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発明の名称 気泡捕捉装置、液体移送装置及びインクジェット記録装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−38658(P2007−38658A)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
出願番号 特願2006−179190(P2006−179190)
出願日 平成18年6月29日(2006.6.29)
代理人 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
発明者 菅原 宏人
要約 課題
フィルタの表面において、確実に気泡を捕捉するとともに、表面に付着した気泡を確実に除去する。

解決手段
インク供給流路内に設けられたフィルタ13は、複数の貫通孔13aが形成された導電性基材52の表面に、表面の濡れ性が低い絶縁層53が形成された構造となっており、導電性基材52の電位はドライバICにより制御可能となっている。インク供給流路内のインクに接触するインク供給口12が形成された振動板40はグランド電位に保持されている。インクジェット記録装置において記録を行う際には、導電性基材52の電位がグランド電位になるように制御される。インクジェット記録装置においてパージを行う際には、導電性基材52の電位が所定電位になるように制御され、エレクトロウェッティング現象により絶縁層53の表面の濡れ性が高くなる。
特許請求の範囲
【請求項1】
液体流路内に配置されるフィルタを含み、前記液体流路内を流れる液体に含まれる気泡を捕捉する気泡捕捉装置であって、
表面に導電性を有する導電性領域が形成され、且つ、液体を通過させる複数の貫通孔が形成された基材を有するフィルタと、
前記フィルタの前記導電性領域の電位を制御する電位制御機構とを備える気泡捕捉装置。
【請求項2】
さらに、前記基材の前記導電性領域を覆う絶縁層を備える請求項1に記載の気泡捕捉装置。
【請求項3】
前記液体は、前記液体流路内を流れる導電性の液体であり、前記フィルタは前記導電性の液体に含まれる気泡を捕捉する請求項1に記載の気体捕捉装置。
【請求項4】
さらに、前記フィルタの前記絶縁層の表面において前記液体中の気泡を捕捉する気泡捕捉モードと、前記フィルタの前記絶縁層の表面において捕捉された気泡を解放する気泡解放モードとを選択的に設定するモード設定装置を備え、
前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記液体流路内を流れる前記液体との間の電位差を、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記液体流路内を流れる前記液体との間の電位差よりも小さくなるように、前記導電性領域の電位を制御する請求項2に記載の気泡捕捉装置。
【請求項5】
さらに、前記液体流路内を流れる前記液体を所定の基準電位に保持する定電位保持機構を備える請求項4に記載の気泡捕捉装置。
【請求項6】
前記液体流路が導電性材料を含む流路部材により形成されており、前記定電位保持機構が、前記流路部材を接地する接地機構を備えている請求項5に記載の気泡捕捉装置。
【請求項7】
前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されている場合における前記導電性領域の電位と前記基準電位との間の電位差が、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されているときにおける前記導電性領域の電位と前記基準電位との間の電位差よりも大きくなるように前記導電性領域の電位を制御する請求項5に記載の気泡捕捉装置。
【請求項8】
前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されているときには、前記フィルタの前記導電性領域と前記基準電位とが同じ電位になるように前記導電性領域の電位を制御し、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されているときは、前記フィルタの前記導電性領域の電位が前記基準電位とは異なる電位になるように前記導電性領域の電位を制御する請求項5に記載の気泡捕捉装置。
【請求項9】
前記基材が、金属材料により形成されている請求項1に記載の気泡捕捉装置。
【請求項10】
前記基材が、前記複数の貫通孔が形成された絶縁部材と、前記絶縁部材の表面に形成されて、前記導電性領域を形成する電極とを有する請求項1に記載の気泡捕捉装置。
【請求項11】
前記電極が、前記絶縁部材に形成された前記貫通孔を画成する面に形成されている請求項10に記載の気泡捕捉装置。
【請求項12】
前記絶縁部材の表面が平面状であり、前記平面状の前記絶縁部材の表面に前記電極が形成されている請求項11に記載の気泡捕捉装置。
【請求項13】
前記貫通孔の断面積は、前記貫通孔が延在する方向の一方側に向かって小さくなっている請求項1に記載の気泡捕捉装置。
【請求項14】
前記基材には、前記基材の前記表面に一様に分布する前記複数の貫通孔が形成されている請求項1に記載の気泡捕捉装置。
【請求項15】
前記絶縁層は、フッ素樹脂により形成されている請求項2に記載の気泡捕捉装置。
【請求項16】
液体が流れる液体流路と、請求項1に記載の気泡捕捉装置とを備える液体移送装置。
【請求項17】
インクを吐出するインクジェット記録装置であって、
前記インクを供給するインク供給源と、
複数のインク吐出口と、
これら複数のインク吐出口に連通する共通液室と、
前記複数のインク吐出口と前記共通液室とにそれぞれ連通する複数の個別インク流路と、
これら複数の個別インク流路のそれぞれに対応して設けられ、且つ、インクに吐出エネルギーを付与するエネルギー付与機構と、
前記インク供給源から前記共通液室に前記インクを供給するインク供給流路と、
前記インク供給流路内に配置されるフィルタであって、表面の一部に導電性を有する導電性領域が形成された基材を有し、前記インクを通過させる複数の貫通孔が形成されたフィルタと、
前記フィルタの前記導電性領域の電位を制御する電位制御機構とを備えているインクジェット記録装置。
【請求項18】
さらに、前記フィルタは前記基材の前記導電性領域を覆う絶縁層を備える請求項17に記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
さらに、前記フィルタの前記絶縁層の表面において前記インク中の気泡を捕捉する気泡捕捉モードと、前記フィルタの前記絶縁層の表面において捕捉された気泡を解放する気泡解放モードとを選択的に設定するモード設定装置を備え、
前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記インク供給流路内を流れる前記インクとの間の電位差を、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記インク供給流路内を流れる前記インクとの間の電位差よりも小さくなるように、前記導電性領域の電位を制御する請求項17に記載のインクジェット記録装置
【請求項20】
さらに、前記インク及び前記気泡を吸引する吸引装置並びに前記インク吐出口を覆うキャップを有するパージ機構と、前記パージ機構の動作を制御するパージ制御装置とを備え、前記パージ制御装置が前記パージ機構を制御してパージするときに、前記モード設定装置は前記気泡解放モードに設定される請求項19に記載のインクジェット記録装置。
【請求項21】
さらに、前記パージ制御装置が前記パージ機構を制御してパージを終了するときに、前記モード設定装置は前記気泡捕捉モードに設定される請求項20に記載のインクジェット記録装置。
【請求項22】
前記貫通孔に収まる内接円の最小径が、前記吐出口に収まる内接円の径よりも小さい請求項17に記載のインクジェット記録装置。


発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の気泡を捕捉する気泡捕捉装置、気泡捕捉装置を有し、液体を移送する液体移送装置、及び、ノズルからインクを吐出して記録媒体に画像などを記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルに連通する圧力室内のインクに圧力を付与し、ノズルからインクを吐出させて記録媒体に画像及び/又は文字を記録するインクジェット記録装置において、インク中に混入した異物によるノズルの目詰まりやインク中の気泡による圧力室内の圧力のばらつきによって記録品質が低下するのを防止するために、インク流路内にインク中に混入した異物及び気泡を捕捉するためのフィルタが設けられたものがある。このようなインクジェット記録装置では、フィルタにおいて捕捉された気泡は、記録を行わないときにインクジェットヘッドをパージすることにより装置の外部に排出されるが、フィルタの表面の濡れ性が低いと、パージしてもフィルタの表面に気泡が残留してしまい、フィルタが目詰まりする虞がある。
【0003】
このような問題を解決するために、技術文献1(特開2004−114648号公報の図6に対応)に示されるインクジェット記録装置においては、マニホールドにインクを供給するバッファタンクにフィルタが設けられており、フィルタの表面にはプラズマ加工が施されて、表面の濡れ性が高くなっている。これによると、フィルタの表面に気泡が残留しにくく、インクジェットヘッドのパージを行うことにより確実に気泡を排出することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−114648号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、技術文献1に記載のインクジェット記録装置においては、フィルタの表面の濡れ性が高いため、記録する際にもフィルタに気泡が付着しにくく、記録する際に確実に気泡を捕捉することができない虞がある。
【0006】
本発明の目的は、表面において気泡を確実に捕捉することができ、且つ、表面に付着した気泡を確実に取り除くことができるようなフィルタを備えた液体移送装置、インクジェット記録装置及び気泡捕捉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、液体流路内に配置されるフィルタを含み、前記液体流路内を流れる液体に含まれる気泡を捕捉する気泡捕捉装置であって、表面の一部に導電性を有する導電性領域が形成され、且つ、液体を通過させる複数の貫通孔が形成された基材を有するフィルタと、前記フィルタの前記導電性領域の電位を制御する電位制御機構とを備える気泡捕捉装置が提供される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、電位制御機構により、導電性領域と液体との間の電位差が小さくなるように導電性領域の電位が制御されている場合には、導電性領域の表面において液体中の気泡が確実に捕捉されるため、気泡がフィルタの下流側に流れ込むのが防止される。一方、電位制御機構により導電性領域と液体との間の電位差が大きくなるように導電性領域の電位が制御されている場合には、後述するエレクトロウェッティング現象が生じて、導電性領域の表面の濡れ性が高くなる。その結果、導電性領域の表面に付着した気泡が確実に取り除かれるため、気泡によりフィルタが目詰まりするのが防止される。なお、エレクトロウェッティング現象の詳細は特開2003−177219号公報にも記載されている。
【0009】
本発明の気泡捕捉装置において、さらに、前記基材の前記導電性領域を覆う絶縁層を備えてもよい。このように、導電性領域を表面の濡れ性が低い(撥液性が高い)絶縁層で覆うことによって、導電性領域と液体との間の電位差が小さい場合には、液体中の気泡を確実に絶縁層の表面に付着させることができる。また、導電性領域と液体との間に所定の電圧がかけられている場合には、後述するエレクトロウェッティング現象により、電圧が印加されている導電性領域を覆う部分の絶縁層の表面の濡れ性が高くなるため、付着した気泡を確実に開放することができる。また、導電性領域を絶縁層で覆うことにより、導電性領域と液体との間に所定の電圧を印加した際に、導電性領域と液体との間に流れる電流を減らすことができる。従って、消費電力を抑えることができるとともに、導電性領域に印加する電圧を高くすることができる。
【0010】
本発明の気泡捕捉装置において、前記液体は、前記液体流路内を流れる導電性の液体であり、前記フィルタは、前記導電性の液体に含まれる気泡を捕捉してもよい。この場合には、液体は導電性を有しているので、液体全体が同電位とすることができる。
【0011】
本発明の液体移送装置においては、前記フィルタの前記絶縁層の表面において前記液体中の気泡を捕捉する気泡捕捉モードと、前記フィルタの前記絶縁層の表面において捕捉された気泡を解放する気泡解放モードとを選択的に設定するモード設定装置を備え、前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記液体流路内を流れる前記液体との間の電位差を、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記液体流路内を流れる前記液体との間の電位差よりも小さくなるように、前記導電性領域の電位を制御してもよい。これによると、モード設定装置を気泡捕捉モードに設定することにより、絶縁層の表面において、液体中の気泡を確実に捕捉することができ、モード設定装置を気泡解放モードに設定することにより、絶縁層の表面において捕捉された液体中の気泡を確実に開放して、絶縁層の表面から取り除くことができる。
【0012】
また、本発明の液体移送装置においては、さらに、前記液体流路内を流れる液体を所定の基準電位に保持する定電位保持機構を備えていてもよい。これによると、液体の電位が常に一定の基準電位に維持されているため、電位制御機構による電位の制御が容易になる。
【0013】
本発明の気泡捕捉装置において、液体流路が導電性材料を含む流路部材により形成され、定電位保持機構が、流路部材を接地する接地機構を備えていてもよい。これによると、液体流路内に別途電極などを設けることなく液体の電位をグランド電位にすることができるので、装置の構成が簡単になる。
【0014】
本発明の気泡捕捉装置において、前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されている場合における前記導電性領域の電位と前記基準電位との間の電位差が、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されているときにおける前記導電性領域の電位と前記基準電位との間の電位差よりも大きくなるように前記導電性領域の電位を制御してもよい。これによると、モード設定装置が気泡解放モードに設定されているときには、気泡捕捉モードに設定されているときよりも、絶縁層の表面の濡れ性が高くなるので、気泡捕捉モード時に絶縁層の表面において捕捉した気泡を、気泡解放モードにおいて確実に取り除くことができる。
【0015】
また、本発明の気泡捕捉装置においては、前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されているときには、前記フィルタの前記導電性領域と前記基準電位とが同じ電位になるように前記導電性領域の電位を制御し、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されているときは、前記フィルタの前記導電性領域の電位が前記基準電位とは異なる電位になるように前記導電性領域の電位を制御してもよい。これによると、電位制御機構は、モード設定装置が気泡捕捉モードが設定されているときには導電性領域を基準電位にし、モード設定装置が気泡解放モードに設定されているときには導電性領域を基準電位とは異なる電位にするように制御すればよいので、電位の制御が容易になる。
【0016】
また、本発明の気泡捕捉装置においては、基材が金属材料により形成されていてもよい。これによると、電鋳、プレスなどの方法により貫通孔を容易に形成することができる。
【0017】
また、本発明の気泡捕捉装置においては、前記基材が、前記複数の貫通孔が形成された絶縁部材と、前記絶縁部材の表面に形成されて、前記導電性領域を形成する電極とを有していてもよい。これによると、絶縁部材にレーザ加工などにより精度よく貫通孔を形成することができる。
【0018】
本発明の気泡捕捉装置においては、前記電極が、前記絶縁部材に形成された前記貫通孔を画成する面に形成されていてもよい。これによると、電極と液体との間の電位差を大きくして、絶縁部材の貫通孔を画成する面の濡れ性を大きくさせることにより、貫通孔を画成する面において捕捉された液体中の気泡を確実に取り除くことができるため、気泡により貫通孔が目詰まりするのを確実に防止することができる。
【0019】
本発明の気泡捕捉装置においては、前記絶縁部材の表面が平面状であり、前記平面状の前記絶縁部材の表面に前記電極が形成されていてもよい。これによると、電極が形成される面が平面状であるので、電極を容易に形成することができる。
【0020】
本発明の気泡捕捉装置においては、前記貫通孔の断面積は、前記貫通孔が延在する方向の一方側に向かって小さくなっていてもよい。これによると、例えば前記貫通孔が延在する方向の一方側を、流路の下流側に向けて配置した場合に、液体がフィルタの下流側から上流側に逆流するのを低減させることができる。
【0021】
また、本発明の気泡捕捉装置においては、前記基材には、前記基材の前記表面に一様に分布する前記複数の貫通孔が形成されていてもよい。これによると、基材の全面において気泡を効率よく捕捉することができる。
【0022】
本発明の気泡捕捉装置において、前記絶縁層はフッ素樹脂により形成されていてもよい。フッ素樹脂製の絶縁層で基材の導電性領域を覆うことによって、導電性領域に電圧を印加しない場合には、絶縁層の表面の濡れ性を十分低くし、導電性領域に所定の電圧を印加した場合には、絶縁層の表面の濡れ性を十分高くすることができる。
【0023】
本発明の第2の態様に従えば、液体が流れる液体流路と、本発明の気泡捕捉装置とを備える液体移送装置が提供される。本発明の第2の態様によれば、液体移送装置によって移送される液体に含まれる気泡を十分に取り除くことができる。また、気泡捕捉装置のフィルタに捕捉された気泡は、必要に応じて開放することもできるので、フィルタが気泡により目詰まりする恐れはない。
【0024】
本発明の第3の態様に従えば、インクを吐出するインクジェット記録装置であって、前記インクを供給するインク供給源と、複数のインク吐出口と、これら複数のインク吐出口に連通する共通液室と、前記複数のインク吐出口と前記共通液室とにそれぞれ連通する複数の個別インク流路と、これら複数の個別インク流路のそれぞれに対応して設けられ、且つ、インクに吐出エネルギーを付与するエネルギー付与機構と、前記インク供給源から前記共通液室に前記インクを供給するインク供給流路と、前記インク供給流路内に配置されるフィルタであって、表面の一部に導電性を有する導電性領域が形成された基材を有し、前記インクを通過させる複数の貫通孔が形成されたフィルタと、前記フィルタの前記導電性領域の電位を制御する電位制御機構とを備えているインクジェット記録装置が提供される。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、記録を行うときには導電性領域とインクとの間の電位差を小さくして、導電性領域の表面においてインク中の気泡を捕捉することにより、個別インク流路及び共通液室に気泡が流れ込むのが防止され、インクの吐出量、吐出速度などのばらつきが低減される。さらに、パージを行うときには導電性領域とインクとの間の電位差を大きくしてエレクトロウェッティング現象を生じさせることにより、導電性材料の表面において捕捉された気泡を取り除くことができ、パージを行った後に導電性材料の表面に気泡が残留しにくくなり、気泡によるフィルタの目詰まりが防止される。
【0026】
本発明のインクジェット記録装置において、さらに前記フィルタは前記基材の前記導電性領域を覆う絶縁層を備えてもよい。絶縁層として表面の濡れ性が低いものを用いると、導電性領域とインクとの間の電位差を小さくした場合に、絶縁層の表面においてインク中の気泡を確実に捕捉することができる。また、導電性領域と液体との間に所定の電圧がかけられている場合には、後述するエレクトロウェッティング現象により、電圧が印加されている導電性領域を覆う部分の絶縁層の表面の濡れ性が高くなるため、付着した気泡を確実に開放することができる。さらに、導電性領域を絶縁層で覆うことにより、導電性領域と液体との間に所定の電圧を印加した際に、導電性領域と液体との間に流れる電流を減らすことができる。従って、消費電力を抑えることができるとともに、導電性領域に印加する電圧を高くすることができる。
【0027】
また、本発明のインクジェット記録装置においては、さらに、前記フィルタの前記絶縁層の表面において前記インク中の気泡を捕捉する気泡捕捉モードと、前記フィルタの前記絶縁層の表面において捕捉された気泡を解放する気泡解放モードとを選択的に設定するモード設定装置を備え、前記電位制御機構は、前記モード設定装置が前記気泡捕捉モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記インク供給流路内を流れる前記インクとの間の電位差を、前記モード設定装置が前記気泡解放モードに設定されている場合における前記導電性領域と前記インク供給流路内を流れる前記インクとの間の電位差よりも小さくなるように、前記導電性領域の電位を制御してもよい。これによると、モード設定装置を気泡捕捉モードに設定することにより、フィルタにおいて気泡を捕捉することができ、モード設定装置を気泡解放モードに設定することにより、フィルタにおいて捕捉された気泡を取り除くことができる。
【0028】
本発明のインクジェット記録装置において、さらに、前記インク及び前記気泡を吸引する吸引装置並びに前記インク吐出口を覆うキャップを有するパージ機構と、前記パージ機構の動作を制御するパージ制御装置とを備え、前記パージ制御装置が前記パージ機構を制御してパージするときに、前記モード設定装置は前記気泡解放モードに設定されてもよい。さらに、前記パージ制御装置が前記パージ機構を制御してパージを終了するときに、前記モード設定装置は前記気泡捕捉モードに設定されてもよい。このように、モード設定装置とパージ制御装置とを連動させることによって、パージ動作を行っている際に、フィルタに付着した気泡を確実に取り除くことができ、あるいは、パージ動作を行わないときに、確実にフィルタに気泡を付着させることができる。
【0029】
また、本発明のインクジェット記録装置においては、前記貫通孔に収まる内接円の最小径が、前記吐出口に収まる内接円の径よりも小さくてもよい。これによると、フィルタによりインク吐出口を通過することのできない大きさのインク中の異物や気泡などを確実に取り除くことができ、異物や気泡などによってインク吐出口が目詰まりするのを確実に防止することができる。
【0030】
なお、本願において画像とは、図形、記号及び文字を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、液滴噴射装置として、ノズルから記録用紙に対してインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に本発明を適用した一例である。
【0032】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、走査方向(図1の左右方向)に移動可能なキャリッジ2と、このキャリッジ2に設けられて記録用紙Pに対してインクを吐出するシリアル式のインクジェットヘッド3と、記録用紙Pを紙送り方向(図1の前方)へ搬送する搬送ローラ4を備えている。インクジェットヘッド3には、チューブ6を介してインクタンク5からインクが供給される。そして、インクジェットヘッド3は、キャリッジ2と一体的に走査方向へ移動しつつ、その下面のインク吐出面23a(図3参照)に形成されたノズル17の出射口17a(図3参照)から記録用紙Pにインクを吐出して、記録用紙Pに画像を記録する。また、インクジェットヘッド3により画像を記録された記録用紙Pは、搬送ローラ4により紙送り方向へ排出される。
【0033】
さらに、インクジェット記録装置1は、複数のノズル17の出射口17aを覆うようにインク吐出面23aに当接可能なキャップ7と、インクを強制的に排出させるために、キャップ7がインク吐出面23aに当接した状態でノズル17からインクを吸引する吸引ポンプ8を備えている。そして、インクジェット記録装置1において、塵等の異物により噴射ノズル17が目詰まりしたとき、又はインクジェットヘッド3のインク流路に気泡が混入して、ノズル17からインクが正常に吐出されないときには、キャップ7をインク吐出面23aに当接させ、且つ、吸引ポンプ8を作動させてパージを行い、ノズル17から強制的にインクを排出させる。
【0034】
次に、インクジェットヘッド3について図2、図3を参照して詳細に説明する。図2は、図1のインクジェットヘッド3の平面図である。図3は、図2のIII−III線断面図である。ただし、図2、図3においてはドライバIC60(図6参照)の図示を省略している。
【0035】
図2、図3に示すように、インクジェットヘッド3は、圧力室10を含む個別インク流路が形成された流路ユニット31と、この流路ユニット31の上面に配置された圧電アクチュエータ32とを備えている。
【0036】
流路ユニット31は、図2、図3に示すように、キャビティプレート20、ベースプレート21、マニホールドプレート22、及びノズルプレート23を備えており、これら4枚のプレート20〜23が積層状態で接合されている。このうち、キャビティプレート20、ベースプレート21及びマニホールドプレート22はステンレス鋼製の板であり、これら3枚のプレート20〜22に、後述するマニホールド流路11及び圧力室10を含むインク流路が、エッチングなどにより形成されている。また、ノズルプレート23は、例えば、ポリイミドのような高分子合成樹脂材料により形成され、マニホールドプレート22の下面に接着される。あるいは、このノズルプレート23も、3枚のプレート20〜22と同様にステンレス鋼のような金属材料で形成されていてもよい。
【0037】
図2、図3に示すように、キャビティプレート20には、平面に沿って配列された複数の圧力室10(例えば、10個)が形成されており、複数の圧力室10は、紙送り方向(図2の上下方向)に2列に配列されている。各圧力室10は、平面視で、走査方向(図2の左右方向)に長い略長円形状に形成されている。
【0038】
ベースプレート21には、圧力室10の長手方向(図2の左右方向)の両端部のうち、後述するマニホールド流路11側の端部と平面視で重なる位置に、連通孔14が形成され、圧力室10の長手方向の他方側の端部と平面視で重なる位置に連通孔15が形成されている。また、マニホールドプレート22には、紙送り方向に延びるマニホールド流路11が形成されている。また、マニホールド流路11は、図2において、左側に配列された圧力室10の左半分、及び、右側に配列された圧力室10の右半分とそれぞれ重なるように配置されている。そして、マニホールド流路11は、後述の振動板40に形成されたインク供給口12に連通しており、インクタンク5(図1参照)から、チューブ6及びインク供給口12を介して、マニホールド流路11へインクが供給される。また、平面視で、マニホールドプレート22の、圧力室10の長手方向のマニホールド流路11と反対側の端部と重なる位置には、連通孔15と連通する連通孔16が形成されている。
【0039】
ノズルプレート23の、平面視で連通孔16に重なる位置には、ノズル17が形成されている。図2、図3に示すように、複数のノズル17は、2列に配列された複数の圧力室10のマニホールド流路11と反対側の端部と重なっており、インクジェットヘッド3の走査方向略中央部において、紙送り方向に等間隔のピッチで2列に配列されている。そして、ノズルプレート23の下面であるインク吐出面23aに、径が30〜40μm程度のノズル17の吐出口17aが形成されている。吐出口17aは、平面視で略円形状となっている。なお、ノズルプレート23が合成樹脂材料からなる場合には、ノズル20は、エキシマレーザ加工などにより形成することができる。また、ノズルプレート23が金属材料からなる場合には、プレス加工などにより形成することができる。
【0040】
そして、図3に示すように、マニホールド流路11は各連通孔14を介して各圧力室10に連通し、さらに、各圧力室10は、各連通孔15、16を介して各ノズル17に連通している。このように、流路ユニット31内には、マニホールド流路11から圧力室10を経てノズル17に至る複数の個別インク流路が形成されている。
【0041】
次に、圧電アクチュエータ32について説明する。図3に示すように、圧電アクチュエータ32は、流路ユニット31の上面に配置された振動板40と、この振動板40の上面に形成された圧電層41と、圧電層41の上面に複数の圧力室10に対応して形成された複数の個別電極18とを備えている。
【0042】
振動板40は、平面視で略矩形状の金属板であり、例えば、ステンレス鋼等の鉄系合金、銅系合金、ニッケル系合金、あるいは、チタン系合金からなる。この振動板40は、キャビティプレート20の上面に複数の圧力室10を覆うように配設され、キャビティプレート20の上面に接合されている。また、導電性を有する金属製の振動板40は、ドライバIC60(図6に図示)に接続されて常にグランド電位に保持されており、個別電極18との間に挟まれた圧電層41に電界を作用させる共通電極を兼ねている。また、振動板40には、平面視で略楕円形状のインク供給口12が形成されている。インク供給口12は、マニホールド流路11に連通しており、インク供給口12を通じてマニホールド流路11にインクが供給される。
【0043】
図2に示すように、振動板40の上面には、インク供給口12が形成された領域及びインク供給口12から走査方向(図2の左右方向)に延びる領域を除いて、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電層41が配置されている。図2、図3に示すように、この圧電層41は、複数の圧力室10にわたって連続的に形成されている。ここで、圧電層41は、例えば、非常に小さな圧電材料の粒子を基板に吹き付けて高速で衝突させ、基板に堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)を用いて形成することができる。また、例えば、スパッタ法、化学蒸着法(CVD法)、ゾルゲル法、あるいは、水熱合成法により形成することもできる。あるいは、PZTのグリーンシートを焼成することにより生成された圧電シートを、所定の大きさに切断し、この切断された圧電シートを振動板40に貼り付けることにより圧電層41を形成してもよい。
【0044】
圧電層41の上面には、圧力室10よりも一回り小さい、平面視で略長円形状の複数の個別電極18が形成されている。複数の個別電極18は、平面視で、対応する圧力室10の中央部に重なる位置にそれぞれ形成されている。また、個別電極18は金、銅、銀、パラジウム、白金、あるいは、チタンなどの導電性材料からなる。さらに、複数の個別電極18において、複数の個別電極18の長手方向のマニホールド流路11側の端部から、それぞれ、個別電極18の長手方向(図2の左右方向)と平行に延びた部分には複数の接点18aが形成されている。これら複数の個別電極18は、例えば、スクリーン印刷、スパッタ法、あるいは、蒸着法により形成することができる。
【0045】
複数の接点18aには、圧電層41の上部から図示しないフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit:FPC)が接合され、複数の接点18aはFPCを介してドライバIC60(図6参照)と電気的に接続されている。そして、ドライバIC60から接点18aを介して複数の個別電極18の電位を選択的に制御できる。
【0046】
次に、インク供給口12においてマニホールド流路11に連通し、マニホールド流路11にインクを供給するインク供給流路について図4、図5を用いて説明する。図4は、図2のインク供給口12付近の拡大平面図である。図5は、図4のV−V線断面図である。図4に示すように、振動板40には、平面視で略楕円形状のインク供給口12が形成されている。また、図4、図5に示すように、振動板40の上部のインク供給口12を取り囲む部分には、平面視でインク供給口12よりも一回り大きい略楕円形状を有する段差領域50が形成されている。段差領域50には、平面視で略楕円形状の板であるフィルタ13が設置されている。フィルタ13は、平板状のニッケルなどの金属製の導電性基材(導電性部材)52と、その表面全体に形成された、例えばフッ素系の樹脂のような表面の濡れ性が低い(撥液性が高い)絶縁層53を備え、フィルタ13の表面全体にわたって、複数の貫通孔13aが均等な間隔で一様に分布するように形成されている。貫通孔13aは平面視で略円形状に形成されており、インクの流れの下流側、つまり、マニホールド流路11側ほど流路面積が小さくなって、その最小径はノズル17のインク吐出口17aの径よりも小さい8〜10μm程度になっている。絶縁層53は、後述するようにノズル17からインクを吐出して画像記録を行う際のインクの流れによって、フィルタ13の表面に付着したインク中の気泡が表面から離れてしまわないような濡れ性を有する材料により構成されている。このようなフィルタ13は、次のようにして製作されうる。まず、ニッケルなどの金属板に、例えば電鋳、プレスのような方法により複数の貫通孔13aを形成して、導電性基材52を作製する。次に、導電性基材52の表面全体に、例えば、絶縁性を有するフッ素系樹脂層をCVD法などにより形成することによって、絶縁層53を形成する。
【0047】
そして、フィルタ13の導電性基材52は、ドライバIC60に接続されており、ドライバIC60により導電性基材52の電位が制御可能となっている。なお、フィルタ13及びフィルタ13の導電性基材52に接続されたドライバIC60の後述のフィルタ制御部(電位制御機構)64が本発明に係る気泡捕捉装置に相当する。
【0048】
図5に示すように、振動板40の上面の、インク供給口12に対向する部分には、インク供給口12に連通する連通孔51aが形成された固定部材51が配置され、フィルタ13は振動板40と固定部材51とにより挟まれて固定されている。固定部材51の、振動板40と反対側には、インクタンク5に連通するチューブ6が接続されている。そして、インクタンク5からチューブ6、連通孔51a、フィルタ13の複数の貫通孔13a及びインク供給口12を介してマニホールド流路11に連通するインク供給流路が形成されている。インク供給流路中のインクは、グランド電位に保持された振動板40に接触しており、常にグランド電位に保持される。
【0049】
インク中の気泡をフィルタ13に付着させるためには、後述するフィルタ制御部64を用いて、フィルタ13の導電性基材52の電位をグランド電位に設定する。このとき、フィルタ13の表面は撥液性の高い絶縁層53に覆われているため、フィルタ13の表面は気泡が付着しやすくなっている。なぜならば、一般に、固体表面の撥液性が高いときには、気体と固体とが接触する面積を大きくすることによって、液体と固体とが接触する面積を小さくした方が、エネルギー的に安定な状態になるからである。つまり、フィルタ13の表面に気泡が付着していない場合と比べて、フィルタ13の表面に気泡が付着しているときの方が、フィルタ13の表面のインクと接触する部分の面積が減少するので、エネルギー的に安定な状態になるからである。そのため、フィルタ13の導電性基材52とインクとを同電位にすることにより、インク中に含まれる気泡をフィルタ13の表面に付着させることができる。
【0050】
これに対して、フィルタ13の表面に付着した気泡を開放するためには、後述するフィルタ制御部64を用いて、フィルタ13の導電性基材52の電位を所定の電位に設定する。このとき、エレクトロウェッティング現象によって、絶縁層53の撥液性が下がる。エレクトロウェッティング現象とは、電極と電気的に接続されている絶縁膜によって、電極と導電性を有する液体との間が絶縁されている際に、電極と液体との間に電圧を印加すると、電極と液体との間に電位差がない場合と比べて、絶縁膜の表面と液体との間の接触角(濡れ角)が小さくなる現象である。つまり、電極と液体との間に電圧を印加すると、電極と液体との間に電位差が存在しない場合と比べて、見かけ上、絶縁膜表面の撥液性が低下する。
【0051】
このようにして、フィルタ13の表面の撥液性を低下させた場合には、フィルタ13の表面は気泡が付着しにくくなっている。なぜならば、固体表面の撥液性が低いときには、気体と固体とが接触する面積を小さくすることによって、液体と固体とが接触する面積を大きくした方が、エネルギー的に安定するからである。つまり、フィルタ13の表面に気泡が付着している場合と比べて、フィルタ13の表面に気泡が付着していない方が、フィルタ13の表面のインクと接触する部分の面積が増加するので、エネルギー的に安定するからである。そのため、フィルタ13の導電性基材52とインクとの間に所定の電圧を印加することにより、フィルタ13の表面に付着したインクを開放することができる。
【0052】
次に、ドライバIC60について図6を用いて説明する。図6は、ドライバIC60のブロック図である。ドライバIC60は、インクジェット記録装置1の各種動作を制御するものであり、図6に示すように、モード設定部61、アクチュエータ制御部62、パージ制御部63、フィルタ制御部64及び接地部65を有する。
【0053】
アクチュエータ制御部62は、ノズル17からインクを吐出して記録用紙Pに記録を行う際に、複数の個別電極18の電位を制御し、圧電アクチュエータ32の動作を制御する。パージ制御部63は、個別インク流路、マニホールド流路11内のインク中の異物や気泡を取り除くパージを行う際に、キャップ7及び吸引ポンプ8の動作を制御する。
【0054】
モード指示部61は、フィルタ13において気泡を捕捉してマニホールド流路11及び個別インク流路に気泡が流れ込まないようにする気泡捕捉モードと、フィルタ13において捕捉した気泡を解放する気泡開放モードとに選択的に設定される。ここで、後述するパージ動作の際には、モード設定部61は、パージ制御部63に連動して、気泡開放モードに設定される。また、パージ動作終了後には、モード設定部61は、パージ制御部63に連動して、気泡捕捉モードに設定される。このように、モード設定部61とパージ制御部63とが連動しているので、パージの際に、確実に、フィルタ13の表面に付着した気泡を開放して、当該気泡を吸引することができる。
【0055】
フィルタ制御部64は、モード設定部61において設定されたモードに応じて、フィルタ13の導電性基材52の電位を制御する。具体的には、モード設定部61が気泡捕捉モードに設定されているときには、フィルタ制御部64は、導電性基材52をグランド電位にする。また、モード設定部61が気泡解放モードに設定されているときには、フィルタ制御部64は、導電性基材52をグランド電位よりも高い所定電位(基準電位と異なる電位)にする。接地部65は、振動板40をグランド電位に保持する。なお、所定電位は、後述するパージを行う際に、エレクトロウェッティング現象により絶縁層53の表面の濡れ性を向上させて、気泡を絶縁層53の表面から離れさせるのに十分な電位である。
【0056】
次に、インクジェット記録装置1における、記録動作及びパージ動作について図7、図8を用いて説明する。図7(a)は、インクジェット記録装置1において、記録を行う際のフィルタ13の状態を表しており、図7(b)は、図7(a)のフィルタ13の表面を拡大したものである。図8(a)は、インクジェット記録装置1において、パージを行う際のフィルタ13の状態を表しており、図8(b)は、図8(a)のフィルタ13の表面を拡大したものである。なお、図8(a)の"+"は、グランド電位よりも高い所定電位になっていることを示しており、図7(a)、図8(a)の"GND"は、グランド電位になっていることを示している。
【0057】
まず、インクジェット記録装置1において記録を行う際の動作について説明する。記録を行う際には、ドライバIC60のモード設定部61が気泡捕捉モードに設定される。このとき、フィルタ制御部64は、導電性基材52の電位を制御して、図7(a)に示すように、導電性基材52の電位をグランド電位にする。これにより、導電性基材52とインク供給流路内のインクとが同電位となる。この場合には、前述の理由により、インクと導電性基材52との間に配置された絶縁層53の表面における濡れ性が低いまま(例えば、濡れ角θが70°程度)であるので、絶縁層53の表面にインク中の気泡Aが付着しやすい。
【0058】
そして、アクチュエータ制御部62が、所望の個別電極18の電位を選択的に制御して、所定の正電位とする。このとき、グランド電位に保持されている共通電極としての振動板40と、選択された個別電極18との間に電位差が生じる。これにより、圧電層41において、当該個別電極18と振動板40の間に挟まれた部分にその厚み方向の電界が印加される。このとき、圧電層41の分極方向と電界の方向とが同じ場合には、圧電層41がその分極方向である厚み方向と直交する水平方向に収縮する。この圧電層41の収縮に伴って振動板40が圧力室10側に凸となるように変形する。このとき、圧力室10内の容積が減少して圧力室10内のインクに圧力が付与され、圧力室10に連通するノズル17からインクが吐出される。
【0059】
このとき、フィルタ13においては、絶縁層53の表面にインク中の気泡Aが付着しやすい状態であるため、インク中の異物及び/又は気泡Aはフィルタ13の絶縁層53の表面において捕捉され、マニホールド流路11に流れ込むことが防止される。これにより、インク中の異物及び/又は気泡Aによって、ノズル17が目詰まりしたり、圧力室10内のインクの圧力にばらつきが生じたりして記録品質が低下するのが防止される。さらに、フィルタ13の貫通孔13aの最小径がノズル径よりも小さいため、マニホールド流路11及び個別インク流路に、ノズル径よりも大きい異物や気泡が流れ込むのが確実に防止される。
【0060】
次に、インクジェット記録装置1におけるパージ動作について説明する。パージの際には、ドライバIC60のモード設定部(モード指示部)61が気泡解放モードに設定される。この気泡解放モードは、ユーザによる釦操作に応じて設定されるか、又は、気泡捕捉モードに設定された状態で、ノズル17からのインクの吐出が行われない(個別電極18に所定の正電位が付与されない)まま、所定時間が経過したときに自動的に設定される。そのとき、フィルタ制御部64が導電性基材52の電位を制御して、導電性基材52の電位をグランド電位よりも高い所定電位とする。これにより、フィルタ13の導電性基材52とインク供給流路内のインクとの間に電位差が発生する。そのため、導電性基材52とインクとの間に配置された絶縁層53の表面における濡れ性が高く(例えば、濡れ角θが40°程度)なり(エレクトロウェッティング現象)、絶縁層53の表面にインク中の気泡Aが付着しにくくなる。
【0061】
そして、パージ制御部63からの制御に基づいて、キャップ7がインク吐出面23aに当接され、キャップ7がインク吐出面23aに当接した状態で吸引ポンプ8が駆動されることにより、個別インク流路及びインク供給流路内のインクがキャップ7側から吸引されてパージが行われる。
【0062】
このとき、フィルタ13の絶縁層53の表面は、気泡が付着しにくい状態になっているため、フィルタ13の絶縁層53の表面に付着していたインク中の気泡Aはフィルタ13の絶縁層53の表面から離れ、インク供給流路及び個別インク流路を移動してノズル17から排出される。このように、パージを行うことによりフィルタ13の表面に付着した気泡Aが確実に排出されるため、フィルタ13の貫通孔13aに気泡Aが残留し、フィルタ13に気泡Aによる目詰まりが発生するのを防止することができる。
【0063】
以上説明した実施の形態によると、インクジェット記録装置1において記録を行う際には、ドライバIC60のモード設定部61が気泡捕捉モードに設定され、フィルタ13の導電性基材52の電位がグランド電位となる。このとき、絶縁層53の表面における濡れ性は低いままであり、フィルタ13の表面には、インク中の気泡が付着しやすい。したがって、記録を行う際にはフィルタ13においてインク中の気泡を確実に捕捉し、マニホールド流路11に気泡が流れ込むのを防止することができる。これにより、気泡によってノズル17が目詰まりすることが防止されるとともに、個別インク流路に気泡が流れ込むことによって、ノズル17から正常なインクの吐出が行われなくなり、記録品質が低下するのが防止される。
【0064】
さらに、インクジェット記録装置1においてパージを行う際には、ドライバIC60のモード設定部61が気泡開放モードに設定され、フィルタ13の導電性基材52の電位は、グランド電位よりも高い所定電位となる。上述のエレクトロウェッティング効果により、絶縁層53の表面における濡れ性が高くなり、フィルタ13の絶縁層53の表面に気泡が付着しにくくなる。したがって、パージを行ったときに気泡がフィルタ13の絶縁層53の表面に残留するのが防止される。これにより、フィルタ13に残留した気泡によるフィルタ13の目詰まりを防止することができる。
【0065】
また、フィルタ13は、複数の貫通孔13aが形成された金属製の導電性基材52の表面に絶縁層53が形成された構造であるので、金属製の導電性基材52に電鋳やプレスなどの方法により複数の貫通孔13aを形成し、導電性基材52の表面にCVD法などの方法により絶縁層53を形成することによりフィルタ13を容易に作製することができる。
【0066】
また、インク供給流路内のインクは、グランド電位に保持された振動板40と接触しているため、グランド電位に保持されている。導電性基材52の電位を所定電位に設定したときには、導電性基材52とインク供給流路内のインクとの間に確実に電位差が発生するので、絶縁層53の表面の濡れ性を確実に高くすることができる。また、インクをグランド電位に保持するためにインク供給流路内に別途電極などを設ける必要がなく、インクジェット記録装置の構成が簡単になる。
【0067】
また、フィルタ13の貫通孔13aは、マニホールド流路11側に向かって流路面積が小さくなっているため、インクがマニホールド流路11からインク供給流路に逆流するのを防止できる。さらに、貫通孔13aの最小径がノズル17のインク吐出口17aの径よりも小さいので、フィルタ13においてインク吐出口17aの径よりも大きいインク中の異物や気泡が確実に取り除かれ、ノズル17の目詰まりをさらに確実に防止することができる。
【0068】
また、フィルタ13の貫通孔13aは、導電性基材52に一様に分布しているため、フィルタ13において効率よくインク中の異物及び/又は気泡を捕捉することができる。
【0069】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0070】
〈第1変更形態〉
フィルタは、複数の貫通孔が形成された導電性基材の表面に絶縁層が形成されたものには限られない。例えば、図9に示すフィルタ71のように、複数の貫通孔71aが形成された絶縁性部材72と、絶縁性部材72のマニホールド流路11と反対側の表面及び複数の貫通孔71aを画成する内面に形成された金属製の電極73と、電極73の表面に形成された絶縁層74とを備えてもよい。ここで、絶縁性部材72及び絶縁層74は、フッ素樹脂等の絶縁性材料により形成されるが、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。また、電極73は、不図示の配線により、ドライバIC60に接続されている。
【0071】
この場合でも、電極73の電位がグランド電位であるときは、絶縁層74の表面における濡れ性が低いままであるため、フィルタ71の表面に気泡が付着しやすい。そして、電極73の電位が所定電位になると、絶縁層74の電極73に対向する部分、つまり、フィルタ71のマニホールド流路11と反対側の表面及び貫通孔71aを画成する内面の濡れ性が高くなり、この部分に気泡が付着しにくくなる。したがって、記録を行う際にはフィルタ71の表面において気泡を確実に捕捉することができ、パージを行う際には、貫通孔71aに付着した気泡は確実に排出される。また、このようなフィルタ71は、絶縁性部材72にエキシマレーザなどを照射することによって複数の貫通孔71aを形成した後、所定の表面、即ち、マニホールド流路11と反対側に配置される表面及び複数の貫通孔71aを画成する内面に、蒸着などにより電極73を形成し、さらに、実施の形態のときと同様の方法で、電極73が形成された表面に絶縁層74を形成することによって作製することができる。これにより、エキシマレーザなどを照射することによって貫通孔71aの径を精度よく形成することができる。
【0072】
〈第2変更形態〉
また、図10に示すフィルタ81のように、平面状の絶縁性部材72のマニホールド流路11側の表面に電極82が形成され、その上から絶縁性部材72を全て覆うように絶縁層83が形成されていてもよい。この場合、電極82が形成される面が平面状になっているため、電極82を容易に形成することができる。
【0073】
〈第3変更形態〉
フィルタの電極の表面には絶縁層が形成されていなくてもよい。例えば、図11(a)に示されているフィルタ91aは、複数の貫通孔92aが形成された導電性基材93aを備えている。また、導電性基材93aが電極94aを兼ねている。ここでフィルタ91aは、その表面に絶縁層が形成されていないことを除いて、上記実施形態のフィルタ13と同じ構造である。あるいは、図11(b)に示されているフィルタ91bは、複数の貫通孔92bが形成された絶縁性の基材93bと、貫通孔92bを画成している基材93bの内面及び基材93bの一方の表面に形成された金属製の電極94bとを備える。ここで、フィルタ91bは、電極94bの表面に絶縁層が形成されていないことを除いて、上記第1変更形態のフィルタ71と同じ構造である。いずれの場合も、電極94a,94bは、不図示の配線により、ドライバIC60に接続されている。一般に、金属部材の表面に絶縁層が形成されていない場合であっても、導電性の液体と金属部材との間に電圧を印加することによって、金属部材の表面の濡れ性が下がることが知られており、この現象も一種のエレクトロウェッティング現象であると考えられている。従って、本変更形態のフィルタ91a,91bにおいても、前記実施形態と同様に、フィルタ92a,92bの電極94a,94bの表面に気泡を付着させる場合には、電極94a,94bとインクとを同電位に設定し、フィルタ92a,92bに付着した気泡を開放する場合には、電極94a,94bとインクとの間に所定の電圧を印加する。なお、フィルタ91a,91bは、不図示の絶縁性部材により、振動板40及び固定部材51から絶縁されている。
【0074】
また、本実施の形態では、振動板40によりインク供給流路内のインクがグランド電位に保持されていたが、インク供給流路内に別途グランド電位に保持された電極が設けられていてもよい。
【0075】
また、モード設定部61が気泡解放モードに設定されているときに、フィルタ制御部64により、導電性基材52の電位が基準電位であるグランド電位よりも低い所定電位になるように制御されていてもよい。なお、この場合の所定電位も、エレクトロウェッティング現象により絶縁層53の表面の濡れ性が向上し、パージを行う際に、気泡が絶縁層53の表面から離れるのに十分な電位である。
【0076】
また、貫通孔13aは、マニホールド流路11側ほど流路面積が小さくなっている場合に限らず、例えば、貫通孔13aが導電性基材52の表面に垂直に形成され、流路面積が一定であってもよい。
【0077】
また、貫通孔13aが導電性基材52に一様に分布するように形成されておらず、導電性基材52の一部にのみ分布するように形成されていてもよい。
【0078】
また、貫通孔13aは、必ずしも平面視で略円形状に形成されなくてもよく、楕円、長円、多角形などの形状に形成されていてもよい。さらに、インク吐出口17aも平面視で楕円、長円、多角形などの形状に形成されていてもよい。この場合、貫通孔13aの最小径(貫通孔13aの平面視の形状が円形でない場合は、貫通孔13aの平面視の形状に内接する円の径)を、インク吐出口17aの径(インク吐出口の形状が円形でない場合には、インク吐出口に内接する円の径)よりも小さく形成することで、上述した実施の形態と同様にインク吐出口17aを通過できずに停滞してしまうインク中の異物や気泡をフィルタ13により確実に取り除くことができ、インク吐出口17aの目詰まりを確実に防止することができる。
【0079】
なお、フィルタを設置する箇所は、上記実施形態におけるフィルタの設置箇所に限られず、例えば、流路ユニット内に形成されたインク流路又はインクタンクと流路ユニットとを連結するチューブのような、インクが流れる流路内の任意の位置に配置することができる。また、フィルタに形成される貫通孔の径及び形状は任意に設定しうる。
【0080】
また、本発明は、インクジェット記録装置のほか試薬、生体溶液、配線材料溶液、電子材料溶液、冷媒用、燃料用などインク以外の液体を移送する液体移送装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る実施の形態に係るインクジェット記録装置の概略斜視図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のインク供給口周辺の拡大平面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図1のインクジェット記録装置の動作を制御するドライバICのブロック図である。
【図7】図7(a)は図2のインクジェットヘッドにおいて記録を行う際の状態を表した図であり、図7(b)は図7(a)のフィルタの表面を拡大した図である。
【図8】図8(a)は図2のインクジェットヘッドにおいてパージを行う際の状態を表した図であり、図8(b)は図8(a)のフィルタの表面を拡大した図である。
【図9】第1変形例の図5相当の断面図である。
【図10】第2変形例の図5相当の断面図である。
【図11】図11(a)は、第3変形例の図5相当の断面図であり、図11(b)は、第3変形例の図9相当の断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 インクジェット記録装置
3 インクジェットヘッド
13 フィルタ
13a 貫通孔
40 振動板
52 導電性基材
53 絶縁層
61 モード設定部
64 フィルタ制御部
65 接地部
72 絶縁性部材
73 電極






 

 


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