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発明の名称 プリント装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−55247(P2007−55247A)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
出願番号 特願2006−200455(P2006−200455)
出願日 平成18年7月24日(2006.7.24)
代理人 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
発明者 菅原 宏人
要約 課題
構成が簡単で小型化が容易なプリント装置を提供すること。

解決手段
プリンタ100は、導電性のインクが流れる個別インク流路12及び個別インク流路12に連なる排出口13を有するインク移送ヘッド1と、その表面が排出口13に近接した状態で回転自在に配置された転写ドラム2を備えている。インク移送ヘッド1は、個別インク流路12の内面に形成された個別電極15とこの個別電極15の表面に設けられた絶縁層16を有し、個別電極15に駆動電圧が印加されたときに絶縁層16の撥液性が低下する、エレクトロウェッティング現象を利用してインクを排出口13から排出させるように構成されている。さらに、このインク移送ヘッド1の排出口13と転写ドラム2の離間距離は、排出口13から一度に排出される液滴の直径よりも小さくなっている。
特許請求の範囲
【請求項1】
導電性の液体を印刷媒体に排出して印刷するプリント装置であって、
前記液体が流れる液体流路及びこの液体流路に連なる排出部を形成する流路形成面、前記流路形成面に配置された第1電極及び第1電極の表面に形成され、前記第1電極に電圧が印加されていない状態では、前記流路画成面よりも高い撥液性を有する絶縁層を有する液体移送部と、
前記液体移送部の前記排出部から排出される前記液体を前記印刷媒体に転写する転写機構とを備えるプリント装置。
【請求項2】
前記液体移送部の前記排出部と前記転写機構との間の離間距離は、前記排出部から一度に排出される液体の直径よりも小さい請求項1に記載のプリント装置。
【請求項3】
前記転写機構は転写ドラムであって、前記転写ドラムは、前記転写ドラムの表面が前記液体移送部の前記排出部に近接した状態で回転自在に配置されている請求項2に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記転写ドラムの表面の撥液性が、前記液体移送部の前記排出部の周りの領域の撥液性よりも低い請求項3に記載のプリント装置。
【請求項5】
前記転写ドラムの表面には、前記排出部から排出される液体が付着する液体付着領域と、この液体付着領域を取り囲み、液体付着領域よりも高い撥液性を有する高撥液性領域とが設けられている請求項3に記載のプリント装置。
【請求項6】
前記流路形成面に、常に所定電位に保持され、且つ、前記液体に直接接触する第2電極が形成されている請求項3に記載のプリント装置。
【請求項7】
前記液体移送部は、前記排出部から前記転写ドラムに向けて鉛直下方に液体を移送する請求項3に記載のプリント装置。
【請求項8】
前記液体移送部は、前記転写ドラムの周方向に並んで配置された複数の個別液体移送部を備えている請求項3に記載のプリント装置。
【請求項9】
さらに、前記転写ドラムの表面に付着した異物を除去する異物除去機構を有する請求項3に記載のプリント装置。
【請求項10】
前記転写機構は転写ベルトである請求項1に記載のプリント装置。
【請求項11】
前記転写ベルトには、前記排出部から排出される液体が充填される孔が形成されている請求項10に記載のプリント装置。
【請求項12】
さらに、前記転写ベルトの表面に付着した異物を除去する異物除去機構を有する請求項10に記載のプリント装置。


発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙等の印刷媒体に液体を移送して印刷するプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録用紙等の様々な印刷媒体に印刷するプリント装置として、印刷媒体に対してインクを吐出するインクジェットヘッドを備えたプリンタが広く採用されている。ここで、インクジェットヘッドには種々の構成のものがあるが、例えば、ノズルに連通する圧力室を含む個別インク流路を複数備えた流路ユニットと、圧力室内のインクに圧力を付与する圧電式のアクチュエータを備えたものがある(例えば、特許文献1(特開2003−326712号)参照)。
【0003】
一般的な圧電式のアクチュエータは、複数の圧力室にそれぞれ対応する複数の個別電極と、これら複数の個別電極に対向する共通電極と、個別電極と共通電極との間に挟まれた、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料からなる圧電層とを備えている。そして、所定の個別電極に対して駆動電圧が供給されたときには、個別電極と共通電極との間に挟まれた圧電層の部分に電界が作用して圧電層が部分的に変形し、この圧電層の変形に伴って圧力室内のインクに圧力が付与されて、その圧力室に連通するノズルからインクが吐出される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−326712号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述のインクジェットヘッドは、流路ユニット内にノズルと圧力室を含む複雑形状の個別インク流路が複数形成され、さらに、この流路ユニットの表面に複数の個別電極と共通電極と圧電層とを備えたアクチュエータが配置されており、かなり複雑な構造を有することから、その分、製造コストが高くなる。また、一定量のインクを吐出するためには圧力室の容積をある所定の容積以上確保する必要があることなどから、ノズル及び圧力室を含む複雑形状の個別インク流路を流路ユニット内に密集させて配置すること(高集積化)が難しく、インクジェットヘッドの小型化が困難である。
【0006】
本発明の目的は、構成が簡単で小型化が容易なプリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、導電性の液体を印刷媒体に排出して印刷するプリント装置であって、前記液体が流れる液体流路及びこの液体流路に連なる排出部を形成する流路形成面、前記流路形成面に配置された第1電極及び第1電極の表面に形成され、前記第1電極に電圧が印加されていない状態では、前記流路画成面よりも高い撥液性を有する絶縁層を有する液体移送部と、前記液体移送部の前記排出部から排出される前記液体を前記印刷媒体に転写する転写機構とを備えるプリント装置が提供される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、液体移送部は、第1電極と液体との間に電位差が生じたときに、第1電極の表面の絶縁層の撥液性(液体の濡れ角)が低下する現象(エレクトロウェッティング現象:特開2003−177219号公報参照)を利用して液体を排出部まで移送する。そのため、複雑な構成を有する従来のインクジェットヘッドなどと比べて、液体流路の構造や液体を移送させるアクチュエータの構成が簡単になり、複数の液体流路及び排出部をより高密度に配置することが可能になり、液体移送部の小型化が容易になる。また、比較的低い駆動電圧で液体を移送することが可能である。
【0009】
本発明のプリント装置において、前記液体移送部の前記排出部と前記転写機構との間の離間距離は、前記排出部から一度に排出される液体の直径よりも小さいくてもよく、前記転写機構は転写ドラムであって、前記転写ドラムは、前記転写ドラムの表面が前記液体移送部の前記排出部に近接した状態で回転自在に配置されていてもよい。
【0010】
特に、印刷媒体が、紙などの、表面に細かな無数の凹凸を有するものである場合に、排出部から排出される液体を直接印刷媒体に付着させるようにすると、その表面の凹凸のために一定量の液体を安定的に付着させることは難しく、付着する液体量がばらついて印字品質が低下する虞がある。しかし、本発明のプリント装置においては、液体移送部から一旦転写ドラムの表面に液体を付着させた後に転写ドラムを回転させて、転写ドラム表面の液体を紙などの印刷媒体に転写するため、所定量の液体を安定的に印刷媒体に付着させることができる。また、液体移送部の排出部と転写ドラムとの離間距離は、排出部から一度に排出される液体の直径よりも小さいことから、排出部から排出された液滴は確実に転写ドラムに付着する。
【0011】
ここで、「排出部から一度に排出される液体の直径」とは、排出部から一度に排出される液体の体積と同じ体積を有する球形の液体の直径のことである。
【0012】
本発明のプリント装置において、前記転写ドラムの表面の撥液性が、前記液体移送部の前記排出部周りの撥液性よりも低くてもよい。この場合には、排出部から排出された液体が、この排出部の周辺に付着することなく、転写ドラムの表面に確実に移送される。
【0013】
本発明のプリント装置において、前記転写ドラムの表面には、前記排出部から排出される液体が付着する液体付着領域と、この液体付着領域を取り囲み、液体付着領域よりも高い撥液性を有する高撥液性領域とが設けられていてもよい。この場合には、転写ドラムの表面において、液体が、本来付着すべき位置である液体付着位置から少しずれて、高撥液性領域にまで跨って付着した場合でも、この液体は、撥液性の高い高撥液性領域から、撥液性の低い液体付着位置へ自然に移動するため、転写ドラム表面での液滴の付着位置が補正され、印刷媒体に転写されたときの印字品質が高くなる。
【0014】
本発明のプリント装置において、前記液体流路の前記流路形成面に、常に所定電位に保持され、且つ、前記液体に直接接触する第2電極が形成されていてもよい。この場合には、所定電位に保持された第2電極に液体が常に接触しているため、液体流路内における液体の電位が変動することがなく、第1電極に電圧が印加されたときの、第1電極と液体との間に所定の電位差を確実に発生させることができる。
【0015】
本発明のプリント装置において、前記液体移送部は、前記排出部から前記転写ドラムに向けて鉛直下方に液体を移送してもよい。この場合には、排出部から排出された液体に作用する重力によって、転写ドラム表面における液体の付着位置がずれることがない。
【0016】
本発明のプリント装置において、前記液体移送部は、前記転写ドラムの周方向に並んで配置された複数の個別液体移送部を備えていてもよい。この場合には、複数の液体移送部から、複数種類の液体をそれぞれ排出して、転写ドラムに付着させることができる。
【0017】
本発明のプリント装置は、さらに前記転写ドラムの表面に付着した異物を除去する異物除去手段を有してもよい。この場合には、転写ドラムに付着した紙粉などの異物を確実に除去することができる。
【0018】
本発明のプリント装置において、前記転写機構は転写ベルトであってもよく、該転写ベルトには、前記排出部から排出される液体が充填される孔が形成されていてもよい。この場合には、転写ベルトは任意の形状に配置することができる。また、転写ベルトに孔が形成されている場合には、この孔に排出部から排出される液体を充填した状態で液体を記録媒体に転写する地点まで搬送することができるため、転写ベルトの表面における液体の位置がずれることがない。
【0019】
本発明のプリント装置は、さらに前記転写ベルトの表面に付着した異物を除去する異物除去手段を有してもよい。この場合には、転写ベルトに付着した紙粉などの異物を確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、記録用紙にインクを移送して印刷するプリンタに本発明を適用した一例である。
【0021】
まず、本実施形態のプリンタ100の概略構成について説明する。図1、図2に示すように、プリンタ100は、導電性のインクが流れる複数の個別インク流路12及びこれら複数の個別インク流路12にそれぞれ連なる複数の排出口13(排出部)を備えたインク移送ヘッド1(液体移送部)と、このインク移送ヘッド1の下方において、表面がインク移送ヘッド1の排出口13に近接した状態でフレーム4に回転自在に支持された円柱形状の転写ドラム2と、この転写ドラム2の下端に接触する記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ3等を有する。尚、このプリンタ100で用いられる導電性のインクは、水を主成分とし、染料と溶剤を添加した水系染料インク、又は、顔料と溶剤を添加した水系顔料インクなどである。
【0022】
インク移送ヘッド1はチューブ6を介してインクタンク5に接続されている。そして、インクタンク5からインク移送ヘッド1に供給されたインクは、インク移送ヘッド1内の複数の個別インク流路12内を通り、下方へ開口した複数の排出口13から排出されて、一定方向(図2の時計回りの方向)に回転する転写ドラム2の表面に付着する。さらに、転写ドラム2の下方の記録用紙Pはローラ7に支持されて転写ドラム2の下端に接触している。そのため、転写ドラム2に付着したインクIは、転写ドラム2の回転に伴って下方へ移動して記録用紙Pに転写され、所定の画像が記録用紙Pに記録される。その後、記録用紙Pは搬送ローラ3により前方へ排出される。尚、図1に示すように、インク移送ヘッド1と転写ドラム2は記録用紙Pの幅方向全体に渡って配設されており、転写ドラム2から記録用紙Pにインクが転写されたときに、記録用紙Pに、その幅方向に並ぶ1列の画素を一度に記録することができるようになっている。即ち、本実施形態のプリンタ100はラインプリンタである。
【0023】
次に、インク移送ヘッド1について詳細に説明する。図3、図4に示すように、インク移送ヘッド1は、ヘッド本体10を有する。このヘッド本体10の上半分には、インク移送ヘッド1の長手方向(図3の左右方向)に延びるマニホールド11が形成されている。また、ヘッド本体10の下半分には、マニホールド11から分岐して下方へ延びる複数の個別インク流路12が、インク移送ヘッド1の長手方向に並んで形成されており、これら複数の個別インク流路12は隔壁14により互いに隔てられている。尚、図3においては、ヘッド本体10内に形成された複数の個別インク流路12のうちの一部である、3つの個別インク流路12だけが示されている。また、各個別インク流路12の下端部は、先端に向かって先細り形状に形成されており、その先端には下方へ開口した排出口13が設けられている。
【0024】
マニホールド11はインクタンク5(図1参照)に接続されており、導電性のインクは、インクタンク5からマニホールド11を介して各個別インク流路12へ供給される。ここで、下方に延びる各個別インク流路12内のインクには、重力が常に下向きに作用している。尚、マニホールド11及び複数の個別インク流路12が本願発明の液体流路に相当する。
【0025】
各個別インク流路12の先細り状の下端部を形成する、ヘッド本体10の内面(流路形成面)の1つの面(図4の右側面)には、この面をほぼ覆う台形の形状を有する個別電極15(第1電極)が形成されている。図4に示すように、この個別電極15はドライバIC17と電気的に接続されており、ドライバIC17により所定の駆動電圧を印加することが可能である。さらに、この個別電極15の表面には、フッ素系樹脂等からなる絶縁層16が個別電極15を完全に覆うように設けられている。ここで、個別電極15に駆動電圧が印加されていない状態では、絶縁層16の表面の撥液性は、個別インク流路12の内面の撥液性よりも高い。尚、絶縁層16は、例えば、フッ素系樹脂をスピンコート法等により個別電極15の表面にコーティングするなどして形成することができる。
【0026】
マニホールド11の内面(流路形成面)のうちの1つの面(図4の右側面)には、マニホールド11内のインクに直接接触する共通電極18(第2電極)が形成されている。この共通電極18もドライバIC17と電気的に接続されており、共通電極18はドライバIC17を介して常にグランド電位に保持されている。従って、この共通電極18に接触するマニホールド11内のインクは常にグランド電位に保持される。
【0027】
次に、このインク移送ヘッド1のインク移送動作について図5〜図8を参照して説明する。尚、図6及び図8において、個別電極15の接点の"+"は個別電極15に電圧が印加されている状態を示し、"GND"は個別電極15に電圧が印加されていない状態(グランド電位にある状態)を示す。
【0028】
ドライバIC17から個別電極15に駆動電圧が印加されていない状態では、絶縁層16の表面の撥液性は、個別インク流路12の内面の撥液性よりも高くなっている。そのため、図5、図6に示すように、下方へ流れようとする個別インク流路12内のインクIのメニスカスは、絶縁層16の表面を越えて排出口13へ移動することができず、インクIは排出口13から排出されない。しかし、ドライバIC17からある個別電極(図7における右端に位置する個別電極15)に駆動電圧が印加されたときには、この個別電極15を覆う絶縁層16の表面における撥液性(インクの濡れ角)が低下し(エレクトロウェッティング現象)、絶縁層16の表面の撥液性が個別インク流路12の内面の撥液性よりも低くなる。この場合には、図7、図8に示すように、インクIが絶縁層16の表面を濡らして排出口13まで下方へ移動することができるようになり、インクIが排出口13から下方の転写ドラム2に向けて排出される。
【0029】
尚、マニホールド11内のインクは、常にグランド電位に保持された共通電極18に接触しているため、個別インク流路12内のインクの電位が変動することがない。従って、ある個別電極15に駆動電圧が印加されたときに、その個別電極15とインクとの間に所定の電位差が確実に発生することから、個別インク流路12内においてインクがスムーズに排出口13へ移動できるようになる。
【0030】
また、図3〜図8に示すように、ヘッド本体10の下端の排出口13周りの領域には、撥液膜19がそれぞれ設けられて、排出口13の周りの撥液性が個別インク流路12の内面の撥液性(個別電極15に駆動電圧が印加されている状態での絶縁層16表面の撥液性)よりも高くなっており、排出口13から排出されたインクが、この排出口13の周りに付着することが防止される。
【0031】
次に、転写ドラム2について説明する。図1、図2に示すように、転写ドラム2は、インク移送ヘッド1とほぼ同じ長さを有する円柱形状に形成されており、プリンタ100のフレーム4に回転自在に設けられている。そして、この転写ドラム2は、図示しない駆動モータにより、図2の時計回りの方向に回転駆動される。
【0032】
この転写ドラム2の表面は、インク移送ヘッド1の複数の排出口13に近接している。ここで、図8に示すように、インク移送ヘッド1と転写ドラム2の離間距離Lは、個別インク流路12の個別電極15に駆動電圧が印加されたときに、1つの排出口13から一度に排出されるインクに相当する液滴の直径よりも小さくなるように設定されている。すなわち、インク移送ヘッド1と転写ドラム2の離間距離Lは、1つの排出口13から一度に排出されるインクの体積と同じ体積を有する球形のインク滴の直径よりも小さい。例えば、1つの排出口13から一度に排出されるインクの体積が約5plである場合には、離間距離Lは、約5plの体積のインクの液滴の直径に相当する約21μmよりも小さくなるように設定される(例えば、L=10μm)。そのため、排出口13から排出されたインクは転写ドラム2の表面に確実に付着する。
【0033】
また、図9に示すように、転写ドラム2の表面には、インク移送ヘッド1の複数の排出口13からそれぞれ排出された液滴が付着する複数のインク付着領域2a(液体付着領域)が設けられている。また、これら複数のインク付着領域2aは撥液膜20により取り囲まれており、複数のインク付着領域2aはそれぞれ円形の平面形状を有する。そして、図9に示すように、複数のインク付着領域2aは、複数の排出口13に対応するように転写ドラム2の長手方向(図9の左右方向)に並べて配置され、さらに、このインク付着領域2aの列が転写ドラム2の周方向(図9の上下方向)に等間隔空けて複数配置されている。また、インク付着領域2aの撥液性は、インク移送ヘッド1の排出口13の周りに形成された撥液膜19よりも低くなっている。そのため、排出口13から排出されたインクの液滴は、排出口13の周りに付着することなく、転写ドラム2の表面に確実に移動する。
【0034】
さらに、転写ドラム2の表面の、複数のインク付着領域2aを取り囲む領域には、撥液膜20が形成されており、インク付着領域2aよりも撥液性の高い高撥液性領域2bを形成している。従って、例えば、複数の排出口13からそれぞれ排出されたインクの液滴Idが不安定な状態で転写ドラム2に付着した場合には、図10(a)に示すように、液滴Idが、転写ドラム2の表面の本来付着すべき位置であるインク付着領域2aから少しずれて、高撥液性領域2bにまで跨って付着することがある。このような場合であっても、図10(b)に示すように、液滴Idは、撥液性の高い高撥液性領域2bから、撥液性の低いインク付着領域2aに向かって、矢印に示す方向に自ら移動する。つまり、転写ドラム2の表面における液滴Idの付着位置が補正されるため、記録用紙Pに転写されたときの印字品質が高くなる。
【0035】
尚、このような液滴の付着位置のずれは、例えば、液滴に作用する重力や風のような外力等の様々な要因により生じるが、本実施形態のプリンタ100においては、図2に示すように、インク移送ヘッド1は、排出口13から転写ドラム2に向けて鉛直下方にインクを排出(移送)することから、液滴に作用する重力による付着位置のずれは起こらない。その上で、さらに、前述のような補正が行われるため、記録用紙Pに転写される直前における液滴の付着位置のずれはかなり小さくなる。
【0036】
図2に示すように、転写ドラム2の下側には、この転写ドラム2の下端面に記録用紙Pが常に接触するように、この記録用紙Pを下方から支持するローラ7が回転自在に配置されている。そして、転写ドラム2の表面に付着したインクは、この転写ドラム2の回転に伴って下方へ移動した後、転写ドラム2とローラ7との間に挟まれた記録用紙Pに確実に転写される。
【0037】
以上説明したプリンタ100によれば次のような効果が得られる。インク移送ヘッド1は、個別電極15とインクとの間に電位差が生じたときに、個別電極15を覆う絶縁層16表面の撥液性が低下する現象(エレクトロウェッティング現象)を利用してインクを排出口13まで移送する。そのため、複雑な構成を有する従来のインクジェットヘッドと比べて、インク流路の構造やインクを移送させるアクチュエータの構成が簡単となり、複数の個別インク流路12及び排出口13をより高密度に配置することが可能になるため、インク移送ヘッド1の小型化が容易になる。さらに、比較的低い駆動電圧でインクを移送することも可能である。
【0038】
また、インク移送ヘッド1から一旦転写ドラム2の表面にインクを付着させた後に、転写ドラム2を回転させて、転写ドラム2の表面のインクを記録用紙Pに転写するため、表面に多数の凹凸を有する記録用紙Pに、所定量のインクを安定的に付着させることができる。尚、インク移送ヘッド1の排出口13と転写ドラム2の離間距離は、排出口13から一度に排出されるインクの量に相当する液滴の直径よりも小さいことから、排出口13から排出されたインクは確実に転写ドラム2に付着する。
【0039】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0040】
〈第1変更形態〉
図11に示すように、インクタンク5とインク移送ヘッド1との間に加圧ポンプ30を設けて、インクタンク5内のインクを加圧ポンプ30で加圧してインク移送ヘッド1に供給してもよい。この形態では、インク移送ヘッド1内のインクには、重力に加えて、さらに加圧ポンプ30による圧力が付与されるため、排出口13(図2参照)からインクが排出されやすくなる。特に、インク移送ヘッド1の排出口13が水平方向を向いている場合、又は、鉛直方向に対してある程度傾いた方向を向いている場合など、個別インク流路12内のインクに作用する重力の排出口13に向かう成分がない場合、あるいは、排出口13に向かう成分が小さい場合に適している。
【0041】
〈第2変更形態〉
転写ドラムの表面には、記録用紙への転写の際などに、紙粉等の異物が付着することがあるが、このような異物が付着した状態で放置されると、インク移送ヘッドの排出口から排出されたインクが、転写ドラムの表面の所定のインク付着領域に正しく付着できなくなる虞がある。そこで、このような異物を除去する異物除去機構がプリンタに設けられていてもよい。例えば、図12に示すように、転写ドラム2の表面にその長手方向(図12の紙面垂直方向)に亙って常に接触する異物除去部材31が設けられていてもよい。この異物除去部材31の先端は、転写ドラム2の、インク移送ヘッド1から排出されたインクが付着する上端部と、記録用紙Pに接触する下端部の間の部分(図12では左側部)に接触している。そのため、記録用紙Pにインクが転写されてから次のインクが付着するまでに、異物除去部材31により、転写ドラム2の表面に付着したインクを掻き落とすことができる。
【0042】
〈第3変更形態〉
搬送される記録用紙Pが常に転写ドラム2に接触するように、記録用紙Pを下方から支持する構成は、前記実施形態のローラ7(図2参照)に限られず、その他の種々の構成であってもよい。例えば、図13に示すように、転写ドラム2の下方に配置された水平な支持台32により記録用紙Pを支持してもよい。あるいは、図14に示すように、転写ドラム2の用紙搬送方向に関して両側(図14の左右両側)にそれぞれ配置され、上下から記録用紙Pを挟み込むローラ33,34により、記録用紙Pが支持されていてもよい。
【0043】
〈第4変更形態〉
転写ドラム2の表面におけるインクの付着位置のずれが小さい場合には、そのずれを補正するためにインク付着領域2aの周囲に形成された撥液膜20(図9参照)を省略してもよい。
【0044】
〈第5変更形態〉
エレクトロウェッティング現象を利用してインクを転写ドラムへ移送するインク移送ヘッドは、前記実施形態のものに限られず、種々の構造のものを採用できる。例えば、図15及び16に示すインク移送ヘッド41は、基板42の端部上面に形成されたインク貯留部43と、基板42の上面においてインク貯留部43の複数の導出口43aからそれぞれ転写ドラム2へ延びる複数の個別インク流路44と、これら個別インク流路44にそれぞれ連なる複数の排出部45とを備えている。
【0045】
各個別インク流路44を形成する基板42の上面(流路形成面)には、インク貯留部43の導出口43aに隣接して導出電極46が設けられ、さらに、この導出電極46に隣接する位置から個別インク流路44の延在する方向に沿って5つの移送電極47が並べて設けられている。導出電極46及び移送電極47は図示しないドライバICに接続されており、ドライバICは、それぞれの電極に独立に駆動電圧を印加できる。尚、基板42は絶縁材料により形成されており、この基板42により導出電極46及び移送電極47は互いに絶縁されている。また、基板42の上面には、導出電極46及び移送電極47の全てを覆うように連続的に絶縁層48が設けられている。さらに、この絶縁層48の上面には、個別インク流路44の両側において個別インク流路44の延在する方向に延在する共通電極49が設けられている。この共通電極49もドライバICに接続されており、ドライバICを介して常にグランド電位に保持されている。
【0046】
導出電極46に駆動電圧が印加されていない状態では、その表面を覆う絶縁層48の撥液性は、絶縁層48が形成されていないインク貯留部43の内面の撥液性よりも高くなっており、導出口43aからインクが導出されることはない。一方、導出電極46に駆動電圧が印加されると、この導出電極46の表面の絶縁層48の撥液性がインク貯留部43の内面よりも低下するため、インク貯留部43の導出口43aからインクが導出される。さらに、導出電極46への駆動電圧の印加状態が解除されてグランド電位になると同時に、この導出電極46に隣接する移送電極47に駆動電圧が印加されると、導出電極46の表面の絶縁層48の撥液性が高くなるとともに、移送電極47の表面の絶縁層48の撥液性が低下するため、導出電極46の上のインクが移送電極47の上に移動する。このように、駆動電圧が印加される電極46,47を切り換えることにより、導出口43aから導出されたインクの液滴Idを、個別インク流路44に沿って排出部45まで移送し、排出部45から転写ドラム2に付着させることができる。尚、インク貯留部43及び複数の個別インク流路44が本願発明の液体流路に相当する。また、導出電極46及び移送電極47が本願発明の第1電極に相当し、共通電極49が本願発明の第2電極に相当する。
【0047】
また、本変更形態のインク移送ヘッド41においても、前記実施形態と同様に、インク移送ヘッド41の排出部45と転写ドラム2の離間距離Lは、排出部45から一度に排出されるインクの体積と同じ体積を有するインクの液滴Idの直径よりも小さくなっている。また、排出部45の周りには撥液膜50が設けられて、排出部45の周りの撥液性は、個別インク流路44を形成する基板42(絶縁層48)の上面及び転写ドラム2の表面の撥液性よりも高くなっている。そのため、排出部45から排出された液体が、排出部45の周辺に付着することなく転写ドラム2の表面に確実に移送される。
【0048】
〈第7変更形態〉
図17に示すように、インク移送ヘッド1と同一の構造を有する4つの個別インク移送ヘッド(個別液体移送部)1a〜dが、転写ドラム2の周方向に並んで配置されていてもよい。この構成によれば、複数の個別インク移送ヘッド1a〜dからそれぞれ異なる色のインクIを排出させて転写ドラム2に付着させ、記録用紙Pに転写させることで、記録用紙Pにカラー画像を記録することができる。なお、個別インク移送ヘッドの数及び配置は任意にし得る。
【0049】
〈第8変更形態〉
本変更形態のプリンタ200は、前記実施形態の転写ドラム2の代わりに、転写ベルト202、支軸ローラ203a〜d及びベルト回転ローラ204が設けられていること、及び第2変更形態と同様の異物除去機構231を有していることを除いて、前記実施形態のプリンタ100と同じ構造を有している。図18に示すように、転写ベルト202は、複数の支軸ローラ203a〜dとベルト回転ローラ204とに外接して配置されている。支軸ローラ203a〜dはいずれも、インク移送ヘッドの排出口13の配列方向に延在する、不図示の棒状の芯材に対して、回転可能に設けられている。ベルト回転ローラ204は、インク移送ヘッドの排出口13の配列方向に延在し、不図示の駆動源に接続されており、プリンタ200のフレーム4(図1参照)に回転可能に軸支されている。ベルト回転ローラ204の回転に伴って、転写ベルト202は、図18の時計回りの方向に回転する。ここで、転写ベルト202の幅は、インク移送ヘッド1の排出口の配列方向の長さとほぼ同じであり、全ての排出口13と対向している。また、転写ベルト202は、支軸ローラ203aと203bとの間において、インク移送ヘッド1と一定の間隔を隔てて配置されている。ここで、転写ベルト202とインク移送ヘッド1との間の距離は、インク移送ヘッド1から一度に排出されるインクの体積と同一の体積を有する球形のインク滴の径よりも短い。支軸ローラ203aと203bとの間において、転写ベルト202の表面に、インク移送ヘッド1から排出されたインクIが付着する。転写ベルト202の表面に付着したインクIは、転写ベルト202の回転とともに図18の下方に向かって運ばれ、支軸ローラ203dとローラ7との間に挟まれた記録用紙Pに確実に転写される。
【0050】
本変更形態において、支軸ローラ及びベルト回転ローラの形状、材質、数及び/又は配置は任意にし得る。また、転写ベルトの形状、材質及び/又は厚さも任意にし得る。また、本変更形態にも、上記変更形態において加えた変更を適用することもできる。例えば、転写ベルトの表面に、前記実施形態の転写ドラムの表面に施されていたようなインク付着領域及び高撥液性領域が形成されていてもよい。さらに、図19に示された転写ベルト212のように、転写ベルト212のインク付着領域に対応する部分に孔212aが形成されていてもよい。転写ベルト212の表面のインク付着領域に対応する部分に孔212aが形成されている場合には、インク移送ヘッドから排出されたインクは孔212aに充填された状態で搬送されて、記録用紙Pに転写される。
【0051】
なお、上記実施形態及び変更形態において、転写ドラム又は転写ベルトの表面のインク付着領域及び高撥液性領域のパターンは任意に形成し得る。例えば、インク付着領域が転写ドラム又は転写ベルトの周方向にそってライン状に形成されていてもよく、周方向と直交する方向にライン状に形成されていてもよい。あるいは、周方向及び周方向と直交する方向の両方に、格子状に形成されていてもよい。また、インク移送ヘッドから排出されたインクを記録用紙などの記録媒体に転写するための転写部材は、転写ドラム又は転写ベルトに限られず、任意の転写部材を利用しうる。
【0052】
以上説明した実施の形態は、インクを記録用紙に転写して記録するプリンタに本発明を適用した一例であるが、インク以外の液体を印刷媒体に転写する他のプリント装置にも本発明を適用することは可能である。例えば、金属ナノ粒子を分散した導電性液体を基板に転写して配線パターンを形成するプリント装置、DNAを分散した溶液を用いてDNAチップを製造するプリント装置、有機化合物などのEL発光材料を分散した溶液を用いてディスプレイパネルを製造するプリント装置、カラーフィルタ用顔料が分散された液体を用いて液晶ディスプレイ用のカラーフィルタを製造するプリント装置などにも本発明を適用することができる。また、これらのプリント装置に用いられる液体は、液体自体が導電性のものである場合に限られず、絶縁性の液体に導電性の添加剤を分散させて、導電性の液体と同様に導電性を有するようにしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のプリンタの主要部の側面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】インク未排出状態における図2相当の断面図である。
【図6】図5のVI-VI線断面図である。
【図7】インク排出状態における図2相当の断面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線断面図である。
【図9】転写ドラム表面の一部展開図である。
【図10】インク付着時の転写ドラム表面の一部展開図であり、(a)はインクがインク付着領域からずれて付着した直後の状態、(b)は付着位置のずれが補正された状態をそれぞれ示す。
【図11】第1変更形態のプリンタの概略構成図である。
【図12】第2変更形態のプリンタの図2相当の側面図である。
【図13】第3変更形態の第1の例のプリンタの図2相当の側面図である。
【図14】第3変更形態の第2の例のプリンタの図2相当の側面図である。
【図15】第5変更形態のプリンタの一部平面図である。
【図16】図15のXVI-XVI線断面図である。
【図17】第6変更形態のプリンタの図2相当の側面図である。
【図18】第8変更形態のプリンタの図2相当の側面図である。
【図19】孔が形成された転写ベルトの一部展開図である。
【符号の説明】
【0054】
1 インク移送ヘッド
2 転写ドラム
2a インク付着領域
2b 高撥液性領域
11 マニホールド
12 個別インク流路
13 排出口
15 個別電極
16 絶縁層
18 共通電極
31 異物除去部材
41 インク移送ヘッド
43 インク貯留部
44 個別インク流路
45 排出部
46 導出電極
47 移送電極
48 絶縁層
49 共通電極
P 記録用紙






 

 


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