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発明の名称 回転機構および掘削機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−205103(P2007−205103A)
公開日 平成19年8月16日(2007.8.16)
出願番号 特願2006−27572(P2006−27572)
出願日 平成18年2月3日(2006.2.3)
代理人 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
発明者 磯田 和彦
要約 課題
駆動系の回転ぶれや振動を低減するとともに駆動系や設計コストを低減した上で、同一中心で円形状および非円形状の軌跡を得て、非円形状の掘削断面の掘削を行う。

解決手段
所定の固定中心線Oを中心として回転可能に設けた中心軸31と、中心軸31の径外方向に延在して設けた主羽根部材211(主掘削カッタ21)と、固定中心線Oに平行な移動中心線Pを中心として主羽根部材211に対して回転可能に設けた回転軸33と、回転軸33の径外方向に延在して回転軸33の回転に伴い主羽根部材21の先端からの突出寸法が変化する態様で設けた副羽根部材221(副掘削カッタ22)と、中心軸31を回転駆動する駆動部と、中心軸31の1回転を回転軸33の所定回転として伝達する回転伝達機構34とを備える。
特許請求の範囲
【請求項1】
所定の固定中心線を中心として回転可能に設けた中心軸と、
前記中心軸の径外方向に延在して設けた主羽根部材と、
前記固定中心線に平行な移動中心線を中心として前記主羽根部材に対して回転可能に設けた回転軸と、
前記回転軸の径外方向に延在して当該回転軸の回転に伴い前記主羽根部材の先端からの突出寸法が変化する態様で設けた副羽根部材と、
前記中心軸を回転駆動する駆動部と、
前記中心軸の1回転を前記回転軸の所定回転として伝達する回転伝達機構と
を備え、前記回転伝達機構は、前記移動中心線を中心とした円状の外周部を有して前記回転軸に設けた第一係合部と、前記固定中心線を中心とした円状の外周部を有して前記中心軸を回転可能に内挿して固定された第二係合部と、前記第一係合部の外周部および第二係合部の外周部に係合して前記中心軸の回転を回転軸の回転として伝達しつつ前記主羽根部材の1回転に対して前記副羽根部材を逆方向に4回転させる駆動伝達部とで構成してあることを特徴とする回転機構。
【請求項2】
前記副羽根部材は、円形状の輪郭を有し、その中心から所定の偏心量ずらした位置を前記移動中心線上に置いた回転中心としてあることを特徴とする請求項1に記載の回転機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転機構を用いて、
前記第二係合部を支持するとともに前記駆動部を内部に配置した筒状の胴部と、
前記主羽根部材にカッタを配設した主掘削カッタと、
前記副羽根部材にカッタを配設した副掘削カッタと
を備えたことを特徴とする掘削機。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一中心で円形状および非円形状の軌跡をなす回転機構、および当該回転機構を用いて地盤などを掘削する掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な掘削機は、回転機構によってカッタヘッドを回転させて当該カッタヘッドで地盤を掘削するものが知られている。このような掘削機は、カッタヘッドが所定の中心を以て回転することから必然的に断面形状が円形になる。しかし、鉄道や道路などのトンネル利用空間においては、必要とされる断面形状が非円形状であることが多く、上記円形の掘削断面内に非円形状とした鉄道や道路などの空間を構築する。このため、利用空間以上の掘削を行うことになるので、用地面積が多く必要となることに加えて建設費が嵩むという問題がある。
【0003】
従来、例えばルーロー三角形なるルーロー三角形回転体に切削用バイトを設け、当該ルーロー三角形回転体を回転することで、被加工物に正方形状の穴明けを行う正方形穴明け加工装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他に、加工部材をその中心周りに回転自在に加工部材自転支持装置に取り付け、当該加工部材自転支持装置を加工部材公転支持装置に取り付けた掘削機がある。加工部材には、中心と同芯状のほぼ正三角形の各頂点とその内方に掘削刃を設けて掘削作用面が形成してある。加工部材自転支持装置は、加工部材を前記正三角形の一辺の((1/2)/cos30°−(1/2))倍の半径で中心が回転するように加工部材公転支持装置に取り付けてある。そして、加工部材を自転させながらその自転方向とは逆の方向に3倍公転させる駆動手段を設けてある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また他に、正三角形の各頂点を中心とし、その一辺の長さを半径とする円弧を各対辺の外側に描き、これらの3つの円弧により囲まれたルーロー三角形を外形とするカッタを、矩形状スキンプレートの中心軸の回りに公転させながら自転させて掘削する矩形シールド工法がある。スキンプレートの中心軸に対するカッタの回転軸の偏心距離は、(L/2)/cos30°−(L/2)を満足するように設定してある(L:ルーロー三角形の頂点間の距離)。なお、カッタの公転数は自転数の3倍で、公転方向と自転方向が逆方向である(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらに、掘削断面の円形中心部を主カッタが掘削し、その外周部を複数の遊星カッタが掘削する自由断面シールド工法がある。遊星カッタは、主カッタの回転につれて主カッタの外周部を自転しながら公転する。この公転軌道は、遊星カッタを設置したスイングアームの角度調整によって任意に変えることができる。この結果、同一中心で矩形、楕円形、馬蹄形、卵形など様々な掘削断面形状を選択できる(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−267950号公報
【特許文献2】特開平1−158196号公報
【特許文献3】特許第2926125号公報
【非特許文献1】シールド工法技術協会、“自由断面シールド工法”、[online]、平成17年9月16日検索、インターネット<URL:http://www.shield-method.gr.jp/pdf_data/jiyu.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ルーロー三角形を利用して非円形状である略矩形状に掘削を行う場合には、ルーロー三角形をその重心を中心として回転させ、かつルーロー三角形の重心を正方形の中心の周りに公転させる必要がある。
【0009】
特許文献1の発明は、モータのトルクを伝達する軸と、ルーロー三角形回転体の重心の軸とを自在継手で連結してある。しかし、この構成では駆動伝達系に回転ぶれや振動が生じることになり、さらに大きなトルクが必要となる掘削機では自在継手は高価であり製造コストが嵩む。
【0010】
特許文献2の発明では、モータからのトルクをクランク軸によって加工部材に伝達して公転装置を構成してある。しかし、クランクさせることによって回転軸部材にせん断力や曲げモーメントが生じて回転ぶれや振動の原因となる。
【0011】
特許文献3の発明は、矩形状スキンプレートの中心に公転駆動盤を設けてこの公転駆動盤にカッタ回転軸を設けてある。そして、公転駆動盤を回転させるモータと、カッタ回転軸を回転させるモータを設けてある。しかし、カッタ回転軸を回転させるモータは、公転駆動盤に設けてあるため、配線や配管の処理を十分検討して設計する必要がある。さらに、各モータの回転数や回転方向を調整してそれぞれ同期させる必要がある。この結果、設計コストが嵩むことになる。
【0012】
このように、ほぼ矩形状の軌跡をなすためにルーロー三角形の原理を利用した回転機構についての出願はあるものの、いずれも合理的な駆動を実現するものではない。また、大きなトルクが必要である掘削機においては、正方形枠は掘削孔内で大きなスペースを要することから正方形枠のない機構が望まれている。さらに、矩形状の掘削に限らず矩形状を含む多角形状の軌跡をなす回転機構、および当該回転機構を用いた掘削機を実現するものはない。
【0013】
また、非特許文献1の工法は、矩形状や楕円形状の掘削に対応しているが、主カッタの回転につれて主カッタの外周部を自転しながら公転する複数の遊星カッタを得るために、スイングアームを用いた複雑な構成にしてある。この結果、製造コストが嵩むという問題がある。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みて、駆動系の回転ぶれや振動を低減するとともに低コストで、同一中心で円形状および非円形状の軌跡をなす回転機構、および当該回転機構を用いて同一中心で円形状および非円形状の断面の掘削を連続して実現することができる掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る回転機構は、所定の固定中心線を中心として回転可能に設けた中心軸と、前記中心軸の径外方向に延在して設けた主羽根部材と、前記固定中心線に平行な移動中心線を中心として前記主羽根部材に対して回転可能に設けた回転軸と、前記回転軸の径外方向に延在して当該回転軸の回転に伴い前記主羽根部材の先端からの突出寸法が変化する態様で設けた副羽根部材と、前記中心軸を回転駆動する駆動部と、前記中心軸の1回転を前記回転軸の所定回転として伝達する回転伝達機構とを備え、前記回転伝達機構は、前記移動中心線を中心とした円状の外周部を有して前記回転軸に設けた第一係合部と、前記固定中心線を中心とした円状の外周部を有して前記中心軸を回転可能に内挿して固定された第二係合部と、前記第一係合部の外周部および第二係合部の外周部に係合して前記中心軸の回転を回転軸の回転として伝達しつつ前記主羽根部材の1回転に対して前記副羽根部材を逆方向に4回転させる駆動伝達部とで構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項2に係る回転機構は、上記請求項1において、前記副羽根部材は、円形状の輪郭を有し、その中心から所定の偏心量ずらした位置を前記移動中心線上に置いた回転中心としてあることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項3に係る掘削機は、請求項1または2に記載の回転機構を用いて、前記第二係合部を支持するとともに前記駆動部を内部に配置した筒状の胴部と、前記主羽根部材にカッタを配設した主掘削カッタと、前記副羽根部材にカッタを配設した副掘削カッタとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、駆動部の駆動力を中心軸に伝達することによって、中心軸が固定中心線を中心として回転する。このため、中心軸に設けた主羽根部材が固定中心線を中心として回転する。また、中心軸の回転が駆動伝達部によって回転軸に伝達されることによって、回転軸が移動中心線を中心として回転する。このため、回転軸に設けた副羽根部材が移動中心線を中心として回転(自転)する。すなわち、固定中心線を中心として主羽根部材を回転駆動して円形状の軌跡をなし、かつ、固定中心線を中心として公転する副羽根部材が自転することで主羽根部材の外側で円形状の掘削断面を拡張する軌跡をなす。この結果、副羽根部材の負担が小さい単純なメカニズムによって円形状を拡張した非円形状の軌跡を得ることができる。また、主羽根部材の駆動系は従前からある回転機構であり、この回転機構に副羽根部材の駆動系を補助的に付加しているため、低コストで信頼性の高い回転機構を得ることができる。そして、各羽根部材にカッタを配設した掘削カッタを備えた掘削機とすれば、円形状を拡張した非円形状の掘削断面の掘削孔を掘削することができる。この掘削孔は、一般的な円形状の掘削断面の掘削孔と比較して、不要な空間を掘削せずに利用空間のみの掘削で得られるため、必要以上の用地面積を要さないことに加えて建設費を低減することができる。
【0019】
特に、回転伝達機構によって、主羽根部材の1回転に対して副羽根部材を逆方向に4回転(自転)することで、副羽根部材が固定中心線を中心とした略正方形状の軌跡をなす。この結果、略正方形状の掘削断面の掘削孔を掘進できる。
【0020】
すなわち、本発明は、固定中心線を中心として主羽根部材を回転駆動して円形状の軌跡をなし、かつ、固定中心線を中心として公転する副羽根部材が自転することで主羽根部材の外側で円形状の掘削断面を拡張する軌跡をなす回転機構によって成り立っている。この結果、副羽根部材の負担が小さい単純なメカニズムによって略正方形状などの非円形状の掘削断面の掘進を行うことができる。また、主羽根部材の駆動系は従前からある回転機構であり、この回転機構に副羽根部材の駆動系を補助的に付加しているため、低コストで信頼性の高い回転機構および掘削機を得ることができる。
【0021】
さらに、固定中心線を中心として主羽根部材を回転駆動し、かつ、固定中心線を中心として副羽根部材を公転駆動する回転機構であるため、副羽根部材の駆動系である回転伝達機構による回転の伝達を行うことで副羽根部材を駆動して略正方形状などの非円形状の掘削断面の掘削を行う一方、回転伝達機構による回転の伝達を断つことで円形状の掘削断面の掘削を行うように切り替えることができる。この結果、例えば1台の掘削機によって線路用トンネルの円形状の掘削断面の掘削をし、続けて駅ホーム用トンネルの略正方形状などの非円形状の掘削断面の掘削をし、さらに続けて線路用トンネルの円形状の掘削断面の掘削をするなど、続けて異なる断面形状のトンネルを掘削でき、その断面中心を全て固定中心線に合わせることができる。
【0022】
また、主羽根部材は中心軸の径外方向に延出する構成であって掘削面にあたるカッタヘッドの面積が過大にならないため、掘削土を胴部の内部に取り込むための開口面積を十分に確保することができる。
【0023】
また、中心軸が固定中心線上でその軸心がずれることなく回転するため、中心軸をさらに前方向に延長した先端にロックオーガーなどの円形ドリルを設けた掘削を併用することができる。この結果、掘削に先駆けて削岩を行うことが可能になり、主掘削カッタや副掘削カッタの負荷を軽減できる。
【0024】
また、中心軸が固定中心線上でその軸心がずれることなく回転するため、回転ぶれや振動を低減することが可能になる。さらに、中心軸と回転軸との回転の伝達に従前の自在継手を要することがないので、自在継手に係るコストを低減することができる。回転機構は、固定中心線を中心として主羽根部材を回転駆動し、かつ、固定中心線を中心として副羽根部材を公転駆動する回転機構である。このため、従前のごとくスイングアームを用いた複雑な構成にすることがなく、製造コストを低減することができる。すなわち、上記回転機構(掘削機)は、簡素な機構で略正方形状などの非円形状の掘削断面の掘削孔を掘進するため、故障が起こり難く信頼性が高く、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る回転機構および掘削機の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明に係る回転機構を用いた掘削機の実施の形態を示す概略側断面図、図2は図1に示す回転機構を軸方向(前方向)から視た概念図、図3は図2の一部拡大図である。
【0027】
図1および図2に示すように掘削機は、胴部1と掘削カッタ21,22とを備えている。胴部1は、掘削カッタを支持するものであって、掘削機の外郭をなし、筒状とした内部に掘削カッタ21,22を回転駆動する回転機構3を有している。
【0028】
回転機構3は、中心軸31、駆動部32、回転軸33、回転伝達機構34、主羽根部材211および副羽根部材221を有している。
【0029】
中心軸31は、胴部1の前後方向に沿って配置した所定の固定中心線Oを中心として回転可能に支持してある。中心軸31は、胴部1の前方に前端が延出して設けてあり、当該前端に主羽根部材211が設けてある。
【0030】
主羽根部材211は、固定中心線Oと直交して中心軸31の径外方向に延在して、胴部1の前方外側に設けてある。主羽根部材211は、図2に示すように固定中心線Oから相反する方向に同じ長さで延在した一文字形状を2つ合わせて十字形状に形成してある。この主羽根部材211は、主掘削カッタ21を構成する。
【0031】
駆動部32は、中心軸31を回転させるものであり、例えばモータなど胴部1に設けた駆動源からなる。駆動部32は、固定中心線O上に出力軸を配置し、当該出力軸を中心軸31に接続してある。なお、駆動部32は、図には明示しないが駆動源と中心軸31との間に適宜減速機構を有していてもよい。
【0032】
回転軸33は、固定中心線Oに平行な移動中心線Pを中心として主羽根部材211に対して回転可能に設けてある。回転軸33は、主羽根部材211に貫通して配設してあり、胴部1の前方に延出した前端に副羽根部材221が設けてある。なお、回転軸33は、図2に示すように固定中心線Oから相反する方向に延在した一文字形状の主羽根部材211の各端部で2つ設けてある。
【0033】
副羽根部材221は、移動中心線Pと直交して回転軸33の径外方向に延在して設けてある。副羽根部材221は、図2に示すように中心Gを中心とした円盤状(円形状)の輪郭に形成してあり、その中心Gから所定の偏心量rずらした位置を移動中心線P上に置いて回転軸33に設けてある。このため、副羽根部材221は、回転軸33の回転に伴って主羽根部材211の先端からの突出寸法が変化しながら回転移動する。この副羽根部材221は、副掘削カッタ22を構成する。
【0034】
回転伝達機構34は、第一係合部341、第二係合部342および駆動伝達部343を有している。第一係合部341は、移動中心線Pを中心とした外周部341aを有して円盤状に形成してあり、当該移動中心線Pを中心に回転するように各回転軸33の後端にそれぞれ固定してある。第二係合部342は、固定中心線Oを中心とした外周部342aを有し、かつ、中心軸31を回転可能に内挿して胴部1に固定してある。駆動伝達部343は、第一係合部341の外周部341aおよび第二係合部342の外周部342aに係合して中心軸31の回転を回転軸33の回転として伝達する。この駆動伝達部343は、主羽根部材211の1回転に対して副羽根部材221を逆方向に4回転させるように、第一係合部341の外周部341aおよび第二係合部342の外周部342aに掛け回して係合する無端状部材からなる。本実施の形態における回転伝達機構34は、第一係合部341の外周部341aおよび第二係合部342の外周部342aをスプロケットとして構成し、このスプロケットにチェーンとして構成した無端状部材からなる駆動伝達部343を係合する構成としてある。他に、第一係合部341の外周部341a、第二係合部342の外周部342aおよび無端状部材からなる駆動伝達部343の係合は、高摩擦材などを介して接触滑りが防止された係合であってもよい。
【0035】
掘削カッタは、中心軸31の前端に設けた主羽根部材211の前面に掘削ビット(図示せず)を設けることによって主掘削カッタ21が構成される。また、掘削カッタは、回転軸33の前端に設けた副羽根部材221の前面に掘削ビット(図示せず)を設けることによって副掘削カッタ22が構成される。
【0036】
ここで、回転機構3に係る寸法設定について説明する。図2および図3に示すように副羽根部材221の半径をbとし、当該副羽根部材221の中心Gから回転軸33の中心(移動中心線P)に至る距離rをr≦bと設定する。そして、第一係合部341の外周部341aの直径DをD≦2(b−r)と設定し、第二係合部342の外周部342aの直径を4Dと設定する。すなわち、第一係合部341の外周部341aおよび第二係合部342の外周部342aに掛け回して係合する無端状部材の駆動伝達部343を設けることによって、第一係合部341の外周部341aが副羽根部材221の輪郭の外側にはみ出すことなく、主羽根部材211の1回転に対して副羽根部材221を逆方向に4回転(自転)させる駆動条件が満足される。
【0037】
上記構成の掘削機は、回転機構3において駆動部32の駆動力を中心軸31に伝達することによって、中心軸31が固定中心線Oを中心として回転(例えば図2における反時計回り方向)する。このため、中心軸31に設けた主羽根部材211(主掘削カッタ21)が固定中心線Oを中心として回転(例えば図2における反時計回り方向)する。また、中心軸31の回転が駆動伝達部343によって回転軸33に伝達されることによって、回転軸33が移動中心線Pを中心として回転(例えば図2における時計回り方向)する。このため、回転軸33に設けた副羽根部材221(副掘削カッタ22)が移動中心線Pを中心として回転(例えば図2における時計回り方向)する。このとき、上述した回転伝達機構34によって、主羽根部材211の1回転に対して副羽根部材221を逆方向に4回転(自転)させることになる。なお、これは掘削機に固定された絶対座標系において、主羽根部材211の1回転に対して副羽根部材221が逆向きに3回転することに相当している。
【0038】
具体的には、図2に示すように副羽根部材221が、主羽根部材211の先端から最も後退した位置であって、固定中心線Oから副羽根部材221の中心G、移動中心線Pの順で所望とする略正方形状の軌跡の1辺に直交する直線上に並ぶように位置している。この状態から、固定中心線Oを中心に主羽根部材211を反時計回りに1回転させる。このとき、主羽根部材211は、二点鎖線で示すように固定中心線Oを中心とした円形状の軌跡をなす。
【0039】
一方、固定中心線Oを中心に主羽根部材211を反時計回りに1回転させると、副羽根部材221は、主羽根部材211の固定中心線Oからの延在方向に対して、移動中心線Pを中心に逆方向に4回転する。すなわち、主羽根部材211が図2、図4および図5に至り反時計回りに45°回転する過程で、副羽根部材221は時計回りに180°回転し、主羽根部材211の先端から最も進出した位置であって、副羽根部材221の中心Gが固定中心線Oと移動中心線Pとを結ぶ直線上に位置する。次いで、主羽根部材211が、図5から図7に至り反時計回りにさらに45°回転する過程で、副羽根部材221は時計回りにさらに180°回転し、主羽根部材211の先端から最も後退した位置であって、副羽根部材221の中心Gが固定中心線Oと移動中心線Pとを結ぶ直線上に位置する。次いで、主羽根部材211が、図7から図9に至り反時計回りにさらに45°回転する過程で、副羽根部材221は時計回りにさらに180°回転し、主羽根部材211の先端から最も進出した位置であって、副羽根部材221の中心Gが固定中心線Oと移動中心線Pとを結ぶ直線上に位置する。最後に、主羽根部材211が、図9から図11に至り反時計回りにさらに45°回転する過程で、副羽根部材221は時計回りにさらに180°回転し、主羽根部材211の先端から最も後退した位置であって、副羽根部材221の中心Gが固定中心線Oと移動中心線Pとを結ぶ直線上に位置する。このようにして、副羽根部材221は、主羽根部材211の1回転に対して逆方向に4回転することで、図11に示すように固定中心線Oを中心として角部を円弧状とした略正方形状の軌跡をなす。この結果、本掘削機を前方向(図1参照)に推進することで図11に示すように角部が円弧状の略正方形状の掘削断面の掘削孔Hを掘進することが可能になる。
【0040】
略正方形状の軌跡を得る原理構成としては、ルーロー三角形の原理が用いられる。すなわち、図12に示すように、掘削機から見て主羽根部材211が固定中心線O(座標0,0)を中心にφ/3だけ回転する間に、副羽根部材221が移動中心線Pを中心にφだけ主羽根部材211と逆方向に1回転するようにする。このとき、移動中心線Pから距離(偏心量)r離れた副羽根部材221の中心Gの座標は、横軸をX座標、縦軸をY座標とする絶対座標系で、O,G,Pの順で直線上に並んだ位置からの主羽根部材211の回転角をφ/3として下記数1および数2で得られる。なお、ルーロー三角形の幾何学条件から、図2にあるように副羽根部材221の中心Gがなす略正方形状の軌跡の辺長をa’として、下記数3のごとく偏心量r=0.0774a’と求まる。この偏心量rは、略正方形状の軌跡の長辺をaとして0.05a〜0.065aの範囲が好ましく、この範囲よりも大きくすると略正方形状の辺中央部が内側に凹形状となり、小さくすると円形状の軌跡に近づくように調整することが可能である。
【0041】
【数1】


【0042】
【数2】


【0043】
【数3】


【0044】
ここで、中心Gを中心として半径bの副羽根部材221を設定する。半径bは偏心量r以上(r≦b)で、かつ、副羽根部材221が主羽根部材211の先端からあまり突出しないようにする。主羽根部材211の先端に移動中心線Pがある場合はb=rであるが回転軸33を設ける寸法が必要となるため、実施する寸法はb>rとなる。なお、回転軸33を主羽根部材211に設ける寸法を考慮すると、主羽根部材211の長さ(固定中心線Oからの延在長さ)Lは、L=0.5a’+bとなる。
【0045】
例えば、図12において単位をm(メートル)とする。ここでは、副羽根部材221の中心Gの軌跡(図12に破線で示す)となる略正方形状の辺長a’=4mとし、偏心量r=0.075×a’=0.3m、副羽根部材221の半径b=0.5m、主羽根部材211の長さL=0.5a’+b=2.5m(副羽根部材221の接合軸芯である移動中心線Pまでは2.3m)とした場合では、掘削される略正方形状の掘削断面の辺長aは、a’+2b=5mとなる。すなわち、図12に示す絶対座標系において、固定中心線Oを中心とした主羽根部材211の円形状の軌跡の四隅を、当該主羽根部材211とは逆向きで3倍の速度で回転する副羽根部材221で掘削することがわかる。これは、主羽根部材211に副羽根部材221を取り付けた座標系(移動座標系)においては、主羽根部材211が1回転する間に副羽根部材221が逆方向に4回転(自転)することに相当する。
【0046】
このように、上述した実施の形態における回転機構3(掘削機)は、所定の固定中心線Oを中心として回転可能に設けた中心軸31と、中心軸31の径外方向に延在して設けた主羽根部材211(主掘削カッタ21)と、固定中心線Oに平行な移動中心線Pを中心として主羽根部材211に対して回転可能に設けた回転軸33と、回転軸33の径外方向に延在して回転軸33の回転に伴い主羽根部材211の先端からの突出寸法が変化する態様で設けた副羽根部材221(副掘削カッタ22)と、中心軸31を回転駆動する駆動部32と、中心軸31の1回転を回転軸33の逆方向の4回転として伝達する回転伝達機構34とを備えている。
【0047】
そして、駆動部32の駆動力を中心軸31に伝達することによって、中心軸31が固定中心線Oを中心として回転する。このため、中心軸31に設けた主羽根部材211が固定中心線Oを中心として回転する。また、中心軸31の回転が駆動伝達部343によって回転軸33に伝達されることによって、回転軸33が移動中心線Pを中心として中心軸31と逆方向に回転する。このため、回転軸33に設けた副羽根部材221が移動中心線Pを中心として主羽根部材211と逆方向に回転する。このとき、回転伝達機構34によって、主羽根部材211の1回転に対して副羽根部材221を逆方向に4回転する。このため、主羽根部材211が固定中心線Oを中心とした円形状の軌跡をなし、副羽根部材221が固定中心線Oを中心とした略正方形状の軌跡をなす。この結果、略正方形状の掘削断面の掘削孔Hを掘進できる。
【0048】
すなわち、固定中心線Oを中心として主羽根部材211を回転駆動して円形状の掘削断面の掘削をし、かつ、固定中心線Oを中心として公転する副羽根部材221が自転することで主羽根部材211の外側で円形状の掘削断面を拡張するように略正方形状の掘削断面の掘削をする回転機構によって成り立っている。この結果、副羽根部材221の負担が小さい単純なメカニズムによって略正方形状の掘進を行うことが可能になる。また、主羽根部材211の駆動系は従前からある回転機構であり、この回転機構に副羽根部材221の駆動系を補助的に付加しているため、低コストで信頼性の高い回転機構および掘削機を得ることが可能である。
【0049】
さらに、固定中心線Oを中心として主羽根部材211を回転駆動し、かつ、固定中心線Oを中心として公転する副羽根部材221が自転する回転機構であるため、副羽根部材221の駆動系である回転伝達機構34による回転の伝達を行うことで副羽根部材221を駆動して略正方形状の掘削断面の掘削を行う一方、回転伝達機構34による回転の伝達を断つことで円形状の掘削断面の掘削を行うように切り替えることが可能である。この結果、例えば1台の掘削機によって線路用トンネルの円形状の掘削断面の掘削をし、続けて駅ホーム用トンネルの略正方形状の掘削断面の掘削をし、さらに続けて線路用トンネルの円形状の掘削断面の掘削をするなど、続けて異なる断面形状のトンネルを掘削でき、その断面中心を全て固定中心線Oに合わせることができる。
【0050】
また、主羽根部材211は十文字形状に配置されているため、掘削面にあたるカッタヘッドの面積が過大にならないため、掘削土を胴部1の内部に取り込むための開口面積を十分に確保することができる。
【0051】
また、中心軸31が固定中心線O上でその軸心がずれることなく回転するため、中心軸31をさらに前方向に延長した先端にロックオーガーなどの円形ドリルを設けた掘削を併用することができる。この結果、掘削に先駆けて削岩を行うことが可能になり、主掘削カッタ21や副掘削カッタ22の負荷を軽減できる。
【0052】
また、上記回転機構3は、固定中心線Oを中心として主羽根部材211を回転駆動し、かつ、主羽根部材211に対して移動中心線Pを中心として副羽根部材221を回転駆動する構成である。このため、従前の略正方形状の軌跡をなすようにルーロー三角形の外幅を一辺とする正方形枠にルーロー三角形状の軸を支持して回転させる必要がない。すなわち、枠体が必要ない。このため、掘進した掘削孔Hの断面形状に対して、掘削機の胴部1の前面視の輪郭を小さく形成することが可能になる。この結果、掘削カッタが先行して掘進した掘削孔Hに胴部1が通過できるので、略正方形状の掘削断面の掘削孔Hの掘進を行う掘削機を得ることが可能になる。さらに、中心軸31が固定中心線O上でその軸心がずれることなく回転するため、回転ぶれや振動を低減することが可能になる。また、中心軸31と回転軸33との回転の伝達に従前の自在継手を要することがないので、自在継手に係るコストを低減することが可能になる。また、上記回転機構3は、固定中心線Oを中心として主羽根部材211を回転駆動し、かつ、固定中心線Oを中心として副羽根部材221を公転駆動する回転機構である。このため、従前のごとくスイングアームを用いた複雑な構成にすることがなく、製造コストを低減することが可能である。すなわち、上記回転機構3(掘削機)は、簡素な機構で略正方形状の掘削断面の掘削孔Hを掘進するため、故障が起こり難く信頼性が高く、コストを低減することが可能である。
【0053】
ところで、図13および図14は回転伝達機構34の他の例を示している。ここでの回転伝達機構34は、第一係合部341、第二係合部342および駆動伝達部345を有している。第一係合部341は、移動中心線Pを中心とした外周部341aを有して円盤状に形成してあり、当該移動中心線Pを中心に回転するように各回転軸33の後端にそれぞれ固定してある。第二係合部342は、固定中心線Oを中心とした外周部342aを有し、かつ、中心軸31を回転可能に内挿して胴部1に固定してある。駆動伝達部345は、第一係合部341の外周部341aおよび第二係合部342の外周部342aに係合して中心軸31の回転を回転軸33の回転として伝達する。この駆動伝達部345は、回転軸345Aと、第三係合部345Bとで構成してある。回転軸345Aは、固定中心線Oおよび移動中心線Pと平行な中心線Sを中心として主羽根部材211に回転可能に設けてある。回転軸345Aは、主羽根部材211に貫通した後端が主羽根部材211の後方に延出して設けてある。なお、回転軸345Aは、図14に示すように固定中心線Oから相反する方向に延在した一文字形状の主羽根部材211に2つ設けてある。第三係合部345Bは、中心線Sを中心とした外周部345Baを有して円盤状に形成してあり、当該中心線Sを中心に回転するように各回転軸345Aの後端にそれぞれ固定してある。この第三係合部345Bは、外周部345Baを第一係合部341の外周部341aおよび第二係合部342の外周部342aに係合してある(例えば、歯車の噛合による係合)。なお、第一係合部341の外周部341a、第二係合部342の外周部342a、第三係合部345Bの外周部345Baの係合は、高摩擦材などを介して接触滑りが防止された係合であってもよい。
【0054】
このような他の回転伝達機構34であっても、上述した回転伝達機構34と同様に、回転軸33に設けた副羽根部材221を、移動中心線Pを中心として主羽根部材211と逆方向に回転させ、主羽根部材211の1回転に対して副羽根部材221を逆方向に4回転させる。すなわち、主羽根部材211が固定中心線Oを中心とした円形状の軌跡をなし、副羽根部材221が固定中心線Oを中心とした略正方形状の軌跡をなし、略正方形状の掘削断面の掘削孔Hを掘進できる。
【0055】
ところで、上記構成の掘削機において、中心軸31を複数並設し、隣接する相互の掘削カッタの回転軌跡が前面視で重複する態様で隣接する相互の掘削カッタの位置を固定中心線Oの軸方向でずらして配置する。このように構成すれば、略正方形状の掘削断面を一連に連続した略長方形状の掘削断面の掘削孔を得ることが可能になる。また、中心軸31を複数並設し、隣接する相互の掘削カッタの回転軌跡を前面視で重複する態様で配置する場合、隣接する各掘削カッタを固定中心線Oの軸方向で並べて同一面上に配置しつつ、隣接する各中心軸31を逆方向に回転駆動し、掘削カッタが干渉しないように回転機構に例えば45°の位相差を設ける。さらに、同様にして従前の円形状の掘削断面と略正方形状の掘削断面を一連に連続した掘削断面の掘削孔も得ることが可能である。
【0056】
また、上述した実施の形態では、略正方形状の軌跡をなす回転機構3および略正方形状の掘削断面の掘削孔を得る掘削機について説明したが、当該回転機構3の原理を応用して略正多角形状の軌跡をなす回転機構および略正多角形状の掘削断面の掘削孔を得る掘削機とすることもできる。具体的には、略正n角形状(n≧3)の軌跡および掘削孔とする場合、絶対座標系において主羽根部材と逆方向に(n−1)倍の速度で副羽根部材を回転させる。偏心量については、所望とする正n角形の寸法から適宜求める。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、回転機構において、輪郭が円形状の副羽根部材221に対し、その中心G周りに回転駆動するモータなどの駆動部(図示せず)を設けてもよい。このように構成することによって、掘削能力を向上することが可能になる。
【0058】
なお、上述した実施の形態では、回転機構3を掘削機に適用した例で説明しているが、上記回転機構3は掘削機に限るものではない。例えば略矩形状の軌跡をなす上記回転機構3の他の用途として、地中連続壁などで略矩形状の掘削断面の掘削に用いたり、セメントなどの硬化材を地盤中に注入する地盤改良で地盤を硬化材とともに混練り攪拌するときに用いたり、あるいは工作物の略矩形状の切削に用いたり、地盤以外の混練り物製造の攪拌に用いたりするなど、様々な用途が考えられる。すなわち、地盤改良や混練り攪拌に上記回転機構3を用いる場合には、各羽根部材が攪拌羽根となる。また、切削に上記回転機構3を用いる場合には、各羽根部材に切削刃を設けて切削カッタとなる。したがって、本発明の実施の形態での掘削は、攪拌や切削を含む意味で用いている。さらに、副羽根部材221のみに掘削ビットや切削刃を設け、当該副羽根部材221を主羽根部材211よりも前側に突出して構成することで、図11に示すように副羽根部材221の内側に矩形状(正方形状)の軌跡hが得られる。すなわち、中央部に軌跡hがなす矩形状(正方形状)を凸形に削り出す加工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る回転機構を用いた掘削機の実施の形態を示す概略側断面図である。
【図2】図1に示す回転機構を軸方向(前方向)から視た概念図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図5】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図6】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図7】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図8】図2に示す回転機構を説明する概念図である。
【図9】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図10】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図11】図2に示す回転機構の動作を示す概念図である。
【図12】図2に示す回転機構の絶対座標系での掘削軌跡を示す図である。
【図13】他の回転伝達機構を用いた掘削機を示す概略側断面図である。
【図14】図13に示す回転機構を軸方向(前方向)から視た概念図である。
【符号の説明】
【0060】
1 胴部
21 主掘削カッタ
211 主羽根部材
22 副掘削カッタ
221 副羽根部材
3 回転機構
31 中心軸
32 駆動部
33 回転軸
34 回転伝達機構
341 第一係合部
341a 外周部
342 第二係合部
342a 外周部
343 駆動伝達部
345 駆動伝達部
345A 回転軸
345B 第三係合部
345Ba 外周部
a 略正方形状の辺長
b 副羽根部材の半径
D 第一係合部(第四係合部)の外周部直径
G 副羽根部材の中心
H 掘削孔
O 固定中心線
P 移動中心線
r 偏心量
S 中心線




 

 


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