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発明の名称 鋼管杭の施工方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−255108(P2007−255108A)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
出願番号 特願2006−82480(P2006−82480)
出願日 平成18年3月24日(2006.3.24)
代理人 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
発明者 風間 広志 / 社本 康広 / 真野 英之 / 浅香 美治 / 福武 毅芳 / 石川 明
要約 課題
鋼管杭の引き抜き耐力を増強し、同時に周囲地盤に対する液状化防止効果を得る。

解決手段
鋼管からなる杭本体12の周面に予め固化材17の流出口13を形成しておき、杭本体を地盤中に設置した後、杭本体の内部から流出口を通して周囲地盤に固化材を加圧注入して拡径部20を形成すると同時に、固化材の加圧注入により周囲地盤を締め固めるとともに地盤改良を行う。杭本体の少なくとも先端には螺旋翼11を設けて地盤中に回転圧入する。流出口の内側にパッカー14を装着して固化材の圧入空間18を区画形成する。流出口には逆止弁を予め設けておく。
特許請求の範囲
【請求項1】
引き抜き強度に優れかつ周囲地盤に対する液状化防止効果が得られる鋼管杭の施工方法であって、
鋼管からなる杭本体の周面に予め固化材の流出口を形成しておき、
該杭本体を地盤中に設置した後、
該杭本体の内部から前記流出口を通して周囲地盤に固化材を加圧注入して拡径部を形成するとともに、該固化材の加圧注入により周囲地盤を締め固めかつ地盤改良を行うことを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管杭の施工方法であって、
杭本体の少なくとも先端には螺旋翼を設けておき、該杭本体を地盤中に設置する際には、該杭本体を回転させつつ地盤中に圧入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の鋼管杭の施工方法であって、
流出口から固化材を周囲地盤に加圧注入するに際しては、流出口の内側に固化材の圧入空間を区画形成するためのパッカーを杭本体内に装着することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管杭の施工方法であって、
杭本体に形成した流出口には、該流出口から加圧注入した固化材が杭本体内に逆流することを防止するための逆止弁を予め設けておくことを特徴とする鋼管杭の施工方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は杭の施工方法に係わり、特に、引き抜き強度に優れるばかりでなく周囲地盤に対する液状化防止効果も得られる鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7(a)に示すように巨大地震時には建物1に大きな水平力P1が作用して建物1が浮き上がったり転倒することが想定される場合、(b)に示すように建物1を支持地盤に対してアンカーしてその引き抜き抵抗力P2によって浮き上がりや転倒を防止する必要がある。
建物1を地盤に対してアンカーするためには適宜のアンカー手段(いわゆるグランドアンカー)を設置することが一般的に考えられるが、格別のアンカー手段を設置することに代えて杭に引き抜き抵抗力を持たせることも考えられている。
その場合、単なる支持杭では充分な引き抜き耐力を確保できないことが通常であることから、充分な引き抜き耐力を有する杭としてたとえば特許文献1に示されているような螺旋翼付きの鋼管杭を採用することが考えられている。
【特許文献1】特開平8−291518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、図8に示すように建物1の支持地盤に液状化し易い液状化層2があるような場合には、巨大地震時に想定される地盤の液状化によって(b)に示すように杭3の損傷が懸念され、その場合には建物を支持する杭の支持力が大幅に低下して建物の傾斜や崩壊など大きな地震被害は免れないことになる。
また、杭3の引き抜き耐力を増強するために特許文献1に示されるような螺旋翼付きの鋼管杭を採用した場合には、その鋼管杭を地盤に回転圧入する際に周囲地盤が螺旋翼によって切り込まれて乱されることに起因して原地盤の液状化に対する強度を寧ろ低下させてしまう懸念もあり、したがって、杭3の引き抜き耐力を増強させる目的で特許文献1に示されるような螺旋翼付き鋼管杭を単に採用することは合理的ではなく、好ましくないとも考えられている。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は充分な引き抜き耐力を持たせることができ、同時に周囲地盤に対する液状化防止効果も得られ、したがって杭の損傷を防止して建物の浮き上がりや転倒や崩壊を確実に防止することのできる合理的にして有効な鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は引き抜き強度に優れかつ周囲地盤に対する液状化防止効果が得られる鋼管杭の施工方法であって、鋼管からなる杭本体の周面に予め固化材の流出口を形成しておき、該杭本体を地盤中に設置した後、該杭本体の内部から前記流出口を通して周囲地盤に固化材を加圧注入して拡径部を形成するとともに、該固化材の加圧注入により周囲地盤を締め固めかつ地盤改良を行うことを特徴とする。
【0006】
本発明における杭本体としては、少なくとも先端に螺旋翼を設けたものを採用し、該杭本体を地盤中に設置する際には、該杭本体を回転させつつ地盤中に圧入することが考えられる。
【0007】
本発明においては、流出口から固化材を周囲地盤に加圧注入するに際しては、流出口の内側に固化材の圧入空間を区画形成するためのパッカーを杭本体内に装着すると良い。
【0008】
さらに、杭本体に形成した流出口には、該流出口から加圧注入した固化材が杭本体内に逆流することを防止するための逆止弁を予め設けておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、杭本体の設置後にその内部から周囲地盤に加圧注入した固化材は最終的に固化して杭本体と一体の固化材塊となり、その固化材塊が拡径部となって杭の引き抜き耐力を充分に増強することができる。
しかも、固化材を周囲地盤に加圧注入することに伴ってその固化材の体積相当分の土砂が自ずと外方に押圧されていき、したがって周囲地盤は乱されることなく静的に締め固められていってそれによる締め固め効果が得られ、かつ固化材が固化することによる地盤改良効果が得られ、それらにより周囲地盤の密度および強度を自ずと高めることができて充分な液状化防止効果が得られる。
【0010】
また、杭本体に螺旋翼を設けておいてそれを地盤中に回転圧入すれば、杭本体の設置作業を容易に行うことができるし、螺旋翼による引き抜き耐力の増強効果や、螺旋翼を介して杭本体と拡径部とを強固に一体化させる効果が得られる。勿論、杭本体の回転圧入の際に原地盤が乱されたとしても、固化材を加圧注入することによる締め固め効果と固化材が固化することによる地盤改良効果により原地盤の乱れは自ずと補償されるから、地盤の液状化強度が損なわれることはない。
【0011】
また、杭本体内にパッカーを装着して固化材の圧入空間を区画形成することにより、杭本体内の所望位置に固化材の圧入空間を確実かつ容易に形成することができる。
【0012】
さらに、固化材の流出口に逆止弁を取り付けておけば、周囲地盤に加圧注入した固化材が杭本体内に逆流してしまうことを防止できるので注入圧を自ずと維持することができるし、パッカーを用いる場合にはそれを早期に撤去することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図6を参照して本発明の実施形態を説明する。
本実施形態は、たとえば図8に示したような液状化層2を有する地盤に対して、特許文献1に示されているような螺旋翼付きの鋼管杭を施工する際に適用するものであるが、上述したようにそのような螺旋翼付き鋼管杭を単に従来工法で施工することでは螺旋翼により周囲地盤が乱されて液状化強度が低下してしまうことも想定されることから、本実施形態ではそれを補償するために、螺旋翼付きの鋼管杭を回転圧入した後にその内側から周囲地盤に対して固化材17(図3参照)を静的に加圧注入することによって螺旋翼と一体の拡径部20(図4参照)を形成し、同時に周囲地盤に対する締め固めと地盤改良を行うことを主眼とするものである。
【0014】
すなわち、本実施形態では、図1に示すように下端部に螺旋翼11が形成されている鋼管を杭本体12として採用するが、その下端部には予め固化材の流出口13を形成しておく。流出口13の径は40〜50mm程度で良く、杭本体12の下端部の所望範囲に全周にわたって均等に形成しておく。
【0015】
上記の杭本体12を地盤中に回転圧入して設置した後、図2(一部を破断して内部を示している)に示すようにその内部にパッカー14を装着する。パッカー14は、膨張収縮可能な柔軟な袋体15を主体とするもので、その袋体15を小さく折り畳んだ状態で拡径部20を形成するべき予定位置の上部に位置させて配置した後、加圧管16を通して袋体15に水等の流体を加圧注入することで袋体15を展開膨張させて杭本体12の内面に押圧保持せしめることにより、杭本体12の下端とこのパッカー14との間に固化材17を加圧注入するための圧入空間18を区画形成するものである。また、袋体15は環状とされていてその中心部には圧入空間18に対して固化材17を加圧注入するための注入管19が挿通している。
このような構成のパッカー14と注入管19とを杭本体12内に装着するためには、それらの全体を予め一体に組み付けておいてその全体を一括して杭本体12内に挿入すれば良い。
【0016】
しかる後に、図3に示すように、地上部に設置した適宜の加圧注入手段(図示せず)から、注入管19を通して圧入空間18に固化材17を適宜の注入圧によって供給し、それによって圧入空間18から各流出口13を通して固化材17を周囲地盤に対して徐々に加圧注入していき、図4に示すように各流出口13から加圧注入された固化材17どうしが連続して杭本体12の周囲全体を取り囲み、かつ螺旋翼11全体を内包するまで、所望量の固化材17を連続的に加圧注入する。
本実施形態で採用する固化材17としては、周囲地盤への加圧注入時には充分な流動性と適度の粘性を有するとともに最終的には地盤中において自ずと固化して充分な強度を発現する周知のグラウト材を用いれば良く、たとえばセメントモルタルや地盤改良材としての各種の可塑状ゲル剤(たとえば特開2003−105745号公報に開示されている可塑性グラウト等)が好適に採用可能である。
【0017】
本実施形態の施工方法によれば、杭本体12の内部から周囲地盤に加圧注入された固化材17は最終的には固化して一体の固化材塊となり、その固化材塊は杭本体12の下端部に自ずと一体化して拡径部20となり、そのような拡径部20が螺旋翼11を介して杭本体12の下端部に一体に形成されることから、螺旋翼11のみによる場合に比べて引き抜き耐力が格段に増強されたものとなる。
【0018】
しかも、固化材17を周囲地盤に加圧注入することに伴い、その固化材17の体積相当分の土砂が自ずと外方に押圧されていき、そのような固化材17の加圧注入により周囲地盤に対する締め固め効果が得られ、かつ固化材17が固化することによる地盤改良効果が得られ、それらの効果により地盤の密度および強度を自ずと高めることができる。
つまり、本工法における固化材17の加圧注入工程は杭に対する拡径部20の形成工程であると同時に、周囲地盤に対する締め固め工程および地盤改良工程でもあり、それにより杭の引き抜き耐力を充分に増強できるばかりでなく、周囲地盤の液状化に対する強度を相乗的に高めることができ、その結果、巨大地震時における液状化の発生やそれによる杭の損傷、その結果としての建物の浮き上がりや転倒や崩壊を確実に防止することができる。
【0019】
勿論、本実施形態の施工方法は、固化材17を徐々に加圧注入することによって地盤をいわば静的に締め固めるものであるので原地盤を乱すことはないし、杭本体12の回転圧入に際して生じた原地盤の乱れを固化材17の加圧注入による締め固め効果と固化材の固化による地盤改良効果により補償して地盤の密度および強度を回復させることができ、構造的な安全性や信頼性を充分に高めることができる。
【0020】
そして、本実施形態の施工方法では、通常の螺旋翼付き鋼管杭を杭本体12として採用して、それに流出口13を形成すること以外は、汎用のパッカー14と単なるグラウトポンプ等の通常の加圧注入手段をそのまま採用可能であって、特に複雑な機構や面倒な手間を必要とせず、したがって従来一般の鋼管杭の施工に際して本工法を実施してもさしたるコスト増にはならない。勿論、従来一般の鋼管杭の施工方法と、従来一般の固化材注入による地盤改良工法とをそれぞれ独立に実施する場合に比較すれば、大幅にコストを削減することができる。
【0021】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、たとえば以下に列挙するような適宜の変更や応用が可能である。
【0022】
上記実施形態のように拡径部20は杭本体12の下端部に設けることが好ましく、通常はそれで充分であるが、拡径部20を下端部に設けることに代えて、あるいそれに加えて、杭本体12の中間部の所望位置にも同様の拡径部20を形成することも考えられる。
図5は中間部にも拡径部20を形成する場合の例を示すもので、この場合には杭本体12の中間部の所望位置に流出口13を形成しておき、その内側の上下にそれぞれパッカー14を装着してそれらの間にも圧入空間18を形成し、その圧入空間18から周囲地盤に固化材17を加圧注入すれば良い。その場合には、図6に示すように中間部に設ける拡径部20の形成位置にも螺旋翼11を設けておくことも考えられる。
また、必要であれば、杭本体12の全長にわたって連続的に拡径部20を形成することも考えられる。その場合は、杭本体12の全長にわたって流出口13を形成しておき、杭本体12の内部全体を圧入空間18とすれば良く、必要であれば杭本体12の全長にわたって一連の螺旋翼11を設けておくことも考えられる。
【0023】
上記実施形態において圧入空間18を形成するために用いたパッカー14は、拡径部20が形成された後には撤去すれば良いが、その必要がなければそのまま残置して埋め殺してしまうことでも良い。いずれにしてもパッカーの形式や種類は任意であって、膨張収縮可能な構成の格別のパッカーを用いることに代えてたとえばモルタル等を要所に充填して圧入空間を形成したり、杭本体12の内部にパッカーとして機能するような部材や機構を予め組み込んでおくことも考えられる。
【0024】
上記各実施形態では杭本体12の周面に形成した単なる開口(孔)を流出口13としたが、そこに適宜の逆止弁を設けることも考えられる。
すなわち、上記実施形態では周囲地盤に加圧注入した固化材17の固化がある程度進行するまでは注入圧を維持する必要があり、したがってそれまではパッカー14を撤去することはできないが、流出口13に逆流を防止するための逆止弁を設けておけば自ずと注入圧が維持されるからパッカー14の撤去を早期に行うことが可能となる。その逆止弁としては、流出口13の外側に弁体を外方に向かって開くように取り付け、その弁体が固化材17の加圧注入時には自ずと外方に自由に開かれ、逆流が生じる事態となった際には流出口13が弁体により自ずと塞がれる構成のものが考えられるが、あるいは地上部から開閉操作するシャッタの如き構成の逆止弁を設けておくことも考えられる。
【0025】
本発明は上記実施形態のように螺旋翼付きの鋼管杭の施工方法として有効であるが、それに限るものでもなく、単なる鋼管杭を施工する際にも同様に適用可能であり、その場合には杭本体12として螺旋翼11のない単なるストレートな鋼管を用いれば良いことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態である施工方法を示す図であって、杭本体を地盤中に設置した状態を示す図である。
【図2】同、パッカーを装着して圧入空間を形成した状態を示す図である。
【図3】同、圧入空間から周囲地盤に固化材を加圧注入しつつある状態を示す図である。
【図4】同、拡径部を形成した状態を示す図である。
【図5】同、変形例を示す図である。
【図6】同、さらなる変形例を示す図である。
【図7】地震時における建物の浮き上がり挙動を示す図である。
【図8】支持地盤の液状化による杭の損傷の状況を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
11 螺旋翼
12 杭本体
13 流出口
14 パッカー
15 袋体
16 加圧管
17 固化材
18 圧入空間
19 注入管
20 拡径部




 

 


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