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発明の名称 インクジェット記録装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−8015(P2007−8015A)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
出願番号 特願2005−191952(P2005−191952)
出願日 平成17年6月30日(2005.6.30)
代理人 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉
発明者 梅田 隆一郎
要約 課題
インク供給チューブにおけるインクの増粘を抑制することができ、その結果としてメンテナンス動作による無駄なインクの消費を低減することができるインクジェット記録装置を提供する。

解決手段
選択しているモードがファクシミリモードへ切り替えられたときに、各カラーインクに対応するポンプ12を退避駆動して各インク供給チューブ11から各色のインクをインクカートリッジ13へ退避させておくことで、インク供給チューブ11からのインクの溶媒の蒸発を防ぐことができ、カラーインクの増粘を低減することができる。そして、再びプリンタモードにてカラー画像記録を行うときに、各カラーインクに対応するポンプ12を供給駆動することにより、各色のインクカートリッジ13からインク供給チューブ11へ各色のインクを導入してカラー画像記録を開始する。
特許請求の範囲
【請求項1】
ノズルからインクを吐出することで被記録媒体に画像を記録する記録ヘッドに内蔵されたサブインクタンクへ、インク供給チューブを介してインクタンクからインクを供給する構成をn(n=1,2,3…)色のインクごとに有するインクジェット記録装置において、
ある色のインクを用いる画像記録を行わないときは、当該インクを供給するインク供給チューブからインクを前記インクタンクへ退避させておき、当該インクを用いて画像記録を行うときは、前記インクタンクから当該インクを供給するインク供給チューブへインクを導入して画像記録を開始すること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
特定の色のインクによる画像記録を行う単色画像記録モードと、
前記特定の色のインク及び他の色のインクによる画像記録を行う多色画像記録モードとを選択可能に構成されており、
少なくとも、前記単色画像記録モードが選択されている場合、前記他の色のインクを供給する各インク供給チューブから前記他の色のインクを各インクタンクへ退避させておき、前記多色画像記録モードにて画像記録を行うときは、前記各インクタンクから前記各インク供給チューブへ前記他の色のインクを導入して画像記録を開始すること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記単色画像記録モードには、ファクシミリ画像記録を行うファクシミリモードが含まれ、
前記多色画像記録モードには、コンピュータの出力装置として画像記録を行うプリンタモード、又はスキャナで読み取った画像を複写するコピーモードの少なくとも何れか一方が含まれていること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のインクジェット記録装置において、
モードを前記多色画像記録モードから前記単色画像記録モードへ変更したときに、前記他の色のインクを前記各インク供給チューブから退避させること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記多色画像記録モードを選択中に所定時間以上画像の記録が行われなかったときに、前記他の色のインクを前記各インク供給チューブから退避させること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5の何れか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記多色画像記録モードで前記他の色のインクを使用するか否かを選択可能に構成されており、
前記多色画像記録モードで前記他の色のインクを使用しないことが選択された場合、前記他の色のインクを前記各インク供給チューブから退避させた状態でプリンタモードにおける画像の記録を行うこと
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置において、
ソフトスイッチがオフにされることよって待機状態へ移行する際に、インクを前記インク供給チューブから退避させること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク供給チューブからのインクの退避を行うか否かをユーザによって選択可能に構成されていること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク供給チューブからインクを退避させている状態で当該インクのサブインクタンク内に貯留されているインクが所定量以下になった場合、当該インクのインクタンクから前記インク供給チューブを介して前記サブインクタンクへインクを供給すること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク供給チューブによるインク流通経路途中に、インクを前記インクタンクから前記インク供給チューブ及びサブインクタンクへ供給する方向、及びインクを前記インク供給チューブから前記インクタンクへ退避させる方向の両方向にインクを液送可能な液送手段と、
前記液送手段によって前記インク供給チューブからインクを前記インクタンクへ退避させる動作中、又は前記インクタンクからインクを前記インク供給チューブへ導入する動作中に、前記サブインクタンク内を大気開放するバルブ手段とを備え、
前記サブインクタンク内と前記バルブ手段とは、気体を透過させインクを透過させない選択透過膜を介して連通していること
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項10に記載のインクジェット記録装置において、
更に、前記液送手段によって前記記録ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる機能を備えること
を特徴とするインクジェット記録装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関するものであり、特に、記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給チューブにおけるインクの増粘を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置においては、インクが乾燥することにより増粘あるいは固化したり異物が侵入したりすることにより、ノズルにおいてインクの吐出が不能になる現象が生じるおそれがある。そのため、ノズルからインクを強制的に吐出又は吸引する等してノズルの吐出機能を維持・回復する機能を備えている。
【0003】
一方、この種のインクジェット記録装置として、本体内に固定されたインクから可撓性を有するインク供給チューブを介して、移動するキャリッジに搭載された記録ヘッドにインクを供給するチューブ供給形式のインクジェット記録装置が知られている。このようなチューブ供給形式のインクジェット記録装置においては、インク供給チューブに滞留しているインクから溶媒がインク供給チューブを透過して蒸発することで、インクの粘度が上昇することが認識されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、特許文献2に示されているインクジェットプリンタのように、プリンタ機能に加えてファクシミリ機能も備えたインクジェット記録装置が案出されている。
このようなファクシミリ機能を有するプリンタでは、その用途からして一般にブラックインクを使用する機会が多く、他のカラーインク(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー)は、ブラックインク程頻繁には使用されないという傾向がある。このように、インクの色によって使用頻度に偏りがある場合、チューブ供給形式のインクジェット記録装置においては、使用頻度の低いインクがインク供給チューブに長時間滞留することになる。そして、インクが長時間滞留すれば、その分インクから蒸発する溶媒の量が多くなり、インクの粘度が上昇し易くなる。したがって、ノズルの吐出機能を維持・回復するためには、記録に用いていないインクであっても定期的に行うメンテナンス動作によって強制的に排出して廃棄する必要があり、インクの消費量に関してユーザに無駄な負担を強いることになる。
【0005】
上述のようなインク供給チューブにおけるインクの増粘を防ぐために、特許文献1では、インク供給チューブを多層構造にすることで溶媒の蒸発を低減する技術を開示している。
【特許文献1】特開平2−111555号公報
【特許文献2】特開2004−255861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような多層構造のインク供給チューブは、単層構造のチューブのようなインクの溶媒の蒸発を防ぐための特段の機能を持たない通常のインク供給チューブに比べてコストが高い。また、インク供給チューブはキャリッジの移動に合わせて頻繁に屈曲を繰り返すものであるため、多層構造のインク供給チューブでは、単層構造のものと比較してその構造上、剛性や耐久性の面で不安がある。
【0007】
本願発明は、上記のような問題を解決するためなされたものである。その目的とするところは、コストが低い通常のインク供給チューブであってもインク供給チューブにおけるインクの増粘を抑制することができ、その結果としてメンテナンス動作による無駄なインクの消費を低減することができるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載のインクジェット記録装置は、ある色のインクを用いた画像記録を行わないときにインク供給チューブから当該インクを退避させることを特徴とする。
【0009】
具体的には、上述のインクジェット記録装置は、ノズルからインクを吐出することで被記録媒体に画像を記録する記録ヘッドに内蔵されたサブインクタンクへ、インク供給チューブを介してインクタンクからインクを供給する構成をn(n=1,2,3…)色のインクごとに有するインクジェット記録装置であって、ある色のインクを用いる画像記録を行わないときは、当該インクを供給するインク供給チューブからインクをインクタンクへ退避させておき、当該インクを用いて画像記録を行うときは、インクタンクから当該インクを供給するインク供給チューブへインクを導入して画像記録を開始する。
【0010】
なお、このような構成を有するインクジェット記録装置としては、1色のインクによる単色画像記録を行うインクジェット記録装置であってもよいし、複数色のインクによる多色画像記録可能なインクジェット記録装置であってもよい。
【0011】
このように構成されたインクジェット記録装置によれば、ある色のインクを用いた画像記録を行わないときにインク供給チューブから当該インクを退避させるので、インク供給チューブからのインクの溶媒の蒸発を防ぐことができる。つまり、インクの溶媒の蒸発を防ぐための特段の機能を持たない低コストのインク供給チューブであっても、インク供給チューブにおけるインクの増粘を抑制することができる。また、インク供給チューブからインクを退避させた状態であれば、記録ヘッドにおいてメンテナンス動作に伴いインクが排出されても、記録ヘッドに新たにインクが供給されることがなく、結果として廃棄されるインクの量を低減することができる。
【0012】
また、インク供給チューブにおけるインクの増粘を抑制することができるので、インク供給チューブからインクを退避させた状態であれば、そのインク用の記録ヘッドに対するメンテナンス動作を行わないようにしたり、回数を減らしたりするように構成して、廃棄されるインクの量を低減するようにしてもよい。
【0013】
ところで、複数色のインク(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等)によってカラー画像記録を行う機能と、ブラックインクによってモノクロ画像記録を行う機能とを備えるようなインクジェット記録装置においては、ユーザの利用状況によってモノクロ画像記録を行う機会が多く、カラー画像記録はあまり行われないといった状況になることがある。このように、インクの色によって使用頻度に偏りがある場合、使用頻度の低いカラーインクがインク供給チューブに長時間滞留することになり、その分インクから蒸発する溶媒の量が多くなり、カラーインクの方がインクの粘度が上昇し易くなる。
【0014】
そこで、モノクロ画像記録を行うモード選択中には、カラーインクをインク供給チューブから退避させておけば、カラーインクをインク供給チューブに長時間滞留させておくことがなく、またメンテナンス動作によって無駄に消費されるインクの量を低減することができるので好適である。具体的には、請求項2に記載のインクジェット記録装置のように構成するとよい。即ち、特定の色のインクによる画像記録を行う単色画像記録モードと、特定の色のインク及び他の色のインクによる画像記録を行う多色画像記録モードとを選択可能に構成されている。そして、少なくとも単色画像記録モードが選択されている場合、他の色のインクを供給する各インク供給チューブから他の色のインクを各インクタンクへ退避させておき、多色画像記録モードにて画像記録を行うときに、各インクタンクから各インク供給チューブへ他の色のインクを導入して画像記録を開始する。
【0015】
なお、ここでいう特定の色のインクとは、例えばブラックインクのように、モノクロ(単色)画像記録に用いられるインクのことである。また、他の色のインクとは、例えばブラック以外のシアン、マゼンタ、イエローといった、カラー(多色)画像記録に用いられるカラーインク等のことである。
【0016】
このように構成されたインクジェット記録装置によれば、モノクロ画像記録を行う機会が多く、カラー画像記録はあまり行われないといった状況において、カラーインクをインク供給チューブに長時間滞留させることがなく、カラーインクの増粘を低減することができる。また、記録ヘッドのメンテナンス動作によって無駄に消費されるカラーインクの量を低減することができる。
【0017】
なお、請求項3に記載のインクジェット記録装置のように、単色画像記録モードの具体例として、ファクシミリ画像記録を行うファクシミリモードが含まれ、多色画像記録モードの具体例として、コンピュータの出力装置として画像記録を行うプリンタモード、又はスキャナで読み取った画像を複写するコピーモードの少なくとも何れか一方が含まれているように構成するとよい。
【0018】
ファクシミリ機能、プリンタ機能、コピー機能等を併せ持つインクジェット記録装置のようないわゆる複合機は、常時はファクシミリモードを選択してファクシミリ待ち受け状態にしておき、必要な時だけプリンタモードやコピーモードを選択して画像を出力するといった態様で使用されることが一般的である。また、一般的にファクシミリ画像はモノクロの画像であり、ブラックインクが用いられる。そこで、請求項3に記載のインクジェット記録装置のように、ファクシミリモード選択時にファクシミリ画像記録に用いないカラーインクをインク供給チューブから退避させておけば、ファクシミリ待ち受け時のような不特定な期間に、カラーインクをインク供給チューブに滞留させることがなく、カラーインクの増粘を低減することができる。また、ファクシミリ画像記録中に行われる記録ヘッドのメンテナンス動作によって無駄に消費されるカラーインクの量を低減することができる。
【0019】
また、請求項4に記載に記載のインクジェット記録装置のように、モードを多色画像記録モードから単色画像記録モードへ変更したときに、他の色のインクを各インク供給チューブから退避させるように構成されているとよい。このようにすれば、例えば、多色画像記録モードであるプリンタモードやコピーモードから単色画像記録モードであるファクシミリモードへ移行する際に、ファクシミリモードで用いられないカラーインク等を速やかにインク供給チューブから退避させることができる。
【0020】
また、請求項5に記載のインクジェット記録装置のように、多色画像記録モードを選択中に所定時間以上画像の記録が行われなかったときに、他の色のインクを各インク供給チューブから退避させるように構成してもよい。このようにすれば、ファクシミリモード等の単色画像記録モード選択時に限らず、プリンタモードやコピーモード等の多色画像記録モードが選択された状態で長時間画像記録が行われない場合にも、カラーインクをインク供給チューブに長時間滞留させることがなく、カラーインクの増粘を低減することができる。そして、記録ヘッドにおけるメンテナンス動作によって無駄に消費されるカラーインクの量を低減することができる。
【0021】
一方、プリンタモードやコピーモード選択時であっても、例えば、文章を印刷又はコピーする場合のようにカラーインクを用いないモノクロ画像記録が行われることが多い。このような場合、カラーインクをインク供給チューブから退避させておけば、インクの増粘を低減することができるので好適である。そこで、請求項6に記載のインクジェット記録装置のように構成するとよい。つまり、多色画像記録モードで他の色のインクを使用するか否かを選択可能に構成されており、多色画像記録モードで他の色のインクを使用しないことが選択された場合、他の色のインクを各インク供給チューブから退避させた状態でプリンタモードにおける画像の記録を行う。
【0022】
このようなインクジェット記録装置によれば、プリンタモード等の多色画像記録モードにおいてモノクロの画像を出力する際に、カラーインクを使用しないことをユーザが選択することで、カラーインクのインク供給チューブからインクを退避させることができる。よって、カラー画像の出力をめったに行わないユーザにとっては、カラーインクの増粘及びメンテナンス動作によるインクの廃棄量を低減することができるので便利である。
【0023】
また、請求項7に記載のインクジェット記録装置のように、ソフトスイッチがオフにされることよって待機状態へ移行する際に、インクをインク供給チューブから退避させるように構成してもよい。なお、ここでいうソフトスイッチとは、システムの稼働状態(ソフトスイッチ:オン)と待機状態(ソフトスイッチ:オフ)とを切り替えるための機構であり、主電源を開閉するためのいわゆるメインスイッチとは異なるものである。つまり、ソフトスイッチがオフされることによってシステムが待機状態にあってもシステム自体には給電されており、待機中であっても必要な機構を作動させることも可能である。また、ソフトスイッチによってシステムを待機状態にしておくことで、メインスイッチがオンにされてからシステムが稼働状態へと起動するのと比較して、より速やかに稼働状態へ復帰させることができる。
【0024】
このようなインクジェット記録装置によれば、ソフトスイッチによって待機状態に移行する際にインクをインク供給チューブから退避させておけば、システム待機中には画像記録が行われないので、システム待機中にインク供給チューブ内にインクが滞留することがない。よって、インク供給チューブにおけるインクの増粘を低減することができる。このとき、全ての色のインクをインク供給チューブから退避させてもよいし、例えば、使用頻度の高いブラックインクについてはインク供給チューブに滞留させたままにしておき、カラーインクのみを退避させてもよい。
【0025】
とこころで、モノクロ画像記録もカラー画像記録も両方ある程度の頻度でよく利用される場合、全ての色のインクについてインク供給チューブに同じインクが長時間滞留することがないので、インク供給チューブにおいてインクはそれほど増粘しないものと考えられる。また、インク供給チューブからインクを退避させたり、再び導入したりするのには、ある程度の時間が必要である。したがって、モノクロ画像記録もカラー画像記録も両方ある程度の頻度でよく利用されるのであれば、時間をかけてまでインク供給チューブからインクを退避させて再び導入するよりも、インクの退避・導入を行わずに速やかに画像記録を開始した方が、ユーザにとって時間的な面でよりメリットが大きい場合も想定される。
【0026】
そこで、請求項8に記載のインクジェット記録装置のように、インク供給チューブからのインクの退避を行うか否かをユーザによって選択可能に構成されているとよい。このようにすれば、ユーザの好みに応じてインクをインク供給チューブから退避させるか否かを選択することができるので便利である。つまり、例えば、主にモノクロ画像記録を中心に利用しカラー画像記録をめったに利用しないユーザにとっては、インクの退避・導入を行うように選択することで、インクの増粘を低減することができることで得られるメリットが大きい。一方、モノクロ画像記録もカラー画像記録も両方ある程度の頻度でよく利用するユーザにとっては、インクの退避・導入を行わないように選択すれば、時間を節約することで得られるメリットが大きい。
【0027】
ところで、インクをインク供給チューブから退避させた状態において、画像記録中に当該インクの記録ヘッドにおいてメンテナンス動作が実行されてサブインクタンク内のインクが排出される等の何らかの理由でサブインクタンク内のインクの容量が減少し、更にはサブインクタンク内が空になってしまうと、僅かに残留したインクがノズル内で乾燥して完全に固化すること等の要因により、記録ヘッドのインク吐出機能が損なわれるおそれがある。
【0028】
このような事態を回避するためには、請求項9に記載のインクジェット記録装置のように構成するとよい。即ち、インク供給チューブからインクを退避させている状態で当該インクのサブインクタンク内に貯留されているインクが所定量以下になった場合、当該インクのインクタンクからインク供給チューブを介してサブインクタンクへインクを供給する。このようにすることで、サブインクタンク内のインクが空になることがなくなり、記録ヘッドのインク吐出機能が損なわれるのを防止することができる。
【0029】
一方、記録ヘッドに内蔵されたサブインクタンクへインク供給チューブを介してインクタンクからインクを供給するように構成されたインクジェット記録装置においては、インク供給チューブからインクを退避させたり、再びインクを導入したりといった動作を速やかに行うために、インク供給チューブと連通しているサブインクタンクを大気開放するバルブ手段等を設ける必要がある。ここで、インク供給チューブからインクを退避させるのに伴い、インク供給チューブと連通しているサブインクタンク内のインクがある程度減少し、バルブ手段を介してサブインクタンク内に空気が流入する。そして、インク供給チューブへインクを導入するのに伴い、サブインクタンク内にもインクが再び充填されるとともに、サブインクタンク内の空気はバルブ手段を介して排出される。このとき、サブインクタンク内をインクで満たすために、バルブ手段からタンク内の空気と共にインクも排出されることがあり、インクを無駄に消費してしまうおそれがある。
【0030】
そこで、このような事態を回避するために請求項10に記載のインクジェット記録装置のように構成するとよい。即ち、インク供給チューブによるインク流通経路途中に、インクをインクタンクからインク供給チューブ及びサブインクタンクへ供給する方向、及びインクをインク供給チューブからインクタンクへ退避させる方向の両方向にインクを液送可能な液送手段(例えば、容積型ポンプ等)と、液送手段によってインク供給チューブからインクをインクタンクへ退避させる動作中、又はインクタンクからインクをインク供給チューブへ導入する動作中に、サブインクタンク内を大気開放するバルブ手段とを備えている。そして、サブインクタンク内とバルブ手段とは、気体を透過させインクを透過させない選択透過膜を介して連通している。
【0031】
このようなインクジェット記録装置によれば、気体を透過させインクを透過させない選択透過膜(以下、気体透過膜ともいう。)によって、サブインクタンク内のインクがバルブ手段から空気と共に排出されるのを阻害することができるので、インク供給チューブ内にインクを導入する際にインクが無駄に排出されるのを防ぐことができる。
【0032】
また、請求項11に記載のインクジェット記録装置は、液送手段によって記録ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる機能を備えることを特徴とする。即ち、インクをインクタンクからインク供給チューブ及びサブインクタンクへ供給する機能、インクをインク供給チューブからインクタンクへ退避させる機能、及び液送手段が記録ヘッドのノズルからインクを強制的に排出させる機能を1つのポンプで実現することができる。具体的には、ポンプの回転方向や回転速度を変化させることで、インクの液送方向及び液送時の圧力を制御する。例えば、インクをインク供給チューブからインクタンクへ退避させる際、又はインクをインクタンクからインク供給チューブへ導入する際には、記録ヘッドのノズルにおけるメニスカスを破壊しない程度の圧力(即ち、ノズルからインクが漏出しない程度の圧力。)にてインクを各方向へ液送するようにポンプを駆動し、フラッシングやパージといったメンテナンス動作時には、ノズルのおけるメニスカスを破壊する圧力を超える圧力にてインクを記録ヘッドへ液送するようにポンプを駆動してノズルからインクを強制的に排出させる。
【0033】
このように、1つのポンプでインクの供給、退避、強制排出といった複数の機能を実現することで、インクを液送するための機構に必要な部品点数を少なくすることができ、インクジェット記録装置の小型化及びコストダウンに寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[インクジェット記録装置1の全体構成の説明]
図1は、本発明を適用するのに好適なインクジェット記録装置1の外形斜視図である。また、図2は、インクジェット記録装置1の断面図である。
【0035】
インクジェット記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能等を備えた、いわゆる多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、被記録媒体として、紙又はプラスチックフィルム等のシート状の用紙が用いられる。なお、本インクジェット記録装置1では、ファクシミリ機能においては、モノクロ画像記録を行い、プリンタ機能及びコピー機能においては、カラー及びモノクロ画像記録画を行うことが可能である。
【0036】
図1及び図2に示すように、インクジェット記録装置1は、ケース1aの上部にスキャナ2が設けられ、その下部(ケース1a内の上部)に、上記各種機能において記録用紙40への記録(画像形成)を行うための記録部7が設けられている。ケース1a内の下部には、給紙装置30が設けられている。
【0037】
また、ケース1a内の後方であって給紙装置30よりも上方には、箱型の金属製のフレーム5が配置されている。フレーム5は左右方向に長いほぼ直方体形状であり、ケース1aの内部に固定されている。
【0038】
フレーム5内の上部には記録部7が配置されている。記録部7は、プリンタ画像記録を行うための記録ヘッド4を搭載して左右(主走査方向)へ往復移動可能なキャリッジ4a及びその他の機構からなる。この記録部7において、キャリッジ4aはCPU等からなる制御装置110(図2には示さず。図6参照)により制御されることにより左右に往復することで記録ヘッド4も走査される。記録ヘッド4はこの走査時にノズルからインクを吐出することで記録ヘッド4の下方で停止配置される記録用紙40に画像を記録する。
【0039】
また、記録部7におけるキャリッジ4aの待機位置に相当する位置にはメンテナンスユニット(図示なし)が搭載されている。メンテナンスユニット部分では、ブレード等による記録ヘッド4のノズル面の拭き取りを行うワイピング動作や、ノズル内からゴミや空気、更には固化したインクを強制的に除去するためのパージ動作、フラッシング動作等の各種メンテナンス動作が行われる。
【0040】
ケース1a内部の前方には、フルカラー画像記録のための4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクをそれぞれ収容した4個のインクカートリッジ13(図2には示さず。図3参照)が収納されている。これらのインクカートリッジ13は、着脱可能に構成されており、インクの補充を行う場合はインクカートリッジ13ごと交換する。
【0041】
各インクカートリッジ13に収容されているインクは、各インクカートリッジ13と記録ヘッド4とを結ぶ4本のインク供給チューブ11を介して記録ヘッド4へ供給されるように構成されている。そして、これらのインク供給チューブ11は、キャリッジ4aの往復運動に対して従動可能に支持されている。
【0042】
また、フレーム5の後方には、給紙装置30の後方から記録部7へと記録用紙40を案内する搬送路5aが形成されている。記録部7は、搬送路5aの出口に隣接する箇所に搬送ローラ7aを有し、画像の記録された記録用紙40を排出する箇所に排出ローラ7bを有する。この搬送ローラ7aは用紙搬送モータ123(図2には示さず。図6参照)の回転駆動力を受けて回転する。
【0043】
給紙装置30は、ケース1aの開口部1bから挿入されてセットされた給紙カセット3を備えている。この給紙カセット3には、積み重ねた記録用紙40を収納する用紙収納部3aが設けられ、給紙カセット3がケース1a内に挿入されると、用紙収納部3a内の記録用紙40はケース1a内の後方に配置される。
【0044】
そして、用紙収納部3aの最上層に積層されている記録用紙40は、給紙ローラ8が回転することにより、搬送路5aを経て記録部7へ送り出される。なお、給紙ローラ8は、駆動軸9に軸支された長尺状のアーム10の先端部に回転可能に保持されており、駆動軸9が給紙モータ122(図2には示さず。図6参照)の回転駆動力を受けて回転することによりその回転が伝達されて回転するよう構成されている。
【0045】
また、インクジェット記録装置1の上部前面には、各種操作ボタンや液晶パネルなどからなる操作パネル6が設けられている。この操作パネル6により、ユーザは当該インクジェット記録装置1におけるプリンタモード、コピーモード、スキャナモード、ファクシミリモードといった各モードの選択をしたり、各種モードにおける各種設定項目を設定したり、ファクシミリ番号などの必要事項を入力したり、動作状況や通信履歴などを確認したりすることができる。
【0046】
[インク供給機構の説明]
図3は、インクジェット記録装置1のインク供給機構の概略構成を示す説明図であり、(a)はインク供給機構の側断面を模式的に示す図、(b)は記録ヘッド4の上視断面を模式的に示す図である。
【0047】
インク供給機構は、記録部7のキャリッジ4a上に設けられたマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)各色のインクに対応する4基の記録ヘッド4(図3(b)参照)へそれぞれに対応するインクカートリッジ13からインクを供給するための機構である。図3(a)に示すように、各色のインクに対応する記録ヘッド4内にそれぞれ設けられたサブタンク14と、各色のインクのインクカートリッジ13とは、インク供給チューブ11とインク供給チューブ11の途中に設けられたポンプ12とを介して連通している。つまり、4基の記録ヘッド4にそれぞれ対応して、インク供給チューブ11及びポンプ12が設けられている。
【0048】
記録ヘッド4は、その下方のノズル面に設けられたノズルから吐出するインクを貯留するためのサブタンク14と、サブタンク14を大気開放又は閉成するためのバルブユニット15を備える。サブタンク14とバルブユニット15との間は、空気を透過しインクを透過させない選択透過膜である気体透過膜15dを介して連通している。これにより、バルブユニットによる大気開放時は、空気だけがサブタンク14とバルブユニット15の間を流通し、インクはサブタンク14からバルブユニット15へは漏れ出さない構造となっている。
【0049】
バルブユニット15は、上部の大径部15fと、下部に設けられた小径の通気孔15eとからなる。大径部15f内には大径の弁体と小径のロッドとが一体に形成されたバルブ15bが昇降可能に収納されている。また、バルブ15bの弁体の下端面側と通気孔15eの上端面側との間にはシール用のOリングであるパッキン15cが介在している。そして、バルブ15bは大径部15f内に設けられたコイルスプリング等のばね15aによって常時下向きに押圧されている。この状態で、パッキン15cがバルブ15bの弁体と大径部15fとによって押圧されて、バルブ閉成状態となる。このとき、バルブ15bのロッドは通気孔15eの下端開口近傍まで延びてきている。一方、記録ヘッド4の待機位置等に設けられたリリースロッド16が上昇して、バルブ15bのロッドをばね15aの付勢力に抗して上向きに押圧すると、バルブ15bの弁体がパッキン15cから離れ、バルブ開成状態、即ち大気開放状態となる。
【0050】
ポンプ12は、インク供給チューブ11の途中に設けられている。このポンプ12は、インクをインクカートリッジ13から記録ヘッド4のサブタンク14へ供給する方向(以下、インク供給方向と称す。)と、インクをサブタンク14からインクカートリッジ13へ戻す方向(以下、インク退避方向と称す。)との双方向にインクを液送可能なポンプである。
【0051】
図4は、ポンプ12の具体例を示す図であり、(a)はねじポンプ12aの概略構成を示し、(b)はベーンポンプ12dの概略構成を示す図である。
ねじポンプ12aでは、図4(a)に示すように、ケーシング12bに内接してねじ形回転子12cを回転させることで、インクがねじ形回転子12cのねじ山とケーシング12bの内壁との間にできる隙間を満たして軸方向へ送られ、ポンプとして機能する。一方、ベーンポンプ12dは、図4(c)に示すように、ロータ12fに放射状に設けられた溝の中を板状の羽根(ベーン)12gがロータ12fの半径方向へ自由に出入りするような構成を有する。ロータ12fが回転することによってベーン12gが遠心力でロータ12fの半径方向外方へ延出し、ベーン12gの先端がケーシング12eの内周面に接触し、ロータ12fの回転に伴って摺動する。ロータ12fの回転によって、ベーン12g、ロータ12f及びケーシング12eで囲まれた室の大きさが拡大、縮小することによってポンプとして作用する。なお、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、インク液送用のポンプ12としてねじポンプ12a、ベーンポンプ12dの何れを用いてもよい。
【0052】
図5は、ポンプ駆動切替機構17の概略構成を示す図である。このポンプ駆動切替機構17は、K、Y、C、Mの各色のインクに対応する各ポンプ12を選択的に駆動するためのものである。
【0053】
図5(a)に示すように、ポンプ駆動切替機構17は、K、Y、C、M各色のインク用のポンプ12への駆動力の連結切替を行うための駆動切替ギア18、ポンプ駆動モータ23(図5には示さず。図6参照)の作動により回転するポンプ駆動軸19、ポンプ駆動軸19を軸に回転可能に支持されているギア支持部材20、ポンプ駆動軸19に軸通されている駆動軸ギア21a、ギア支持部材20の一端に軸支され駆動軸ギア21aと係合する中間ギア21b、及びポンプ12を駆動するためのポンプ側ギア21c等からなる。なお、ギア支持部材20、駆動軸ギア21a、中間ギア21b及びポンプ側ギア21cからなる一連の構成ついては、各色のインクに対応するポンプ12ごとに設けられている。また、各ギア支持部材20は、中間ギア21bをポンプ側ギア21cへ係合させる方向へ常に付勢されている。
【0054】
駆動切替ギア18は、ステッピングモータ等の駆動切替モータ22(図5には示さず。図6参照)の作動によって回転するように構成されている。この駆動切替ギア18には、回転したときに下方に設けられている各ギア支持部材20の他端に係合する帯状の歯18aが4方向へ90°おきに放射状に形成されている。更に、各方向の歯18aには、それぞれ異なる位置に1箇所、各歯18aと1対1で対応するギア支持部材20と係合しないように切欠きが設けられている。つまり、この駆動切替ギア18を所定量(90°)ずつ回転させることで、駆動切替ギア18に設けられた各歯18aとその切欠き部分との作用により、駆動するポンプを1台ずつ選択することができるように構成されている。
【0055】
具体的には、図5(b)に示すように、この歯18aの切欠き部分が下側にあるとき、この切欠き部分に対応するギア支持部材20が中間ギア21bをポンプ側ギア21cへ押圧し、中間ギア21bがポンプ側ギア21cと係合する。したがって、駆動軸ギア21a、中間ギア21b及びポンプ側ギア21cが互いに係合している状態になる。このとき、ポンプ駆動モータ23の駆動を受けて回転するポンプ駆動軸19の回転が、ポンプ駆動軸19に軸通されている駆動軸ギア21a及び中間ギア21bを介してポンプ側ギア21cへ伝達され、ポンプ側ギア21cが回転することによってポンプ12が駆動する。
【0056】
一方、図5(c)に示すように(この図は駆動切替ギア18が図5(b)に示す状態から反時計回りへ90°だけ回転した状態を示す。)、歯18aが下側へ回りギア支持部材20の他端側と係合している状態では、ギア支持部材20が付勢力に逆らってポンプ駆動軸19を中心に回転し(図5(c)では、時計回り方向。)、ギア支持部材20の一端側に軸支されている中間ギア21bとポンプ側ギア21cとの係合が離れる。このとき、ポンプ駆動軸19の回転がポンプ側ギア21cへ伝達されず、ポンプ12は駆動しない。
【0057】
なお、ポンプ駆動切替機構17においては、ポンプ駆動モータの回転方向を正逆切り替えることで各ポンプ12を正逆両方向駆動すること、即ちインク供給方向との双方向にインクを液送することが可能である。
【0058】
[インクジェット記録装置1の電気的構成]
ここで、インクジェット記録装置1の電気的構成について、図6のブロック図を用いて説明する。
【0059】
図6に示すように、インクジェット記録装置1は、CPU111、ROM112、RAM113及びEEPROM114を有する制御装置110を備えている。
この制御装置110は、記録用紙40の有無やその先端部、後端部、幅方向における端縁などを検出可能な周知のメディアセンサやレジストセンサなどからなる各種センサ群116、記録用紙40の搬送量(位置)を検出する用紙搬送用エンコーダ117、操作パネル6、キャリッジ送り用エンコーダ118等と電気的に接続されている。
【0060】
そして更に、制御装置110は、給紙モータ122を駆動するための給紙モータ駆動回路120a、用紙搬送モータ123を駆動するための搬送モータ駆動回路120b、キャリッジモータ124を駆動するためのキャリッジモータ駆動回路120c、記録ヘッド4を駆動(インクを吐出)するための記録ヘッド駆動回路120d、駆動切替モータ22を駆動するための駆動切替モータ駆動回路120e、ポンプ駆動モータ23を駆動するためのポンプ駆動モータ駆動回路120f、及びリリースロッド駆動部24を駆動するためのリリースロッド駆動回路120gの各々と電気的に接続されている。
【0061】
そして、ROM112やEEPROM114に格納された各種プログラムに従ってCPU111が各駆動回路120a〜120gを制御することで、それぞれの駆動対象が駆動・制御されることとなる。なお、既述の通り、給紙モータ122の回転により給紙ローラ8が駆動され、用紙搬送モータ123の回転により搬送ローラ7aが駆動される。
【0062】
また、制御装置110は、所定のタイミングでインク供給チューブ11からインクを退避させるインク退避処理及びインク導入処理(詳細については後述する。)を実行する。
[インク退避処理の説明]
以下、制御装置110が実行するインク退避処理について、図7のフローチャート及び図9に基づいて説明する。
【0063】
図7は、制御装置110において実行されるインク退避処理の手順を示すフローチャートである。このインク退避処理は、所定のタイミングでインク供給チューブ11内のインクをインクカートリッジ13へ退避させる処理であり、所定のタイミングとは以下の(1)〜(4)の通りである。(1)ユーザからの操作パネル6の操作入力等によって、選択中のモードがプリンタモード又はコピーモードからファクシミリモードへ切り替わったときに、ファクシミリモードでの画像記録に用いないY、C、Mの各カラーインクをインク供給チューブ11からインクカートリッジ13へ退避させる。(2)プリンタモード又はコピーモード選択中に所定時間以上画像記録が行われなかった場合、Y、C、Mの各カラーインクをインク供給チューブ11からインクカートリッジ13へ退避させる。(3)ユーザからの操作パネル6の操作入力等によって、プリンタモード又はコピーモードにおいてカラーインクを用いずモノクロ画像記録を行う設定が選択されたときに、Y、C、Mの各カラーインクをインク供給チューブ11からインクカートリッジ13へ退避させる。(4)ユーザからの操作パネル6の操作入力等によってインクジェット記録装置1のソフトスイッチがオフにされて待機状態へ移行するときに、K、Y、C、Mの各色のインク又は、Y、C、Mの各カラーインクをインク供給チューブ11からインクカートリッジ13へ退避させる。
【0064】
まず、ステップ10(以下、単にS10と表記する。他のステップについても同様。)において、リリースロッド駆動部24(図6参照)を制御し、リリースロッド16を上昇させて、退避の対象となる色のインクに対応するバルブユニット15を開放する。このとき、図9(a)に示すバルブ閉成状態から、リリースロッド16が上昇してバルブ15bを押し上げることによって、バルブ開成状態、即ちサブタンク14が大気開放状態となる(図9(b)参照)。
【0065】
次に、S20において、駆動切替モータ22及びポンプ駆動モータ23(図6参照)を制御し、退避の対象となる色のインクに対応するポンプ12を駆動してインク供給方向へインクを液送し、サブタンク14へインクを供給する(以下、このようなポンプ12の駆動を供給駆動とも称す。)。なお、インク供給時においてはポンプ駆動モータ23の回転速度等を制御することによって、記録ヘッド4のノズルにおけるインクのメニスカスを破壊しない程度の圧力(本実施形態においては、3.5kpa未満)でインクを液送する。ここでは、図9(c)に示すように、サブタンク14内へインクが供給されるのに伴いサブタンク14内の空気は気体透過膜15dを透過し、バルブユニット15内を流通して通気孔15eから排気されることで、インクの供給が速やかに行われる。このとき、サブタンク14内のインクは気体透過膜15dを透過しないので、インクがバルブユニット15内へ漏れ出すことがない。
【0066】
続いて、S30において、記録ヘッド4に設けた光学センサ(図示なし)やインク供給チューブ11に設けた圧力センサ(図示なし)等の検知結果に基づいて、サブタンク14内のインクが満杯になったか否かを判定する。ここで、サブタンク14内のインクが満杯ではないと判定した場合(S30:N)、S20の処理へ戻ってポンプ12の供給駆動を継続する。一方、サブタンク14内のインクが満杯であると判定した場合(S30:Y)、ポンプ12を停止する(S40)。
【0067】
なお、S20及びS30において、インク供給チューブ11からインクを退避させるのに先駆けて、一旦サブタンク14を満杯にするのには以下のような理由がある。即ち、インク供給チューブ11からインクを退避させた際、サブタンク14内のインクの残量が僅かであるような場合、画像記録中に当該インクの記録ヘッド4においてメンテナンス動作が実行されてサブタンク14内のインクが排出される等の何らかの理由でサブタンク14内が空になってしまうと、ごく僅かに残留したインクがノズル内で乾燥して完全に固化すること等の要因により、記録ヘッド4のインク吐出機能が損なわれるおそれがある。このような事態を回避するために、一旦サブタンク14に満杯にしてから所定量のインクをインクカートリッジ13へ戻すという手順によってインク供給チューブ11からインクを退避させることで、インク退避後のサブタンク14には十分な量のインクが残されることになる。よって、サブタンク14内のインクがすぐに空になることを防ぐことができる。
【0068】
次に、S50において、駆動切替モータ22及びポンプ駆動モータ23を制御し、当該ポンプ12を供給駆動とは逆方向に駆動してインク退避方向へインクを液送し、インクカートリッジ13へインクを戻す(以下、このようなポンプ12の駆動を退避駆動とも称す。)。なお、インク退避時においてはポンプ駆動モータ23の回転速度等を制御することによって、記録ヘッド4のノズルにおけるインクのメニスカスを破壊しない程度の圧力(本実施形態においては、3.5kpa未満)でインクを液送する。ここでは、図9(d)に示すように、サブタンク14内のインクが減少するのに伴いバルブユニット15の通気孔15eから吸気された空気が気体透過膜15dを透過してサブタンク14内に流入することで、インクの退避が速やかに行われる。
【0069】
続いて、S60において、ポンプ12を駆動するためのポンプ駆動モータ23を所定のパルス分駆動したか否かを判定する。なお、ここでいう所定のパルス分とは、インク供給チューブ11からインクを退避させるのに必要な液送量分だけポンプ12を駆動するのに必要な回転数分ポンプ駆動モータ23を駆動するための電源パルスの量のことをいう。この電源パルスの量は、ポンプ12の容量、必要なインクの液送量及びギア比等に基づいて予め設定されている。
【0070】
S60において、ポンプ駆動モータ23を所定のパルス分駆動していない(即ち、所定量のインクを液送していない)と判定した場合(S60:N)、S50の処理へ戻ってポンプ12の退避駆動を継続する。ポンプ12の退避駆動が継続し、やがてサブタンク14内のインクの液面がインク供給チューブ11の連接位置よりも下がると、インク供給チューブ11からインクが退避され、インク供給チューブ11内が空になる。そして、S60において、ポンプ駆動モータ23を所定のパルス分駆動した(即ち、所定量のインクを液送した)と判定した場合(S60:Y)、ポンプ12を停止する(S70)。
【0071】
次に、S80において、リリースロッド駆動部24を制御し、リリースロッド16を下降させて、退避の対象となる色のインクに対応するバルブユニット15を閉成する。このとき、図9(e)に示すように、バルブ開成状態からリリースロッド16が下降することによって、バルブ15bが元の位置へ戻り、バルブ閉成状態、即ちサブタンク14が大気閉成状態となる。
【0072】
なお、退避の対象となる色のインクが複数色ある場合は、上記の処理を各色のインクごとに繰り返す。
[インク導入処理の説明]
以下、制御装置110が実行するインク導入処理について、図8のフローチャート及び図10に基づいて説明する。
【0073】
図8は、制御装置110において実行されるインク導入処理の手順を示すフローチャートである。このインク導入処理は、上述のインク退避処理によってインク供給チューブ11からインクを退避させた状態から、当該退避させたインクを用いて画像記録を行うときに再びインク供給チューブ11及びサブタンク14へインクを導入する処理である。
【0074】
例えば、Y、C、Mの各カラーインクを退避させている場合、カラー画像記録を実行する指示を受信したときに各カラーインクを再び導入する。また、K、Y、C、Mの各色のインクを退避させている場合、モノクロ画像記録を実行する指示を受信したときは、Kインクのみを再び導入し、カラー画像記録を実行する指示を受信したときは、全ての色のインクを再び導入する。あるいは、ファクシミリモード選択時においてY、C、Mの各カラーインクを退避させている状態から、選択されているモードがプリンタモードへ切り替えられたときに各カラーインクを再び導入するように構成してもよい。また、Kインクを退避させた状態において、ファクシミリモードが選択されたときにKインクを再び導入するように構成してもよい。
【0075】
まず、S110において、リリースロッド駆動部24(図6参照)を制御し、リリースロッド16を上昇させて、インク導入の対象となる色のインクに対応するバルブユニット15を開放する。このとき、図10(a)に示すバルブ閉成状態から、リリースロッド16が上昇してバルブ15bを押し上げることによって、バルブ開成状態、即ちサブタンク14が大気開放状態となる(図10(b)参照)。
【0076】
次に、S120において、駆動切替モータ22及びポンプ駆動モータ23(図6参照)を制御し、インク導入の対象となる色のインクに対応するポンプ12を供給駆動し、サブタンク14へインクを供給する。ここでは、図10(c)に示すように、サブタンク14内へインクが供給されるのに伴いサブタンク14内の空気は気体透過膜15dを透過し、バルブユニット15内を流通して通気孔15eから排気されることで、インクの供給が速やかに行われる。このとき、サブタンク14内のインクは気体透過膜15dを透過しないので、インクがバルブユニット15内へ漏れ出すことがない。
【0077】
続いて、S130において、記録ヘッド4に設けた光学センサ(図示なし)やインク供給チューブ11に設けた圧力センサ(図示なし)等の検知結果に基づいて、サブタンク14内のインクが満杯になったか否かを判定する。ここで、サブタンク14内のインクが満杯ではないと判定した場合(S130:N)、S120の処理へ戻ってポンプ12の供給駆動を継続する。一方、サブタンク14内のインクが満杯であると判定した場合(S130:Y)、ポンプ12を停止する(S140)。このとき、サブタンク14内のインクが満杯になると共に、インク供給チューブ11内にもインクが満たされた状態になる。
【0078】
次に、S150において、リリースロッド駆動部24を制御し、リリースロッド16を下降させて、インク導入の対象となる色のインクに対応するバルブユニット15を閉成する。このとき、図10(d)に示すように。バルブ開成状態からリリースロッド16が下降することによって、バルブ15bが元の位置へ戻り、バルブ閉成状態、即ちサブタンク14が大気閉成状態となる。
【0079】
なお、インク導入の対象となる色のインクが複数色ある場合は、上記の処理を各色のインクごとに繰り返す。
[本実施形態の効果等]
本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、以下のような効果を奏する。即ち、選択中のモードがファクシミリモードに切り替わったときに、ファクシミリ画像記録(モノクロ画像記録)に用いないY、C、Mの各色のカラーインクをインク供給チューブ11から退避しておくことで、ファクシミリ待ち受け時のような不特定な期間に、各色のカラーインクをインク供給チューブ11に滞留させることがない。したがって、インク供給チューブ11からのインクの溶媒の蒸発を防ぐことができ、カラーインクの増粘を低減することができる。また、ファクシミリ画像記録中に記録ヘッド4においてメンテナンス動作に伴いインクが排出されても、インク供給チューブ11からインクを退避させておくことで記録ヘッド4に新たにインクが供給されることがなく、結果として廃棄されるインクの量を低減することができる。
【0080】
また、プリンタモード又はコピーモードが選択された状態で長時間画像記録が行われない場合に各色のカラーインクを退避させるので、各色のカラーインクをインク供給チューブ11に長時間滞留させることがなく、インクの増粘を低減することができる。
【0081】
また、プリンタモード又はコピーモードにおいてモノクロの画像を出力する場合に、カラーインクを使用しないことをユーザが選択することで、各色のカラーインクのインク供給チューブ11からインクを退避させることができる。よって、カラー画像の出力をめったに行わないユーザにとっては、カラーインクの増粘及びメンテナンス動作によるインクの廃棄量を低減することができるので便利である。
【0082】
また、ソフトスイッチによって待機状態に移行する際に各色のインクをインク供給チューブ11から退避させておくので、画像記録が行われないシステム待機中にインク供給チューブ11内にインクが滞留することがない。よって、インク供給チューブ11におけるインクの増粘を低減することができる。
【0083】
更に、サブタンク14とバルブユニット15との連通部に設けた気体透過膜15dによって、サブタンク14のインクがバルブユニット15から空気と共に排出されるのを阻害することができるので、サブタンク14にインクを供給する際にインクが無駄に排出されるのを防ぐことができる。
【0084】
なお、実施形態のインクジェット記録装置1の構成と特許請求の範囲に記載の構成との対応関係は以下の通りである。まず、インクカートリッジ13が特許請求の範囲におけるインクタンクに相当し、サブタンク14がサブインクタンクに相当する。また、ファクシミリモードが単色画像記録モードに相当し、プリンタモード及びコピーモードが多色画像記録モードに相当する。また、ブラックインクが特定の色のインクに相当し、イエロー、シアン、マゼンタの各色のインクが他の色のインクに相当する。また、ポンプ12、ポンプ駆動切替機構17、駆動切替モータ22、ポンプ駆動モータ23、駆動切替モータ駆動回路120e及びポンプ駆動モータ駆動回路120fからなる構成が、液送手段に相当する。また、バルブユニット15、リリースロッド16、リリースロッド駆動部24及びリリースロッド駆動回路120gからなる構成がバルブ手段に相当し、気体透過膜15dが選択透過膜に相当する。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り様々な態様にて実施することが可能である。以下にその具体的な例を挙げる。
【0086】
(1)インク供給チューブ11からインクを退避させることでインク供給チューブ11におけるインクの増粘を抑制することができるので、インク退避中はそのインク用の記録ヘッド4に対するメンテナンス動作を行わないようにしたり、回数を減らしたりするように構成して、メンテナンス動作によって廃棄されるインクの量を低減するようにしてもよい。
【0087】
(2)インク供給チューブ11からのインクの退避を行うか否かを、ユーザによる操作パネル6への操作入力によって選択可能に構成されているとよい。このようにすれば、ユーザの好みに応じてインクをインク供給チューブ11から退避させるか否かを選択することができるので便利である。つまり、例えば、主にモノクロ画像記録を中心に利用しカラー画像記録をめったに利用しないユーザにとっては、インクの退避・導入を行うように選択することで、インクの増粘を低減することができることで得られるメリットが大きい。一方、モノクロ画像記録もカラー画像記録も両方ある程度の頻度でよく利用するユーザにとっては、インクの退避・導入を行わないように選択すれば、これらの動作によって費やされる時間を節約することで得られるメリットが大きい。
【0088】
(3)インク供給チューブ11からインクを退避させている状態で当該インクのサブタンク14内に貯留されているインクが所定量以下になった場合、当該インクのインクカートリッジ13からインク供給チューブ11を介してサブタンク14へインクを供給するように構成してもよい。このようにすることで、画像記録中のメンテナンス動作によってサブタンク14内のインクが空になることがなくなり、記録ヘッド4のインク吐出機能が損なわれるのを防止することができる。
【0089】
(4)ポンプ12によって記録ヘッド4のノズルからインクを強制的に排出させる機能を備えるように構成してもよい。即ち、インクをインクカートリッジ13からインク供給チューブ11及びサブタンク14へ供給する機能、インクをインク供給チューブ11からインクカートリッジ13へ退避させる機能、及び記録ヘッド4のノズルからインクを強制的に排出させる機能をポンプ12で実現できる。具体的には、ポンプ12の回転方向や回転速度を変化させることで、インクの液送方向及び液送時の圧力を制御する。つまり、フラッシングやパージといったメンテナンス動作時においてノズルからインクを強制的に排出させる場合は、ノズルにおけるインクのメニスカスを破壊する圧力を超える圧力(上記実施形態においては、3.5kpa以上)にてインクを記録ヘッド4へ液送するようにポンプ12を駆動する。このように、1つのポンプでインクの供給、退避、強制排出といった複数の機能を実現することで、インクを液送するための機構に必要な部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明を適用するのに好適なインクジェット記録装置1の外形斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置1の断面図である。
【図3】インクジェット記録装置1のインク供給機構の概略構成を示す説明図であり、(a)はインク供給機構の側断面を模式的に示す図、(b)は記録ヘッド4の上視断面を模式的に示す図である。
【図4】ポンプ12の具体例を示す図であり、(a)はねじポンプ12aの概略構成を示す図で、(b)はベーンポンプ12dの概略構成を示す図である。
【図5】ポンプ駆動切替機構17の概略構成を示す図である。
【図6】インクジェット記録装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】インク退避処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】インク導入処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】インク退避処理における各部の作動を示す図である。
【図10】インク導入処理における各部の作動を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1…インクジェット記録装置、2…スキャナ、3…給紙カセット、4…記録ヘッド、6…操作パネル、7…記録部、11…インク供給チューブ、12…ポンプ、12a…ねじポンプ、12b…ケーシング、12c…ねじ形回転子、12d…ベーンポンプ、12e…ケーシング、12f…ロータ、12g…羽根(ベーン)13…インクカートリッジ、14…サブタンク、15…バルブユニット、15a…ばね、15b…バルブ、15c…パッキン、15d…気体透過膜、15e…通気孔、15f…大径部、16…リリースロッド、17…ポンプ駆動切替機構、18…駆動切替ギア、18a…歯、19…ポンプ駆動軸、20…ギア支持部材、21a…駆動軸ギア、21b…中間ギア、21c…ポンプ側ギア、110…制御装置




 

 


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