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発明の名称 内燃機関の適合方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−2677(P2007−2677A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−180518(P2005−180518)
出願日 平成17年6月21日(2005.6.21)
代理人 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
発明者 江原 雅人
要約 課題
計測工数の増大を抑えつつ、内燃機関の制御パラメータの適合値を精度よく求める方法を提供する。

解決手段
制御パラメータXの値を様々な値に設定して同制御パラメータXの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータYの値を計測し、同特性パラメータYと制御パラメータXとの関係を全運転状態に渡って求め、少なくとも同関係に基づいて各運転状態における制御パラメータの適合値の存在範囲Rmを推定する。次いで同存在範囲Rm内において集中的に制御パラメータXの値を様々な値に設定して同制御パラメータXの各値毎に特性パラメータYの値を計測し、同特性パラメータYと制御パラメータXとの各運転状態における関係を求め、同関係に基づいて各運転状態における制御パラメータXの適合値を求める。
特許請求の範囲
【請求項1】
機関負荷と機関回転数によって定まる内燃機関の各運転状態において該内燃機関の特性が要求条件を満たすようにする制御パラメータの値である制御パラメータの適合値を求める方法であって、
上記制御パラメータの値を様々な値に設定して該制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて該特性パラメータと上記制御パラメータとの関係を全運転状態に渡って求め、少なくとも該関係に基づいて各運転状態における上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定し、次いで該存在範囲内において上記制御パラメータの値を様々な値に設定して該制御パラメータの各値毎に上記特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて該特性パラメータと上記制御パラメータとの各運転状態における関係を求め、該関係に基づいて各運転状態における上記制御パラメータの適合値を求める、内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法。
【請求項2】
機関負荷と機関回転数によって定まる内燃機関の各運転状態において該内燃機関の特性が要求条件を満たすようにする制御パラメータの値である制御パラメータの適合値を求める方法であって、
上記制御パラメータの値を様々な値に設定して該制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータ、並びに機関負荷と機関回転数をパラメータとして含むモデル式である全域モデルのモデル式を求め、該全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定することと、
内燃機関の各運転状態毎に、内燃機関の運転状態がその運転状態になる場合において上記制御パラメータの値を上記適合値の存在範囲内で様々な値に設定した場合における上記特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータをパラメータとして含む一方、機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式である局所モデルのモデル式を求め、該局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を求めることと、を含む内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法。
【請求項3】
上記制御パラメータの適合値の存在範囲が、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値の他、上記全域モデルのモデル式を求める際に上記特性パラメータの計測を実施した上記制御パラメータの範囲と、上記全域モデルのモデル式を求める際のモデル化誤差と、上記制御パラメータを制御する精度と、上記制御パラメータを計測する精度と、上記特性パラメータを計測する精度とのうちの少なくとも一つに基づいて推定される、請求項2に記載の内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法。
【請求項4】
機関負荷と機関回転数によって定まる内燃機関の各運転状態において該内燃機関の特性が要求条件を満たすようにする制御パラメータの値である制御パラメータの適合値を求める方法であり、
上記制御パラメータの値を様々な値に設定して該制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて、特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータ、並びに機関負荷と機関回転数をパラメータとして含むモデル式である全域モデルのモデル式を求め、該全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を求めると共に、
内燃機関の運転状態のうちの予め定められた特定運転状態については、内燃機関の運転状態が上記特定運転状態になる場合において上記制御パラメータの値を様々な値に設定した場合における上記特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて、特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータをパラメータとして含む一方、機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式である局所モデルのモデル式を求め、該局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を再度求めるようになっていて、
上記特定運転状態以外の運転状態に関しては上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値を最終的な適合値とする一方、上記特定運転状態に関しては上記局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて再度求められた上記制御パラメータの適合値を最終的な適合値とする、制御パラメータの適合値を求める方法であって、
上記局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲は、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて決定される、内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法。
【請求項5】
上記局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲が、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値の他、上記全域モデルのモデル式を求める際に上記特性パラメータの計測を実施した上記制御パラメータの範囲と、上記全域モデルのモデル式を求める際のモデル化誤差と、上記制御パラメータを制御する精度と、上記制御パラメータを計測する精度と、上記特性パラメータを計測する精度とのうちの少なくとも一つに基づいて決定される、請求項4に記載の内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の適合方法、すなわち内燃機関の制御において用いられる制御パラメータの適合値を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の制御は、トルク、排気エミッション及び燃費等の内燃機関の特性についての要求条件を満たすようにスロットル開度、点火時期、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量等の制御パラメータの値を変化させることによって行われる。そしてこれらの制御パラメータには、そのときの内燃機関に対する要求に応じて、例えば機関負荷(トルク)及び機関回転数により定まる運転状態毎に最適な値が存在するため、このような運転状態毎の制御パラメータの最適な値を目標値として予め設定しておく必要がある。
【0003】
このような運転状態毎の制御パラメータの最適な値は、一般に、上記制御パラメータを様々な値に設定し、そのときの発生トルクやNOX排出量等の内燃機関の特性を表す特性パラメータを計測してその結果から運転状態毎の各制御パラメータの最適な値(すなわち、適合値)を求める作業、いわゆる適合作業によって求められる。
【0004】
斯かる適合作業においては、定常運転時における特性パラメータの値を計測する必要があることから、制御パラメータの値を変化させて設定される各計測点毎に運転状態が安定するまで待ってから、すなわち例えばトルク、機関回転数がほぼ一定の値に収束するまで待ってから計測が行われる。このため、各計測点において特性パラメータの計測値を得るまでに長い時間を要する。また、適合精度を高いものとするためには、多くの計測点において計測が必要であり、場合によっては計測点数が数千〜数十万点にも及ぶ。このため、適合作業全体の計測工数は膨大なものとなる。
【0005】
そこで、各計測点間の間隔を広げ、すなわち各計測点間の制御パラメータの値の差を大きくして計測点数を低減すると共に、特性パラメータの計測値に基づいてモデル式を求め、斯かるモデル式に基づいて計測点間の各制御パラメータの値に対する特性パラメータの値を推定することが提案されている(特許文献1)。このようにすると、計測工数を低減して各制御パラメータの最適な値(すなわち、適合値)を求めることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−206456号公報
【特許文献2】特開2004−68729号公報
【特許文献3】特開2000−248991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特性パラメータの値を表すモデル式として各制御パラメータに加えて機関負荷及び機関回転数もパラメータとして含むモデル式を用い、実際に運転が行われると想定される全ての運転状態(以下、単に「全運転状態」という)を一つのモデル(以下、「全域モデル」という)で表現するようにする場合がある。そしてこのようにする場合には比較的少ない計測工数で全運転状態における各制御パラメータの適合値を求めることが可能となる。
【0008】
ところが、この場合に上記各制御パラメータの適合値として求められる値は、実際にはその精度が充分でない場合がある。この原因の一つは上記全域モデルを構築するためには全運転状態に渡って計測を実施する必要があるため、計測期間が相当長期間となり、その結果気象条件や内燃機関の状態等の計測条件に変化が生じてモデル精度が低下することにある。
【0009】
一方、上記特性パラメータの値を表すモデル式として各運転状態毎に機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式(すなわち、機関負荷と機関回転数を固定した場合のモデル式)を求めるようにし、このモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を求める方法もある。すなわち、この場合には機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まない(すなわち、機関負荷と機関回転数を固定した場合の)モデル(以下、「局所モデル」という)が構築されて、各制御パラメータの適合値が求められる。
【0010】
この局所モデルを用いた場合には、一般に上記全域モデルを用いた場合に比べて上記制御パラメータの適合値を精度よく求めることが出来るのであるが、各運転状態毎にモデル式を求めるのに充分な数の特性パラメータの計測値が必要となるため、計測工数は上記全域モデルを用いた場合に比べて相当に大きくなってしまう。
【0011】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的は計測工数の増大を抑えつつ、内燃機関の制御パラメータの適合値を精度よく求める方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法を提供する。
【0013】
請求項1に記載の発明は、機関負荷と機関回転数によって定まる内燃機関の各運転状態において同内燃機関の特性が要求条件を満たすようにする制御パラメータの値である制御パラメータの適合値を求める方法であって、上記制御パラメータの値を様々な値に設定して同制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて同特性パラメータと上記制御パラメータとの関係を全運転状態に渡って求め、少なくとも同関係に基づいて各運転状態における上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定し、次いで同存在範囲内において上記制御パラメータの値を様々な値に設定して同制御パラメータの各値毎に上記特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて同特性パラメータと上記制御パラメータとの各運転状態における関係を求め、同関係に基づいて各運転状態における上記制御パラメータの適合値を求める、内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法を提供する。
【0014】
請求項1に記載の発明のようにすれば、まず上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定し、その後、その存在範囲内において集中的に特性パラメータの計測を行うことになるので、計測工数の増大を抑えつつ制御パラメータの適合値を精度よく求めることが可能となる。すなわち、制御パラメータの適合値の精度を効率的に向上することが出来る。
【0015】
請求項2に記載の発明は、機関負荷と機関回転数によって定まる内燃機関の各運転状態において同内燃機関の特性が要求条件を満たすようにする制御パラメータの値である制御パラメータの適合値を求める方法であって、上記制御パラメータの値を様々な値に設定して同制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータ、並びに機関負荷と機関回転数をパラメータとして含むモデル式である全域モデルのモデル式を求め、同全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定することと、内燃機関の各運転状態毎に、内燃機関の運転状態がその運転状態になる場合において上記制御パラメータの値を上記適合値の存在範囲内で様々な値に設定した場合における上記特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータをパラメータとして含む一方、機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式である局所モデルのモデル式を求め、同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を求めることと、を含む内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法を提供する。
【0016】
先にも述べたように上記全域モデルを用いて制御パラメータの適合値を求める場合には、計測工数が少ない反面、求められる適合値の精度が充分でない場合がある。他方、上記局所モデルを用いれば求められる適合値の精度を向上することができるが、その場合には計測工数が相当増大してしまう。
【0017】
これに対し、請求項2に記載の発明では、まず上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定し、次いでその存在範囲内でのみ制御パラメータを様々な値に設定して特性パラメータの値の計測を行い局所モデルのモデル式を求めるようになっている。このようにすると局所モデルのモデル式を求めるための計測工数が大幅に低減できるので、計測工数の増大を抑えつつ制御パラメータの適合値を精度よく求めることが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明では請求項2に記載の発明において、上記制御パラメータの適合値の存在範囲が、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値の他、上記全域モデルのモデル式を求める際に上記特性パラメータの計測を実施した上記制御パラメータの範囲と、上記全域モデルのモデル式を求める際のモデル化誤差と、上記制御パラメータを制御する精度と、上記制御パラメータを計測する精度と、上記特性パラメータを計測する精度とのうちの少なくとも一つに基づいて推定されるようになっている。
【0019】
請求項3に記載の発明のようにすれば、上記制御パラメータの適合値の存在範囲(すなわち、局所モデルを作成する範囲)を適切に推定することができ、計測工数の不必要な増大を招くことなくより高精度な適合値を求めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、機関負荷と機関回転数によって定まる内燃機関の各運転状態において同内燃機関の特性が要求条件を満たすようにする制御パラメータの値である制御パラメータの適合値を求める方法であり、上記制御パラメータの値を様々な値に設定して同制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて、特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータ、並びに機関負荷と機関回転数をパラメータとして含むモデル式である全域モデルのモデル式を求め、同全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を求めると共に、内燃機関の運転状態のうちの予め定められた特定運転状態については、内燃機関の運転状態が上記特定運転状態になる場合において上記制御パラメータの値を様々な値に設定した場合における上記特性パラメータの値を計測し、それら特性パラメータの計測値に基づいて、特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータをパラメータとして含む一方、機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式である局所モデルのモデル式を求め、同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を再度求めるようになっていて、上記特定運転状態以外の運転状態に関しては上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値を最終的な適合値とする一方、上記特定運転状態に関しては上記局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて再度求められた上記制御パラメータの適合値を最終的な適合値とする、制御パラメータの適合値を求める方法であって、上記局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲は、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて決定される、内燃機関の制御パラメータの適合値を求める方法を提供する。
【0021】
上述したように上記全域モデルを用いて制御パラメータの適合値を求める場合には、計測工数が少ない反面、求められる適合値の精度が充分でない場合がある。他方、上記局所モデルを用いれば求められる適合値の精度を向上することができるが、その場合には計測工数が相当増大してしまう。
【0022】
これに対し請求項4に記載の発明では、局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲は、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて決定されるようになっている。このようにすると局所モデルのモデル式を求めるための計測工数が大幅に低減できるので、計測工数の増大を抑えつつ制御パラメータの適合値を精度よく求めることが可能となる。
【0023】
また、上記制御パラメータの適合値の精度の問題は、実際の運転で使用される頻度の高い運転状態に対して設定された制御パラメータの適合値の精度が充分でない場合に特に影響が大きく、良好な制御を実現できなくなる恐れがある。
【0024】
これに対し、請求項4に記載の発明では、予め定められた特定運転状態以外の運転状態に関しては上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値を最終的な適合値とする一方、上記特定運転状態に関しては局所モデルのモデル式を求め、同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値を最終的な適合値とするようになっている。つまり、請求項4に記載の発明では、例えば実際の運転で使用される頻度の高い運転状態等を上記特定運転状態とすることで、予め定めた内燃機関の制御上重要な運転状態に対してのみ局所モデルを構築し、同局所モデルを用いてより高精度の制御パラメータの適合値が求められるようになっている。そしてこのようにすることで、計測工数の増大をより一層抑制しつつ、制御パラメータの適合値の精度の向上をより効果的に行うことができる。
【0025】
請求項5に記載の発明では請求項4に記載の発明において、上記局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲が、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値の他、上記全域モデルのモデル式を求める際に上記特性パラメータの計測を実施した上記制御パラメータの範囲と、上記全域モデルのモデル式を求める際のモデル化誤差と、上記制御パラメータを制御する精度と、上記制御パラメータを計測する精度と、上記特性パラメータを計測する精度とのうちの少なくとも一つに基づいて決定されるようになっている。
【0026】
請求項5に記載の発明のようにすれば、上記局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲(すなわち、局所モデルを作成する範囲)を適切に決定することができ、計測工数の不必要な増大を招くことなくより高精度な適合値を求めることができる。
【発明の効果】
【0027】
各請求項に記載の発明は、計測工数の増大を抑えつつ内燃機関の制御パラメータの適合値を精度よく求めることができるという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。図1は後述する適合作業の対象となる内燃機関、並びに当該適合作業に用いられる各計測装置及び制御装置を示している。
【0029】
図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面上には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
【0030】
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15に連結される。吸気管15内にはステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。また、吸気弁6には吸気弁6の開閉弁特性、すなわち位相角及び作用角を変更するための可変動弁機構20が取付けられている。
【0031】
一般に、図1に示したような内燃機関の制御は、内燃機関の運転中に変化するトルク、排気エミッション及び燃費等についての要求条件を満たすように、すなわち実際のトルク、排気エミッション及び燃費等が目標トルク、目標排気エミッション及び目標燃費等となるように、内燃機関の運転状態に影響を与える制御可能なパラメータ(すなわち、制御パラメータ)の値を変化させることによって行われる。
【0032】
このような制御パラメータには、そのときの内燃機関に対する要求に応じて、例えば、機関負荷及び機関回転数により定まる運転状態毎に最適な値が存在する。例えば、点火プラグ10による点火時期については、内燃機関のトルク、燃費や失火等を考慮すると、一般に、トルクが最も大きくなるような最小進角時期、いわゆるMBT(Minimum Advance for Best Torque)付近で点火を行うのが好ましい。このMBTは、全ての運転状態に対して同じではなく、例えば機関回転数が異なると、MBTも異なる時期となる。また、一方で、内燃機関の排気浄化のために内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒(図示せず)を高温にする必要があるような場合には、機関本体1から排出される排気ガスの温度(以下、「排気温度」と称す)を高めるために上記MBTよりも或る程度進角側の時期に点火を行うのが好ましい。
【0033】
このような内燃機関に対する要求に応じた運転状態毎の各制御パラメータの最適な値(すなわち、適合値)は、数値計算のみから算出することは困難であるため、通常、内燃機関の形式毎に適合作業によって求められる。ここで、適合作業とは、特定の制御パラメータを様々な値に設定し、各制御パラメータの値毎に特性パラメータ(制御パラメータの値を変更することによりその値が変わり得るパラメータであって内燃機関の特性を表すパラメータ)を計測し、これら特性パラメータの計測値から各運転状態に対する制御パラメータの最適な値(すなわち、適合値)を求める作業を意味する。
【0034】
図1には、適合作業の対象となる内燃機関に加えて、この内燃機関の特性パラメータを計測する各計測装置(各種センサ)、並びに制御装置40が示されている。図示したように、適合作業の対象となる内燃機関に対しては、スロットル弁18の開度を計測するためのスロットル開度センサ31がスロットル弁18に取付けられ、また、吸気管15内を流れる空気の流量を計測するエアフロメータ32がスロットル弁18上流側の吸気管15内に取付けられる。さらに、機関本体1から排出された排気ガスの温度を計測する排気温度センサ33及び機関本体1から排出された排気ガスの空燃比を計測する空燃比センサ34が排気ポート又は排気マニホルド19に取付けられる。さらに、機関本体1のクランクシャフト(図示せず)には内燃機関による駆動力であるトルクを検出するためのトルクセンサ(図示せず)が取付けられる。これらセンサ31〜34は、制御装置40に接続されている。制御装置40ではこれらセンサ31〜34によって計測された各特性パラメータの値が記憶されると共に演算処理され、各制御パラメータの適合値が求められるようになっている。なお、本実施形態ではこの制御装置40において後に詳述するような方法で各制御パラメータの適合値が求められるようになっている。
【0035】
なお、上述したスロットル弁駆動用のステップモータ17、燃料噴射弁11及び点火プラグ10も制御装置40に接続されており、これらステップモータ17等は制御装置40によって駆動、制御される。すなわち、制御装置40によって制御パラメータの値が変更される。
【0036】
ところで、一般に適合作業においては、定常運転時における特性パラメータの値を計測する必要があることから、制御パラメータの値を変化させて設定される各計測点毎に運転状態が安定するまで待ってから、すなわち例えばトルク、機関回転数がほぼ一定の値に収束するまで待ってから計測が行われる。このため、各計測点において特性パラメータの計測値を得るまでに長い時間を要する。また、適合精度を高いものとするためには、多くの計測点において計測が必要であり、場合によっては計測点数が数千〜数十万点にも及ぶ。このため、適合作業全体の計測工数は膨大なものとなってしまう。
【0037】
そこで、近年、各計測点間の間隔を広げ、すなわち各計測点間の制御パラメータの値の差を大きくして計測点数を低減すると共に、特性パラメータの計測値に基づいてモデル式を求め、斯かるモデル式に基づいて計測点間の各制御パラメータの値に対する特性パラメータの値を推定することが提案されている。このようにすると、計測工数を低減して各制御パラメータの適合値を求めることが可能となる。
【0038】
そして上記特性パラメータの値を表すモデル式として各制御パラメータに加えて機関負荷及び機関回転数もパラメータとして含むモデル式を用い、全運転状態(すなわち、実際に運転が行われると想定される全ての運転状態)を一つの全域モデルで表現するようにする場合がある。このようにする場合には比較的少ない計測工数で全運転状態における各制御パラメータの適合値を求めることが可能となる。
【0039】
ところが、この場合に上記各制御パラメータの適合値として求められる値は、実際にはその精度が充分でない場合がある。この原因の一つは上記全域モデルを構築するためには全運転状態に渡って計測を実施する必要があるため、依然として計測期間が相当長期間となり、その結果気象条件や内燃機関の状態等の計測条件に変化が生じてモデル精度が低下することにある。
【0040】
一方、上記特性パラメータの値を表すモデル式として各運転状態毎に機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式(すなわち、機関負荷と機関回転数を固定した場合のモデル式)を求めるようにし、このモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値を求める方法もある。すなわち、この場合には機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まない局所モデル(すなわち、機関負荷と機関回転数を固定した場合のモデル)が構築されて、各制御パラメータの適合値が求められる。
【0041】
この局所モデルを用いた場合には、一般に上記全域モデルを用いた場合に比べて上記制御パラメータの適合値を精度よく求めることが出来るのであるが、各運転状態毎にモデル式を求めるのに充分な数の特性パラメータの計測値が必要となるため、計測工数は上記全域モデルを用いた場合に比べて相当に大きくなってしまう。
【0042】
そこで本実施形態では、以上のような点を踏まえ、計測工数の増大を抑えつつ制御パラメータの適合値を精度よく求めるために、以下で説明するような方法で各制御パラメータの適合値を求めるようにしている。
【0043】
すなわち、本実施形態では、まず上記制御パラメータの値が全運転状態に渡って様々な値に設定されて同制御パラメータの各値毎に内燃機関の特性を表す特性パラメータの値が計測され、それら特性パラメータの計測値に基づいて同特性パラメータと上記制御パラメータとの関係が全運転状態に渡って求められ、少なくともこの関係に基づいて各運転状態における上記制御パラメータの適合値の存在範囲が推定されるようになっている。
【0044】
そして次に、同存在範囲内において集中的に上記制御パラメータの値が様々な値に設定されて同制御パラメータの各値毎に上記特性パラメータの値が計測され、それら特性パラメータの計測値に基づいて同特性パラメータと上記制御パラメータとの各運転状態におけるより詳細な関係が求められ、同関係に基づいて各運転状態における上記制御パラメータの適合値が求められる。
【0045】
このようにすると、まず上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定し、その後、その存在範囲内において集中的に特性パラメータの計測を行うことになるので、計測工数の増大を抑えつつ制御パラメータの適合値を精度よく求めることが可能となる。すなわち、制御パラメータの適合値の精度を効率的に向上することが出来る。
【0046】
より詳細には本実施形態では、まず上記制御パラメータの値を全運転状態に渡って様々な値に設定して計測した特性パラメータの計測値に基づいて特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータ、並びに機関負荷と機関回転数をパラメータとして含むモデル式である全域モデルのモデル式が求められる。そして、同全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲が推定される。
【0047】
次いで、内燃機関の各運転状態毎に、内燃機関の運転状態が同一の運転状態になる場合において上記制御パラメータの値を上記適合値の存在範囲内で様々な値に設定した場合における上記特性パラメータの値が計測され、それら特性パラメータの計測値に基づいて特性パラメータの値を表すモデル式であって上記制御パラメータをパラメータとして含む一方、機関負荷と機関回転数をパラメータとして含まないモデル式である局所モデルのモデル式が求められる。そして同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値が求められる。
【0048】
このように、本実施形態ではまず上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定し、次いでその存在範囲内でのみ制御パラメータを様々な値に設定して特性パラメータの値の計測を行い局所モデルのモデル式を求めるようになっている。このようにすると局所モデルのモデル式を求めるための計測工数が大幅に低減できるので、計測工数の増大を抑えつつ制御パラメータの適合値を精度よく求めることが可能となる。なおここで、全域モデルのモデル式で用いられる機関負荷を表すパラメータとしては発生トルクや筒内空気充填率(筒内充填空気質量を、1気圧、25℃の状態において排気量に相当する容積を占める空気の質量で除算した値)等を用いることができる。
【0049】
また、他の実施形態においては上記全運転状態について上記局所モデルのモデル式が求められ、同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値が求められるようになっていてもよいが、本実施形態では、上記全運転状態のうちの予め定められた特定運転状態についてのみ局所モデルのモデル式が求められ、同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値が求められるようになっている。
【0050】
すなわち、本実施形態では、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定する際に、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値のみに基づいて上記制御パラメータの適合値Gpが求められるようになっている。そして、上記特定運転状態に関しては更に上述したように上記局所モデルのモデル式を求めて、それから得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値Lpを再度求めるようになっている。
【0051】
そして本実施形態では、上記特定運転状態以外の運転状態に関しては上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値Gを最終的な適合値とする一方、上記特定運転状態に関しては上記局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて再度求められた上記制御パラメータの適合値Lpを最終的な適合値とするようにしている。
【0052】
このようにすると、計測工数の増大をより一層抑制しつつ、制御パラメータの適合値の精度の向上をより効果的に行うことができる。すなわち、上述したような制御パラメータの適合値の精度の問題は、実際の運転で使用される頻度の高い運転状態に対して設定された制御パラメータの適合値の精度が充分でない場合に特に影響が大きく、良好な制御を実現できなくなる恐れがある。
【0053】
これに対し、本実施形態では上述したように、予め定められた特定運転状態以外の運転状態に関しては上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値Gpを最終的な適合値とする一方、上記特定運転状態に関しては局所モデルのモデル式を求め、同局所モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて求められた上記制御パラメータの適合値Lpを最終的な適合値とするようになっている。つまり、本実施形態では、例えば実際の運転で使用される頻度の高い運転状態等を上記特定運転状態とすることで、予め定めた内燃機関の制御上重要な運転状態に対してのみ局所モデルを構築し、同局所モデルを用いてより高精度の制御パラメータの適合値が求められるようになっている。したがって、本実施形態のようにすることで、計測工数の増大をより一層抑制しつつ、制御パラメータの適合値の精度の向上をより効果的に行うことができるのである。
【0054】
次に、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記制御パラメータの適合値の存在範囲を推定する方法、すなわち上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記局所モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時の制御パラメータの値を設定する範囲(以下、「局所モデル作成範囲」という)を決定する方法ついて説明する。
【0055】
図2は本実施形態において上記局所モデル作成範囲を決定するために実施される方法について説明するためのフローチャートである。また、図3は図2のフローチャートで示される制御フローを実施した場合の一例について説明するための図である。以下、これらの図を参照しつつ説明する。なお、ここでは説明及び理解を容易にするために一つの特性パラメータYに対し一つの制御パラメータXを用いて説明する。すなわち図3の横軸は制御パラメータXを示し、縦軸は特性パラメータYを示している。また図3の曲線Yaは、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値を示したものである。
【0056】
図2の制御フローがスタートすると、まずステップ101において上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値(すなわち上記曲線Ya)に基づいて特性パラメータYの値の最良値Ypが求められる。またこれと同時に、上記特性パラメータYの値が最良値Ypとなる時の上記制御パラメータXの値、すなわち上記全域モデルに基づいた上記制御パラメータXの適合値Gpも求められる。なお、事前に上記特性パラメータYの最良値Yp及び制御パラメータXの適合値Gpが求められている場合には、ステップ101においてこれらの値の読込みが行われる。
【0057】
ステップ101において上記特性パラメータYの最良値Yp及び制御パラメータXの適合値Gpが求められると(もしくは読込まれると)ステップ103に進む。ステップ103では後のステップにおいて上記局所モデル作成範囲を決定するために使用される上記特性パラメータYの最良値Ypからの落ち幅ΔYが設定される。この落ち幅ΔYは、予め定めた方法によって設定されるようになっていても良いし、予め定めた一定値とされても良い。すなわち、例えば上記落ち幅ΔYを上記全域モデルのモデル化誤差を表す値(例えば、残差二乗和平均(RMSE))としても良い。この場合、上記全域モデルのモデル化の精度が低い程、上記落ち幅ΔYは大きくなる。
【0058】
ステップ103において上記落ち幅ΔYが設定されると、ステップ105に進み、下記(1)式が設定される。
Y(k+1)=Y(k)−ΔY … (1)
そして続くステップ107において、k=0、Y(0)=Ypという初期値が与えられ、ステップ109に進んで上記(1)式によりY(k+1)が算出される。
【0059】
ステップ109において上記Y(k+1)が算出されるとステップ111に進む。ステップ111では、上記Y(k+1)に対応する制御パラメータXの範囲R(k+1)が求められる。この制御パラメータXの範囲R(k+1)は、図3からも明らかなように、上記全域モデルのモデル式に基づいた場合に、上記特性パラメータYの値がステップ109で求めたY(k+1)となる上記制御パラメータXの値のうち、上記適合値Gpよりも大きい側及び小さい側のそれぞれで最も上記適合値Gpに近い値の間で表される範囲である。
【0060】
ステップ111において上記制御パラメータXの範囲R(k+1)が求められると、ステップ113に進む。ステップ113ではステップ111で求められた上記制御パラメータXの範囲R(k+1)の大きさを制御パラメータXの設定可能な全範囲Rs(例えば、全域モデルのモデル式を求める際に特性パラメータの計測を行う時に上記制御パラメータXの値を設定した範囲)の大きさで除算した値(=|R(k+1)|/|Rs|)が予め定めた基準比率Cr以上であるか否かが判定される。ここで、この基準比率Crは例えば上記制御パラメータXの制御精度に基づいて設定される。すなわち、上記制御パラメータXの制御精度が低い程、上記基準比率Crとして大きな値が設定される。
【0061】
また、ここでは説明上、制御パラメータが一つであるとしているためステップ113で判定される比率は長さの比率となっているが、当然のことながら、制御パラメータが二つの場合には面積の比率となり、三つの場合には体積の比率となる。
【0062】
ステップ113において、上記制御パラメータXの範囲R(k+1)の大きさを制御パラメータXの設定可能な全範囲Rsの大きさで除算した値が上記基準比率Cr以上であると判定された場合にはステップ115に進み、その時に求められている上記制御パラメータXの範囲R(k+1)が上記局所モデル作成範囲Rmとされて制御フローが終了する。一方、ステップ113において上記制御パラメータXの範囲R(k+1)の大きさを制御パラメータXの設定可能な全範囲Rsの大きさで除算した値が上記基準比率Cr未満であると判定された場合にはステップ117に進み、kにk+1が代入されて再度ステップ109からの制御が繰り返される。図3に示した例では、ステップ109からの制御が3度繰り返されてY(3)及びR(3)まで求められ、R(3)が上記局所モデル作成範囲Rmとされている。
【0063】
以上の説明からも明らかなように、この方法が実施された場合には、上記制御パラメータXの適合値Gpの付近において上記制御パラメータXの値の変化に対して上記特性パラメータYの値の変化が緩やかである場合には、その変化が急峻である場合に比べて上記局所モデル作成範囲が広くなるようになっている。つまり、この方法が実施された場合には、制御パラメータの値の変化に対する特性パラメータの値の変化の傾向に応じた上記局所モデル作成範囲の設定が可能となる。そしてその結果、計測工数の不必要な増大を招くことなく、より高精度な適合値が求められるように局所モデルを作成する範囲を適切に設定することができる。
【0064】
次に、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータの値に基づいて上記局所モデル作成範囲を決定する別の方法について説明する。図4はこの方法で上記局所モデル作成範囲を決定する場合について説明するためのフローチャートであり、図5は図4のフローチャートで示される制御フローを実施した場合の一例について説明するための図である。以下、これら図4及び図5を参照しつつ説明する。なお、ここでも説明及び理解を容易にするために一つの特性パラメータYに対し一つの制御パラメータXを用いて説明する。すなわち図5の横軸及び縦軸は、図3の場合と同様、それぞれ制御パラメータX及び特性パラメータYを示している。図5中、曲線Yaは上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値を示したものである。
【0065】
また、図5中の一点鎖線Yrjは上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値の信頼性区間の上限値を示したものであり、一点鎖線Yrkは上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値の信頼性区間の下限値を示したものである。より詳細には、図5に示された例では上記二つの一点鎖線YrjとYrkとの間は上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値の95%信頼性区間を示している。すなわち、特性パラメータYの真値は95%の確率で上記二つの一点鎖線Yrj及びYrkの間に存在する。
【0066】
図4の制御フローがスタートすると、まずステップ201において上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値(すなわち上記曲線Ya)に基づいて上記制御パラメータXの適合値Gpが求められる。この適合値Gpは、すなわち上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値(すなわち上記曲線Ya)に基づいて特性パラメータYの値が最良値Ypとなる時の上記制御パラメータXの値である。ここでは、上記制御パラメータXの適合値Gpが求められるときに上記特性パラメータYの最良値Ypも同時に求められるようになっている。なお、事前に上記制御パラメータXの適合値Gp及び特性パラメータYの最良値Ypが求められている場合には、ステップ201においてこれらの値の読込みが行われる。
【0067】
ステップ201において上記制御パラメータXの適合値Gp及び特性パラメータYの最良値Ypが求められると(もしくは読込まれると)ステップ203に進む。ステップ203では最小確保範囲Raが求められる。この最小確保範囲Raの大きさは上記制御パラメータXの制御上もしくは計測上の最小分解能(すなわち、それより小さい大きさでは充分な精度をもって制御したり計測することができない大きさ)に基づいて求められる。また、この最小確保範囲Raは図5に示されているように、上記制御パラメータXの適合値Gpを中心として設定される。
【0068】
ステップ203において最小確保範囲Raが求められるとステップ205に進む。ステップ205では信頼性区間考慮範囲Rbが求められる。この信頼性区間考慮範囲Rbは、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値(すなわち上記曲線Ya)のモデル化誤差を考慮して定められる。図5に示された例では、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値の95%信頼性区間の上限値を示した一点鎖線Yrjにおいて上記特性パラメータYの値が上記最良値Ypとなる時の二つの制御パラメータXの値Rb1、Rb2の間の範囲を上記信頼性区間考慮範囲Rbとしている。
【0069】
ステップ205において信頼性区間考慮範囲Rbが求められるとステップ207に進む。ステップ207では計測誤差考慮範囲Rcが求められる。この計測誤差考慮範囲Rcは、上記全域モデルのモデル式を求める際に行った特性パラメータYの計測における計測誤差(すなわち、計測機器の誤差や計測条件の変化に伴う計測値のバラツキ等)を考慮して定められる。図5に示された例では、上記全域モデルのモデル式から得られる特性パラメータYの値(すなわち上記曲線Ya)に基づいて求められた上記特性パラメータYの最良値Ypの計測誤差としてΔeを想定し、上記曲線Yaにおいて上記特性パラメータYの値が上記最良値Ypから上記計測誤差Δe分だけ減算した値Yeとなる時の二つの制御パラメータXの値Rc1、Rc2の間の範囲を上記計測誤差考慮範囲Rcとしている。
【0070】
ステップ207において計測誤差考慮範囲Rcが求められるとステップ209に進む。ステップ209ではステップ205で求められた信頼性区間考慮範囲Rbとステップ207で求められた計測誤差考慮範囲Rcとの論理和となる範囲(すなわち、信頼性区間考慮範囲Rbと計測誤差考慮範囲Rcの少なくとも一方に含まれる制御パラメータXの範囲)Rbcが求められる。図5に示された例では、上記信頼性区間考慮範囲Rbが上記計測誤差考慮範囲Rc内に含まれているので、上記計測誤差考慮範囲Rcがそのまま上記範囲Rbcとなる。
【0071】
ステップ209において上記範囲Rbcが求められるとステップ211に進む。ステップ211では全域モデル計画範囲Rdが読込まれる。この全域モデル計画範囲Rdは、上記全域モデルのモデル式を求めるために行われた特性パラメータYの計測実験の計画範囲である。図5に示された例では、上記全域モデル計画範囲Rdは、後述する制御パラメータ制御可能範囲Rgから範囲Dxを除いた部分となっている。この例において上記範囲Dxは、上記制御パラメータXの値がその範囲Dx内にある場合には、例えば機関の運転上の理由等で実際に実験を実施して計測値を得るのが困難な範囲である。そのため、このような実験を実施できない範囲は、たとえ制御パラメータXが制御可能な範囲であっても上記全域モデル計画範囲Rdからは除外されている。なお、この範囲Dxにおいては実際に計測した値が得られないため、上記全域モデルのモデル式に基づいた外挿によって上記特性パラメータYの値が求められることになる。そのため、この範囲Dx内においては上述した信頼性区間が広がっている。
【0072】
ステップ211において上記全域モデル計画範囲Rdが読込まれるとステップ213に進む。ステップ213では全域モデル制約考慮範囲Reが求められる。この全域モデル制約考慮範囲Reは、上記全域モデルのモデル式を求めるために行われた特性パラメータYの計測実験において制約となった様々な条件について考慮した上記制御パラメータXの範囲である。図5に示された例では、上記全域モデル制約考慮範囲Reは、後述する制御パラメータ制御可能範囲Rgから範囲Ex1及びEx2を除いた部分となっている。この例において上記範囲Ex1及びEx2はそれぞれが異なる制約を表す範囲である(すなわち、例えば上記制御パラメータXの値が上記範囲Ex1内にある場合及び上記範囲Ex2内にある場合には何れも精度の良い計測値を得ることが困難となるが、その原因は異なっている)。つまり、上記全域モデル制約考慮範囲Reは、例えば上記制御パラメータXの制御可能な範囲Rgからこのような制約を表す範囲Ex1、Ex2を総て除外することにより求めることができる。また、この全域モデル制約考慮範囲Reと上記全域モデル計画範囲Rdとの論理積となる範囲(すなわち、上記全域モデル制約考慮範囲Reと上記全域モデル計画範囲Rdの両方に含まれる制御パラメータXの範囲)が、上記全域モデルのモデル式を求める際に上記特性パラメータYの計測を実際に実施した範囲である。
【0073】
ステップ213において上記全域モデル制約考慮範囲Reが求められるとステップ215に進む。ステップ215では制御パラメータXの制御可能な範囲である制御パラメータ制御可能範囲Rgが読込まれる。ステップ215に続いてステップ217に進むと、そこで上記範囲Rbc、Rd、Re及びRgの論理積となる範囲(すなわち、上記範囲Rbc、Rd、Re及びRgの総てに含まれる制御パラメータXの範囲)Rhが求められる。図5に示された例では、上記範囲Rbc(=上記範囲Rc)がその他の範囲Rd、Re及びRg内に含まれているので、上記範囲Rbc(=上記範囲Rc)がそのまま上記範囲Rhとなる。
【0074】
ステップ217において上記範囲Rhが求められるとステップ219に進む。ステップ219ではステップ203で求められた最小確保範囲Raとステップ217で求められた上記範囲Rhとの論理和となる範囲(すなわち、最小確保範囲Raと上記範囲Rhの少なくとも一方に含まれる制御パラメータXの範囲)Rmが求められる。この範囲Rmが上記局所モデル作成範囲となる。ステップ219において上記範囲Rmが求められると本制御フローが終了する。図5に示された例では、上記最小確保範囲Raが上記範囲Rh(=上記範囲Rc)内に含まれているので、上記範囲Rh(=上記範囲Rc)がそのまま局所モデル作成範囲Rmとなる。
【0075】
以上の説明からも明らかなように、この方法では上記全域モデルのモデル式を求める際の情報(すなわち、例えば上記全域モデルのモデル化誤差や上記全域モデルのモデル式を求める際に行った特性パラメータYの計測における計測誤差等)を利用して、局所モデルを用いて求められる上記制御パラメータの適合値Lpの存在範囲である上記局所モデル作成範囲が決定されるようになっている。そして、このようにすることによっても計測工数の不必要な増大を招くことなく、より高精度な適合値が求められるように局所モデルを作成する範囲を適切に設定することができる。
【0076】
なお、以上の説明からも明らかであると思われるが、上述した各種範囲のうち上記最小確保範囲Ra、信頼性区間考慮範囲Rb及び計測誤差考慮範囲Rcは、局所モデル作成範囲Rmが含むべき範囲である。一方、上述した各種範囲のうち全域モデル計画範囲Rd、全域モデル制約考慮範囲Re及び制御パラメータ制御可能範囲Rgは、局所モデル作成範囲Rmが含まれるべき範囲である。そして、上述した方法では上記範囲Ra、Rb及びRcの総てを含み、且つ上記範囲Rd、Re及びRgの総てに含まれる最小範囲を求め、上記局所モデル作成範囲Rmとしていると言える。したがって、このような考え方にしたがえば図4に示された制御フローの各ステップの順序を入れ替えても同様に上記局所モデル作成範囲Rmが求められることは容易に理解できる。
【0077】
また、上記全域モデル制約考慮範囲Re等については、その範囲設定において信頼性区間や誤差を考慮するようにしても良い。上記全域モデル制約考慮範囲Reの場合、制約のある範囲(例えば、上記範囲Ex1やEx2)の信頼性区間や誤差についての判断によって上記全域モデル制約考慮範囲Reが広く設定されたり、狭く設定されたりすることになり、その結果的にとして上記局所モデル作成範囲Rmが広く設定されたり、狭く設定されたりすることになる。局所モデルの精度の向上を重視する場合には、上記局所モデル作成範囲Rmが広く設定されるようにすると有効であり、絞込みの度合いを高めて計測工数を低減することを重視する場合には上記局所モデル作成範囲Rmが狭く設定されるようにすると有効である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、適合作業の対象となる内燃機関、並びに適合作業に用いられる各計測装置及び制御装置を示す図である。
【図2】図2は、局所モデル作成範囲を決定するために実施される方法について説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、図2のフローチャートで示される制御フローを実施した場合の一例について説明するための図である。
【図4】図4は、局所モデル作成範囲を決定するために実施される別の方法について説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、図4のフローチャートで示される制御フローを実施した場合の一例について説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
1 機関本体
6 吸気弁
8 排気弁
10 点火プラグ
11 燃料噴射弁
18 スロットル弁
31 スロットル開度センサ
32 エアフロメータ
33 排気温度センサ
34 空燃比センサ
40 制御装置




 

 


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