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発明の名称 インクジェット記録装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−45061(P2007−45061A)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
出願番号 特願2005−233342(P2005−233342)
出願日 平成17年8月11日(2005.8.11)
代理人 【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
発明者 佐藤 紀章
要約 課題
インクジェット記録装置において、インク流路系に任意のインクや保存液を充填しても、インク流路系内に使用されるゴム部材に由来する不溶物が析出しないようにする。

解決手段
インク流路系に水性インク又は保存液が充填されるインクジェット記録装置において、インク流路系内で使用されるゴム部材が、スルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤を用いたエチレンプロピレンジエンゴムからなり、
特許請求の範囲
【請求項1】
インク流路系に水性インク又は保存液が充填されるインクジェット記録装置において、
インク流路系内で使用されるゴム部材が、スルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤を用いたエチレンプロピレンジエンゴムからなり、
水性インクが、少なくとも着色剤、水及び水溶性有機溶剤を含有し、最大泡圧法による測定温度25℃、ライフタイム100msにおける動的表面張力が35〜45mN/mであり、保存液が、少なくとも水及び水溶性有機溶剤を含有し、最大泡圧法による測定温度25℃のライフタイム100msにおける動的表面張力が30〜35mN/mであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
スルフェンアミド系加硫促進剤の分子量が200〜350である請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
スルフェンアミド系加硫促進剤が、次式1
【化1】



の化合物である請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
スルフェンアミド系加硫促進剤が、次式1a
【化2】


のN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、又は次式1b
【化3】


のN−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドである請求項3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
チアゾール系加硫促進剤の分子量が150〜400である請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
チアゾール系加硫促進剤が、次式2
【化4】


の化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
チアゾール系加硫促進剤が、次式2a
【化5】


の2−メルカプトベンゾチアゾール、又は次式2b
【化6】


の2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩である請求項6記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
水性インクが、水溶性有機溶剤としてグリコールエーテルを水性インク全重量に対して0.1〜10重量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
水性インクが、水溶性有機溶剤としてグリコールエーテルを水性インク全重量に対して4〜7重量%含有する請求項8記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
水性インクが、さらに次式
【化7】


(式中、R=炭素数12〜15のアルキル基、M=Na又はトリエタノールアミン、n=2〜4)
のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系界面活性剤を含有する請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
保存液が、着色剤を含有しない請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
保存液が、水溶性有機溶剤としてグリコールエーテルを保存液全重量に対して3〜10重量%含有する請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
保存液が、水溶性有機溶剤としてグリコールエーテルを保存液全重量に対して4〜7重量%含有する請求項12記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
保存液が、さらに次式
【化8】



(式中、R1,R2,R3及びR4=独立してアルキル基、m+n=0〜50)
のアセチレングリコール系界面活性剤を含有する請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク流路系に充填された水性インク又は保存液に、インク流路内で使用されるゴム部材に由来する不溶物が析出しないようにするインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、急激な加熱により気泡を発生させ、その時に生じる圧力により微細ノズルからインクの微小液滴を吐出させるサーマル方式、圧電素子を用いてインクの微小液滴を吐出させるピエゾ方式等のインク吐出方式により、記録紙等の被記録材にインクを付着させて記録を行う装置である。
【0003】
インクジェット記録装置において、インクタンクやインクジェットヘッドからなるインク流路系にはゴム部材が使用されており、このゴム部材としては、インクヘッドノズルを覆うキャップ、インクヘッドノズル端面を清浄するワイパー、部品の接合部分にかませるシールパッキン、インクタンクがインクジェットヘッドと別個に設けられている場合にはインクタンクからインクジェットヘッドへインクを供給するチューブ等がある。
【0004】
しかしながら、ゴム部材は、インクジェット記録で使用される水性インク(以下、インクとも言う)や、出荷時や長期保存時にインク流路系に充填される保存液に接すると、ゴム部材に含まれている添加物がインクや保存液中に溶出し、不溶物となって析出し、インクジェットヘッドのノズルを閉塞する等の問題を引き起こす。
【0005】
これに対しては、インク流路系で使用するゴム材料を密閉容器内で60℃の水中に所定期間浸漬し、溶出物の量を調べ、ゴム材料を選別するという方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2005−119288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インクや保存液中で析出する不溶物の種類や量は、インクや保存液の組成によっても異なり、インク流路系を形成するゴム部材に、特許文献1の方法で選別したゴム材料を使用しても、インクを吐出安定性の点から好ましい動的表面張力を有する組成に調整し、保存液を濡れ性やインクとの置換容易性の点から好ましい動的表面張力を有する組成に調整すると、不溶物の析出が問題となることがあった。
【0008】
このような従来技術の課題に対し、インクジェット記録装置において、吐出安定性の点から好ましい動的表面張力を有するインクを使用し、また、濡れ性やインクとの置換容易性の点から好ましい動的表面張力を有する保存液を使用しても、インク流路系内で使用されるゴム部材に由来する不溶物が析出しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、スルフェンアミド系加硫促進剤やチアゾール系加硫促進剤はエチレンプロピレンジエンゴムポリマーと相溶性が良く、したがって、インクジェット記録装置のインク流路系内で使用されるゴム部材をスルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤を用いたエチレンプロピレンジエンゴムから形成し、インクや保存液を特定の動的表面張力を有するように調製すると、インクや保存液によってゴムが膨潤することなく、インクや保存液中でゴム部材に由来する不溶物の析出を顕著に低減でき、インクに吐出安定性を付与し、保存液に良好な濡れ性やインクとの置換容易性を付与できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、インク流路系に水性インク又は保存液が充填されるインクジェット記録装置において、
インク流路系内で使用されるゴム部材が、スルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤を用いたエチレンプロピレンジエンゴムからなり、
水性インクが、少なくとも着色剤、水及び水溶性有機溶剤を含有し、最大泡圧法による測定温度25℃、ライフタイム100msにおける動的表面張力が35〜45mN/mであり、保存液が、少なくとも水及び水溶性有機溶剤を含有し、最大泡圧法による測定温度25℃のライフタイム100msにおける動的表面張力が30〜35mN/mであることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクジェット記録装置は、インク流路系内で使用されるゴム部材が、スルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤を用いたエチレンプロピレンジエンゴムからなり、ゴムベースポリマーであるエチレンプロピレンジエンゴムポリマーと加硫促進剤との相溶性が良く、ブルームが起こりにくい。また、このインクジェット記録装置で使用するインクや保存液は特定の動的表面張力を有するので、過度にゴムに浸透することがない。したがって、ゴムから加硫促進剤等の添加剤がインクや保存液中に溶出することを低減させることができる。よって、本発明によれば、ゴムに由来する不溶物が、インク流路系に充填されたインクや保存液中に析出することを防止できる。
【0012】
また、インクが特定の動的表面張力を有するので、インクの吐出安定性が良好であり、また、保存液が特定の動的表面張力を有するので、保存液のインク流路系内での濡れ性やインクとの置換容易性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のインクジェット記録装置は、インク流路系内の一部で使用されるゴム部材が、スルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤を用いたエチレンプロピレンジエンゴムからなり、インクジェット記録装置で使用されるインクや保存液がそれぞれ特定の動的表面張力を有する組成に調製されていることを特徴としており、これ以外のインクジェット記録装置の構成は、公知のインクジェット記録装置と同様とすることができる。インク吐出方式に関しても制限はなく、サーマル方式、ピエゾ方式、その他任意の方式とすることができる。
【0015】
インクジェット記録装置において、インク流路系内の一部で使用されるゴム部材としては、インクジェットヘッドのノズルを覆うキャップ、インクジェットヘッドのノズル端面を清浄するワイパー、インクタンクがインクジェットヘッドと別個に設けられている場合にはインクタンクからインクジェットヘッドへインクを供給するチューブ、特願2004−207208号明細書に開示されたようなバッファタンクとヘッドユニットとの間に挟持される弾性部材であるシールパッキン等がある。
【0016】
このようなゴム部材のゴムベースポリマーとしては、スルフェンアミド系加硫促進剤やチアゾール系加硫促進剤との相溶性に優れ、また、摺動性にも優れる点から次式


【0017】
【化1】


(式中、Xは、エチリデンノルボルネン,ジシクロペンタジエン,1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン化合物を表す。)
で示されるエチレンプロピレンジエンゴムポリマー(EPDM)を使用する。このエチレンプロピレンジエンゴムポリマーとしては、市販品を使用することができ、例えば、JSR(株)製EP331、住友化学(株)製エスプレン(登録商標)505等をあげることができる。
【0018】
加硫剤としては、酸化亜鉛、硫黄、有機過酸化物等を単独で又は複数種を組み合わせて使用することができ、中でも酸化亜鉛と硫黄を併用することが加硫速度を速められる点から好ましい。
【0019】
加硫剤の配合量は、使用する加硫剤の種類にもよるが、例えば、酸化亜鉛の場合、ゴムベースポリマー100重量部に対して2.5〜7.5重量部とすることが好ましい。加硫剤の配合量が少なすぎると加硫が不充分なためにゴム部材がインクや保存液によって膨潤しやすく、多すぎるとインクや保存液中で不溶物が析出しやすくなる。
【0020】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤のいずれか一方又は双方を使用する。スルフェンアミド系加硫促進剤やチアゾール系加硫促進剤はエチレンプロピレンジエンゴムポリマーとの相溶性が良いため、これを用いたゴム部材がインクや保存液と接したときに、ゴム部材からこれらが溶出することを防止できる。
【0021】
このうち、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、分子量が200〜350のものが好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤は、硫黄を放出して架橋を促進させるものである。一方、本発明においてゴム部材を形成するゴムベースポリマーは極性の低いエチレンプロピレンジエンゴムポリマーである。このため、スルフェンアミド系加硫促進剤の分子量が低すぎると硫黄を放出した後のスルフェンアミド系加硫促進剤で分子内極性が高まり、エチレンプロピレンジエンゴムポリマーとの相溶性が低下する。反対に、スルフェンアミド系加硫促進剤の分子量が高すぎると、スルフェンアミド系加硫促進剤の一定量あたりの硫黄放出量が減るため、加硫促進剤として充分に機能しなくなる。
【0022】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、次式1
【0023】
【化2】


の化合物を使用することができ、より具体的には次式1a

【0024】
【化3】


のN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(M.W.=264)、次式1b
【0025】
【化4】


のN−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(M.W.=252)、次式1c
【0026】
【化5】


のN−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(M.W.=238)、次式1d
【0027】
【化6】


のN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(M.W.=346)等をあげることができる。
【0028】
中でも、式1aのN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドや式1bのN−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが加硫速度を速めるため好ましい。
【0029】
一方、チアゾール系加硫促進剤としては、分子量が150〜400のものが好ましい。チアゾール系加硫促進剤もスルフェンアミド系加硫促進剤と同様に硫黄を放出して架橋を促進させるものであるため、前述のように、その分子量が低すぎると硫黄を放出した後のチアゾール系加硫促進剤で分子内極性が高まり、エチレンプロピレンジエンゴムポリマーとの相溶性が低下する。反対に、チアゾール系加硫促進剤の分子量が高すぎると、チアゾール系加硫促進剤の一定量あたりの硫黄放出量が減るため、加硫促進剤として充分に機能しなくなる。
【0030】
チアゾール系加硫促進剤としては、次式2
【0031】
【化7】


の化合物を使用することができ、より具体的には、次式2a
【0032】
【化8】


の2−メルカプトベンゾチアゾール(M.W.=167)、次式2b
【0033】
【化9】


の2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(M.W.=397)、次式2c
【0034】
【化10】


のジベンゾチアジルジスルフィド(M.W.=332)、次式2d
【0035】
【化11】


の(2,4−ジニトロフェニル)−2−メルカプトベンゾチアゾール(M.W.=333)、次式2e
【0036】
【化12】



の(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール(M.W.=282)等を挙げることができる。
【0037】
中でも、式2aの2−メルカプトベンゾチアゾールや式2bの2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩が加硫速度を速めるため好ましい。
【0038】
スルフェンアミド系加硫促進剤又はチアゾール系加硫促進剤の好ましい配合量は、適度な加硫速度が得られる点から、これらの合計量がゴムベースポリマー100重量部に対して、1〜3重量部が好ましい。加硫促進剤の配合量が少なすぎると加硫形成時間を長くする必要があるため生産効率が低下し、多すぎるとインクや保存液中への溶出量が多くなり、インクや保存液中で析出するおそれが生じるので好ましくない。
【0039】
ゴム組成には、上述の加硫剤、加硫促進剤の他、必要に応じて種々の添加剤を配合することができ、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、酸化マグネシウム等の滑剤;カーボンブラック、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等の補強剤;パラフィンオイル等の軟化剤;老化防止剤;スコーチ防止剤等をあげることができる。
【0040】
以上のゴムベースポリマーからゴム部材を製造する方法としては、バンバリーミキサー、ニーダー、2本ロール等の混練り機器を使用して混練りし、ゴムの加熱成形工程は、通常140〜200℃で5〜15分間の加熱を行う。特に、加硫剤として有機過酸化物を使用する場合には、160〜180℃、5〜13分で加熱成形後、さらに100〜150℃、1〜24時間で加熱処理することが好ましい。これにより、未反応の有機過酸化物等を分解除去することができ、硬度を若干高めることができる。なお、加熱成形後の加熱処理を過度に高い温度及び/又は長時間行うとゴムが焦げ付くので好ましくない。
【0041】
一方、インクジェット記録装置のインク流路系において、上述のゴム部材と接することとなるインクとしては、少なくとも着色剤、水及び水溶性有機溶剤を含有し、最大泡圧法による測定温度25℃、ライフタイム100msにおける動的表面張力が35〜45mN/mのものを使用する。
【0042】
最大泡圧法による測定温度25℃、ライフタイム100msにおける動的表面張力を35〜45mNとすることにより、インクにインクジェットヘッドからの吐出安定性を付与することができる。この動的表面張力が35mN/m未満であると、インクジェットヘッドのノズルで望ましいメニスカスが形成されず、微小液滴としてインクを吐出させることが困難となる。また、紙等の被記録材に対するインクの濡れ性も過剰となり、印字品質の低下が引き起こされる。反対に45mN/mを超えると、インクジェットヘッドにインクを導入することが困難となり、インクの不吐出の問題が生じる。
【0043】
なお、動的表面張力は、一般に振動ジェット法、メニスカス法、最大泡圧法等によって測定されることは知られているが、本発明で規定する動的表面張力の値は、最大泡圧法(バブルプレッシャー法)によるものである。
【0044】
最大泡圧法による動的表面張力測定では、気体供給源から気体をプローブに送り、インクに浸したプローブ先端から気泡を発生させる。この際の気体流量を変化させることで、気体発生速度を変え、それに伴い変化するインクからその気泡にかかる圧力により表面張力を測定する。気泡の半径がプローブ先端部分の半径に等しくなるとき、最大圧力(最大泡圧)を示す。このときのインクの動的表面張力σは、





【0045】
【数1】


(式中、rはプローブ先端部分の半径、
ΔPは気泡にかかる圧力の最大値と最小値との差である。)
で表される。
【0046】
また、ライフタイムとは、最大泡圧後に気泡がプローブから離れて、新しい表面が形成されてから次の最大泡圧に達するまでの時間をいう。
【0047】
インクに含まれる水や水溶性有機溶剤の配合組成は、上述の動的表面張力が満たされるように、調整する。
【0048】
具体的には、水溶性有機溶剤として、グリコールエーテルを使用することが好ましい。グリコールエーテルは、動的表面張力を低下させ、紙等の被記録材におけるインク浸透速度を適度に速め、乾燥性を向上させる。
【0049】
グリコールエーテルの具体例としては、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等があげられる。中でも、動的表面張力の調整能力に優れ、かつ印字品質にも優れる点から、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル等が好ましい。これらは、1種類又は2種類以上を混合して使用してもよい。
【0050】
グリコールエーテルの好ましい含有量はインク全重量に対して0.1〜10重量%、より好ましくは4〜7重量%である。グリコールエーテルの含有量が少なすぎると動的表面張力が過度に高くなるため、インクジェットヘッドへのインクの導入性が悪く、またインクの被記録材への浸透速度が遅く、乾燥時間やブリーデイングに問題をきたすため好ましくない。一方、グリコールエーテルの含有量が多すぎると動的表面張力が過度に低くなるため、インクジェットヘッドのノズルで望ましいメニスカスが形成できず、またゴム部材の膨潤を引き起こし、さらにまたインクが被記録材へ過度に浸透し、被記録材の裏面までインクが到達したり、滲みが著しくなるため好ましくない。
【0051】
水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテルの他、ノズルにおけるインクの乾燥を防止し、インクの液安定性を向上させる湿潤剤を任意で添加してもよい。湿潤剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物等をあげることができる。これらは、1種類又は2種類以上を混合して使用してもよい。
【0052】
湿潤剤の含有量は、インク組成又は所望とされるインク特性に依存して広い範囲で決定されるが、通常、各インク全重量に対して0重量%〜40重量%が好ましく、0重量%〜30重量%がより好ましい。40重量%を超えるとインクの粘度が必要以上に高くなることにより、インクジェットヘッドのノズルから吐出困難となったり、被記録材上で乾燥が極端に遅くなったりする等の問題を生じることがあるため好ましくない。
【0053】
また、インクの被記録材への浸透性、乾燥性を制御する目的で、エタノール、イソプロ
ピルアルコール等の1価のアルコールを使用してもよい。
【0054】
一方、インクに含まれる水は、水中に含まれる不純物によるノズル及びインクフィルター等の目詰まりを防ぐために、一般の水道水ではなく、イオン交換水、蒸留水及び超純水等の純度の高いものを使用するのが好ましい。水の好ましい含有量はインク全重量に対して10〜98重量%、より好ましくは30〜97重量%、さらに好ましくは40〜95重量%である。
【0055】
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料及び反応性染料等に代表される水溶性染料や、種々の無機顔料、有機顔料を使用することができる。さらに、顔料を表面処理した自己分散型顔料も使用することができる。
【0056】
本発明のインクジェット記録用装置で使用するインクには、上述の着色剤、水及び水溶性有機溶剤の他、任意成分として、一般に用いられる分散剤、粘度調整剤、界面活性剤、pH調整剤及び防腐防カビ剤等を必要に応じて添加してもよい。例えば、界面活性剤としては、印字品質が優れ、かつインクの導入性に優れている点から、次式のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系界面活性剤
【0057】
【化13】


(式中、R=炭素数12〜15のアルキル基、M=Na又はトリエタノールアミン、n=2〜4)
を使用することが好ましく、この市販品としては、ライオン(株)製サンノール(登録商標)NL−1430、LMT−1430及びDM−1470;花王(株)製エマール(登録商標)20C、20CM及び20T;三洋化成工業(株)製サンデット(登録商標)EN、ET及びEND等をあげることができる。また、熱エネルギーの作用によってインクを吐出させるサーマル方式のインクジェットプリンターに適用する場合には、比熱、熱膨張係数及び熱電導率等の熱的な物性値を調整する添加剤を使用してもよい。
【0058】
なお、従来のインクジェット記録装置では、以上の成分から動的表面張力を35〜45mN/mに調整したインクは、インク中で加硫促進剤等に由来する不溶物が析出するためインクフィルターを閉塞させ、インクジェットヘッドのノズルの不吐出を生じさせていたが、本発明のインクジェット記録装置では、このような問題が解消される。
【0059】
本発明のインクジェット記録装置で使用する保存液は、上述のインクと同様の水、及びグリコールエーテル等の水溶性有機溶剤から調製されるが、着色剤は省略することができる。また、最大泡圧法による測定温度25℃、ライフタイム100msにおける動的表面張力は30〜35mN/mに調整する。この動的表面張力が30mN/m未満であると、ゴム部材に対する保存液の濡れ性が過剰となり浸透性も過剰となるため、加硫促進剤等の添加剤がゴム部材から溶出し、保存液中で析出しやすくなる。また、ゴム部材の膨潤も問題となる。反対に、35mN/mを超えると、インクジェットヘッド内へのインクの初期導入時に、保存液からインクへの置換が円滑に行われなくなる。
【0060】
保存液において、このような動的表面張力が満たされるようにするため、グリコールエーテルの含有量は保存液全重量に対して3〜10重量%とすることが好ましく、4〜7重量%とすることがより好ましい。また、インクの導入性に優れている点から、次式のアセチレングリコール系界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0061】
【化14】



(式中、R1,R2,R3及びR4=独立してアルキル基、m+n=0〜50)
【0062】
この市販品としては、日信化学工業(株)製オルフィン(登録商標)E1010及びE1004、サーフィノール(登録商標)104E等をあげることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0064】
(1)インク及び保存液の調製
インク及び保存液の組成は表1に示す通りとし、各成分を撹拌混合することによりインク1〜5、保存液1〜4を得た。なお、表1の組成は、実際の各成分の配合量を重量%で示したものである。
【0065】
(2)インク及び保存液の動的表面張力の測定
インク及び保存液の最大泡圧法による動的表面張力を、協和界面科学(株)製自動動的表面張力計BP−D4を用いて、測定温度25℃、ライフタイム20ms〜5000msの範囲で測定し、ライフタイム100msの動的表面張力の測定値を読み取った。この結果を表1に示す。
【0066】
(3)インクの吐出性能評価
インクを所定のインクカートリッジに充填し、同じインクがインク流路系内に既に充填されているブラザー工業(株)製インクジェットプリンター搭載デジタル複合機MFC−5200Jに装着し、インク流路系内に生じた気泡を取り除くメンテナンス作業を行い、メンテナンス作業の終了直後の初期吐出における吐出不良ノズルの全ノズルに対する割合を確認し、以下の基準で評価した。この結果を表3に示す。
○…初期吐出における吐出不良ノズルの割合が10%以下
×…初期吐出における吐出不良ノズルの割合が10%を超える
【0067】
(4)ゴムシートの作製
表2のゴム組成に従って各材料を順次、ゴムミキサー内に投入して混練し、排出した。これを2軸押し出し機によりシート状に押し出し、金型に投入し加熱成形(170℃、10分)した。その後、表2に基づき加熱処理を行い、ゴムシート1〜6を得た。
【0068】
(5)ゴムの析出評価
(4)で作製したゴムシートを縦50mm×横10mm×厚さ2mmの寸法に加工し、評価用サンプルとした。
【0069】
表3、表4の実験例A−1〜A−30、B−1〜B−24の組み合わせで、密閉容器内で10mLのインク又は保存液に前記サンプルを1枚浸漬し、60℃の恒温槽に2週間放置した。その後、浸漬したサンプルを取り出し、サンプルを取り出した後のインク又は保存液を電鋳フィルター(孔径13μm、有効ろ過面積8cm)でろ過し、ろ過に要する時間を計測した。また、対照として、サンプルを加えないインク又は保存液のみを同条件(60℃、2週間)で放置し、同一規格の電鋳フィルターでろ過し、ろ過に要する時間(基準時間)を求めた。サンプルを浸漬させたインク又は保存液のろ過に要した時間の基準時間に対する割合を求め、以下の基準で評価した。結果を表3、表4に示す。
◎…基準時間の130%未満のろ過時間を要する
○…基準時間の130%以上200%未満のろ過時間を要する
△…基準時間の200%以上400%未満のろ過時間を要する
×…基準時間の400%以上のろ過時間を要する
【0070】
なお、ろ過後の電鋳フィルターを顕微鏡観察したところ、上述のろ過時間の基準時間に対する割合が大きいほど、析出物の量が多かった。
【0071】
(6)ゴムの重量変化評価
(5)でインク又は保存液に浸漬(60℃、2週間)したゴムサンプルについて、浸漬前後の重量を測定し、その重量変化率により次の基準で評価した。結果を表3、表4に示す。
○…重量変化率が0〜5%
×…重量変化率が0%未満であるか、5%を超える
【0072】
なお、重量変化率が0%未満はインク又は保存液へのゴムの溶解を意味し、5%超はゴムの過膨潤を意味し、いずれも実使用において吐出不良が懸念されることとなる。
【0073】
(7)導入性評価
保存液3をインクジェットヘッド内へ導入後、インクを所定のインクカートリッジに充填し、ブラザー工業(株)製インクジェットプリンター搭載デジタル複合機MFC−5200Jに装着し、インク流路系内に生じた気泡を取り除くメンテナンス作業を行い、メンテナンス作業の終了直後の初期吐出においてインクが保存液に置換できたインク吐出ノズルの全ノズルに対する割合を確認し、以下の基準で評価した。この結果を表4に示す。
○…初期吐出におけるインク吐出ノズルの割合が90%以上
×…初期吐出におけるインク吐出ノズルの割合が90%未満












【0074】
【表1】





【0075】
【表2】




【0076】
【表3】












【0077】
【表4】


【0078】
表3、表4の結果から、チウラム系加硫促進剤を使用したゴムサンプル5及びジチオカルバメート系加硫促進剤を使用したゴムサンプル6はいずれのインク及び保存液に対しても析出評価が劣っているのに対し、スルフェンアミド系加硫促進剤を使用したゴムサンプル1及び2や、チアゾール系加硫促進剤を使用したゴムサンプル3及び4ではインク1〜5及び保存液1〜3を使用した場合に析出評価が良好であった。しかし、保存液4はグリコールエーテルの含有量が多く、動的表面張力が30未満であるため、全てのゴムサンプルで析出評価が劣っていた。
【0079】
また、インク1と保存液4は、グリコールエーテルの含有量が多いため、濡れ性が過剰となり浸透性も過剰となるため、ゴムサンプルが膨潤し、重量変化の評価が劣っていた。保存液1は、動的表面張力が35mN/mを超えるため、導入性評価が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、インク又は保存液を充填した状態で、析出物による性能劣化をきたさないインクジェット記録装置として有用である。




 

 


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