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発明の名称 掘削機
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−16563(P2007−16563A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−202288(P2005−202288)
出願日 平成17年7月11日(2005.7.11)
代理人 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
発明者 磯田 和彦
要約 課題
駆動系の回転ぶれや振動を低減するとともに駆動系のコストを低減し、また力学的に強度を有するほぼ矩形状の断面の掘削を実現する。

解決手段
回転軸131が正方形穴121の中心Pに位置して回転駆動され、かつ、その外周部に従動部133の穴の内周部が当接係合してあり、回転軸131の回転に従って従動部133が掘削軸11を伴って従動することで、正方形穴121へのルーロー軸部111の内接を維持しながら正方形穴121の中心線Pの周りに掘削軸11の回転中心Gを所定軌道で移動させつつ掘削軸11を回転中心Gを中心として回転させる。また、従動部133の穴の内周形状は、正方形穴121へのルーロー軸部111の内接を維持しながらルーロー軸部111のルーロー三角形を回転させたときの、当該ルーロー三角形に対する正方形穴121の中心Pの移動軌跡に基づいて形成する。
特許請求の範囲
【請求項1】
ルーロー三角形の断面形状をなして当該ルーロー三角形の中心線を回転中心としたルーロー軸部を有するとともに前記ルーロー軸部の前端にて軸心方向に拡大投影したルーロー三角形状の範囲内で少なくとも中心と頂点とを結ぶ延長線に沿って配置した掘削カッタを有した掘削軸、当該掘削軸のルーロー三角形部分の外幅を一辺とする正方形穴を有して当該正方形穴の内周に前記ルーロー軸部の外周を内接させて前記掘削軸を回転可能に支持する固定の軸受、および前記掘削軸を回転駆動する駆動機構を備えてなり、
前記駆動機構は、
前記軸受の正方形穴の中心線を回転中心として回転可能に設けた回転軸と、
前記回転軸を回転させる駆動部と、
前記回転軸の外周部に対して内周部が当接係合する穴をなして前記掘削軸に形成してあり前記回転軸の回転に従い前記穴が前記掘削軸を伴って従動することで前記正方形穴への前記ルーロー軸部の内接を維持しながら前記正方形穴の中心線の周りに前記掘削軸の回転中心を所定軌道で移動させつつ前記掘削軸を回転させる従動部と
を備えたことを特徴とする掘削機。
【請求項2】
前記掘削軸を所定軌道で移動させる前記従動部の穴の内周部形状は、前記正方形穴へのルーロー軸部の内接を維持しながらルーロー軸部のルーロー三角形を回転させたときの、当該ルーロー三角形に対する正方形穴の中心の移動軌跡に基づいてなることを特徴とする請求項1に記載の掘削機。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に地盤などを掘削する掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な掘削機は、カッタヘッドを回転させることによって当該カッタヘッドで地盤を掘削するものが知られている。このような掘削機は、カッタヘッドが回転することから必然的に断面形状が円形になる。しかし、鉄道や道路などのトンネル利用空間は、断面形状がほぼ矩形であることが多く、上記円形の範囲内にほぼ矩形の鉄道や道路などの空間を構築する。このため、利用空間以上の掘削を行うことになるので、用地面積が多く必要となることを加えて建設費が嵩むという問題がある。
【0003】
従来、ルーロー三角形なるルーロー三角形回転体に切削用バイトを設け、当該ルーロー三角形回転体を回転することで、被加工物に正方形状の穴明けを行う正方形穴明け加工装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、加工部材をその中心周りに回転自在に加工部材自転支持装置に取り付け、当該加工部材自転支持装置を加工部材公転支持装置に取り付けた掘削機がある。加工部材には、中心と同芯状のほぼ正三角形の各頂点とその内方に掘削刃を設けて掘削作用面が形成してある。加工部材自転支持装置は、加工部材を前記正三角形の一辺の((1/2)/cos30°−(1/2))倍の半径で中心が回転するように加工部材公転支持装置に取り付けてある。そして、加工部材を自転させながらその自転方向とは逆の方向に3倍公転させる駆動手段を設けてある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、正三角形の各頂点を中心とし、その一辺の長さを半径とする円弧を各対辺の外側に描き、これらの3つの円弧により囲まれたルーロー三角形を外形とするカッタを、矩形状スキンプレートの中心軸の回りに公転させながら自転させて掘削する矩形シールド工法がある。スキンプレートの中心軸に対するカッタの回転軸の偏心距離Rは、R=(L/2)/cos30°−(L/2)を満足するように設定してある(L:ルーロー三角形の頂点間の距離)。また、カッタの公転数は自転数の3倍で、公転方向と自転方向が逆方向である(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−267950号公報
【特許文献2】特開平1−158196号公報
【特許文献3】特許第2926125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ルーロー三角形を利用して略矩形状に掘削を行う場合には、ルーロー三角形をその重心を中心として回転させ、かつルーロー三角形をその重心を正方形の中心の周りに公転させる必要がある。
【0008】
特許文献1の発明は、モータのトルクを伝達する軸と、ルーロー三角形回転体の重心の軸とを自在継手で連結してある。しかし、この構成では駆動伝達系に回転ぶれや振動が生じることになり、さらに大きなトルクが必要となる掘削機では自在継手は高価であり製造コストが嵩む。
【0009】
特許文献2の発明では、モータからのトルクをクランク軸によって加工部材に伝達して公転装置を構成してある。しかし、クランク軸にせん断力や曲げモーメントが生じて回転ぶれや振動の原因となる。さらに、特許文献2の発明では、ルーロー三角形を公転させる半径が正三角形の一辺の((1/2)/cos30°−(1/2))倍に設定してある。しかし、この場合では、掘削されるほぼ矩形状の断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることになる。このように掘削された掘削孔は、力学的に強度が低下するため好ましくない。
【0010】
特許文献3の発明は、矩形状スキンプレートの中心に公転駆動盤を設けてこの公転駆動盤にカッタ回転軸を設けてある。そして、公転駆動盤を回転させるモータと、カッタ回転軸を回転させるモータを設けてある。しかし、カッタ回転軸を回転させるモータは、公転駆動盤に設けてあるため、配線や配管の処理を十分検討して設計する必要がある。さらに、各モータの回転数や回転方向を調整してそれぞれ同期させる必要がある。この結果、設計コストが嵩む。さらに、特許文献3の発明では、カッタ回転軸の中心と公転駆動盤の中心との偏心距離Rは、R=(L/2)/cos30°−(L/2)としてある。しかし、この場合では、上述した特許文献2の発明と同様に掘削されるほぼ矩形状の断面の各辺が孔の内側に向けて凹状に形成されることになり好ましくない。さらに、上記偏心距離Rによれば偏心量が一定となり、矩形状の掘削を行うべき正方形枠内を移動するルーロー三角形の偏心量が回転角度によって変化することから、矩形状の掘削を行うには一定の偏心量は好ましくない。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、ルーロー三角形の原理を用いて、駆動系の回転ぶれや振動を低減するとともに駆動系のコストを低減し、また力学的に強度を有するほぼ矩形状の断面の掘削を実現することができる掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る掘削機は、ルーロー三角形の断面形状をなして当該ルーロー三角形の中心線を回転中心としたルーロー軸部を有するとともに前記ルーロー軸部の前端にて軸心方向に拡大投影したルーロー三角形状の範囲内で少なくとも中心と頂点とを結ぶ延長線に沿って配置した掘削カッタを有した掘削軸、当該掘削軸のルーロー三角形部分の外幅を一辺とする正方形穴を有して当該正方形穴の内周に前記ルーロー軸部の外周を内接させて前記掘削軸を回転可能に支持する固定の軸受、および前記掘削軸を回転駆動する駆動機構を備えてなり、前記駆動機構は、前記軸受の正方形穴の中心線を回転中心として回転可能に設けた回転軸と、前記回転軸を回転させる駆動部と、前記回転軸の外周部に対して内周部が当接係合する穴をなして前記掘削軸に形成してあり前記回転軸の回転に従い前記穴が前記掘削軸を伴って従動することで前記正方形穴への前記ルーロー軸部の内接を維持しながら前記正方形穴の中心線の周りに前記掘削軸の回転中心を所定軌道で移動させつつ前記掘削軸を回転させる従動部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る掘削機は、上記請求項1において、前記掘削軸を所定軌道で移動させる前記従動部の穴の内周部形状は、前記正方形穴へのルーロー軸部の内接を維持しながらルーロー軸部のルーロー三角形を回転させたときの、当該ルーロー三角形に対する正方形穴の中心の移動軌跡に基づいてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る掘削機は、回転軸が正方形穴の中心に位置して回転駆動され、かつ、その外周部に従動部の穴の内周部が当接係合してあり、回転軸の回転に従って従動部が掘削軸を伴って従動することで、掘削軸を回転駆動する。この結果、回転軸が正方形穴の中心でその軸心がずれることなく回転するため、回転ぶれや振動を低減することができる。また、回転軸と掘削軸との係合が掘削軸に設けた従動部の穴の内周部への当接によるものであるため、回転軸と掘削軸と間に自在継手を要することがないので、自在継手に係るコストを低減することができる。
【0015】
また、従動部の穴の内周形状は、正方形穴へのルーロー軸部の内接を維持しながらルーロー軸部のルーロー三角形を回転させたときの、当該ルーロー三角形に対する正方形穴の中心の移動軌跡に基づいて形成してある。すなわち、掘削軸の中心と回転軸の中心との偏心距離の偏心量を一定とせず、正方形穴に内接して移動するルーロー三角形の中心の偏心量に合わせて設計してある。この結果、ルーロー三角形は外周が正方形穴に内接しながら、同時に穴の内周が回転軸に当接するため、円滑な回転によって理想的なほぼ矩形状の掘削を行うことができる。特に、掘削された掘削孔は、ほぼ矩形状の断面の各辺が平行もしくは掘削孔の外側に向けて凸状に形成されるため、力学的に強度を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る掘削機の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は本発明に係る掘削機の実施の形態を示す概略側面図、図2は図1に示す掘削機を軸方向から視た概念図である。
【0018】
図1に示すように掘削機は、胴部1と掘削カッタ2とを備えている。胴部1は、掘削カッタ2を支持しつつ掘削カッタ2を駆動するものであって、掘削機の外郭をなし、その内部に掘削軸11、軸受12および駆動機構13を有している。
【0019】
掘削軸11は、胴部1の前端側に設けてあって、自身の回転中心である軸線に直交する断面形状が図2に示すようにルーロー三角形状に形成してある。ルーロー三角形状は、図2に一点鎖線で示すように正三角形の各頂点を中心として他の頂点を結ぶ円弧を描いてなる形状をなし、その外幅(差し渡し幅)がいずれも定幅なものである。この掘削軸11は、その前端が胴部1の前側に延出し、後端が胴部1の内部に向けて延在して配置してあり、ルーロー三角形の中心(重心)である中心線(図2に符号Gで示す)を回転中心としたルーロー軸部111を有する。
【0020】
軸受12は、胴部1に固定してあって、掘削軸11のルーロー軸部111を回転可能に支持するものであり、図2に示すように掘削軸11のルーロー三角形状の外幅を一辺とする正方形穴121を有している。この軸受12は、正方形穴121の内周に掘削軸11のルーロー軸部111の外周を内接させて当該掘削軸11を回転可能に支持する。
【0021】
なお、掘削軸11は、軸受12によって支持されるルーロー軸部111の部位のみの断面形状がルーロー三角形状としてあればよい。また、図には明示しないが掘削軸11のルーロー三角形状部分の外周、と軸受12の正方形穴121の内周とが互いに接触する部位には摩擦を低減する部材を配置することが好ましい。
【0022】
駆動機構13は、軸受12に支持してある掘削軸11を回転駆動するためのものであり、回転軸131、駆動部132および従動部133を有している。回転軸131は、自身の回転中心である軸線を胴部1の前後方向に沿って配置してあり、胴部1に固定した軸受(図示せず)を介して軸受の正方形穴の中心線(図2に符号Pで示す)を回転中心として回転可能に支持してある。駆動部132は、回転軸131を回転させるものであり、例えばモータなどの駆動源からなる。なお、駆動部132は、図には明示しないが駆動源と回転軸131との間に適宜減速機構を有していてもよい。従動部133は、掘削軸11の後端側に向けて開設した穴であって、当該穴の内周部が回転軸131の外周部に対して係合する態様で形成してある。従動部133の穴の内周部は、ルーロー三角形の中心(重心に同じ:図2に符号Gで示す)を中心とした概略円状に形成してある。回転軸131の外周部に対する従動部133の内周部の係合は、例えば回転軸131の外周部に外歯を設け、穴の内周部に内歯を設けて、これら外歯と内歯との噛合による形態がある。あるいは、回転軸131の外周部と穴の内周部とが高摩擦材などを介して接触滑りが防止された形態であってもよい。この従動部(穴)133は、回転軸131の回転に従って、掘削軸11を伴って従動する。
【0023】
掘削カッタ2は、胴部1の前側に延出した掘削軸11の前端に設けてある。図2に一点鎖線で示すように掘削カッタ2は、掘削軸11のルーロー三角形状の断面を等比率で拡大して、掘削軸11のルーロー三角形状に対して重心Gおよび頂点Tの向きを一致させたルーロー三角形状の範囲内であって、少なくとも拡大したルーロー三角形の重心Gから頂点Tに至る延長線(図2に二点鎖線で示す)に沿って設けてある。図には明示しないが掘削カッタ2の前面には、掘削ビットが設けてある。
【0024】
上記構成の掘削機は、駆動機構13において駆動部132の駆動力を回転軸131に伝達することによって、回転軸131が軸受12の正方形穴121の中心線(P)を中心として回転する。すると、回転軸131の外周部に係合する従動部133が掘削軸11を伴って従動する。そして、掘削軸11は、正方形穴121への掘削軸11の内接を維持した形態で正方形穴121の中心線(P)の周りに回転中心(G)が所定軌道で移動しつつ、回転中心(G)を中心にして回転することになる。すなわち、掘削軸11のルーロー軸部111が、軸受12の正方形穴121の内形に沿って輪転運動を行うことになる。このため、掘削軸11に設けた掘削カッタ2は、掘削軸11の輪転運動に伴ってその頂点Tが正方形穴121を基にしたほぼ矩形状の軌跡をなす。この結果、図2に示すようにほぼ矩形状の断面の掘削孔Hを掘進することが可能になる。この掘削孔Hは、断面円形の掘削孔と比較して、不要な空間を掘削せずに利用空間のみの掘削で得られるため、必要以外の用地面積を要さないことを加えて建設費を低減することが可能になる。
【0025】
さらに、掘削カッタ2が、掘削軸11のルーロー三角形状の断面を等比率で拡大して、掘削軸11のルーロー三角形状に対して重心Gおよび頂点Tの向きを一致させたルーロー三角形状の範囲内で、少なくとも拡大したルーロー三角形の重心Gから頂点Tに至る延長線に沿って設けてある。この場合には、掘進した掘削孔Hの断面形状を、掘削軸11を支持する軸受12の外形よりも大きくできるので、掘削軸11の回転に伴い回転した掘削カッタ2が描く掘削孔Hの断面形状の範囲内に胴部1の前面視の輪郭を形成することが可能になる。この結果、掘削カッタ2が先行して掘進した掘削孔Hに胴部1が通過できるので、掘削断面がほぼ矩形状の掘削孔Hの掘進を行う掘削機を得ることが可能になる。この掘削機は、上記のごとく簡素な機構でほぼ矩形状の断面の掘削孔Hを掘進するため、故障が起こり難く信頼性が高く、コストが嵩むことがない。
【0026】
なお、掘削軸11のルーロー三角形状の断面を等比率で拡大して掘削カッタ2を設けた場合には、掘削孔Hのほぼ矩形状の断面の各角部が丸みを帯び、各辺がわずかに外向きに凸形状になることになる。丸みを帯びた断面ほぼ矩形状の掘削孔Hは、断面矩形状と比較して隅部への応力集中を緩和することができるので掘削に際して適している。
【0027】
ところで、上記構成の掘削機において、掘削軸11を複数平行に設け、隣接する相互の掘削カッタ2の回転軌跡が前面視で重複する態様で隣接する相互の掘削カッタ2の位置を掘削軸11の軸方向でずらして配置する。このように構成すれば、ほぼ正方形(ほぼ矩形状)の掘削断面を一連に連続したほぼ長方形(ほぼ矩形状)の掘削断面の掘削孔を得ることが可能になる。
【0028】
また、掘削軸11を複数平行に設け、隣接する相互の掘削カッタ2の回転軌跡を前面視で重複する態様で配置する場合、隣接する各掘削カッタ2を掘削軸11の軸方向で並べて同一面上に配置しつつ、隣接する各掘削軸11を逆方向に回転駆動する。このように構成すれば、ほぼ正方形(ほぼ矩形状)の掘削断面を一連に連続したほぼ長方形(ほぼ矩形状)の掘削断面の掘削孔を得ることが可能になる。
【0029】
すなわち、ほぼ正方形(ほぼ矩形状)の掘削断面である複数の掘削孔Hを一連に連続したほぼ長方形(ほぼ矩形状)の掘削断面の掘削を行うことが可能になる。また、各掘削カッタ2について相互の前面を同一面上に配置することによって、掘削した先端部を凹凸なく平らに掘進することが可能になる。
【0030】
以下、上述した掘削機における駆動機構13の従動部(穴)133の詳細について説明する。図3〜図6は従動部の内周形状を導くための概念図である。
【0031】
上述したように、従動部133は、回転軸131が軸受12の正方形穴121の中心線(P)を中心として回転した場合に、回転軸131の外周部に係合して掘削軸11を伴って従動する。そして、従動部133は、正方形穴121へのルーロー軸部111の内接を維持した形態で正方形穴121の中心線(P)の周りに掘削軸11の回転中心(G)を所定軌道で移動させつつ掘削軸11を回転させる。
【0032】
ここで、ルーロー三角形(ルーロー軸部111)に対する正方形穴121の中心(P)の移動軌跡を検討した。そして、この軌跡上で回転軸131が移動できるように、従動部(穴)133を設ける。具体的には、回転軸131を半径rの円断面として、ルーロー三角形の中心(重心に同じく:G)から、「正方形穴121の中心(P)の移動軌跡+半径r」の寸法で従動部133を設け、この従動部133に回転軸131が内接する形態とする。
【0033】
図3に示すように正方形穴121の横辺をX座標、縦辺をY座標とし、一辺の長さをaとして正方形の中心(P)を原点(0x,0y)とする座標系で、正方形穴121に内接した状態でルーロー三角形(ルーロー軸部111)が回転する場合を検討する。また、ルーロー三角形上に固定された座標系に関する検討も加える。なお、図3に示すようにルーロー三角形の頂点Aは正方形の上辺中央に接触し、頂点Bは正方形の左辺に接触し、頂点Cは正方形の右辺に接触した位置を基準とする。この基準において頂点の回転角度は「θ=0」である。
【0034】
まず、0°≦θ≦30°(図3→図4)の場合、ルーロー三角形の重心(G)を座標(gx,gy)とすると、頂点A,Bが正方形の辺上(上辺、左辺)を移動し、下記数1であらわされる。
【0035】
【数1】


【0036】
そして、ルーロー三角形上に固定された重心(G)を原点とする座標系において、正方形穴121の中心(P)の座標(0x,0y)は、ルーロー三角形がθだけ回転しているため下記数2であらわされる。
【0037】
【数2】


【0038】
次に、30°≦θ≦60°(図4→図5)の場合、ルーロー三角形の重心(G)を座標(gx,gy)とすると、頂点B,Cが正方形の辺上(左辺、下辺)を移動し、下記数3であらわされる。
【0039】
【数3】


【0040】
そして、ルーロー三角形上に固定された重心(G)を原点とする座標系において、正方形穴121の中心(P)の座標(0x,0y)は、ルーロー三角形がθだけ回転しているため下記数4であらわされる。
【0041】
【数4】


【0042】
次に、60°≦θ≦90°(図5→図6)の場合、ルーロー三角形の重心(G)を座標(gx,gy)とすると、頂点C,Aが正方形の辺上(下辺、右辺)を移動し、下記数5であらわされる。
【0043】
【数5】


【0044】
そして、ルーロー三角形上に固定された重心(G)を原点とする座標系において、正方形穴121の中心(P)の座標(0x,0y)は、ルーロー三角形がθだけ回転しているため下記数6であらわされる。
【0045】
【数6】


【0046】
上記0°≦θ≦90°において、正方形穴121の中心(P)の座標(0x,0y)は、一連の移動軌跡をなす。そして、以上の結果により、θが変化したときの「ルーロー三角形上に固定された座標(中心:重心G)に対する正方形穴121の中心(P)の移動軌跡に基づいて従動部133の内周形状を求める。すなわち、図7に示すようにやや下方向けて窄まるほぼ円形の移動軌跡(実線で示す)となる。そして、正方形穴121の中心Pを中心として回動する回転軸131の半径r分を移動軌跡の外回りに加えることで、移動軌跡上を半径rの回転軸131の中心(P)が移動したときの回転軸131の外周包絡線(破線で示す)が得られ、この外周包絡線が従動部133の内周形状になる。
【0047】
すなわち、図3の形態に図7の回転軸131および従動部133を設け、回転軸131を回転させることによって、上述したように回転軸131の外周部に係合する従動部133が掘削軸11を伴って従動する。そして、掘削軸11は、正方形穴121への掘削軸11の内接を維持した形態で正方形穴121の中心線(P)の周りに回転中心(G)が所定軌道で移動しつつ、回転中心(G)を中心にして回転する。
【0048】
このように、上述した掘削機は、ルーロー三角形の断面形状をなして当該ルーロー三角形の中心線(G)を回転中心としたルーロー軸部111を有するとともにルーロー軸部111の前端にて軸心方向に拡大投影したルーロー三角形状の範囲内で少なくとも中心と頂点とを結ぶ延長線に沿って配置した掘削カッタ2を有した掘削軸11と、掘削軸11のルーロー三角形部分の外幅を一辺とする正方形穴121を有して当該正方形穴121の内周にルーロー軸部111の外周を内接させて掘削軸11を回転可能に支持する固定の軸受12と、掘削軸11を回転駆動する駆動機構13とを備えている。
【0049】
そして、駆動機構13は、軸受12の正方形穴121の中心線(P)を回転中心として回転可能に設けた回転軸131と、回転軸131を回転させる駆動部132と、回転軸131の外周部に対して内周部が当接係合する穴をなして掘削軸11に形成してあって回転軸131の回転に従ってその穴が掘削軸11を伴って従動することで、正方形穴121へのルーロー軸部111の内接を維持しながら正方形穴121の中心線(P)の周りに掘削軸11の回転中心(G)を所定軌道で移動させつつ掘削軸11を回転させる従動部133とを備える。
【0050】
すなわち、回転軸131が正方形穴121の中心(P)に位置して回転駆動され、かつ、その外周部に従動部133の穴の内周部が当接係合してあり、回転軸131の回転に従って従動部133が掘削軸11を伴って従動することで、ルーロー三角形の回転中心(重心G)と正方形穴の中心(P)との偏心量にかかわらず、回転軸131に当接状態が維持された掘削軸11を回転駆動する。この結果、回転軸131が正方形穴121の中心(P)でその軸心がずれることなく回転するため、回転ぶれや振動を低減することが可能になる。また、回転軸131と掘削軸11との係合が掘削軸11に設けた従動部133の穴への当接によるものであるため、回転軸131と掘削軸11との間に従前の自在継手を要することがないので、自在継手に係るコストを低減することが可能になる。
【0051】
また、回転軸131が正方形穴121の中心(P)に位置して回転駆動されていることから、前端を掘削カッタ2の前側に延在すれば、その前端に別の掘削カッタを装備することが可能である。例えば、回転軸131の前端部に設けた掘削カッタによってほぼ矩形断面の掘削孔Hを掘削する前の補助円形掘削孔を掘削することが可能になる。
【0052】
また、従動部133の穴の内周形状は、正方形穴121へのルーロー軸部111の内接を維持しながらルーロー軸部111のルーロー三角形を回転させたときの、当該ルーロー三角形に対する正方形穴121の中心(P)の移動軌跡に基づいて形成してある。すなわち、従前のように掘削軸の中心と回転軸の中心との偏心距離の偏心量が一定ではなく、正方形穴121に内接して移動するルーロー三角形の中心の偏心量に合わせて設計してある。この結果、理想的な矩形状の掘削を行うことが可能になる。特に、上記掘削機によって掘削された掘削孔Hは、掘削されるほぼ矩形状の断面の各辺が平行もしくは掘削孔Hの外側に向けて凸状に形成されるため、力学的に強度を有するものとなる。
【0053】
なお、上述した実施の形態では、主に地盤などを掘削する掘削機に関して説明しているが、上記構成は掘削機に限るものではない。例えばほぼ矩形状の軌跡をなす上記回転機構における他の用途として、地中連続壁などでの矩形掘削に用いたり、セメントなどの硬化材を地盤中に注入する地盤改良で地盤を硬化材とともに混練り攪拌するときに用いたり、あるいは工作物の矩形切削に用いたり、地盤以外の混練り物製造の攪拌に用いたりするなど、様々な用途が考えられる。すなわち、地盤改良や混練り攪拌に上記回転機構を用いる場合には、上記掘削機,掘削軸11,掘削カッタ2が、攪拌機,攪拌軸,攪拌羽根となる。また、切削に上記回転機構を用いる場合には、上記掘削機,掘削軸11,掘削カッタ2が、切削機,切削軸,切削カッタとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る掘削機の実施の形態を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す掘削機を軸方向から視た概念図である。
【図3】従動部の内周形状を導くための概念図である。
【図4】従動部の内周形状を導くための概念図である。
【図5】従動部の内周形状を導くための概念図である。
【図6】従動部の内周形状を導くための概念図である。
【図7】従動部の内周形状を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 胴部
11 掘削軸
111 ルーロー軸部
12 軸受
121 正方形穴
13 駆動機構
131 回転軸
132 駆動部
133 従動部
2 掘削カッタ
T(A,B,C) 頂点
G 回転中心
H 掘削孔
P 中心
r 半径





 

 


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