米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 繊維;紙;印刷 -> キヤノン株式会社

発明の名称 記録装置および記録位置制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15269(P2007−15269A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−200156(P2005−200156)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
代理人 【識別番号】100077481
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 義一
発明者 川床 徳宏 / 林 雅 / 筑間 聡行 / 神田 英彦
要約 課題
双方向レジが若干ずれ量を含んだ場合であっても、上記「むら」のような画像弊害を極力抑制するような、双方向レジの調整方法を提供すること。

解決手段
双方向レジずれを調整するための第1調整値に対し、記録ヘッドの傾き程度に応じて補正をかけることによって第2調整値を取得し、当該第2調整値に基づいてタイミングを調整しながら双方向記録を実行する。これにより、双方向レジの調整値や記録ヘッドの傾きに若干のばらつきがあっても、これに起因して発生する「むら」を極力低減することが可能となる。
特許請求の範囲
【請求項1】
記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置において、
前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する手段と、
前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する手段と、
前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き程度を取得する手段と、
前記傾き程度に応じて前記第1調整値に補正をかけて第2調整値を取得する手段と、
前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する手段と、
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記傾き程度とは前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き方向であり、前記第2調整値取得手段は、前記傾き方向に応じて前記第1調整値に対する補正量の正負を異ならせて前記第2調整値を取得していることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記傾き程度とは前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き量であり、前記第2調整値取得手段は、前記傾き量に応じて前記第1調整値に対する補正量を異ならせて前記第2調整値を取得していることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置において、
前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する手段と、
前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する手段と、
前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き量を取得する手段と、
前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記傾き量を低減する方向に調整するための傾き調整値を設定する手段と、
前記傾き量に応じて前記第1調整値に補正をかけて第2調整値を取得する手段と、
前記傾き調整値と前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査時における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する手段と、
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項5】
記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置の記録位置制御方法おいて、
前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する工程と、
前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する工程と、
前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き程度を取得する工程と、
前記傾き程度に応じて前記第1調整値に補正をかけた第2調整値を取得する工程と、
前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する工程と、
を有することを特徴とする記録位置制御方法。
【請求項6】
記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置の記録位置制御方法において、
前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する工程と、
前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する工程と、
前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き量を取得する工程と、
前記往復移動走査時における色剤を付与するタイミングを、前記傾き量を低減する方向に調整するための傾き調整値を設定する工程と、
前記傾き量に応じて前記第1調整値に補正をかけた第2調整値を取得する工程と、
前記傾き調整値と前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する工程と
を有することを特徴とする記録位置制御方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録素子を配列した記録手段から記録媒体に記録剤を付与し、画像を形成する記録装置に関し、特に記録素子の記録位置ずれを調整するための方法および構成に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報(文字情報等を含む)に基づいて用紙やプラスチック薄板等の記録媒体に画像(文字等を含む)を記録する。このような記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分類することができる。このうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、他の記録方式に比べて高精細化が容易でしかも静粛性に優れた状態で高速記録が可能で、かつ安価であるという数々の優れた特徴を有する。よって、インクジェット記録装置は、今やオフィスからパーソナルユースまで及ぶ幅広い範囲で普及している。
【0003】
一般に、インクジェット記録装置では、インク吐出口とこれにインクを供給するための液路を備えた記録素子を複数集積配列してなる記録ヘッドを用いている。さらにカラー画像に対応するために、このような記録ヘッドを複数色分備えているものも多い。
【0004】
インクジェット記録装置は、一般に、その記録動作の違いからシリアル型のものとライン型のものとに分類される。シリアル型の記録装置では、記録媒体に対して記録ヘッドを移動走査しながら画像を形成する主記録走査と、主記録走査とは交差する方向に記録媒体を搬送する副走査とを間欠的に繰り返すことにより画像が形成される。一方、ライン型の記録装置では、記録媒体の記録幅に応じた多数の記録素子が配列された記録ヘッドが固定的に配備されており、当該記録ヘッドによる記録を実行しつつ、記録媒体が記録素子の配列方向とは異なる方向へ所定の速度で移動走査することにより画像が形成される。
【0005】
ライン型の記録装置は、高速な記録は可能であるが装置自体が大型なものとなりやすい。これに対し、シリアル型の記録装置は、小型の記録ヘッドを用いながらも様々なサイズの記録媒体に対応可能であり、同一画像領域に対する記録走査回数や主走査方向を変更することにより、ユーザの好みに応じて様々な記録速度や画像品位に対応可能である。よって、近年ではシリアル型のインクジェット記録装置が特にパーソナルユース向けに広く普及している。
【0006】
しかしながら、シリアル型のインクジェット記録装置には、それ特有の問題も含まれている。シリアル型のインクジェット記録装置では、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対し移動走査させる記録主走査と、当該記録主走査とは交差する方向に記録媒体を搬送する副走査とを間欠的繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。そして、極力高速に画像を出力しようとする場合には、上記記録主走査を双方向で行う双方向記録が一般に採用されている。この際、記録主走査の往路走査と復路走査において記録位置ずれ(以後、双方向レジずれとも称す)が含まれていると、以下のような画像弊害となって確認されることがある。
【0007】
図1(a)〜(d)は、双方向レジずれの現象とその弊害を説明するための図である。図1において、(a)および(b)は罫線パターンを記録する場合を示している。ここで、実線で示した501は往路走査で記録された罫線、破線で示した502は復路走査で記録された罫線を示している。双方向レジがずれていない場合、往路で記録した罫線501と復路で記録した罫線502とは同一直線上に記録され、図1(b)の様に一直線の罫線パターンが形成される。これに対し、双方向レジがずれている場合、往路で記録した罫線501と復路で記録した502とは離れた位置に記録され、図1(a)の様に罫線パターンは切れ切れの状態になってしまう。
【0008】
また、マルチパス記録を採用し、記録媒体の同一画像領域を往路走査と復路走査で分割して記録した場合には、別の問題が発生する。図1において、(c)および(d)は一様なパターンをマルチパス記録で記録する場合を示している。ここで、503は往路走査で記録されたドット、504は復路走査で記録されたドットを示している。双方向レジがずれていない場合、往路で記録したドット503と復路で記録したドット504とは互いに補完関係を保ち、図1(d)の様に好ましい状態に分散されて記録される。これに対し、双方向レジがずれている場合、往路で記録したドット503と復路で記録したドット504との補完関係は不完全なものとなり、図1(c)の様にドットの粗密が偏った状態で記録される。図1(c)のような画像は、視覚的には画像の粒状感として感知され、画像劣化の一因となる。
【0009】
以上説明したような双方向レジずれの問題に対応するために、双方向記録を実行するインクジェット記録装置における双方向レジを調整するための方法や構成が既に考案、実施されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】特開平7−81190号公報
【特許文献2】特開平7−309007号公報
【特許文献3】特開平7−40551号公報
【特許文献4】特開平11−240143号公報
【特許文献5】特開2004−9489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行った結果によれば、上記特許文献に記載の方法を採用し双方向レジを調整した場合であっても、記録ヘッドに若干の傾きが含まれている場合には、上記問題の十分な解決はおろか、新たな弊害を併発させてしまっている場合が確認された。
【0012】
図2は、傾きを有する記録ヘッドについて説明するための図である。ここでは、副走査方向に延びる罫線を記録した場合が示されている。記録ヘッドが傾きを有している場合、双方向レジが調整されていても各記録走査で記録される罫線が傾いてしまっている。以下に、このような記録ヘッドを用いて双方向レジの調整をおこなった場合の記録状態を説明する。
【0013】
図3は、傾いていない記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行った場合の記録状態を示した図である。本例では1200dpi(ドット/インチ;参考値)の記録密度で画像を形成するシリアル型のインクジェット記録装置を用い、双方向レジも1画素単位すなわち1/1200インチで調整可能なものとする。図3(a)において、601のパターンで示した領域が往路走査で記録された1画素幅の画像、602のパターンで示した領域が復路走査で記録された1画素幅の画像を示している。本例では2パスのマルチパス記録を採用するものとし、往走査あるいは副走査による1回の記録走査の後、記録幅の半量だけ記録ヘッドが記録媒体に対して副走査方向に移動している。
【0014】
双方向レジずれ量が0の場合、往路走査で記録した画像601と復路走査で記録した画像602との間にずれはなく、両者が同一直線上に重なっている。双方向レジずれの量が徐々に増大すると、往路走査で記録した画像601と復路走査で記録した画像602とは、徐々に離れていく。
【0015】
図3(b)は、同図(a)の様に徐々に双方向レジずれ量を変化させていった場合の、画像品位項目の程度を説明するための図である。ここでは、画像品位項目として「むら」および「粒状感」を挙げている。本明細書において「粒状感」とは、既に図1(c)を用いて説明したように、一様なパターンにおけるドットの粗密の偏りの程度によって増大するざらつき感を示している。例えば図1であれば、同図(c)は同図(d)に比べて「粒状感」が劣っていることになる。一方、「むら」とは、ドットの粗密の状態が副走査方向において変動する場合に感知される副走査方向への非一様性を意味している。「粒状感」および「むら」は、上述した原因に基づくものではあるが、視覚的に画像品位を低下させるものとして認識される項目である。図3(b)に示した評価も視覚的な認知によって本発明者らが得た結果である。
【0016】
図3(b)において、双方向レジずれ量が0のとき、往路走査で記録されたドットと復路走査で記録走査されたドットは、図1(d)のように互いに好ましい状態で補完される。よって、ドットの粗密の偏りが発生せず「むら」も「粒状感」も認知されない。双方向レジずれ量が徐々に増大して言った場合、往路走査で記録されたドットと復路走査で記録走査されたドットは、図1(c)のように補完関係が不十分となり、その程度はずれ量が大きいほど顕著になる。よって、「粒状感」は双方向レジずれ量が大きくなるほど悪化している。但し、本例の場合、悪化した状態であったとしても「粒状感」の程度が副走査方向に変動する要因は存在しない。よって「むら」に関しては双方向レジずれ量に関係なく良好な状態を保っている。
【0017】
一方、図4は、傾きを有する記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行った場合の記録状態を図3と同様に示した図である。ここでは、副走査方向における記録ヘッドの先端部と後端部との間に、約1画素すなわち1/1200インチ程度のずれを含んでいる状態を示している。図4(a)に示すように、双方向レジずれ量が0の場合、傾きが存在したとしても往走査で記録される領域と副走査で記録される領域とは、主走査方向においてほぼ好適に重ね合わさっている。よって、往路で記録されるドットと復路で記録されるドットはほぼ良好な補完関係が実現され、「粒状感」は感知されない。また、このようなドットの粗密状態が副走査方向に対し変動することもないので、「むら」についても良好な状態が維持されている。
【0018】
これに対し、双方向レジすれが生じている場合の状態をレジずれ量+2の場合で説明する。ここでは、第1記録走査で記録された画像領域を701、第2記録走査で記録された画像領域を702、第3記録走査で記録された画像領域を703としている。701および703は往走査で記録され、702は副走査で記録されている。往走査と副走査では双方向レジが2画素ずれているので、第2記録走査による画像領域702のみが701および703に対して隔離された位置に形成されている。但しこの場合、記録媒体上の領域によって往方向で記録した画像領域と復方向で記録した画像領域との距離が異なっている。すなわち、領域Aでは701と702との距離が比較的短いのに対し、領域Bでは703と702との距離が比較的長くなっている。このような状態で一様なパターンを記録した場合、領域Aと領域Bとではドットの補完状態すなわち粗密の状態が異なる。結果、この2種類の領域が副走査方向に繰り返されると、これが「むら」となって認識されるのである。
【0019】
図4(b)は、同図(a)の様に徐々に双方向レジずれ量を変化させていった場合の、「むら」および「粒状感」の程度を説明するための図である。図において、双方向レジずれ量が0のとき、往路走査で記録されたドットと復路走査で記録走査されたドットは、ほぼ補完状態となっている。よって、ドットの粗密の偏り自体が発生せず「むら」も「粒状感」も認知されない。双方向レジずれ量が徐々に増大して言った場合、往路走査で記録されたドットと復路走査で記録走査されたドットは、補完関係が不十分となり、その程度はずれ量が大きいほど顕著になる。よって、「粒状感」は双方向レジずれ量が大きくなるほど悪化している。また、本例の様に記録ヘッドに傾きが含まれている状態では、図4(a)で説明した領域Aと領域Bの様に粗密状態の異なった領域が副走査方向に交互に配置することになるので、「むら」の程度も悪化する傾向にある。
【0020】
このような「むら」は、双方向レジずれとヘッドの傾きという2つの要因から複合的に併発される弊害である。本発明者らは、鋭意検討の結果、双方向レジずれやヘッドの傾きがそれぞれ僅かずつしか存在しない場合であっても、「粒状感」や「罫線ずれ」のような直接的な弊害に先立って、上記「むら」による弊害が目立ってしまう場合があることを確認した。すなわち、再度図4(b)を参照するに、双方向レジずれ量が−1の時、「粒状感」が然程悪化していなくても「むら」は既に認識される程度に悪化しているのである。
【0021】
更に、ここで注意すべきことは、双方向レジずれ量が正方向、負方向のどちらに広がっても「粒状感」は同程度に劣化していくが、「むら」については正負でその劣化の度合いが異なっていることである。本発明者らはこの点に着目し、記録ヘッドの傾きの度合いを更に変動させていった場合に、図4(b)に示したような「むら」の状態がどの様に変化するのかを確認した。
【0022】
図5は、上記検討の結果を示した表である。ここでは、記録ヘッドの傾きを±4まで振った結果を図3(b)や図4(b)と同様に示している。図4で説明した記録ヘッドの様に、副走査方向における記録ヘッドの先端部と後端部との間に約1画素のずれが生じる程度の傾きを、ここでは「傾き1」としている。そして、これと同方向であって先端部と後端部とのずれ量が1画素ずつ増大していった状態を「傾き+2」、「傾き+3」および「傾き+4」として示している。一方、傾きの方向を逆転した状態は、「傾き−1」〜「傾き−4」として示している。
【0023】
図からも判るように、双方向レジずれ量が±1画素程度であっても、傾きが存在すれば「むら」による弊害が確認される。たとえば、傾きが(±1)の場合は△程度と判断され、更に傾きの量が増大した場合には×程度と判断されている。
【0024】
従来、双方向レジずれを補正する際には、双方向レジのずれ量に伴って変化するような何らかのパターンを、ずれ量を段階的に異ならせながら複数個記録していた。そして、記録された複数のパターンを、ユーザによる目視あるいはセンサのような検出手段などによって確認し、最も双方向レジのずれ量が少ないパターンを選出し、当該パターンを記録した際の記録タイミングを設定することによって、双方向レジの調整とするのが一般であった。但し、このような方法で記録される双方向レジ調整用のパターンでは、ヘッドの傾きの影響によって生じる上記「むら」の程度まで確認することは出来なかった。
【0025】
その一方で、近年の様に高解像な画像の出力を可能としたインクジェット記録装置では、±1画素程度の双方向レジずれは様々な要因により突発的あるいは定常的に発生することがある。また、双方向レジの調整においても、±1画素程度のずれは、誤差として容認される範囲であることも多い。よって、インクジェット記録装置においては、双方向レジのずれ量が±1画素程度の場合でも、然程大きな弊害が視認されないような画像であることが強く望まれる。
【0026】
しかしながら、既に説明したように、記録ヘッドに傾きが含まれている場合には、±1画素程度の双方向レジずれであっても「むら」が確認されやすく、画像品位を劣化させる結果となってしまっていた。特に、人間の視覚特性としては、「粒状感」で示されるような一様なざらつきよりも、「むら」で示されるようなバンド状の繰り返しの方が不快に感じることが多い。このような理由からも、上記「むら」を抑制することは非常に重要な課題となっている。
【0027】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録ヘッドに若干の傾きが含まれている状態であっても、「むら」のような画像弊害を極力抑制するような、双方向レジの調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
そのために本発明においては、記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置において、前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する手段と、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する手段と、前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き程度を取得する手段と、前記傾き程度に応じて前記第1調整値に補正をかけて第2調整値を取得する手段と、前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する手段と、を具備することを特徴とする。
【0029】
また、記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置において、前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する手段と、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する手段と、前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き量を取得する手段と、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記傾き量を低減する方向に調整するための傾き調整値を設定する手段と、前記傾き量に応じて前記第1調整値に補正をかけて第2調整値を取得する手段と、前記傾き調整値と前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査時における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する手段と、を具備することを特徴とする記録装置。
【0030】
更に、記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置の記録位置制御方法おいて、前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する工程と、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する工程と、前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き程度を取得する工程と、前記傾き程度に応じて前記第1調整値に補正をかけた第2調整値を取得する工程と、前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0031】
更にまた、記録媒体に色剤を付与する記録素子が所定の方向に複数配列して構成される記録素子列を、前記所定の方向と交差する方向に往復移動走査することにより画像を形成する記録装置の記録位置制御方法において、前記往復移動走査における往路走査の記録位置と復路走査の記録位置とのずれ量を取得する工程と、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを、前記ずれ量を低減する方向に調整するための第1調整値を設定する工程と、前記所定の方向に対する前記記録素子列の傾き量を取得する工程と、前記往復移動走査時における色剤を付与するタイミングを、前記傾き量を低減する方向に調整するための傾き調整値を設定する工程と、前記傾き量に応じて前記第1調整値に補正をかけた第2調整値を取得する工程と、前記傾き調整値と前記第2調整値に基づいて、前記往復移動走査における色剤を付与するタイミングを調整して画像を形成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、双方向レジの調整値や記録ヘッドの傾きに若干のばらつきがあっても、これに起因して発生する「むら」を極力低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(インクジェット記録装置の基本構成)
図6は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の要部を説明するための概略構成図である。図において、記録装置の外装部材内に収納されたシャーシM3019は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材によって構成されており、記録装置の骨格を成し、以下に示す各記録動作機構を保持する役割を果たす。自動給送部M3022は、用紙(記録媒体)を装置本体内へと自動的に給送する。搬送部M3029は、自動給送部M3022から1枚ずつ送出される記録媒体を、LFローラ3001の回転によって所定の記録位置へと導くと共に、その記録位置から更に排出部M3030へと導く。矢印Yは、記録媒体の搬送方向(副走査方向)である。記録位置に位置決めされた記録媒体は、記録部によって所望の記録が行われる。また、記録部に対しては、回復部M5000によって回復処理が行われる。M2015は記録ヘッドの吐出口面と記録媒体との距離(以後、紙間と称す)を段階的に調整するための紙間調整レバー、M3006はLFローラM3001の軸受けである。
【0034】
記録部において、キャリッジM4001は、キャリッジモータE0001の駆動に伴い、キャリッジ軸M4021の案内支持の下、矢印Xの主走査方向に移動可能になっている。また、キャリッジM4001には、インクを吐出可能なインクジェット方式の記録ヘッドH1001(図7参照)が着脱可能に搭載される。
【0035】
図7は、記録ヘッドH1001に対し、複数色分のインクタンクH1900を装着する様子を示している。本実施形態においては、記録ヘッドH1001と6色分のインクタンクH1900によって、記録ヘッドカートリッジH1000が構成されている。本実施形態においては、写真調の高画質なカラー記録を可能とするために、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタおよびイエローの各色独立のインクタンクが用意されている。これらのインクタンクH1900のそれぞれは、記録ヘッドH1001に対して着脱自在となっており、記録に伴って消費されるインクを記録ヘッドに供給している。
【0036】
再び図6に戻る。記録ヘッドカートリッジH1000がキャリッジM4001に装着されると、不図示のメイン基板に接続されたフレキシブルケーブルE0012を介して、記録に必要なヘッド駆動信号が記録ヘッドに転送される。記録ヘッドに配備された個々の記録素子がインクを吐出するための方法はいかなるものでもよいが、本実施形態の記録ヘッドでは、個々の記録素子に電気熱変換素子が配備された構成とする。そして、当該電気熱変換素子に電圧パルスとしての駆動信号を印加すると、電気熱変換素子は急激に発熱し、これに接するインク内には膜沸騰が生じ、発生した気泡の成長エネルギによって吐出口からインクが押し出される仕組みとなっている。
回復部M5000には、記録ヘッドH1001のインク吐出口の形成面をキャップするキャップ(図示せず)が備えられている。このキャップには、その内部に負圧を導入可能な吸引ポンプを接続してもよい。その場合には、記録ヘッドH1001のインク吐出口を覆ったキャップ内に負圧を導入して、インク吐出口からインクを吸引排出させることにより、記録ヘッドH1001の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(「吸引回復処理」ともいう)を実行することができる。また、キャップ内に向かって、インク吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吐出させることによって、記録ヘッドH1001の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(「吐出回復処理」ともいう)を行うことができる。
【0037】
また、キャリッジM4001には、所定の装着位置に記録ヘッドH1001を案内するためのキャリッジカバーM4002が設けられている。さらに、キャリッジM4001には、記録ヘッドH1001のタンクホルダーと係合して、記録ヘッドH1001を所定の装着位置にセットさせるヘッドセットレバーM4007が設けられている。ヘッドセットレバーM4007は、キャリッジM4001の上部に位置するヘッドセットレバー軸に対して回動可能に設けられており、記録ヘッドH1001と係合する係合部には、ばね付勢されるヘッドセットプレート(不図示)が備えられている。そのばね力によって、ヘッドセットレバーM4007は、記録ヘッドH1001を押圧しながらキャリッジM4001に装着する。
【0038】
図8は、このような記録装置における制御系の構成を説明するためのブロック図である。図において、CPU100は、本実施形態のインクジェット記録装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM101は、それらの処理手順等のプログラムが格納され、またRAM102は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。記録ヘッドH1001からのインクの吐出は、電気熱変換素子を印加するための駆動データ(記録データ)および駆動制御信号(ヒートパルス信号)を、CPU100がヘッドドライバH1001Aに供給することにより行われる。CPU100は、キャリッジM4001を主走査方向に駆動するためのキャリッジモータE0001を、モータドライバ103Aを介して制御する。また、記録媒体を副走査方向に搬送するためのP.F.モータ104を、モータドライバ104Aを介して制御する。
【0039】
以上のような構成のインクジェット記録装置によって記録を行う場合、CPU100は、まずホスト装置200から外部I/Fを通して入力されてきた記録データをRAM102内に設けられたプリントバッファに一旦格納する。そして、キャリッジモータE0001によってキャリッジM4001と共に記録ヘッドH1001を主走査方向に移動させつつ、記録データに基づいた駆動信号をヘッドドライバに転送する。1回の記録主走査が終了すると、CPU100はP.Fモータ104によって記録媒体を所定量搬送する。以上の主記録走査と搬送動作とを繰り返すことによって、プリントバッファに格納された記録データは順次記録媒体に記録されて行く。
【0040】
以上説明した構成のインクジェット記録装置を用い、本発明の特徴である双方向レジの調整方法を、いくつかの実施例として以下詳細に説明する。
【実施例1】
【0041】
図9は、本実施例の双方向レジ調整モードを実行する際の各工程を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、まずステップS801において、CPU100はROM101に格納されている双方向レジ調整用のパターンデータを読み込み、各種駆動手段によって記録媒体にこれを出力する。ここで記録される調整用パターンは、双方向レジのずれ量を段階的に変動させながら複数個のパターンを並列して記録し、当該複数のパターンの中から最適なパターンをユーザが選択できるようにしたものである。また、本実施例のパターンにおいては、記録ヘッドの傾き方向を判別するためのパターンも同時に記録されているものとする。
【0042】
続くステップS802では、選択したパターンと判断した記録ヘッドの傾き方向を、ユーザが入力する。入力方法は、何らかの入力装置によって記録措置本体に直接入力する方法であってもよいが、ホスト装置200を介して入力する方法であってもよい。
【0043】
更にステップS803において、CPU100はユーザによって入力された情報をROM101に格納する。以上で、本処理を終了する。
【0044】
図10は、実画像記録に先立ち、ROM101に格納された情報に基づいて、双方向レジを調整する工程を説明するためのフローチャートである。ホスト装置200より記録命令が入力されると、CPU100はまず、ROM101に格納されている双方向レジの調整値を取得し、これを設定する(ステップS901)。
【0045】
次いでステップS902に進み、やはりROM101に格納されている情報から、現在搭載されている記録ヘッドの傾き方向を正負で判断し、当該判断に応じてステップS901で設定した調整値に補正を加える。
【0046】
図11は、記録ヘッドの傾き方向に応じて補正を加える量を示した図である。すなわち、本実施例においては、傾きが0の場合は既に設定された双方向レジの調整値に補正を加えず、そのままステップS905へ進む。一方、傾き方向が正であった場合、ステップS904へ進み、ステップS901で設定した双方向レジの調整値に対し+1を加算する。更に、傾き方向が負であった場合には、ステップS903へ進み、ステップS901で設定した双方向レジの調整値に対し−1を加算する。
【0047】
ステップS905では、ステップS902〜ステップS904によって設定された調整値に従って、実画像の双方向記録を実行する。以上で本処理を終了する。
【0048】
図12は、本実施例を適用して画像を記録した場合の「むら」および「粒状感」の程度を、図5と比較して説明するための図である。本実施例によれば、図5で示した結果に対し、特に双方向レジのずれ量および記録ヘッドの傾き量が±1の範囲で「むら」の程度が総合的に向上していることが分かる。このように、正規の調整値近傍において、すなわち双方向レジずれ量および記録ヘッドの傾き量が共に±1画素の領域において、画像品位が安定しているということは有益なことである。
【0049】
ところで、以上では、周期的に繰り返される「むら」のほうが「粒状感」よりも画像問題として大きいことを前提に、より積極的に「むら」の発生を抑えるような双方向レジの調整を行う内容で説明してきた。即ち、「粒状感」のみを考慮すれば双方向レジ調整モードで得られた調整値をそのまま実画像の記録時に適用することが好ましいにも関わらず、「むら」の発生を抑えるがために調整量に補正を加えているのである。しかしながら、記録媒体の種類や記録する画像の種類など様々な条件によっては、「粒状感」の方が「むら」よりも問題視される場合もあり得る。このような場合には、図11で示したテーブルとは別の、より「粒状感」を重視するような補正テーブルを適用しても構わない。
【0050】
図13は、本実施例の補正テーブルの別例を示した図である。ここでは、記録ヘッドの傾きの正負のみでなく、その値に応じても、双方向レジに対する補正量を異ならせるようにしている。記録ヘッドの傾き量が±1画素の範囲においては、「むら」よりも「粒状感」を重視し、得られた調整値に対し補正を加えていない。そして、更に記録ヘッドの傾きが大きくなり、「むら」による弊害が無視できなくなった時点(本例では傾きが±2画素としている)から、補正を加えている。
【0051】
以上説明したように本実施例によれば、記録ヘッドの傾き具合に応じて双方向レジの調整量に補正をかけることにより、「むら」および「粒状感」という画像劣化要因を総合的に抑制しつつ、双方向記録で高品位な画像を出力することが可能となった。
【実施例2】
【0052】
以下に本発明の第2の実施例について説明する。本実施例においても、図6および図8で示した記録装置を適用するが、更に本実施例では、ユーザの目視判断によらず自動でパターンの検出および調整値の設定が可能な手段および構成を備えているものとする。
【0053】
近年のインクジェット記録装置においては、既に上述した記録ヘッドの傾きによる画像弊害を低減するために、記録ヘッドの傾きを補正する技術を採用しているものも提供されている。傾き補正技術とは、シリアル型の記録装置において、例えば図2で示したような罫線を一直線にするために、記録ヘッド内の各記録素子において画像データを吐出するタイミングを相対的にシフトさせる技術である。吐出タイミングをシフトさせる方法としては、1画素範囲の時間内で個々の記録素子の吐出タイミングを異ならせる方法も知られているが、1画素以上の傾きにも対応させるために、所定の記録素子に対応する記録データを主走査方向にシフトさせる方法なども開示されている(例えば特許文献2〜4参照。)。
【0054】
図14は、傾き補正を実施した状態の記録ヘッドを用い、双方レジのずれ量を徐々に変化させていった状態を示した図である。ここで適用する記録ヘッドは、1200dpiの2画素分のずれ量を含んでいるものとする。そして、記録ヘッドの上半分の領域に対し下半分の領域の画像データを1画素分シフトさせて、記録位置の傾き補正を行っている。このような傾き補正によって、記録ヘッドの傾きは見かけ上2画素から1画素に低減されている。
【0055】
ここで、双方向レジ、傾き補正の正負について説明する。双方向レジにおいては、復路走査が紙面右側に移動する方向、つまり復路走査の駆動タイミングを早くする方向を「+」とする。また、傾き補正においては、基準ノズルである上端と比較し、非基準側ノズルが往路走査の場合に駆動タイミングを遅くする方向を「+」とする。よって、図14においては、双方向レジが「+1」「+2」と変化し、傾き補正は「−1」となっている。
【0056】
このような状態で、2パスのマルチパス記録を行い、双方向レジずれ量を徐々に変動させて行った場合、双方向レジずれ量が0であれば、往路走査で記録した画像1001と復路走査で記録した画像1002との間にずれはなく、両者はほぼ完全に重なり合った状態となる。双方向レジずれの量が徐々に増大すると、往路走査で記録した画像1001と復路走査で記録した画像1002とは、徐々に離れていくが、本例では傾き補正を行っているので、図4(a)のように領域Aと領域Bとで双方向レジずれ量の差が現れることはない。よって「むら」も発生しない。
【0057】
しかしながら、記録ヘッドの傾きの程度は様々で、補正可能な単位の整数倍とは限らない。すなわち、図14では、傾き補正の最小単位が1200dpiの1画素であるのに対し、記録ヘッドの傾きが丁度その2倍であったので、図に示したような好適な結果が得られたが、実際にはこのようなことは稀である。
【0058】
図15は、傾き量が1画素である記録ヘッドを用いた場合の様子を図14と同様に示した図である。傾きが1画素の場合、すなわち記録ヘッド上に配列する先端部の記録素子と後端部の記録素子の記録位置が主走査方向に1画素分ずれている場合、図14と同様な補正を行っても、結果的に傾きの程度は変わらない。なぜなら、記録ヘッドの下半分の領域の画像データをシフトさせても、その補正量が1画素分であるため、最適な記録位置を越えた過剰な補正がなされてしまうからである。
【0059】
このような状態で2パスのマルチパス記録を行い、双方向レジずれ量を徐々に変動させて行った場合には、実施例1で説明した図4(a)と同様な状態となる。領域Aでは往路走査で記録した領域と復路走査で記録したとの距離が比較的長いのに対し、領域Bでは両者の距離が比較的短くなるからである。すなわち、記録ヘッドの傾き補正を行った状態であっても、補正解像度以下の傾きが残存している場合には、実施例1で説明したと同様の「むら」が発生してしまうのである。
【0060】
図16は、記録ヘッドの傾き補正を1画素単位で実行可能なインクジェット記録装置を用い、記録ヘッドの傾きの度合いを1画素単位で変動させていった場合に、「むら」および「粒状感」の状態がどの様に変化するのかを確認した結果を示した図である。図14で説明したように傾き補正が有効に機能する場合には、領域Aと領域Bとの間でドットの粗密に差は生じず、「むら」による弊害は確認されていない。これに対し、図15で説明したように傾き補正が不十分な場合すなわち傾きの程度が±1の場合には、領域Aと領域Bとの間でドットの粗密に差が生じ、「むら」による弊害が確認されている。
【0061】
よって、本発明者らは、傾き補正を実行可能なインクジェット記録装置においても、傾き補正後に僅かな傾きが残存するような場合には、本発明が有効に機能すると判断した。
【0062】
図17は、本実施例の双方向レジ調整モードを実行する際の各工程を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、まずステップS1701において、自動レジ調整を実行する。CPU100はROM101に格納されている双方向レジ調整用のパターンデータを読み込み、各種駆動手段によって記録媒体にこれを出力する。更に、装置内に備えられたパターン検出手段によって、記録媒体に記録されたパターンを読み取り、双方向レジ調整値の最適値を判断する。
【0063】
続くステップS1702では、ステップS1701で判断された調整値を記録装置内のROM101に格納する。以上で本実施例の双方向レジ調整モードが終了する。
【0064】
図18は、実画像記録に先立ち、ROM101に格納された情報に基づいて、双方向レジを調整する工程を説明するためのフローチャートである。ホスト装置200より記録命令が入力されると、CPU100はまず、ROM101に格納されている双方向レジの調整値を取得し、これを設定する(ステップS1301)。
【0065】
次いでステップS1302に進み、やはりROM101に格納されている情報から、現在搭載されている記録ヘッドの傾きを判断し、当該判断に応じてステップS1301で設定した調整値に補正を加える。
【0066】
図19は、記録ヘッドの傾きに応じて補正を加える量を示した図である。すなわち、本実施例においては、傾きが±1以外の場合は既に設定された調整値に補正を加えず、そのままステップS1306へ進む。一方、傾きが+1であった場合、ステップS1304へ進み、ステップS1301で設定した双方向レジの調整値に対し+1を加算する。更に、傾きが−1であった場合には、ステップS1303へ進み、ステップS1301で設定した双方向レジの調整値に対し−1を加算する。ステップS1306では、傾き補正制御を実行する。
【0067】
図20は、本実施例における傾き補正制御を実行する際の各工程を説明するためのフローチャートである。実施例において、記録ヘッドの傾き値は予め記録装置のROM101に格納されているものとする。そして、傾き補正制御がスタートすると、CPU100はまず、ROM101に格納されている記録ヘッドの傾き値を取得する(ステップS1402)。続くステップS1403において、CPU100は得られた傾きを補正する方向に、各記録素子が対応する画像データを主走査方向にシフトする。以上で傾き補正制御が終了する。
【0068】
再度図18のフローチャートを参照する。ステップS1307では、ステップS1306で定められた各記録素子に対応する画像データのシフト量と、ステップS1302〜S1304によって設定された双方向レジ調整値に基づいて、実画像の双方向記録を実行する。以上で本処理を終了する。
【0069】
図21は、本実施例を適用して画像を記録した場合の「むら」および「粒状感」の程度を、図16と比較して説明するための図である。本実施例によれば、図16で示した結果に対し、特に双方向レジのずれ量および記録ヘッドの傾き量が±1の範囲で「むら」の程度が総合的に向上していることが分かる。
【0070】
以上説明したように本実施例によれば、傾き補正後の記録状態に応じて双方向レジの調整量に補正をかけることにより、「むら」および「粒状感」という画像劣化要因を総合的に抑制しつつ、双方向記録で高品位な画像を出力することが可能となった。
【0071】
なお、本実施例においては、記録ヘッドの傾き量が予め本体ROM内に格納されている構成で説明したが、本実施例はこのような形態でなくとも実現することが出来る。例えば実施例1と同様に、双方向レジ調整パターンと共に記録ヘッドの傾き量を検出するパターンを出力し、検出手段で読み取ることによって調整値を設定する構成であってもよい。更に、図7で説明したようなカートリッジ形態の記録ヘッドであれば、記録装置に対し交換されることも考慮し、傾き量が記憶されたメモリを記録ヘッドに具備する形態であっても良い。
【0072】
更に、上記では、複数の記録素子に対応する画像データを主走査方向にシフトさせることによって、1200dpiの1画素単位で傾き補正を実行する構成としたが、本実施例の効果はこのような傾き補正方法を採用する場合に限定されるものではない。例えば、特許文献2や特許文献3に記載されているように、1画素に対応する時間内で互いに複数の記録素子間で吐出タイミングをずらすことによって、1画素未満の傾きも補正する方法を採用する場合であっても、本発明は有効に機能することが出来る。どのような傾き補正方法を採用するにせよ、補正後に僅かな傾きが残存し、これが「むら」を引き起こす要因となっている場合においては、本発明はその効果を発揮することが出来る。
【0073】
但し、特許文献2や特許文献3のように互いに駆動タイミングをずらす方法を採用する場合には、より複雑な記録素子への駆動信号伝達構成が必要となり、本体に備えるメモリの増加、記録速度の低下、および駆動制御の複雑化に伴うコストアップなどを招く恐れがある。よって、傾き補正は本実施例で説明したような方法を用いておきながら、1画素未満の傾きに対しては、これによって生じる「むら」弊害が極力目立たないようにすることも、本発明をより効果的に機能させる結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(a)〜(d)は、双方向レジずれの現象とその弊害を説明するための図である。
【図2】傾きを有する記録ヘッドについて説明するための図である。
【図3】(a)および(b)は、傾いていない記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行った場合の記録状態を示した図である。
【図4】(a)および(b)は、傾きを有する記録ヘッドを用いてマルチパス記録を行った場合の記録状態を示した図である。
【図5】記録ヘッドの傾きの度合いを変動させていった場合の「むら」および「粒状感」の状態を示した図である。
【図6】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の要部を説明するための概略構成図である。
【図7】記録ヘッドに対し、複数色分のインクタンクを装着する様子を示している。
【図8】本発明を適用可能なインクジェット記録装置における制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】本発明の実施例1の双方向レジ調整モードを実行する際の各工程を説明するためのフローチャートである。
【図10】実施例1において、双方向レジを調整する工程を説明するためのフローチャートである。
【図11】記録ヘッドの傾きに応じて補正を加える量を示した図である。
【図12】実施例1を適用して画像を記録した場合の「むら」および「粒状感」の程度を説明するための図である。
【図13】実施例1の補正テーブルの別例を示した図である。
【図14】傾き補正を実施した状態の記録ヘッドを用い、双方レジのずれ量を徐々に変化させていった状態を示した図である。
【図15】傾き補正を実施した状態の記録ヘッドを用い、双方レジのずれ量を徐々に変化させていった状態を示した図である。
【図16】傾き補正を行いつつ記録ヘッドの傾きの度合いを1画素単位で変動させていった場合における「むら」および「粒状感」の状態を示した図である。
【図17】本発明の実施例2の双方向レジ調整モードを実行する際の各工程を説明するためのフローチャートである。
【図18】実施例2において、双方向レジを調整する工程を説明するためのフローチャートである。
【図19】記録ヘッドの傾きに応じて補正を加える量を示した図である。
【図20】実施例2における傾き制御補正を実行する際の各工程を説明するためのフローチャートである。
【図21】実施例2を適用して画像を記録した場合の「むら」および「粒状感」の程度を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
100 CPU
101 ROM
102 RAM
103 キャリッジモーター
103A モータドライバ
104 P.Fモータ
104A モータドライバ
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001A ヘッドドライバ
H1001 記録ヘッド
H1900 インクタンク
M2015 紙間調整レバー
M3001 LFローラ
M3006 軸受け
M3019 シャーシ
M3022 自動給送部
M3029 搬送部
M3030 排出部
M4001 キャリッジ
M4007 ヘッドセットレバー
M4021 キャリッジ軸
M5000 回復部
E0001 キャリッジモーター
E0012 フレキシブルケーブル
501 往路走査で記録された罫線
502 復路走査で記録された罫線
503 往路走査で記録されたドット
504 復路走査で記録されたドット
601 往路走査で記録された1画素幅の画像
602 復路走査で記録された1画素幅の画像
701 第1記録走査で記録された画像領域
702 第2記録走査で記録された画像領域
703 第3記録走査で記録された画像領域
1001 往路走査で記録した画像
1002 復路走査で記録した画像
1101 往路走査で記録した画像
1102 復路走査で記録した画像




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013