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発明の名称 記録ヘッドおよびインクジェット記録装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−15262(P2007−15262A)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
出願番号 特願2005−200148(P2005−200148)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
代理人 【識別番号】100077481
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 義一
発明者 神田 徹
要約 課題
記録ヘッドの温度変化による記録素子基板と支持部材との相対的な変形にもかかわらず、記録品位が安定し、また、記録ヘッドの破損を生じないようにする。

解決手段
膨張した状態で貼り付け固定されている支持部材H1501と記録素子基板H1101が室温(25℃)まで降下すると、支持部材H1501が記録素子基板H1101より大きく収縮し、相互の部材間に応力関係が生じる。この際、リブH1503が、そのリブ自身を広げる方向である記録素子基板の外側に向かう方向に変形する。これにより、上記変形差が吸収され、記録素子基板H1101に対する応力の影響が軽減される。
特許請求の範囲
【請求項1】
インクを吐出させるために用いられるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録素子基板と、支持部材を接合して形成され、前記記録素子基板と前記支持部材の膨張率が異なる記録ヘッドにおいて、
前記支持部材における前記記録素子基板との接着部の一部に当該支持部材の内部に形成された空洞部と当該支持部材の外とを仕切るリブ
を具え、該リブ上面が前記記録素子基板の外側に向かう方向に傾いた状態で前記記録素子基板が接合されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
インクを吐出させるために用いられるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録素子基板と、該記録素子基板へのインクを供給するためのインク供給路が形成された支持部材を接合して形成され、前記記録素子基板と前記支持部材の膨張率が異なる記録ヘッドにおいて、
前記支持部材における前記記録素子基板との接着部の一部に当該支持部材の内部に形成された空洞部と当該支持部材の外とを仕切るリブ
を具えたことを特徴とする記録ヘッド。
【請求項3】
前記支持部材内部の空洞部は、前記支持部材に形成され、前記記録素子基板にインクを供給するためのインク供給路であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記支持部材の線膨張率が前記記録素子基板の線膨張率より大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記リブは、記録素子基板に設けられたインク吐出口列と略平行に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記リブは、記録素子基板に設けられたインク吐出口列の幅よりも短い幅で設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項7】
前記リブは、記録素子基板に設けられたインク吐出口列の幅よりも長い幅で設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項8】
前記リブは、全てのインク供給路を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の記録ヘッドを用い、記録媒体にインクを吐出して記録を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドおよびそれを用いて記録を行うインクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドに対する熱負荷による当該記録ヘッドの構成部材の変形に対処するヘッド構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト記録方式の記録装置であり、記録時に騒音がほとんど生じず、高速な記録と様々な被記録媒体に対する記録が可能であるという特徴を有している。このような点から、インクジェット記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録機構を担う装置として広く採用されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドにおける代表的なインク吐出方式としては、ピエゾ素子等の電気機械変換体を用いたもの、あるいは、発熱抵抗体を有する電気熱変換素子によってインクを加熱し、膜沸騰の作用によりインク滴を吐出させるものなどが知られている。
【0004】
これらのうち、電気熱変換素子を用いた記録ヘッドは、電気熱変換素子をインク路内に設け、これに記録信号である電気パルスを供給して発熱させることによりインクに熱エネルギーを与え、インクの発砲時(沸騰時)の気泡圧力を利用して吐出口からインク滴を吐出させるものであり、これにより記録媒体に記録を行うことができる。電気熱変換素子を用いた記録ヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための吐出口が開口しているノズルと、このノズルにインクを供給するインク路および共通液室を有している。
【0005】
また、記録ヘッドはこれとインクタンクとが別個に着脱可能である形態のものや、記録ヘッド部とインク容器とが一体となったカートリッジの形態のものなどがある。記録ヘッド部とインク容器が一体となったカートリッジ形態のものは、記録ヘッドが古くなった場合には記録ヘッドごと交換可能であるため、記録ヘッド自体の耐久性や、信頼性をある程度低く設定ができ、また、ユーザーに常に新しいヘッドを提供できることから、様々な製品が提供されている。
【0006】
図9(A)および(B)は、一従来例に係る記録ヘッドとインク容器を一体に構成した記録ヘッドカートリッジを、それぞれノズルを配列した下側および上側から見た示す斜視図である。
【0007】
図9(A)および(B)において、記録カートリッジ601は、記録素子基板702を含む記録ヘッド部と、インクを貯留したインク容器部とを一体に構成したものである。記録素子基板702は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するためのエネルギー発生素子としてのヒータと、そのヒータに記録装置本体から供給される電気エネルギーを供給するための回路配線を備えた基板と、インクをヒータに供給するための流路とインクを吐出させるための吐出口を備えたノズルプレートと、を備えて構成されている。本従来例においては、イエロー、マゼンダ、シアンの3色のインクを吐出させるための吐出口列703、704、705を1つの記録素子基板702に備えている。
【0008】
電気配線基板706は、記録装置本体からの電気信号を記録素子基板702に伝える配線を備え、また、その端部には記録装置本体からの電気信号を入力するための外部信号入力端子707を備える。電気配線基板706は、その外部信号入力端子707と反対側の端部が、記録素子基板702の2つの端面と電気的に接続する。そして、この電気接続部は封止材708によって覆われ、これにより、記録ヘッド部表面に付着などするインクから電気接続部を保護している。
【0009】
記録素子基板702に供給されるインクは、ケース部709にフタ710が設けられ、また、ケース内部にインク色ごとの室を仕切る隔壁(不図示)を設けることにより、イエロー、シアン、マゼンタ各色のインクを個別に貯留するインク貯留部が構成される。インク貯留部のインク色ごとの室には、インクを保持するためのインク吸収体が収納されている。また、ケース709の底部にはインク供給路が設けられ、このインク供給路を介して記録素子基板702にインクを供給することができる。このインク供給路にはフィルタが設けられ、これにより、吐出口に異物が入らないようにしている。
【0010】
図10は、図9におけるC−C断面図であり、記録ヘッド部の記録素子基板周囲の構成を示している。図10において、記録素子基板801(702)はノズルプレートを外した状態で、また、基板上のヒータなどが省略されて状態で示されている。支持基板802は、インク容器に収容されたインクを記録素子基板801に供給するためのインク供給口803を備える。この支持基板802は、アルミナ等の材料を用い、研磨されて成形され、これにより、記録素子基板801を精度良く接着固定する。また、支持板804は電気配線基板706を固定支持するものであり、支持基板802と同じ材質で成形されている。記録素子基板801と支持板804との間は、樹脂等の封止材805を用い封止されている。その理由の一つは、記録素子基板801の壁をインクから保護するためである。なお、封止材には、製造工程での取り扱いが比較的容易な熱硬化型樹脂を使用するのが一般的である。
【0011】
ところで、特許文献1には、記録素子基板を熱的特性がほぼ同等の支持基板を介して支持部材に貼り付け固定することが記載されている。これにより、記録素子基板など記録ヘッドの構成部材の温度変化による熱膨張率の違いによるヘッドの変形や破損を防止している。また、記録ヘッドにおける変形といった熱的な弊害を防止する他の構成として、記録素子基板と支持部材の間にアルミナ等の支持基板を貼り付け線膨張率の違いを防ぐものも知られている。
【0012】
また、特許文献2には、記録素子基板とその支持部材が同等な線膨張率を有する材料を用いることが開示されている。これによれば、熱膨張率の違いによる熱変形を低減することができる。さらには、記録素子基板の剛性を高めるためにその厚さを厚くしたり、その表面積をより広くしたりして熱変形に耐え得るようにすることも考慮できる。
【0013】
【特許文献1】特開平10−44420号公報
【特許文献2】特開2002−19119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記いずれの構成も、記録ヘッドの製造コストが嵩むという問題を招く。これに対し、支持部材に樹脂などの材料を用いたものは、安価に製造できるという利点があるものの、以下に示すような特定の熱変形に関する問題を有している。
【0015】
すなわち、樹脂材料の支持部材と記録素子基板とを熱硬化型接着剤で接着した場合、硬化温度は室温より高くなる。つまり、支持部材と記録素子基板は室温時より膨張した状態で接着され、接着後、記録ヘッド温度が低下するにつれてそれぞれの部材は収縮する。支持部材は上記のように樹脂材料で記録素子基板の例えばシリコン材料より線膨張率が大きい。このため、接着後の記録ヘッドの温度低下時の収縮率がより大きくなる。その結果、接着後に記録ヘッドが室温に戻るときに支持部材の寸法変化が記録素子基板より大きくなり、記録素子基板と支持部材との間に応力が発生する。この場合、記録素子基板が発生した応力に抗しきれず大きく変形する場合がある。そして、このように変形が生じた記録ヘッドから吐出されるインクはその吐出方向が偏向し、着弾位置がずれて記録品位が低下するなどを引き起こすことがある。さらには、上記変形によって記録素子基板など記録ヘッドを構成する部材が破損する場合もある。
【0016】
また、記録動作中に記録ヘッド温度が上昇するときも同様の問題が発生する。記録動作中の吐出動作などによって記録ヘッド温度が上昇すると、記録素子基板と支持部材は膨張し寸法が大きくなる。上述のとおり、支持部材は記録素子基板より線膨張率が大きいので寸法の変化が大きくなる。その結果、記録素子基板と支持部材との間に応力が発生して、上述したのと同様の問題を生じることがある。
【0017】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、記録ヘッドの温度変化による記録素子基板と支持部材との相対的な変形にもかかわらず、記録品位が安定し、また、破損などを生じることもない記録ヘッドおよびそれを用いたインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そのために本発明では、インクを吐出させるために用いられるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録素子基板と、支持部材を接合して形成され、前記記録素子基板と前記支持部材の膨張率が異なる記録ヘッドにおいて、前記支持部材における前記記録素子基板との接着部の一部に当該支持部材の内部に形成された空洞部と当該支持部材の外とを仕切るリブを具え、該リブ上面が前記記録素子基板の外側に向かう方向に傾いた状態で前記記録素子基板が接合されていることを特徴とする。
【0019】
他の形態では、インクを吐出させるために用いられるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録素子基板と、該記録素子基板へのインクを供給するためのインク供給路が形成された支持部材を接合して形成され、前記記録素子基板と前記支持部材の膨張率が異なる記録ヘッドにおいて、前記支持部材における前記記録素子基板との接着部の一部に当該支持部材の内部に形成された空洞部と当該支持部材の外とを仕切るリブを具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上の構成によれば、支持部材における前記記録素子基板との接着部の一部に当該支持部材の内部に形成された空洞部と当該支持部材の外とを仕切るリブを具え、また、該リブ上面が前記記録素子基板の外側に向かう方向に倒れた状態で前記記録素子基板が接合されるので、記録ヘッドに作用する温度が変化し、記録素子基板と支持部材が寸法変化を起こし、相互に応力を作用させても、リブが変形することによって記録素子基板にかかる応力を軽減することができる。これにより、記録素子基板の変形や破損を防止することが可能となる。
【0021】
また、好ましい実施形態では、前記支持部材と前記記録素子基板の材質の線膨張率が該支持部材の線膨張率より大である場合に、リブが変形し応力を軽減することが可能になる。
【0022】
さらに、前記リブは、記録素子基板に有するインク吐出口列と略平行に設けられることで、記録素子基板が発生応力に抗しきれず大きく変形することを軽減することが可能になる。
【0023】
さらに、前記支持部材に有するリブは、記録素子基板に有するインク吐出口列の幅よりも短い幅で設けられていることで、リブと接着されない記録素子基板部を位置決めすることができ、記録素子基板貼り付け精度を向上させることが可能になる。
【0024】
さらに、前記リブは、前記記録素基板に有するインク吐出口列の幅よりも長い幅で設けられていることで、応力を受ける面積を更に減らすことができ記録素子基板が大きく変形や破損することを軽減することが可能になる。
【0025】
さらに、前記リブは、全てのインク供給路を囲むように形成されていることで、リブを大きく変形させることができ記録素子基板が受ける応力を軽減することが可能になる。
【0026】
以上により、記録品位の安定した、しかも、記録ヘッドの製造コストの増大を伴わずに簡単な構成で、安価な記録ヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1〜図4は、本発明の第1の実施形態に係わる記録ヘッドの構成を示す図である。このうち、図1は記録ヘッド部とインク容器部とを一体に構成した記録カートリッジの特に記録ヘッド部を分解して示す斜視図、図2はその記録ヘッド部およびその部材を示す平面図、図3(A)および(B)は記録ヘッド部を構成する記録素子基板のそれぞれ表面および裏面を示す平面図、図4は記録ヘッド部における記録素子基板の詳細を示す平面図である。
【0028】
これらの図において、記録素子基板H1101は、厚さ0.62mmのシリコン(Si)材料よりなる板であり、その片側にインクを吐出するためのエネルギー発生素子としての複数の電気熱変換素子(不図示)と、それぞれの電気熱変換素子に電力を供給するAl等の電気配線(不図示)が、成膜技術により形成されている。さらに、記録素子基板H1101には、これらの電気熱変換素子に対応する複数のインク路(不図示)と複数のインク吐出口が形成されたノズルプレートH1103(図3(A))が、フォトリソグラフィ技術により形成される。これとともに、複数のインク路にインクを供給するためのインク供給口H1102(図3(B))が、反対側の面(裏面)に開口するように形成される。
【0029】
電気配線基板H1301は、記録素子基板H1101を組み込むためのデバイスホール(不図示)と、記録素子基板H1101の電極(不図示)に対応する電極端子H1302と、この電気配線基板H1301のプリンタ本体装置からの駆動制御信号を受け取るための外部信号入力端子H1303とを備えており、この外部入力端子H1303と電極端子H1302が銅箔の配線で連結している。
【0030】
支持部材H1501は、樹脂成型により形成されており、本実施例で使用した樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラ―を35%混入した材料を用いている。この支持部材H1501は、インク貯留部(不図示)からのインク供給路H1502を有している。また、この支持部材H1501と記録素子基板H1101との接合面H1504に、後述のリブH1503が設けられる。本実施形態では記録素子基板の貼り付け精度が比較的高いので、支持部材H1501に設けられるリブH1503は、記録素子基板H1101における吐出口列の幅よりも短い幅で、また、高さは、0.5mmで設けられている。
【0031】
図5は、図1〜図4に示した記録カートリッジにおける支持部材H1501と記録素子基板H1101の接合部分の一部を模式的に示す断面図である。
【0032】
図5に示すように、記録素子基板H1101は熱硬化性の接着剤H1201を介して支持部材H1501に貼り付け固定される。接着剤H1201は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、耐インク性のあるものが望ましい。本実施形態では、接着剤H1201として、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤を用いる。この接着剤H1201を用いた場合、その接着層の厚みは、50μm程度である。そして、この熱硬化型接着剤は、100℃、1時間キュアを行うことで、耐インク性および接着性等の所望の性能が出るものを使用する。接着剤の使用条件寸法等はこれに限ったものではなく、それぞれのインクジェット記録ヘッドに要求される条件を満足すれば他の条件でも良い。
【0033】
以上の接着剤を用いた記録素子基板H1101と支持部材H1501との接合では、以下に説明するように、接合後の最終的な製品の状態でリブH1503は記録素子基板H1101の外側に向かう方向に傾いた状態にある。このリブH1503は、支持部材H1501が記録素子基板H1101と接合する面が延在した部分に矩形の溝H1503Aを形成することによって設けられる。すなわち、この溝H1503Aと、同様に支持部材H1501に形成されるインク供給路H1502との2つの空洞部を仕切る部分(例えば、図4参照)がリブH1503となる。
【0034】
図6(A)および(B)は、記録素子基板H1101と支持部材H1501の熱による膨張ないし収縮に伴う応力の作用に対して果たすリブH1503の機能を説明する図であり、図5と同様の断面図を示している。
【0035】
本実施形態の記録ヘッドの製造では、先ず、樹脂製の支持部材H1501に接着剤H1201を塗布し、これに記録素子基板H1101を貼り付ける。この貼り付け順序はこれに限ったものではない。その後、接着剤H1201を硬化させるため、100℃のオーブンに投入する。この際、記録ヘッドは熱により室温から100℃までの温度変化を受け各部材が膨張する。この膨張する割合は各部材の線膨張率により異なる。本実施形態に用いた材料の線膨張率は以下のとおりである。シリコン製の記録素子基板H1101の線膨張係数は約3ppm程度、樹脂製の支持部材H1501の線膨張係数は約20〜60ppm程度である。このため、接着剤H1201の硬化に伴い、それぞれの膨張係数で膨張した状態で固定される。この硬化後、記録ヘッドをオーブンから取り出し、室温と同じ例えば25℃まで温度を降下させる。このとき、記録ヘッドの各部材は収縮して元の寸法に戻ろうとする。
【0036】
ここで、支持部材H1501の樹脂材料の線膨張係数を40ppm、記録素子基板H1101の線膨張係数を3ppmとし、規則素子基板が支持部材に接着されている部位の幅を3mmとすると、100℃から25℃に温度が変化した場合、支持部材がより大きく変化しようとして、相互の部材に約8.4μm程度の寸法変化の違いが起こる。その結果、支持部材H1501が記録素子基板H1101を上記寸法分だけ、記録素子基板には、それを縮める方向に応力が作用することとなる。この場合、図10にて上述した従来の記録ヘッド構造では、上記の応力によって特に記録素子基板に変形を生じ、記録画像の品位低下や記録ヘッドの破損の問題を引き起こす。
【0037】
これに対し、本実施形態は、図6(A)に示すように、接着剤H1201が100℃の温度で硬化した状態では、支持部材1501と記録素子基板H1101が膨張した状態で貼り付け固定されている。そして、支持部材H1501と記録素子基板H1101が室温(25℃)まで降下すると、上述したように約8.4μmだけ支持部材H1501が記録素子基板H1101より大きく収縮し、上述した応力関係が生じる。この際、図6(B)に示すように、リブH1503が、それが応力を受ける方向、すなわち、リブ自身を広げる方向である記録素子基板の外側に向かう方向に変形する。これにより、上記の約8.4μm分の変形差が吸収され、記録素子基板H1101に対する応力の影響が軽減される。その結果、熱硬化型接着剤を使用によるインクジェット記録ヘッドへの影響を、問題のないレベルに押さえることができる。そして、記録ヘッドないし記録カートリッジの製品(の室温)では、このリブH1503が外側に向かって傾いたままとなる。
【0038】
また、上記のように製造された記録ヘッドないし記録カートリッジを記録動作に用いる際には、そのインク吐出動作に伴い記録ヘッドの温度が上昇する。そして、記録素子基板と支持部材相互に上記とは逆の応力関係が働く。この場合は、リブH1503が動的に変形し(すなわち、温度が下がれば変形は元に戻る)、同様に、応力が吸収される。これにより、記録素子基板H1101に変形などが生じることを防止できる。
【0039】
表1は、H/C試験(−30℃⇔60℃の温度変化を10サイクル繰返す)を行う前と後それぞれにおける、本発明の実施形態、図10に示した従来例、および上記従来例の記録素子基板の面積を大きくして剛性を10倍としたものの、インクの着弾位置と破損の有無についての比較を示している。
【0040】
【表1】


【0041】
表1に示すように、本発明の実施形態に係る記録ヘッドは、リブH1503を設けることにより、H/C試験前、および試験後のいずれの場合も、着弾位置のずれは小さく、また、破損を生じることはない。
【0042】
なお、本実施形態の上記の例では、高温で硬化する熱硬化型接着剤を用いるものとしたが、記録素子基板H1101と支持部材H1501を低温(室温)硬化型接着剤で接着する形態においても、上述した記録動作による温度上昇の場合と同様に本発明を適用することができる。
【0043】
すなわち、記録動作中にインクジェット記録ヘッド温度が上昇すると、記録素子基板H1101と支持部材H1501は膨張し、寸法が大きくなる。支持部材H1501は樹脂で出来ているので線膨張率は記録素子基板H1101より大きい。従って、記録動作中に記録ヘッド温度が上昇すると、記録素子基板H1101と支持部材H1501の寸法変化に差が発生する。しかし、上記で説明したように支持部材H1501に有する記録素子接着面H1504にリブH1503を備えることにより、上記熱変化による応力をリブH1503が動的に変形して吸収することができ、記録素子基板H1101への影響が軽減される。
【0044】
(実施形態2)
記録素子基板の貼り付け位置精度がそれほど厳しくないものや、仮止めがいらないものなどの場合、上述したリブの長さを長くすることができる。これにより、例えば、記録素子基板に形成されたインク供給口と基板側端面との距離が比較的小さい基板(細い記録素子基板)のようなものにおいても、線膨張差による応力が有効に緩和することができる。
【0045】
なお、図4に示した第一の実施形態の場合は、記録素子基板H1101のインク吐出口列の幅より短いリブを設けることで、記録素子基板H1101とリブH1503が接着固定されていない部位で位置決めが可能となり、記録素子基板の貼り付け位置精度を向上させることが可能である。
【0046】
本実施形態では、図7に示すように、第1実施形態と同様にリブH1503を設けることにより、記録素子基板H1101と支持部材H1501との線膨張率の差による応力を、記録素子基板H1101の剛性の弱い方向の変形によって吸収することができる。
【0047】
これとともに、記録素子基板H1101のインク吐出口の幅より長くリブを設けることにより、規則素子基板が応力を受ける面積をさらに減らすことができる。
【0048】
また、図8に示すようにインク供給路H1502を全て囲むようにリブを設けることもできる。これにより、記録素子基板H1101と支持部材H1501との線膨張率の差による応力を、このリブH1503を大きく変形させて吸収することができる。
【0049】
さらには、将来、さらなる多色化や記録素子基板のサイズ増大、あるいは記録素子基板のサイズ減少がある場合に、記録素子基板に対するインク供給口数が多くなり、これらのインク供給口間が狭くなることによる、記録素子基板の剛性の減少が推測されるが、本発明の実施形態に係るリブを設けることにより、熱に対する記録素子基板の変形を軽減することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態では、熱硬化型接着剤を用いる場合、リブは製品の状態で傾いたままとなるが、本発明の適用がこの形態に限られることはない。例えば、図6(A)に示す、リブH1503が同図中左側に傾いた状態とは逆の、接着剤を硬化した時点では、リブH1503が右側に傾いた状態に形成され、室温に降下した、図6(B)に示す状態で、すなわち、製品の状態で、リブH1503がほぼ直立した状態とすることもできる。
【0051】
また、以上のような構成を具えた記録ヘッドは図1などに示した記録カートリッジとしてインクジェット記録装置のキャリッジに装着されて記録に用いられる。すなわち、キャリッジの移動により記録ヘッドは記録媒体を走査し、この走査の間に記録媒体にインクを吐出する。そして、所定量の記録媒体の搬送と同様の走査を繰返すことにより記録を行う。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる記録ヘッドとインク容器部とを一体に構成した記録カートリッジの特に記録ヘッド部を分解して示す斜視図である。
【図2】図1に示した記録ヘッドおよびその部材を示す平面図である。
【図3】(A)および(B)は、上記記録ヘッドを構成する記録素子基板のそれぞれ表面および裏面を示す平面図である。
【図4】上記記録ヘッド部における記録素子基板の詳細を示す平面図である。
【図5】図1〜図4に示した記録カートリッジにおける支持部材H1501と記録素子基板H1101の接合部分の一部を模式的に示す断面図である。
【図6】(A)および(B)は、図5に示した記録素子基板H1101と支持部材H1501の熱による膨張ないし収縮に伴う応力の作用に対して果たすリブH1503の機能を説明する図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る記録ヘッドを示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る記録ヘッドを示す平面図である。
【図9】(A)および(B)は、一従来例に係る記録ヘッドとインク容器を一体に構成した記録ヘッドカートリッジを、それぞれノズルを配列した下側および上側から見た示す斜視図である。
【図10】図9におけるC−C断面図である。
【符号の説明】
【0053】
H1101 記録素子基板
H1102 インク供給口
H1103 インク吐出口
H1201 接着材
H1301 電気配線基板
H1302 電極端子
H1303 外部信号入力端子
H1401 記録素子ユニット
H1501 支持部材
H1502 インク供給路
H1503 リブ
H1503A 溝




 

 


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