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発明の名称 インクジェットヘッド及びその検査方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−21855(P2007−21855A)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
出願番号 特願2005−205967(P2005−205967)
出願日 平成17年7月14日(2005.7.14)
代理人 【識別番号】100079131
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 暁夫
発明者 森田 祥嗣
要約 課題
圧力室の開口を覆うセラミックス層における欠陥(ヘアクラック)が短小であっても、その有無を高い精度で検出する。

解決手段
キャビティユニット20における圧電アクチュエータ21が積層される面は導電性を有し、圧電アクチュエータ21には、圧力室24の開口を直接覆う第1のセラミックス層41と、複数の圧力室24に渡って面状に形成されたクラック検査用電極51の層と、第3のセラミックス層43と、駆動用電極に挟まれた第2のセラミックス層42とが、圧力室側からその順序で含まれる。圧力室24にインクを充填した状態で、キャビティユニット20とクラック検査用電極51との間の絶縁抵抗を測定することで、セラミックス層41における欠陥を検出する。
特許請求の範囲
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが配置され、前記各ノズル毎に対応する複数の圧力室が平面上に開口形成されたキャビティユニットと、
前記キャビティユニットの前記圧力室が開口した面に積層され、インクが充填された前記圧力室に吐出圧力を与える圧電アクチュエータと、を備えるインクジェットヘッドにおいて、
前記キャビティユニットにおける前記圧電アクチュエータが積層される面は、導電性を有し、
前記圧電アクチュエータには、前記複数の圧力室にわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層される複数のセラミックス層と、このセラミックス層の扁平な方向の面上に配置される複数の電極層とが備えられ、
前記セラミックス層には、前記圧力室の開口を直接覆う第1のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層における前記圧力室と対向する面とは反対の面側に配置される1層または複数層の第2のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層と前記第2のセラミックス層との間に介在する第3のセラミックス層とが含まれ、
前記電極層には、前記第1のセラミックス層と第3のセラミックス層との間に配置され且つ前記複数の圧力室にわたって面状に形成されたクラック検査用電極の層と、前記第2のセラミックス層を挟んで対をなす駆動用電極の層とが含まれていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記駆動用電極は、キャビティユニットの複数の圧力室に対応して共通に配置されたコモン電極と各圧力室毎に対応する個別電極とが前記第2のセラミックス層を挟んで構成され、
前記コモン電極の層が、前記第3のセラミックス層を挟んで前記クラック検査用電極の層と対向していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記クラック検査用電極は、前記コモン電極と電気的に独立して設けられ、前記圧電アクチュエータが駆動されるときに、前記クラック検査用電極は、前記コモン電極とともに接地されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記第1のセラミックス層は、前記第2のセラミックス層よりも、厚みが薄く設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記キャビティユニットは前記コモン電極と電気的に接続され、前記圧電アクチュエータが駆動されるときには、前記キャビティユニットは、前記コモン電極とともに接地されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
インクを吐出する複数のノズルが配置され、前記各ノズル毎に対応する複数の圧力室が平面上に開口形成されたキャビティユニットと、
前記キャビティユニットの前記圧力室が開口した面に積層され、インクが充填された前記圧力室に吐出圧力を与える圧電アクチュエータと、を備えるインクジェットヘッドにおいて、
前記キャビティユニットにおける前記圧電アクチュエータが積層される面は、導電性を有し、
前記圧電アクチュエータには、前記複数の圧力室にわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層される複数のセラミックス層と、このセラミックス層の扁平な方向の面上に配置される複数の電極層とが備えられ、
前記セラミックス層には、前記圧力室の開口を直接覆う第1のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層における前記圧力室と対向する面とは反対の面側に配置される1層または複数層の第2のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層と前記第2のセラミックス層との間に介在する第3のセラミックス層とが含まれ、
前記電極層には、前記第1のセラミックス層と第3のセラミックス層との間に配置され且つ前記複数の圧力室にわたって面状に形成されたクラック検査用電極の層と、前記第2のセラミックス層を挟んで対をなす駆動用電極の層とが含まれ、
前記圧力室にインクが充填された状態で、前記クラック検査用電極と前記キャビティユニットにおける圧電アクチュエータが積層される面との間の電気的特性を測定し、前記第1のセラミックス層にクラックがあるか否かを検査するインクジェットヘッドの検査方法。

発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに係り、特に、インクが充填されたキャビティユニットの圧力室に、圧電アクチュエータが吐出圧力を与えるように構成されたインクジェットヘッド及びその検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットヘッドにおいては、圧電層と電極層とを交互に積層して形成されるプレート型の圧電アクチュエータを、キャビティユニットの圧力室に面して接合させて、この圧電アクチュエータの変位により、前記圧力室の容積に変化を与えインクを吐出させるものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のインクジェットヘッドでは、キャビティユニットが複数のプレートを積層して形成されており、その最前面のプレートに複数のノズルが設けられるとともに、最背面のプレートにノズル毎に対応する複数の圧力室が背面側に開口を有して設けられている。圧電アクチュエータでは、図7に模式的に示すように、キャビティユニット120の各圧力室124毎に対応した個別電極152の層と全圧力室124に共通なコモン電極153の層とが圧電層162を挟んで交互に積層されており、個別電極152とコモン電極153とに上下を挟まれた圧電層162の領域が活性部となっている。
【0004】
そして、前記各圧力室124の位置に各活性部を対応させて、キャビティユニット120の背面に圧電アクチュエータ121が積層固定され、インクジェットヘッド100が形成される。このインクジェットヘッド100では、接地されたコモン電極153に対して個別電極152に選択的に電圧を印加することで対応する活性部が変位し、この変位が伝達されて圧力室124に吐出圧力が与えられる。
【0005】
圧電アクチュエータの圧電層162は、一般的に、PZT系等の圧電材料(セラミックス粉末)からなるグリーンシートを積層して焼結することにより形成されているため、焼結体である圧電層162(以下、セラミックス層162と記載する)には、微小な欠陥(ヘアクラック)160が生じやすい。この欠陥160が、図7に示すように、圧力室の開口を覆うセラミックス層162aにおいて、その圧力室側の面からセラミックス層162を貫通して電極層の面に至るように延びていると、この欠陥160を通じて圧力室124からセラミックス層162aにインクが浸透する可能性が大きい。そして、さらにインクの浸透が進むと、電極間の電気的短絡を招くという問題があった。
【0006】
そのため、前記特許文献1では、キャビティユニットと圧電アクチュエータとの接着にインク非浸透性の接着シートを用い、この接着シートで、キャビティユニットと対向する圧電アクチュエータの面を全部覆うようにして、圧電アクチュエータのセラミックス層がインクと直接接触しないようにしている。
【特許文献1】特開2002−59547号公報(図7及び図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、キャビティユニットでは、静電気等によりインクに電荷が溜まることがある。通常インクは、正に帯電すると、図7に示すように、圧力室に充填されたインク170と、グランドに接続された圧電アクチュエータのコモン電極153との間には、最下層のセラミックス層162aを挟んで電位差が生じることになる。このような電位差は、正に帯電したインク170を陰極側(コモン電極153側)に移動させる電気浸透現象を発生させるため、インクには、セラミックス層162に浸透させようとする積極的な力が作用する。
【0008】
前述した特許文献1では、接着シートで圧電アクチュエータのセラミックス層を覆っているものの、微視的には、接着シートには微小な空孔が多数あるため、前述したようなインクを積極的にセラミックス層側に誘導する力が作用すると、インクが接着シートを通過する。その結果、セラミックス層に図7に示すような欠陥160があると、その内部にインクが浸透してしまい、従来同様の電気的短絡等の問題を招来する。
【0009】
また、セラミックス層の欠陥は、セラミックス層を焼成処理する工程で発生するだけでなく、圧電アクチュエータをキャビティユニットに接着する工程やフレキシブルフラットケーブル等の他の部材を圧電アクチュエータ上に積層して組立てる工程でも圧電アクチュエータをキャビティユニットの圧力室に向けて押す力を作用させるため、組立てられた状態でその内部に存在するセラミックス層の欠陥を目視で確認することは困難であった。そのため、従来は、欠陥(クラック)が圧力室から個別電極の位置にまで到達するほど長く伸び、さらにインクが欠陥を通じて個別電極まで浸透し、個別電極間あるいは個別電極とコモン電極間の電気的短絡を引き起こさないと欠陥の有無が検出できなかった。従って、欠陥がもっと短小な状態でも検出できるようにしたいという要望があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであり、圧力室の開口を覆うセラミックス層における欠陥(ヘアクラック)が短小であっても、その有無を高い精度で検出することのできるインクジェットヘッド及びその検査方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明におけるインクジェットヘッドは、インクを吐出する複数のノズルが配置され、前記各ノズル毎に対応する複数の圧力室が平面上に開口形成されたキャビティユニットと、前記キャビティユニットの前記圧力室が開口した面に積層され、インクが充填された前記圧力室に吐出圧力を与える圧電アクチュエータと、を備えるインクジェットヘッドにおいて、前記キャビティユニットにおける前記圧電アクチュエータが積層される面は、導電性を有し、前記圧電アクチュエータには、前記複数の圧力室にわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層される複数のセラミックス層と、このセラミックス層の扁平な方向の面上に配置される複数の電極層とが備えられ、前記セラミックス層には、前記圧力室の開口を直接覆う第1のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層における前記圧力室と対向する面とは反対の面側に配置される1層または複数層の第2のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層と前記第2のセラミックス層との間に介在する第3のセラミックス層とが含まれ、前記電極層には、前記第1のセラミックス層と第3のセラミックス層との間に配置され且つ前記複数の圧力室にわたって面状に形成されたクラック検査用電極の層と、前記第2のセラミックス層を挟んで対をなす駆動用電極の層とが含まれていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットにおいて、前記駆動用電極は、キャビティユニットの複数の圧力室に対応して共通に配置されたコモン電極と各圧力室毎に対応する個別電極とが前記第2のセラミックス層を挟んで構成され、前記コモン電極の層が、前記第3のセラミックス層を挟んで前記クラック検査用電極の層と対向していることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記クラック検査用電極は、前記コモン電極と電気的に独立して設けられ、前記圧電アクチュエータが駆動されるときに、前記クラック検査用電極は、前記コモン電極とともに接地されることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、前記第1のセラミックス層は、前記第2のセラミックス層よりも、厚みが薄く設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、前記キャビティユニットは前記コモン電極と電気的に接続され、前記圧電アクチュエータが駆動されるときには、前記キャビティユニットは、前記コモン電極とともに接地されることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項6に記載の発明におけるインクジェットヘッドの検査方法は、インクを吐出する複数のノズルが配置され、前記各ノズル毎に対応する複数の圧力室が平面上に開口形成されたキャビティユニットと、前記キャビティユニットの前記圧力室が開口した面に積層され、インクが充填された前記圧力室に吐出圧力を与える圧電アクチュエータと、を備えるインクジェットヘッドにおいて、前記キャビティユニットにおける前記圧電アクチュエータが積層される面は、導電性を有し、前記圧電アクチュエータには、前記複数の圧力室にわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層される複数のセラミックス層と、このセラミックス層の扁平な方向の面上に配置される複数の電極層とが備えられ、前記セラミックス層には、前記圧力室の開口を直接覆う第1のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層における前記圧力室と対向する面とは反対の面側に配置される1層または複数層の第2のセラミックス層と、前記第1のセラミックス層と前記第2のセラミックス層との間に介在する第3のセラミックス層とが含まれ、前記電極層には、前記第1のセラミックス層と第3のセラミックス層との間に配置され且つ前記複数の圧力室にわたって面状に形成されたクラック検査用電極の層と、前記第2のセラミックス層を挟んで対をなす駆動用電極の層とが含まれ、前記圧力室にインクが充填された状態で、前記クラック検査用電極と前記キャビティユニットにおける圧電アクチュエータが積層される面との間の電気的特性を測定し、前記第1のセラミックス層にクラックがあるか否かを検査するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、キャビティユニットにおいて圧電アクチュエータが積層される面は導電性を有しているので、圧力室を直接覆う第1のセラミックス層は、前記導電性を有する面とクラック検査用電極とに挟まれており、これらの間の電気的特性は、第1のセラミックス層に欠陥が生じこの欠陥にインクが浸透することで変化する。従って、この電気的特性の変化を測定することによって、第1のセラミックス層における欠陥の有無を検出することができる。クラック検査用電極は、第2のセラミックス層を挟む駆動用電極よりも圧力室に近い位置に設けられているので、圧力室側からセラミックス層の内部に延びる欠陥が、駆動用電極に到達しない短小な欠陥であっても検出することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、コモン電極が第3のセラミックス層を挟んでクラック検査用電極と対向しているから、駆動用電極は、圧力室側からコモン電極、個別電極の順に交互に配置されている。そして、第1のセラミックス層に生じた欠陥は、圧力室側からコモン電極に到達する前に、必ずクラック検査用電極に達するので、第1のセラミックス層の電気的特性の測定により確実に検出することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、クラック検査用電極とコモン電極とは、圧電アクチュエータの駆動時に、いずれも接地されるから、クラック検査用電極とコモン電極とに挟まれる第3のセラミックス層はその積層方向の上下が同電位となって電界が形成されないので、仮にインクに電気浸透現象が生じても、第3のセラミックス層によってインクの通過を阻止することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、第1のセラミックス層は、駆動用電極に挟まれていないので、電気的な耐圧を考慮する必要がなく、そのため、駆動用の第2のセラミックス層よりも厚みを薄くすることができる。従って、セラミックス層が厚い場合には電極に到達できなかかった短小な欠陥であっても、厚みの薄い第1のセラミックス層では圧力室側から延びてクラック検査用電極に到達するので、検出感度を向上させることができる。また、第1のセラミックス層が薄いと、第1のセラミックス層を付加しても、圧電アクチュエータ全体としての大型化を抑制することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、圧電アクチュエータが駆動されるときには、コモン電極は接地されるので、キャビティユニットのインクが静電気等に帯電しても、この静電気を、キャビティユニットにおいてインクと接する導電性材料の部分とコモン電極とを介して速やかにグランドに逃がすことができ、静電気によりインクの吐出動作が不安定になること等を防止することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、圧力室を直接覆う第1のセラミックス層に欠陥が生じ、この欠陥にインクが浸透すると、第1のセラミックス層を挟む、キャビティユニットにおける圧電アクチュエータが積層される面と、第1のセラミックス層の上面との間の電気的特性が変化するので、この現象を利用して第1のセラミックス層における欠陥の有無を検出することができる。すなわち、クラック検査用電極は、駆動用電極で挟まれた第2のセラミックス層よりも、圧力室に近い位置に設けられているので、圧力室側からセラミックス層の内部に延びる欠陥が、駆動用電極に到達する前の微小な状態でも検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態のインクジェットヘッドの斜視図、図2はインクジェットヘッドの分解斜視図、図3は図1のIII−III線矢視断面図、図4は圧電アクチュエータの分解斜視図、図5は圧電アクチュエータの要部断面図、図6(a)は圧電アクチュエータとキャビティユニットとの電気的接続を示す模式的な斜視図、図6(b)は欠陥の検査を説明するための等価回路図である。
【0024】
図1は、本発明の実施形態による圧電式のインクジェットヘッド1におけるキャビティユニット20、圧電アクチュエータ21、及びフレキシブルフラットケーブル22の斜視図であり、金属板製の複数枚のプレートからなるキャビティユニット20にプレート型の圧電アクチュエータ21が接合され、このプレート型の圧電アクチュエータ21の上面に外部機器との接続のためのフレキシブルフラットケーブル22が重ね接合されている。そして、キャビティユニット20の下面側に開口されたノズル23から、下向きにインクが吐出するものとする(図3参照)。
【0025】
前記キャビティユニット20は、図2に示すように、ノズルプレート30、スペーサプレート31、2枚のマニホールドプレート33a、33b、サプライプレート34、ベースプレート35、及びキャビティプレート36の合計7枚の薄い板をそれぞれ接着剤にて重ね接合した構造となっている。
【0026】
実施形態では、各プレート30〜36は50〜150μm程度の厚さを有し、ノズルプレート30はポリイミド等の合成樹脂製で、その他のプレート31〜36は42%ニッケル合金鋼板製である。前記ノズルプレート30には、微小径(25μm程度)のインク吐出用のノズル23が微小間隔で多数個穿設されている。このノズル23は、当該ノズルプレート30における長辺方向(X方向)と平行な2列に配列されている。
【0027】
また、前記キャビティプレート36には、図3に示すように、複数の圧力室24がキャビティプレート36の長辺(前記X方向)と平行な2列に配列されている。実施形態では、前記各圧力室24は、平面視細長形状に形成され、その長手方向がキャビティプレート36の短辺方向(Y方向)に沿うようにして穿設され、長手方向の一端部がノズル23と連通し、他端部が後述する共通インク室25と連通する。
【0028】
各圧力室24における先端部は、ベースプレート35、サプライプレート34と2枚のマニホールドプレート33a、33b、及びスペーサプレート31に穿設されている微小径の連通孔26を介して、ノズルプレート30における前記各ノズル23に連通している。
【0029】
キャビティプレート36の下面に隣接するベースプレート35には、各圧力室24の他端部に接続する貫通孔28が穿設されている。
【0030】
ベースプレート35の下面に隣接するサプライプレート34には、後述する共通インク室25から前記各圧力室24へインクを供給するための接続流路29が設けられる。そして各接続流路29には、共通インク室25からインクが入る入口孔と、圧力室24側(貫通孔28)に開口する出口孔と、入口孔と出口孔との間にあって、接続流路29中で最も大きな流路抵抗となるように断面積を小さくして形成された絞り部とが備えられている。
【0031】
2枚のマニホールドプレート33a,33bには、その長辺方向(X方向)に沿って長い2つの共通インク室25が前記ノズル23の各列に沿って延びるように板厚さを貫通して形成されている。すなわち、図2及び図3に示すように、2枚のマニホールドプレート33a、33bを積層し、かつその上面をサプライプレート34にて覆い、下面をスペーサプレート31にて覆うことにより、合計2つの共通インク室(マニホールド室)25が密閉状に形成される。各共通インク室25は、各プレートの積層方向から平面視したときに、前記圧力室24の一部と重なって圧力室24の列方向(ノズル23の列方向)に沿って長く延びている。接続流路29の一端は共通インク室25に他端は連通孔26を介して圧力室24にそれぞれ連通している。
【0032】
また、図2に示すように、キャビティプレート36、ベースプレート35、及びサプライプレート34の一方の短辺側の端部には、上下の位置を対応させて、それぞれ2つのインク供給口40が穿設されている。インク供給源からのインクが、これらインク供給口40から共通インク室25の一端部に連通するようになっている。また、インク供給口40には、フィルタ体40aが接着剤等で貼着されている。
【0033】
インク供給口40からノズル23に至るインク流通路では、インクは、インク供給口40からインク供給チャンネルとしての共通インク室25に供給された後、図3に示すように、サプライプレート34の接続流路29及びベースプレート35の貫通孔28を経由して各圧力室24に分配供給される。そして、インクは各圧力室24内から前記連通孔26を通って、その圧力室24に対応するノズル23に至るという構成になっている。
【0034】
一方、前記圧電アクチュエータ21には、特開平4−341853号公報等に開示された公知のものと同様に、複数の圧力室にわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層される複数のセラミックス層と、この複数のセラミックス層の扁平な方向の面上に配置される複数の電極層とが備えられている。ここでは、セラミックス粉末、バインダ、溶剤を混合したものを1枚の厚さが30μm程度になるように扁平に成形したグリーンシートの複数枚のうち適数枚のシート面に導電性ペーストで電極層を印刷法等によって形成し、その複数枚のグリーンシートを積層して焼成することで、圧電アクチュエータ21を形成している。これにより、各グリーンシートは、焼結体のセラミックス層となる。このセラミックス層としては、圧力室の開口を直接覆うように最も下面(キャビティユニット20)側に配置される第1のセラミックス層41と、第1のセラミックス層41の上面に重ねられる第3のセラミックス層43と、その上面に重ねられる複数層の第2のセラミックス層42と、第2のセラミックス層のうちの最上層の上面に重ねられる複数層の第4のセラミックス層44とが設けられている。この実施形態では、第2のセラミックス層42が4層、第4のセラミックス層44が3層設けられているが、第2、第4のセラミックス層42、44は、いずれも1層であってもよい。
【0035】
電極層としては、第1のセラミックス層41と第3のセラミックス層43との間に形成されるクラック検査用電極51の層と、第2のセラミックス層42を挟んで対をなす駆動用電極の層と、最上面に配置されフレキシブルフラットケーブル22と電気的に接続される表面電極46の層とが設けられている。
【0036】
駆動用電極は、図4に示すように、個別電極52とコモン電極53の対であり、個別電極52は各圧力室24に対応した箇所毎に細幅で圧電アクチュエータ21の長辺方向(X方向)に沿って列状に配置され、コモン電極53はすべての圧力室を覆ってこれらに共通に対応するように配置されている。コモン電極53は、キャビティユニット20のキャビティプレート36と電気的に接続する(後述する)ために、セラミックス層の端縁にまで延設されて、圧電アクチュエータ21の側面に引き出されている。この実施形態では、第3のセラミックス層43と第2のセラミックス層42との間、換言すれば、図5に示すように、4層ある第2のセラミックス層42のうちの最下層の第2のセラミックス層の下面側にコモン電極53の層が配置されて、これより上方に、個別電極52の層とコモン電極53の層とが、第2のセラミックス層42を挟んで交互に配置されている。そして、圧電アクチュエータ21の駆動時には、コモン電極53が接地され、個別電極52に駆動パルス信号が印加される。
【0037】
クラック検査用電極51は、面状の電極を、第1のセラミックス層41の上面に配置したものであり、ここでは、図4に示すように、全部の圧力室を覆うように形成され、検査用端子56を、圧電アクチュエータ21の一方の短辺寄りに設けている。クラック検査用電極51は、検査用端子56の部分を除き、コモン電極と略同じパターンに形成されている。そして、検査用端子56は、導電性材料が充填されスルーホール57を介して表面電極46(46c)に接続している。
【0038】
表面電極46は、図1、図4及び図5に示すように、最上層に配置された第4のセラミックス層44の上面に設けられており、積層方向に対応する前記個別電極52の各々に対して電気的に接続される表面電極46aと、前記コモン電極53に対して電気的に接続される表面電極46bと、クラック検査用電極51の検査用端子56と電気的に接続される表面電極46cとが設けられている。個別電極52と表面電極46aとの接続、及びコモン電極53と表面電極46bとの接続は、図4に示すように、導電性部材を充填したスルーホール58及び個別電極52とコモン電極53とのそれぞれに対応して設けられたダミー電極とによって行っているが、この他に、圧電アクチュエータ21の側面に積層方向(上下方向)に延びる側面電極を形成してこの側面電極で接続してもよい。なお、図4及び図5に示す各電極層の配置パターンは、一例であって、これに限定するものではない。
【0039】
このように電極層が設けられた圧電アクチュエータ21では、公知のように個別電極52とコモン電極53との間に高電圧を印加することで、両電極に挟まれたセラミックス層の部分が分極され、活性部として形成される。そして、インクを吐出させる圧力室に対応する個別電極52とコモン電極53との間に駆動電圧を印加すると、対応する活性部が変形し、圧力室の容積を変化させる。第4のセラミックス層44は3層設けられているが、これらは駆動用電極(個別電極52とコモン電極53)に挟まれていないから、前述した高電圧が印加されても、活性部が形成されない。すなわち、第4のセラミックス層44は、圧電アクチュエータ21の駆動時には変形しないで、前記活性部の変形を圧力室24側に効率よく生じさせるための拘束部として作用する。
【0040】
この圧電アクチュエータ21はキャビティユニット20の上面に、第1のセラミックス層41が圧力室24と対面するように接着固定される。接着剤には、耐インク性に優れたシート状の接着剤(図示せず)が用いられる。そして、接着固定されたキャビティユニット20と圧電アクチュエータ21とは、図3及び図6に示すように、圧電アクチュエータ21の側面に引き出されたコモン電極53と金属製のキャビティプレート36とが、導電性部材59によって電気的に接続される。キャビティユニット20の内部のインクは、静電気等により帯電する場合があるが、圧電アクチュエータ21の駆動時には、コモン電極53は接地されるので、静電気はキャビティユニット20、導電性部材59及びコモン電極53を介してグランドに速やかに逃がされる。導電性部材59としては、導電性ペーストを用いており、圧電アクチュエータ21の外周のいずれか1箇所に配置すればよい。なお、クラック検査用電極51は、導電性部材59が設けられている位置では、キャビティユニット20の側面まで延出されておらず、クラック検査用電極51と導電性部材59とは電気的に接続されていない。
【0041】
なお、この実施形態では、コモン電極53の層を3層設けているが、これら3層のコモン電極53は、電気的に接続されているので、キャビティプレート36は、必ずしも最もキャビティユニット20に近いコモン電極53の層と接続するように構成しなくてもよく、いずれかの層のコモン電極53と接続していればよい。
【0042】
また、本実施形態は、キャビティプレート36が金属製で導電性を有している形態であるためこのキャビティプレート36とコモン電極53とを接続したが、キャビティユニット20における圧電アクチュエータ21が積層される面に導電性を有する薄膜が形成される形態や、キャビティユニット20と圧電アクチュエータ21との間に導電性を有するプレート(またはシート)が介挿される形態等の場合には、その導電性を有する部材とコモン電極53とを電気的に接続してもよい。
【0043】
次に、このように構成されたインクジェットヘッド1に対して、インクと接する第1のセラミックス層41に欠陥(ヘアクラック)が発生しているか否かを検査する検査方法について説明する。検査は、キャビティユニット20と圧電アクチュエータ21とフレキシブルフラットケーブル22とが接合されたインクジェットヘッド1が、インクジェットプリンタ等の本体に接続される前で、且つインクタンクからインクジェットヘッド1へインクを供給するための流路部材をインクジェットヘッド1に接続しそのインクジェットヘッドにインクを充填した状態で行う。
【0044】
検査に際しては、クラック検査用電極51とキャビティプレート36との間で、電気的特性である抵抗値を計測する。具体的には、クラック検査用電極51の検査用端子56が、表面電極46cを介して、またキャビティプレート36が導電部材59、コモン電極53、表面電極46bを介してフレキシブルフラットケーブル22上に形成された配線パターンにそれぞれ接続されているので、検査用端子56及びコモン電極53に対応するフレキシブルフラットケーブル22の各端子の間で、絶縁抵抗計で絶縁抵抗値を計測する。前述したように、検査時にはキャビティユニット20にインクが充填されているので、インクジェットヘッド1の第1のセラミックス層41において、圧力室24から積層方向に延びる欠陥(ヘアクラック)が生じていると、この欠陥にインクが浸透する。キャビティプレート36とクラック検査用電極51とは電気的に独立しており、また各セラミックス層41,42,43は、いずれも静電容量C(41),C(42)、C(43)を有しているので、前記欠陥がなければ、キャビティプレート36とクラック検査用電極51とは、図6(b)に示すように、第1のセラミックス層41の静電容量C(41)だけを介して接続された状態となり、抵抗値(R1)を測定してもその値は無限大となる。ところが、欠陥にインクが浸透すると、キャビティプレート36とクラック検査用電極51との間はインクによって導通するので抵抗値(R1)が大幅に低下する。従って、この抵抗値(R1)を測定することで、第1のセラミックス層41にインクが浸透して導通を引き起こす欠陥が存在するか否かを検査することができるのである。
【0045】
上記クラック検査用電極51は、欠陥の検出を広範囲に行うために、コモン電極53と略同じパターンの広幅状に形成されているので、クラック検査用電極51を省略して、コモン電極53とキャビティプレート36との間で電気的特性を測定して、圧力室24から上方に延びる欠陥を検査することも可能である。ところが、本実施形態では、静電気による破壊の防止対策として、インクに接するキャビティプレート36をコモン電極53と接続して接地しているため、インクジェットヘッド1の欠陥の検査を行う段階では、図6(b)に示すように、キャビティプレート36とコモン電極53とは、若干の抵抗(R(59))を有するものの導電性部材59によって常に電気的に接続されている。そのため、コモン電極53を欠陥の検査に利用することができないので、クラック検査用電極51を設けることが必要となるのである。
【0046】
上記検査によって第1のセラミックス層41に欠陥が生じていると判定されたインクジェットヘッド1は、不良品として製造工程から除外される。これにより、電気的短絡を招くような欠陥(クラック)が存在しない圧電アクチュエータ21を有するインクジェットヘッド1を良品として選別し、インクジェットプリンタ等の本体に接続して搭載することができるので、製造工程の効率化を図ることができる。なお、キャビティプレート36とクラック検査用電極51との間では、電気的特性として抵抗値を測定するだけではなく、必要に応じて静電容量等を測定してもよい。
【0047】
また、第1のセラミックス層41は、駆動用には用いられないため電気的な耐圧を考慮する必要がないので、駆動用に用いる第2のセラミックス層42よりも積層方向の厚みを薄くすることができる。従って、セラミックス層の厚みが厚い場合に比べて、圧力室24側からセラミックス層の積層方向に延びる欠陥が短小な欠陥であっても、クラック検査用電極51に到達し易いので、欠陥の検出感度を向上させるという効果を奏する。
【0048】
また、検査が終了して本体に取り付けられたインクジェットヘッド1では、クラック検査用電極51とコモン電極53とは電気的に接続される。具体的には、フレキシブルフラットケーブル22が接続される本体側の印刷配線基板上で、その両電極に対応する端子が電気的に接続するように構成される。また、フレキシブルフラットケーブル22上で両電極に対応する端子どおしを導線で短絡させるように構成することもできる。したがって、圧電アクチュエータ21の駆動時には、クラック検査用電極51もコモン電極53と同様に接地されることになる。これにより、万一、インクが静電気に帯電し、電気浸透現象によってセラミックス層側に浸透することがあっても、第3のセラミックス層43を挟んで配置されるクラック検査用電極51とコモン電極53との間が同電位となって電界が形成されないので、第3のセラミックス層43で電気浸透現象によるインクの移動を食い止め、これより上方にインクが浸透することを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態のインクジェットヘッドの斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図3】図1のIII −III 線矢視断面図である。
【図4】圧電アクチュエータの分解斜視図である。
【図5】圧電アクチュエータの要部断面図である。
【図6】(a)は圧電アクチュエータとキャビティユニットとの電気的接続を示す模式的な斜視図、(b)は欠陥の検査を説明するための等価回路図である。
【図7】従来のインクジェットヘッドを説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 インクジェットヘッド
20 キャビティユニット
21 圧電アクチュエータ
22 フレキシブルフラットケーブル
23 ノズル
24 圧力室
36 キャビティプレート
41 第1のセラミックス層
42 第2のセラミックス層
43 第3のセラミックス層
44 第4のセラミックス層
46 表面電極
51 クラック検査用電極
52 個別電極
53 コモン電極
56 検査用端子





 

 


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