるため、かかる微調整に対応することはできない。
【0007】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、板厚の異なる二種類のエレメントがそれぞれに異なるロット単位で製造され、かかる複数のロットおよび板厚の異なるエレメントを組付け対象のフープ積層体に効率的に組付けるとともに、最終の微調整段階においても、組替えが必要な場合には、効率的なエレメントの組替えをおこなうことのできる無端金属ベルトの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による無端金属ベルトの製造方法は、厚さの異なる二種類のエレメントである複数の第一のエレメントおよび第二のエレメントに、フープ積層体を組付けることによって無端金属ベルトを製造する無端金属ベルトの製造方法であって、第一のエレメントおよび第二のエレメントをそれぞれ異なるロットごとに製造し、各エレメントをロットごとに集積し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する第一工程と、フープ積層体の周長に適合するように前記平均板厚に基づいて、第一のエレメントのロットごとの組付け数量と第二のエレメントのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出された第一のエレメントおよび第二のエレメントにフープ積層体を組付ける第二工程と、任意のエレメント間に試験体を挿入し、該試験体を引抜く際の引抜き荷重と規定値との大小により、エレメント間のクリアランスが所定の規定値に対応したクリアランス程度となっているかを判断し、規定値に対応したクリアランス程度となっていない場合には、第一のエレメントまたは第二のエレメントのロットごとの組付け枚数を入れ替えることによって微調整する第三工程と、からなることを特徴とする。
【0009】
厚さの異なる二種類のエレメントとは、例えば、1.75mmと1.9mmの厚さのエレメントなどを使用するものであり、それぞれの厚みのエレメントは、複数のロットごとに製造される。この製造方法は、例えば、1台の精密打ち抜き機にそれぞれの板厚の金属板を設置し、例えば4箇所で打ち抜くことで一気に4つのエレメントが製造される方法が適用でき、各打ち抜き箇所ごとにロット製造されるものである。
【0010】
まず、第一工程にて、二種類のエレメントをそれぞれロットごとに製造/集積する。この第一工程においては、ロットごとに任意に選定されたエレメントの板厚の測定をおこなう。この測定箇所は、例えば、エレメントのうち、該エレメントがプーリのシーブと当接して該シーブから押圧力を受ける基体部の左右2箇所と、エレメントの頂部の左右2箇所の計4箇所に設定することができる。かかるエレメントの左右の複数箇所の板厚の平均値から、それぞれのロットのエレメントの板厚を代表させる。エレメントの厚さ、特にエレメントの左右のシーブ当接面の厚さは製品ロットごとに異なる傾向があり、ロットごとに厚さの偏差には特有の傾向が生じ得る。第一工程においては、かかるロットごとの偏差を勘案したロットごとの平均板厚を算定しておき、以後の工程におけるフープ積層体周長に適応したエレメントの選定に供しようとするものである。
【0011】
次に、第一工程において算定されたロットごとの平均板厚に基づいて、組付け対象のフープ積層体の周長に適応したエレメントの選定をおこなう。ここで、既述する二種類の板厚でそれぞれが4ロットで製造される実施例の場合には、各板厚で各ロットから同程度の数量のエレメントが選定されることが望ましい。すべてのロットから均等数量のエレメントが選定されることにより、未使用エレメントの多いロットの発生を可及的に防止するためである。尤も、0.1mmから1mm未満の精度が要求されることから、若干の未使用エレメントを有するロットの発生は許容せざるを得ない。
【0012】
選定された複数のエレメントを整列機にて直線状に並べ、全体のエレメント長を算定し、該エレメントが組み付けられるフープ積層体の周長に応じたエレメント長であること、すなわち、フープ積層体に少なくとも組付け可能な長さであることを確認する。確認後、並べられた全てのエレメントをフープ積層体に組付ける(第二工程)。
【0013】
次に、隣接する任意のエレメント間に例えばシムなどの試験体を自動挿入し、該試験体をエレメント間から引抜く際の引抜き荷重を算定する。引抜き荷重とエレメント間のクリアランスには予め対応関係があり(対応関係が求められており)、所望のクリアランスに対応した引抜き荷重(規定値)と実際の引抜き荷重の大小を比較し、クリアランスが所望のクリアランス程度となっていない場合(クリアランスが広すぎたり、狭すぎる)には、エレメントの交換をおこなう。なお、ここでいうエレメントの交換とは、第一のエレメントまたは第二のエレメントのロットごとの組付け枚数を入れ替えることであり、極めて微妙なクリアランス調整の場合には、例えば第一のエレメントにおけるロット間の組替えをおこなえばよいし、より大きな調整が必要な場合には、第一のエレメントと第二のエレメントを組替えることによりクリアランスの調整がおこなわれる。
【0014】
本発明では、厚みごとに、さらにはロットごとにその平均板厚を測定しておき、それらを混ぜ合わせることなく、組付け対象のフープ積層体の周長に適応するような各エレメントの選択をおこなう方法であるため、最終的な誤差調整(クリアランス調整)は極めて容易となる。また、可及的に各厚さでロットごとに均等数量のエレメントを選択するようにすることで、未使用エレメントの多いロットの発生の防止にも繋がる。
【0015】
また、本発明による無端金属ベルトの製造方法の好ましい実施形態において、第一のエレメントおよび第二のエレメントには、前記第三工程における組付け枚数の微調整の対象エレメントが予め設定されていることを特徴とする。
【0016】
例えば、420個のエレメントが選定された場合に、予め整列機にて整列されたエレメントのうち、最後尾の20個のエレメントは第一のエレメントと第二のエレメントが交互に並べられ、この20個をクリアランスの微調整対象のエレメントとして組替え微調整をおこなうものである。このように微調整用のエレメントを予め設定しておくことで、この実施例の場合には、他の400個のエレメントは何ら調整の必要がなく、したがって最終微調整作業を格段に効率化することが可能となる。
【0017】
また、本発明による無端金属ベルトの製造方法の他の実施形態は、厚さの異なる二種類のエレメントである複数の第一のエレメントおよび第二のエレメントに、フープ積層体を組付けることによって無端金属ベルトを製造する無端金属ベルトの製造方法であって、第一のエレメントおよび第二のエレメントをそれぞれ異なるロットごとに製造し、各エレメントをロットごとに集積し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する第一工程と、フープ積層体の周長に適合するように前記平均板厚に基づいて、第一のエレメントのロットごとの組付け数量と第二のエレメントのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出された第一のエレメントおよび第二のエレメントを直線状に並べて全長を測定し、該全長が、エレメントにフープ積層体を組付けた際の隣接エレメント間の所定のクリアランスを満足する全長となるかを判断し、満足しない全長の場合には選定されたエレメントの組替えをおこなう第二工程と、第二工程にて選定されたエレメントにフープ積層体を組付ける第三工程と、からなることを特徴とする。
【0018】
本発明は、第二工程において直線状に並べられたエレメントの全長と、組付けられるフープ積層体の周長との間に、予め最適なエレメント間クリアランスが形成されるような関係が求められていて、フープ積層体の周長に対して測定されたエレメントの全長が最適な長さとなっていない場合には、この段階でエレメントの組替えをおこなおうとするものである。エレメントを直線状に並べた際の全長のみでは、環状のフープ積層体に組み付けられた際のエレメントの全長またはエレメント間のクリアランスを一義的に決定することはできない。そこで、作業員の経験則などを踏まえてこれらの関係を導き出すことにより、エレメントをフープ積層体に組付ける前段階でエレメント間のクリアランスの微調整を完了させることが可能となる。このことは、最終の試験体による引抜き荷重計測などを不要とし、したがって、製造設備の簡素化にも繋がることとなる。
【0019】
また、本発明による無端金属ベルトの製造方法の好ましい実施形態において、第一のエレメントおよび第二のエレメントには、前記第二工程における組替え対象エレメントが予め設定されていることを特徴とする。
【0020】
本発明は、第二工程にてエレメント間のクリアランスの微調整を完了させる実施形態の際に、その微調整対象のエレメントを既述するような10〜20個程度の特定のエレメントに設定しておくものであり、クリアランスの微調整作業のさらなる効率化を図るものである。
【0021】
また、本発明による無端金属ベルトの製造方法の他の実施形態は、厚さの異なる二種類のエレメントである複数の第一のエレメントおよび第二のエレメントに、フープ積層体を組付けることによって無端金属ベルトを製造する無端金属ベルトの製造方法であって、第一のエレメントおよび第二のエレメントをそれぞれ異なるロットごとに製造し、各エレメントをロットごとに集積し、各エレメントの左右の板厚から該エレメントの平均板厚を算定する第一工程と、フープ積層体の周長に適合するように前記平均板厚に基づいて、第一のエレメントのロットごとの組付け数量と第二のエレメントのロットごとの組付け数量を決定し、ロットごとに取り出された第一のエレメントおよび第二のエレメントを直線状に並べて全長を測定し、該全長が、エレメントにフープ積層体を組付けた際の隣接エレメント間の所定のクリアランスを満足する全長となるかを判断し、満足しない全長の場合には選定されたエレメントの組替えをおこなう第二工程と、第二工程にて選定されたエレメントにフープ積層体を組付ける第三工程と、任意のエレメント間に試験体を挿入し、該試験体を引抜く際の引抜き荷重と規定値との大小により、エレメント間のクリアランスが所定の規定値に対応したクリアランス程度となっているかを判断し、規定値に対応したクリアランス程度となっていない場合には、第一のエレメントまたは第二のエレメントのロットごとの組付け枚数を入れ替えることによって微調整する第四工程と、からなることを特徴とする。
【0022】
本発明は、既述するエレメント組付け前に組付け後のエレメント間の最適なクリアランスを保証するための工程と、さらに完成品の高い精度を期すために、既述するフープ積層体にエレメントを組付けた後の試験体によるクリアランス測定の双方をおこなう製造方法に関するものである。本発明の製造方法によれば、極めて高い精度で無端金属ベルトの製造をおこなうことができる。また、かかる製造方法においても、より好ましくは、第一のエレメントおよび第二のエレメントには、前記第二工程における組替え対象エレメントが予め設定されており、さらに、前記第四工程における組付け枚数の微調整の対象エレメントが予め設定されていることにより、効率的なエレメント微調整作業を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の無端金属ベルトの製造方法によれば、厚さの異なる二種類のエレメントをそれぞれ複数のロットごとに製造し、ロットごとに集積するとともに各ロットにおけるエレメントの平均板厚を算定しておき、かかる平均板厚に基づいて、予め求められている全エレメント長さとフープ積層体に組み付けられた際のエレメント間の最適クリアランスとの関係などに基づいて、特定の微調整対象のエレメントのみを組替えながら無端金属ベルトを製造するため、従来に比して、格段に効率的で高精度な無端金属ベルトの製造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、無端金属ベルトの一部を示した斜視図を、図2は、エレメントの正面図をそれぞれ示したものである。図3〜図5はそれぞれ、本発明の無端金属ベルトの製造方法の実施形態のフローを示したものである。
【0025】
図1は、環状の無端金属ベルト1の一部を示したものである。無端金属ベルト1は、複数(通常は9枚程度)の金属製のフープ21,21,21,…を積層してなるフープ積層体2,2を複数のエレメント3,3,3,…の左右のサドル部に組付けることにより形成される。図2は、この無端金属ベルト1がプーリ4を構成するテーパ状のシーブ面41,41に嵌め込まれた状態を示している。ここで、エレメント3は、シーブ面41,41と当接する基体部32と、該基体部32との間にサドル部を形成する頂部31とから構成されている。左右のフープ積層体2,2の高さを決定するサドル面は、図示するピッチ線Pからの距離(寸法)にて決定される。プーリ4のシーブ面41と該シーブ面41に当接する基体部32の側面はともにテーパ状となっており、各エレメント3,3,…にはシーブ面41からの押圧力によって径方向外側への荷重が作用することとなるが、各エレメント3,3,…はフープ積層体2,2にて結束されているため、該フープ積層体2,2の張力により、径方向外側への移動が制約を受けることとなる。その結果、プーリシーブ面41,41とエレメント3との間に摩擦力が生じ、シーブ面41,41と無端金属ベルト1との間でトルクの伝達がおこなわれることとなる。
【0026】
図3は、本発明の無端金属ベルトの製造方法の一実施形態のフローを示したものである。まず、ステップS1で、2種類の厚さの異なるエレメント1,2をそれぞれ複数(例えば4つ)のロット単位で製造する。例えば、エレメント1の厚さを1.8mm、エレメント2の厚さを1.65mmと設定することができる。それぞれの厚さのエレメントの製造方法は、一気に4つのエレメントが製造できる打ち抜き機を使用し、該打ち抜き機に所定厚さの金属板を連続設置し、連続的に打ち抜き加工をおこなうことにより、打ち抜き箇所に応じて4ロットのエレメント1,2が製造される。
【0027】
図2に戻り、左右のサドルハイトh1とh2との差が生じないようにエレメントの選定がおこなわれる(図3のステップS2)。次に、例えば、各ロットごとに2000〜3000個程度のエレメント1,2を製造後、各ロットごとに、任意のエレメントを抜き出し、その平均板厚を算定する(ステップS3)。この平均板厚算定に際してのエレメントの厚さ測定箇所は、図2に示すような基体部32のピッチ線P上の左右2箇所の領域(a領域およびb領域)と、頂部の左右2箇所の領域(c領域およびd領域)である。この計4箇所における測定結果の平均値からエレメントの平均板厚を求め、かかる平均板厚をロットの代表値とする。抜き取られるエレメント数量、すなわち、平均板厚を決定する際の選定エレメントの数量は任意である。同一板厚のエレメントであっても、ロットごとに左右の偏差や上下の偏差に特有の傾向があるため、最終的に各ロットから均等数量のエレメントを選定してフープ積層体に組付けることにより、かかるロットごとの偏差は打ち消される方向にはたらくものと考えられる。
【0028】
各ロットの平均板厚が算定された後、エレメントに組み付けられる別途製造のフープ積層体2,2の周長に適応するように各ロット(エレメント1のロットA、B,C,Dとエレメント2のロットa,b,c,d)から同程度の数量となり、かつフープ積層体の周長以下となるようにエレメントパターンの選定がおこなわれる(ステップS4)。ここで、コンピュータ内に打ち込まれた各ロットごとの平均板厚と、フープ積層体の周長との関係から取り出されるエレメントパターンが決定される。例えば、400個のエレメントが必要な場合に、ロットAからは50個、ロットBからは48個、ロットCからは52個、ロットDからは50個、ロットaからは53個、ロットbからは49個、ロットcからは49個、ロットdからは49個が選択されるといった具合である。
【0029】
次に、選定されたエレメントパターンを直線状に整列させ、エレメントの全長がフープ積層体の周長に応じた長さか否かの確認をおこなった後に(ステップS5)、選定されたエレメントにフープ積層体を組付ける(ステップS6)。
【0030】
ステップ4の段階でフープ積層体の周長に見合う最適なエレメントが選択されているはずであるが、実際の組付け作業においては、エレメント間に許容外のクリアランスが生じている、すなわち、最適なエレメントの選定ではないことが往々にて生じ得る。そこで、ステップS7において、フープ積層体が組み付けられた任意の隣接エレメント間に試験体であるシムを挿入し、該シムを引抜く際の引抜き荷重を測定する。無端金属ベルトとして最適なエレメント間クリアランスは既知のものであるため、別途、この最適なクリアランスとなるようなシム引抜き荷重(規定値)を算定しておく(ステップS8)。なお、この引抜き荷重の測定は、精度を期すために、複数箇所でおこなわれるのが好ましい。
【0031】
引抜き荷重の実測値が規定値または規定値近傍の値で許容される範囲か否かを判断し(ステップS9)、許容範囲外の値となった場合には、ステップS10にて、組み付けられたエレメントの中から、エレメントの交換作業をおこなう。このエレメントの交換作業は、例えば、厚さの異なるエレメント1,2間での交換の場合や、より微妙な調整の場合には、同厚(例えばエレメント1)において、ロット間での交換(ロットAからのエレメントとロットBからのエレメント)の場合がある。ここで、かかる最終微調整対象のエレメントは、予め設定されているのが望ましい。例えば、組み付けられた400個のエレメントのうち、最後尾の20個のエレメントを厚さ微調整対象のエレメントとしておくことで、効率的な最終微調整作業を招来できる。なお、従来は、当初段階で全てのロットのエレメントを混ぜ合わせた後に組み付け作業を実施しており、さらには、最終組替え微調整作業の対象エレメントが組み付けられた全てのエレメントに及んでいたために、かかる最終微調整作業に多大な労力が費やされ、歩留まりの低下が余儀なくされていた。
【0032】
ステップS10において、エレメントの単品精度や選定パターン、エレメントパターンの長さ、エンドプレーなどのデータの蓄積をおこなっていき(ステップS11)、かかる蓄積データに基づく統計データに基づいて、最適なエレメントパターンの選定がおこなわれるようにステップ4へのフィードバック処理もおこなわれ得る。
【0033】
図4は、本発明の無端金属ベルトの製造方法の他の実施形態のフローを示したものである。ステップS10,11,12は既述するステップ1,2,3と同様である。本実施形態では、フープ積層体にエレメントを組付ける作業におけるこれまでの経験則に基づいて、フープ積層体の周長に応じて、最終的に組み付けられるエレメント間クリアランスが最適なクリアランスとなるようなエレメントの全長を決定しておき、かかるエレメント全長となるように各ロットからほぼ均等数量のエレメントパターンを選択するものであり、ステップS13にてこの最適なエレメントパターンの選択がおこなわれる。また、図3のステップS5と同様にエレメントパターン全長の長さの確認がステップ14にておこなわれる。本実施形態では、この段階で、組み付けられるエレメントパターンの最適性が保証されることとなるため、フープ積層体に選定エレメントの組付けが終了した段階で(ステップS15)、最終のエレメント組替え微調整作業が省略されることとなる。本実施形態によれば、シム抜き試験機を不要とでき、さらには最終微調整作業を省略できることから、歩留まりを格段に向上させることができる。
【0034】
図5は、図3に示す製造方法と図4に示す製造方法を組み合わせた形態の製造方法のフローを示したものである。すなわち、ステップS20〜30は、既述するステップS1〜11、およびステップS10〜15に対応している。
【0035】
本実施形態では、図4に示す製造方法にて最適なエレメント間クリアランスを得ることができることは前提としながらも、最終的なチェック過程を製造工程の中に組み入れることで、より高品質な無端金属ベルトを保証することを目的としている。尤も、本実施形態であっても、最終微調整(ステップS27〜S29)はあくまでも最適なエレメント間クリアランスが確保されているか否かを確認するステップに過ぎず、製造作業の歩留まりの低下を招来するものではない。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】無端金属ベルトの一部を示した斜視図。
【図2】エレメントの正面図。
【図3】無端金属ベルトの製造方法の一実施形態のフロー。
【図4】無端金属ベルトの製造方法の他の実施形態のフロー。
【図5】無端金属ベルトの製造方法の他の実施形態のフロー。
【符号の説明】
【0038】
1…無端金属ベルト、2…フープ積層体、21…フープ、3…エレメント、31…頂部、32…基体部、4…プーリ、41…シーブ面、a,b,c,d…厚さ計測領域




 

 


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