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発明の名称 鳩目穴かがりミシン
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−61139(P2007−61139A)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
出願番号 特願2005−247306(P2005−247306)
出願日 平成17年8月29日(2005.8.29)
代理人 【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
発明者 柴田 到
要約 課題
操作者の潤滑油供給の労力負担を低減するとともに、潤滑油の付着・飛散を防止する。

解決手段
針棒8を上下動可能に挿通する針棒挿通孔93が形成された針棒案内部材81と、アーム部3に回転軸線の周りを回転可能に設けられ、針棒案内部材81を回転軸線に交差する所定方向に沿って往復摺動可能に保持する針棒回動ブラケット80とを備えた鳩目穴かがりミシン1において、針棒回動ブラケット80と針棒案内部材81との摺動部分にオイルタンク94から潤滑油を供給する給油手段を設ける。
特許請求の範囲
【請求項1】
縫い針を備えた針棒を上下動可能に挿通する針棒挿通孔が形成された案内部材と、
ミシンのアーム部に回転軸線の周りを回転可能に設けられ、前記案内部材を前記回転軸線に交差する所定方向に沿って往復摺動可能に保持する保持部材と
を備えた鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記保持部材と前記案内部材との摺動部分に給油源から潤滑油を供給する給油手段を備えたことを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項2】
請求項1に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記給油手段は、
前記給油源から前記案内部材へ潤滑油を導く第1油路と、
前記案内部材に設けられ、前記第1油路より導かれた潤滑油を前記摺動部分に導く第2油路と
を備えることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項3】
請求項2に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記アーム部に設けられ、前記案内部材を前記所定方向に沿って往復動させるための駆動体と、
前記保持部材による案内部材の回転を許容するように前記案内部材と前記駆動体とを作動連結する連結機構とを備え、
前記第1油路は、前記給油源から前記連結機構を介して前記案内部材へ潤滑油を導くこと
を特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項4】
請求項3に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記保持部材と案内部材との一方に凸部が設けられ、
前記保持部材と案内部材との他方には、前記凸部が摺動可能に嵌合するとともに前記所定方向に延びる摺動溝が設けられ、
前記案内部材と前記駆動体との前記連結機構は、前記案内部材の前記所定方向の移動と、案内部材の回転とを許容するように構成されていること
を特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記第2油路は、前記案内部材に延設され、前記第1油路より導かれた潤滑油を前記摺動部分に導く導油紐を備えることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項6】
請求項4に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記第2油路は、前記案内部材の前記摺動溝の近傍に形成された紐用溝部に導油紐を延設していることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記第2油路は、前記第1油路により前記案内部材の外周部へ導かれた潤滑油を、前記針棒と案内部材との摺動面に導くために、前記案内部材の外面と前記針棒挿通孔とを連通する第1開口部を備えていることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項8】
請求項7に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記第2油路は、前記第1開口部により前記針棒の摺動面へ供給された潤滑油を、前記案内部材の外周部に導いて前記案内部材と保持部材との摺動部分に給油するために、前記案内部材の外面と前記針棒挿通孔とを連通する第2開口部を備えていることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項9】
請求項2又は3に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記第2油路は、前記案内部材に設けられ、前記第1油路により導かれ前記案内部材の外周部を流下した潤滑油を受け入れる受入溝部を備えることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項10】
請求項9に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記保持部材と案内部材との一方に凸部が設けられ、
前記保持部材と案内部材との他方には、前記凸部が摺動可能に嵌合するとともに前記所定方向に延びる摺動溝が設けられ、
前記案内部材と前記駆動体との前記連結機構は、前記案内部材の前記所定方向の移動と、案内部材の回転とを許容するように構成され、
前記受入溝部は、前記案内部材側に設けた前記摺動溝と連通されていることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれかに記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記第1油路は、前記給油源から前記案内部材へと延設された少なくとも1つの給油紐を備えることを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記保持部材の上部に潤滑油の漏洩を防止するためのカバーを設けたことを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項13】
請求項12に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記カバーに付着した潤滑油の流下位置に、潤滑油吸収体を設けたことを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
【請求項14】
請求項13に記載の鳩目穴かがりミシンにおいて、
前記潤滑油吸収体から潤滑油を外部に排出する排出路を設けたことを特徴とする鳩目穴かがりミシン。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製対象物に備えられる鳩目穴にかがり縫いを施す、鳩目穴かがりミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、縫製対象物に予め(または事後的に)形成される鳩目穴にかがり縫いを施す鳩目穴かがりミシンが知られている(例えば、特許文献1参照)。この鳩目穴かがりミシンは、ミシンフレームのアーム部に設けられ縫い針を下端部に備えた針棒と、この針棒を上下動させる針棒上下動機構と、縫針の針落ち点を1針毎に左右に振らせる針振り機構と、この針振りに対応してベッド部に設けたルーパーを動作させるルーパー駆動機構とを有している。また、針振り機構は、針棒を上下動可能に挿通する案内部材と、アーム部に対し回転可能に設けられ、案内部材を左右往復摺動可能に保持する保持部材とを備えている。
【0003】
縫製対象物が送り台にセットされると、送り装置によってこの送り台に対し鳩目穴の切り込み形状に沿わせた送りが与えられ、また針棒上下動機構による針棒の上下動及び針振り機構による針振り動作に合わせてルーパー駆動機構がルーパーを動作させ、これらの協働により鳩目穴に沿ってかがり縫いが施され、さらに、保持部材が必要に応じて回転されることによって縫製対象物に鳩目穴かがり縫い目が完成される。
【0004】
【特許文献1】特許3426708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の鳩目穴かがりミシンでは、前述したように、針棒を上下動可能に挿通する案内部材を保持部材で左右往復摺動可能に保持することで左右針振りを実現しているが、耐久性を維持するために当該保持部材と案内部材との摺動部分の潤滑油を適宜供給する必要がある。従来、この摺動部分に対しては手操作によっていちいち潤滑油を塗布していたため、非常に面倒であり、操作者の労力負担が大きかった。また、誤って本来潤滑油の塗布が不要な部分に潤滑油が付着したり、アーム部外や縫製対象物等に潤滑油が飛散する等の可能性もあった。
【0006】
本発明の目的は、操作者の潤滑油供給の労力負担を低減するとともに、潤滑油の付着・飛散を防止できる鳩目穴かがりミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、縫い針を備えた針棒を上下動可能に挿通する針棒挿通孔が形成された案内部材と、ミシンのアーム部に回転軸線の周りを回転可能に設けられ、前記案内部材を前記回転軸線に交差する所定方向に沿って往復摺動可能に保持する保持部材とを備えた鳩目穴かがりミシンにおいて、前記保持部材と前記案内部材との摺動部分に給油源から潤滑油を供給する給油手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本願第1発明においては、案内部材は保持部材の回転軸線に交差する方向に沿って保持部材に往復摺動可能に保持されており、この案内部材に針棒が上下動可能に案内されている。さらに、保持部材が必要に応じて回転されることにより、縫製対象物に鳩目穴かがり縫い目が形成される。
【0009】
そして、保持部材と案内部材との摺動部分には、給油手段によって潤滑油が給油源から供給されることにより、耐久性を維持するのに必要な潤滑油を安定的に供給することが可能となる。この結果、定期的に手操作によって当該摺動部分にいちいち潤滑油を塗布する面倒さがなくなり、操作者の労力負担を大きく低減することができる。また、誤って本来潤滑油の塗布が不要な部分に潤滑油が付着したり、アーム部外や縫製対象物等に潤滑油が飛散する等の弊害も確実に防止できる。
【0010】
第2発明は、上記第1発明において、前記給油手段は、前記給油源から前記案内部材へ潤滑油を導く第1油路と、前記案内部材に設けられ、前記第1油路より導かれた潤滑油を前記摺動部分に導く第2油路とを備えることを特徴とする。
【0011】
潤滑油を、潤滑油源側から第1油路で案内部材に導き、さらに第2油路で案内部材と保持部材との摺動部分に導くことにより、耐久性を維持するのに必要な潤滑油を安定的に供給することができる。
【0012】
第3発明は、上記第2発明において、前記アーム部に設けられ、前記案内部材を前記所定方向に沿って往復動させるための駆動体と、前記保持部材による案内部材の回転を許容するように前記案内部材と前記駆動体とを作動連結する連結機構とを備え、前記第1油路は、前記給油源から前記連結機構を介して前記案内部材へ潤滑油を導くことを特徴とする。
【0013】
第1油路は、所定方向に往復動しながら回転される案内部材に対し、案内部材の回転を許容する連結機構を介し潤滑油を供給源から供給するため、容易に案内部材と保持部材との摺動部分に潤滑油を供給することができる。
【0014】
第4発明は、上記第3発明において、前記保持部材と案内部材との一方に凸部が設けられ、前記保持部材と案内部材との他方には、前記凸部が摺動可能に嵌合するとともに前記所定方向に延びる摺動溝が設けられ、前記案内部材と前記駆動体との前記連結機構は、前記案内部材の前記所定方向の移動と、案内部材の回転とを許容するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
凸部と摺動溝の摺動部分に潤滑油を供給することで、当該部分における耐久性を維持するのに必要な潤滑油を安定的に供給することが可能となる。
【0016】
第5発明は、上記第2〜4発明のいずれかにおいて、前記第2油路は、前記案内部材に延設され、前記第1油路より導かれた潤滑油を前記摺動部分に導く導油紐を備えることを特徴とする。
【0017】
案内部材に延設された導油紐を用いることで、第1油路より導かれた潤滑油を摺動部分に簡単な構成で導くことができる。
【0018】
第6発明は、上記第4発明において、前記第2油路は、前記案内部材の前記摺動溝の近傍に形成された紐用溝部に導油紐を延設していることを特徴とする。
【0019】
紐用溝部に延設された導油紐で案内部材の摺動溝の近くまで潤滑油を導くことで、保持部材の凸部との嵌合摺動部分に確実に潤滑油を供給することができる。
【0020】
第7発明は、上記第2〜6発明のいずれかにおいて、前記第2油路は、前記第1油路により前記案内部材の外周部へ導かれた潤滑油を、前記針棒と案内部材との摺動面に導くために、前記案内部材の外面と前記針棒挿通孔とを連通する第1開口部を備えていることを特徴とする。
【0021】
これにより、案内部材と針棒との間の摺動部分にも給油源から容易に給油できる。
【0022】
第8発明は、上記第7発明において、前記第2油路は、前記第1開口部により前記針棒の摺動面へ供給された潤滑油を、前記案内部材の外周部に導いて前記案内部材と保持部材との摺動部分に給油するために、前記案内部材の外面と前記針棒挿通孔とを連通する第2開口部を備えていることを特徴とする。
【0023】
第1油路より導かれた潤滑油を第1開口部から案内部材の針棒挿通孔に挿通された針棒へ供給し、さらにその針棒へ供給された潤滑油を第2開口部を介して案内部材の外周部に導くことで、第1油路より導かれた潤滑油を、針棒と案内部材の摺動部分と、案内部材と保持部材との摺動部分とに導くことができる。
【0024】
第9発明は、上記第2又は第3発明において、前記第2油路は、前記案内部材に設けられ、前記第1油路により導かれ前記案内部材の外周部を流下した潤滑油を受け入れる受入溝部を備えることを特徴とする。
【0025】
案内部材に設けられた受入溝部で案内部材の外周部を流下した潤滑油を受け入れて貯留することで、第1油路より導かれた潤滑油を摺動部分に導くことができる。
【0026】
第10発明は、上記第9発明において、前記保持部材と案内部材との一方に凸部が設けられ、前記保持部材と案内部材との他方には、前記凸部が摺動可能に嵌合するとともに前記所定方向に延びる摺動溝が設けられ、前記案内部材と前記駆動体との前記連結機構は、前記案内部材の前記所定方向の移動と、案内部材の回転とを許容するように構成され、前記受入溝部は、前記案内部材側に設けた前記摺動溝と連通されていることを特徴とする。
【0027】
案内部材の摺動溝と保持部材の凸形状との嵌合摺動部分のうち、案内部材の摺動溝にこれと連通する受入溝部から潤滑油を供給することで、当該部分における耐久性を維持するのに必要な潤滑油を安定的に供給することが可能となる。
【0028】
第11発明は、上記第2〜10発明のいずれかにおいて、前記第1油路は、前記給油源から前記案内部材へと延設された少なくとも1つの給油紐を備えることを特徴とする。
【0029】
給油源から案内部材へと延設された給油紐を用いることで、給油源から案内部材へと潤滑油を簡単な構成で導くことができる。
【0030】
第12発明は、上記第1〜11発明のいずれかにおいて、前記保持部材の上部に潤滑油の漏洩を防止するためのカバーを設けたことを特徴とする。
【0031】
これにより、保持部材の周囲隙間へ潤滑油が漏洩して種々の不都合が生じるのを防止できる。すなわち、保持部材は、アーム部に回転可能に支持されているので、潤滑油が保持部材とアーム部との間隙からアーム部外に漏出してしまうことを防止することができる。特に、保持部材を転動タイプのベアリングでアーム部に回動可能に取り付ける場合には、ベアリングの内輪と外輪との隙間が存在するので、この隙間から潤滑油がアーム部外に滴下してしまうことを防止することができる。このため、縫製対象物の汚損が防止できる。
【0032】
第13発明は、上記第12発明において、前記カバーに付着した潤滑油の流下位置に、潤滑油吸収体を設けたことを特徴とする。
【0033】
これにより、カバーによってアーム部外への滴下が防止されカバー外を流下してきた潤滑油を吸収し集積することができる。
【0034】
第14発明は、上記第13発明において、前記潤滑油吸収体から潤滑油を外部に排出する排出路を設けたことを特徴とする。
【0035】
これにより、潤滑油吸収体で吸収し集積した潤滑油を円滑かつ速やかに外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、縫い針を備えた針棒を上下動可能に挿通する針棒挿通孔が形成された案内部材と、ミシンのアーム部に回転軸線の周りを回転可能に設けられ、前記案内部材を前記回転軸線に交差する所定方向に沿って往復摺動可能に保持する保持部材とを備えた鳩目穴かがりミシンにおいて、前記保持部材と前記案内部材との摺動部分に給油源から潤滑油を供給する給油手段を備えたので、保持部材と案内部材との摺動部分に安定的に自動で給油できる。操作者の手作業による潤滑油供給の労力負担をなくし、手作業に起因する潤滑油の誤付着・その誤付着した潤滑油の飛散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0038】
(1)全体概略構造
図1は、本実施形態に係る電子鳩目穴かがりミシンの斜視図であり、図2はその側面図である。これら図1及び図2において、本実施形態の電子鳩目穴かがりミシン1は、略矩形箱状をなすベッド部2と、ベッド部2の後方部上部から前方に連続して延びるアーム部3とを有し、ミシンテーブル4上に載置されている。
【0039】
ミシンテーブル4の上側には、複数種類の鳩目穴かがり縫目のうちから択一的に選択する等の各種の操作を指示する操作パネル(図示せず)などが設けられるとともに、ミシンテーブル4の下側には、各機構の作動を制御するマイクロコンピュータからなる制御装置(図示せず)が設けられている。
【0040】
アーム部3の先端部には、縫針7が下端に取付けられ鉛直向きに配設された中空状(パイプ状)の針棒8が、後述する針棒上下動機構30により上下動可能に設けられ、更に、針棒8は後述する針振り機構60により所定幅分だけ左側揺動位置(内針位置)と右側揺動位置(外針位置)とに左右に揺動可能になっている。
【0041】
ベッド部2には、針棒8に対向するように左右1対のルーパー(図示せず)を有するルーパー機構10を備えたルーパー土台11が設けられている。縫針7には糸供給源から供給される上糸が挿通されるとともに、左ルーパーの先端部には下糸が挿通され、右ルーパーは上糸ループを編みこみながら下糸を交絡させて、ループ結合部を形成するようになっている。また、上記ルーパー土台11及び針棒8は、ベッド2内に設けられたθ方向駆動モータ21及びギヤ機構からなる回動機構15により、それぞれ水平面において、鉛直軸周りに、一体的に回動させるようになっている(詳細は後述)。
【0042】
また、ベッド部2の上面部には、鳩目穴かがり縫いに供する加工布(縫製対象物)がセットされる送り台28が設けられている。この送り台28は、全体として薄形の矩形箱状をなし、ルーパー土台11及びメス25(後述)に対向する部位が開放されている。また、この送り台28の上面には、図示を省略するが、金属製からなる左右1対のクロスプレートがそれぞれ設けられている。なお、ベッド部2内には、この送り台28を、ステッピングモータからなるX方向駆動モータ(図示せず)の駆動によりX方向(左右方向)に送り移動させるX方向移動機構(図示せず)と、ステッピングモータからなるY方向駆動モータ(図示せず)の駆動によりY方向(前後方向)に送り移動させるY方向移動機構(図示せず)とが設けられている。
【0043】
さらに、ベッド部2には、ルーパー土台11の後方側に位置して固定配置されて鳩目穴部を形成する為のメス25が取付け台(図示せず)にボルトにより着脱可能に取付けられており、さらにこのメス25に対して上方より接離する打ち抜き用ハンマー(図示せず)がアーム部3内において上下揺動可能となるように設けられている。この打ち抜き用のハンマーの先端部には、ハンマー本体(図示せず)が着脱可能に取付けられ、ベッド部2内に設けられたエアシリンダなどからなるハンマー駆動機構(図示せず)により駆動され、ハンマー本体とメス25の協働により、略円形状の鳩目部とこれに連なる直線状の足部とからなる鳩目穴部を加工布に穿孔するようになっている。
【0044】
なお、ベッド部2にはまた、針棒8の上下動及び揺動やルーパー機構10等を同期駆動させる縫製機構の駆動源となるミシンモータ(図示せず)が設けられている。
【0045】
(2)回動機構
図3は図2に示した上記回動機構15の詳細構造を表す斜視図である。この図3及び前述の図2において、回動機構15は、針棒8を回動させるための針棒回動機構15Aと、ルーパー土台11を回動させるためのルーパー土台回動機構15Bとを含んでいる。
【0046】
針棒回動機構15Aは、上端部と下端部とにそれぞれ上側プーリ17及び下側プーリ18が固着された鉛直向きのレース回動軸16と、針棒8を篏合した針棒回動ブラケット80(後述)と上側プーリ17とに亙って掛装されたタイミングベルト20とを備えている。またルーパー土台回動機構15Bは、ルーパー土台11の従動ギヤ23を備えている。
【0047】
そして、針棒回動機構15Aとルーパー土台回動機構15Bとに共通するものとして、θ方向駆動モータ21と、このθ方向駆動モータの駆動軸に固着された駆動プーリ22と、この駆動プーリ22と上記下側プーリ18及び上記従動ギヤ23とに亙って掛装されたタイミングベルト24とが設けられている。
【0048】
上記構造により、針棒回動機構15Aは、θ方向駆動モータ21の駆動力を、タイミングベルト24、レース回動軸16、タイミングベルト20を介して針棒回動ブラケット80に伝達し、針棒8を鉛直軸心周りに回動可能であり、またルーパー土台回動機構15Bは、同様に、タイミングベルト24からの駆動力を従動ギヤ23に伝達することで、ルーパー土台11を針棒8の回動と同期させて鉛直軸心まわりに回動可能である。
【0049】
(3)針棒上下動機構
図4は、上記針棒上下動機構30を含む上記アーム部の内部詳細構造を抽出し、図2と同じ方向から見た側面図であり、図5は同様のアーム部内部詳細構造を図4とほぼ反対側から見た斜視図である。また図6は、図5に示した構造の平面図である。
【0050】
これら図4〜図6において、アーム部3の内部には、機枠Fに、略水平方向に延設される主軸31が回転可能に枢支されている。この主軸31の後端部にはプーリ32が固着され、このプーリ32と前述したミシンモータ(図示せず)のモータ軸とに固着された駆動プーリ(図示せず)との間にタイミングベルト33が掛装されており、ミシンモータの駆動力がタイミングベルト33を介しプーリ32に伝達されることにより、主軸31は回転駆動される。一方、主軸31の前端部には上軸クランク34が固着されており、この上軸クランク34に、針棒8を上下動させる針棒上下動機構30が連結されている。
【0051】
針棒上下動機構30は、上軸クランク34の偏心部位に上端部が回転可能に装着された針棒クランク35と、その針棒クランク35に連結連動される上下動伝達機構40とを有している。
【0052】
針棒クランク35は、クランク本体部35aと、このクランク本体部35aから一体的に前方に延びる平面視L字状の張出しクランク部35bとからなっている。張出しクランク部35bはその前端部に張出し支持部35cを備えており、この張り出し支持部35cがクランク本体部35aと所定距離を隔てて平行であって左右方向向きに形成されている。
【0053】
図7は、図4中VII方向から見た正面図であり、図8は、図6中H‐H断面による縦断面図である。また、図9は図4中I‐I断面による縦断面図であり、図10は図4中J‐J断面による水平横断面図である。
【0054】
これら図7〜図10において、上下動伝達機構40は、針棒クランク35のクランク本体部35aに水平な前後方向向きの前後一対の第1支軸42,42を介して支持されたヨーク部材41と、このヨーク部材41の内側に水平な左右方向向きの(=第1支軸42とは直交する)左右一対の第2支軸44,44を介して支持される環状部材43と、案内機構50と、環状部材43の上下両面に設けられた1対の座金部材51と、針棒8に固定された上下1対の針棒抱き52,53等を備えている。
【0055】
案内機構50は、針棒クランク35のクランク本体部35a及び張り出しクランク部35bにそれぞれ装着された前後1対の案内駒45,46と、これら案内駒45,46をそれぞれガイドする前後1対の駒ガイド板47,48等を備えている。
【0056】
後側駒ガイド板47は板状形状を備えており、針棒クランク35と上軸クランク34との間に左右向きに配設され、機枠Fに固着されている。また前側駒ガイド板48も板状形状を備えており、針棒クランク35の張出し支持部35cの直ぐ前側に左右向きに配設され、複数本の連結軸54,55を介して後側駒ガイド板47に固着されている。これら後側駒ガイド板47と前側駒ガイド板48とは相互に平行状に向かい合っており、後側駒ガイド板47の前面の左右幅方向中央部には案内駒45を案内するための縦方向に延びる直線状の案内溝47aが形成され、前側駒ガイド板48の後面の左右幅方向中央部にも、案内駒46を案内するための縦方向に延びる直線状の案内溝48aが形成されている。
【0057】
ヨーク部材41は、前側支持部41b及び後側枢支部41aからなる平面視略矩型枠状の形状を備えており、上記両駒ガイド板47,48の間に配設されて、前後1対の上記第1支軸42,42により針棒クランク35に回動自在に支持されている。
【0058】
クランク本体部35aには後側の第1支軸42が挿通され、固定ピン56で固定されている。後側の第1支軸42の前端側は後側枢支部41aを回動可能に支持している。この後側の第1支軸42の後端部は後側の案内駒45に回動自在に枢支され、さらにこの案内駒45が後側駒ガイド板47の案内溝47aに上下動可能に係合している。一方、張出し支持部35cには前側の第1支軸42が挿通され、固定ピン57で固定されている。前側の第1支軸42の後端側は前側枢支部41bを回動可能に支持している。この前側の第1支軸42の前端部は前側の案内駒46に回動自在に枢支され、さらにこの案内駒46が前側駒ガイド板48の案内溝48aに上下動可能に係合している。前後1対の第1支軸42は前記主軸31並行に延びる一軸線上に配列されている。
【0059】
このような構造により、ヨーク部材41は、上記前後1対の第1支軸42,42を介して針棒クランク35に回動自在に枢支されるとともに、上記前後1対の案内駒45,46と案内溝47a,48aとの係合を介し、前後1対の駒ガイド板47,48に上下動自在に支持されている。
【0060】
環状部材43は、所定高さを有する平面視略環状の形状を備え、その内径は針棒8の揺動用隙間Sを介在させて針棒8の直径よりも大きく形成されており(図10参照)、その左右方向に突出状の枢支部43a,43bがそれぞれ形成されている。左側枢支部43aには、左側の第2支軸44の略右半部分が嵌め込まれ、その左側の第2支軸44の左端部がヨーク部材41の左側支持部41cに回動自在に枢支されている。また右側枢支部43bには、右側の第2支軸44の略左半部分が嵌め込まれ、その右側の第2支軸44の右端部がヨーク部材41の右側支持部41dに回動自在に枢支されている。左側の第2支軸44と右側の第2支軸44は、第1支軸が配列される軸線に直交する軸線上に配列されている。
【0061】
以上のような構造を介し、環状部材43は、前後一対の第1支軸42,42を介して第1支軸42の軸心周りに回動可能で、かつ左右一対の第2支軸44,44を介して第2支軸44の軸心周りに回動可能であることから、針棒クランク35にユニバーサルジョイント的に支持されることとなる。
【0062】
上側針棒抱き52及び下側針棒抱き53は、上記環状部材43の上・下側にそれぞれ摺動自在に配設された上側座金部材51及び下側座金部材51の上面・下面にそれぞれ当接するように配設されつつ、針棒8に固着されている。これら上・下側座金部材51,51は、針棒8の外形と同じ寸法の穴が中央部に形成された円形形状を備えている。
【0063】
一方、針棒8を摺動可能に挿通した針棒上ガイド100は、弾性材からなる薄板状で円形の支持板9を介して機枠Fに取り付けられている。このため、後述する針振り機構により針棒が針振りするとき、針棒は上記針棒上ガイド100と上記支持板9との交差中央点Kを中心として針振りされる。針棒8は針棒上ガイド100で上下動可能に且つ揺動可能に支持された後、中央部で上記上側座金部材51、環状部材43、下側座金部材51の内部を挿通して下方に延び、針振り機構60(後述)を経て、アーム部3の下側に臨むように配置される。針棒8の下端部に縫針7が取付けられている。
【0064】
そして、上記構成の上下動伝達機構40において、主軸31の回転駆動に基づき、上軸クランク34を介し針棒クランク35のクランク本体部35aと張出し支持部35cとが同期して上下動すると、前後1対の第1支軸42,42及び前後1対の案内駒45,46と案内溝47a,48aとの係合を介してヨーク部材41が上下に移動する。これにより、左右1対の第2支軸44,44を介して環状部材43が上下に所定ストローク分移動し、この環状部材43の上下動が上・下側座金部材51,51を介し上・下針棒抱き52,53に伝達される結果、これを介して針棒8が上下駆動される。
【0065】
なお、このとき、針棒8が上下動しながら後述する針振り機構60により前後左右に揺動するが、前述のように上下両側の座金部材51,51は環状部材43に対して摺動可能であるため、針棒8は何ら支承なく前後左右に揺動することができる。さらに、この針棒8の揺動に際して、針棒8に固定した上下1対の針棒抱き52,53及び上下1対の座金部材51,51が水平姿勢から傾斜姿勢に変化した場合でも、環状部材43は針棒クランク35に対して前述したユニバーサルジョイント的に支持されているため、座金部材51の傾きを確実に吸収させることができる。以上のようにして、針棒8の上下動及び揺動がともに可能となっている。
【0066】
(5)針振り機構
図4〜図6に戻り、針振り機構60は、針振り駆動部61と針振り本体部62とから構成される。
【0067】
(5−1)針振り駆動部61
図4〜図6において、針振り駆動部61は、主軸31に固着されたハイポイドギヤ65に係合するハイポイドギヤ66と、このハイポイドギヤ66を固着した左右向きの回転軸67と、この回転軸67に固着された偏心カム板(図示せず)に、二股状に形成した二股部68aを係合させた揺動部材68と、機枠Fに固定され上記揺動部材68の下端部を回動可能に枢支する枢支軸69と、上記揺動部材68の二股部68aの一方側に後端部を連結した連結ロッド70と、左右向きに設けられた支軸71と、この支軸71に揺動可能に設けられ、第1腕部72a及び第2腕部72cを備えた揺動調節板72とを有している。
【0068】
揺動調節板72の第1腕部72aには、湾曲状の切欠き穴72bが設けられており、この切欠き穴72bに対し、上記連結ロッド70の前端部が針棒8の近傍部においてボルト(図示せず)とナット73を介して連結されている。また、第2腕部72cには、針振りヨーク74(詳細は後述)の基端部が連結されている。
【0069】
このとき、切欠き穴72bと連結ロッド70前端部との取り付け位置を調整することで、針棒8の揺動量(針振り量)を調整可能である。すなわち、ナット73を緩めて、連結ロッド70前端部の湾曲状切欠き穴72bに対する取付け位置を支持軸71側に近づけると、第2腕部72cの揺動量が大きくなり、針棒8の針振り量を大きくすることができ、逆に、取り付け位置を支持軸71と反対側に遠ざけると、第2腕部72cの揺動量が小さくなり、針棒8の針振り量を小さくできる。
【0070】
(5−2)針振り本体部62
図11は、この針振り本体部62の詳細構造を表す分解斜視図である。また図12は、上記構造の針振り本体部62が、鳩目穴かがりミシン1側のアーム部3先端において支持される支持構造を表す縦断面図である。これら図11及び図12において、針振り本体部62は、アーム部3に鉛直軸のまわりを回動可能に設けられた、平面視円形の針棒回動ブラケット80(保持部材)と、針棒8を上下方向に摺動可能且つ、回動不能に挿通する針棒挿通孔93が形成された針棒案内部材81(案内部材)と、この針棒案内部材81に外挿されて固定される固定カラー89と、針棒案内部材81に間隙を介して外挿される連結カラー87と、この連結カラー87に連結される針振りヨーク74と、トラニオン状の押え板86とを備えている。
【0071】
針棒回動ブラケット80は概略中空円筒体形状であり、上記針棒案内部材81を上下動可能且つ、針棒回動ブラケットの回転軸線に交差する方向に沿って移動可能に収納する収容孔801が貫通形成された筒状部80aと、その下部に設けたタイミングプーリ80bと、このタイミングプーリ80bから垂下し対向するように設けられ、横方向にそれぞれ収納孔80dが穿設された1対の脚部80c,80cとを一体的に備えている。各収納孔80dには、ガイドピン84がそれぞれ摺動可能に収容される。このガイドピン84の先端部には針振り突部84a(突部)が突設され、他端部には軸方向に有底孔部84bが穿設され、この有底孔部84bに圧縮バネ85が弾力的に収容されている。
【0072】
針棒案内部材81は、筒状部材82と、筒状部材82の下端に固定した直方体状のブロック部83と、筒状部材82の周面に突設したフランジ88とを備えている。そして、組付け状態では、筒状部材82が針棒回動ブラケット80の筒状部80aに間隙を介して内挿され、この状態でブロック部83は針棒回動ブラケット80における脚部80cの間に挟まれるように位置している。またブロック部83のうち、それぞれの脚部82cに接する2つの側面83A,83Bには、同一方向に延在する斜状溝83a(摺動溝)がそれぞれ形成されている。この斜状溝83aには、上記針振り突部84aが摺動自在にそれぞれ嵌合される。
【0073】
押え板86は、脚部80c,80cを挟持する一対の対向舌片86a,86aを備えている。このとき、各舌片86aが脚部80cを挟持することでガイドピン84の収納孔80dをそれぞれ塞ぎ、各収納孔80dに収容したガイドピン84が圧縮バネ85により内方へ付勢され、針振り突部84aをブロック部83の斜状溝83aに摺動可能に臨ませるようになっている。このため、針棒案内部材81は針棒回動ブラケット80の収容孔801内で、上記脚部80cに挟まれて斜状溝83aに沿う方向に摺動可能である。さらに、針棒案内部材81は針棒回動ブラケット80が回動されると、針棒回動ブラケット80とともに回動される。
【0074】
連結カラー87は、円環形状をなし、針棒案内部材81の筒状部材82に隙間Sを介して外挿され、上記フランジ88の上面に座金部材90(図12参照)を介して配置される。図11では簡単のために座金部材90は省略している。連結カラー87の上面には前記筒状部材82の上方から外挿した固定カラー89が配置され、固定カラー89は筒状部材82に固定される。針棒案内部材81のフランジ88と固定カラー89によって連結カラー87は挟まれているので、針棒案内部材81は上記連結カラー87に対して上下方向には一体に、左右方向(針振り方向)には上記隙間Sの範囲で移動可能に連結される。もちろん、針棒案内部材81は、連結カラー87に対して回動可能である。この連結カラー87は水平方向に延出する連結ピン87aを備え、これら連結ピン87aが針振りヨーク74の二股状の連結部74aに連結されている。尚、上記フランジ88(筒状部材82からの突出部分)の突出量が大きければ、上記座金部材90は不要である。
【0075】
そして、上記針振り駆動部61により針振りヨーク74を介して連結カラー87を上下動させると、固定カラー89及びフランジ88を介して針棒案内部材81が上下に移動される。このとき、押さえ板86によりアーム部3に固定された関係となるガイドピン84は、その針振り突部84aをブロック部83の斜状溝83aに臨ませていることから、ブロック部83(言い換えれば針棒案内部材81全体)はその斜状溝83aに沿って案内されて往復摺動される。斜状溝83aは針棒回動ブラケット80の回転軸(鉛直軸方向)に交差する方向に延びているので、針棒案内部材81の斜状溝83aに沿った往復摺動の左右移動幅が針振り幅を決定する。
【0076】
なお、前述したように、連結カラー87には針棒案内部材81が内挿されているが、これら連結カラー87の内周面と針棒案内部材81の外周面との間には、針棒案内部材81が連結カラー87に対し僅かに移動するのを許容する上記環状隙間Sが形成してある。針振りヨーク74の上下動とともに針棒回動ブラケット80が回転されると、針棒案内部材81は、この環状隙間Sの存在によって、針振り方向を変えつつ連結カラー87に対し僅かに前後左右方向に移動可能となっている。
【0077】
換言すれば、針振り駆動部61からの駆動力を連結カラー87を用いて針棒案内部材81に伝達する構造とすることで、上記針棒案内部材81の左右方向への揺動と、前述した針棒回動機構15Aによる針棒回動ブラケット80及び針棒案内部材81の回転とを許容するように構成されている。
【0078】
一方、前述の図12において、上記針棒回動ブラケット80は、アーム部3の頭部下面に形成された大径の貫通孔3Aに軸受92a,92b(この例では転動タイプのベアリング)を介し回動可能に設けられ、前述のようにタイミングベルト20の駆動力がタイミングプーリ80bに伝達されることで、回転軸線(鉛直軸)まわりに回転する。また、針棒回動ブラケット80の上部には、潤滑油の漏洩(詳細は後述)を防止するためのカバー91が設けられている。
【0079】
(6)本発明の給油機構
上記基本構成の鳩目穴かがりミシン1において、本実施形態の最も大きな特徴は、上記針棒回動ブラケット80側に設けた針振り突部84a,84aと、針棒案内部材81側に設けた斜状溝83a,83aとの摺動(嵌合)部に、給油機構(給油手段)によって潤滑油を自動給油するようにしたことである。以下その詳細を順を追って説明する。
【0080】
図13は、図11に示した針棒案内部材81、連結カラー87、及び固定カラー89の詳細構造を上記給油機構の要部とともに表す図であり、図13(a)はその水平断面図(図13(b)中XIIIA−XIIIA断面による断面図に相当)、図13(b)は一部断面で示す側面図である。
【0081】
これら図13(a)、図13(b)において、本実施形態においては、給油機構を構成する油路として、給油源(後述)から針棒案内部材81へ潤滑油を導く第1油路の一部を構成する第1灯芯R1(給油紐)と、第1油路より導かれた潤滑油を上記摺動部に導く第2油路の一部を構成する第2灯芯R2とが設けられている。
【0082】
第1灯芯R1は、図11及び図13(a)に示すように、この例では、針振りヨーク74の内部を通って連結カラー87をその外周側から内周側へと貫通し、さらに連結カラー87とフランジ88との間に介設された座金部材90の上面に、連結カラー87の内周面に沿うように略円環状に延設されている。一方、フランジ88には第2油路の一部を構成する手段として、その上部に潤滑油を受け入れるための略円環状の溝部88bと、この溝部88bと筒状部材82の内周側とを連通(言い換えれば針棒案内部材81の外面と針棒挿通孔93とを連通)する貫通孔88a(第1開口部)とが設けられている。
【0083】
給油源(後述のオイルタンク94)からの潤滑油は、第1灯芯R1によって針棒案内部材81の筒状部材82の座金部材90と筒状部材82との間隙から上記溝部88bに流入し、さらに貫通孔88aにより針棒案内部材81の内周側(針棒8と針棒案内部材81との摺動面)に導かれる。
【0084】
第2灯芯R2は、針棒案内部材81の外周部を周方向に一周するように延設され、その一部が針棒案内部材81の周方向少なくとも一箇所に設けた外部導出用貫通孔(図示せず)を介し針棒案内部材81の内周側(言い換えれば針棒挿通孔83)に露出する受油部R2aと、上端部がこの受油部R2aに接続され、針棒案内部材81の外周部に略鉛直方向に延設された導油部R2b(導油紐)と、ブロック部83の側面83A,83Bに設けた上記斜状溝83aと近接しこれと略平行に形成された斜状溝83b(紐用溝部)に延設された放油部R2dと、ブロック部83の上面に設けられ、導油部R2bの下端部と放油部R2dの上端部とを接続する接続部R2cと、側面83A,83B側の放油部R2dどうしを連結する連結部R2eとから構成されている。
【0085】
前述のようにして、貫通孔88aにより針棒8の摺動面に供給された潤滑油は、その摺動面を流下して上記外部導出用貫通孔に達し、この位置で露出している上記受油部R2aへと導入される。この受油部R2aに導入された潤滑油は受油部R2aによって針棒案内部材81の外周部に導かれ、さらに導油部R2b、接続部R2cを介し、放油部R2dへと導入され、放油部R2dより斜状溝83aとガイドピン84の針振り突部84aとの嵌合摺動部へと供給される。
【0086】
なお、上記の外部導出用貫通孔の位置は、図13(b)に示す位置(受油部R2aの位置に等しい)に限られず、これよりももっと下方の、例えばブロック部83bの上面の近傍でもよい。また放油部R2dと斜状溝83aとを連通する連通路(溝など)を別途ブロック部83bに形成しても良い。
【0087】
図14は、上記給油機構を含む潤滑油の供給及び排出の全体経路を説明するための概念的断面図であり、図15は、図14中A−A断面による概念的水平断面図である。これら図14及び図15において、潤滑油の給油源であるオイルタンク94に接続された第3灯芯R3(給油紐)が、オイルタンク94から上方に立ち上がった後、アーム部3の上部を略水平に延設され、アーム部3の先端近傍で前述の第1灯芯R1に接続されている。この第3灯芯R3によって、オイルタンク94内に貯留された潤滑油が安定的に第1灯芯R1へと導かれ、前述のように第1灯芯R1及び第2灯芯R2等を経て、安定的に斜状溝83aと針振り突部84aとの嵌合摺動部へと供給される。
【0088】
一方、針棒回動ブラケット80の上部に設けたカバー91に付着した潤滑油の流下位置には、潤滑油吸収体としての油回収フェルト95が設けられている。前述したカバー91はリング状をなし、上記軸受92a,92bの内輪と外輪とを覆い、内輪側が外輪側よりも高く形成されている。このため、カバー91に付着した潤滑油は外輪側に向かって流下し、軸受92a、92bから機枠外部に漏出することがない。このようにしてカバー91の外端より流下した潤滑油が機枠内面を流れて油回収フェルト95に吸収される。尚、カバー91の内径部と針棒案内部材81との間にも間隙が存在するが、その上方に連結カラー87等が位置するため、そこに潤滑油が入り込むことは防止され、潤滑油が機枠外に漏出しない。そしてこの油回収フェルト95には、排出路を構成する第4灯芯R4が接続されている。この第4灯芯R4は、アーム部3の下部を略水平に延設された後、アーム部3の始端近傍で鉛直に垂下しベッド部2へと配設され、油回収フェルト95で回収した潤滑油をその外部に排出し、さらにベッド部2のベッドダイ(図示せず)に設けたオイルパン97へ潤滑油を導入して回収するようになっている。
【0089】
以上において、針振り駆動部61が、各請求項記載の、針棒案内部材81を往復動させるための駆動体を構成し、連結カラー87及び針振りヨーク74が、保持部材による案内部材の回転を許容するように案内部材と駆動体とを作動連結する連結機構を構成する。
【0090】
以上のように構成された本実施形態の電子鳩目穴かがりミシン1においては、縫製に際して、縫製対象物が送り台28にセットされると、前述したX方向移動機構及びY方向移動機構によってこの送り台28に対し鳩目穴の切り込み形状に沿わせた送り駆動が与えられる。また、ミシンモータの駆動力が主軸31に伝達され、これによって針棒クランク35及び上下動伝達機構40からなる針棒上下動機構30により針棒8が上下動され、また針振り駆動部61及び針振り本体部62からなる針振り機構60により針棒案内部材81が左右往復摺動されることで針棒8の針振り動作が行われ、さらにそれらに同期してθ方向駆動モータ21の駆動力に基づきルーパー土台駆動機構15Bがルーパー土台11を介しルーパーを回動動作させ、これらの協働により鳩目穴に沿ってかがり縫いが開始される。そして、θ方向駆動モータ21の駆動力に基づき針棒回動機構15Aが針棒回動ブラケット80が必要に応じて回転されることによって縫製対象物に鳩目穴かがり縫い目が完成される。
【0091】
このとき、針棒8を上下動可能に挿通する針棒案内部材81を針棒回動ブラケット80で左右往復摺動可能に保持する(具体的には斜状溝83aと針振り突部84aとの摺動)ことで上述のように左右針振りを実現しているが、耐久性を維持するためにそれら摺動部分へ潤滑油を適宜供給する必要がある。本実施形態では、オイルタンク94からの潤滑油を上述した第3灯芯R3、第1灯芯R1、第2灯芯R2を含む上記給油機構を介し当該摺動部分に供給することで、耐久性を維持するのに必要な潤滑油を安定的に供給することができる。この結果、従来のように定期的に手操作によって当該摺動部分にいちいち潤滑油を塗布する面倒さがなくなり、操作者の労力負担を大きく低減することができる。また、誤って本来潤滑油の塗布が不要な部分に潤滑油が付着したり、アーム部3の外や縫製対象物等に潤滑油が飛散する等の弊害も確実に防止できる。
【0092】
このとき、本実施形態では特に、斜状溝83bに延設された第2灯芯R2の放油部R2で針棒案内部材81のブロック部83の斜状溝83aの近くまで潤滑油を導くことにより、針振り突部84bと斜状溝83aとの嵌合摺動部分に確実にかつ安定的に潤滑油を供給し、耐久性を維持することができる。
【0093】
また、本実施形態では特に、第1油路を構成する第1灯芯R1が、針棒回動ブラケット80に対し左右方向に往復摺動しながらさらに針棒回動ブラケット80とともに回転される針棒案内部材81に対し、針棒案内部材81の回転を許容するための針振りヨーク74及び連結カラー87を介して潤滑油を供給することで、容易に上記摺動部分に潤滑油を供給することができる。
【0094】
また、本実施形態では特に、フランジ88に設けた貫通孔88aを用いることで、潤滑油を針棒案内部材81の針棒挿通孔93に挿通された針棒8へ供給し、さらにその針棒8へ供給された潤滑油を、針棒案内部材81に設けた外部導出用貫通孔を介して針棒案内部材81の外周部に導くことで、第1灯芯R1より導かれた潤滑油を、針棒8と針棒案内部材81の摺動部分と、針振り突部84bと斜状溝83aとの嵌合摺動部分との両方に導くことができる。
【0095】
また、本実施形態では特に、オイルタンク94から針棒案内部材81までを、給油紐を構成する第3灯芯R3及び第1灯芯R1で接続したので、給油源であるオイルタンク94から針棒案内部材81まで潤滑油を簡単に導くことができる。
【0096】
また、本実施形態では特に、針棒回動ブラケット80の上部に潤滑油の漏洩を防止するためのカバー91が設けられていることにより、針棒回動ブラケット80の周囲隙間へ潤滑油が漏洩して種々の不都合が生じるのを防止できる。すなわち、針棒回動ブラケット80は、アーム部3の貫通孔3Aに回転可能に支持されているので、潤滑油が針棒回動ブラケット80と貫通孔3Aとの間隙からアーム部3外に漏出してしまうことを防止することができる。特に、本実施形態の軸受92a,92bのように針棒回動ブラケット80を転動タイプのベアリングでアーム部3に回動可能に取り付ける場合には、ベアリングの内輪と外輪との隙間が存在するので、この隙間から潤滑油がアーム部3の外に滴下してしまうことを防止することができる。このため、縫製対象物の汚損が防止できる。
【0097】
さらに、本実施形態では特に、カバー91に付着した潤滑油の流下位置に油回収フェルト95を設けていることにより、カバー91によってアーム部3外への滴下が防止されカバー91外を流下してきた潤滑油を吸収し集積することができる。
【0098】
さらに、本実施形態では特に、油回収フェルト95に排出路としての第4灯芯R4を接続していることにより、油回収フェルト95で吸収し集積した潤滑油を円滑かつ速やかに外部に排出することができる。
【0099】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0100】
(A)第2灯芯を用いず針棒案内部材81外部を流下させる場合
図16は、本変形例の要部を構成する針棒案内部材81、連結カラー87、及び固定カラー89の詳細構造を上記給油機構の要部とともに表す図であり、図16(a)はブロック部83近傍の水平断面図(図16(b)中XVIA−XVIA断面による断面図に相当)、図16(b)は側面図(上記実施形態の図13(b)に相当)である。また、図17(a)は図16(b)に示したフランジ88近傍の詳細構造を表す拡大縦断面図であり、図17(b)は図16(b)に示したブロック部83近傍の詳細構造を表す拡大縦断面図である。
【0101】
これら図16(a)、図16(b)、図17(a)、及び図17(b)において、本変形例では、フランジ88に、上記実施形態と同様、第1灯芯R1からの潤滑油を受け入れるための略円環状の溝部88bと、この溝部88bと筒状部材82の内周側とを連通(言い換えれば針棒案内部材81の外面と針棒挿通孔93とを連通)する貫通孔88aとが設けられている。そしてこの変形例ではさらに、溝部88bと筒状部材82の外周側(言い換えれば針棒案内部材81の外周面)を連通する貫通孔88cが新たに設けられ、上記溝部88bとともに第2油路の一部を構成している。
【0102】
オイルタンク94からの潤滑油は、第1灯芯R1によって針棒案内部材81の筒状部材82の座金部材90と筒状部材82との間隙から上記溝部88bに流入し、さらに貫通孔88aにより針棒案内部材81の内周側(針棒8と針棒案内部材81との摺動面)に導かれるとともに、貫通孔88cにより針棒案内部材81の外周側に導かれその外周部を流下するようになっている。
【0103】
一方、ブロック部83の上面には、第2油路の一部を構成する受入溝部83cが設けられており、上記のようにして針棒案内部材81の外周部を流下した潤滑油を受け入れる。また、この受入溝部83cは、上記斜状溝83aに連通しており、上記のように受け入れた潤滑油を直接斜状溝83aに導くようになっている。
【0104】
本変形例においては、オイルタンク94からの潤滑油を、上述した第3灯芯R3、第1灯芯R1よりフランジ88の溝部88b及び貫通孔88cを経て針棒案内部材81の外周側を流下させ、受入溝部83cより斜状溝83aに導く。この結果、上記実施形態と同様、斜状溝83aと針振り突部84aとの摺動部分に供給することができ、耐久性を維持するのに必要な潤滑油を安定的に供給することができる。
【0105】
(B)針棒案内部材81の外部を流下させて第2灯芯へ導く場合
上記実施形態では第1灯芯R1→フランジ88の貫通孔88a→針棒案内部材81の内周側→外部導出用貫通孔→第2灯芯R2の導油部R2b→放油部R2d→斜状溝83aの経路で潤滑油を導き、一方で上記(A)の変形例では第1灯芯R1→フランジ88の貫通孔88c→針棒案内部材81の外周側→受入溝部83c→斜状溝83aの経路で潤滑油を導いたが、これらを組み合わせても良い。
【0106】
すなわち、上記(A)の変形例のようにフランジ88に貫通孔88cを設けて第1灯芯R1→フランジ88の貫通孔88c→針棒案内部材81の外周側と潤滑油を流下させ、その後この流下する潤滑油を、針棒案内部材81の外周部に巻き付けるように設けた第2灯芯R2の受油部R2a′(図示せず)で受け入れ、その後導油部R2b→放油部R2d→斜状溝83aの経路で潤滑油を導くようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0107】
(C)その他
以上においては、針棒回動ブラケット80側に凸部としてのガイドピン84の針振り突部84aを設け、これを針棒案内部材81側に設けた摺動溝としてのブロック部83の斜状溝83aに嵌合摺動させることで、針棒8の揺動を実現したが、これに限られない。すなわち、針棒回動ブラケット80側に摺動溝を設け、これに対して針棒案内部材81側に設けた凸部を嵌合摺動させて針棒8の揺動を実現するようにしてもよい。この場合も、上記同様の給油機構を用いて当該摺動部分に潤滑油を供給することで、同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0109】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子鳩目穴かがりミシンの全体構造を表す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子鳩目穴かがりミシンの全体構造を表す側面図である。
【図3】図2に示した回動機構の詳細構造を表す斜視図である。
【図4】アーム部の内部詳細構造を抽出し、図2と同じ方向から見た側面図である。
【図5】アーム部の内部詳細構造を抽出し、図4の反対側から見た斜視図である。
【図6】図5に示した構造の平面図である。
【図7】図4中VII方向から見た正面図である。
【図8】図6中H‐H断面による縦断面図である。
【図9】図4中I‐I断面による縦断面図である。
【図10】図4中J‐J断面による水平横断面図である。
【図11】図4及び図5等に示した針振り本体部の詳細構造を表す分解斜視図である。
【図12】針振り本体部が、鳩目穴かがりミシン側のアーム部先端において支持される支持構造を表す縦断面図である。
【図13】図11に示した針棒案内部材、連結カラー、及び固定カラーの詳細構造を給油機構の要部とともに表す水平断面図及び一部断面で示す側面図である。
【図14】給油機構を含む潤滑油の供給及び排出の全体経路を説明するための概念的断面図である
【図15】図14中A−A断面による概念的水平断面図である。
【図16】第2灯芯を用いず針棒案内部材外部を流下させる変形例の要部を構成する針棒案内部材、連結カラー、及び固定カラーの詳細構造を給油機構の要部とともに表す、ブロック部83近傍の水平断面図、側面図である。
【図17】図16(b)に示したフランジ近傍の詳細構造を表す拡大縦断面図及びブロック部近傍の詳細構造を表す拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1 鳩目穴かがりミシン
3 アーム部
7 縫い針
8 針棒
61 針振り駆動部(駆動体)
74 針振りヨーク(連結機構)
80 針棒回動ブラケット(保持部材)
81 針棒案内部材(案内部材)
83a 斜状溝(摺動溝)
83b 斜状溝(紐用溝部)
83c 受入溝部(第2油路)
84a 針振り突部(凸部)
87 連結カラー(連結機構)
88 フランジ
88a 貫通孔(第1開口部、第2油路)
91 カバー
93 針棒挿通孔
94 オイルタンク(給油源)
95 油回収フェルト(潤滑油吸収体)
R1 第1灯芯(給油紐、第1油路、給油手段)
R2 第2灯芯(第2油路、給油手段)
R2a 受油部
R2b 導油部(導油紐)
R2c 接続部
R2d 放油部
R3 第3灯芯(給油紐、第1油路、給油手段)
R4 第4灯芯(排出路)




 

 


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