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発明の名称 液体噴射装置におけるメンテナンス装置及び液体噴射装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007−90772(P2007−90772A)
公開日 平成19年4月12日(2007.4.12)
出願番号 特願2005−285498(P2005−285498)
出願日 平成17年9月29日(2005.9.29)
代理人 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
発明者 島▲崎▼ 準 / 原田 宏司 / 東上 誠司
要約 課題
例えば回転駆動源を共有する使われ方をされても、ロック部材やワイパなどの保守部品を適切に作動させることができる液体噴射装置におけるメンテナンス装置および液体噴射装置を提供する。

解決手段
キャップ100は、キャリッジ12がクリーニング位置に到達する過程で突出部材98と係合してこれを押すことでスライダ80と共に上昇し、キャリッジ12がクリーニング位置から離れるとバネの付勢力によってスライダ80と共に下降する。スライダ80の下降時にはその端面下部から突設されたストッパ86が、動力伝達機構のうち摩擦クラッチギヤ機構65の一構成部品である円筒カム67の係止穴71に挿入され、電動モータが駆動されても、ロックレバー45の上昇が阻止されるとともにワイパの上昇が阻止される。
特許請求の範囲
【請求項1】
液体噴射ヘッドを有するキャリッジが移動可能に設けられた液体噴射装置に装備され、前記液体噴射ヘッドに対して保守を行うメンテナンス装置であって、
前記キャリッジ又は前記液体噴射ヘッドと係合可能な作動位置と、係合不能な退避位置との間で往復移動する少なくとも一つの保守部品と、
回転駆動源からの動力を入力して伝達するとともに前記保守部品を前記作動位置と前記退避位置との間で往復動させる動力を出力する動力伝達機構であってその動力伝達経路上にクラッチ手段を有する前記動力伝達機構と、
前記キャリッジの移動に追従して動くように設けられたストッパを有する係止機構であって、前記キャリッジがクリーニング位置から離れると前記クラッチ手段のクラッチ面から前記保守部品に至るまでの動力伝達経路上の構成部品のうち少なくとも一つの可動体に前記ストッパを係止させるとともに、前記キャリッジがクリーニング位置に配置されると前記可動体への前記ストッパの係止を解除するように、前記ストッパを前記キャリッジの移動に連動して作動させる前記係止機構と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記動力伝達機構を介して伝達される動力により作動される前記保守部品以外の保守部品として設けられた、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャップと、
前記キャップを退避位置と封止位置との間で往復移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、前記キャリッジがクリーニング位置に移動する過程で該キャリッジ又は液体噴射ヘッドと係合してスライドするスライダと、該スライダをスライド過程で上下方向に変位するように案内する案内手段と、前記スライダを上昇位置から下降する方向へ付勢する付勢手段とを有し、
前記キャップは前記スライダに搭載されており、
前記係止機構は、前記移動手段と、前記スライダに設けられた前記ストッパとを有することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項3】
液体噴射ヘッドを有するキャリッジが移動可能に設けられた液体噴射装置に装備され、前記液体噴射ヘッドに対して保守を行うメンテナンス装置であって、
前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャップと、
前記キャップを退避位置と封止位置との間で往復移動させる移動手段と、
前記キャリッジ又は前記液体噴射ヘッドと係合不能な退避位置と、係合可能な作動位置との間で往復移動する少なくとも一つの保守部品と、
回転駆動源からの動力を入力して伝達するとともに前記保守部品を前記退避位置と前記作動位置との間で往復動させる動力を出力する動力伝達機構であってその動力伝達経路上にクラッチ手段を有する前記動力伝達機構と、
前記キャップの移動に追従して動くように設けられたストッパを有し、前記キャップが前記退避位置にあるときに前記クラッチ手段のクラッチ面から前記保守部品までの動力伝達経路上の構成部品のうち少なくとも一つの可動体に前記ストッパを係止させるとともに、前記キャップが封止位置にあるときに前記可動体への前記ストッパの係止を解除させるように、前記ストッパを前記キャップの移動に連動して作動させる係止機構と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記動力伝達機構は、前記保守部品に設けられたカムフォロアと係合可能なカム部を有するカム体を備え、
前記カム部と前記カムフォロアとを含む変換手段により前記カム体の運動が前記保守部品の往復移動の運動に変換されるように構成されており、
前記ストッパの係止先となる前記可動体は、前記カム体であり、当該カム体に前記ストッパが係止される被係止部が設けられていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記クラッチ手段は、同軸上に相対回転可能に設けられるとともに前記クラッチ面で接離可能に結合された歯車と回動体とを有し、前記ストッパの係止先となる前記可動体は、前記クラッチ手段の構成部品のうち前記クラッチ面より動力伝達方向下流側に位置する前記回動体であり、当該回動体に前記ストッパが係止される被係止部が設けられていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記クラッチ手段を構成する前記回動体には前記保守部品に設けられたカムフォロアと係合可能なカム部が設けられており、
前記カム部と前記カムフォロアとを含む変換手段により前記カム体の運動が前記保守部品の往復移動の運動に変換されるように構成されていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記保守部品として、前記キャリッジに係合して該キャリッジをクリーニング位置に位置決めするためのロック部材を備え、該ロック部材は前記キャリッジと係合可能なロック位置と係合不能な退避位置との間で往復移動することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記保守部品として、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を払拭するためのワイパを備え、該ワイパは払拭位置と退避位置との間で往復移動することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項9】
請求項4又は6に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記保守部品として、前記キャリッジに係合して該キャリッジをクリーニング位置に位置決めするためのロック部材を少なくとも備え、該ロック部材は前記キャリッジと係合可能なロック位置と退避位置との間で往復移動可能に設けられ、
前記カム体は、有限範囲を往復運動するように構成されており、
前記変換手段は、前記カム体の前記有限範囲での一方向の運動を、前記退避位置から前記ロック位置を経由して再び前記退避位置へ戻る前記ロック部材の一往復動の運動に変換することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項10】
請求項4、6、9のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置であって、
前記保守部品として、前記ノズル形成面を払拭するためのワイパを備え、該ワイパは払拭位置と退避位置との間で往復移動可能に設けられ、
前記カム体は、有限範囲を往復運動するように構成されており、
前記変換手段は、前記カム体の前記有限範囲での一方向の運動を、前記ワイパの前記退避位置から前記払拭位置への運動に変換し、前記カム体の前記有限範囲での他方向の運動を、前記ワイパの前記払拭位置から前記退避位置への運動に変換することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項11】
請求項4又は6に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記保守部品として保守内容の異なる二つの保守部品を少なくとも備え、
前記動力伝達機構は、前記カム部として、前記二つの保守部品のうち第1保守部品に設けられた第1カムフォロアと係合する第1カム部と、第2保守部品に設けられた第2カムフォロアと係合する第2カム部とを有するカム体を、前記クラッチ面より動力伝達方向下流側の位置に備え、
前記変換手段として、前記第1カム部と前記第1カムフォロアとを含むとともに前記カム体の運動を前記第1保守部品の往復移動の運動に変換する第1変換手段と、前記第2カム部と前記第2カムフォロアとを含むとともに前記カム体の運動を前記第2保守部品の往復移動の運動に変換する第2変換手段とを備えていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項12】
請求項11に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記カム体は有限範囲を往復回動するものであって、前記第1保守部品は前記カム体の前記有限範囲での一方向の回動で上昇と下降の一往復動をし、前記第2保守部品は前記カム体の前記有限範囲での一方向の回動で上昇するとともに当該カム体の前記有限範囲での他方向の回動で下降することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項13】
請求項12に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記第1保守部品は、前記キャリッジに係合して該キャリッジをクリーニング位置に位置決めするためのロック部材であって前記キャリッジと係合可能なロック位置と係合不能な退避位置との間で往復移動可能に設けられた当該ロック部材であり、
前記第2保守部品は、前記ノズル形成面を払拭するために払拭位置と退避位置との間で往復移動可能に設けられたワイパであることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項14】
請求項2乃至13のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記キャップに負圧を与える吸引ポンプを備え、前記吸引ポンプは前記動力伝達機構に入力される動力によって駆動されることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項15】
請求項4乃至14のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記動力伝達機構を介して伝達される動力により作動される前記保守部品又は、当該保守部品以外であって前記動力伝達機構以外の移動手段により作動される保守部品として設けられた前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を払拭するためのキャップと、
前記キャップに負圧を与える吸引ポンプとを備え、
前記カム体は有限範囲を往復移動するように構成されており、
前記吸引ポンプは前記動力伝達機構に入力される動力によって駆動されるように構成され、
前記動力伝達機構において前記吸引ポンプへの動力は、前記クラッチ手段のクラッチ面より動力伝達方向上流側の位置で分配されるように構成されていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記クラッチ手段は、歯車と、該歯車と同軸上に相対回転可能に組付けられた回動体と、前記歯車および前記回動体を一体回転させうる結合摩擦力を両者の接触面に与えることで構成される摩擦クラッチとを有する摩擦クラッチ手段であることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項17】
請求項16に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、
前記回動体は、前記摩擦クラッチ手段を構成する前記歯車が噛合している動力伝達方向上流側に位置する駆動歯車と噛合する歯部を有し、該歯部は、当該回動体が前記保守部品の移動ストロークの途中範囲に相当する回動範囲にあるときに前記駆動歯車と噛合可能な部位に形成されていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【請求項18】
液体噴射ヘッドを有するキャリッジを備えた液体噴射装置において、
請求項1、2、4乃至17のいずれか一項に記載のメンテナンス装置であって前記キャリッジの移動に連動する前記ストッパを有する当該メンテナンス装置を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項19】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、
請求項3乃至17のいずれか一項に記載のメンテナンス装置であって前記キャップの移動に連動する前記ストッパを有する前記メンテナンス装置を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項20】
請求項18又は請求項19に記載の液体噴射装置において、
前記液体噴射ヘッドから噴射される液体が着弾される媒体を搬送する搬送駆動部と、
前記搬送駆動部に搬送駆動のための動力を与える回転駆動源とを備え、
前記回転駆動源が、前記メンテナンス装置に動力を与える回転駆動源を兼ねていることを特徴とする液体噴射装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置におけるメンテナンス装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体噴射装置の一つとしてインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置は記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を備え、記録ヘッドによる印刷は、記録ヘッドと記録用紙を相対移動させながら、記録ヘッドからインク滴を噴射することにより行われる。記録ヘッドからインク滴を良好に噴射して品質の高い印刷を行うためには、印刷途中や印刷休止中の適宜な時期に、記録ヘッドのクリーニングを実施し、ノズル孔の目詰まり等の不具合の解消および防止が必要となる。このため、インクジェット式記録装置には、記録ヘッドのためのメンテナンス装置が装備されている。
【0003】
メンテナンス装置は、弾性素材を短冊状に成形したワイピング部材を有するワイパと、ノズル内のインクの乾燥を防ぐために記録ヘッドのノズル形成面にキャッピングをする蓋体となるキャップと、ノズル形成面のノズル開口からインクを強制的に吸引するための負圧を与える吸引ポンプとを備える。そして、インク吸引動作の際はノズル形成面をキャップして封止し、吸引ポンプを駆動してその封止された空間に負圧を与えることにより、記録ヘッドのノズル開口からインクを強制的に吸引して増粘したインクや気泡等を排出させる。通常、この吸引動作に連続してワイパによるワイピングが実施され、ノズル形成面に付着したインクや紙粉を掻き取ったりノズル孔内の液体のメニスカスを整えたりすることが行われる。また、印刷休止中は、ノズル形成面にキャップで蓋をしてノズル内のインクの乾燥を防止するようにしている。また、記録ヘッドが所定の位置に配置された状態でキャッピングができるように、キャリッジをクリーニング位置に位置規制するロックレバーを備えるメンテナンス装置も知られている(例えば特許文献1)。このメンテナンス装置では、ワイパとロックレバーが同じ動力伝達機構を介して駆動されるようになっていた。
【0004】
ところで、メンテナンス装置では、ワイパ、キャップおよび吸引ポンプなどは個別に作動させる必要があるが、回転駆動源を個別に用意すると、複数の回転駆動源および個別の動力伝達機構等が必要となり、メンテナンス装置の構造複雑化および大型化を招く。そこで、例えば特許文献2には、ワイパ、キャップおよび吸引ポンプを、共通の回転駆動源を用いて作動させるメンテナンス装置が開示されている。このメンテナンス装置によれば、回転駆動源を一つにすることはできるが、インクジェット式記録装置に装備した場合、記録用紙の給排紙を行う少なくとも一つの回転駆動源、および記録ヘッドを搭載するキャリッジを往復動させる回転駆動源以外に、回転駆動源がもう一つ必要になる。
【0005】
例えば特許文献3、4には、メンテナンス装置(メンテナンス機構)を構成するワイパ、キャップおよび吸引ポンプに共通の回転駆動源を、給紙ローラおよび搬送ローラを駆動する紙送りモータとしたインクジェットプリンタが開示されている。このプリンタでは、給紙ローラおよび搬送ローラを駆動させるときには紙送りモータを正転駆動させ、ワイパ、キャップおよび吸引ポンプを作動させるときには紙送りモータを逆転駆動させるようにしていた。吸引ポンプは、紙送りモータの逆転駆動時にポンプ駆動され、紙送りモータの正転駆動時にレリース状態となるので、給排紙時には負圧を発生させないようになっていた。
【0006】
また、キャリッジがホームポジションに位置するとき(クリーニング時)には、クラッチ機構により紙送りモータの回転がオートシートフィーダに伝達されることがないように構成されていた。さらに特許文献3、4では、給紙された用紙を所定位置に位置決めする頭出し処理のときに紙送りモータが逆転駆動されるバックフィード過程があるが、伝達遅延手段が設けられ、この伝達遅延手段の入力と出力で約1回転分の回転伝達遅れが発生するため、このバックフィード過程においてメンテナンス機構が動作されないように構成されていた。
【特許文献1】特開2002−1977号公報
【特許文献2】特開2003−154686号公報
【特許文献3】特開2005−144690号公報
【特許文献4】特開平10−202916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の装置によれば、伝達遅延手段の機構を設ける必要があり、メンテナンス装置の構成が複雑化し易いという問題があった。また、伝達遅延手段の遅延回転量以内の紙送りモータの逆転駆動は許容されるが、伝達遅延手段の遅延回転量を超える回転量で電動モータが逆転駆動されると、ワイパまたはキャップが上昇することになっていた。この結果、用紙搬送のために紙送りモータが遅延回転量を超える回転量で逆転駆動された後に、キャリッジがホームポジションに移動すると、上昇したワイパやキャップに記録ヘッドが接触する不具合が発生する恐れがあった。このため、搬送過程において他の目的で記録用紙を逆送(バックフィード)させる機能を追加するなど遅延回転量を超える回転量で紙送りモータを逆転駆動させたい要請があった場合には対応できないという問題があった。このように、搬送系の機構とメンテナンス装置で回転駆動源を共有する構成では、搬送系とクリーニング系の動作を干渉させず、しかも紙送りモータを逆転駆動させて記録用紙を逆送させるなどの制御に自由度をもたせるためには、上記の問題を解決する必要があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、例えば回転駆動源を共有する使われ方をされても、ロック部材やワイパなどの保守部品を適切に作動させることができる液体噴射装置におけるメンテナンス装置および液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液体噴射ヘッドを有するキャリッジが移動可能に設けられた液体噴射装置に装備され、前記液体噴射ヘッドに対して保守を行うメンテナンス装置であって、前記キャリッジ又は前記液体噴射ヘッドと係合可能な作動位置と、係合不能な退避位置との間で往復移動する少なくとも一つの保守部品と、回転駆動源からの動力を入力して伝達するとともに前記保守部品を前記作動位置と前記退避位置との間で往復動させる動力を出力する動力伝達機構であってその動力伝達経路上にクラッチ手段を有する前記動力伝達機構と、前記キャリッジの移動に追従して動くように設けられたストッパを有する係止機構であって、前記キャリッジがクリーニング位置から離れると前記クラッチ手段のクラッチ面から前記保守部品に至るまでの動力伝達経路上の構成部品のうち少なくとも一つの可動体に前記ストッパを係止させるとともに、前記キャリッジがクリーニング位置に配置されると前記可動体への前記ストッパの係止を解除するように、前記ストッパを前記キャリッジの移動に連動して作動させる当該係止機構と、を備えたことを特徴とする。なお、ここでいう保守部品とは、液体噴射ヘッドに接触してクリーニング等の保守を行う狭義の保守部品の他、狭義の保守部品による保守を行える又は行い易くするよう液体噴射ヘッドの位置や姿勢等の条件を整えるなど、保守を支援する作業を行うために設けられた保守部品をも含む。この点は特に断りがない限り、以下の発明においても同様である。また、液体は、記録(印刷)に用いられるインクに限らず、電子回路基板を少なくとも一部インクジェット法を用いて製造する場合に、液体として用いられる特定の機能材料を含む液状体も含まれる。
【0010】
これによれば、キャリッジがクリーニング位置に配置されていない状態では、クラッチ手段のクラッチ面より動力伝達方向下流側に位置する可動体(保守部品を含む)にストッパが係止している。この係止状態の下で、回転駆動源が駆動されてもその動力が動力伝達機構を介して保守部品に伝達されず、保守部品は退避位置から作動位置へ移動することができない。このため、例えば回転駆動源が他の装置と共有される使われ方をされ、他の装置を作動させる目的で駆動された回転駆動源の動力が動力伝達機構に入力されたとしても、保守部品が退避位置から作動位置へ移動することがない。一方、キャリッジがクリーニング位置に配置されると、可動体に係止していたストッパの係止が解除される。この非係止状態の下で、回転駆動源が駆動されれば、その動力が動力伝達機構を介して保守部品に伝達され、保守部品が退避位置から作動位置へ移動する。このため、キャリッジ又は液体噴射ヘッドに対する保守部品による保守(保守支援作業を含む)を行うことができる。なお、キャリッジに対する保守とは、液体噴射ヘッドの位置や姿勢等の条件を整えるのためにキャリッジに係合するなどして行われる保守支援作業を指す。
【0011】
また、本発明のメンテナンス装置では、前記動力伝達機構を介して伝達される動力により作動される前記保守部品以外の保守部品として設けられた、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャップと、前記キャップを退避位置と封止位置との間で往復移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、前記キャリッジがクリーニング位置に移動する過程で該キャリッジ又は液体噴射ヘッドと係合してスライドするスライダと、該スライダをスライド過程で上下方向に変位するように案内する案内手段と、前記スライダを上昇位置から下降する方向へ付勢する付勢手段とを有し、前記キャップは前記スライダに搭載されており、前記係止機構は、前記移動手段と、前記スライダに設けられた前記ストッパとを有することが好ましい。なお、キャップの役割としての封止機能には、例えば液体噴射ヘッドのノズル内の液体の乾燥を防ぐためにノズル形成面にキャップをする封止機能や、ノズル形成面のノズル開口から液体を吸引するためにノズル形成面にキャップをする封止機能などが挙げられ、上記両機能のうち少なくとも一方の機能があればよい。さらにキャップによる封止は、液体噴射ヘッドのうち液体が噴射されるノズル開口の部分を少なくとも封止できれば足りる。この点は以下の発明についても同様である。
【0012】
これによれば、複数の保守部品のうちキャップは、動力伝達機構とは別の移動手段により退避位置と封止位置との間で往復移動する。この移動手段を構成するスライダは、キャリッジがクリーニング位置に移動する過程で該キャリッジ又は液体噴射ヘッドと係合してスライドし、そのスライド過程で案内手段に案内されることにより上方へ変位し、キャップを退避位置から封止位置へ移動させる。また、キャリッジがクリーニング位置から離れると、付勢手段の付勢力によりスライダが上昇位置から下方へ復帰し、キャップは封止位置から退避位置へ戻る。ストッパはスライダに設けられ、キャップの昇降に連動して動く。係止機構は、キャップ用の移動手段を流用して構築されるので、ストッパをキャリッジに連動させて動かす機構を別途設ける必要がない。つまり、キャップ用の移動手段を構成するスライダにストッパを設けるだけで係止機構を簡単に構築できる。したがって、係止機構を追加する割にメンテナンス装置の大型化を招きにくい。
【0013】
本発明は、液体噴射ヘッドを有するキャリッジが移動可能に設けられた液体噴射装置に装備され、前記液体噴射ヘッドに対して保守を行うメンテナンス装置であって、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャップと、前記キャップを退避位置と封止位置との間で往復移動させる移動手段と、前記キャリッジ又は前記液体噴射ヘッドと係合不能な退避位置と、係合可能な作動位置との間で往復移動する少なくとも一つの保守部品と、回転駆動源からの動力を入力して伝達するとともに前記保守部品を前記退避位置と前記作動位置との間で往復動させる動力を出力する動力伝達機構であってその動力伝達経路上にクラッチ手段を有する前記動力伝達機構と、前記キャップの移動に追従して動くように設けられたストッパを有し、前記キャップが前記退避位置にあるときに前記クラッチ手段のクラッチ面から前記保守部品までの動力伝達経路上の構成部品のうち少なくとも一つの可動体に前記ストッパを係止させるとともに、前記キャップが封止位置にあるときに前記可動体への前記ストッパの係止を解除させるように、前記ストッパを前記キャップの移動に連動して作動させる係止機構と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、キャップは移動手段により退避位置と封止位置との間で移動配置され、保守時期(クリーニング時又はキャッピング時)には封止位置に、保守時期でないときは退避位置に配置される。キャップが封止位置に配置されていない状態では、クラッチ手段のクラッチ面より動力伝達方向下流側に位置する可動体(保守部品を含む)にストッパが係止している。この係止状態の下で、回転駆動源が駆動されてもその動力が動力伝達機構を介して保守部品に伝達されず、保守部品は作動位置へ移動することができない。このため、例えば回転駆動源が他の装置と共有される使われ方をされ、他の装置を作動させる目的で駆動された回転駆動源の動力が動力伝達機構に入力されたとしても、保守部品が作動位置へ移動することがない。一方、キャップが退避位置に配置されると、可動体に係止していたストッパの係止が解除される。この非係止状態の下で、回転駆動源が駆動されれば、その動力が動力伝達機構を介して保守部品に伝達され、保守部品が作動位置へ移動することができる。このため、キャリッジ又は液体噴射ヘッドに対する保守部品による保守(保守支援作業を含む)を行うことができる。なお、キャリッジに対する保守とは、液体噴射ヘッドの位置や姿勢等の条件を整えるためにキャリッジに係合するなどして行われる保守支援作業を指す。
【0015】
本発明のメンテナンス装置では、前記動力伝達機構は、前記保守部品に設けられたカムフォロアと係合可能なカム部を有するカム体を備え、前記カム部と前記カムフォロアとを含む変換手段により前記カム体の運動が前記保守部品の往復移動の運動に変換されるように構成されており、前記ストッパの係止先となる前記可動体は、前記カム体であり、当該カム体に前記ストッパが係止される被係止部が設けられていることが好ましい。
【0016】
これによれば、カム部とカムフォロアとの係合を介してカム体の運動が保守部品の往復移動の運動に変換される。キャリッジがクリーニング位置にないときは、前記ストッパがカム体の被係止部に係止することで、保守部品の作動がロックされる。ストッパの係止先となる被係止用部品(可動体)をカム体が兼ねることとなり、被係止用部品をカム体以外に別途用意する必要がない。このため、動力伝達機構の部品点数を少なく抑えることができ、動力伝達機構を比較的簡単な構成とすることができる。例えば係止機構を設けた割にメンテナンス装置の大型化を招きにくい。
【0017】
本発明のメンテナンス装置では、前記クラッチ手段は、同軸上に相対回転可能に設けられるとともに前記クラッチ面で接離可能に結合された歯車と回動体とを有し、前記ストッパの係止先となる前記可動体は、前記クラッチ手段の構成部品のうち前記クラッチ面より動力伝達方向下流側に位置する前記回動体であり、当該回動体に前記ストッパが係止される被係止部が設けられていることが好ましい。
【0018】
これによれば、キャリッジがクリーニング位置にないときは、前記ストッパがクラッチ手段を構成する回動体の被係止部に係止することで、保守部品の作動がロックされる。ストッパの係止先となる被係止用部品(可動体)をクラッチ手段の構成部品が兼ねることとなり、被係止用部品をクラッチ手段以外に別途用意する必要がない。このため、動力伝達機構の部品点数を少なく抑えることができ、動力伝達機構を比較的簡単な構成とすることができる。例えば係止機構を設けた割にメンテナンス装置の大型化を招きにくい。
【0019】
本発明のメンテナンス装置では、前記クラッチ手段を構成する前記回動体には前記保守部品に設けられたカムフォロアと係合可能なカム部が設けられており、前記カム部と前記カムフォロアとを含む変換手段により前記カム体の運動が前記保守部品の往復移動の運動に変換されるように構成されていることが好ましい。
【0020】
これによれば、クラッチ手段の構成部品である回動体がカム体を兼ねるので、クラッチ手段以外に別途カム体を設ける必要がない。このため、動力伝達機構の部品点数をさらに少なく抑えられ、動力伝達機構を一層簡単な構成とすることができる。
【0021】
本発明のメンテナンス装置では、前記保守部品として、前記キャリッジに係合して該キャリッジをクリーニング位置に位置決めするためのロック部材を備え、該ロック部材は前記キャリッジと係合可能なロック位置と係合不能な退避位置との間で往復移動することが好ましい。
【0022】
これによれば、ロック部材がロック位置に配置されることで、キャリッジをクリーニング位置に位置決めすることができ、この状態の下でキャップを払拭位置へ移動させることにより液体噴射ヘッドのノズル形成面に対して適切な位置をキャッピングすることができる。
【0023】
本発明のメンテナンス装置では、前記保守部品として、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を払拭するためのワイパを備え、該ワイパは払拭位置と退避位置との間で往復移動することが好ましい。
【0024】
これによれば、ワイパを払拭位置に配置させることにより、ワイパにより液体噴射ヘッドのノズル形成面を払拭することができる。
本発明のメンテナンス装置では、前記保守部品として、前記キャリッジに係合して該キャリッジをクリーニング位置に位置決めするためのロック部材を少なくとも備え、該ロック部材は前記キャリッジと係合可能なロック位置と退避位置との間で往復移動可能に設けられ、前記カム体は、有限範囲を往復運動するように構成されており、前記変換手段は、前記カム体の前記有限範囲での一方向の運動を、前記退避位置から前記ロック位置を経由して再び前記退避位置へ戻る前記ロック部材の一往復動の運動に変換することが好ましい。
【0025】
これによれば、回転駆動源がメンテナンス装置を作動させる一方向に回転駆動されたとき、カム体の有限範囲での一方向への運動は、ロック部材の退避位置からロック位置を経由して再び退避位置へ戻る一往復動の運動に変換される。よって、ロック部材はキャリッジをロックさせた後速やかに退避するので、その後、他の保守部品による保守が行われる際にロック部材が妨げになることがない。
【0026】
本発明のメンテナンス装置では、前記保守部品として、前記ノズル形成面を払拭するためのワイパを備え、該ワイパは払拭位置と退避位置との間で往復移動可能に設けられ、前記カム体は、有限範囲を往復運動するように構成されており、
前記変換手段は、前記カム体の前記有限範での一方向の運動を、前記ワイパの前記退避位置から前記払拭位置への運動に変換し、前記カム体の前記有限範囲での他方向の運動を、前記ワイパの前記払拭位置から前記退避位置への運動に変換することが好ましい。
【0027】
これによれば、回転駆動源がメンテナンス装置を作動させる一方向に回転駆動されたとき、カム体の有限範囲内の一方向への運動は、ワイパの退避位置から払拭位置への運動に変換される。このため、ワイパを保守(ワイピング)が可能な払拭位置に待機させることができる。また、回転駆動源が他方向に回転駆動されると、カム体の有限範囲内の他方向への運動は、ワイパの払拭位置から退避位置への運動に変換される。このため、ワイピング終了後にワイパを退避させることができる。
【0028】
本発明のメンテナンス装置では、前記保守部品として保守内容の異なる二つの保守部品を少なくとも備え、前記動力伝達機構は、前記二つの保守部品のうち第1保守部品に設けられた第1カムフォロアと係合する第1カム部と、第2保守部品に設けられた第2カムフォロアと係合する第2カム部とを有するカム体を、前記クラッチ面より動力伝達方向下流側の位置に備え、前記第1カム部と前記第1カムフォロアとを含むとともに前記カム体の運動を前記第1保守部品の往復移動の運動に変換する第1変換手段と、前記第2カム部と前記第2カムフォロアとを含むとともに前記カム体の運動を前記第2保守部品の往復移動の運動に変換する第2変換手段とを備えていることが好ましい。
【0029】
これによれば、一つのカム体の運動が、第1変換手段および第2変換手段により、保守部品として備えられたうち二つの保守部品の各々の往復移動の運動に変換される。よって、二つの保守部品のそれぞれの往復移動の運動に変換するために動力伝達機構に備えられるカム体が、二つの保守部品で共有されるので、動力伝達機構の部品点数を少なく抑えて、動力伝達機構を比較的簡単な構成とすることができる。この結果、例えばメンテナンス装置の大型化を招きにくい。
【0030】
さらに本発明のメンテナンス装置では、前記カム体は有限範囲を往復回動するものであって、前記第1保守部品は前記カム体の前記有限範囲での一方向の回動で上昇と下降の一往復動をし、前記第2保守部品は前記カム体の前記有限範囲での一方向の回動で上昇するとともに当該カム体の前記有限範囲での他方向の回動で下降することを特徴とする。
【0031】
これによれば、回転駆動源がメンテナンス装置を作動させる一方向に回転駆動され、カム体が有限範囲を一方向に回動すると、第1保守部品は上昇と下降の一往復動をし、上昇した作動位置で所定の保守(第1保守)を行った後速やかに下降して退避位置に戻る。このため、所定の保守が終わった後に退避せず液体噴射ヘッドとの不要な干渉を招くことを回避できる。また、第2保守部品は、カム体が有限範囲を一方向に回動したときに上昇して作動位置(保守位置)に待機できる。そのため、その後のキャリッジの移動過程でその待機位置で液体噴射ヘッドに対して所定の保守(第2保守)を行うことができる。このとき第1保守部品は退避しているので、第2保守の妨げになることがない。そして、回転駆動源が他方向に回転駆動され、カム体が他方向に回動されると、第2保守部品は下降して退避位置に戻る。
【0032】
さらに本発明のメンテナンス装置では、前記第1保守部品は、前記キャリッジに係合して該キャリッジをクリーニング位置に位置決めするためのロック部材であって前記キャリッジと係合可能なロック位置と係合不能な退避位置との間で往復移動可能に設けられた当該ロック部材であり、前記第2保守部品は、前記ノズル形成面を払拭するために払拭位置と退避位置との間で往復移動可能に設けられたワイパであることを特徴とする。
【0033】
これによれば、メンテナンス装置を作動させる一方向に回転駆動され、カム体が有限範囲を一方向に回動すると、ロック部材がロック位置に配置されてキャリッジをクリーニング位置に位置決めした後に速やかに退避位置に退避し、ワイパは退避位置から払拭位置へ上昇して払拭位置に待機する。このとき、キャリッジがクリーニング位置に位置決めされているタイミングで、退避位置から上昇してきたキャップが封止位置に配置されることによりノズル形成面を適切な位置で封止する。その後、キャリッジがクリーニング位置を離れて移動する過程で、払拭位置で待機するワイパにノズル形成面を摺接させることでワイピングが行われる。この際、ロック部材はキャリッジおよび液体噴射ヘッドと係合不能な退避位置にあるので、ワイパによるワイピング作業時の妨げにならない。
【0034】
本発明のメンテナンス装置では、前記キャップに負圧を与える吸引ポンプを備え、前記吸引ポンプは前記動力伝達機構に入力される動力によって駆動されることが好ましい。
これによれば、吸引ポンプは回転駆動源を共有するので、メンテナンス装置を液体噴射装置に装備した場合、液体噴射装置に配設すべき回転駆動源の数を少なく抑えることができる。よって、回転駆動源の配設スペースが少なく済み、液体噴射装置の大型化を招きにくく、しかも回転駆動源が少なく済む分、液体噴射装置の製造コストを低く抑えることができる。
【0035】
本発明のメンテナンス装置では、前記動力伝達機構を介して伝達される動力により作動される前記保守部品又は、当該保守部品以外であって前記動力伝達機構以外の移動手段により作動される保守部品として設けられた前記液体噴射ヘッドのノズル形成面を払拭するためのキャップと、前記キャップに負圧を与える吸引ポンプとを備え、前記カム体は有限範囲を往復移動するように構成されており、前記吸引ポンプは前記動力伝達機構に入力される動力によって駆動されるように構成され、前記動力伝達機構において前記吸引ポンプへの動力は、前記クラッチ手段のクラッチ面より動力伝達方向上流側の位置で分配されるように構成されていることが好ましい。
【0036】
これによれば、回転駆動源からの所定方向の動力が動力伝達機構に入力されてカム体が有限範囲を一方向に運動して保守部品が変換手段により規定される所定位置に到達すると、カム体のそれ以上の運動が規制されてクラッチ手段の接続が切られる。このため、保守部品が所定位置に到達した後も回転駆動源の駆動を継続させて吸引ポンプを駆動し続けることができる。このため、カム体の有限範囲に規定されず、吸引ポンプを必要な時間又は必要な回転量だけ駆動させることができる。よって、ノズル形成面のノズル開口から液体を吸引する液体排出動作を適切に行って、液体噴射ヘッドを効果的に回復させることができる。
【0037】
本発明のメンテナンス装置では、前記クラッチ手段は、歯車と、該歯車と同軸上に相対回転可能に組付けられた回動体と、前記歯車および前記回動体を一体回転させうる結合摩擦力を両者の接触面に与えることで構成される摩擦クラッチとを有する摩擦クラッチ手段であることが好ましい。
【0038】
これによれば、摩擦クラッチ手段は、伝達された動力により歯車が回転する状態下において、ストッパによる係止が解除されていて回動体にかかる負荷が結合摩擦力以下のうちは当該回転体と歯車とが一体に回転し、保守部品に動力が伝達される。また、ストッパによる係止がなされていて回動体に結合摩擦力を超える負荷がかかると、摩擦クラッチに滑りが発生して歯車と回動体とが相対回転して歯車だけが空回りするため、保守部品に動力が伝達されなくなる。このように回動体にかかる負荷の大きさに応じてクラッチ面を接離できるこの摩擦クラッチ手段は構成部品が少なく構造が簡単なので、動力伝達機構の構成を簡単にすることができる。なお、カム体が有限範囲を往復回動する構成の場合は、カム体が有限範囲を一方向に回動して終点に達するとそれ以上の回動が規制されて、回動体に結合摩擦力を超える負荷がかかることになって摩擦クラッチ手段の接続が切れるので、その後、回転駆動源が駆動され続けても、カム体に過大な負荷がかかることが回避される。カム体が有限範囲を他方向に回動する場合も同様である。
【0039】
本発明のメンテナンス装置では、前記回動体は、前記摩擦クラッチ手段を構成する前記歯車が噛合している動力伝達方向上流側に位置する駆動歯車と噛合する歯部を有し、該歯部は、当該回動体が前記保守部品の移動ストロークの途中範囲に相当する回動範囲にあるときに前記駆動歯車と噛合可能な部位に形成されていることが好ましい。
【0040】
これによれば、回動体が保守部品の移動ストロークの途中範囲に相当する回動範囲にあるときは、当該回動体の歯部は、回転駆動源からの動力が動力伝達機構に入力されて回転する駆動歯車と直接噛合する。よって、駆動歯車から回動体に直接動力が伝達されるので、保守部品を移動ストロークの途中範囲において確実に移動させることができる。駆動歯車が歯部の終端を超えて該歯部と噛合しなくなると、駆動歯車の回転力はクラッチ手段の歯車からクラッチ面を介して回動体に伝達されるようになる。このため、保守部品が移動ストローク(往復ストロークを含む)の終点に達すると回動体に結合摩擦力を超える負荷がかかって、クラッチ手段の接続が切れるので、歯車だけが空回りしてカム体は回転を停止する。保守部品が移動ストロークの終点に達した後も回転駆動源が駆動され続けたとしても、回動体を含めこれより動力伝達方向下流側の位置する構成部品(保守部品を含む)に過大な負荷がかかることを回避できる。
【0041】
本発明は、液体噴射ヘッドを有するキャリッジを備えた液体噴射装置であって、前記発明のメンテナンス装置のうち前記キャリッジの移動に連動する前記ストッパを有する前記メンテナンス装置を備えたことを特徴とする。これによれば、液体噴射装置においても、メンテナンス装置の作用効果が同様に得られる。
【0042】
本発明は、液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置であって、前記発明のメンテナンス装置のうち前記キャップの移動に連動する前記ストッパを有する前記メンテナンス装置を備えたことを特徴とする。これによれば、液体噴射装置においても、メンテナンス装置の作用効果が同様に得られる。
【0043】
また、本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドから噴射される液体が着弾される媒体を搬送する搬送駆動部と、前記搬送駆動部に搬送駆動のための動力を与える回転駆動源とを備え、前記回転駆動源が、前記メンテナンス装置に動力を与える回転駆動源を兼ねていることが好ましい。さらに、本発明の液体噴射装置においては、前記メンテナンス装置は有限範囲を往復運動する前記カム体を備えるものであり、前記回転駆動源は、前記搬送駆動部を前記媒体の液体噴射処理時の搬送動作のために駆動される第1の回転方向と、前記メンテナンス装置を駆動させるために駆動される第2の回転方向とが逆方向となるように設定されていることが好ましい。
【0044】
これによれば、回転駆動源が搬送駆動部とメンテナンス装置とに共有されるので、回転駆動源の配設数を少なく抑えられ、例えば液体噴射装置の小型化に寄与する。さらに、メンテナンス装置が有限範囲を往復運動するカム体を備え、回転駆動源が、搬送駆動部を駆動させるときの第1の回転方向と、メンテナンス装置を駆動させるときの第2の回転方向とが逆方向である構成の場合は、次の作用が得られる。すなわち、搬送駆動部を駆動させるために回転駆動源が第1の回転方向に駆動されるときには、カム体が有限範囲を、例えば他方向に運動し切った終点に位置して保守部品が退避位置にあるので、回転駆動源がその第1の回転方向に駆動され続けても、保守部品は作動位置に移動することがない。また、搬送駆動部が駆動されるときは、キャリッジが液体噴射処理(例えばインクジェット印刷)を行うためにクリーニング位置から離れている、又はキャップが退避位置にあるので、ストッパがクラッチ面より動力伝達方向下流側に位置する可動体に係止している。このため、クリーニング以外の時期に、例えば媒体を逆送させることを目的として搬送駆動部を逆転駆動させるべく回転駆動源が第2の回転方向に駆動されたとしても、ストッパの係止によって保守部品が移動不能にロックされているので、保守部品が作動位置へ移動することがない。このときの逆送量は、従来装置が有していた伝達遅延手段の遅延回転量以下相当の値に限定されることもない。
【0045】
さらに吸引ポンプを備える構成においては、吸引ポンプは、回転駆動源が第1の回転方向に駆動されたときにレリース状態となり、第2の回転方向に駆動されたときにポンプ駆動されて負圧を発生する。このため、搬送駆動部が駆動されるときにはレリース状態となり、例えば媒体の排出中にキャリッジがクリーニング位置と同じ位置のホームポジションに移動してキャップが封止位置に配置されても、ノズル開口から液体排出が行われることがない。なお、キャリッジがクリーニング位置に配置された状態で行われる吸引ポンプのポンプ駆動中に、搬送駆動部の逆送方向の駆動を防ぐ要請がある場合は、キャリッジがクリーニング位置にあるときに、回転駆動源から搬送駆動部へ至る動力伝達経路を遮断するクラッチを設けることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図14に従って説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の基本構成を示す斜視図である。図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(以下、記録装置10と称す)は、基体11(本体フレーム)を有し、この基体11に対してキャリッジ12が往復移動自在に設けられている。基体11の内側には同図における左右側壁に両端が固定されたガイド軸13が架設されており、キャリッジ12はその挿通孔12aにガイド軸13が挿通されるとともにタイミングベルト14の一部と固着されている。このため、キャリッジモータ16が駆動すると、タイミングベルト14が駆動され、このタイミングベルト14の駆動によって、キャリッジ12は主走査方向(同図のX方向)に往復移動する。
【0047】
キャリッジ12の下部には、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド18と称す)が搭載されており、この記録ヘッド18の下面は、液体としてのインクを噴射するために形成された複数列のノズル孔が開口するノズル形成面18a(図2、図9参照)となっている。基体11内の記録ヘッド18と対向する位置には、記録ヘッド18のノズル形成面18aと記録用紙17との間隔を規定するプラテン15が設けられている。また、キャリッジ12の上部には、記録ヘッド18にインクを供給するブラックのインクカートリッジ19、および例えばイエロー、シアン、マゼンダの3色のインクが個別に収容されたカラー用のインクカートリッジ20が着脱可能に装填されている。これら各インクカートリッジ19,20より記録ヘッド18に対してインクが供給される。インクカートリッジ19,20からインクが供給される記録ヘッド18は、ノズル形成面18aの各ノズル孔からインクを噴射(吐出)可能となっている。
【0048】
記録装置10の背面側には、多数の記録用紙17を積重できる給紙トレイ21(図2参照)と、給紙トレイ21に積重された多数の記録用紙17のうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Yの下流側に給紙する給紙装置22とが設けられている。また、基体11には記録用紙17を搬送するための各種ローラ23〜26(図2参照)が回転自在に設けられており、各種ローラ23〜26のうち搬送駆動用のローラ23,25が回転駆動されることにより記録用紙17が副走査方向(図1のY方向)に搬送される。そして、キャリッジ12を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド18のノズル形成面18aから記録用紙17にインクを吐出する動作と、記録用紙17を副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返すことで記録用紙17に記録(印刷)が行われる。
【0049】
図1においてキャリッジ12は、いわゆるホームポジション(クリーニング位置)に停止した状態である。ホームポジションは、記録実行時の主走査範囲(印刷領域)外の停止位置であり、記録実行待機状態時のキャリッジ12の待機位置となる。同時にホームポジションは、記録実行制御の開始基準位置(原点位置)でもあり、記録ヘッド18のクリーニング等のメンテナンスもキャリッジ12がホームポジションに停止した状態で行われる。
【0050】
このため、ホームポジションには、メンテナンスユニット50(メンテナンス装置)が配設されている。メンテナンスユニット50は、記録ヘッド18のノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する略四角形状のキャップ100と、ノズル形成面18aを払拭するためのワイパ40と、キャップ100に負圧を導入するための吸引ポンプ29と、キャリッジ12をクリーニング位置に位置規制するキャリッジロックレバー(以下、ロックレバー45と称す)(ロック部材)とを備えている。キャリッジ12がホームポジションに移動して記録ヘッド18が直上に位置した時にキャップ100が上昇してノズル形成面18aを封止できるようになっている。この封止に際してロックレバー45が起立状態(ロック位置)に配置されてキャリッジ12の下部に係合することで、キャリッジ12がクリーニング位置に位置規制された状態の下でキャップ100はノズル形成面18aに当接する。
【0051】
キャップ100は、上記のノズル開口の乾燥を防ぐ目的の蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド18のノズル形成面18aをキャップしてその封止された空間に吸引ポンプ29からの負圧を与えて記録ヘッド18よりインクを吸引排出させる液体吸引手段の一部としての機能も備えている。液体吸引動作(インク吸引動作)時に吸引されたインク等の廃液はキャップ100から吸引ポンプ29を経由して延びるチューブ30(図2に示す)を通じて、プラテン15の下方に配置された廃液タンク31に排出されるようになっている。
【0052】
また、ワイパ40はキャップ100の印刷領域側の隣接位置に上下動可能に設けられている。ワイパ40は液体吸引動作時に上昇するように構成され、液体吸引動作終了後にキャリッジ12がホームポジションから印刷領域側へ移動する過程で、上昇位置(払拭位置)に待機するワイパ40にノズル形成面18aを摺接させることにより、ノズル形成面18aのワイピングが行われる。本実施形態のメンテナンスユニット50は、記録用紙17の給紙・搬送(紙送り)・排紙に用いられる各搬送駆動用のローラ23,25,32(図2参照)を駆動する回転駆動源としての電動モータ27(紙送りモータ)(図2参照)からの動力により駆動されるように構成されている。なお、本実施形態のメンテナンスユニット50は、保守部品として、ロックレバー45、ワイパ40、キャップ100の三部品を備え、このうちロックレバー45(第1保守部品)とワイパ40(第2保守部品)が回転駆動源としての電動モータ27の動力により作動される。
【0053】
図2は、記録装置の電気的構成を示している。図2において、すでに説明したキャリッジ12、キャリッジモータ16、電動モータ27(紙送りモータ)、吸引ポンプ29、廃液タンク31、ワイパ40、ロックレバー45、およびキャップ100については同一符号で示している。また、以下の説明において、給紙系、搬送系、排紙系の駆動装置の構成について一部補足する。なお、同図では、キャリッジ駆動系と用紙搬送系(給紙・搬送・排紙系)の各構成については、説明の便宜上、90°異なる方向から見た模式図として描かれている。
【0054】
給紙装置22は、給紙トレイ21の副走査方向Yの下流側に給紙ローラ32を有している。給紙トレイ21に積重された多数の記録用紙17は、給紙トレイ21に設けられたホッパー(図示省略)によって側面視略D型のフリクションローラからなる給紙ローラ32に押しつけられ、給紙ローラ32の給紙方向への駆動回転とその摩擦抵抗によって、最上位の1枚の記録用紙17のみが分離されて給紙される。給紙ローラ32は電動モータ27により回転駆動される。なお、電動モータ27と給紙ローラ32との間には、キャリッジ12がクリーニング位置に来ると接続が切れる機械作動式のクラッチ(図示せず)が設けられ、メンテナンスユニット50の動作時に電動モータ27からの動力が給紙ローラ32に伝達されないようになっている。
【0055】
また、記録装置10には、給紙された記録用紙17を副走査方向Yに間欠的に搬送する搬送駆動用と搬送従動用の各ローラ23,24が配設されている。搬送駆動用のローラ23は、電動モータ27により回転駆動される。このローラ23の回転により、記録用紙17は副走査方向Yに搬送される。搬送従動用のローラ24は複数設けられており、それぞれ個々に搬送駆動用のローラ23に付勢され、記録用紙17が搬送駆動用のローラ23の回転により搬送される際に、その付勢力によって記録用紙17に接した状態で記録用紙17の搬送に従動して回転する。
【0056】
さらに、記録装置10には、記録実行後の記録用紙17を排出する排紙駆動用と排紙従動用の各ローラ25,26が配設されている。排紙駆動用のローラ25は、電動モータ27により回転駆動される。このローラ25の回転により、記録実行後の記録用紙17は副走査方向Yに排出される。排紙従動用のローラ26は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録用紙17の記録面に点接触するように鋭角的に尖っている歯付きローラとなっている。排紙従動用のローラ26は、それぞれ個々に排紙駆動用のローラ25に、前述の搬送従動用のローラ24の付勢力よりも弱い付勢力で付勢され、記録用紙17が排紙駆動用のローラ25の回転により排出される際に、その付勢力によって記録用紙17に接した状態で記録用紙17の排出に従動して回転する。そして、記録実行後の記録用紙17は、排紙駆動用のローラ25および排紙従動用のローラ26により副走査方向Yの下流側に排出される。排紙駆動用のローラ25および排紙従動用のローラ26の下流側には、記録実行済みの記録用紙17が排出される排紙トレイ(図示せず)が配設されている。
【0057】
また、電動モータ27の動力は、メンテナンスユニット50を構成する動力伝達機構60に入力され、吸引ポンプ29、ワイパ40およびロックレバー45を作動させる動力として用いられる。このように記録装置10では、給紙系・搬送系・排紙系の各駆動装置である給紙装置22、搬送装置、排紙装置、クリーニング(保守)系の駆動装置であるワイピング装置、キャリッジロック装置、吸引ポンプ29は、1つの電動モータ27を共通の駆動源としている。なお、電動モータ27は、記録用紙17を副走査方向Yに搬送するときの駆動回転方向(正転駆動方向)と、メンテナンスユニット50を作動させるときの駆動回転方向(逆転駆動方向)とが逆向きとなるように設定されている。
【0058】
制御部33には、入力系として、例えば操作パネル(図示せず)に配置されたクリーニングスイッチ28と、給紙された記録用紙17の先端を検知する用紙検出用のセンサSと、キャリッジ12の移動位置に応じた検出信号(パルス信号)を出力するエンコーダ36とが接続されている。また、制御部33には、出力系として、ヘッド駆動回路34、モータ駆動回路35,38が接続されており、制御部33は、これら駆動回路に駆動信号を送出することにより、記録ヘッド18、キャリッジモータ16および電動モータ(紙送りモータ)27を個別に駆動制御する。
【0059】
制御部33はホストコンピュータ(図示せず)からの印刷データに基づいてビットマップデータを生成し、このデータに基づいて駆動信号を発生させてヘッド駆動回路34に駆動信号を送出し、記録ヘッド18からインク滴を吐出させる機能を備えている。記録ヘッド18はノズル毎に圧電素子(ピエゾ素子)(図示省略)を有し、駆動信号に基づいてヘッド駆動回路34から出力された駆動電圧(パルス電圧)が圧電素子に印加されるとその電歪作用により圧電素子が伸縮し、この伸縮によりノズルに連通した隔室(インク室)が膨張・圧縮されることにより、ノズル孔からインク滴が噴射(吐出)される。
【0060】
エンコーダ36は、キャリッジ12の移動位置を例えば光学的に検知する機能を有している。このために、キャリッジ12の軌道に沿って多数の光学的なスリットが配置されたスリットテープ37が張設されている。そして、このスリットテープ37を有するエンコーダ36(リニアエンコーダ)は、キャリッジ12の走査にしたがって、前記各スリットを通過する光の断続数に応じた数のパルスをもつ検出信号(パルス信号)を出力する。制御部33は、エンコーダ36からの検出信号に含まれる位相の異なる2種類(A相、B相)のパルス信号に基づきキャリッジ12の移動方向を認識する。そして、制御部33は内部に備える図示しないカウンタに、前記光の断続数に応じたパルス数を、例えばキャリッジ往動時にインクリメント、キャリッジ復動時にデクリメントする方法で計数することにより、その得られた計数値に基づきキャリッジ12の原点位置(例えばホームポジション)からの移動位置を検出している。
【0061】
制御部33は、キャリッジ12の移動位置に応じた駆動信号をモータ駆動回路38に送出してキャリッジモータ16を駆動制御することで、キャリッジ12の速度制御や走行方向の切換え制御などを行う。また、制御部33は、エンコーダ36からの検出信号(パルス信号)を用いて、記録ヘッド18から吐出されるインク滴の吐出時期を規定する吐出タイミング信号を生成し、この信号をヘッド駆動回路34に制御信号の1つとして送出することにより、記録ヘッド18からインク滴が吐出される吐出タイミングを制御している。
【0062】
また、制御部33は、設定時間を計時するタイマ39を内部に備えている。このタイマ39は、予めクリーニングの種別(フラッシング、吸引動作等)毎に設定された設定時間をそれぞれ計時する機能を備え、リセット時から設定時間を経過したときにその旨を制御部33に通知する。設定時間の1つとして、例えば印刷実行中にフラッシングを実行する時間間隔(例えば10秒)があり、制御部33は、印刷実行中にその設定時間が経過した旨の通知をタイマ39から受けると、キャリッジ12を印刷領域外のフラッシング位置に移動させてフラッシングを実行させる。また、設定時間の他の1つとして、インク吸引動作を実行する時間間隔(例えば数時間〜数日)がある。制御部33は、前回の吸引動作からの計時時間がこの設定時間を超えると、その超えた時またはその後最初の電源投入時に、インク吸引動作を実行させる。また、クリーニングスイッチ28のオン操作によるオン信号を入力したときにも、制御部33はインク吸引動作を実行させるようになっている。
【0063】
制御部33は、インク吸引動作を実行させる際(つまりメンテナンスユニット50を作動させるとき)は、モータ駆動回路35に逆転信号を送出し、電動モータ27を逆転駆動させる。電動モータ27が逆転駆動されたときの動力は動力伝達機構60を介して吸引ポンプ29に伝達され、吸引ポンプ29が所定方向に回転することでポンプ駆動され、キャップ100の内部空間(キャップ100とノズル形成面18aとによって囲まれた空間)に負圧が与えられ、記録ヘッド18のノズル開口よりインクが吸引排出される。また、吸引排出(吸引動作)後にキャップ100がノズル形成面18aから離間した状態で、再び吸引ポンプ29を駆動することにより、キャップ100に排出されたインク廃液を廃液タンク31に廃棄させるようにしている。この電動モータ27の逆転駆動時の動力は動力伝達機構60を介してワイパ40にも伝達され、インク吸引動作に前後してワイパ40が退避位置から払拭位置に上昇するように構成されている。なお、これら吸引ポンプ29およびワイパ40を備えたメンテナンスユニット50の詳しい構成については後述する。
【0064】
制御部33は、電動モータ27の所定回転量の逆転駆動が終わってインク吸引動作が終了すると、モータ駆動回路38に駆動信号を送出してキャリッジ12をホームポジションから印刷領域側へ移動させる制御を行う。このキャリッジ12の移動過程で、ノズル形成面18aが、払拭位置に待機するワイパ40に摺接することでノズル形成面18aのワイピング(払拭)が行われる。
【0065】
また、制御部33は、給紙・搬送・排紙動作を行うときには、モータ駆動回路35に正転信号を送出して電動モータ27を正転駆動させる。但し、本実施形態の記録装置10では、記録用紙17を反副走査方向(−Y)へ逆送させる搬送制御(逆送制御)が行われる場合がある。制御部33は、この種の逆送制御を行うときにはモータ駆動回路35に逆転信号を送出し、電動モータ27を逆転駆動させる。このように記録用紙17を逆送させる例としては、記録用紙17の頭出し処理が挙げられる。この頭出し処理では、給紙された記録用紙17の前端をセンサSが検知すると、そこから所定量の紙送りをして記録用紙17を頭出し位置よりも下流側位置まで一旦余分に順送させた後、所定量の逆送を行うことで、記録用紙17の頭出しを行う。この頭出し処理時の逆送(バックフィード)は、記録用紙17のスキュー取りのために行われ、併せてしわ取りの機能ももつ。
【0066】
<メンテナンスユニットの構成>
次に、上述の記録装置10に適用されるメンテナンスユニット50の構成について、図3〜図7に基づいて説明する。図3〜図7はメンテナンスユニットを示し、図3は分解斜視図、図4は要部平面図、図5は上面側から見た斜視図、図6は裏面側から見た斜視図、図7は背面図である。なお、以下の説明では、キャリッジ移動方向(X方向)を前後方向とし、キャリッジ12がホームポジションに近づく方向(図4における上方)を前方とする。また、副走査方向(Y方向)を左右方向とする。
【0067】
本実施形態のメンテナンスユニット50の特徴の一つは、逆送(バックフィード)時のように保守動作以外の目的で電動モータ27が逆転駆動されても、動力伝達機構60の一部に係止し、ワイパ40およびロックレバー45への動力伝達をその動力伝達経路上の途中で阻止する係止手段(後述のストッパ86)が設けられている点にある。この係止手段はキャリッジ12がクリーニング位置に配置される保守時期においては、その係止が解除されるように構成されている。本実施形態では、キャップ100の昇降機構として、クリーニング位置到達前の所定範囲でキャリッジ12と係合することで、キャップを搭載したスライダが上下方向成分を含む斜め方向にスライドしてキャップ100を昇降させる後述するスライダ駆動方式を採用する。このため、係止手段はキャップ100の昇降にも連動するものとなっている。
【0068】
図3〜図7に示すように、メンテナンスユニット50は、その基材となるハウジングフレーム(以下、フレーム51という)を有しており、このフレーム51が基体11にネジを用いて取付固定されることにより、基体11の内側一端のホームポジションに相当の位置に配置されている。
【0069】
このフレーム51は、上下が開口する箱状のガイドフレーム部52と、該ガイドフレーム部52の後端に形成されたガイド部53と、ガイド部53の後側および奥側(図3における左側)に隣接するギヤハウジング部54と、ギヤハウジング部54の奥側に連接されたポンプケーシング部55とを有している。箱状のガイドフレーム部52は、スライダ80が前後方向および上下方向成分を含む斜め方向の案内経路に沿ってスライドできるように案内された状態で収容される部分である。また、ガイド部53は、ワイパ40を昇降自在となるように上下方向に案内する部分である。ギヤハウジング部54の後側を覆う状態に支持プレート(図示省略)がビスで取り付けられることにより、動力伝達機構60が収容されるギヤ室が構成される。ポンプケーシング部55は有底円筒状をなし、その後端側の開口を覆う状態にカバー56が組付けられることにより、吸引ポンプ29のケーシングとして機能する。
【0070】
まずメンテナンスユニット50の概略構成を説明する。このフレーム51には、ワイパ40がガイド部53に案内された状態で上下動可能に支持されている。ワイパ40は、ワイパホルダ41とこれに支持されたワイピング部材42(ワイパブレード)とからなる。ワイパホルダ41の背面中央部には、ガイドピン43が突設されている。ガイドピン43は、ワイパ40がガイド部53に組付けられた状態で、動力伝達機構60の一構成部品である可動体、回動体およびカム体としての円筒カム67と係合し、円筒カム67の正転・逆転により上下方向に案内されるカムフォロアとして機能する。このように円筒カム67の往復回動によりガイドピン43が上下動することによって、ワイパ40は昇降する。なお、円筒カム67については動力伝達機構60の具体的な構成を説明する際に詳述する。
【0071】
また、キャップ100を搭載するスライダ80は、前後方向(図4の上下方向)にスライドできるようにガイドフレーム部52に支持されるようになっている。その支持された状態では、スライダ80が後側(同図の下側)から前側(同図の上側)に向かってスライドするに連れて上昇し、その反対に前側から後側に向かってスライドするときに下降する斜めの経路で案内されるようになっている。スライダ80の前端(同図の右端)からは一対の突出部材98が上方に突出し、ホームポジションに移動してきたキャリッジ12が、図9に示すように、この突出部材98に衝突することでキャリッジ12に押されてスライダ80は上昇するようになっている。なお、図9において、キャリッジ12には、フレキシブルケーブル113の一端が接続されており、記録ヘッド18への駆動信号および駆動電力の供給や、インクカートリッジ19,20が有するICのメモリに対する履歴情報等の書替えおよび読取りは、このフレキシブルケーブル113を介して行われる。
【0072】
また、スライダ80は図6に示すコイルバネ115(引張りバネ)により後方および下方に付勢されており、キャリッジ12がホームポジションから印刷領域側へ移動すると、そのコイルバネ115の付勢力によりスライダ80は後方へスライドしながら下降する。このスライダ80の後端下部からは半円筒状の延出部80aが下方へ延出しており、この延出部80aの後端面には係止手段としてのストッパ86が垂直(後方)に突出している。このストッパ86は、スライダ80が下降していてキャップ100が下降位置(退避位置)にある状態において、動力伝達機構60の一部品である前記円筒カム67に係止してこれを作動不能とし、キャップ100の下降状態でのワイパ40およびロックレバー45の上昇動作を阻止するものである。このワイパ40およびロックレバー45の上昇を阻止するストッパ86を含む係止機構については後述する。
【0073】
以下、メンテナンスユニット50の各構成部分を詳細に説明する。
まず、電動モータ27から入力された動力を、吸引ポンプ29およびワイパ40に伝達する動力伝達機構60について説明する。
【0074】
<動力伝達機構>
ギヤハウジング部54の端面に図示しない支持プレートをビスにより固定することにより、その間にできる前述のギヤ室に動力伝達機構60は収容される。動力伝達機構60は、複数の歯車から構成された歯車機構であり、入力用の歯車61、入力用の歯車61と一の箇所で噛合する2段歯車62、入力用の歯車61と他の箇所で噛合する歯車64、該歯車64と噛合する摩擦クラッチギヤ機構65とを備えている。2段歯車62、歯車64、摩擦クラッチギヤ機構65は、ギヤハウジング部54の内壁面から垂直に突出する軸部54a,54b,54cにそれぞれ回転自在に支持されている。
【0075】
入力用の歯車61は、動力伝達機構60の構成部品のうち、電動モータ27からの動力が最初に伝達されて入力される歯車である。具体的には、歯車61は、電動モータ27の出力軸の先端に固着されたピニオンギヤ、または該ピニオンギヤと作動連結された歯車により構成される。
【0076】
2段歯車62は、歯ピッチの小さい第1歯車部62aと歯ピッチの大きい第2歯車部(図示せず)とを有している。入力用の歯車61は第1歯車部62aと噛合しており、第2歯車部62bは、吸引ポンプ29の駆動軸に作動連結されたポンプ歯車63と噛合している。ポンプ歯車63の歯数は第2歯車部の歯数の数倍(例えば2〜3倍)あり、歯車61の回転は2段歯車62を介してポンプ歯車63に減速されて伝達される。
【0077】
この入力用の歯車61は、2段歯車62の他、他の箇所で歯車64とも噛合しており、動力伝達経路は、2段歯車62を経由して吸引ポンプ29へ至る一の動力伝達経路と、歯車64を経由してワイパ40へ至る他の動力伝達経路との二系統に分かれる。
【0078】
歯車64の隣接位置には、軸部54cに回転自在に支持される摩擦クラッチギヤ機構65が配置されている(図5、図7参照)。図3に示すように、摩擦クラッチギヤ機構65は、円筒歯車66と、円筒カム67と、コイルバネ69(圧縮バネ)とを有している。コイルバネ69が円筒歯車66の一端面と支持プレートとの間に圧縮状態に組み付けられることで、円筒歯車66が円筒カム67に軸線方向に接近する向きに付勢されて互いの接触面(クラッチ面)が所定の力で圧接された状態に円筒歯車66と円筒カム67は組み付けられ、摩擦係合状態に保持されている。歯車64は円筒歯車66と噛合しており、歯車64から伝達された動力により円筒歯車66が回転すると、これと摩擦係合された円筒カム67が一体回転するようになっている。また、円筒カム67は、ワイパ40のガイドピン43と係合する円弧状のカム溝70(図8に示す)を有し、円筒カム67の回動運動は、カムであるカム溝70とカムフォロアであるガイドピン43との係合により、ワイパ40の上下方向の移動運動に変換されるようになっている。
【0079】
<吸引ポンプ>
次に、吸引ポンプ29の動作および構成について説明する。なお、電動モータ27が逆転駆動されたときに動力伝達機構60を構成する各歯車が回転する方向を正転方向とする。
【0080】
電動モータ27が逆転駆動されて歯車61が図7における矢印方向に正転すると、ポンプ歯車63が矢印方向に正転し、吸引ポンプ29がポンプ作用をなすように回転駆動される。一方、電動モータ27が正転駆動されると、吸引ポンプ29はポンプ歯車63が反矢印方向に逆転してレリース状態となる。
【0081】
吸引ポンプ29は、詳しくはチューブポンプであって、内部にチューブ30を環状に引き回した状態で収容している(なお、図6では吸引ポンプ29に導入される直前箇所でチューブ30を破断した状態で描かれている)。吸引ポンプ29の駆動軸(回転軸)には、ポンプ歯車63の回転開始時期に対して駆動軸の回転開始時期を遅延させる遅延部材(図示せず)が回転可能に軸支されている。この遅延部材は、ポンプ歯車63と駆動軸との間に介在し、このポンプ歯車63の回転を所定のタイミングだけ遅らせて吸引ポンプ29の駆動軸に伝達する。すなわち、ポンプ歯車63が所定角度(例えば100°以上360°未満の範囲内の一定値)回転した後、吸引ポンプ29の駆動軸が回転して吸引ポンプ29が駆動開始するようになっている。
【0082】
吸引ポンプ29は、その内部に駆動軸と一体に回転する回転体と、該回転体の外周部に回転自在に設けられたローラと、回転体の外周に一重以上巻回されるとともに両側が外側へ引き出された前記チューブ30とを備えている。ローラは、回転体に対して半径方向外側に図示しないバネにより付勢されており、回転体が正転するときにその半径方向外側へ変位し、回転体が逆転するときにバネの付勢力に抗して半径方向内側へ変位するように、ガイド孔に案内された状態で回転体に設けられている。
【0083】
電動モータ27が逆転駆動されてポンプ歯車63が正転すると、吸引ポンプ29の内部に収容されたチューブ30がローラにより順次潰されて、チューブ30内の空気やインク等が押し出されることにより、吸引ポンプ29より上流側のチューブ30内に負圧が発生する。また、吸引ポンプ29は、電動モータ27が正転駆動されてポンプ歯車63が逆転すると、ローラが回転体の半径方向内側へ退避してチューブ30を押し潰さないレリース状態となり、負圧を発生しない。
【0084】
<キャリッジロック装置>
次に、ロックレバー45を作動させるキャリッジロック装置の構成を説明する。キャリッジロック装置は、電動モータ27、動力伝達機構60のうちロックレバー45への動力伝達経路となる部分(摩擦クラッチギヤ機構65を含む部分)、およびロックレバー45などから構成される。
【0085】
図5、図7に示すように、ギヤハウジング部54には、摩擦クラッチギヤ機構65の隣接位置に直方体状のロックレバー45が回動自在な状態に取り付けられている。ロックレバー45は、キャリッジ12をホームポジション位置にロック(位置規制)させるためのものである。ロックレバー45の基端部には、一対の軸部46(同図では一方のみ図示)が前後方向(図7では紙面に直交する方向)両側から軸線を一致させた状態で突設されている。ロックレバー45は、一対の軸部46がギヤハウジング部54の内壁面上に設けられた挿通孔と支持プレート側の挿通孔(いずれも図示せず)にそれぞれ軸支され、軸部46を中心として回動可能に支持されている。
【0086】
図7および図11に示すように、ロックレバー45の前面先端部はキャリッジ12と係合可能な規制面45aとなっている。また、ロックレバー45のこの規制面45aと軸部46を挟んで反対側となる部分には、規制面45a側とは反対側となる方向へ突出する突起47と、突起47と隣接する位置から軸線に対して交差する斜め側方へ延出するバネ受け部48とが突設されている。突起47は、前記摩擦クラッチギヤ機構65を構成する円筒カム67の凸部75(カム)と係合する部分でカムフォロアとして機能する。なお、突起47において凸部75と係合する先端部外周面(係合面)は円弧面状に形成されている。
【0087】
バネ受け部48と、ギヤハウジング部54の側壁54dの内面下部に突設されたバネ受け部54e(図7参照)との間には、コイルバネ49(引張りバネ)が掛け渡されている。これによりロックレバー45は、ギヤハウジング部54の側壁54dと上壁54fとの間の開口(隙間)から頭部を突出させた状態で、コイルバネ49の引張り力により図7において時計方向に付勢された状態にある。このため、ロックレバー45は、突起47が凸部75と非係合のときにギヤハウジング部54の側壁54dの上端部54g(図7参照)に当接して位置規制されて、図7に示すように姿勢を斜めに傾倒させた退避位置(アンロック位置)に配置される。また、円筒カム67の凸部75と突起47が係合したときには、ロックレバー45はコイルバネ49の付勢力に抗して反時計方向に回動して直立姿勢となるロック位置に配置されるようになっている。なお、凸部75(カム部)と突起47(カムフォロア)とにより、円筒カム67の回動運動をロックレバー45の退避位置とロック位置との間における一往復の揺動運動に変換する第1変換手段が構成されている。
【0088】
図9に示すように、キャリッジ12の下部には記録ヘッド18より後側(同図では左側)の位置から規制板12cが下方へ延出している。この規制板12cはキャリッジ12が同図のホームポジションに位置したときに、ロック位置に配置されたロックレバー45の規制面45aと僅かな隙間を隔てて相対する位置に配置され、ロックレバー45がロック位置に配置された状態では、キャリッジ12はホームポジションに位置規制されるように構成されている。
【0089】
<ワイピング装置>
次に、ワイパ40を作動させるワイピング装置の構成を説明する。ワイピング装置は、電動モータ27、動力伝達機構60のうちワイパ40への動力伝達経路となる部分、およびワイパ40などから構成される。
【0090】
図3に示すように、ワイパ40は、板状のワイピング部材42を、直方板状のワイパホルダ(ワイパ支持部材)41の上面から所定量突出させた状態に取着することで構成されている。ガイド部53は、左右方向(前後方向および上下方向と直交する方向)に所定の間隔を隔てて対峙する一対のガイド溝53aを有し、各ガイド溝53aの溝方向は上下方向に延びている。ワイパホルダ41の幅方向(左右方向)両端部は、ガイド溝53aに緩く嵌挿される被案内部となっており、ワイパ40は、ガイド部53の上面開口から挿入したワイパホルダ41の被案内部がガイド溝53aに緩く嵌挿されることにより、上下方向に移動可能に取り付けられる。ワイパホルダ41の上端部は、ガイド部53に挿着される部分より幅広に突出した規制部41aとなっており、ガイド部53に挿着された状態において、ワイパホルダ41の規制部41aが、ガイド部53の上面に当たることにより、ワイパ40の最下降位置が規定されている。また、ワイパホルダ41には、ストッパ86と相対する部位に凹部41bが形成されており、キャップ100が退避位置に下降して係止位置に配置されたストッパ86は、この凹部41bを貫通して円筒カム67の係止穴71に挿入されるようになっている。なお、フレーム51にもストッパ86と相対する部位に、ストッパ86が係止位置に配置される過程で貫通可能な挿通孔53b(図3参照)が形成されている。
【0091】
また、ワイパホルダ41の背面(動力伝達機構60と対面する側の面)中央部に、垂直に突設されている円柱状のガイドピン43は、前述のように、円筒カム67のカム溝70(図8、図9、図11(a)参照)に係入される部分である。円筒カム67の往復回動によりガイドピン43がカム溝70に沿って案内されて上下方向に変位することにより、ワイパ40は昇降する。なお、ワイピング装置は、ワイパ40、ガイド部53、動力伝達機構60のうちワイパ40への動力伝達経路となる部分(入力用の歯車61、歯車64、摩擦クラッチギヤ機構65)、電動モータ27により構成される。また、カム溝70(カム部)とガイドピン43(カムフォロア)とにより、カム体としての円筒カム67の回動運動をワイパ40の昇降運動に変換する第2変換手段が構成される。
【0092】
ここで、ワイパ40とスライダ80とキャップ100は各々の左右方向幅中心線が左右方向で略一致するように配置されている。また、摩擦クラッチギヤ機構65の円筒カム67は、最下降位置に配置されたスライダ80と前後方向(キャリッジ移動方向)に相対する位置に配置されている。このため、ワイパ40と円筒カム67は、ワイパ40の左右方向幅中心線と円筒カム67の軸線とが左右方向で略一致するように前後に相対している。そして、ワイパ40の背面中央部から突設させたガイドピン43を、円筒カム67の軸線より上側の部分でカム溝70と係合させるようにしている。スライダ80と円筒カム67の間にはワイパ40およびガイド部53の一部(ギヤ室との隔壁となる部分でギヤハウジング部54の一部も兼ねる部分)が配置されている。このため、スライダ80の幅方向中心線付近の位置から後方へ突設したストッパ86を円筒カム67に係止させるための移動経路を確保するために、ワイパホルダ41の下端中央部に凹部41bを形成し、ガイド部53の隔壁部分には軸部54cの下側に挿通孔53b(図3参照)を形成している。そして、本実施形態では、円筒カム67が第1回動位置(ワイパ下降時の回動角位置)にある状態においてその下端部となる箇所に係止穴71を形成し、ストッパ86がワイパ40の凹部41bを貫通する経路で係止穴71に差し込まれるように構成している。
【0093】
このようにカム溝70、係止穴71および凸部75を、一つの円筒カム67上にレイアウトすることにより、ストッパ86が係止される被係止用部品と、ワイパ用のカム体と、ロックレバー用のカム体と、摩擦クラッチギヤ機構65の一構成部品という4つの機能部品を、円筒カム67という一部品が兼ねた構成を実現させている。
【0094】
図8は摩擦クラッチギヤ機構の斜視図である。また、図11〜図13は摩擦クラッチギヤ機構の動作を説明する背面図である。なお、図11〜図13における(a)はガイドピンおよび突起47と係合している円筒カム67の回動運動に基づくワイパの昇降動作およびロックレバーの揺動動作を説明する正面図、(b)は同図(a)におけるA−A線断面で表した円筒カムとストッパとの位置関係を示す模式図である。
【0095】
図8に示すように、歯車64(駆動歯車)は、摩擦クラッチギヤ機構65を構成する円筒歯車66と噛合している。摩擦クラッチギヤ機構65は、円筒歯車66と円筒カム67が互いの相対する端面を接触させた同軸状態で相対回転可能に組付けられており、コイルバネ69(図3参照)の付勢力により円筒歯車66と円筒カム67の接触面(クラッチ面)で摩擦係合されている。円筒歯車66と円筒カム67との接触面(クラッチ面)と、この接触面を摩擦係合させるのに必要な所定の力で付勢しているコイルバネ69とにより、クラッチ面で接離される摩擦クラッチ68が構成されている。円筒歯車66が回転するとき、クラッチ面より動力伝達方向下流側に位置する円筒カム67にかかる負荷が所定値(所定荷重値)以下のうちは、その接触面の接触摩擦力(係合摩擦力)による摩擦係合により円筒カム67は一体回転する。一方、円筒カム67にかかる負荷が所定値を超えると、摩擦クラッチ68のクラッチ面に滑りが発生し、円筒歯車66が空回りすることで円筒カム67の回転が規制されるようになっている。なお、所定値は、クラッチ面で摩擦係合可能な接触摩擦力から決まり、クラッチ面での接触状態等により多少変動する値である。
【0096】
図11(a)に示すように、円筒カム67は、その外周面の一部が台形状に突設された前記凸部75は、その外周面両端部分が円筒カム67の軸心からの半径方向の距離が徐々に変化する斜面となっており、その外周面先端部分は円弧面となっている。円筒カム67が一方向に回動する過程において、ロックレバー45は、この凸部75の始端側の斜面が突起47に係合しているときに上昇し、凸部75の円弧面が突起47に係合している過程でロック位置に保持され、さらに凸部75の終端側の斜面が突起47に係合しているときに下降するようになっている。
【0097】
また、円筒カム67のクラッチ面と反対側となる端面上には、前述のように、ワイパ40のガイドピン43が係入される、図8,図11(a)に示す略円弧状のカム溝70が形成されている。図11(a)に示すように、カム溝70は、同図において矢印で示された正転方向(同図時計回り方向)に沿って進むに連れて、円筒カム67の軸心からカム溝70までの半径方向の距離が徐々に長くなる所定経路に形成されている。カム溝70の一端から他端に至る過程で円筒カム67の軸心からカム溝70までの半径方向の距離がずれるずれ量は、ワイパ40の昇降ストローク長に一致している。このため、円筒カム67が図11(a)に示す状態から同図に矢印で示す方向に正転するに連れて、ガイドピン43がカム溝70に案内されて上方に移動し、図13(a)に示す状態となることにより、ワイパ40が退避位置から昇降ストローク長だけ上昇して払拭位置に配置される。また、ワイパ40がこの払拭位置にある状態から円筒カム67が図13(a)に示す矢印方向に逆転するに連れて、カム溝70に挿入されたガイドピン43がカム溝70に案内されて下方に移動し、図11(a)に示す状態となることにより、ワイパ40が払拭位置から昇降ストローク長だけ下降して退避位置に配置されるようになっている。
【0098】
また、円筒カム67には、軸心を挟んでカム溝70と反対側となる位置に係止穴71(係止凹部)が形成されている。係止穴71は、キャップ100が下降状態にあってスライダ80が下降しているときに、ストッパ86を円筒カム67に係止させるための穴であり、ストッパ86が係止される被係止部を構成している。キャップ100が退避位置にあってスライダ80が下降位置に位置しているときに、ストッパ86は係止位置に配置される。
【0099】
円筒カム67が、ワイパ40およびロックレバー45を退避位置に下降させているときの図11(a)に示す第1回動位置にあるとき、係止位置にあるストッパ86が係止穴71に挿入される(図11(b)参照)。このため、キャップ100が退避位置にあるときは、ストッパ86による係止により、ワイパ40およびロックレバー45は退避位置にロックされる。この係止状態では、電動モータ27からの動力が円筒歯車66に伝達されて円筒歯車66が回転しても、円筒カム67にはストッパ86の係止による規制により所定値を超える負荷がかかるので、摩擦クラッチ68に滑りが発生して円筒歯車66が空回りするのみとなる。
【0100】
そして、スライダ80の上昇により、退避位置にあったキャップ100が封止位置に上昇すると、係止穴71からストッパ86が抜け出て、円筒カム67が第1回動位置から第2回動位置(図13(a)の状態)へ正転することが可能な状態となるので、ワイパ40の退避位置から払拭位置への上昇が可能となる。
【0101】
円筒カム67には、図13(a)に示す第2回動位置にある状態において、スライダ80の下降に伴い係止位置に戻ったストッパ86と相対する位置に凹部73が形成されている。インク吸引動作終了後にキャリッジ12がホームポジションから印刷領域側に移動するためホームポジションを離れた段階でキャップ100はワイピングに先立ち下降し、このとき係止位置に戻ったストッパ86が、第2回動位置にある円筒カム67の凹部73に挿入されることになる(図13(c)参照)。凹部73は、ワイパ40が払拭位置にある状態でスライダ80が下降したときにも、ストッパ86が係止穴71に挿入されていたときと同じ最下降位置まで戻ることを可能とし、またスライダ80の下降時にコイルバネ115の付勢力によりストッパ86が円筒カム67に強く衝突することを回避するために設けられている。
【0102】
凹部73において、円筒カム67が第2回動位置(図13(a))から第1回動位置(図11(a))へ逆転しようとするときに、この凹部73に挿入されているストッパ86が円筒カム67に対して相対移動するその移動方向側の内壁面が、斜面74に形成されている。斜面74は、円筒カム67の逆転時におけるストッパ86の相対移動方向側に向かって凹部73の底面と同じ深さから徐々に深さが浅くなる傾斜面となっている。このため、図13(a)の状態で、電動モータ27が正転駆動されれば、ストッパ86は、図13(d)に示すように、斜面74を乗り上げて凹部73から抜け出ることができるので、円筒カム67の逆転が許容されることになる。つまり、斜面74は、ワイパ40を払拭位置から退避位置へ移動させるための円筒カム67の逆転を許容できるように、ストッパ86が凹部73から係止穴71へ至る経路上のストッパ86の移動を許容する移動許容面となっている。なお、移動許容面となるこの斜面74により係止阻止手段が構成されている。
【0103】
さらに、円筒カム67の外周面上には、所定の角度範囲(本例では約90度)に渡って歯部72が形成されている。歯部72は、円筒カム67が回転するときにガイドピン43がカム溝70に案内されることで昇降するワイパ40が退避位置と払拭位置を除く昇降ストロークの中央領域(途中領域)にあるときに、歯車64と直接噛合できるように円筒カム67の所定の部位に形成されている。つまり、円筒カム67の有限回動範囲の途中領域にあるときに歯車64と直接噛合できるように円筒カム67の所定の部位に形成されている。したがって、歯車64が回転するときには、ワイパ40が昇降ストロークの途中領域にあるときに歯車64から歯部72に動力が直接伝達されるので、円筒カム67は確実に回動する。また、円筒カム67の外周面上において歯部72が形成されていない部分は、歯車64と噛合できない円弧面となっており、円筒カム67は、ガイドピン43がカム溝70の両端近傍に位置する回動位置にあるときは、歯車64と噛合できない。このため、円筒歯車66が歯部72と噛合していないときは、円筒歯車66との摩擦係合を介してのみ円筒カム67に回転が伝達されることになる。したがって、ガイドピン43がカム溝70の一端(第1端面70a)に当たると、摩擦クラッチ68に滑りが発生して円筒歯車66が空回りし、円筒カム67のそれ以上の回動(正転)が規制されるようになっている。また、ガイドピン43がカム溝70の他端(第2端面70b)に当たったときも、同様に、摩擦クラッチ68に滑りが発生して円筒歯車66が空回りし、円筒カム67のそれ以上の回動(逆転)が規制される。このように摩擦クラッチギヤ機構65は、円筒歯車66が正転/逆転のどちらの方向に回転し続けた場合も、円筒カム67が所定の角度範囲でのみ往復回動する有限範囲回動型の機構に構成されている。
【0104】
図11(a)に示すように、円筒カム67の有限範囲の途中の一範囲においてのみ、凸部75は突起47に係合するように、凸部75の形成位置および円筒カム67に対する中心角(本例では約30度)が設定されている。円筒カム67が第1回動位置から所定回動量だけ回動してから凸部75は突起47と係合し始める。このため、図11(a)〜図13(a)から分かるように、まずワイパ40が上昇し始め、その上昇する途中からロックレバー45が上昇し始めてロック位置に達し、そこからさらに円筒カム67が約30度回動した後にロック位置から下降して退避位置に戻り、その後にワイパ40が払拭位置に到達する動作タイミングに設定されている。これは、ワイパ40が払拭位置に待機しているワイピングのときに、ロックレバー45が退避位置に戻っているようにするためである。また、ワイパ40をワイピング終了後に払拭位置から退避位置に戻すために円筒カム67が逆転される過程においてロックレバー45が一往復動することになるが、ワイパ40の下降開始に遅れてロックレバー45が一往復動される動作タイミングとすることで、ロックレバー45の記録ヘッド18への接触をより確実に防ぐ目的も兼ねる。さらに、印刷休止中のキャッピングの際は、ロックレバー45がロック位置に配置されるが、このときにワイパ40が払拭位置に配置されないようにする目的も兼ねる。
【0105】
なお、本実施形態では、ロックレバー45用のカム部のうちロック位置に配置されるように係合される部分を凸部75としたが、凸部75に替え、円筒カム67の円筒外周面(円弧面)の部分としてもよい。この場合、円筒カム67は、その円筒外周面より小半径となる小径部を有する構成とされ、小径部と突起47が相対するときにロックレバー45が退避位置に配置されるようにする。
【0106】
このように、本実施形態では、円筒カム67が有限範囲を一方向へ回動するときに、第1保守部品であるロックレバー45に一往復動の揺動運動をさせ、第2保守部品であるワイパ40に上昇または下降の一方向の移動運動をさせるように、円筒カム67に2種類のカム部のカム面を設定している。さらに第1保守部品の一往復動の運動が第2保守部品の一方向の移動運動の途中で行われるようにカム部のカム面が設定されている。
【0107】
次に、図14を用いてキャリッジロック装置およびワイピング装置の昇降動作について説明する。なお、同図においてはワイパと動力伝達機構の間に位置するフレーム51の一部を省略している。図14(a)は、円筒カム67が第1回動位置にある。この第1回動位置では、ロックレバー45は突起47が凸部75と係合しておらず、退避位置に配置されており、またガイドピン43がカム溝70の第1端面70aの近傍に位置し、ワイパ40は退避位置に配置されている。キャップ100が退避位置にあるときはストッパ86が係止穴71に挿入してワイパ40は上昇不能にロックされる。キャップ100が封止位置に配置されると、ストッパ86が係止穴71から抜け出て、この状態で円筒カム67を正転させる方向の動力が入力されると、ワイパ40は上昇を開始する。そして、このワイパ40の上昇開始に少し遅れてロックレバー45が上昇を開始する。
【0108】
図14(b)は、円筒カム67が第1回動位置から所定量(第1回動位置と第2回動位置間の回動量の半分(例えば約30度))だけ正転し、ガイドピン43がカム溝70の案内経路上の中間に位置し、ワイパ40は退避位置と払拭位置との中間位置にある。このようにワイパ40が昇降ストロークの途中に位置するときは、歯車64と歯部72が噛合し、歯車64の回転が円筒カム67に直接伝達され、ワイパ40およびロックレバー45が確実に昇降する。また、ワイパ40の昇降途中で突起47が凸部75に係合するとロックレバー45は同図に示すロック位置に配置され、突起47が凸部75と係合している間、ロックレバー45はロック位置に保持される。
【0109】
図14(c)は、円筒カム67が第2回動位置にあるときの状態である。ガイドピン43は第2端面70bの近傍に位置し、ワイパ40は払拭位置にセットされている。また、ワイパ40が払拭位置に配置される前に、突起47と凸部75との係合が外れ、ロックレバー45は同図に示すロック位置に配置されている。
【0110】
よって、ワイパ40およびロックレバー45が図14(a)の退避位置にある状態で円筒カム67が正転すると、ワイパ40は退避位置から上昇しつつその途中でロックレバー45が図14(b)に示すようにロック位置に配置される。そして、図14(c)に示すように突起と凸部との係合が外れてロックレバー45が退避位置に戻るとともに、その後、ワイパ40が同図(c)に示すように払拭位置に配置される。一方、ワイパ40およびロックレバー45が図14(c)の払拭位置にある状態で円筒カム67が逆転すると、ワイパ40は払拭位置から図14(b)の中間位置を経て図14(a)の退避位置に配置される。そして、ワイパ40の下降途中で、ロックレバー45が退避位置とロック位置との間で一往復動する。
【0111】
<キャッピング装置>
次にキャッピング装置について詳細に説明する。
ガイドフレーム部52は左右方向に対峙する一対の側壁52a,52bを有し、両側壁52a,52bには、一対の案内孔(第1の案内孔58、第2の案内孔59)がそれぞれ形成されている。第1および第2の案内孔58,59は、記録ヘッド18の移動方向(フレーム51の長手方向)にフレーム51の後端側から前端側へ向かって徐々に高くなる斜状に形成されている。そして、ガイドフレーム部52には、一対の案内孔58,59の底面によってスロープが形成されている。
【0112】
第1の案内孔58には、水平な下段部58a、傾斜部58b、および水平な上段部58cが連続して形成されている。また、第2の案内孔59には、水平な下段部59a、傾斜部59b、および水平な上段部59cが連続して形成されている。なお、第1の案内孔58および第2の案内孔59のうち少なくとも一つは、一端側が開放された切り欠き、または案内溝(案内凹部)に置き替えることができる。また、これらの案内孔58,59によって、カムが構成されている。
【0113】
スライダ80には、一方の側面81aの前側に第1の支持ピン82、側面81aの後側に第2の支持ピン83が、それぞれ外方に向かうように突出形成されている。同様に、他方の側面81bからも、第1の支持ピン84、第2の支持ピン85が、それぞれ外方に向かうように突出形成されている。このうち、第1の支持ピン82,84は、第1の案内孔58に挿入され、第2の支持ピン83,85は、第2の案内孔59に挿入されるようになっている。なお、これら第1の支持ピン82,84、および第2の支持ピン83,85は、上述のカムに対するカムフォロワを構成している。
【0114】
これら第1の支持ピン82,84、および第2の支持ピン83,85が、各案内孔58,59に沿ってスライドすることにより、スライダ80はフレーム51に対してスライド自在となる。スライダ80は、記録ヘッド18の移動方向(図4では上下方向)にスライドでき、フレーム51に対して前方(図4では上方)へスライドしたときに持ち上がり、後方(図4では下方)へスライドして戻るときに沈み込むようになっている。
【0115】
図6に示すように、メンテナンスユニット50の裏面側には、一方の側壁52aの底部前側に突設されたバネ受け部52cと、スライダ80の底部後方寄り位置に突設されたバネ受け部88との間にコイルバネ115(引張りバネ)が掛け渡された状態に装着されている。スライダ80は、コイルバネ115によって後側(印刷領域側)および下方側に向かって付勢されている。なお、上述の案内孔58,59および支持ピン82〜85は、キャリッジ12の移動を後述するキャップ100の上下方向の移動に変換する手段を構成している。
【0116】
このスライダ80は、図3に示すように、一端側(前方側)が高く、他端側(後方側)が低くなる二段形状をなしている。このうち、図4に示すように、他端側の低い段の底部87には、コイルバネ120(圧縮バネ)が、キャップ100の軸心と軸心を一致させた状態に組付けられている。キャップ100は、コイルバネ120により上方へ付勢された状態で、スライダ80に対して高さ方向にスライド可能に組み付けられている。キャップ100のスライド可能な範囲の上限位置と下限位置は、スライダ80との係合により規制されている。例えば図3、図4に示すように、スライダ80のガイド部89,90にキャップ100の前端中央部および後端側の左右両端部がガイドされることで、キャップ100は上限位置が規制された状態で上下方向にスライド可能に支持されている。また、キャップ100には一対のフランジ部112が左右方向外側に延出しており、フランジ部112がスライダ80の低い段を囲む一対の側面81a,81bの上端部分に衝突することにより、キャップ100の下限位置が規定されている。また、キャップ100の左右端部からは一対のL字状のガイド腕部91が上方に延出しており、キャップ100が封止位置に上昇したときに一対のガイド腕部91が記録ヘッド18の左右側壁を挟持するようにガイドできるようになっている。
【0117】
また、低い段の底部87には、コイルバネ120と軸心を一致させるように円孔95(図6参照)が形成されており、スライダ80の裏面側に突出したキャップ100の接続管(図示せず)に接続されたチューブ30が円孔95から導出している。このチューブ30は吸引ポンプ29の負圧側に導入されている。
【0118】
また、図3および図4に示すように、このスライダ80の前端部には、前述の突出部材98が上方に突出するように一対形成されている。この突出部材98は、図9に示すように、キャリッジ12がホームポジションへ移動する際にその下部前端面12bが衝突する部分であり、かかるキャリッジ12の衝突によってスライダ80は前側に移動し、スライダ80が持ち上がった状態となる。なお、スライダ80、案内孔58,59を有するフレーム51等によって、キャップ100を昇降させる昇降手段(昇降機構)が構成されている。
【0119】
キャップ100は、その本体となるキャップホルダ101と、囲い形状に形成された弾性部材、例えばゴム材(エラストマ等)からなる封止壁102とを有している。本例では、封止壁102は、2色成形によって樹脂成型品であるキャップ100の本体と一体的に設けられている。なお、本例では、封止壁102の囲い形状は、その平面形状が矩形をなすように形成されている。また、キャップ100のうち封止壁102で囲まれた凹部には、液体吸収部材110が収容されている。チューブ30は、液体吸収部材110が収容された凹部の底部に形成された通孔と連通しており、キャップ100の内側空間がチューブ30を通じて吸引ポンプ29と連通している。
【0120】
次に、上記のように構成された記録装置およびメンテナンスユニット50の作用を説明する。
記録用紙17が給紙・搬送(紙送り)・排紙される際は、電動モータ27が正転駆動される。給紙ローラ32の回転により給紙された記録用紙17は、一対のローラ23,24に挟持され、電動モータ27が引き続き正転駆動されることにより搬送駆動用のローラ23が回転し続け、給紙に連続して記録用紙17の搬送が行われる。この搬送の途中で記録用紙17の先端が紙検出用のセンサSに検出されると、制御部33は、記録用紙17をそのセンサSの検出位置からそのときの頭出し位置に応じた設定紙送り量だけさらに搬送(順送)させ、その搬送が終わると電動モータ27を正転駆動させて頭出し処理を行う。ここで、制御部33は、ホストコンピュータ(図示せず)から受信した印刷データからトップマージン等の印刷設定情報を取得しており、トップマージンの情報から頭出し位置を求めている。こうして記録用紙17が頭出し位置を超えた位置まで一旦搬送(順送)された後、引き戻され(逆送され)て頭出しされ、さらにその後、電動モータ27を僅かに正転駆動させてバックラッシュ取りが行われることにより、精度の高い頭出し処理が行われる。このように記録用紙17を頭出し時に順送の後に逆送を加える制御方法については、これ以外にも、例えば記録ヘッド18よりも排紙側の位置に紙検出用センサが配設されている機種については、紙検出用センサにより記録用紙17の先端を検出してから所定量の逆送動作を与えることにより頭出しする制御を採用する場合が挙げられる。その他、記録用紙17がローラ23,24等の間に詰まる、いわゆる紙ジャムが発生したときに記録用紙17を給紙側から抜き取るために、操作パネルの所定のスイッチが操作されると、制御部33が電動モータ27を逆転駆動させ、ローラ23,24等を逆転させて記録用紙17を逆送させる制御を採用する場合が挙げられる。
【0121】
ここで、頭出しの際に電動モータ27が正転駆動されると、動力伝達機構60の入力用の歯車61が逆転する。歯車61の逆転は、ポンプ歯車63を逆転させるため、吸引ポンプ29はレリース状態に保持される。また、歯車61の逆転は、歯車64を介して摩擦クラッチギヤ機構65にも伝達される。このときワイパ40およびキャップ100は共に退避位置に配置されているので、スライダ80が下降位置にあってストッパ86は円筒カム67の係止穴71に挿入された状態にある。また、ロックレバー45の突起47は円筒カム67の凸部75と非係合の状態にあり、ワイパ40のガイドピン43は、円筒カム67のカム溝70内において第1端面70a近傍に位置している。よって、摩擦クラッチギヤ機構65に逆転方向の回転が伝達されても、ストッパ86による係止およびガイドピン43の第1端面70aへの当接による規制によって、円筒カム67に所定値を超える負荷がかかるので、摩擦クラッチ68に滑りが発生し、円筒歯車66が空回りするのみで円筒カム67が回転することはない。この結果、ロックレバー45およびワイパ40は共に退避位置に保持される。
【0122】
また、頭出し動作の最後に記録用紙17の逆送のために電動モータ27が逆転駆動されたときは、歯車61が正転する。歯車61が正転することによりポンプ歯車63が正転するが、このように記録用紙17のバックフィード量が、ポンプ歯車63の遅延部材の機能により遅延される回転量以内に収まる場合は、吸引ポンプ29は駆動されない。一方、そのバックフィード量が、遅延部材の機能により遅延される遅延回転量を超える場合は、吸引ポンプ29が駆動されて負圧を発生することになるが、この頭出し処理時にはキャリッジ12は印刷開始位置に向かって既にホームポジションから離れているので、キャップ100において単に空吸引動作がなされるだけで何ら不都合はない。また、この逆送の際にもロックレバー45およびワイパ40は、円筒カム67がストッパ86の係止により回動不能にロックされていることから共に退避位置に保持される。このとき、記録用紙17のバックフィード量が、ポンプ歯車63の遅延部材の機能により遅延される遅延回転量を超えても、ロックレバー45およびワイパ40を共に退避位置に保持できる。
【0123】
記録用紙17の頭出しが終わると、キャリッジ12の主走査方向(図1におけるX方向)への移動と、記録用紙17の副走査方向(図1におけるY方向)の所定量の移動とが交互に行われ、この主走査過程で記録ヘッド18からインクが吐出(噴射)されることにより記録用紙17に印刷データに応じた所定の文字列や画像等が印刷される。
【0124】
その後、例えばユーザが記録不良を認識してクリーニングスイッチ28を操作した場合、タイマ39が設定時間を計時してクリーニング時期(インク吸引動作時期)になった場合には、クリーニング動作が実行される。このクリーニング動作時には、キャリッジ12が印刷領域からホームポジション側に移動する。
【0125】
制御部33は、キャリッジモータ16を制御してキャリッジ12をホームポジションへ移動させる。キャリッジ12は印刷領域を出てホームポジションに到達する手前で、突出部材98と係合し、さらにこれを押し込みながらホームポジションまで進むことで、スライダ80が案内孔58,59に案内されて前方へスライドしながら上方へ持ち上がる。このスライダ80の上昇に伴ってキャップ100が退避位置から封止位置へ上昇して、ノズル形成面18aを封止する。また、このスライダ80の前方へのスライドに伴ってストッパ86が係止位置から係止解除位置へ移動し、係止穴71から抜け出ることで、キャップ100の上昇に連動してストッパ86の円筒カム67への係止が解除される。
【0126】
エンコーダ36からの信号に基づき把握しているキャリッジ12の移動位置が、クリーニング位置(ホームポジション)に到達したことを認識すると、制御部33は、クリーニング動作を開始すべく、モータ駆動回路35に逆転信号を送出する。この結果、電動モータ27が逆転駆動され、歯車61が正転し、これによりポンプ歯車63が正転する。そして、ポンプ歯車63が遅延部材の機能による所定の遅延回転量の回転を終えた後、ポンプ歯車63の動力が吸引ポンプ29の駆動軸に伝達され、吸引ポンプ29の駆動が開始される。この吸引ポンプ29の駆動によるポンプ作用によってキャップ100の内部空間に負圧が与えられ、ノズル形成面18aのノズル開口からインクが吸引排出される。そして、吸引排出された廃液はキャップ100から吸引ポンプ29を通って廃液タンク31に排出される。
【0127】
一方、この吸引ポンプ29の駆動に前後し、入力用の歯車61の正転により、これに噛合する歯車64が正転する。この歯車64の回転は摩擦クラッチギヤ機構65に伝達される。このとき、ストッパ86は係止穴71から抜け出ており、円筒カム67はロックが解除された状態にあるため、歯車64の回転が円筒歯車66に伝達されると、円筒カム67は円筒歯車66と一体に正転し、第1回動位置(図11(a))から第2回動位置(図13(a))まで回動する。
【0128】
この回動の途中過程で、図12(a)に示すように歯車64は歯部72と噛合し、歯車64の回転力が円筒カム67に直接伝達される。このため、ワイパ40が移動範囲の途中領域を上昇するときは、摺動箇所の摩擦抵抗などが原因で円筒カム67にかかる負荷が多少変動したり、摩擦クラッチ68のクラッチ面が通常より多少滑り易くなっていても、円筒カム67を確実に正転させることができる。このため、ロックレバー45を確実にロック位置に上昇させてから退避位置まで戻すことができるとともに、ワイパ40を確実に払拭位置へ上昇させることができる。
【0129】
よって、キャリッジ12がホームポジションに到達して停止した状態においては、図9に示すように、ロックレバー45がロック位置に配置される。このため、キャリッジ12がホームポジションから印刷領域側への移動が規制され、ホームポジションに正しく配置された状態でキャップ100がノズル形成面18aに当接し、キャッピングが正しく行われる。
【0130】
このキャッピング後に、ポンプ歯車63の回転量が遅延回転量を超えて、吸引ポンプ29の駆動軸が駆動されることになり、キャップ100に負圧が導入されてインク吸引動作が行われる。インク吸引動作中にあっては電動モータ27の逆転駆動が継続されるが、ガイドピン43がカム溝70の第1端面70aに当接して円筒カム67のそれ以上の正転が規制されるため、摩擦クラッチ68が滑って円筒歯車66が空回りすることにより、円筒カム67は第2回動位置に保持される(図13(a))。この結果、ロックレバー45が退避位置に保持されると共にワイパ40が払拭位置に保持される。
【0131】
そして、電動モータ27が予め設定された設定回転量の逆転駆動を終えてインク吸引動作が終了すると、制御部33は、キャリッジモータ16を駆動させてキャリッジ12をホームポジションから印刷領域側に向かって移動させる。このキャリッジ12の移動途中で、コイルバネ115により後方へ付勢されているスライダ80は、キャリッジ12の移動に追従して後方へ移動し、支持ピン82〜85がそれぞれ第1の案内孔58、第2の案内孔59に沿って案内されることにより、その後方へスライドする過程で下降する。この結果、スライダ80に搭載されているキャップ100が下降し、キャップ100によるノズル形成面18aの封止が解除されると共にキャップ100は退避位置に戻る。
【0132】
そして、スライダ80が最下降位置に到達してから、さらにキャリッジ12が所定距離(例えば10〜20mm)だけ印刷領域側へ移動してワイピングポジションを通過する過程で、払拭位置に待機したワイパ40のワイピング部材42にノズル形成面18aを摺接させることにより、ノズル形成面18aの払拭(ワイピング)が行われる。このワイピングにより、ノズル形成面18aに付着したインクが掻き取られるとともに、ノズル孔内のインクのメニスカスが整えられる。
【0133】
このワイピングが終了したとき(キャリッジ12がワイピングポジションを通過したとき)には、スライダ80がすでに最下降してストッパ86が係止位置に戻っており(図13(b)→図13(c))、ストッパ86が図13(a)に示す第2回動位置にある円筒カム67の凹部73に挿入された状態にある。このようにストッパ86が凹部73に挿入されることにより、キャップ100をストッパ86が係止穴71に挿入されているときの下限位置と略等しい位置まで下降させることができる。また、凹部73が存在することで、スライダ80の下降時にコイルバネ115の付勢力によりストッパ86が円筒カム67に強く衝突することを回避でき、動力伝達機構60の構成部品に徒に衝撃を与えることが回避される。
【0134】
エンコーダ36からの信号に基づき把握しているキャリッジ12の移動位置が、ワイピング終了位置に到達したことを認識すると、制御部33は、モータ駆動回路35に正転信号を送出する。この結果、電動モータ27が正転駆動され、円筒カム67が、第2回動位置(図13(a))から第1回動位置(図11(a))まで逆転する。このとき、斜面74の存在により、ストッパ86は逆転する過程の円筒カム67のどこにも係止しないように円筒カム67への係止が阻止されている。このため、ストッパ86は、図13(d)に示すように斜面74を乗り上げて凹部73から抜け出て、さらに円筒カム67の端面上を、円弧軌跡を描きながら相対移動して係止穴71に至り、この係止穴71に挿入される。このように円筒カム67は、ストッパ86に係止されることなく、第2回動位置から第1回動位置まで逆転することができる。この円筒カム67の逆転により、カム溝70に案内されたガイドピン43は、ワイパ40の昇降ストローク長に等しい距離だけ下方へ変位する。この結果、ワイパ40は払拭位置から退避位置に下降する。このワイパ40の下降過程においても、下降途中の領域で歯車64が歯部72と噛合し(図12(a))、歯車64の回転力が円筒カム67に直接伝達されるため、ワイパ40を確実に退避位置まで下降させることができる。
【0135】
そして、ワイパ40が退避位置まで下降すると、ガイドピン43がカム溝70の第2端面70bに当接して、円筒カム67のそれ以上の逆転が規制された状態となる。このため、クリーニング終了後、電動モータ27が紙送りなどの目的で正転駆動されても、摩擦クラッチ68が滑って円筒歯車66が空回りすることで、摩擦クラッチ68(クラッチ面)より動力伝達方向下流側に位置する、図11(a)に示す第1回動位置に停止している円筒カム67を含む構成部品に過大に負荷がかかることが回避される。なお、ワイパ40を退避位置に戻すための動作は、クリーニング後に最初に記録用紙17を給紙するために電動モータ27が正転駆動されるときに一緒に行ってもよい。このワイパ40の下降過程における円筒カム67の逆転時には、ロックレバー45が退避位置とロック位置との間を一往復動するが、キャリッジ12が印刷領域側へ移動しているので、ロックレバー45が記録ヘッド18と干渉することはない。
【0136】
また、記録装置10では、他のクリーニングとしてフラッシングが行われる。タイマ39がフラッシングの間隔時間の設定時間を計時する毎に、キャリッジ12をフラッシングポジションへ移動させ、記録ヘッド18を廃液受け部(図示せず)と対向する位置に配置し、記録ヘッド18から廃液受け部に向かってインク滴を空吐出するフラッシングを行う。このとき制御部33は、記録ヘッド18に印刷データとは関係のない駆動信号を印加し、記録ヘッド18のノズル孔からインク滴を吐出させる。このフラッシングのときは、ワイピングは行われない。もちろん、フラッシング後にワイピングを行ってもよい。例えばフラッシングをキャップ100に向かってインク滴を吐出する構成とし、キャップ100が退避位置と封止位置との中間位置まで上昇するキャリッジ位置をフラッシングポジションとし、キャップ100が中間位置まで上昇した段階でストッパ86が係止穴71から抜け出てその係止が解除されるようにする。こうすることで、フラッシング時にストッパ86の係止を解除して、ワイパ40を払拭位置に上昇させることができ、フラッシング後にワイピングを実施することができる。フラッシング終了後、キャリッジ12は、フラッシングポジションから再び印刷領域に移動し、記録ヘッド18による記録動作を再開する。
【0137】
なお、本実施形態では、頭出し動作の際の逆送について対策を取ったが、紙ジャムの際に記録用紙を逆送させて給紙口側から抜き取る機能などを追加してもよい。この場合、キャリッジ12がホームポジション以外の位置にあれば、円筒カム67がストッパ86に係止されるので、スイッチ操作されて記録用紙17の逆送のために電動モータ27が逆転駆動されても、保守部品であるロックレバー45およびワイパ40が上昇することがない。このときバックフィード量に制限なく記録用紙17を逆送させることが可能となる。また、キャリッジがホームポジション(クリーニング位置)にあるときに電動モータ27を逆転駆動させる機能を備えたい場合は、次の制御を加えるとよい。すなわち、制御部33が、逆送動作を開始するに当たり、キャリッジ12がクリーニング位置にあることを認識した場合、キャリッジモータ16を駆動制御して、キャリッジ12を印刷領域側へ少量移動させてキャップとノズル形成面との間に隙間を開ける制御を行う。こうすれば、記録用紙の逆送時に吸引ポンプ29が駆動されてキャップ100に負圧が与えられても、隙間の存在により、空吸引となるだけで記録ヘッドに対するインク吸引動作が行われないうえ、ストッパ86が円筒カム67を係止することでロックレバー45およびワイパ40は作動不能にロックされる。このため、この場合も、バックフィード量に制限なく記録用紙17を逆送させることが可能となる。
【0138】
また、記録用紙17の排紙中にキャリッジ12がホームポジションに移動してキャップ100が封止位置に配置されても、このときの吸引ポンプ29の回転方向はレリース方向なのでノズル開口からインク吸引排出が行われることはない。なお、キャリッジ12がクリーニング位置に配置された状態で行われる吸引ポンプ29のポンプ駆動中に、給紙ローラ32を含む搬送駆動部の逆送方向の駆動を防ぐ要請がある場合は、キャリッジ12がクリーニング位置にあるときに、電動モータ27から搬送駆動部へ至る動力伝達経路を遮断するクラッチを設けることが好ましい。
【0139】
印刷休止時期にキャリッジ12がホームポジションに移動したときは、電動モータ27が少量逆転駆動され、円筒カム67は図12(a)および図14(b)に示す回動位置で停止され、ロックレバー45がロック位置に配置される。この結果、印刷休止時期のキャリッジ12がホームポジションに位置規制された状態でノズル形成面18aにキャッピングされる。このキャッピング状態では、ワイパ40は中間位置まで上昇しているが、キャッピングが解除された後、給紙などの目的で電動モータ27が正転駆動されたときには、ワイパ40は中間位置から退避位置へ下降し、払拭位置を経由することはないので、キャッピング後にワイピングが行われることはない。これは電動モータ27の逆転駆動時には、ワイパ40が払拭位置に到達する前にロックレバー45がロック位置に到達するように両保守部品の動作タイミングを設定したことにより実現できている。
【0140】
以上、上記した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)キャリッジ12がクリーニング位置にない(キャップ100が退避位置にある)クリーニング以外のときは、ストッパ86が係止穴71に挿入されて円筒カム67を回転不能にロックするようにした。記録用紙17の頭出し動作の最後に逆送動作を入れるなど搬送系の制御により電動モータ27が逆転駆動されても、ロックレバー45およびワイパ40を上昇させることなく退避位置に保持できる。このため、その後、キャリッジ12がホームポジションに移動したときに、記録ヘッド18がロックレバー45およびワイパ40と接触する事態を回避できる。また、特許文献3に記載された伝達遅延手段を設けた場合のように遅延回転量以下のバックフィード量に限定されず記録用紙17を逆送させることができる。このように伝達遅延手段の遅延回転量を超えるバックフィード量の逆送が可能となることから、例えば紙ジャムが発生したときに操作パネルのスイッチを操作して記録用紙17を逆送させるなど、記録装置10に逆送に関する他の機能を追加し易くなる。
【0141】
(2)キャップ100の昇降手段を構成するスライダ80にストッパ86を設け、動力伝達機構60の構成部品のうちクラッチ手段である摩擦クラッチギヤ機構65のクラッチ面より動力伝達経路下流側に位置する一部品(円筒カム67)に被係止部として形成した係止穴71にストッパ86を挿入させる構成とした。そして、キャリッジ12がクリーニング位置にないクリーニング以外の時期に、ストッパ86を係止穴71に挿入させて保守部品に動力が伝達されないように動力伝達機構60をロックさせた。このため、キャップ100の昇降手段を構成するスライダ80にストッパ86を追加し、その対応する位置にある動力伝達機構60の一構成部品に被係止部を設けるだけの簡単な構成で、クリーニング以外の時期にキャリッジロック装置およびワイピング装置を作動不能にロックすることができる。つまりストッパ86の係止機構は、キャップ100の昇降手段を流用して構築されているので、係止機構を設けた割りに追加する部品が少なくて済む。また、ストッパ86は円筒カム67に形成された係止穴71に挿入される構成なので、ストッパ86および係止穴71を追加しても、メンテナンスユニット50の部品収容スペースはほとんど増えず、このような係止機構を設けた割にメンテナンス装置を小型に構成することができる。
【0142】
(3)ストッパ86が係止される被係止用部品としてカム体である円筒カム67を選択したので、カム体以外に被係止用の部品を動力伝達機構60の構成部品として設ける必要がなく、動力伝達機構60の部品点数を少なく済ませられる。このため、少ない部品点数で動力伝達機構60をコンパクトに構成でき、メンテナンスユニット50の小型化を実現できる。
【0143】
(4)摩擦クラッチギヤ機構65(クラッチ手段)を構成する一部品に係止穴71(被係止部)を設けて、ストッパ86の係止先となる被係止用部品(円筒カム67)を構成し、摩擦クラッチギヤ機構65と被係止用部品とで部品を共有するようにした。このため、少ない部品点数で動力伝達機構60をコンパクトに構成でき、メンテナンスユニット50を比較的簡単な構成とすることができ、例えばメンテナンスユニット50の小型化を実現できる。
【0144】
(5)1つのカム体に、第1保守部品であるロックレバー45用の第1変換手段を構成する第1カム部である凸部75と、第2保守部品であるワイパ40用の第2変換手段を構成する第2カム部であるカム溝70とを設けて、複数のカム部がカム体である1つの円筒カム67に設けられた構成とした。このため、複数の保守部品用の複数の変換手段を構成するカム部毎に1つずつカム体を設ける構成に比べ、少ない部品点数で動力伝達機構60をコンパクトに構成でき、メンテナンスユニット50を一層簡単な構成とすることができ、例えばメンテナンスユニット50の小型化を実現できる。
【0145】
(6)摩擦クラッチギヤ機構65(クラッチ手段)を構成する一部品に凸部75およびカム溝70を設けて、カム体である円筒カム67を構成し、摩擦クラッチギヤ機構65と、複数のカム部を有するカム体とで部品を共有するようにした。このため、少ない部品点数で動力伝達機構60をコンパクトに構成できるので、メンテナンスユニット50を一層簡単な構成とすることができ、例えばメンテナンスユニット50の小型化を実現できる。
【0146】
(7)摩擦クラッチギヤ機構65(クラッチ手段)を構成する一部品に、第1変換手段を構成する第1カム部である凸部75、第2変換手段を構成する第2カム部であるカム溝70、および被係止部である係止穴71を設けることにより、4つの機能部品を円筒カム67という一部品が兼ねた。したがって、少ない部品点数で動力伝達機構60をコンパクトに構成し、メンテナンスユニット50の構成を一層簡単にすることができる。
【0147】
(8)円筒カム67を有限範囲内で往復回動させる有限範囲回動型のキャリッジロック機構およびワイパ昇降機構を採用するとともに、吸引ポンプ29とキャリッジロック装置とワイピング装置の回転駆動源を共通の電動モータ27とした。また、動力伝達機構60において吸引ポンプ29への動力は、クラッチ手段である摩擦クラッチギヤ機構65のクラッチ面より動力伝達方向上流側の位置である歯車61で分配される構成とした。このため、吸引ポンプ29をインク吸引動作に必要な時間だけ駆動し続けても、円筒カム67の回動がガイドピン43により規制された時点で、摩擦クラッチ68が滑って摩擦クラッチギヤ機構65の接続が切れることで、ロックレバー45を退避位置に保持できると共にワイパ40を払拭位置に保持できる。また、保守部品が所定位置に到達した後も回転駆動源である電動モータ27の駆動を継続させて吸引ポンプ29を駆動し続けることができる。このため、カム体である円筒カム67の有限範囲に規定されず、吸引ポンプ29を必要な時間または必要な回転量だけ駆動させ続けることができる。よって、ノズル形成面18aのノズル開口からインクを吸引するインク吸引動作を適切に行うことができる。
【0148】
(9)メンテナンスユニット50の回転駆動源として、元々記録装置10に備わった紙送りモータ(電動モータ27)を流用する構成としたので、メンテナンスユニット50専用の電動モータを追加する必要がない。このため、記録装置10に搭載されるべき電動モータの数を増やさずに済む。さらに電動モータ27は、給紙装置、排紙装置および吸引ポンプ29の回転駆動源も兼ねるので、記録装置10に搭載されるべき電動モータの数を少なく抑えることができる。このため、電動モータの配設スペースを狭く抑えられ、記録装置10の小型化に寄与できる。
【0149】
(10)最下降位置に配置されたスライダ80と前後方向(キャリッジ移動方向)に相対する位置に摩擦クラッチギヤ機構65を配置している。このため、スライダ80のうち円筒カム67と相対する延出部80aの後端面箇所からストッパ86を円筒カム67に向かって突出させるとともに、円筒カム67のストッパ相対箇所に係止穴71を形成するだけの比較的簡単な構成で係止機構を実現することができる。
【0150】
(11)さらに最下降位置に配置されたスライダ80と前後方向に相対する位置にワイパ40を配置し、ワイパ40を、摩擦クラッチギヤ機構65のうち係止穴71を有する被係止用部品(円筒カム67)と相対させるようにした。このため、ワイパ40からガイドピン43を円筒カム67に向かって突設するとともに、円筒カム67のガイドピン相対箇所にカム溝70を形成するだけの比較的簡単な構成で、第2変換手段を実現することができる。さらに摩擦クラッチギヤ機構65(クラッチ手段)の一構成部品を兼ねたカム体である円筒カム67の隣接位置にロックレバー45を配置したので、カム体である円筒カム67とロックレバー45のそれぞれに凸部75、突起47を追加するだけの簡単な構成で第1変換手段を実現することができる。
【0151】
(12)スライダ80の左右幅方向の中心線と、ワイパ40の左右幅方向中心線と、円筒カム67の軸心とが、左右方向(Y方向)において略一致するように円筒カム67を配置している。このため、ストッパ86の突設位置をスライダ80の中心線近傍に設定でき、しかも円筒カム67の下端部寄りとなる比較的低い位置に係止穴71を配置し、円筒カム67の軸心を挟んで係止穴71と反対側となる上側部分にカム溝70を配置するレイアウトを採用することが可能となる。よって、円筒カム67の下端部に係止穴71が配置されていることから、ワイパ40の下側を通る経路でストッパ86を差し込むことができる。しかも円筒カム67の回動をワイパ40の昇降運動に変換できる回転中心より上側の箇所でガイドピン43と係合させることができる。これによりカム溝70と係止穴71を一つの回動体(円筒カム67)に配置することができる。
【0152】
(13)円筒カム67がクラッチ手段、第1変換手段、第2変換手段の各構成部品を兼ねるとともに、その有限範囲内の一方向の回動時にロックレバー45(第1保守部品)を一往復動させ、ワイパ40(第2保守部品)を往復動のうち一方向のみに移動させる構成とした。このため、ロックレバー45はキャリッジ12をロックした後速やかに退避でき、またワイパ40はキャリッジ12がクリーニング位置から移動するワイピング時まで払拭位置に待機させることができる。よって、少ない構成部品を用いて、複数の保守部品のそれぞれに異なるタイミングで異なる動作を行わせることができる。
【0153】
(14)摩擦クラッチギヤ機構65を採用し、インク吸引動作のために電動モータ27が逆転駆動され続けても、ロックレバー45が退避位置とロック位置との間を一往復動し終わった後、およびワイパ40が払拭位置に上昇し終わった後は、摩擦クラッチ68が滑って電動モータ27から円筒カム67への動力の伝達が切れる。よって、キャリッジロック装置およびワイピング装置に過度の負荷がかかることを回避できる。
【0154】
(15)円筒カム67に歯部72を形成し、ワイパ40の昇降ストロークの途中過程において、歯車64と歯部72との噛合により、歯車64の動力を円筒カム67に直接伝達できるようにしたので、ロックレバー45を確実に昇降させることができると共に、ワイパ40を確実に上昇および下降させることができる。このため、ワイパ40の昇降時に、例えば摺動箇所の摩擦抵抗が大きくなって円筒カム67にかかる負荷が多少大きくなったり、摩擦クラッチ68のクラッチ面が多少滑り易くなったりしても、ロックレバー45およびワイパ40をタイミング遅れなく確実に昇降させることができる。例えばロックレバーおよびワイパを昇降できなかったり、昇降のタイミングが遅れたりして、その後のキャリッジロックやワイピングを適切に行えなかったり、ロックレバーやワイパが記録ヘッド18と接触する事態を招いたりすることを防止できる。
【0155】
(16)円筒カム67に斜面74を設けたので、ワイピングを終えてワイパ40を払拭位置から退避位置へ移動させる時に既にストッパ86が係止位置に戻っていても、ストッパ86が斜面74を乗り上げて凹部73から抜け出すことで、円筒カム67のワイパ退避方向への回動(逆転)を妨げるストッパ86の係止を阻止できる。よって、ワイピング終了時点においても、ワイパ40を退避位置に戻すことができる。また、ワイパ40をワイピング終了後に退避位置に下降させるためには、本実施形態の方法以外にも、例えばキャリッジを再度ホームポジションに移動させてスライダを再度上昇させ、ストッパを斜面のない凹部から一旦抜き出してから、電動モータ27を正転駆動させる方法も考えられる。しかし、この方法を採用した場合、キャリッジ12を再度ホームポジションに移動させるという余分な動作が加わるため、印刷のスループットの悪化を招く。これに対し、本実施形態によれば、このようなキャリッジ12の余分な動作も伴わないので、印刷のスループットを低下させることもなく、ワイパ40を適切に作動させることができる。
【0156】
尚、発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)上記実施形態では、スライダにストッパを一体形成し、スライダの昇降動作に連動してストッパが動く構成としたが、ストッパはスライダと一体構造であることに限定されない。例えばストッパをキャップの移動手段を流用しない別の係止機構により作動させる構成とし、キャリッジのクリーニング位置への移動過程でキャリッジの係合部が被係合部を押し込むことによりストッパが係止位置から係止解除位置へ作動される係止機構を採用してもよい。この場合、キャップの移動手段としてキャリッジがスライダを押してキャップを上昇させる機構を採用する構成としてもよい。この係止機構を採用する場合も、ストッパはキャリッジのクリーニング位置に到達する手前の所定範囲における移動およびキャップの昇降に連動(追従)して動く構成となる。
【0157】
(変形例2)前記実施形態では、ロックレバー45とワイパ40をストッパ86の可動体(円筒カム67)への係止によって作動不能とさせたが、ストッパ86の係止により作動不能とさせる保守部品は、ロックレバー45とワイパ40のうちいずれか一方であってもよい。つまり、動力伝達機構60により動力が伝達されて駆動される保守部品を、ロックレバー45とワイパ40のうちいずれか一方としてもよい。この場合も、クリーニング以外のときに電動モータ27が他の装置の作動のために駆動されたとしても、ロックレバー45とワイパ40のうち一方を作動させないようにすることができる。例えばロックレバー45を廃止し、ワイパ40のみ動力伝達機構60により作動される構成としたり、ワイパはキャップ100の本体(キャップホルダ)にワイピング部材を設けることによりキャップ100と一体の構造としてロックレバー45のみ動力伝達機構60により作動される構成としたりすることができる。このようにロックレバー45とワイパ40のうちいずれか一方のみを動力伝達機構60による動力の伝達により作動される構成としても、他の装置の作動時期にロックレバー45がロック位置へ向かって動いたり、ワイパ40が払拭位置に向かって動くことを回避できる。なお、ロック部材は、揺動(回動)することにより退避位置とロック位置間を往復移動するレバー構造に限定されず、上下方向にスライドするスライド構造を採用することもできる。
【0158】
(変形例3)回転駆動源の動力により作動される保守部品は、ロックレバー45とワイパ40の2部品に限定されない。例えばキャップを保守部品とし、回転駆動源としての電動モータ27からの動力により動力伝達機構を介してキャップを作動させる構成を採用することもできる。この場合、ロックレバー45を廃止し、保守部品をキャップとワイパの2部品とする構成、ロックレバーとキャップの2部品とする構成を採用することができる。また、動力伝達機構を介して作動される保守部品がロックレバーとワイパとキャップの3つとする構成を採用することもできる。ワイパとキャップの二部品の場合、例えば特許文献3に記載の構成を採用し、動力伝達機構の構成部品である可動体(回動体、カム体)に係止可能にストッパを設けた構成とする。さらに上記3部品にその他の保守部品を採用して動力伝達機構を介して作動される保守部品を4部品以上とすることもできる。
【0159】
(変形例4)係止手段により係止される対象である可動体は、保守部品そのもの(例えばロックレバー45、ワイパ40)であってもよい。例えばロックレバーの場合、ロックレバーに被係止部(例えば突起47、係止凹部又は係止貫通孔)を設け、ストッパがロックレバー45の被係止部に係止する構成とする。また、ワイパ40の場合、ワイパ40に被係止部(例えば係止凹部又は係止貫通孔)を設け、ストッパがワイパ40の被係止部に係止する構成とする。この場合、ストッパは、複数の保守部品毎にそれぞれと対応する位置に設ける構成とするのが好ましい。例えばワイパ用のストッパ86の他、スライダ80の延出部80aから延びるストッパを、ロックレバーと対応する位置に配置し、係止位置においてストッパがロックレバー45の突起47と係合してロックレバー45の退避位置からロック位置側への移動を不能にする構成とする。
【0160】
(変形例5)前記実施形態では、摩擦クラッチギヤ機構の一構成部品である円筒カム67をカム体としたが、これ以外の部分をカム体とすることもできる。例えば、摩擦クラッチギヤ機構の円筒カムと同軸上で一体回動可能な回動体または歯車を設け、当該回動体にカム部を形成したり、または前記歯車に少なくとも1つの歯車を間に介して作動連結された回動体にカム部を形成したりしてもよい。また、このような回動体に被係止部を形成してもよい。
【0161】
(変形例6)前記実施形態では、ストッパが係止される被係止部(係止穴71)を有する可動体(回動体)と、ロックレバーおよびワイパを退避位置と作動位置とに移動させるカム体とを、一つの可動体(回動体)である円筒カム67が兼ねる構成としたが、これに限定されない。例えば、ストッパが係止される被係止部(係止穴71)を有する可動体と、ロックレバーおよびワイパの各カムフォロア(突起47、ガイドピン43)と係合するカム部(凸部75、カム溝70)を有するカム体とを、別々に備えた構成としてもよい。この構成によれば、ストッパ86、ロックレバー45、ガイドピン43の配置位置の自由度が高まるので、メンテナンス装置の構成部品のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0162】
(変形例7)前記実施形態では、クラッチ手段(摩擦クラッチギヤ機構)を構成する回動体(円筒カム67)に被係止部を設け、ストッパが係止される被係止部(係止穴71)を有する可動体を、前記クラッチ手段の前記回動体が兼ねる構成としたが、これに限定されない。例えば被係止部(係止穴71)を有する可動体(被係止用部品)と、クラッチ手段の一構成部品である回動体とを別々に備えた構成としてもよい。この構成によれば、クラッチ手段の配置位置をストッパが係止可能な位置に制限する必要がなくなるので、クラッチ手段およびストッパの配置位置の自由度が高まり、メンテナンス装置の構成部品のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0163】
(変形例8)前記実施形態では、クラッチ手段(摩擦クラッチギヤ機構)を構成する回動体にカム部を設け、ワイパを退避位置と払拭位置とに移動させるカム体(円筒カム67)を、前記クラッチ手段の回動体が兼ねる構成としたが、これに限定されない。例えば、クラッチ手段を構成する回動体と、ロックレバーおよびワイパの各カムフォロア(突起47、ガイドピン43)と係合するカム部(凸部75、カム溝70)を有するカム体とを、別々に備えた構成としてもよい。この構成によれば、クラッチ手段とカム体の配置位置の自由度が高まるので、メンテナンス装置の構成部品のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0164】
(変形例9)ストッパが係止される被係止部を、凹状の係止穴(凹部)としたが、貫通孔であってもよい。すなわち凹部または貫通孔などの刳り抜き部であればよい。さらに、被係止部が、可動体に設けられた凸部であり、ストッパの先端部に前記凸部と係合できる刳り抜き部(凹部または貫通孔等)が形成された構成としてもよい。
【0165】
(変形例10)前記実施形態では、キャップの移動手段として、キャリッジの移動に連動してスライダ80をスライドさせるスライダ駆動方式の昇降手段を備えたメンテナンス装置に本発明を適用したが、キャップを鉛直方向に昇降させる直動式の移動手段を備えたメンテナンス装置に本発明を適用してもよい。すなわち、キャップの支持体を昇降させる昇降機構が直動式の場合、キャップ100の支持体(キャップを上方へ付勢する状態に支持する支持ホルダ)にストッパを設け、支持体が下降されると、ストッパが円筒カムの係止穴に挿入される機構を採用する。この機構としては、例えば支持体の底部にキャリッジ移動方向と平行な水平方向に移動可能にストッパを設け、このストッパをバネにより係止穴71から退避する(抜け出る)方向に付勢する。さらに、支持体には下方から押されるとレバー作用によりストッパをバネの付勢力に抗して係止穴側へ水平に押し出すレバーが設けられ、このレバーの被操作部が支持体の底部側に位置している。支持体が下降すると、被操作部がフレームの底面に配置された当接部材に衝突して、レバー作用によって、ストッパがバネの付勢力に抗して水平に押し出され、係止穴に挿入される。なお、直動式の昇降手段は、回転駆動源をワイパと共通とした構成であることが好ましい。
【0166】
(変形例11)前記実施形態では、キャップを往復移動させる移動機構(スライダ80、案内孔58,59、コイルバネ115等)を流用して、そのスライダ80にストッパ86を設けることで係止機構を構築したが、これに限定されない。ストッパを有する係止機構としては、キャリッジがクリーニング位置に到達する直前の過程でキャリッジ(液体噴射ヘッドを含む)の一部と係合するレバーを備え、このレバーの操作によりストッパを係止位置と係止解除位置に移動させる機構を採用する。また、この係止機構には、ストッパを係止位置に移動させる方向の付勢力をレバーに与えるバネ(付勢手段)が備えられる。キャリッジはクリーニング位置に到達する過程でレバーの被係合部に当たってこれを押してその押し込み力により該レバーが回動することでストッパが係止位置に配置され、一方、キャリッジがクリーニング位置から離れる過程で、レバーがバネの付勢力により復帰方向へ回動することによりストッパが係止解除位置に配置される。なお、キャップを支持する支持体(キャップホルダ)にワイピング部材が一体に取着された構成において、このキャップの移動手段に本発明の動力伝達機構を採用し、さらにキャリッジの移動に連動するストッパを有する上記係止機構を追加して、本発明を適用することもできる。
(変形例12)前記実施形態では、回転駆動源として紙送りモータを用い、メンテナンス装置のちのワイピング装置、給紙系・搬送系・排紙系の各駆動装置および吸引ポンプを共有の回転駆動源としたが、これに限定されない。例えば吸引ポンプの回転駆動源を共有せず、給紙系・搬送系・排紙系の各駆動装置のうち少なくとも一つとキャリッジロック装置およびワイピング装置の回転駆動源を共有した構成としてもよい。
【0167】
(変形例13)ワイパ40を昇降させる途中過程において円筒カム67に摩擦クラッチ68に滑りを発生させるほどの過度の負荷がかかる心配がない場合は、歯部72は廃止することもできる。この構成によっても、ロックレバー45およびワイパ40が昇降する途中過程においても摩擦クラッチ68の摩擦係合により円筒歯車66と円筒カム67が一体に回動することにより、ロックレバー45およびワイパ40をほぼ確実に昇降させることができる。
【0168】
(変形例14)前記実施形態では、カム体を、回転駆動源からの動力により回転する回転体(円筒カム67)としたが、カム体は回転体に限定されない。例えばカム体を、扇形状、L字形状など所定形状を有するレバーとし、回転駆動源からの動力により揺動運動する揺動体であってもよい。
【0169】
(変形例15)前記実施形態では、液体噴射ヘッドから液体を排出させる手段として吸引排出手段を採用し、吸引排出手段の一部を構成する吸引ポンプを設けたが、吸引以外の方式で液体を排出させる手段を設けてもよい。例えば、吸引ポンプに替え、液体噴射ヘッド内の液室を加圧手段により加圧してノズルから液体を排出する加圧方式の液体排出手段を採用し、加圧方式により液体をキャップに排出する構成を採用することもできる。この場合、メンテナンス装置から吸引ポンプは廃止される。
【0170】
(変形例16)クラッチ手段は、摩擦クラッチギヤ機構のように、下流側の負荷が小さいうちは接触面の摩擦係合を介して動力伝達され、下流側に大きな負荷がかかると接触面に滑りが発生して動力伝達不能となる摩擦クラッチを有する摩擦クラッチ手段に限定されない。摩擦以外の方法で動力伝達される機構を採用し、下流側の負荷が小さいうちはその機構による機械的な係合により動力伝達され、下流側に大きな負荷がかかると、その機構による機械的な係合が外れて動力伝達不能となるクラッチ手段を採用することもできる。このような係合機構としては、クラッチ手段を構成する歯車の端面からバネ等の弾性体により付勢されて突出する係合部と、クラッチ手段を構成する回動体の端面に前記係合部と係合可能に設けられた被係合部と、回動体に所定値を超える負荷がかかると、前記弾性体の付勢力に抗して係合部と被係合部との係合が外れる係合解除手段(例えば係合箇所に設けられた曲面など)とを有するものが挙げられる。なお、このようなクラッチ手段では、係合部と被係合部との係合面がクラッチ面となる。
【0171】
(変形例17)前記実施形態では、被係止部を有する可動体(回動体、カム体)である円筒カム67の運動を回動としたが、可動体の運動は回動に限定されない。例えば直線経路または曲線経路上を移動して可動体が位置を変化させる移動の運動であってもよい。例えば直線経路上を移動する可動体としてはラック・ピニオン機構を構成するラックが挙げられる。また、直線経路上を移動する可動体の構成としては、回動体のカム溝に係入された軸部(カムフォロア)を有する可動体が挙げられる。また、曲線経路上を移動する可動体としては、回動体の端面上に設けられた軸部と連結された可動体であって、回動体の回動運動に従って円弧状の案内経路に沿って案内されて円弧軌跡を描くように移動する可動体が挙げられる。このような移動の運動をする可動体に被係止部を設け、ストッパに係止される構成としてもよい。
【0172】
(変形例18)前記実施形態では、クラッチ手段を含む動力伝達機構60をメンテナンスユニット50のフレーム51に一体に組付けた構成としたが、動力伝達機構60のうちクラッチ手段の部分がフレーム51以外の部分、例えば記録装置の基体に組付けられた構成でも構わない。この場合、クラッチ手段を含まない動力伝達機構の部分を有するメンテナンスユニットと、基体に組付けられたクラッチ手段を含む動力伝達機構の部分とにより、メンテナンス装置が構成されることになる。
【0173】
(変形例19)前記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式の記録装置10に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体を含む)を噴射する液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に、液体噴射ヘッドに対する保守を行う保守部品を有する本発明のメンテナンス装置を適用することができる。
【0174】
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)請求項3乃至17のいずれか一項において、前記移動手段は、前記キャリッジがクリーニング位置に向かって移動する過程で該キャリッジ又は液体噴射ヘッドに押されてスライドするスライダ(80)と、前記スライダを前記キャリッジ又は前記液体噴射ヘッドに押されてスライドするときに上昇案内する案内手段(58,59,82〜85)と、前記スライダを前記案内手段により下方へ案内される方向に付勢する付勢手段(115)とを備え、前記キャップは前記スライダ上に設けられており、前記キャップの昇降に追従して動く前記ストッパは、前記スライダに設けられていることを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。
【0175】
これによれば、キャリッジの移動に連動してキャップが移動(昇降)するので、移動手段の構成が簡素になり、メンテナンス装置を簡単な構成にすることができる。
(2)請求項2乃至17及び前記技術的思想(1)のいずれか一項において、前記可動体としてのカム体は、前記キャップを退避位置に下降させたときの位置に配置された前記スライダと相対する位置に配置されており、前記ストッパは前記スライダに対して前記カム体と相対する部位に設けられている。これによれば、キャップを昇降させるスライダにストッパを設け、しかもカム体にストッパを係止させる構成を比較的簡単に実現できる。
【0176】
(3)請求項2乃至17及び前記技術的思想(1)のいずれか一項において、前記クラッチ手段は、前記キャップを退避位置に下降させたときの位置に配置された前記スライダと相対する位置に配置されており、前記ストッパは前記スライダに対して前記クラッチ手段と相対する部位に設けられている。これによれば、キャップを昇降させるスライダにストッパを設け、しかもクラッチ手段のクラッチ面より動力伝達方向下流側の構成部品(回動体)にストッパを係止させる構成を比較的簡単に実現できる。なお、被係止部は回動体に設けられる。
【0177】
(4)前記技術的思想(3)において、前記保守部品としてのワイパは、前記キャップを退避位置に下降させたときの位置に配置された前記スライダと相対する位置に配置されており、前記クラッチ手段は、当該スライダに対して前記ワイパを挟んで相対する位置に配置され、前記クラッチ手段のクラッチ面より動力伝達方向下流側の構成部品である回動体には前記被係止部および前記カム部が設けられ、該回動体が前記カム体を兼ねている。これによれば、さらに、クラッチ手段の構成部品である回動体がカム体を兼ね部品点数を少なく抑えられ、しかもワイパが回動体に相対する位置に配置されていることから、カム部とワイパのカムフォロアも簡単に構成できる。なお、メンテナンス装置は、前記ワイパを移動可能に支持するガイド部(53)を有し、該ガイド部には、前記ストッパが貫通可能な刳り抜き部(53b)が設けられていることが好ましい。これによれば、さらにストッパはワイパのガイド部に妨げられることなく、ガイド部の裏側に位置する回動体(カム体)の被係止部に係止できる。
【0178】
(5)請求項3乃至請求項17のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、前記移動手段は、前記キャップを搭載する支持体と、前記支持体を昇降させる昇降機構とを備え、前記ストッパは前記支持体に設けられており、前記ストッパに係止される前記可動体は、前記キャップが退避位置に配置されるときの下降位置にある前記支持体と相対する位置に配置されており、当該可動体は係止位置に配置された前記ストッパと相対する位置に被係止部を有していることを特徴とする。
【0179】
これによれば、昇降機構により支持体が下降位置に配置されてキャップが退避位置へ移動したときには、支持体と共に下降したストッパは、該支持体が下降位置に配置されたときに相対する位置に配置されている可動体に対しその被係止部に係止される。よって、支持体にストッパを設けて昇降手段を流用する構成を採用することで、ストッパの移動機構(係止機構)を簡単に構成することができる。
【0180】
(6)請求項1乃至17のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、前記クラッチ手段は、その動力伝達方向下流側にかかる負荷が所定値以下であるうちは動力伝達可能に接続され、前記所定値を超える負荷がかかると動力伝達不能に接続が切れるクラッチを有することを特徴とする。
【0181】
(7)請求項1、2、4乃至17のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、前記ストッパは前記キャリッジの移動に連動して、前記キャリッジがクリーニング位置にないときに係止位置に配置され、前記キャリッジがクリーニング位置にあるときに係止解除位置に配置されるように構成され、前記ストッパが係止位置に作動していても前記保守部品が退避位置にないときには、前記保守部品が作動位置から退避位置へ移動することを規制するような前記ストッパによる前記可動体への係止を阻止する係止阻止手段(74)を、さらに備えたことを特徴とする。これによれば、キャリッジがクリーニング位置から離れた後においても、保守部品を作動位置から退避位置へ戻すことができる。
【0182】
(8)請求項3乃至17のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるメンテナンス装置において、前記ストッパは前記キャップの移動に連動して、前記キャップが退避位置にあるときに係止位置に配置され、前記キャップが封止位置にあるときに係止解除位置に配置されように構成され、前記ストッパが係止位置に作動していても前記保守部品が退避位置にないときには、前記保守部品が作動位置から退避位置へ移動することを規制するような前記ストッパによる前記可動体への係止を阻止する係止阻止手段(74)を、さらに備えたことを特徴とする。これによれば、キャップが封止位置から退避位置側へ移動した後においても、保守部品を作動位置から退避位置へ戻すことができる。
【0183】
(9)前記技術的思想(7)または(8)において、前記可動体(67)は、前記カム体であって、当該カム体は有限範囲を往復回動するように構成されており、前記保守部品は、前記変換手段により該カム体が前記有限範囲を一方向に回動したときに上昇し、他方向に回動したときに下降するように構成されており、前記係止阻止手段は、前記カム体が、前記保守部品を作動位置に配置させるときにとる第2駆動位置(第2回動位置)から前記保守部品を退避位置に配置させるときにとる第1駆動位置(第1回動位置)に作動する過程で、前記係止位置にある前記ストッパが当該カム体の面と接触しながら相対移動することを許容する移動許容面(74)を有することを特徴とする液体噴射装置におけるメンテナンス装置。なお、移動許容面は、カム体とストッパのうち少なくとも一方に設けられていれば足りる。さらに移動許容面は斜面に限定されず曲面でもよいし、平坦面でもよい。これによれば、係止位置にあるストッパが移動許容面上を相対移動できることから、カム体が第2駆動位置から第1駆動位置に移動または回動することができるので、キャップの退避後であっても、保守部品を作動位置から退避位置へ戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本実施形態における記録装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】記録装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】メンテナンスユニットの分解斜視図。
【図4】メンテナンスユニットの部分平面図。
【図5】メンテナンスユニットの斜視図。
【図6】メンテナンスユニットの底面斜視図。
【図7】メンテナンスユニットの背面図。
【図8】摩擦クラッチギヤ機構の斜視図。
【図9】キャリッジがクリーニング位置に配置された状態を示す要部斜視図。
【図10】メンテナンスユニットの要部斜視図。
【図11】ロックレバーおよびワイパの昇降時における摩擦クラッチギヤ機構の動作説明図であり、(a)は摩擦クラッチギヤ機構周辺の正面図、(b)は円筒カムの同図(a)のA−A線における模式断面図。
【図12】同じく摩擦クラッチギヤ機構の動作説明図であり、(a)は同じく正面図、(b)は同じく模式断面図。
【図13】同じく摩擦クラッチギヤ機構の動作説明図であり、(a)は同じく正面図、(b)〜(d)は同じく模式断面図。
【図14】(a)〜(c)はロックレバーおよびワイパの昇降機構を説明する正面図。
【符号の説明】
【0185】
10…液体噴射装置としての記録装置、12…キャリッジ、17…媒体(記録媒体)としての記録用紙、18…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、18a…ノズル形成面、23,24,25,26…搬送駆動部を構成するローラ、27…回転駆動源としての電動モータ(紙送りモータ)、29…吸引ポンプ、40…保守部品(第2保守部品)としてのワイパ、41…ワイパホルダ、42…ワイピング部材、43…変換手段(第2変換手段)を構成するカムフォロアとしてのガイドピン、45…保守部品(第1保守部品)およびロック部材としてのキャリッジロックレバー、47…変換手段(第1変換手段)を構成する突起、58,59…移動手段(昇降手段)および昇降機構を構成するとともにスライダの案内手段を構成する案内孔、50…メンテナンス装置としてのメンテナンスユニット、51…フレーム、60…動力伝達機構、64…駆動歯車としての歯車、65…クラッチ手段および摩擦クラッチ手段としての摩擦クラッチギヤ機構、66…摩擦クラッチ手段を構成する歯車としての円筒歯車、67…動力伝達機構および摩擦クラッチ手段を構成するとともに可動体、回動体、カム体としての円筒カム、68…摩擦クラッチ、70…変換手段(第2変換手段)を構成するカム部としてのカム溝、71…被係止部としての係止穴、72…歯部、73…凹部、74…斜面、75…変換手段(第1変換手段)を構成するとともにカム部(第1カム部)としての凸部、80…移動手段(昇降手段)および係止機構を構成するとともに支持体としてのスライダ、82〜85…移動手段(昇降手段)および昇降機構を構成するととともにスライダの案内手段を構成する支持ピン、86…係止機構を構成するストッパ、98…被係合部としての突出部材、100…キャップ、115…付勢手段。




 

 


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