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発明の名称 インクジェット記録方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−1243(P2007−1243A)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
出願番号 特願2005−186462(P2005−186462)
出願日 平成17年6月27日(2005.6.27)
代理人 【識別番号】100090538
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 恵三
発明者 狩野 瑠奈
要約 課題
吐出休止後の再吐出時であっても吐出方向の泡エネルギー効率が低下することなく、また、リフィル性能を低下させることなく、吐出速度が常に一定であるインクジェット記録方法を提供すること。

解決手段
熱エネルギーによりインクに気泡を発生させるバブルジェット型インクジェット記録ヘッドにおいて、インク滴を吐出させるための第1の気泡8を発生させる吐出用発熱体1とインク供給路5の間に、第1の気泡8とは連通せず第1の気泡8にインク供給室方向から発泡室方向の圧力を与える第2の気泡9を発生させる吐出圧制御用発熱体2を設け、連続吐出時には吐出用発熱体1を駆動し、吐出休止後の再吐出時には吐出用発熱体1と吐出圧制御用発熱体2の両方を駆動する。
特許請求の範囲
【請求項1】
インク滴を吐出させるための吐出エネルギーを発生させる吐出用発熱体と、該吐出用発熱体が配置されインクに第1の気泡が発生する発泡室と、該発泡室にインクを供給するためのインク供給室と、該インク供給室にインクを導くインク供給路と、インク滴を吐出させるインク吐出口と、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記吐出用発熱体と前記インク供給路の間に吐出圧制御用発熱体を設け、連続吐出時には前記吐出用発熱体を駆動させ、吐出休止後の再吐出時には前記吐出用発熱体と前記吐出圧制御用発熱体の両方を駆動させることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
吐出休止時間が長くなるに連れ、前記吐出圧制御用発熱体の発泡エネルギーが大きくなるように制御することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
吐出環境の相対湿度が低くなるに連れ、前記吐出圧制御用発熱体の発泡エネルギーが大きくなるように制御することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記吐出圧制御用発熱体の発泡エネルギーは、駆動電圧又はパルス幅の少なくとも一方を変えることにより制御することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記吐出用発熱体と前記吐出圧制御用発熱体から発生する気泡の発泡開始時期(以下、発泡タイミング)の差は、前記吐出用発熱体と前記吐出圧制御用発熱体の駆動開始時期(以下、駆動タイミング)の差又は前記吐出圧制御用発熱体の駆動電圧の少なくとも一方を変えることにより制御することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーによりインクに気泡を発生させるバブルジェット型インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドよりインクを吐出させるインクジェット記録装置には、記録ヘッドに設けられるインクの吐出エネルギーの発生手段として、ピエゾ等の電気機械変換体を用いるものと、発熱体等の電気熱変換体を用いるものがある。このうち、電気熱変換体の発する熱エネルギーを用いてインクを吐出するバブルジェット(商標登録)型インクジェット記録ヘッドは、記録ヘッドの構造が簡単であり、インク滴を吐出するインク吐出部を高密度に配列することができるため、広く用いられている。
【0003】
インクジェット記録装置では、インクを吐出せずに放置しておくと、吐出口からインク中の揮発性成分(水、アルコール類)が蒸発し、インクが濃縮、乾燥することによる吐出不良が問題となっていた。そのため、現在の記録装置にはインク中の揮発性成分の蒸発(以下、インク蒸発と言う)に伴う吐出不良を防ぐ手段が設けられている。
【0004】
長期に渡る非記録時のインク蒸発を低減する手段としては、吐出口を密閉状態で覆うキャップを設け、インク蒸発を低減するとともに、記録開始直前にキャップ内に負圧を与えてインクを吸引し、吐出口内から濃縮したインクを除去する吸引回復動作が行われている。
【0005】
しかしながら、記録動作中であっても、画像によっては吐出を休止しているノズルがある。吐出を休止している間に、吐出口からインク中の揮発性成分(水、アルコール類)が蒸発すると、インク組成が変化する。このとき、吐出口付近のインク粘度は増加し、吐出口〜発泡室〜インク供給室に粘度分布が生じる。この状態で吐出を再開すると、最初の数発のインク滴吐出速度が低下したり、吐出体積が小さくなったりする吐出不良が見られる。更に、最悪の場合には不吐出になることさえある。これらのインク蒸発が原因で吐出休止後に生じる吐出不良は、インク滴着弾位置のずれや印字ドット径のばらつき、ドット抜け等の画像不良をもたらす。
【0006】
記録動作中にこれらのインク蒸発に伴う吐出不良を防ぐ手段としては、記録動作中のあるタイミングに、記録ヘッドを搬送するキャリッジを記録媒体外に移動させ、吐出と同じ駆動を複数回行うことにより吐出口付近の増粘したインクを除去する予備吐出と呼ばれる方法がある。
【0007】
近年、インクジェット記録装置において高画質化が急速に進められており、それに伴いインク滴は小液滴化されている。バブルジェット方式では、小液滴化が進むに連れ吐出口径は小さくなり、吐出口〜発泡室の容積が小さくなる傾向にある。単位面積当たりの水の蒸発速度は吐出口径が小さいほど速くなることが分かっている。
【0008】
又、吐出口の容積が小さくなると、吐出インクに対する増粘したインクの割合が増す。従って、小液滴化が進むとインク蒸発に伴う吐出不良が生じるまでの時間が短くなり、予備吐出の回数を増やさなければならなくなるが、予備吐出の回数が増えるとインクの無駄が増えることになり、ランニングコストが高くなるという問題があった。
【0009】
上記の問題を解決するため、吐出口からのインク蒸発によるインク粘度増加を抑制する発明が、特許文献1,2等に開示されている。特許文献1では、吐出口の近くに蒸発抑制溝を備え、インクから蒸発した水分やアルコール類の蒸気により吐出口周辺の雰囲気の湿度を上げることにより、吐出口からの蒸発を抑制している。特許文献2では、ノズル径が最小になる絞り部を変極点とし、発泡室側から変極点に向かうまでのノズル径はテーパー状に吐出方向に縮小し、変極点を境にして吐出方向にノズル径がテーパー状に広がっている。吐出口の開口面積が増えた効果により吐出口付近のインク粘度増加が低減できる。
【0010】
これらの発明は、吐出口からのインク蒸発によるインク粘度増加を抑制することができるため、インク蒸発が原因である吐出不良が生じるまでの時間を長くする効果がある。しかしながら、吐出口付近のインク粘度が増加してしまった時には吐出不良を抑制する効果はない。
【0011】
ここで、吐出用発熱体でインク中に発生した気泡の形状について、図2を参照しながら説明する。
【0012】
(a)図は連続吐出時の気泡形状である。このとき、吐出口〜発泡室〜インク供給室内のインク粘度は均一であり、従って、気泡は吐出方向、インク供給室方向の両方向に伸びる。図2(b)は吐出休止時に吐出口からインク中の揮発性成分が蒸発し、吐出口〜発泡室〜インク供給室にインク粘度分布が生じた後に吐出を再開したときの気泡形状である。このとき、発泡室から見て吐出口側の粘性抵抗が高く、インク供給室側の粘性抵抗が低くなる。気泡は粘性抵抗の高い吐出方向を避け、粘性抵抗の低いインク供給室方向に延びるため、図2(a)の連続吐出時の気泡形状に比べ、吐出方向に小さくインク供給室方向に大きい気泡となる。気泡形状が図2(b)のようになると、吐出力となる泡エネルギーの効率が低下し、インク滴吐出速度が低下する。
【0013】
吐出用発熱体でインク中に発生した気泡の吐出方向へのエネルギー効率を向上させるとともに、インクが吐出口まで再充填されるまでの速度、つまりリフィル性能を向上させる発明としては、例として特許文献3,4がある。特許文献3では、発熱体とインク供給口との間に、可動部材とインク供給口側への変位を制限する制限部を形成し、発泡圧力がインク供給口側へ逃げるのを防いでいる。特許文献4では、気泡発生領域のインク供給路側に設けられて気泡の成長に伴って移動する可動部材と、可動部材を挟むインク供給路側と吐出口側に可動部材の移動範囲を規制する規制部を設け、吐出圧を吐出口方向へ向けている。
【特許文献1】特開平11−005307号公報
【特許文献2】特開2004−042399号公報
【特許文献3】特開2003−127399号公報
【特許文献4】特開2003−175606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3,4では発熱体が駆動する度に可動部材が動くため、記録ヘッドの寿命が短いという問題がある。又、これらの発明では、流路内に可動部材を設けたことを特徴とする従来の発明と比べリフィル性能は向上しているが、流路内に構造物を設けていない従来のインクジェット記録ヘッドと比較するとリフィル性能は悪い。
【0015】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、吐出休止後の再吐出時であっても吐出方向の泡エネルギー効率が低下することなく、又、リフィル性能を低下させることなく、吐出速度が常に一定であるインクジェット記録方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、インク滴を吐出させるための吐出エネルギーを発生させる吐出用発熱体と、該吐出用発熱体が配置されインクに第1の気泡が発生する発泡室と、該発泡室にインクを供給するためのインク供給室と、該インク供給室にインクを導くインク供給路と、インク滴を吐出させるインク吐出口と、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、前記吐出用発熱体と前記インク供給路の間に吐出圧制御用発熱体を設け、連続吐出時には前記吐出用発熱体を駆動させ、吐出休止後の再吐出時には前記吐出用発熱体と前記吐出圧制御用発熱体の両方を駆動させることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、吐出休止時間が長くなるに連れ、前記吐出圧制御用発熱体の発泡エネルギーが大きくなるように制御することを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、吐出環境の相対湿度が低くなるに連れ、前記吐出圧制御用発熱体の発泡エネルギーが大きくなるように制御することを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記吐出圧制御用発熱体の発泡エネルギーは、駆動電圧又はパルス幅の少なくとも一方を変えることにより制御することを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記吐出用発熱体と前記吐出圧制御用発熱体から発生する気泡の発泡開始時期(以下、発泡タイミング)の差は、前記吐出用発熱体と前記吐出圧制御用発熱体の駆動開始時期(以下、駆動タイミング)の差又は前記吐出圧制御用発熱体の駆動電圧の少なくとも一方を変えることにより制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インク滴を吐出させるための第1の気泡を発生させる吐出用発熱体とインク供給路の間に、第1の気泡とは連通せず第1の気泡にインク供給室方向から発泡室方向の圧力を与える第2の気泡を発生させる吐出圧制御用発熱体を設け、連続吐出時には吐出用発熱体を駆動し、吐出休止後の再吐出時には吐出用発熱体と吐出圧制御用発熱体の両方を駆動させるため、吐出休止後の再吐出時であっても第1の気泡のエネルギーがインク供給室方向に逃げるのを防ぐことができ、第1の気泡の吐出方向へのエネルギー効率が低下することなく吐出方向に伝えられる。よって、気泡の吐出方向へのエネルギー効率低下によるインク滴吐出速度の低下を防ぎ、インク滴吐出速度を常に一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0023】
図1は本発明の構成を示すインクジェット記録ヘッドの断面図である。
【0024】
1はインク滴を吐出させるための吐出エネルギーを発生させる吐出用発熱体、2は吐出圧制御用発熱体であり、吐出用発熱体1より発生した第1の気泡8に圧力を与えるための第2の気泡9を発生させる。又、7はインク吐出口、3は吐出用発熱体の上にあり、第1の気泡8が発生する発泡室、4はインク供給室である。吐出圧制御用発熱体2は、吐出用発熱体1とインク供給路5の間に設け、吐出用発熱体1とは所望の距離を有している。
【0025】
以下、本発明の実施の形態における原理を説明する。
【0026】
前述の通り、吐出休止時には吐出口からインク中の揮発性成分が蒸発し、吐出口付近のインク粘度が増加する。このとき、吐出口〜発泡室〜インク供給室にインク粘度分布を生じ、発泡室から見て吐出口側の粘性抵抗が高く、インク供給室側の粘性抵抗が低くなる。吐出休止後の再吐出時に連続吐出時と同様に吐出用発熱体1のみを駆動させると、吐出用発熱体1より発生した第1の気泡8は、図2(b)のように、(a)図の連続吐出時の気泡形状と比べて、粘性抵抗の高い吐出方向に小さく、粘性抵抗の低いインク供給室方向に大きい形状になる。吐出方向への泡成長が小さくなることで、インク滴の吐出力となる泡エネルギー効率が低下するため、インク滴吐出速度が低下する。
【0027】
本発明では、吐出休止後の再吐出時におけるインク滴吐出速度を連続吐出時のインク滴吐出速度と同等にする手段として、吐出用発熱体1とインク供給路5の間に吐出圧制御用発熱体2を設け、吐出休止後の再吐出時には吐出用発熱体1と吐出圧制御用発熱体2の両方を駆動させている。吐出圧制御用発熱体2により第2の気泡9が発生する際に生じる吐出方向の圧力によって、吐出用発熱体1により発生した第1の気泡8の圧力がインク供給路方向に逃げるのを抑制し、吐出方向へ伝えることで、泡エネルギー効率を向上させることができる。
【0028】
ここで、第2の気泡9が発生する際に生じる発泡室方向への圧力を第1の気泡8に与えるには、第1の気泡8と第2の気泡9が連通しないことが重要となる。本発明では、第1の気泡8と第2の気泡9が連通しないようにする手段として、第2の気泡9の発泡エネルギー制御又は第1の気泡8と第2の気泡9の発泡タイミング差の制御の少なくとも一方を行う。
【0029】
先ず、発泡エネルギーの制御方法について説明する。
【0030】
発熱体に供給されるエネルギーEは、発熱体の抵抗をR、駆動電圧をV、パルス幅をPwとすると、Pw・V2 で表すことができる。この供給エネルギーEがインクを加熱する熱エネルギーとなり、その一部が発泡エネルギーになる。発泡エネルギーを制御するには、供給エネルギーを制御すれば良いが、発熱体の抵抗Rは発熱体の形状により決まるため、駆動電圧V又はパルス幅Pwの少なくとも一方を変えることで制御する。通常の記録動作における駆動条件から、Pw・V2 の値を一定にしたまま駆動電圧を高くする(パルス幅を短くする)と、インクが膜沸騰を発生する略315℃まで上昇するまでの時間が短くなる。
【0031】
このとき、発熱体により熱せられるインクの量が少なくなるため発泡エネルギーは小さくなり、発生する気泡が小さくなる。逆に、駆動電圧を低くする(パルス幅を長くする)と、インクが膜沸騰を発生する略315℃まで上昇するまでの時間が長くなる。このとき、発熱体により熱せられるインクの量が多くなるため発泡エネルギーは大きくなり、発生する気泡が大きくなる。但し、駆動電圧を高くすると発泡タイミングが早くなり、低くすると発泡タイミングが遅くなるため注意が必要となる(図3)。
【0032】
Pw・V2 の値を一定にしたまま駆動電圧とパルス幅を変えると、供給エネルギーを一定に保てるため、発熱体の空焚き、キャビテーション等による発熱体へのダメージをなくすことができるが、本発明はそれに限ったものではなく、Pw・V2 の値を一定に保たなくても良く、駆動電圧V又はパルス幅Pwのどちらか一方を変えても良い。
【0033】
通常の記録動作における駆動条件から、パルス幅を一定にしたまま、駆動電圧を変えても、Pw・V2 の値を一定にしたまま駆動電圧とパルス幅を変化させたときと同様の効果が得られる。但し、インクが略315℃に達する時間がパルス幅より長くなると発泡しないため、パルス幅一定のまま駆動電圧を変える場合の駆動電圧は、記録動作における駆動電圧の0.85倍以上にする。
【0034】
又、駆動電圧を一定にしたままパルス幅を変化させる場合、パルス幅を長くしてもインクが略315℃に達するまでの時間は変わらないため、発泡エネルギーは変わらない。パルス幅を短くすると駆動電圧を変化させた場合ほどの効果は得られないが、発泡エネルギーは僅かに小さくなる。但し、パルス幅がインクが略315℃に達する時間より短いと発泡しないため、駆動電圧を一定にしたままパルス幅を変化させる場合のパルス幅は、記録動作におけるパルス幅の0.8〜1.0倍にする。
【0035】
本発明においては、吐出用発熱体1の駆動条件(記録動作における駆動条件)は一定にし、吐出圧制御用発熱体2の発泡エネルギーの制御を行う。上記の説明は吐出用発熱体1と吐出圧制御用発熱体2の形状が同じ場合の発泡エネルギーの制御であり、2つの発熱体の形状が異なるときには、発熱体の抵抗Rを考慮して吐出用発熱体1と吐出圧制御用発熱体2の発泡エネルギーの制御を行えば良いことは自明である。
【0036】
次に、発泡タイミングの制御について説明する。
【0037】
気泡の成長が開始するのは発熱体にエネルギーが供給された(発熱体を駆動した)後、インクが略315℃に達した瞬間である。よって、発泡タイミングは吐出用発熱体1と吐出圧制御用発熱体2の駆動タイミングをずらすこと、又は、吐出圧制御用発熱体2の駆動電圧を変化させ、インクが略315℃に達するまでの時間を変えることにより制御することができる。発熱体により発生した気泡がインクを外側に押す圧力は、発泡した瞬間が最も大きく、その後、気泡が成長するに連れて減少していき、最大発泡時には最小となる。そのため、第2の気泡9が発生する際に生じる発泡室方向への圧力を第1の気泡8に与えるには、第2の気泡が発生した瞬間〜第2の気泡の最大発泡の間に第1の気泡が発生するようにタイミングを制御すれば良い。
【0038】
発泡タイミングを制御することで、第1の気泡8と第2の気泡9が連通しないようにすることができ、又、第1の気泡8に加える圧力をコントロールすることもできる。
【0039】
又、本発明では、吐出休止時間と吐出環境の相対湿度により発泡エネルギーの制御を行っている。吐出休止時間及び吐出環境の相対湿度と吐出休止後再吐出時のインク滴吐出速度の関係を図4及び図5を参照しながら説明する。
【0040】
図4に吐出休止後再吐出時のインク滴吐出速度の吐出休止時間依存性を示す。吐出休止時間が長いほどインク吐出口7からのインク蒸発量は多くなるため、吐出口付近のインク粘度は増加する。そのため、吐出休止時間が長いほど吐出用発熱体1により発生する第1の気泡8の吐出方向への伸びは小さくなり、インク供給路5方向への伸びは大きくなる。よって、吐出休止時間が長いほど泡エネルギー効率が低下し、インク滴吐出速度は遅くなる。
【0041】
図5に吐出休止後再吐出時のインク滴吐出速度の相対湿度依存性を示す。単位時間当たりの蒸発量は吐出環境の相対湿度が低いほど多くなり、高いほど少なくなる。そのため、吐出環境の相対湿度が低いほど吐出口付近のインク粘度は増加し、吐出用発熱体1により発生する第1の気泡8の吐出方向への伸びは小さくなり、インク供給路5方向への伸びは大きくなる。よって、吐出環境の相対湿度が低いほど泡エネルギー効率が低下し、インク滴吐出速度は遅くなる。
【0042】
そこで、本発明では、吐出休止時間が長いほど、又、吐出環境の相対湿度が低いほど吐出圧制御用発熱体2の発泡エネルギーを大きくすることで、第2の気泡9が第1の気泡8に与える圧力を大きくしている。これにより吐出休止時間や吐出環境の相対湿度によらずインク滴吐出速度を常に一定にすることができる。
【0043】
吐出休止時間と吐出環境の相対湿度に対する発泡エネルギー(駆動電圧、パルス幅)と吐出圧制御用発熱体2の駆動タイミングは予めテーブル化しておき、このテーブルを用いて駆動電圧とパルス幅を決定すれば良い。単位面積当たりのインク揮発性成分の蒸発速度は吐出口径が小さいほど速くなり、ノズルプレートの厚みが薄くなるほど、一滴に対する蒸発インクの割合が多くなる。そのため、当然のことながらプリンタヘッドの構造により吐出休止時間と吐出環境の相対湿度に対する発泡エネルギーや吐出圧制御用発熱体2の駆動タイミングは異なり、記録ヘッドの構造ごとにテーブルを作成しなければならない。吐出環境の相対湿度はキャリッジに搭載した湿度センサ(不図示)によりモニタリングを行っている。
【実施例1】
【0044】
本実施例においては、吐出口径30μm、ノズルプレート厚60μm、発泡室高さ20μm、吐出用発熱体サイズ40μm×40μmの記録ヘッドを用いた。吐出圧制御用発熱体2は吐出用発熱体1と同じ形状とし、2つの発熱体の中心間距離は55μmとした。
【0045】
吐出が安定するのに十分な時間だけ連続吐出をさせた後、数10秒間吐出を休止し、吐出を再開した時に最初に吐出されるインク滴及び気泡を顕微鏡を用いて観察した。
【0046】
先ず、吐出圧制御用発熱体2は駆動させずに吐出用発熱体1のみを駆動させ、従来の記録方法におけるインク滴及び気泡の観察を行った。このとき、吐出用発熱体1により発生した第1の気泡8は、連続吐出時の気泡に比べ、インク供給路方向に大きく、吐出方向に小さい形状となった。又、インク滴吐出速度は、連続吐出時の0.6倍であった。
【0047】
次に、本発明の記録方法により、吐出用発熱体1及び吐出圧制御用発熱体2を駆動させ、インク滴及び第1、第2の気泡の観察を行った。吐出圧制御用発熱体2の駆動タイミングは吐出用発熱体1と同時とした。駆動電圧を吐出用発熱体1の駆動電圧の1.2倍とし、供給エネルギーが吐出用発熱体1と同じになるようにパルス幅を設定した。
【0048】
このとき、吐出用発熱体1により発生した第1の気泡8と第2の気泡9が連通することはなく、第1の気泡8のインク供給路方向、吐出方向への伸びは連続吐出時と等しくなり、又、インク滴吐出速度も同程度となった。このように、第2の気泡9の発泡圧力により第1の気泡8に発泡室方向の圧力を与えることで、吐出休止後再吐出時における気泡形状を連続吐出時の気泡形状と同等にし、吐出休止後再吐出時におけるインク滴吐出速度の低下を防ぐことができる。
【実施例2】
【0049】
本実施例においては、吐出休止時間によるエネルギー制御の一例を示す。休止0,20,40秒において、供給エネルギーを一定に保ったまま駆動電圧、パルス幅を変え、インク滴及び第1、第2の気泡の観察を行った。吐出用発熱体1の駆動タイミングは吐出圧制御用発熱体2と同時とし、吐出環境の相対湿度は40%とした。吐出用発熱体1の駆動電圧をVu、パルス幅をPwuとする。本実施例における実験結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【実施例3】
【0051】
本実施例においては、相対湿度によるエネルギー制御の一例を示す。吐出環境の相対湿度100,60,30%において、供給エネルギーを一定に保ったまま駆動電圧、パルス幅を変え、インク滴及び第1、第2の気泡の観察を行った。吐出用発熱体1の駆動タイミングは吐出圧制御用発熱体2と同時とし、休止時間は30秒とした。本実施例における実験結果を表2に示す。
【0052】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るインクジェット記録ヘッドの一実施形態を示す断面図である。
【図2】吐出用発熱体からインクに発生した気泡の形状であり、(a)は連続吐出時の気泡形状、(b)は吐出休止後再吐出時の気泡形状である。
【図3】本発明の実施形態における発熱体に加える駆動電圧と発泡開始時間の特性図である。
【図4】従来の記録法により記録動作を行ったときのインク滴吐出速度の吐出休止時間依存性を示した図である。
【図5】従来の記録法により記録動作を行ったときのインク滴吐出速度の相対湿度依存性を示した図である。
【符号の説明】
【0054】
1 吐出用発熱体
2 吐出圧制御用発熱体
3 発泡室
4 インク供給室
5 インク供給路
6 ノズルプレート
7 インク吐出口
8 第1の気泡
9 第2の気泡




 

 


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