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発明の名称 コンクリートはつり装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−154440(P2007−154440A)
公開日 平成19年6月21日(2007.6.21)
出願番号 特願2005−347576(P2005−347576)
出願日 平成17年12月1日(2005.12.1)
代理人 【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
発明者 木村 克彦 / 木村 博 / 浦野 真次 / 田蔵 隆 / 村上 一夫 / 高橋 圭一
要約 課題
コンクリート構造物の表面のはつり方法において、高電圧パルス放電によるコンクリート破砕が確実に発生させる部位を満たす絶縁水の漏水を防止して効率のよいはつり作業を実現する。

解決手段
コンクリート表面上に下端周縁と前記コンクリート表面との間にシール部材を介装して設置された筒状容器内に、Jロート流下時間が5〜15秒となるように増粘剤を添加して粘性を付与した絶縁水を満たす。放電電極を所定間隔をあけて立設し、前記放電電極に付与される高電圧パルスを前記コンクリート表面から内部に伝播させて、前記放電電極間のコンクリート表面を薄層状にはつりとるようにした。
特許請求の範囲
【請求項1】
コンクリート表面上に設置された筒状容器内に粘性を付与した絶縁水を満たすとともに、放電電極を所定間隔をあけて立設し、前記放電電極に付与される高電圧パルスを前記コンクリート表面から内部に伝播させて、前記放電電極間のコンクリート表面を薄層状にはつりとることを特徴とするコンクリートはつり装置。
【請求項2】
前記筒状容器の下端周縁と前記コンクリート表面との間にシール部材を介装して前記絶縁水の漏水を防止することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートはつり装置。
【請求項3】
前記絶縁水は、Jロート流下時間が5〜15秒となるように、増粘剤を添加して粘性を増したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートはつり装置。
【請求項4】
前記シール部材は、前記筒状容器の下面周縁に連接された硬質樹脂リング部材と、周状をなして前記樹脂リング部材の下面の一部に一体的に突出形成された軟質樹脂リング部とからなることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートはつり装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートはつり装置に係り、高電圧パルス放電を用いて既設コンクリートの表面の所定範囲を効率よく、はつることができるようにしたコンクリートはつり装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧パルス放電を利用した岩石やコンクリートの破砕工法が提案されている(特許文献1参照)。この種の高電圧パルス放電を利用したコンクリートの破砕作業は、たとえば絶縁流体で覆われたコンクリート表面に、所定の離れをもって配置された放電端子およびアース端子を接触させ、放電端子側に高電圧パルスを印加させ、放電端子およびアース端子が接触しているコンクリートの表面を所定範囲にわたり、破砕するものである。この高電圧パルス放電によってコンクリートを破砕する原理としては、通常は絶縁体として作用せず、高電圧パルスを作用させたときにあたかも絶縁体として作用する水(以下、本明細書では、常時は導体であるが、高電圧パルス作用時にあたかも絶縁体として用いる水を「絶縁水」と呼ぶ。)でコンクリート表面が満たされることにより、放電は微細な空気泡などを含有するコンクリート内部を通り、放電経路内部が高圧プラズマ化し、コンクリートが破砕されるメカニズムからなりたっているものである。
【0003】
なお、本明細書では、大きな岩石やコンクリートを小割りのブロックに破砕させるような芯抜き破砕作業等に対して、特にコンクリートの表面の所定の範囲を数mm〜十数cmの範囲で薄層に割り、剥がすように破砕する作業を「はつり」と呼んでいる。したがって、本明細書では、破砕、はつり、破砕する、はつる等、ほぼ同義に用いてられている。
【0004】
上述のように、高電圧パルス作用時に絶縁材料として用いることができる水(絶縁水)を用いて、高電圧パルス放電破砕でコンクリートのはつり作業を行うためには、絶縁水の絶縁性能が十分得られるように、コンクリート表面を所定の水深で覆うことが好ましい。特許文献2には、岩石の表面に、内部に電極端子が配設されている破砕ヘッドを密着し、その内部にポンプを介して絶縁流体を供給する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−119283号公報。
【特許文献2】特開平11−236793号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、絶縁流体としてディーゼルオイル、水、海水、グリース、作動油等を用いて、立設された電極を破砕対象である岩石等の内部に向かって進行するように構成されている。そしてその破砕された空間内に絶縁流体を貯留させて、連続した破砕作業を行うようにしているが、特許文献2のように、破砕ヘッドを用いて絶縁流体に加圧して破砕対象物内に制御浸透させることは考慮していないので、破砕対象物の破砕の効率が悪いという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2では、破砕ヘッド内の絶縁流体に加圧することにより、破砕対象物内の所定深さまで絶縁流体を制御させながら浸透させるようになっている。このため、破砕対象物の内部の深い位置に放電経路を形成して破砕面を生じさせることができるので、効率の良い破砕作業が実現するとしている。
【0008】
しかし、たとえばコンクリート表面の所定の平面範囲を所定の深さではつるようなはつり作業では、はつり作業を行う方向に放電電極端子を所定の距離だけ移動させていくので、特許文献2に示したような破砕ヘッドの他に流体加圧装置からの供給管を連結させた状態で、移動した位置において破砕ヘッドをコンクリート表面に密着させ、その破砕ヘッド内に絶縁流体を加圧供給する作業を連続して行う手順を繰り返さなければならない。このため、破砕作業がきわめて煩雑で非効率的になるという問題があった。
また、コンクリート表面のはつり作業が進行するに連れて、破砕ヘッドの下面がすでにはつられ、欠けたコンクリート表面の部位に重なってしまう場合がある。この状態ではコンクリート表面と破砕ヘッドとの間に隙間が生じてしまい、内部の水等の絶縁物が流出してしまう。
【0009】
また、絶縁流体としては、一般に水を使用するのが、はつり作業を行うの現場での対応が容易であり、かつ経済的である。しかし、コンクリート表面には微妙な凹凸があるため、上述した破砕ヘッド等の下面との間にわずかな隙間が生じ、漏水するおそれがある。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、コンクリート表面の凹凸による絶縁水の漏水等を確実に防止できるようにしたコンクリートはつり装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明はコンクリート表面上に設置された筒状容器内に粘性を付与した絶縁水を満たすとともに、放電電極を所定間隔をあけて立設し、前記放電電極に付与される高電圧パルスを前記コンクリート表面から内部に伝播させて、前記放電電極間のコンクリート表面を薄層状にはつりとることを特徴とする。
【0011】
このとき、前記筒状容器の下端周縁と前記コンクリート表面との間にシール部材を介装して前記絶縁水の漏水を防止することが好ましい。
【0012】
前記絶縁水は、Jロート流下時間が5〜15秒となるように、増粘剤を添加して粘性を増すことが好ましい。
【0013】
前記シール部材は、前記筒状容器の下面周縁に連接された硬質樹脂リング部材と、周状をなして前記樹脂リング部材の下面の一部に一体的に突出形成された軟質樹脂リング部とから構成させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンクリートはつり作業の進行により、はつり装置の容器下端とはつられたコンクリートとの間に生じる隙間を完全に閉塞できるため、前記容器内に貯水した粘性を有する絶縁水の漏水を確実に防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のコンクリートはつり装置の実施するための最良の形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明のコンクリートはつり装置(以下、単にはつり装置10と記す。)の一実施例で、はつり装置10の本体部内の放電電極の設置状態をわかるように、装置の一部を断面で示した概略全体構成図である。同図に示したように、はつり装置10の本体部は、はつり作業の対象となるコンクリート表面上に載置され水12で満たされたた筒状容器と、この筒状容器11内には図示しない支持フレームに保持された2本の放電電極13とからなり、放電電極13は、コンクリート表面1の高電圧パルス破砕が可能な端子間距離をとって設置されている。本実施例では、放電電極13は、端子先端13aを構成するφ5mmの銅線の周囲を高密度ポリエチレン樹脂被覆材13bで絶縁被覆した、自立可能な棒状体から構成されている。なお、本実施例では、高電圧パルス発生源として、200kV,400kV程度の高電圧電源と、この高圧電源を所定のパルス電圧として対象に印加可能な電荷容量のコンデンサを備えた公知の高電圧パルス発生装置5が用いられている。
【0017】
公知の高電圧パルス発生装置5から導出された導線6が接続された2本の放電電極13(陽極電極端子13+、陰極電極端子13−)の先端を、コンクリート表面1に所定の離れをあけて接触させ、一定の時間間隔をあけて発生させる高電圧パルスを陽極端子13+側からコンクリート表面1に放電させ、このパルス電流を陰極端子13−側までコンクリート内を導通させることで生じる衝撃力をコンクリート内に伝播させることで、2本の放電電極13間で、所定の幅、深さまでのコンクリート表面1を薄い塊状に剥離して破砕させることができる。
【0018】
この放電電極13を収容する筒状容器11の直径は、はつり範囲を規定する放電電極間距離Lに応じて決定することが好ましいが、容器の高さは、高電圧パルスにとっての絶縁物である絶縁水12でコンクリート表面1が満たされ、放電が確実にコンクリート内部を伝播し、放電経路となったコンクリート部分が破砕されように、十分な水深Dが確保できる程度に設定することが好ましい。具体的には放電電極13間距離Lの1/2倍程度の水深を確保することができる程度の寸法にすることが好ましい。なお、筒断面形状は破砕時に水中を伝播した衝撃波による破損のおそれを最小限にするため、隅角部等のない円筒形状とすることが好ましい。
【0019】
一方、この筒状容器11の下端には、下端全周にわたりシール部材が設けられる。そして図1に、示したように、内部に絶縁水12が貯水された際に、下端からの漏水を防止するために、シール部材20がコンクリート表面1に確実に密着することが重要となってくる。そこで、筒状容器11の肉厚は上述した衝撃波に耐えうる厚さであるとともに、容器全体の自重作用により、シール部材20のコンクリートへの密着性が向上する程度に、その自重が増加するように設定することも好ましい。なお、凹凸形状があるコンクリート面への密着性を向上させるために、図2で後述するように、筒状容器11を上側から加重するリング状のウエイト部材16を用いることで対処することも可能である。
【0020】
本実施例では、シール部材20として、コンクリート表面1の凹凸に追従して変形可能な材質を有する弾性成形部材としてシリコーン樹脂が用いられているが、たとえば自己接着性を示す非加硫ブチルゴム等の軟質合成ゴム、各種軟質ゴムエラストマー系、ウレタン系エラストマー、ゲル状を呈する軟質ウレタン樹脂等、筒状容器11と、凹凸形状のあるコンクリート表面1との間の隙間を閉塞可能な各種材料を用いることができる。
【0021】
また、筒状容器11内には水供給管3が配管されており、外部貯水容器内に貯留されている絶縁水12が、破砕作業に先立って外部ポンプPの稼働によって筒状容器11内の所定水深まで供給される。そして、破砕作業後、筒状容器11内のコンクリート破砕片が混ざった絶縁水12は再度、外部貯水容器4に還流される。コンクリート破砕片は環流水の経路中間に設けられたフィルタ(図示せず)で除去することが好ましい。
【0022】
この筒状容器11内に貯水される絶縁水12は、通常の水道水をベースとし、所定割合の増粘剤が添加され、絶縁水12の粘性がわずかに高められている(以下、この水を粘性水12と呼ぶ)。この結果、コンクリート表面1に接触する筒状容器11の下端とコンクリートはつり面との隙間から粘性水12の流出する量を低減できる。本実施例では、粘性水12は、水道水に対して増粘剤を、0.5〜5.0質量%程度添加して製造することが好ましい。この粘性水12の品質管理は、後述するようにJロート流下時間を用いて行うことが好ましい。粘性水12の粘性は、貯水された筒状容器11下部の隙間からの流出防止の面からは大きい方が好ましいが、粘性が高いと、使用ポンプの負荷が増大し、また粘性水12内に、はつりコンクリート片が混入した場合の除去に手間がかかるので、上記Jロート流下時間内におさまる程度の粘性を有することが好ましい。具体的には、Jロート流下時間で約5〜15秒が適当で、とくに後処理を考慮した場合には約5〜10秒が適当ある。なお、水としては増粘剤の粘性発揮を阻害しないものであれば、岩盤湧水、現場揚水等を適宜使用することができる。
【0023】
増粘剤としては、使用水道水に添加して容易に溶ける、セルロース系水溶性高分子、アクリル系高分子、植物性高分子材料等が好適である。なお、コンクリート表面1が平滑で、シール部材20による水密性が十分確保できる状態であれば、増粘剤を添加することなく、通常の水道水を使用することができることはいうまでもない。
【0024】
次に、図2における加重リングとしてのウエイト部材16について簡単に説明する。同図に示したように、図1に示した以後、ひきつづきコンクリート表面1のはつり作業を行っていくと、図2に示したように、筒状容器11の下端の一部がはつられたコンクリート表面1の一部に位置する場合がある。コンクリート表面1が、図1に示したように、ほぼ水平面であれば、筒状容器11の自重でシール部材20はコンクリート表面1に密着して漏水のおそれはないが、図2に示したように、コンクリートが破砕した状態の表面は、モルタルや骨材の破砕面や、骨材が抜け落ちた個所等が現れる。そのため、シール部材20をこのはつり後のコンクリート表面1に確実に密着させることが重要である。そこで、図2に示した工程では、筒状容器11の上部に加重リングを載置し、上方からの押圧力を増し、シール部材20をはつり後のコンクリート表面1に十分変形させ、はつり作業によって生じた凹凸形状面に密着させている。本実施例では、加重リングとして鋼製ウエイト16を用いたが、コンクリート表面1に設けられたアンカー部(図示せず)を利用してワイヤ等の引張部材等を用いて筒状容器11をコンクリート面側に押圧させることも可能である。
【0025】
[シール部材の変形例]
上述のシール部材20は、筒状容器11の直径に等しいリング状の単一材質からなる成形部材を用いた例を示したが、このシール部材20を2種類の部材で構成した変形例について図3〜図5を参照して説明する。
本変形例では、図3に示したように、筒状容器11の下端全周にわたり、硬質樹脂製の第1のリング状シール部材21を設け、その第1のリング状シール部材21の下面に軟質樹脂製の第2のリング状シール部材22を2重に設けた構造になっている。図3は、この2重構造シール部材20(21,22)が設けられた筒状容器11全体を示した断面図である。同図におけるシール部材20の拡大図を図5(a),(b)に示した。図5の各図から明らかなように、筒状容器11をコンクリート表面1に載置する前の初期形状は図5(a)に示した形状からなる。そして、筒状容器11が図3に示したような平滑なコンクリート表面1にセットされた際には、図5(b)に示したように、第1のシール部材21は筒状容器11の自重で変形するとともに、より軟質の第2のシール部材22は、完全に扁平に変形し、コンクリート表面1と密着する。次いで、図4に示したように、筒状容器11がはつりコンクリートの表面に載置されると、シール部材20の形状は、図5(c),(d)に示したように、第1のシール部材21が大きな窪み1aに倣ってほぼ矩形断面を保持しつつコンクリートの形状に倣って変形するとともに、先端の第2のシール部材22がコンクリート表面1の細かい凹凸面に食い込むように押圧され、図4に示したように、はつり作業により凹んだコンクリートの一部に筒状容器11がかかるため、容器11自体はやや傾いた状態となるが、筒状容器11下面は確実にコンクリート表面1に密着し、後に筒状容器11内に貯水される粘性水12は、この底面とコンクリート表面1との間から漏れることがない。
【実施例2】
【0026】
図6は、コンクリート壁面7のはつり作業にこのはつり装置10を適用した他の実施例を示した説明図である。同図に示したように、筒状容器11は内部に粘性水12を貯水するために、水密性を有する脱着可能な蓋部15を有している。そして、この蓋部15で覆われた筒状容器11は固定バンド8を介してコンクリート壁面7に施工されたアンカー部9に保持されるようになっている。このとき、内部に粘性水12を満たすために、容器上部に水供給管3が接続され、この水供給管3に図1と同様の外部ポンプP、外部貯水容器4が設けられている。なお、本実施例では固定バンドによって筒状容器11が固定されてるが、筒状容器11を壁面に固定するその他の固定機構として、たとえばブーム操作により各種作業が可能な重機のブーム先端アタッチメントとしてこの筒状容器11を搭載する架台を設け、ブーム操作により、架台上の筒状容器11を、対象となるコンクリート壁面7に適度な押圧力によって配置させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のコンクリートはつり装置の全体構成を示した一部断面図。
【図2】図1に示したはつり装置の設置状態例を示した一部断面図。
【図3】シール部材の他の実施例による筒状容器底部のシール状態を説明した一部断面図。
【図4】シール部材の他の実施例による筒状容器底部のシール状態を説明した一部断面図。
【図5】図3,図4に示したシール部材の変形状態を示した拡大説明図。
【図6】はつり装置をコンクリート壁面に適用した例を示した説明図。
【符号の説明】
【0028】
1 コンクリート表面
5 高電圧パルス発生装置
7 コンクリート壁面
10 はつり装置
11 筒状容器
12 絶縁水(粘性水)
13 放電電極
20 シール部材




 

 


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